(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マイクロ波加熱装置において、被処理物の負荷(マイクロ波吸収量)が大きい場合、上記の反射マイクロ波は小さく、マグネトロン破損の問題は、生じにくい。一方で、マイクロ波加熱装置において、被処理物の負荷が小さい場合、上記の反射マイクロ波が大きくなり、マグネトロン破損の問題を無視できなくなる。また、被処理物のマイクロ波吸収特性は、被処理物の温度によっても変動するため、マイクロ波に関する負荷の整合がとれない場合、または、過剰なマイクロ波が被処理物に供給された場合も、上記の反射マイクロ波が大きくなり、マグネトロン破損の問題を無視できなくなる。
【0008】
このため、マグネトロン破損を確実に防止できるようにするために、上記のパワーモニタ、チューナ、および、アイソレータが必要となる。しかしながら、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータは、寸法が大きく、且つ、高価である。このため、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータの存在は、マイクロ波加熱装置の小型化、および、製造コスト低減の観点からは、好ましくない。
【0009】
ここで、マグネトロンから発射されるマイクロ波を最適化することで、被処理物に十分なマイクロ波を供給しつつ、反射マイクロ波を低減することができれば、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータなどを省略しても、マグネトロン破損の問題は生じない。マグネトロンから発射されるマイクロ波を最適化するためには、チャンバからマグネトロンに反射される反射マイクロ波を監視できるようにすることが必要である。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、チャンバからマグネトロンなどのマイクロ波発生源に反射される反射マイクロ波を監視することのできる、マイクロ波監視装置、マイクロ波加熱装置、および、マイクロ波監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わるマイクロ波監視装置は、被処理物を収容したチャンバから漏洩するマイクロ波としての漏洩マイクロ波を検出するための、漏洩マイクロ波検出部と、前記漏洩マイクロ波検出部で検出された前記漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かを判定する判定部と、を備え、前記判定部は、前記チャンバ内の空間に向けてマイクロ波を発射するためのマイクロ波発射部から発射された前記マイクロ波の出力と前記漏洩マイクロ波の強さとの関係を示すグラフであって、前記しきい値を設定するためのグラフを作成し、このグラフに基づいて、前記漏洩マイクロ波の強さが前記所定のしきい値を超えているか否かを判定する。
【0012】
この構成によると、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えている場合、被処理部物は、照射されたマイクロ波を十分に吸収できず、その結果、マイクロ波発生源への反射マイクロ波が大きくなっていると考えられる。したがって、判定部は、漏洩マイクロ波の強さを判定することで、チャンバからマイクロ波発生源に反射される反射マイクロ波を監視することができる。また、しきい値を設定するためのグラフが作成され、このグラフに基づいて、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かが判定される。この構成によると、被処理物の材質などの特性に応じてしきい値を変更可能であり、その結果、例えば、より最適な加熱処理を行うことができる。
【0013】
(2)好ましくは、前記しきい値は、前記チャンバに供給される前記マイクロ波の強さの変化に対する前記漏洩マイクロ波の強さの変化の割合が変化する変曲点での前記漏洩マイクロ波の強さに基づいて設定される。
【0014】
この構成によると、被処理物へ供給されるマイクロ波の強さが変曲点での値を超えると、漏洩マイクロ波の強さは、急激に大きくなる。すなわち、被処理物へ供給されるマイクロ波の強さが変曲点での値を超えると、被処理物で吸収されないマイクロ波が多くなり、その結果、チャンバからマイクロ波発生源へ反射される反射マイクロ波が急激に大きくなる。したがって、判定部は、この変曲点を基準にして漏洩マイクロ波の強さを判定することで、反射マイクロ波が大きくなることを、より正確に判定できる。
【0015】
(3)好ましくは、前記判定部は、前記グラフにおいて、前記チャンバに供給される前記マイクロ波の強さの変化に対する前記漏洩マイクロ波の強さの変化の割合が変化する変曲点が存在する場合に、前記変曲点における前記漏洩マイクロ波の強さを前記しきい値として設定し、前記変曲点が存在しない場合、前記しきい値が存在していないと判定する。
【0016】
