(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転している基板の上面中央部に着液した処理液は、基板の上面に沿って中央部から周縁部に流れる。その過程で、処理液の温度が次第に低下していく。そのため、温度の均一性が低下し、処理の均一性が悪化してしまう。ノズルから吐出される処理液の流量を増加させれば、処理液が基板の上面周縁部に達するまでの時間が短縮されるので、処理液の温度低下が軽減されるが、この場合、処理液の消費量が増加してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、基板に供給される処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板を水平に保持しながら基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を供給する処理液供給システムと、を含む、基板処理装置である。
前記処理液供給システムは、タンクと、上流ヒータと、供給流路と、複数の上流流路と、複数の吐出口と、複数のリターン流路と、複数の下流ヒータと、下流切替ユニットと、複数のリターン流量調整バルブと、を含む。前記タンクは、前記供給流路に供給される処理液を貯留する。前記上流ヒータは、処理液を加熱することにより前記タンク内の処理液の温度を調整する。前記供給流路は、処理液を前記複数の上流流路に向けて案内する。前記複数の上流流路は、前記供給流路から分岐しており、前記供給流路から供給された処理液を前記複数の吐出口に向けて案内する。前記複数の吐出口は、前記基板の上面中央部に向けて処理液を吐出する主吐出口と、前記上面中央部から離れており、前記回転軸線からの距離が異なる、前記基板の上面内の複数の位置に向けてそれぞれ処理液を吐出する複数の副吐出口と、を含み、前記回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されており、前記複数の上流流路を介して供給された処理液を前記基板保持ユニットに保持されている基板の上面に向けて吐出する。前記複数の上流流路は、前記主吐出口に接続された主上流流路と、前記複数の副吐出口に接続された複数の副上流流路と、を含む。前記複数のリターン流路は、前記複数の副吐出口よりも上流の位置で前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、前記複数の副上流流路から供給された処理液を前記タンクに向けて案内する。前記複数の下流ヒータは、前記リターン流路と前記副上流流路との接続位置よりも上流の位置で前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、前記複数の副上流流路を流れる処理液を加熱する。前記下流切替ユニットは、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記複数の吐出口に供給される吐出状態と、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記複数のリターン流路に供給される吐出停止状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替わる。前記複数のリターン流量調整バルブは、前記複数の上流流路にそれぞれ接続されており、前記吐出停止状態のときに前記供給流路から前記複数の上流流路に供給される処理液の流量を、前記吐出状態のときに前記供給流路から前記複数の上流流路に供給される処理液の流量よりも減少させる。
【0007】
この発明によれば、処理液を案内する供給流路が、複数の上流流路に分岐している。これにより、吐出口の数を増加させることができる。供給流路を流れる処理液は、上流流路を介して吐出口に供給され、回転軸線まわりに回転する基板の上面に向けて吐出される。複数の吐出口は、回転軸線からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されている。したがって、1つの吐出口だけに処理液を吐出させる場合と比較して、基板上の処理液の温度の均一性を高めることができる。これにより、処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
【0008】
径方向に離れた複数の位置に向けて複数の吐出口に処理液を吐出させる場合、同一品質の処理液を基板の各部に供給することは、処理の均一性向上に対して重要である。吐出口ごとにタンクやフィルター等が設けられている場合、ある吐出口に供給される処理液とは品質が異なる処理液が他の吐出口に供給され得る。これに対して、本実施形態では、供給流路を分岐させ、同じ流路(供給流路)から供給された処理液を各吐出口に吐出させる。これにより、同一品質の処理液を各吐出口に吐出させることができる。さらに、吐出口ごとにタンクやフィルター等が設けられている構成と比較して、部品点数を削減でき、メンテナンス作業を簡素化できる。
【0009】
