特許第6361048号(P6361048)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361048金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法及び金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361048
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法及び金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/36 20060101AFI20180712BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20180712BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20180712BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C23C16/36
   C23C16/42
   H01L21/318 B
   H01L21/31 B
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-562355(P2016-562355)
(86)(22)【出願日】2015年11月4日
(86)【国際出願番号】JP2015081014
(87)【国際公開番号】WO2016088500
(87)【国際公開日】20160609
【審査請求日】2017年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-243722(P2014-243722)
(32)【優先日】2014年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 昌志
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 央
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−079290(JP,A)
【文献】 特開2007−189173(JP,A)
【文献】 特開2009−283587(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/098251(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/56
H01L 21/205
H01L 21/285
H01L 21/365
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、複数のRは、同一又は異なっていても良く、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、若しくは炭素原子数1〜9のトリアルキルシリル基を示す。なお、複数のRは、互いに結合して環を形成していても良い。)
で示されるグアニジン化合物を含む窒素源と、金属源又は半金属源とを成膜対象物上に供給して金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を成膜する、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項2】
前記半金属炭窒化膜としてシリコン炭窒化膜を成膜する請求項1に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項3】
脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類及びエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の溶媒を含むグアニジン化合物溶液を前記窒素源として用いる請求項1又は2に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項4】
前記金属源又は半金属源として、金属ハロゲン化物又は半金属ハロゲン化物を用いる請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項5】
金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の成膜温度を600℃未満とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項6】
金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の成膜温度を550℃未満とする請求項5に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項7】
金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の成膜温度を500℃以下とする請求項6に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法に用いられる金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置であって、
前記成膜対象物が配置される配置部を有する反応室と、
前記反応室内に前記金属源又は半金属源を供給する金属源又は半金属源供給部と、
前記反応室内に前記窒素源を供給する窒素源供給部と、
を備える金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グアニジン化合物を用いて、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を製造する方法、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜及び金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や電子部品等の分野において、高い耐薬品性を有する「金属炭窒化膜又は半金属窒化膜中に炭素が存在する炭窒化膜」について多くの研究・開発がなされている。金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法としては、例えば、アンモニアなどの無機窒素ガスと、アセチレンなどの炭化水素ガスを組み合わせて製造する方法(例えば、特許文献1参照)や、イソプロピルアミンを炭素・窒素源(炭窒化剤)として使用する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−189173号公報
【特許文献2】特開2009−283587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に記載の金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法では、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の成膜温度が高いという問題がある。
【0005】
本発明の主な目的は、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を低温で成膜することができる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法では、
一般式(1)
【化1】

(式中、複数のRは、同一又は異なっていても良く、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、若しくは炭素原子数1〜9のトリアルキルシリル基を示す。なお、複数のRは、互いに結合して環を形成していても良い。)
で示されるグアニジン化合物を含む窒素源と、金属源又は半金属源とを成膜対象物上に供給して金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を成膜する。
【0007】
本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜は、本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法で得られたものである。
【0008】
本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置は、本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法に用いられる金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置である。本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置は、反応室と、金属源又は半金属源供給部と、窒素源供給部とを備える。反応室は、成膜対象物が配置される配置部を有する。金属源又は半金属源供給部は、反応室内に金属源又は半金属源を供給する。窒素源供給部は、反応室内に窒素源を供給する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を低温で成膜することができる方法及び装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法では、
一般式(1)
【化2】

(式中、複数のRは、同一又は異なっていても良く、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、若しくは炭素原子数1〜9のトリアルキルシリル基を示す。なお、複数のRは、互いに結合して環を形成していても良い。)
で示されるグアニジン化合物を含む窒素源と、金属源又は半金属源とを成膜対象物上に供給して金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を成膜する。 具体的には、図1に示すように、金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置20の反応室21内に設けられた配置部22に配置された成膜対象物23に対して、反応室21内に設けられた金属源又は半金属源供給部24から金属源又は半金属源24aを供給すると共に、反応室21内に設けられた窒素源供給部25から窒素源25aを供給することにより膜26を成膜する。 金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法は、特に限定されない。金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜は、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition法;以下、CVD法と称する)もしくはALD(Atomic Layer Deposition;以下、ALD法と称する)法等の蒸着法で製造することができる。
【0012】
CVD法及びALD法においては、成膜対象物での膜形成のためにグアニジン化合物を気化させる必要がある。例えば、グアニジン化合物のみを気化室に供給して気化させてもよいし、グアニジン化合物を溶媒に希釈したグアニジン化合物溶液を気化室に供給して気化させてもよい。
【0013】
グアニジン化合物溶液の溶媒としては、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類及びエーテル類等が挙げられる。これらの溶媒を、単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。
【0014】
脂肪族炭化水素類の具体例としては、例えば、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン等が挙げられる。
【0015】
芳香族炭化水素類の具体例としては、例えば、トルエン等が挙げられる。
【0016】
エーテル類の具体例としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル等が挙げられる。
【0017】
グアニジン化合物を用いて金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜を蒸着させる場合、例えば、反応室21内の圧力は、好ましくは1Pa〜200kPa、更に好ましくは10Pa〜110kPaである。成膜温度は、好ましくは600℃未満、より好ましくは550℃未満、さらに好ましくは500℃以下である。成膜温度は、好ましくは100℃以上、更に好ましくは200℃以上である。グアニジン化合物を気化させる温度は、好ましくは0℃〜180℃、更に好ましくは10℃〜100℃である。反応室21内に供給するガス量に対するグアニジン化合物のガスの含有割合は、好ましくは0.1容量%〜99容量%、更に好ましくは0.5容量%〜95容量%である。