(4)好ましくは、前記判定部は、前記漏洩マイクロ波の強さが前記しきい値以下である場合、または、前記しきい値が存在していない場合、前記漏洩マイクロ波の強さが前記しきい値以下であることを示す監視結果を出力するように構成されている。
【0017】
(5)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わるマイクロ波加熱装置は、被処理物を収容するためのチャンバと、前記チャンバ内の空間に向けてマイクロ波を発射するためのマイクロ波発射部と、前記チャンバから漏洩するマイクロ波としての漏洩マイクロ波を検出するための、漏洩マイクロ波検出部と、前記漏洩マイクロ波検出部で検出された前記漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かを判定する判定部と、前記マイクロ波発射部を制御する制御部と、を備え、前記判定部は、前記マイクロ波発射部から発射された前記マイクロ波の出力と前記漏洩マイクロ波の強さとの関係を示すグラフであって、前記しきい値を設定するためのグラフを作成し、このグラフに基づいて、前記漏洩マイクロ波の強さが前記所定のしきい値を超えているか否かを判定し、前記制御部は、前記漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えていると判定された場合に、前記漏洩マイクロ波の強さに基づいて、前記マイクロ波発射部から発射される前記マイクロ波の強さを設定する。
【0018】
この構成によると、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えている場合、被処理部物は、照射されたマイクロ波を十分に吸収できず、その結果、マイクロ波発生源への反射マイクロ波が大きくなっていると考えられる。したがって、判定部は、漏洩マイクロ波の強さを判定することで、チャンバからマイクロ波発生源に反射される反射マイクロ波を監視することができる。また、漏洩マイクロ波の強さがしきい値を超えている場合、すなわち、チャンバからマイクロ波発射部に反射される反射マイクロ波が大きい場合に、制御部は、この反射マイクロ波が過大にならないように、マイクロ波発射部からのマイクロ波の強さを制御できる。これにより、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータに頼ることなく、マイクロ波発生部への反射マイクロ波を低減でき、その結果、マイクロ波発生部の破損を抑制できる。また、しきい値を設定するためのグラフが作成され、このグラフに基づいて、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かが判定される。この構成によると、被処理物の材質などの特性に応じてしきい値を変更可能であり、その結果、より最適な加熱処理を行うことができる。
【0019】
(6)好ましくは、前記制御部は、前記漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えていると判定された場合に、前記マイクロ波発射部から発射される前記マイクロ波の出力値を、下記式の値に設定する。
E=E
0{1+k(Δ−Δ
0)}
ただし、E:前記制御部で設定される前記マイクロ波の出力値、E
0:漏洩マイクロ波の強さがしきい値であるときの前記マイクロ波発射部からの前記マイクロ波の出力、k:所定の加重係数、Δ:前記漏洩マイクロ波検出部で検出されている前記漏洩マイクロ波の強さ、Δ
0:前記しきい値。
【0020】
(7)好ましくは、前記制御部は、前記漏洩マイクロ波の強さが前記しきい値以下である場合に、前記マイクロ波発射部から発射される前記マイクロ波の強さを大きくするように構成されている。
【0021】
(8)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わるマイクロ波監視方法は、被処理物を収容したチャンバから漏洩するマイクロ波としての漏洩マイクロ波を検出する、漏洩マイクロ波検出ステップと、前記漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かを判定する判定ステップと、を含み、前記判定ステップでは、前記チャンバ内の空間に向けてマイクロ波を発射するためのマイクロ波発射部から発射された前記マイクロ波の出力と前記漏洩マイクロ波の強さとの関係を示すグラフであって、前記しきい値を設定するためのグラフを作成し、このグラフに基づいて、前記漏洩マイクロ波の強さが前記所定のしきい値を超えているか否かを判定する。
【0022】