処理液の温度は、基板の処理に大きな影響を及ぼす場合がある。吐出停止中に下流ヒータを停止させると、下流ヒータの運転を開始または再開したときに、下流ヒータによって加熱された処理液の温度が意図する温度で安定するまでに時間がかかる。そのため、直ぐに処理液の吐出を開始または再開することができず、スループット(単位時間あたりの基板の処理枚数)が低下する。したがって、吐出停止中であっても、下流ヒータに液体を加熱させることが好ましい。その一方で、下流ヒータによって加熱された処理液をタンクに戻すと、タンク内の処理液の温度が変動してしまう。下流ヒータによって加熱された処理液を捨てると、処理液の消費量が増加してしまう。
【0010】
この発明によれば、吐出停止中に、処理液を上流流路に供給し、下流ヒータに加熱させる。したがって、吐出停止中であっても、下流ヒータの温度が安定した状態を維持できる。そのため、直ぐに処理液の吐出を再開できる。さらに、吐出停止中は、下流ヒータによって加熱された処理液をリターン流路を介してタンクに戻すので、処理液の消費量を低減できる。しかも、複数のリターン流量調整バルブは、吐出停止中にリターン流路からタンクに戻る処理液の流量を減少させるので、タンク内の処理液に与えられる熱量を低減でき、液温の変動を抑えることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記処理液供給システムは、前記タンクに向かって前記複数のリターン流路を流れる処理液を冷却するクーラーをさらに含む、請求項1に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、吐出中だけでなく、吐出停止中にも、処理液が下流ヒータに供給され、下流ヒータによって加熱される。吐出停止中に下流ヒータに加熱された処理液は、上流流路からリターン流路に流れる。タンクに向かってリターン流路内を流れる処理液は、クーラーによって冷却される。したがって、クーラーによって冷却された処理液が、タンクに戻る。そのため、タンク内の処理液の温度の変動をさらに抑えることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記処理液供給システムは、複数の下流流路をさらに含み、前記複数の副上流流路は、いずれも、前記複数の下流流路に分岐した分岐上流流路であり、前記下流流路ごとに前記副吐出口が設けられている、請求項1または2に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、複数の吐出口に処理液を供給する流路が多段階で分岐している。すなわち、供給流路が複数の上流流路に分岐しており(第1分岐)、複数の上流流路に含まれる分岐上流流路が複数の下流流路に分岐している(第2分岐)。したがって、分岐上流流路が複数の上流流路に含まれていない場合と比較して、吐出口の数を増加させることができる。これにより、基板上の処理液の温度の均一性をさらに高めることができ、処理の均一性をさらに高めることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記基板処理装置は、前記基板保持ユニットに保持されている基板を収容するチャンバーをさらに含み、前記分岐上流流路は、前記チャンバー内で前記複数の下流流路に分岐している、請求項3に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、複数の下流流路の上流端がチャンバー内に配置されている。分岐上流流路は、チャンバー内で複数の下流流路に分岐している。したがって、分岐上流流路がチャンバーの外で分岐している場合と比較して、各下流流路の長さ(液体が流れる方向の長さ)を短縮できる。これにより、処理液から下流流路への伝熱による処理液の温度低下を抑制できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記上流ヒータは、上流温度で処理液を加熱することにより前記タンク内の処理液の温度を調整し、前記複数の下流ヒータは、前記複数の副上流流路を流れる処理液を前記上流温度よりも高温の下流温度で加熱する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
処理液が基板よりも高温である場合、処理液の熱が基板に奪われる。また、基板と共に処理液が回転するので、基板上の処理液は、空気によって冷却されながら、基板の上面に沿って外方に流れる。基板の各部の周速は、回転軸線から離れるにしたがって増加する。基板上の処理液は、周速が大きいほど冷却され易い。また、基板の上面を径方向に等間隔で複数の円環状の領域に分割できると仮定すると、各領域の面積は、回転軸線から離れるにしたがって増加する。表面積が大きいと、処理液から円環状の領域に熱が移動し易い。そのため、吐出口から吐出される処理液の温度が全て同じであると、十分な温度の均一性が得られない場合がある。
【0015】