尚、本発明において成膜温度は、成膜時における成膜対象物の温度のことである。
【0018】
(グアニジン化合物)
グアニジン化合物は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、複数のRは、同一又は異なっていても良く、それぞれ、水素原子、炭素原子数1〜5の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、若しくは炭素原子数1〜9のトリアルキルシリル基である。
【0019】
炭素原子数1〜5の直鎖、分枝状又は環状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
【0020】
炭素原子数1〜9のトリアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、メチルジエチルシリル基などが挙げられる。
【0021】
なお、複数のRは互いに結合して環を形成していても良く、形成される環としては、例えば、炭素原子数2〜10の飽和又は不飽和の環が挙げられる。
【0022】
好ましく用いられるグアニジン化合物の具体例としては、例えば、式(2)から式(29)で示されるグアニジン化合物などが挙げられる。なお、これらのグアニジン化合物は、単独で用いても良いし、二種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
【化3】
【0024】
【化4】
【0025】
(金属源又は非金属源)金属源又は半金属源としては、例えば、金属ハロゲン化物又は半金属ハロゲン化物が好ましく用いられる。
【0026】
金属ハロゲン化物としては、トリクロロアルミニウム、トリブロモアルミニウム、トリフルオロアルミニウム、トリヨードアルニウム、テトラブロモチタン、テトラクロロチタン、テトラフルオロチタン、テトラヨードチタン、テトラブロモジルコニウム、テトラクロロジルコニウム、テトラフルオロジルコニウム、テトラヨードジルコニウム、テトラブロモハフニウム、テトラクロロハフニウム、テトラフルオロハフニウム、テトラヨードハフニウム、ペンタクロロタンタル、ペンタクロロモリブデン、ヘキサフルオロモリブデン、ビスシクロペンタジエニルジクロロモリブデンヘキサクロロタングステン、ヘキサフロオロタングステン、ジブロモコバルト、ジクロロコバルト、ジフルオロコバルト、ジヨードコバルト、ジブロモニッケル、ジクロロニッケル、ジヨードニッケル、ジブロモマンガン、ジクロロマンガン、ジフルオロマンガン、ジヨードマンガン、モノブロモ銅、ジブロモ銅、モノクロロ銅、ジクロロ銅、ジフルオロ銅、ジヨード銅、トリブロモガリウム、トリクロロガリウム、トリフルオロガリウム、トリヨードガリウム、トリブロモビスマス、トリクロロビスマス、トリフルオロビスマス、トリヨードビスマス、トリブロモルテニウム、トリクロロルテニウム、トリフルオロルテニウム、トリクロロロジウム、ジブロモ白金、ジクロロ白金、テトラクロロ白金、ジヨード白金、ジブロモパラジウム、ジクロロパラジウム、ジヨードパラジウム、トリヨードルテニウム、ベンゼンジクロロルテニウム、ジブロモ亜鉛、ジクロロ亜鉛、ジフルオロ亜鉛、ジヨード亜鉛等が挙げられる。
【0027】
半金属ハロゲン化物としては、テトラクロロシラン、テトラフルオロシラン、ヘキサクロロジシラン、クロロペンタメチルジシラン、ジクロロテトラメチルジシラン、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラブロモゲルマニウム、テトラクロロゲルマニウム、テトラヨードゲルマニウム、トリブロモボロン、トリクロロボロン、トリフルオロボロン、トリヨードボロン等が挙げられる。
【0028】
本発明に係る金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造方法は、シリコン炭窒化膜の製造に特に好適である。
【実施例】
【0029】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0030】
実施例1〜3(蒸着実験;シリコン炭窒化膜の製造)
表1に示すグアニジン化合物を用いて、表1に示す条件で、CVD法により、20mm×20mmサイズの基板上に膜を成膜した。また、成膜した膜をXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)分析することにより膜を特定した。
【0031】
【表1】
【0032】
以上の結果より、グアニジン化合物を用いることにより、低温にてシリコン炭窒化膜を製造できることがわかる。
【符号の説明】
【0033】
20 金属炭窒化膜又は半金属炭窒化膜の製造装置
21 反応室
22 配置部
23 成膜対象物
24 金属源又は半金属源供給部
24a 金属源又は半金属源
25 窒素源供給部
25a 窒素源
26 膜
図1