この構成によると、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えている場合、被処理部物は、照射されたマイクロ波を十分に吸収できず、その結果、マイクロ波発生源への反射マイクロ波が大きくなっていると考えられる。したがって、判定ステップにおいて、漏洩マイクロ波の強さを判定することで、チャンバからマイクロ波発生源に反射される反射マイクロ波を監視することができる。また、しきい値を設定するためのグラフが作成され、このグラフに基づいて、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値を超えているか否かが判定される。この構成によると、被処理物の材質などの特性に応じてしきい値を変更可能であり、その結果、例えば、より最適な加熱処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、チャンバからマイクロ波発生源に反射される反射マイクロ波を監視することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、マイクロ波監視装置、マイクロ波加熱装置、および、マイクロ波監視方法として、広く適用することができる。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波加熱装置1の正面図である。
図2は、マイクロ波加熱装置1の側面図である。
図1および
図2を参照して、マイクロ波加熱装置1は、マイクロ波によって被処理物50を加熱するために用いられる。被処理物50は、たとえば、陶器などに入れられた水である。なお、被処理物50は、マイクロ波によって加熱される物体であればよく、材質は限定されない。
【0027】
マイクロ波加熱装置1は、筐体2と、チャンバ3と、マグネトロン4(4a,4b,4c,4d)と、導波管5と、インバータ6と、制御箱7と、マイクロ波監視装置8と、制御部9と、を有している。
【0028】
筐体2は、たとえば、金属板を組み合わせて形成されている。本実施形態では、筐体2は、中空の四角柱状に形成されている。筐体2は、チャンバ3、マグネトロン4、導波管5、インバータ6、および、制御箱7を収容している。なお、図において、筐体2は、想像線である2点鎖線で示されている。
【0029】
筐体2の正面には、扉11,12が設けられている。扉11は、制御箱7を筐体2の外部に露呈させることが可能に構成されている。扉12は、チャンバ3を筐体2の外部に露呈させることが可能に構成されている。また、扉12に隣接する筐体2の側壁には、観測窓13が取り付けられている。作業員は、この観測窓13を通して筐体2の外部からチャンバ3を視認することができる。
【0030】
チャンバ3は、被処理物50を収容するために設けられている。本実施形態では、チャンバ3は、上下方向における筐体2の中間部に配置されている。チャンバ3は、金属板などを用いて、マイクロ波を反射するように構成されている。チャンバ3は、中空の箱形形状に形成されている。
【0031】
図3は、
図2のIII−III線に沿う、主要部の断面図である。
図1〜
図3を参照して、チャンバ3は、4つの側壁14,15,16,17と、チョーク機構18と、天壁19と、底壁20と、を有している。
【0032】
側壁14,15,16,17は、全体として中空の四角柱状に形成されており、上下に延びている。側壁14には、窓部21が形成されている。
【0033】
窓部21は、作業員がチャンバ3の外部からチャンバ3の内部を視認するために設けられている。窓部21は、側壁14の一部の領域に設けられている。窓部21は、側壁14の略中央に配置されており、矩形状に形成されている。
【0034】
窓部21は、側壁14の一部をパンチングメタルとすることで形成されている。窓部21においては、周期構造(規則的に配置された構造)を持つ多数の微細な貫通孔が形成されていることにより、チャンバ3の内部の観察を可能にしながらも、チャンバ3内のマイクロ波が所定の基準値以上外部に漏洩しないように構成されている。上記の各貫通孔は、たとえば、丸孔形状に形成されている。なお、マイクロ波を検出するために用いられる、マイクロ波の漏洩量の許容値は、電波防護指針に示されている電磁波強度指針値以下であることは、いうまでもない。上記の電波防護方針とは、「電波利用における人体の防護方針」(諮問38号、電気通信技術審議会、1990年6月)に開示されている。
【0035】
扉12には、λ/4チョーク機構18(λはマイクロ波の波長)が設けられている。チョーク機構18は、チャンバ3に供給されたマイクロ波が漏洩することを抑制するために設けられている。側壁14,15,16,17で囲まれた空間は、天壁19によって上方から覆われている。
【0036】
天壁19は、たとえば、金属板の中央部を上向きに凸となるように押し上げた形状に形成されている。天壁19の外周部は、側壁14,15,16,17の上端部に固定されている。天壁19は、底壁20と上下に向かい合っている。
【0037】
底壁20は、被処理物50が置かれる部分として設けられている。底壁20は、略矩形の平板状に形成されている。底壁20の外周部は、側壁14,15,16,17に接続されている。このように、底壁20、側壁14,15,16,17、および、天壁19で囲まれた空間が、被処理物50の加熱のための加熱用空間28として規定されている。底壁20には、複数の開口部24,25,26,27が形成されている。
【0038】