この発明によれば、下流ヒータによって上流温度よりも高温の下流温度で加熱された処理液が、複数の副上流流路から複数の副吐出口に供給され、これらの吐出口から吐出される。つまり、上流温度の処理液が主吐出口から吐出される一方で、上流温度よりも高温の処理液が、副吐出口から吐出される。このように、基板の上面に供給される処理液の温度が回転軸線から離れるにしたがって段階的に増加するので、同じ温度の処理液を各吐出口に吐出させる場合と比較して、基板上の処理液の温度の均一性を高めることができる。これにより、処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、前記処理液供給システムは、第1ノズルと、第2ノズルと、をさらに含み、前記第1ノズルに設けられた第1吐出口と、前記第2ノズルに設けられた第2吐出口と、を含み、前記回転軸線に直交する径方向に平面視で並んでおり、前記第1ノズルは、水平な長手方向に延びる第1アーム部と、前記第1アーム部の先端から下方に延びる第1先端部と、を含み、前記第2ノズルは、前記長手方向に延びる第2アーム部と、前記第2アーム部の先端から下方に延びる第2先端部と、を含み、前記第1アーム部および第2アーム部は、前記長手方向に直交する水平な配列方向に並んでおり、前記第1アーム部の先端と前記第2アーム部の先端は、前記第1アーム部の先端が前記回転軸線側に位置するように、平面視で前記長手方向に離れている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0017】
この発明によれば、第1吐出口と第2吐出口とが平面視で径方向に並んでいる。複数の吐出口が平面視で径方向に並ぶように、同じ長さの複数のノズルを長手方向に直交する水平方向に並べると、複数のノズル全体の幅が増加する(
図9参照)。複数の吐出口が平面視で径方向に並ぶように、長さが異なる複数のノズルを鉛直方向に並べると、複数のノズル全体の高さが増加する(
図10参照)。
【0018】
これに対して、第1アーム部および第2アーム部を長手方向に直交する水平な配列方向に並べ、第1アーム部の先端が回転軸線側に位置するように、第1アーム部の先端と第2アーム部の先端を平面視で長手方向にずらすと、複数のノズル全体の幅および高さの両方を抑えながら、複数の吐出口を平面視で径方向に並べることができる(
図4参照)。これにより、複数のノズルや待機ポット等の関連する部材を小型化できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1および
図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の処理液供給システムを示す模式図である。
図1は、吐出状態の処理液供給システムを示しており、
図2は、吐出停止状態の処理液供給システムを示している。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する処理ユニット2と、処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。制御装置3は、演算部と記憶部とを含むコンピュータである。
【0021】
基板処理装置1は、処理ユニット2に対する処理液の供給および供給停止を制御するバルブ51等の流体機器を収容する複数の流体ボックス5と、流体ボックス5を介して処理ユニット2に供給される処理液を貯留するタンク41を収容する複数の貯留ボックス6とを含む。処理ユニット2および流体ボックス5は、基板処理装置1のフレーム4の中に配置されている。処理ユニット2のチャンバー7と流体ボックス5とは、水平方向に並んでいる。貯留ボックス6は、フレーム4の外に配置されている。貯留ボックス6は、フレーム4の中に配置されていてもよい。
【0022】
図3は、処理ユニット2の内部を示す模式的な正面図である。
図4は、処理ユニット2の内部を示す模式的な平面図である。
図3に示すように、処理ユニット2は、箱型のチャンバー7と、チャンバー7内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック11と、基板Wから排出された処理液を受け止める筒状のカップ15と含む。
【0023】
図4に示すように、チャンバー7は、基板Wが通過する搬入搬出口8aが設けられた箱型の隔壁8と、搬入搬出口8aを開閉するシャッター9とを含む。シャッター9は、搬入搬出口8aが開く開位置と、搬入搬出口8aが閉じられる閉位置(
図4に示す位置)との間で、隔壁8に対して移動可能である。図示しない搬送ロボットは、搬入搬出口8aを通じてチャンバー7に基板Wを搬入し、搬入搬出口8aを通じてチャンバー7から基板Wを搬出する。
【0024】
図3に示すように、スピンチャック11は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン13と、複数のチャックピン13を回転させることにより回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック11は、複数のチャックピン13を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0025】
