特許第6361058号(P6361058)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361058
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】エアバッグリッド補強構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/215 20110101AFI20180712BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60R21/215
   B60R21/205
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-182324(P2014-182324)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-55706(P2016-55706A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(74)【代理人】
【識別番号】100180068
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 怜史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸孝
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−220018(JP,A)
【文献】 特開2008−201325(JP,A)
【文献】 特開2004−106646(JP,A)
【文献】 特開2001−122071(JP,A)
【文献】 特開2002−255001(JP,A)
【文献】 特開2001−301559(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0131844(US,A1)
【文献】 特開平07−017349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに設けられた、エアバッグ本体が膨出する開口部となるリッド部の裏面側に、該リッド部を補強するための補強ドア部材が取付けられ、
該補強ドア部材が、ヒンジ部を介して、インストルメントパネルのリッド部よりも外側の部分の裏面側に固定される固定部材に連結されたエアバッグリッド補強構造であって、
前記補強ドア部材が、前記ヒンジ部とは反対側の縁部に、補強ドア部材の質量を軽減させる質量軽減部を有することを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載のエアバッグリッド補強構造であって、
前記質量軽減部が、前記補強ドア部材の前記ヒンジ部とは反対側の縁部に形成された切込状縁部であり、
前記リッド部の縁部と前記補強ドア部材の前記切込状縁部との間に、前記補強ドア部材によって補強されない非裏張部が設けられたことを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【請求項3】
請求項2に記載のエアバッグリッド補強構造であって、
前記補強ドア部材が、切込状縁部の幅方向の両側部に、前記非裏張部の側へ延びて、リッド部の両側部の開裂時の欠損を防止する欠損防止用突出部を有することを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のエアバッグリッド補強構造であって、
前記補強ドア部材が、切込状縁部の幅方向の中央部に、前記非裏張部の側へ延びて、リッド部が開成される際の起点を設定する開成起点設定用突出部を有することを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のエアバッグリッド補強構造であって、
前記質量軽減部として、補強ドア部材に薄肉部が設けられたことを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のエアバッグリッド補強構造であって、
前記質量軽減部として、補強ドア部材に抜孔部が設けられたことを特徴とするエアバッグリッド補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアバッグリッド補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。そして、このインストルメントパネルの助手席側の部分には、助手席用のエアバッグ装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このエアバッグ装置は、緊急時に袋状のエアバッグ本体を展開させるエアバッグモジュールと、展開するエアバッグ本体の押圧力によって開成されることによりエアバッグ本体を車室内の助手席側へ向けて膨出させるリッド部と、を備えている。
