(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ハーフラッチ位置及びフルラッチ位置でストライカを係合保持するラッチと、該ラッチと噛合することで、前記ストライカと前記ラッチのハーフラッチ位置及びフルラッチ位置での係合状態を維持するラチェットと有する噛合機構と、
前記噛合機構を収容するラッチケースと、
前記噛合機構を電動で動作させる駆動機構と、
を備えた車両用のバックドアロック装置であって、
前記ラッチケースは、前記噛合機構を上部が開口した収容部に収容するカバープレートと、前記カバープレートの上部前方を覆う本体ボディと、を有し、
前記駆動機構は、前記カバープレートの後方側に立設されたブラケットに保持され、
当該バックドアロック装置の車両の車体パネルへの取付状態において、前記ラッチケースは前記車体パネルに形成された取付孔の外側に配置され、前記ブラケット及び前記駆動機構は前記取付孔の内側に配置され、
前記本体ボディには、前記取付状態で前記取付孔の縁部に向かって突出し、該ラッチケースと該取付孔との間の隙間を隠すことで、前記駆動機構が前記隙間から外観上に露出することを防止する壁部が設けられていることを特徴とするバックドアロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るバックドアロック装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るバックドアロック装置1をバックドアDに取り付けた状態を模式的に示す側面図であり、バックドアDを全閉した状態を示している。
図2は、
図1に示すバックドアDを全開した状態での側面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るバックドアロック装置1は、四輪自動車の車両本体(車体)Bに設けたストライカSに噛合機構2を係合させることにより、車両本体Bに対してテールゲートと称されるバックドアDを閉じた状態に維持するものである。バックドアロック装置1は、バックドアDの底面を画成する板金である車体パネルDaに取り付けられ、電動の駆動機構4によって噛合機構2を作動させる電動開閉式のロック装置である。バックドアDは、車両本体Bの後端上縁部に支持してあり、左右方向に沿った軸心回りに回動させることにより、車両本体Bの後端部開口を開閉する。
【0018】
以下では、
図1に示すバックドアロック装置1のバックドアDへの取付方向における車内側(
図1中の右側となる車両前方側)を前方、車外側(
図1中の左側となる車両後方側)を後方、高さ方向を上下方向(上方及び下方)と呼んで説明する。これらの方向の定義は説明の便宜上のものであり、車両本体Bにおけるバックドアロック装置1の向きは、その取り付け位置等によって勿論変化する。
【0019】
図3は、
図1に示すバックドアロック装置1の側面図であり、
図4は、
図3に示すバックドアロック装置1を
図3中のIV矢視方向から見た図である。また、
図5は、
図1に示すバックドアロック装置1の正面図であり、
図6は、
図5に示すバックドアロック装置1の斜視図である。
【0020】
図3〜
図6に示すように、バックドアロック装置1は、上部が開口した収容部14を有するカバープレート10と、カバープレート10の上部前方を蓋する本体ボディ40と、カバープレート10の上部後方を蓋するバックプレート50と、カバープレート10の背面側に立設されるブラケット70とを備える。噛合機構2は、カバープレート10の収容部14に配置され、その上部が本体ボディ40及びバックプレート50によって蓋される。つまり、カバープレート10、本体ボディ40及びバックプレート50が、噛合機構2を収容するラッチケース6を構成する。駆動機構4は、ほとんどの構成要素がブラケット70に保持される。
【0021】
カバープレート10は、バックドアロック装置1のベースとなるもので、比較的板厚の大きな金属板によって成形されている。カバープレート10は、前端から後端に向かって次第に浅くなる凹状の収容部14を形成するプレート基部10aにストライカ進入溝11が設けられ、ストライカ進入溝11を挟む両側にラッチ軸12及びラチェット軸13が設けられる(
図4及び
図7参照)。カバープレート10の収容部14の両側部には、それぞれ取付片19が突設されている。各取付片19は、形成された一対の貫通孔に図示しない取付ボルトが挿通されることでバックドアDの車体パネルDaに対して固定される部分である。
【0022】
収容部14は、その内部に噛合機構2を構成するラッチ20及びラチェット30を収容する凹部である(