開口部24,25,26,27は、それぞれ、加熱用空間28へのマイクロ波の入口として設けられている。開口部24,25,26,27は、平面視において、被処理物50を取り囲むように配置されている。本実施形態では、各開口部24,25,26,27は、細長い矩形状に形成されている。2つの開口部24,26は、平面視において向きを揃えられた状態で、被処理物50を挟むように配置されている。また、開口部25は、平面視において開口部24の向きと90°ずれた向きに配置されている。同様に、開口部27は、平面視において開口部24の向きと90°ずれた向きに配置されている。開口部25,27は、平面視において被処理物50を挟むように配置されている。開口部24,25,26,27は、それぞれ、対応する導波管5と接続されている。
【0039】
各導波管5は、対応するマグネトロン4a,4b,4c,4dからのマイクロ波をチャンバ3の加熱用空間28へ案内するために設けられている。各導波管5は、チャンバ3の底壁20から下方に延びており、対応するマグネトロン4a,4b,4c,4dに接続されている。
【0040】
マグネトロン4(4a,4b,4c,4d)は、被処理物50へ与えられるマイクロ波を発生するために設けられている。本実施形態では、4つのマグネトロン4a,4b,4c,4dが設けられている。なお、マグネトロンの数は、1つ以上であればよく、特に限定されない。マグネトロン4は、本発明の「マイクロ波発射部」の一例である。本実施形態では、マグネトロン4a,4b,4c,4dを総称していう場合、マグネトロン4という。なお、本実施形態では、マグネトロン4を用いてマイクロ波を発生させる構成を説明するけれども、この通りでなくてもよい。たとえば、半導体を用いて発生されたマイクロ波によって被処理物50が加熱されてもよい。
【0041】
各マグネトロン4a,4b,4c,4dは、筐体2に支持されている。各マグネトロン4a,4b,4c,4dは、対応する導波管5を介して加熱用空間28に向けてマイクロ波を放出するように構成されている。これにより、各マグネトロン4a,4b,4c,4dからのマイクロ波は、対応する導波管5を通って、加熱用空間28に到達し、被処理物50を加熱する。マグネトロン4は、インバータ6に接続されている。
【0042】
インバータ6は、マグネトロン4に電力を供給するために設けられている。インバータ6は、商用電源などに接続されている。インバータ6は、マグネロトロン4に、マイクロ波を発生するための交流電力を供給する。インバータ6、および、マグネトロン4は、制御部9によって制御される。
【0043】
制御部9は、被処理物50の加熱量を制御するように構成されている。本実施形態では、制御部9は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、および、ROM(Read Only Memory)を有するコンピュータである。制御部9による制御の一例は、後述する。制御部9は、制御箱7に収容されている。
【0044】
制御箱7は、マイクロ波加熱装置1の制御に関連する装置を収容するために設けられている。本実施形態では、制御箱7は、チャンバ3の上方に配置されている。制御箱7の前方に位置する前述の扉11には、操作パネル29が取り付けられている。操作パネル29は、たとえば、電源スイッチなどを有しており、筐体2の外部に露呈している。操作パネル29は、たとえば、作業員によって操作されることで、所定の信号を、制御部9などに出力する。
【0045】
制御部9は、操作パネル29から出力された信号、および、マイクロ波監視装置8から出力された信号などに基づいて、マグネトロン4を制御することで、被処理物50に加熱処理を施す。
【0046】
マイクロ波監視装置8は、被処理物50に与えられるマイクロ波の出力を監視するために設けられている。本実施形態では、後述するように、制御部9によるマイクロ波の出力制御において、マイクロ波監視装置8の監視結果が用いられる。これにより、被処理物50からマグネトロン4に反射されるマイクロ波としての反射マイクロ波は、抑制される。
【0047】
マイクロ波監視装置8は、漏洩マイクロ波検出部31と、判定部32と、を有している。
【0048】
漏洩マイクロ波検出部31は、被処理物50を収容したチャンバ3から漏洩するマイクロ波としての漏洩マイクロ波を検出するために、設けられている。漏洩マイクロ波検出部31は、たとえば、マイクロ波を受信するためのアンテナを含んでいる。本実施形態では、漏洩マイクロ波検出部31は、筐体2内において、窓部21に隣接して配置されており、窓部21から漏洩する漏洩マイクロ波を検出する。なお、漏洩マイクロ波検出部31は、チョーク機構18に隣接して配置されていてもよい。この場合も、漏洩マイクロ波検出部31は、チャンバ3からの漏洩マイクロ波を検出する。
【0049】
漏洩マイクロ波検出部31の大きさは、本実施形態では、窓部21の大きさよりも小さく設定されている。漏洩マイクロ波検出部31は、当該漏洩マイクロ波検出部31のマイクロ波検出面における、単位面積あたりの漏洩マイクロ波の強さ(mW/cm
2)を特定する信号を、判定部32へ出力する。なお、本実施形態では、単位面積あたりの漏洩マイクロ波の強さ(mW/cm