【0004】
このリッド部は、例えば、インストルメントパネルの裏面側に、リッド部の形状に沿って、表面に達しない深さの開裂線を形成することによって形成されている。
【0005】
そして、インストルメントパネルの裏面側には、上記したリッド部を補強するための補強部材が取付けられる。
【0006】
この補強部材は、例えば、リッド部の裏面側に固定される補強ドア部と、リッド部よりも外側の部分の裏面側に固定される外周固定部と、この外周固定部および補強ドア部の間を連結するヒンジ部と、を一体に有するものなどとされる。
【0007】
このような構成によれば、緊急時に、エアバッグモジュールに収容されたエアバッグ本体が展開されると、エアバッグ本体は、展開の圧力によってインストルメントパネルに形成されたリッド部を、補強ドア部を介して押圧し、リッド部を開成させる。この際、リッド部とその裏面側に固定された補強ドア部とがヒンジ部を中心として回動される。これにより、エアバッグ本体は、インストルメントパネルの内部から、リッド部の開成によってできた開口部を通して車室内へ膨出され、所定位置に着座している助手席の乗員の体を受け止めて、乗員を保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許 US8,424,905 B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記エアバッグリッド補強構造には、以下のような問題があった。
即ち、補強部材のヒンジ部には、リッド部の開成によってリッド部と補強ドア部とが回動する時に、大きな慣性力が作用される。そのため、リッド部や補強ドア部の質量が大きい程ヒンジ部に作用する負荷が大きくなるので、その分、ヒンジ部の強度を上げる必要が生じるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を解決することを、主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、
インストルメントパネルに設けられた、エアバッグ本体が膨出する開口部となるリッド部の裏面側に、該リッド部を補強するための補強ドア部材が取付けられ、
該補強ドア部材が、ヒンジ部を介して、インストルメントパネルのリッド部よりも外側の部分の裏面側に固定される固定部材に連結されたエアバッグリッド補強構造であって、
前記補強ドア部材が、前記ヒンジ部とは反対側の縁部に、補強ドア部材の質量を軽減させる質量軽減部を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上記質量軽減部によって、補強ドア部材やリッド部などの可動部分を軽量化し、ヒンジ部に作用される負荷を軽減することができる、という作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態の実施例にかかるエアバッグリッド補強構造を備えたインストルメントパネルの縦断面図である。
図2図1のエアバッグリッド補強構造の斜視図である。
図3図2のフロントウインドウガラス側の補強ドア部材を下側から見た斜視図である。
図4図2の乗員側の補強ドア部材を下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図4は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0015】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネル1が設けられている。このインストルメントパネル1の助手席側の部分に対して、助手席用のエアバッグ装置2を設ける。
【0017】
このエアバッグ装置2は、緊急時に袋状のエアバッグ本体3を展開させるエアバッグモジュール4と、展開するエアバッグ本体3の押圧力によって開成されることによりエアバッグ本体3を車室内の助手席側へ向けて膨出させるリッド部5と、を備えている。
【0018】
このリッド部5は、例えば、インストルメントパネル1の裏面側に、リッド部5の形状に沿って、表面に達しない深さの開裂線6を形成することによって形成されている。
【0019】
ここで、インストルメントパネル1は、フロントウインドウガラス11の下方に設置される大型の樹脂パネルである。また、インストルメントパネル1の内部には、車幅方向12(図2参照)へ延びる金属製の車体強度部材13が配設されている。エアバッグモジュール4は、車体強度部材13に取付けられたブラケット14に、その下部を固定される。この場合、インストルメントパネル1は、例えば、芯材15と表皮材16とを有する2層構造のものとされている。但し、インストルメントパネル1の構成は、これに限るものではない。