図3に示すように、カップ15は、スピンチャック11を回転軸線A1まわりに取り囲む筒状のスプラッシュガード17と、スプラッシュガード17を回転軸線A1まわりに取り囲む円筒状の外壁16とを含む。処理ユニット2は、スプラッシュガード17の上端がスピンチャック11による基板Wの保持位置よりも上方に位置する上位置(
図3に示す位置)と、スプラッシュガード17の上端がスピンチャック11による基板Wの保持位置よりも下方に位置する下位置との間で、スプラッシュガード17を鉛直に昇降させるガード昇降ユニット18を含む。
【0026】
図3に示すように、処理ユニット2は、スピンチャック11に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル21を含む。リンス液ノズル21は、リンス液バルブ23が介装されたリンス液配管22に接続されている。処理ユニット2は、処理位置と待機位置との間でリンス液ノズル21を移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0027】
リンス液バルブ23が開かれると、リンス液が、リンス液配管22からリンス液ノズル21に供給され、リンス液ノズル21から吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0028】
図4に示すように、処理ユニット2は、薬液を下方に吐出する複数のノズル26(第1ノズル26A、第2ノズル26B、第3ノズル26C、および第4ノズル26D)と、複数のノズル26のそれぞれを保持するホルダ25と、ホルダ25を移動させることにより、処理位置(
図4で二点鎖線で示す位置)と待機位置(
図4で実線で示す位置)との間で複数のノズル26を移動させるノズル移動ユニット24とを含む。
【0029】
薬液の代表例は、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などのエッチング液や、SPM(硫酸および過酸化水素水を含む混合液)などのレジスト剥離液である。薬液は、TMAHおよびSPMに限らず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、TMAH以外の有機アルカリ、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。
【0030】
図3に示すように、各ノズル26は、ホルダ25によって片持ち支持されたノズル本体27を含む。ノズル本体27は、ホルダ25から水平な長手方向D1に延びるアーム部28と、アーム部28の先端28aから下方に延びる先端部29とを含む。アーム部28の先端28aは、平面視においてホルダ25から長手方向D1に最も遠い部分を意味する。
図4に示すように、複数のアーム部28は、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で、長手方向D1に直交する水平な配列方向D2に並んでいる。複数のアーム部28は、同じ高さに配置されている。配列方向D2に隣接する2つのアーム部28の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。
図4は、複数のアーム部28が等間隔で配置されている例を示している。
【0031】
長手方向D1への複数のアーム部28の長さは、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で短くなっている。複数のノズル26の先端(複数のアーム部28の先端28a)は、長手方向D1に関して第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で並ぶように長手方向D1にずれている。複数のノズル26の先端は、平面視で直線状に並んでいる。
ノズル移動ユニット24は、カップ15のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A2まわりにホルダ25を回動させることにより、平面視で基板Wを通る円弧状の経路に沿って複数のノズル26を移動させる。これにより、処理位置と待機位置との間で複数のノズル26が水平に移動する。処理ユニット2は、複数のノズル26の待機位置の下方に配置された有底筒状の待機ポット35を含む。待機ポット35は、平面視でカップ15のまわりに配置されている。
【0032】
処理位置は、複数のノズル26から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する位置である。処理位置では、複数のノズル26と基板Wとが平面視で重なり、複数のノズル26の先端が、平面視において、回転軸線A1側から第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で径方向Drに並ぶ。このとき、第1ノズル26Aの先端は、平面視で基板Wの中央部に重なり、第4ノズル26Dの先端は、平面視で基板Wの周縁部に重なる。
【0033】