2)を、単に、漏洩マイクロ波の強さという。
【0050】
判定部32は、漏洩マイクロ波検出部31で検出された漏洩マイクロ波の強さが、所定のしきい値th1を超えているか否かを判定するために設けられている。判定部32は、制御箱7に収容されている。判定部32は、CPU、RAM、および、ROMを含むコンピュータによってソフトウェア的に構成されていてもよいし、電気回路を用いてハードウェア的に構成されていてもよい。判定部32がコンピュータによって構成されている場合、判定部32は、制御部9と同一のコンピュータによって構成されていてもよいし、制御部9とは別のコンピュータによって構成されていてもよい。上述したように、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さが所定のしきい値th1を超えているか否かを判定する。このしきい値th1について、次に説明する。
【0051】
図4は、漏洩マイクロ波のしきい値th1を説明するための模式的なグラフである。
図1〜
図4を参照して、グラフの横軸は、マグネトロン4(4a,4b,4c,4d)の合計の出力比であり、マグネトロン4の定格出力に対するマグネトロン4の出力を百分率で示している。グラフの縦軸は、漏洩マイクロ波の強さを示しており、単位は、mW/cm
2である。なお、図中の四角印は、マグネトロン4の出力に対する漏洩マイクロ波の強さを示す試験結果を示している。
【0052】
被処理物50が水である場合、一般的に、マグネトロン4からのマイクロ波の出力が、ゼロから増大する場合、当初はマイクロ波の出力に関する領域R1で示されるように、マイクロ波の出力の変化に対する漏洩マイクロ波の強さの変化は小さい。これは、マグネトロン4からのマイクロ波の大部分が被処理物50に吸収されていることを示す。なお、領域R1におけるマイクロ波の出力の下限はゼロであり、当該出力の上限は、後述する変曲点(しきい値th1)でのマイクロ波の出力である。
【0053】
そして、マイクロ波の出力が、領域R1を超えて、領域R2の範囲にある場合、マイクロ波の出力の増大に対する漏洩マイクロ波の増大の割合は、領域R1での当該割合よりも大きくなる。すなわち、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1であるときのマイクロ波の出力を境にして、マイクロ波の強さの変化に対する漏洩マイクロ波の強さの割合が変化する。
【0054】
このように、しきい値th1は、マイクロ波の出力(強さ)の変化に対する漏洩マイクロ波の強さの変化の割合の変曲点での漏洩マイクロ波の強さに相当する。領域R2においては、マグネトロン4からのマイクロ波は、被処理物50で十分に吸収されきれず、窓部21から漏洩する漏洩マイクロ波が多くなると考えられる。
【0055】
以上より、判定部32で用いられるしきい値th1は、チャンバ3に供給されるマイクロ波の強さの変化に対する漏洩マイクロ波の強さの変化の割合が変化する変曲点での、漏洩マイクロ波の強さに基づいて設定される。本実施形態では、上記の変曲点が、しきい値th1として設定される。本実施形態では、一例として、マグネトロン4におけるマイクロ波の出力が定格出力の約40%であるときの漏洩マイクロ波の強さが、上記のしきい値th1として設定される。
【0056】
なお、本実施形態では、上記のグラフは、予め、実験などによって作成されており、このグラフを基に上記のしきい値th1が設定される。判定部32は、上記のグラフのデータを記憶していてもよいし、上記のグラフは記憶せずにしきい値th1を記憶していてもよい。
【0057】
次に、マイクロ波監視装置8、および、制御部9における処理の流れの一例を説明する。
図5は、マイクロ波監視装置8、および、制御部9における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、フローチャートを参照して説明する場合、フローチャート以外の図も適宜参照する。
【0058】
以下に説明する処理は、たとえば、作業員による操作パネル29の操作に伴い、マイクロ波加熱装置1による被処理物50の加熱動作が開始されてから行われる。
【0059】
具体的には、マイクロ波監視装置8の漏洩マイクロ波検出部31は、漏洩マイクロ波を検出する(ステップS11)。次に、判定部32は、漏洩マイクロ波検出部31からの信号を読み込む(ステップS12)。
【0060】
次に、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えているか否かを判定する(ステップS13)。漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1以下である場合(ステップS13でNO)、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1以下であることを示す監視結果を、制御部9に出力する(ステップS14)。
【0061】
上記の結果を受信した制御部9は、マイクロ波の出力が増加するように、マグネトロン4を制御する(ステップS15)。この場合、制御部9は、たとえば、マグネトロン4からのマイクロ波の出力を、当該マイクロ波の定格出力の数%分増加させる制御を行う。