図7参照)。ストライカ進入溝11は、プレート基部10aの前端中央部から奥部に向けて形成された切欠であり、ストライカSが挿通できる幅に形成されている。ラッチ軸12及びラチェット軸13は、プレート基部10aの内面から突出して互いに平行に配置されている。ラッチ軸12にはラッチ20が回転可能に支持され、ラチェット軸13にはラチェット30が回転可能に支持されている(
図7参照)。
【0023】
ラッチ20は、
図7に示すように、略中央に形成された貫通孔にラッチ軸12が挿通される板状の部材である。ラッチ20は、外周面に開口する係合溝21と、係合溝21の右側に位置するフック部22と、係合溝21の左側に位置するストライカ当接部(フルラッチ係止部)23と、ストライカ当接部23の左側に位置する外周爪部(ハーフラッチ係止部)24とを有する。ラッチ20の上面であってラッチ軸12を挟んだ係合溝21の反対側には、ラッチ軸12を中心として周方向に延びる凸条20bが形成されている。ラッチ20は、係合溝21がストライカ進入溝11と交差するようにラッチ軸12の軸心回りに回転する。ラッチ20は、本体ボディ40との間に配置したラッチばね(図示せず)によってラッチ軸12を中心として
図7の反時計回り方向へ付勢されている。凸条20bには、収容部14内に配置されたハーフスイッチ(ハーフSW)17の検出部が接触することにより、後述するラッチ20の回転位置(アンラッチ位置、ハーフラッチ位置及びフルラッチ位置)、特にアンラッチ位置からハーフラッチ位置への切替状態とフルラッチ位置からアンラッチ位置への切替状態とが検出される。ハーフスイッチ17の検出結果は、後述するモータ150(セクタギア120)の回転制御に利用される。
【0024】
図6及び
図7に示すように、ラッチ20の上部におけるバックプレート50の上面には、ラッチ軸12の上端付近に回転可能に軸支されるラッチレバー110が設けられている。ラッチレバー110は、ラッチ20と回転不能に嵌合されており、ラッチ20と連係して一体的に回転する。ラッチレバー110は、駆動機構4によるクローズ動作時に使用されるものである。
【0025】
ラチェット30はラッチ20の回転位置を規制するものであり、
図7に示すように、略中央に形成された貫通孔にラチェット軸13が挿通される板片状の部材である。ラチェット30は、ラチェット軸13が挿通される貫通孔の外周に半径方向外方へ延出するラッチ噛合部31と、解除操作部32と、ストップ片34とを有する。ラチェット30は、ラチェット軸13の軸心回りに回転し、バックプレート50との間に配置したラチェットばね(図示せず)によってラチェット軸13を中心として
図7の時計回り方向へ付勢されている。ラッチ噛合部31は、ラチェット軸13から半径方向外方に延出し、ラッチ20のストライカ当接部23又は外周爪部24に噛合することにより、
図7(B)及び
図7(C)に示すように、ラッチ20の反時計回り方向の回転を規制する。ストップ片34は、ラッチ噛合部31や解除操作部32に対してラチェット軸13を挟んだ反対側の半径方向外方に延出しており、プレート基部10aの上面に突設された弾性部材等のストッパ16に当接することで、
図7におけるラチェット30の時計回り方向への回転を規制する。
【0026】
ここで、噛合機構2とストライカSとの係合動作について
図7を参照して説明する。
図7は、車両本体Bに設けたストライカSとラッチ20との係合状態及びそのときのラッチ20とラチェット30との噛合状態を模式的に示す平面図であり、
図7(A)は、ラッチ20がアンラッチ位置にある状態を示し、
図7(B)は、ラッチ20がハーフラッチ位置にある状態を示し、
図7(C)は、ラッチ20がフルラッチ位置にある状態を示している。
【0027】
先ず、
図7(A)に示すように、係合溝21の開口がプレート基部10aに形成したストライカ進入溝11の開口に合致し、係合溝21よりも右方側に位置するフック部22がストライカ進入溝11から退避した状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと係合していない。以下、ラッチ20がストライカSと係合していない
図7(A)に示す位置にある場合をラッチ20の「アンラッチ位置」という。ラッチ20がアンラッチ位置の場合、バックドアDは、バックドアDに設けた操作ハンドル(図示せず)等を操作しなくとも、開閉することができる。
【0028】
次いで、バックドアDを閉じると、バックドアロック装置1が車両本体Bに設けたストライカSに係合するように接近する。これにより、ラッチ20は、ストライカSと係合するのに従ってラッチ軸12を中心として時計回り方向(以下、「係合方向」という)に回転し、