【0020】
また、リッド部5は、車両前後方向17に開く両開き(二枚開き)のものとされている。但し、リッド部5は、片開き(一枚開き)のものなどであっても良い。開裂線6は、リッド部5が両開きの場合、平面視で、「H」字状や、「日」字状のものなどとされる。また、リッド部5が片開きの場合、平面視で、「U」字状や、「ロ」字状のものなどとされる。上記した各開裂線6は、車両前後方向17へ延びる縦開裂線部と、車幅方向12へ延びる横開裂線部とを組み合わせて構成されている。
【0021】
そして、上記したリッド部5は、以下のようなエアバッグリッド補強構造によって補強されている。
【0022】
(1a)インストルメントパネル1に設けられた、エアバッグ本体3が膨出する開口部となるリッド部5の裏面側に、このリッド部5を補強するための補強ドア部材21が取付けられる。
この補強ドア部材21が、ヒンジ部22を介して、インストルメントパネル1のリッド部5よりも外側の部分の裏面側に固定される固定部材23に連結される(図2図4を併せて参照)。
【0023】
この場合、補強ドア部材21と固定部材23とは、硬質樹脂によって構成されている。またヒンジ部22は、樹脂製のネット部材によって構成されている。この樹脂製のネット部材は、柔軟性が高く、特に、高温時などにおける伸びや強度の低下が少なく、また、引張などに強くて千切れ難いという特性を有しており、温度変化に拘わらずリッド部5の回転半径を一定に保つことが可能である。これらは、例えば、ヒンジ部22となるネット部材をインサートした金型に、補強ドア部材21および固定部材23となる溶融樹脂を注入することによって、一体に成形(インサート成形)される。なお、一般的には、補強ドア部材21とヒンジ部22と固定部材23とを同一のエラストマーなどのゴム系樹脂材料によって一体に成形して成る一体型の補強部材が用いられている。
【0024】
補強ドア部材21は、リッド部5の裏面に振動溶着によって取付けられる。そのために、補強ドア部材21の上面には、振動溶着用リブ24が設けられる。また、固定部材23は、インストルメントパネル1、または、インストルメントパネル1の裏面側に取付けられた補強パネル25に対し、超音波カシメによって取付けられる。固定部材23には、超音波カシメ用の孔部27(図3または図4参照)が設けられる。また、上記した補強パネル25は、インストルメントパネル1に対し、例えば、振動溶着などによって取付けられる(振動溶着部26)。インストルメントパネル1または補強パネル25の裏面側には、超音波カシメ用の突起部28(カシメ部)が設けられる。
【0025】
(1b)そして、図2図4に示すように、上記補強ドア部材21が、上記ヒンジ部22とは反対側の縁部に、補強ドア部材21の質量を軽減させる質量軽減部29を有するものとされる。
【0026】
(2)より具体的には、上記質量軽減部29が、上記補強ドア部材21の上記ヒンジ部22とは反対側の縁部に形成された切込状縁部31とされる。
そして、上記リッド部5の縁部と上記補強ドア部材21の上記切込状縁部31との間に、上記補強ドア部材21によって補強されない非裏張部32が設けられる。
【0027】
ここで、切込状縁部31は、補強ドア部材21のヒンジ部22とは反対側の縁部(反ヒンジ側縁部)を、ヒンジ部22の同じ側の縁部(反ヒンジ側縁部)とほぼ平行になるように切り込んで、奥側へ引っ込ませたような形状のものとされる。
【0028】
一般に、補強ドア部材21のヒンジ部22とは反対側の縁部は、リッド部5の反ヒンジ側縁部とほぼ同じ位置に形成される。或いは、上記反対側の縁部は、リッド部5に補強ドア部材21を取付けた後に開裂線6を形成するのに必要な僅かな距離(開裂線形成用距離)だけズラした位置に形成される。この僅かな距離は、熱刃や超音波カッターやレーザーカッターなどの開裂線形成装置による加工に必要な距離や、インストルメントパネル1および補強ドア部材21の寸法精度や、インストルメントパネル1に対する補強ドア部材21の取付位置精度などを考慮して定められるものであるが、ほぼ数ミリ程度の僅かなものであるため、実質的に位置がほぼ揃ったものと見なせるような位置のズレである。
【0029】
これに対し、この実施例の場合には、切込状縁部31は、リッド部5の反ヒンジ側縁部に対して上記したような数ミリ程度の僅かな距離(開裂線形成用距離)だけ位置をズラせたものと比べると、(格段にまたは桁違いに)大きく切込んだ(または位置を引っ込めた)ようなものとされる。この切込状縁部31の切込量(または引込量)は、リッド部5の開成に支障が生じない範囲で、可能な限り大きくなるように、シミュレーションやトライアンドエラーなどを行って決定される。具体的には、切込量は、5mm以上、好ましくは、10mm以上のものとされる。或いは、切込量は、リッド部5の車両前後方向17の寸法の、概ね、1割〜4割程度にも及ぶような大きさのものとされる。