【0062】
一方、漏洩マイクロ波の強さが、しきい値th1を超えている場合(ステップS13でYES)、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えていることを示す監視結果を、制御部9に出力する(ステップS16)。
【0063】
上記の結果を受信した制御部9は、マイクロ波の出力調整を行う(ステップS17)。本実施形態では、制御部9は、マグネトロン4からのマイクロ波の出力値を、下記式の値を用いて設定する。
E=E
0{1+k(Δ−Δ
0)}
ただし、E:出力調整後のマイクロ波の出力値、E
0:漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1であるときのマグネトロン4からのマイクロ波の出力、k:所定の加重係数、Δ:漏洩マイクロ波検出部31で検出されている漏洩マイクロ波の強さ、Δ
0:しきい値th1。
【0064】
このように、制御部9は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えている場合に、漏洩マイクロ波の強さに基づいて、マグネトロン4から発射されるマイクロ波の強さを設定する。このとき、制御部9は、漏洩マイクロ波の強さに応じて、マグネトロン4からのマイクロ波の出力を調整する。
【0065】
以上説明したように、本実施形態のマイクロ波加熱装置1によると、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えている場合、被処理物50は、マグネトロン4から照射されたマイクロ波を十分に吸収できず、その結果、マグネトロン4への反射マイクロ波が大きくなっていると考えられる。したがって、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さを判定することで、チャンバ3からマグネトロン4に反射される反射マイクロ波を監視することができる。
【0066】
また、マイクロ波加熱装置1によると、漏洩マイクロ波検出部31は、チャンバ3の窓部21に隣接して配置されるか、または、チョーク機構18に隣接して配置される。この構成によると、チャンバ3からのマイクロ波が漏洩し易い箇所に漏洩マイクロ波検出部31を配置することとなる。これにより、漏洩マイクロ波検出部31は、漏洩マイクロ波を、より精度よく検出できる。
【0067】
また、マイクロ波加熱装置1によると、しきい値th1は、チャンバ3に供給されるマイクロ波の強さの変化に対する漏洩マイクロ波の強さの変化の割合が変化する変曲点での漏洩マイクロ波の強さに基づいて設定される。この構成によると、被処理物50へ供給されるマイクロ波の強さが変曲点での値を超えると、漏洩マイクロ波の強さは、急激に大きくなる。すなわち、被処理物50へ供給されるマイクロ波の強さが変曲点での値を超えると、被処理物50で吸収されないマイクロ波が多くなり、その結果、チャンバ3からマグネトロン4へ反射される反射マイクロ波が急激に大きくなる。したがって、判定部32は、この変曲点を基準にして漏洩マイクロ波の強さを判定することで、反射マイクロ波が大きくなることを、より正確に判定できる。
【0068】
また、マイクロ波加熱装置1によると、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えている場合、すなわち、チャンバ3からマグネトロン4に反射される反射マイクロ波が大きい場合に、制御部9は、この反射マイクロ波が過大にならないように、マグネトロン4からのマイクロ波の強さを制御できる。これにより、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータに頼ることなく、マグネトロン4への反射マイクロ波を低減でき、その結果、マグネトロン4の破損を抑制できる。
【0069】
このように、本実施形態では、パワーモニタ、チューナ、および、アイソレータが設けられていない。よって、マイクロ波加熱装置1をより小型にできる。しかも、マイクロ波加熱装置1の構成をより簡素にできる結果、マイクロ波加熱装置1の製造コストを、より低くできる。その上、マイクロ波加熱装置1は、マグネトロン4の出力を抑制することにより、反射マイクロ波を低減させる構成であり、アイソレータに反射マイクロ波を吸収させる構成ではない。このため、マグネトロン4の消費エネルギーをより小さくできる、よって、マイクロ波加熱装置1におけるエネルギーの利用効率を、より高くできる。
【0070】
また、アイソレータを用いて反射マイクロ波を吸収する構成では、アイソレータで吸収されるマイクロ波のエネルギーを正確に把握できないため、被処理物50に与えられたマイクロ波のエネルギーを正確に把握することも難しい。これに対して、マイクロ波加熱装置1では、アイソレータに反射マイクロ波が吸収される構成ではなく、且つ、反射マイクロ波も抑制される。よって、制御部9は、マグネトロン4からのマイクロ波の出力を基に、被処理物50に与えられるマイクロ波のエネルギーを、より正確に把握することができる。したがって、制御部9は、被処理物50の加熱制御をより精度よく行うことができる。