図7(B)に示すように、フック部22がストライカ進入溝11の前端側から奥部側へと漸次移動しながらこれを横切る状態となる。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと後述するフルラッチ位置手前にて係合しているが、ラチェット30のラッチ噛合部31が外周爪部24に噛合しているので、反時計回り方向(以下、「開放方向」という)への回転が規制される。以下、ラッチ20が
図7(B)に示す位置にある場合をラッチ20の「ハーフラッチ位置」という。ラッチ20がハーフラッチ位置の場合、バックドアDは、操作ハンドル等を操作してラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。このとき、ハーフスイッチ17の検出部が凸条20bを検出することでラッチ20がハーフラッチ位置にあることを検出する。
【0029】
そして、ラッチ20がハーフラッチ位置からさらに時計回り方向へ回転すると、フック部22がストライカ進入溝11の奥部を横切ることによりストライカ進入溝11の開口が閉塞される。この状態の場合、ラッチ20は、ストライカSと完全に係合すると共に、ラッチ噛合部31がストライカ当接部23に当接しているので、開放方向への回転が規制される。以下、ラッチ20が
図7(C)に示す位置にある場合をラッチ20の「フルラッチ位置」という。ラッチ20がフルラッチ位置の場合、バックドアDは、バックドアオープンボタンDb(
図1及び
図2参照)等を操作して駆動機構4を駆動し、ラッチ20をアンラッチ位置へ切り換えなければ開くことができない。
【0030】
ラチェット30の解除操作部32は、
図7においてラチェット30を反時計回り方向であるラッチ20から離反する方向へ回転させてラッチ20への噛合状態を解除し、ラッチ20をアンラッチ位置へ戻す際の操作部として機能する。つまり、解除操作部32を操作することにより、
図7(B)及び
図7(C)に示される噛合機構2とストライカSとの係合状態(ラッチ20とラチェット30との噛合状態)を解除することができる。解除操作部32は、ラチェット軸13が挿通される貫通孔の外周から半径方向外方に延出しており、ラッチ噛合部31に隣接している。
【0031】
図3〜
図6に戻り、本体ボディ40は、プレート基部10aの上面に配設されたラッチ20及びラチェット30の上方から収容部14内に嵌合され、その後端側がバックプレート50によって保持されるものである。本体ボディ40は、ラッチ軸12及びラチェット軸13に対応する位置にそれぞれ形成された2つの軸挿通孔(図示せず)と、ストライカ進入溝11に対応する位置に形成された緩衝溝43とを有し、その前端側が緩衝溝43によって二股に分岐して突出した形状となっている。前記軸挿通孔は、ラッチ軸12及びラチェット軸13が嵌合する内径を有した貫通孔である。緩衝溝43は、本体ボディ40の前端中央部から基端に向けて設けた切欠であり、ストライカ進入溝11よりもわずかに狭い幅を有するように形成されている。緩衝溝43は、開口端部がストライカSを挿通させることができる大きさを有し、奥部に向けて幅が漸次狭くなるように形成されている。
【0032】
本体ボディ40の上面後部には、その幅方向略全長に渡って起立形成された正面板41aと、正面板41aの幅方向両側から後方に向かって屈曲形成された一対の側板41b,41bとを有する壁部41が設けられている。
図3に示すように、バックドアロック装置1は、バックドアDの車体パネルDaに取り付けられた際、ブラケット70及び駆動機構4が車体パネルDaに形成された取付孔Dcの内側(バックドアDの内部)に配置され、ラッチケース6(カバープレート10、本体ボディ40及びバックプレート50)及び噛合機構2が取付孔Dcの外側(バックドアDの外部)に配置される。
【0033】
このようなバックドアロック装置1のバックドアDへの取付状態において、ラッチケース6は、
図3に示すように車体パネルDaに対して傾斜姿勢となる。この際、壁部41の正面板41aが取付孔Dcの縁部に向かって突出し、ラッチケース6と取付孔Dcとの間の隙間Gを覆って隠すように配置される。これにより、
図2に示すように開かれたバックドアDを下から見上げた場合、つまり
図3中の矢印IV方向からバックドアDに取り付けられたバックドアロック装置1を見た場合、正面板41aによって隙間Gが目隠しされ、隙間Gの内側にある駆動機構4等がほとんど見えなくなる(
図4も参照)。さらに、壁部41の側板41bが取付孔Dc内に挿入され、隙間Gの側部を隠すように配置される。これにより、
図2に示すように開かれたバックドアDを斜め下から見上げた場合の隙間Gも側板41bによって目隠しされる。
【0034】
図3に示すように、本体ボディ40は、内部に噛合機構2が設けられていない前端角部に面取り形状45aを有する。これにより、