【0030】
リッド部5の非裏張部32は、インストルメントパネル1の一般的な肉厚と同じ一定の肉厚のものとされる。但し、必要な場合には、非裏張部32に対して、一体的に補強リブを設けることもできる。
【0031】
上記に加え、質量軽減部29として、上記と同様の切込状縁部33および非裏張部34を、補強ドア部材21のヒンジ部22側の縁部に対しても設けることができる。なお、質量軽減によるヒンジ部22の負担軽減の効果については、回動中心から離れた反ヒンジ側縁部に切込状縁部31を設ける方が大きくなる。
【0032】
(3)上記補強ドア部材21が、切込状縁部31の幅方向の両側部に、上記非裏張部32の側へ延びて、リッド部5の両側部の開裂時の欠損を防止する欠損防止用突出部35を有するものとされる。
【0033】
ここで、リッド部5の両側部の開裂時の欠損は、リッド部5の反ヒンジ側縁部の両側部(開裂線6の縦開裂線部と横開裂線部とがほぼ直角に交わるコーナー部分)に生じるショートカット割れのような、開裂線6に沿わない斜めの割れのことである。欠損防止用突出部35は、上記したコーナー部分へ向かって延びる先細り状のものなどとされる。より具体的には、先細り状の欠損防止用突出部35は、先端に横開裂線部に沿った短い直線部を有し、内側面に切込状縁部31や直線部に対して45°程度の角度となる比較的緩い傾斜部を有するものとされる。直線部と傾斜部とのコーナー部分などには、アール部を設けるようにしても良い。欠損防止用突出部35は、切込状縁部33を設けたことによって開裂時に欠損が生じる可能性があるリッド部5に対して設けるようにする。
【0034】
この場合、欠損防止用突出部35は、フロントウインドウガラス11側のリッド部5のみに設けるようにしている。これは、エアバッグモジュール4が、フロントウインドウガラス11側のリッド部5の下側に設置されて距離的にフロントウインドウガラス11側のリッド部5の方に近くなっていること、また、エアバッグモジュール4は車室内乗員側へ向けて後傾状態に配置されているが、この際、二枚のリッド部5の境界部よりも僅かにフロントウインドウガラス11側の部分を狙うように設定していること、などによって、乗員側のリッド部5よりも若干当たりが強くなるので、欠損防止用突出部35をフロントウインドウガラス11側のリッド部5に設けるようにすれば、最低限の目的を達成することができると考えられるからである。但し、必要な場合には、欠損防止用突出部35は、フロントウインドウガラス11側のリッド部5に対して設けるようにしても良いし、または、両方のリッド部5に対して設けるようにしても良い。
【0035】
(4)上記補強ドア部材21が、切込状縁部31の幅方向の中央部に、上記非裏張部32の側へ延びて、リッド部5が開成される際の起点を設定する開成起点設定用突出部38を有するものとされる。
【0036】
ここで、開成起点設定用突出部38は、リッド部5の反ヒンジ側縁部の幅方向(車幅方向12)の中央部へ向かって延びる先細り状のものなどとされる。より具体的には、先細り状の開成起点設定用突出部38は、先端に横開裂線部に沿った短い直線部を有し、両側面に切込状縁部31や直線部に対して45°程度の角度となる比較的緩い傾斜部を有するものとされる。直線部と傾斜部とのコーナー部分などには、アール部を設けるようにしても良い。開成起点設定用突出部38は、少なくとも一方または両方のリッド部5に対して設けるようにする。この場合には、(3)と同様の理由により、フロントウインドウガラス11側のリッド部5のみに設けるようにしている。
【0037】
(5)上記質量軽減部29として、補強ドア部材21に薄肉部41を設けるようにしても良い。
【0038】
ここで、薄肉部41は、補強ドア部材21の全面に対して設けても良いし、または、補強ドア部材21に部分的に設けても良い。薄肉部41を形成する場合、必要に応じて、薄肉部41に強度確保用の補強リブ42を設けるようにする。図では、補強ドア部材21の全面を薄肉部41とすると共に、薄肉部41とされた補強ドア部材21の裏面全面に対して、補強リブ42を設けるようにしている。リッド部5が二枚開きの場合、薄肉部41は、少なくとも一方または両方のリッド部5に対して設けるようにする。この場合には、両方のリッド部5に対して設けるようにしている。
【0039】
なお、上記した薄肉部41は、固定部材23に対して設けるようにしても良い。
【0040】