待機位置は、複数のノズル26と基板Wとが平面視で重ならないように、複数のノズル26が退避した位置である。待機位置では、複数のノズル26の先端が、平面視でカップ15の外周面(外壁16の外周面)に沿うようにカップ15の外側に位置し、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で周方向(回転軸線A1まわりの方向)に並ぶ。複数のノズル26は、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で、回転軸線A1から遠ざかるように配置される。
【0034】
次に、
図5および
図6を参照して、複数のノズル26について説明する。その後、処理液供給システムについて説明する。
以下の説明では、第1ノズル26Aに対応する構成の先頭および末尾に、それぞれ「第1」および「A」を付ける場合がある。たとえば、第1ノズル26Aに対応する上流流路48を、「第1上流流路48A」という場合がある。第2ノズル26B〜第4ノズル26Dに対応する構成についても同様である。
【0035】
また、以下の説明では、上流ヒータ43による処理液の加熱温度を上流温度といい、下流ヒータ53による処理液の加熱温度を下流温度という場合がある。第2下流ヒータ53〜第4下流ヒータ53による処理液の加熱温度を、それぞれ、第2下流温度〜第4加熱温度という場合もある。
図5に示すように、ノズル本体27は、処理液を案内する樹脂チューブ30と、樹脂チューブ30を取り囲む断面筒状の芯金31と、芯金31の外面を覆う断面筒状の樹脂コーティング32とを含む。第1ノズル26A以外の各ノズル26は、さらに、ノズル本体27の先端部29に取り付けられたノズルヘッド33を含む。
【0036】
ノズル本体27は、ノズル本体27に沿って延びる1つの流路を形成している。ノズルヘッド33は、ノズル本体27から供給された処理液を案内する複数の流路を形成している。ノズル本体27の流路は、ノズル本体27の外面で開口する吐出口34を形成している。ノズルヘッド33の複数の流路は、ノズルヘッド33の外面で開口する複数の吐出口34を形成している。ノズル本体27の流路は、後述する上流流路48の一部に相当する。ノズルヘッド33の各流路は、後述する下流流路52に相当する。第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの下流端は、回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されている。
【0037】
図5および
図6は、複数のノズル26に設けられた吐出口34の総数が、10個である例を示している。第1ノズル26Aは、ノズル本体27に設けられた1つの吐出口34を含む。第1ノズル26A以外の各ノズル26は、ノズルヘッド33に設けられた3つの吐出口34を含む。同一のノズルヘッド33に設けられた3つの吐出口34は、3つの吐出口34のうちで回転軸線A1に最も近い内側吐出口と、3つの吐出口34のうちで回転軸線A1から最も遠い外側吐出口と、内側吐出口と外側吐出口との間に配置された中間吐出口とによって構成されている。
【0038】
図6に示すように、複数の吐出口34は、平面視で直線状に並んでいる。両端の2つの吐出口34の間隔は、基板Wの半径以下である。隣接する2つの吐出口34の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。また、複数の吐出口34は、同じ高さに配置されていてもよいし、2つ以上の異なる高さに配置されていてもよい。
【0039】
複数のノズル26が処理位置に配置されると、複数の吐出口34は、回転軸線A1からの距離(平面視での最短距離)が異なる複数の位置にそれぞれ配置される。このとき、複数の吐出口34のうちで回転軸線A1に最も近い最内吐出口(第1吐出口34A)は、基板Wの中央部の上方に配置され、複数の吐出口34のうちで回転軸線A1から最も遠い最外吐出口(第4吐出口34D)は、基板Wの周縁部の上方に配置される。複数の吐出口34は、平面視で径方向Drに並ぶ。
【0040】
第1ノズル26Aに設けられた第1吐出口34Aは、基板Wの上面中央部に向けて処理液を吐出する主吐出口である。第1ノズル26A以外の各ノズル26に設けられた第2吐出口34B〜第4吐出口34Dは、中央部以外の基板Wの上面の一部に向けて処理液を吐出する複数の副吐出口である。第1吐出口34Aに接続された第1上流流路48Aは、主上流流路であり、第2吐出口34B〜第4吐出口34Dに接続された第2上流流路48B〜第4上流流路48Dは、複数の副上流流路である。
【0041】
図5に示すように、各吐出口34は、基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に薬液を吐出する。複数の吐出口34は、基板Wの上面内の複数の着液位置に向けて薬液を吐出する。複数の着液位置は、回転軸線A1からの距離が異なる別々の位置である。複数の着液位置のうちで回転軸線A1に最も近い着液位置を第1着液位置といい、複数の着液位置のうちで2番目に回転軸線A1に近い着液位置を第2着液位置というと、第1吐出口34Aから吐出された薬液は、第1着液位置に着液し、第2吐出口34Bから吐出された薬液は、第2着液位置に着液する。