図3中に2点鎖線で示す部分45bの分だけ本体ボディ40が小型軽量化されている。なお、本体ボディ40にこのような面取り形状45aを設けた場合、隙間Gを下側から覗き易くなるという問題を生じるが、本実施形態では面取り形状45aの後方に壁部41を設けているため、この問題の発生を防ぐことができる(
図3参照)。
【0035】
バックプレート50は、本体ボディ40を配設した収容部14の中央部付近を覆う板状の部材であり、金属板によって成形されている。バックプレート50は、ラッチ軸12及びラチェット軸13に対応する位置にそれぞれ軸取付孔(図示せず)が形成され、ラッチ軸12を嵌挿する軸取付孔が形成された面よりもラチェット軸13を嵌挿する軸取付孔が形成された面が一段低くなっている。バックプレート50の両側部には、それぞれ取付片51が突設されている。各取付片51は、形成された一対の貫通孔に図示しない取付ボルトが挿通されることで、カバープレート10の取付片19と共に車体パネルDaに対して共締め固定される部分である。
【0036】
ブラケット70は、噛合機構2の後方において上下方向に起立した板状の部材であり、金属板によって成形されている。ブラケット70は、
図5及び
図6に示すように、正面視で略三角形状をなしており、下部両側部に屈曲形成された一対の取付片71,71が、カバープレート10及びバックプレート50の両側部にそれぞれ設けられた取付片19,51間に挟持されることにより、カバープレート10及びバックプレート50と一体的に固定される。
【0037】
次に、噛合機構2を電動で開閉作動させるクローズ/オープン機構として機能する駆動機構4について、
図5、
図6、
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は、駆動機構4の構成を示す斜視図であり、
図9は、駆動機構4を構成するセクタギア120を背面側から見た斜視図である。
【0038】
駆動機構4は、ハーフラッチ位置(
図7(B)参照)にあるラッチ20を回動させてフルラッチ位置(
図7(C)参照)へと移動させるクローズ動作と、ラッチ20と噛合しているラチェット30を回動させることでラッチ20とラチェット30との噛合状態を解除するオープン動作とを実行するものである。駆動機構4は、噛合機構2の上部位置においてブラケット70に設けられている。
【0039】
図5、
図6、
図8及び
図9に示すように、駆動機構4は、ラッチレバー110と、セクタギア(回動部材)120と、オープンレバー130と、ピニオンギア140と、モータ(駆動源)150とを備える。駆動機構4は、セクタギア120とピニオンギア140がブラケット70の前面に設けられ、モータ150がブラケット70の背面に設けられ、ラッチレバー110がバックプレート50の上面に設けられ、オープンレバー130がバックプレート50の後端から上方に突設された取付部材56の背面に設けられている。
【0040】
ラッチレバー110は、
図6に示すように、両端に円弧部を有する長方形状の板部材であり、一端側にラッチ軸12の上端付近が回転不能に嵌挿され、これによりバックプレート50の上面上でラッチ軸12を中心としてラッチ20と共に回転可能である。ラッチレバー110の他端側には、上方へと突出する当接部114が設けられている。当接部114は、
図5に示すように、セクタギア120のギア部121よりも多少下方となる位置まで起立した円柱形のピン(シャフト)である。
【0041】
セクタギア120は、
図5及び
図6に示すように、バックプレート50の上面と同程度の高さ位置でブラケット70に固着されたセクタギア軸122に対して回動可能に軸支されている。セクタギア120は、バックプレート50とブラケット70の間に配設され、前後方向(板厚方向)に段差を有する扇形形状の薄板部材であり、その外周面に形成されたギア部121と、正面視で前面の左側方位置から前方へと突出する押圧部124とを有する。
【0042】
ギア部121には、モータ150からの駆動力が図示しないギア機構等を介して伝達されて回転するピニオンギア140が噛合している。押圧部124は、
図5及び
図6に示すように、セクタギア120の前面から前方へと水平方向に突出した円形状のピン(シャフト)である。押圧部124は、ラッチレバー110の回転位置にかかわらず当該ラッチレバー110の当接部114の周面に当接可能な長さに設定されている。
【0043】
図5、
図6、
図8及び
図9に示すように、セクタギア120の前面においてギア部121よりやや下方となる位置には、カム面128aを有するカム部材128が突設されている。カム部材128は、セクタギア120に対し、ねじ119によって固定されると共に、2箇所のボス123,123が嵌合されることにより回り止めされている(