(6)上記質量軽減部29として、補強ドア部材21に抜孔部46を設けるようにしても良い。
【0041】
ここで、抜孔部46は、補強ドア部材21に対して軽量化のために部分的に設けられる貫通部である。リッド部5が二枚開きの場合、抜孔部46は、少なくとも一方または両方のリッド部5に対して設けるようにする。この場合には、抜孔部46を、左右二箇所の位置などに設けるようにしている。但し、抜孔部46の形成位置や形成個数などについては、これに限るものではない。
【0042】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0043】
(1)緊急時に、エアバッグモジュール4に収容されたエアバッグ本体3が展開される。すると、エアバッグ本体3は、展開の圧力によってインストルメントパネル1に形成されたリッド部5を、補強ドア部材21を介して押圧し、リッド部5を開成させる。この際、リッド部5とその裏面側に固定された補強ドア部材21とが、ヒンジ部22を中心として回動される。これにより、エアバッグ本体3は、インストルメントパネル1の内部から、リッド部5の開成によってできた開口部を通して車室内へ膨出される。そして、エアバッグ本体3は、所定位置に着座している乗員の体を受け止めて、乗員を保護する。
【0044】
より具体的には、インストルメントパネル1には、エアバッグ本体3が膨出する開口部となるリッド部5が設けられている。そして、このリッド部5は、補強ドア部材21によって補強されている。この補強ドア部材21には、ヒンジ部22を介して固定部材23が取付けられている。補強ドア部材21は、リッド部5の裏面側に固定されて、リッド部5を補強すると共に、リッド部5の開成を補助する。固定部材23は、インストルメントパネル1におけるリッド部5よりも外側の部分(前縁部や後縁部など)の裏面側に固定されて、開成されたリッド部5および補強ドア部材21をインストルメントパネル1に繋ぎ止めるように機能する。ヒンジ部22は、固定部材23と補強ドア部材21との間を連結して、リッド部5が開成する際の回動の中心となるように機能する。
【0045】
そして、補強ドア部材21のヒンジ部22とは反対側の縁部に質量軽減部29を設けた。これにより、補強ドア部材21やリッド部5などの可動部分の軽量化を図ることが可能となる。その結果、リッド部5が開成する際にリッド部5や補強ドア部材21などの可動部分の慣性によってヒンジ部22に作用される負荷が軽減されるので、ヒンジ部22の強度を過大に設定する必要がなくなると共に、ヒンジ部22を、余裕を持って機能させることができるようになる。
【0046】
(2)質量軽減部29として補強ドア部材21に切込状縁部31を形成した。そして、リッド部5の縁部に非裏張部32を設けた。このようにすることにより、補強ドア部材21を確実に軽量化することができる。
【0047】
(3)補強ドア部材21が、切込状縁部31の幅方向の両側部に欠損防止用突出部35を備えた。そして、エアバッグ本体3の展開時に、この欠損防止用突出部35が、リッド部5における非裏張部32の両側部を裏面側から部分的に支えることにより、リッド部5を開成する際のリッド部5の両側部の欠損を防止することができる。例えば、リッド部5の側部のコーナー部分が開裂線6に沿わずに予定外の形状に割れる、いわゆるショートカット割れなどの不具合を防止することができる。よって、切込状縁部31によって部分的に補強した分だけ、切込状縁部31を奥へ引っ込めて非裏張部32の範囲を更に広げることが可能となる。
【0048】
(4)補強ドア部材21が、切込状縁部31の幅方向の中央部に開成起点設定用突出部38を備えた。そして、エアバッグ本体3の展開時に、この開成起点設定用突出部38が、リッド部5における非裏張部32の中央部に部分的に剪断力を与えることにより、リッド部5を開成する際の起点を定めることができる。その結果、リッド部5を設計通りに開成させて、安定したエアバッグ展開性能を得ることができる。
【0049】
(5)質量軽減部29として補強ドア部材21に薄肉部41を形成した。このように質量軽減部29を薄肉部41とすることによって、補強ドア部材21を確実に軽量化することができる。
【0050】
(6)質量軽減部29として補強ドア部材21に抜孔部46を形成した。このように質量軽減部29を抜孔部46とすることによって、補強ドア部材21を更に軽量化することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 インストルメントパネル
3 エアバッグ本体
5 リッド部
21 補強ドア部材
22 ヒンジ部
23 固定部材
29 質量軽減部
31 切込状縁部
32 非裏張部
35 欠損防止用突出部
38 開成起点設定用突出部
41 薄肉部
46 抜孔部
図1
図2
図3
図4