【0042】
次に、
図1および
図2を参照して、処理液供給システムについて詳細に説明する。
処理液供給システムは、薬液を貯留する薬液タンク41と、薬液タンク41から送られた薬液を案内する薬液流路42と、薬液流路42内を流れる薬液を室温(たとえば20〜30℃)よりも高い上流温度で加熱することにより薬液タンク41内の薬液の温度を調整する上流ヒータ43と、薬液タンク41内の薬液を薬液流路42に送るポンプ44と、薬液流路42内の薬液を薬液タンク41に戻す循環流路40とを含む。
【0043】
処理液供給システムは、薬液流路42を開閉する供給バルブ45と、循環流路40を開閉する循環バルブ46と、薬液流路42に接続された供給流路47とを含む。上流切替ユニットは、供給バルブ45を含む。
処理液供給システムは、供給流路47から供給された液体を複数の吐出口34に向けて案内する複数の上流流路48と、複数の上流流路48内を流れる液体の流量を検出する複数の流量計49と、複数の上流流路48内を流れる液体の流量を変更する複数の流量調整バルブ50と、複数の上流流路48をそれぞれ開閉する複数の吐出バルブ51とを含む。図示はしないが、流量調整バルブ50は、流路を開閉するバルブ本体と、バルブ本体の開度を変更するアクチュエータとを含む。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
【0044】
処理液供給システムは、上流流路48から供給された液体を複数の吐出口34に向けて案内する複数の下流流路52を含む。第1上流流路48A以外の各上流流路48の下流端は、複数の下流流路52に分岐している。つまり、第1上流流路48A以外の各上流流路48は、複数の下流流路52に分岐した分岐上流流路である。
図1および
図2では、分岐上流流路が2つの下流流路52に分岐している例を示している。
図5では、分岐上流流路が3つの下流流路52に分岐している例を示している。第2上流流路48Bから分岐した3つの下流流路52は、それぞれ、同じノズルヘッド33に設けられた3つの吐出口34(内側吐出口、中間吐出口、および外側吐出口)に接続されている。第3上流流路48Cおよび第4上流流路48Dについても、第2上流流路48Bと同様である。第1上流流路48Aは、第1ノズル26Aに設けられた第1吐出口34Aに接続されている。
【0045】
処理液供給システムは、第1上流流路48A以外の複数の上流流路48内を流れる液体を上流温度よりも高い下流温度で加熱する複数の下流ヒータ53を含む。処理液供給システムは、さらに、複数の下流ヒータ53よりも下流の位置で第1上流流路48A以外の複数の上流流路48にそれぞれ接続された複数のリターン流路54と、複数のリターン流路54をそれぞれ開閉する複数のリターンバルブ55とを含む。下流切替ユニットは、複数の吐出バルブ51と、複数のリターンバルブ55とを含む。
【0046】
処理液供給システムは、複数のリターン流路54から供給された薬液を冷却するクーラー56と、クーラー56から薬液タンク41に薬液を案内するタンク回収流路57とを含む。複数のリターン流路54からクーラー56に供給された薬液は、クーラー56によって上流温度に近づけられた後、タンク回収流路57を介して薬液タンク41に案内される。クーラー56は、水冷ユニットまたは空冷ユニットであってもよいし、これら以外の冷却ユニットであってもよい。
【0047】
次に、
図1を参照して、複数の吐出口34が薬液を吐出する吐出状態の処理液供給システムについて説明する。
図1では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
薬液タンク41内の薬液は、ポンプ44によって薬液流路42に送られる。ポンプ44によって送られた薬液は、上流ヒータ43によって加熱された後、薬液流路42から供給流路47に流れ、供給流路47から複数の上流流路48に流れる。第1上流流路48A以外の複数の上流流路48(分岐上流流路)に供給された薬液は、下流ヒータ53によって加熱された後、複数の下流流路52に流れる。
【0048】
第1上流流路48A内の薬液は、第1ノズル26Aに設けられた1つの第1吐出口34Aに供給される。第2上流流路48B内の薬液は、複数の下流流路52を介して、第2ノズル26Bに設けられた複数の第2吐出口34Bに供給される。第3上流流路48Cおよび第4上流流路48Dについても、第2上流流路48Bと同様である。これにより、全ての吐出口34から薬液が吐出される。
【0049】
下流ヒータ53による処理液の加熱温度(下流温度)は、上流ヒータ43による処理液の加熱温度(上流温度)よりも高い。第2〜第4下流温度は、第2〜第4下流温度の順番で高くなっている。第1吐出口34Aは、上流温度の薬液を吐出する。各第2吐出口34Bは、第2下流温度の薬液を吐出する。各第3吐出口34Cは、第3下流温度の薬液を吐出し、各第4吐出口34Dは、第4下流温度の薬液を吐出する。したがって、複数の吐出口34から吐出される薬液の温度は、回転軸線A1から離れるにしたがって段階的に増加する。
【0050】
次に、