図9参照)。これにより、カム部材128は、セクタギア120と一体的に回動し、カム面128aは、セクタギア120の回動軌跡に沿った円弧形状を有する。つまり、カム面128aの円弧形状は、セクタギア120の回動方向と平行している。カム面128aは、ブラケット70に取り付けられたクローズスイッチ(クローズSW)125及びオープンスイッチ(オープンSW)127の各検出部125a,127aと摺接可能である。
【0044】
クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127は、セクタギア120のカム面128aを検出することにより、セクタギア120の回動位置(中立位置、クローズ動作又はオープン動作)を検出する。クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127は、カム面128aの幅方向に段違いで設けられている(
図8参照)。クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127の検出結果は、モータ150(セクタギア120)の回転制御に利用される。本実施形態の場合、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127には、先端半球状の検出部125a,127aがカム面128aとの当接によって進退するプッシュボタン式の検出スイッチを用いている。
【0045】
モータ150は、
図5及び
図6に示すように、ブラケット70の背面側でその長手方向が水平方向(左右幅方向)に沿った状態で固定されている。モータ150の駆動力は、ギアケース151に収容された図示しないギア機構等を介してピニオンギア140に伝達される。ピニオンギア140は、ブラケット70の上部中央から前方に突出し下方へと屈曲した取付部141の背面側で、図示しないピニオン軸に回転可能に軸支され、これによりセクタギア120の外周面にあるギア部121に噛み合いしている。モータ150からの駆動力によってピニオンギア140を回転させることで、セクタギア120をセクタギア軸122を中心として回動させることができる。
【0046】
オープンレバー130は、ラッチ20とラチェット30との噛合を解除する解除手段を構成するものであり、
図5及び
図6に示すように、取付部材56の背面側に突出するオープンレバー軸101に軸支されることにより、取付部材56とセクタギア120との間で回転可能に設けられている。オープンレバー130は、取付部材56との間に設けられたオープンレバーばね138により、
図5及び
図6中で常時反時計回り方向に回転する付勢力を受けている。
【0047】
オープンレバー130におけるオープンレバー軸101の下方には、その側方にあるセクタギア120の押圧部124が当接する入力部132が設けられている(
図5参照)。セクタギア120をドア開放方向(
図5中で反時計回り方向)に回動させた際、オープンレバー130の入力部132が押圧部124によって押圧される。そうすると、オープンレバーばね138の付勢力に抗してオープンレバー130が
図5中で時計回り方向に回転し、その下端に設けられた図示しない出力部がラチェット30の解除操作部32を左方へ押圧し、ラッチ20を
図7(A)に示すアンラッチ位置へと切り換える。
【0048】
オープンレバー130におけるオープンレバー軸101の上方には、補助入力アーム136が突出している。例えば、電気系統の故障やバッテリの消耗等によってモータ150に電源供給ができず、バックドアロック装置1をアンラッチすることができない非常時に、バックドアDの車内側から図示しない蓋体等を取り外して補助入力アーム136を手動で回動操作することにより、ラッチ20とラチェット30との噛合状態を手動で解除することができる。
【0049】
次に、以上のように構成された駆動機構4によるクローズ動作及びオープン動作について、
図10〜
図12の動作図及び
図13のタイムチャートを参照しながら説明する。
図10は、電動でオープン動作した場合の駆動機構4の状態を示す正面説明図であり、
図11は、中立位置にある場合の駆動機構4の状態を示す正面説明図であり、
図12は、電動でクローズ動作させた場合の駆動機構4の状態を示す正面説明図である。
【0050】
先ず、バックドアDが車両本体Bに対して開かれた状態(
図13中の時刻t1以前。つまり
図13中の時刻t7以後)では、ハーフスイッチ17、クローズスイッチ125、オープンスイッチ127は、いずれも作動(ON)状態にあり、モータ150は停止されている。この状態では、セクタギア120は中立位置(
図11参照)にあり、ラッチ20はアンラッチ位置にある(
図7(A)参照)。
【0051】