【0071】
さらに、制御部9は、漏洩マイクロ波が過大にならないようにマグネトロン4からのマイクロ波の出力を制御する。したがって、筐体2の外部にマイクロ波が漏洩することを抑制できる。これにより、マイクロ波加熱装置1の周囲の作業員にマイクロ波が照射されることを、より確実に抑制できる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限られない。本発明は、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0073】
(1)上述の実施形態では、漏洩マイクロ波の強さについてのしきい値th1が、固定値である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、漏洩マイクロ波の強さについてのしきい値th1が、被処理物50の材質などに応じて変化可能であってもよい。
図6は、本発明の変形例における、マイクロ波監視装置8、および、制御部9における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。
【0074】
以下に説明する処理は、たとえば、作業員による操作パネル29の操作に伴い、マイクロ波加熱装置1による被処理物50の加熱動作が開始されてから行われる。
【0075】
具体的には、マイクロ波監視装置8の漏洩マイクロ波検出部31は、漏洩マイクロ波を検出する(ステップS21)。次に、判定部32は、漏洩マイクロ波検出部31からの信号を読み込むとともに、マグネトロン4からのマイクロ波の出力を示す信号を、制御部から読み込む(ステップS22)。
【0076】
次に、判定部32は、マグネトロン4からのマイクロ波の出力と、漏洩マイクロ波の強さとの関係を示すグラフを作成する(ステップS23)。この場合、判定部32は、ステップS23の処理が行われる毎に、ステップS22で読み込んだマイクロ波の出力と、漏洩マイクロ波の強さとを示す点を上記のグラフに追加する。そして、判定部は、複数回に亘って行われたステップS23での処理によって追加された複数の点を基に、上記のグラフを作成する。
【0077】
次に、判定部32は、しきい値th1の有無を判定する(ステップS24)。具体的には、判定部は、ステップS23で作成されたグラフにおいて、チャンバ3に供給されるマイクロ波の強さの変化に対する漏洩マイクロ波の強さの変化の割合が変化する変曲点が、存在するか否かを判定する。そして、この変曲点がある場合、判定部32は、当該変曲点における漏洩マイクロ波の強さを、しきい値th1として設定する。一方、判定部32は、上記の変曲点が存在しない場合、しきい値th1が存在していないと判定する。
【0078】
次に、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えているか否かを判定する(ステップS25)。漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1以下である場合、または、しきい値th1が未だ存在していない場合(ステップS25でNO)、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1以下であることを示す監視結果を、制御部9に出力する(ステップS26)。
【0079】
上記の結果を受信した制御部9は、マイクロ波の出力が増加するように、マグネトロン4を制御する(ステップS27)。この場合、制御部9は、たとえば、マグネトロン4からのマイクロ波の出力を、当該マイクロ波の定格出力の数%分増加させる制御を行う。
【0080】
一方、漏洩マイクロ波の強さが、しきい値th1を超えている場合(ステップS25でYES)、判定部32は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えていることを示す監視結果を、制御部9に出力する(ステップS28)。
【0081】
上記の結果を受信した制御部9は、マイクロ波の出力調整を行う(ステップS29)。この場合のマグネトロン4からのマイクロ波の出力値Eは、前述した式と同じに設定される。
【0082】
このように、制御部9は、漏洩マイクロ波の強さがしきい値th1を超えている場合に、漏洩マイクロ波の強さに基づいて、マグネトロン4から発射されるマイクロ波の強さを設定する。
【0083】
このような構成であれば、マイクロ波加熱装置1は、被処理物50の材質などの特性に応じて、より最適な加熱処理を行うことができる。
【0084】
(2)また、上述の実施形態では、漏洩マイクロ波のしきい値として、単位面積当たりの漏洩マイクロ波の強さを例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。漏洩マイクロ波のしきい値として、単に、漏洩マイクロ波検出部31で検出された漏洩マイクロ波の強さの総量を用いてもよい。