図2を参照して、複数の吐出口34からの薬液の吐出が停止された吐出停止状態の処理液供給システムについて説明する。
図2では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
薬液タンク41内の薬液は、ポンプ44によって薬液流路42に送られる。ポンプ44によって送られた薬液の一部は、上流ヒータ43によって加熱された後、循環流路40を介して薬液タンク41に戻る。ポンプ44によって送られた残りの薬液は、薬液流路42から供給流路47に流れ、供給流路47から第1上流流路48A以外の複数の上流流路48に流れる。
【0051】
第2上流流路48B内の薬液は、第2上流流路48Bに対応する下流ヒータ53によって加熱された後、リターン流路54を介してクーラー56に流れる。第3上流流路48Cおよび第4上流流路48Dについては、第2上流流路48Bと同様である。クーラー56に供給された薬液は、クーラー56で冷却された後、タンク回収流路57を介して薬液タンク41に戻る。これにより、ポンプ44によって薬液流路42に送られた全ての薬液が、薬液タンク41に戻る。
【0052】
処理液の温度は、基板Wの処理に大きな影響を及ぼす場合がある。吐出停止中に下流ヒータ53を停止させると、下流ヒータ53の運転を再開したときに、下流ヒータ53によって加熱された処理液の温度が意図する温度で安定するまでに時間がかかる。そのため、直ぐに処理液の吐出を再開することができず、スループットが低下する。
前述のように、吐出停止中であっても、薬液を下流ヒータ53に流し続け、下流ヒータ53に薬液を加熱させる。これにより、下流ヒータ53の温度が安定した状態を維持できる。さらに、下流ヒータ53によって加熱された薬液を薬液タンク41に戻すので、薬液の消費量を低減できる。
【0053】
高温の薬液を薬液タンク41から処理ユニット2に供給する場合、配管での熱損失による薬液の温度低下を抑制するために、薬液タンク41を処理ユニット2の近傍に配置し、薬液タンク41から処理ユニット2までの流路長を短縮することがある。
しかしながら、薬液タンク41が処理ユニット2に近いと、下流ヒータ53によって吐出停止中に加熱された薬液は、十分に温度低下せずに薬液タンク41に戻る。薬液タンク41内の薬液の温度が設定温度を超えると、液温が自然に設定温度以下になるまで長時間待つ必要がある。
【0054】
本実施形態では、制御装置3が、複数の流量調整バルブ50を含むリターン流量調整ユニットの開度を吐出中のときよりも減少させる。吐出停止中の流量調整バルブ50の開度は、吐出中のときの開度よりも小さい。吐出中に供給流路47から複数の上流流路48に供給される薬液の総流量FR1は、吐出停止中に供給流路47から複数の上流流路48に供給される薬液の総流量FR2よりも大きい。
【0055】
制御装置3は、加熱後の液温が設定温度(下流温度)になるよう下流ヒータ53を制御する。加熱前後の液温が同じであれば、下流ヒータ53によって液体に与えられる熱量は、流量が小さくなるほど減少する。したがって、吐出停止中に流量調整バルブ50の開度を減少させることにより、薬液を媒介として下流ヒータ53から薬液タンク41内の薬液に伝達される総熱量を低減できる。しかも、リターン流路54を介して薬液タンク41に戻る薬液は、クーラー56によって上流温度近傍の温度(たとえば、上流温度以下の温度)まで冷却される。
【0056】
このように、リターン流路54を介して薬液タンク41に戻る薬液の流量を減少させると共に、この薬液をクーラー56で冷却するので、下流ヒータ53によって加熱された薬液を薬液タンク41に回収する場合であっても、薬液タンク41内の薬液を設定温度またはその付近に維持できる。したがって、薬液タンク41を処理ユニット2の近傍に配置することができ、配管での熱損失による薬液の温度低下を抑制することができる。
【0057】
図7は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例を説明するための工程図である。以下の各動作は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。以下では
図3および
図4を参照する。
図7については適宜参照する。
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、複数のノズル26がスピンチャック11の上方から退避しており、スプラッシュガード17が下位置に位置している状態で、搬送ロボットのハンド(図示せず)によって、基板Wがチャンバー7内に搬入される。これにより、表面が上に向けられた状態で基板Wが複数のチャックピン13の上に置かれる。その後、搬送ロボットのハンドがチャンバー7の内部から退避し、チャンバー7の搬入搬出口8aがシャッター9で閉じられる。
【0058】