この状態からバックドアDを閉じ操作し、バックドアDが半開状態となると、車両本体B側に設けたストライカSがストライカ進入溝11に進入し、やがてストライカSがラッチ20の係合溝21に当接する。その結果、ラッチ20は、図示しないラッチばねの付勢力に抗して係合方向に回転する。この状態からさらにバックドアDを閉操作すると、ラッチ20が係合方向へとさらに回転し、ラチェット30のラッチ噛合部31がラッチ20の外周爪部24に係合し、ハーフラッチ位置になる(
図7(B)参照)。
【0052】
この間、
図13中の時刻t1において、ハーフスイッチ17が不作動(OFF)状態となり、ラッチ20がハーフラッチ位置にあることが検出されるため、モータ150がクローズ方向に回転開始し、セクタギア120もクローズ方向(
図11中で時計回り方向)に回動し始める。
【0053】
そうすると、セクタギア120の押圧部124がラッチレバー110の当接部114に当接すると共にこれを押圧し(
図12参照)、ラッチレバー110を
図7中で時計回り方向へと回動させる。その結果、ラッチレバー110と連係してラッチ20が係合方向にさらに回転し、ラッチ噛合部31がストライカ当接部23に当接してフルラッチ位置となり、フック部22がストライカ進入溝11の奥部を横切ってストライカ進入溝11の開口が閉塞される(
図7(C)参照)。
【0054】
この間、
図13中の時刻t2において、オープンスイッチ127が不作動(OFF)となる。さらにその後の時刻t3において、クローズスイッチ125が不作動(OFF)となると(
図12参照)、ラッチ20がフルラッチ位置にあることが検出されるため、モータ150を逆方向に回転させ、セクタギア120を
図12中で反時計周り方向に回動させて、クローズ動作状態から中立位置に戻す動作を行う。
【0055】
この動作中、時刻t3〜t4間において、クローズスイッチ125は再び作動(ON)状態となる。続いてオープンスイッチ127が作動(ON)状態となると(時刻t4)、セクタギア120が中立位置に戻ったことが検出され(
図11参照)、バックドアDは全閉状態で保持される。
【0056】
このように、駆動機構4では、ハーフラッチ位置にあるラッチ20をフルラッチ位置へと電動で移動させ、バックドアDを閉じることができる。
【0057】
続いて、
図13中の時刻t5において、バックドアオープンボタンDbが操作されて作動(ON)状態となると、モータ150がオープン方向に回転開始し、セクタギア120もオープン方向(
図11中で反時計回り方向)に回動し始め、クローズスイッチ125が不作動(OFF)状態となる。
【0058】
その後、セクタギア120がさらにオープン方向に回動すると(
図10参照)、押圧部124がオープンレバー130の入力部132を押圧するため、オープンレバー130がオープンレバーばね138の付勢力に抗して
図5中で時計回り方向に回動されてラチェット30の解除操作部32を押圧し、ラッチ20とラチェット30との噛合が解除される。これにより、ラッチ20が
図7(A)に示すアンラッチ位置に切り換わる。
【0059】
そして時刻t6において、ハーフスイッチ17が作動(ON)状態となり、クローズスイッチ125に遅れてオープンスイッチ127も不作動(OFF)状態となると(
図10参照)、ラッチ20がアンラッチ位置にあることが検出されるため、モータ150を逆方向に回転させ、セクタギア120を
図10中で時計周り方向に回動させて、オープン動作状態から中立位置に戻す動作を行う。
【0060】
この動作中、時刻t6〜t7間において、オープンスイッチ127は再び作動(ON)状態となる。続いてクローズスイッチ125が作動(ON)状態となると(時刻t7)、セクタギア120が中立位置に戻ったことが検出され(
図11参照)、その後は手動でバックドアDを開き操作することでバックドアDを全開状態にすることができる。
【0061】
このように、駆動機構4では、フルラッチ位置にあるラッチ20をアンラッチ位置へと電動で移動させ、バックドアDを開くことができる。
【0062】
以上のように、本実施形態に係るバックドアロック装置1によれば、車体パネルDaへの取付状態において、噛合機構2を収容するラッチケース6は車体パネルDaに形成された取付孔Dcの外側に配置される一方、駆動機構4を保持するブラケット70は取付孔Dcの内側に配置される。ここで、ラッチケース6には、バックドアDへの取付状態で取付孔Dcの縁部に向かって突出し、ラッチケース6と取付孔Dcとの間の隙間Gを隠す壁部41が設けられている。
【0063】
これにより、
図1に示すように開かれたバックドアDを、例えば
図3中の矢印IV方向から見上げた場合であっても、壁部41の正面板41aによって隙間Gが目隠しされる。このため、上記した従来技術のようにラッチケース6を覆うための樹脂カバーを別途設けることなく、隙間Gから車体パネルDa内側にある駆動機構2等の構成部品を外観上から隠すことができる。従って、バックドアロック装置1のバックドアDへの取付状態での外観品質を向上させることができる。しかも前記樹脂カバーが不要となることから、バックドアロック装置1の部品点数を削減して製造コストや重量を低減することができ、小型化も可能となる。
【0064】
特に、当該バックドアロック装置1では、
図3に示すように、ラッチケース6が車体パネルDaの取付孔Dcが形成された取付面に対して傾斜姿勢で取り付けられるため、前記隙間Gの発生を回避することは難しい事情がある。そこで、上記のように本体ボディ40に壁部41を設けることで、隙間Gの露出を最小限に抑制し、バックドアロック装置1のバックドアDへの取付部での見栄えを向上させている。
【0065】
この場合、壁部41は、取付孔Dcから外側に突出したラッチケース6(本体ボディ40)の一面(前面)側に設けられ、ラッチケース6の幅方向全長に渡って起立形成された正面板41aを有する。これにより、バックドアDを見上げた際に大きく目立つ幅方向の隙間Gを正面板41aによって確実に目隠しすることができる。
【0066】
さらに、壁部41は、正面板41aの幅方向両側から屈曲形成され、取付孔Dcの内側に挿入される一対の側板41b,41bを有する。これにより、バックドアロック装置1を側方から視認した際の隙間Gも側板41bによって目隠しすることができる。
【0067】
また、本実施形態に係るバックドアロック装置1によれば、ラッチレバー110の当接部114を押圧可能な押圧部124を有し、モータ150によって回動するセクタギア120には、その回動軌跡に沿った円弧形状のカム面128aが設けられる。また、このカム面128aと対向配置され、カム面128aと当接して検出部125a、127aが進退することにより当該バックドアロック装置1(駆動機構4)のクローズ動作又はオープン動作の作動状態を検出するプッシュボタン式の検出スイッチであるクローズスイッチ125又はオープンスイッチ127を備える。
【0068】
これにより、セクタギア120の回動が繰り返され、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127の検出部125a,127aとカム面128aとが繰り返し摺接された場合であっても、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127の破損や誤作動の発生を可及的に回避することができる。このため、バックドアロック装置1の耐久性及び信頼性を高めることができる。
【0069】
ここで、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127はカム面128aに沿って並ぶように設けられ、一方のクローズスイッチ125がクローズ動作の検出に用いられ(
図13中の時刻t3参照)、他方のオープンスイッチ127がオープン動作の検出に用いられる(
図13中の時刻t6参照)。従って、仮にクローズスイッチ125又はオープンスイッチ127のいずれかが故障した場合にも、セクタギア120が中立位置へ移動後、停止するため大きな問題を生じることがない。なお、スイッチがいずれか一方のみで構成されている場合は、セクタギア120を中立位置で停止させることができなくなる。
【0070】
この場合、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127のカム面128aへの当接部となる検出部125a,127aは、カム面128aの円弧方向に沿って設けられることによりセクタギア120の回動軌跡上に配置されている。このため、検出動作が一層円滑なものとなり、また検出部125a,127aのカム面128aとの摺接時の負荷も最小限となり、その耐久性を一層高めることができる。
【0071】
また、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127は、カム面128aの幅方向に位置ずれして設けられているため(
図8参照)、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127とカム面128aとの当接タイミングの設定自由度が向上し、所望の検出タイミングでクローズスイッチ125及びオープンスイッチ127を作動させることができる。
【0072】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、セクタギア120に設けられたカム面128aと当接して進退することによりクローズ動作又はオープン動作の作動状態を検出するプッシュボタン式の検出スイッチとして、クローズスイッチ125及びオープンスイッチ127を用いた構成を例示したが、この検出スイッチにはクローズスイッチ125又はオープンスイッチ127のいずれか1個のみが用いられてもよい。