基板Wが複数のチャックピン13の上に置かれた後は、複数のチャックピン13が基板Wの周縁部に押し付けられ、基板Wが複数のチャックピン13によって把持される。また、ガード昇降ユニット18が、スプラッシュガード17を下位置から上位置に移動させる。これにより、スプラッシュガード17の上端が基板Wよりも上方に配置される。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される。これにより、基板Wが所定の液処理速度(たとえば数百rpm)で回転する。
【0059】
次に、ノズル移動ユニット24が、複数のノズル26を待機位置から処理位置に移動させる。これにより、複数の吐出口34が平面視で基板Wに重なる。その後、複数の吐出バルブ51等が制御され、薬液が複数のノズル26から同時に吐出される(
図7のステップS1)。複数のノズル26は、ノズル移動ユニット24が複数のノズル26を静止させている状態で薬液を吐出する。複数の吐出バルブ51が開かれてから所定時間が経過すると、複数のノズル26からの薬液の吐出が同時に停止される(
図7のステップS2)。その後、ノズル移動ユニット24が、複数のノズル26を処理位置から待機位置に移動させる。
【0060】
複数のノズル26から吐出された薬液は、回転している基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方(回転軸線A1から離れる方向)に流れる。基板Wの上面周縁部に達した薬液は、基板Wの周囲に飛散し、スプラッシュガード17の内周面に受け止められる。このようにして、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が基板W上に形成される。これにより、基板Wの上面全域が薬液で処理される。
【0061】
複数のノズル26からの薬液の吐出が停止された後は、リンス液バルブ23が開かれ、リンス液ノズル21からのリンス液(純水)の吐出が開始される(
図7のステップS3)。これにより、基板W上の薬液がリンス液によって洗い流され、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。リンス液バルブ23が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ23が閉じられ、リンス液ノズル21からのリンス液の吐出が停止される(
図7のステップS4)。
【0062】
リンス液ノズル21からのリンス液の吐出が停止された後は、基板Wがスピンモータ14によって回転方向に加速され、液処理速度よりも大きい乾燥速度(たとえば数千rpm)で基板Wが回転する(
図7のステップS5)。これにより、基板Wに付着しているリンス液が基板Wの周囲に振り切られ、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14および基板Wの回転が停止される。
【0063】
基板Wの回転が停止された後は、ガード昇降ユニット18が、スプラッシュガード17を上位置から下位置に移動させる。さらに、複数のチャックピン13による基板Wの保持が解除される。搬送ロボットは、複数のノズル26がスピンチャック11の上方から退避しており、スプラッシュガード17が下位置に位置している状態で、ハンドをチャンバー7の内部に進入させる。その後、搬送ロボットは、ハンドによってスピンチャック11上の基板Wを取り、この基板Wをチャンバー7から搬出する。
【0064】
図8は、基板Wのエッチング量の分布を示すグラフである。
図8に示す測定値A〜測定値Cにおける基板Wの処理条件は、薬液を吐出するノズルを除き、同一である。
測定値Aは、複数のノズル26を静止させながら、複数の吐出口34(10個の吐出口34)に薬液を吐出させて、基板Wをエッチングしたときのエッチング量の分布を示している。
【0065】
測定値Bは、全てのノズルヘッド33が取り外された複数のノズル26を静止させながら、複数の吐出口34(4個の吐出口34)に薬液を吐出させて、基板Wをエッチングしたときのエッチング量の分布を示している。すなわち、測定値Bは、4本のノズル本体27にそれぞれ設けられた4つの吐出口34(第1吐出口34Aに相当するもの)に薬液を吐出させたときのエッチング量の分布を示している。
【0066】
測定値Cは、1つの吐出口34だけに薬液を吐出させ、薬液の着液位置を基板Wの上面中央部で固定したときのエッチング量の分布を示している。
測定値Cでは、基板Wの中央部から離れるにしたがってエッチング量が減少しており、エッチング量の分布が山形の曲線を示している。つまり、エッチング量は、薬液の着液位置で最も大きく、着液位置から離れるにしたがって減少している。これに対して、測定値Aおよび測定値Bでは、測定値Cと比較して、基板Wの中央部以外の位置でのエッチング量が増加しており、エッチングの均一性が大幅に改善されている。
【0067】
測定値Bでは、7つの山が形成されている。真ん中の山の頂点は、最も内側の着液位置に対応する位置であり、その外側の2つの山の頂点は、内側から2番目の着液位置に対応する位置である。さらに外側の2つの山の位置は、内側から3番目の着液位置に対応する位置であり、最も外側の2つの山の位置は、内側から4番目の着液位置に対応する位置である。
【0068】
測定値Aでは、測定値Bと同様に、複数の着液位置に対応する複数の山が形成されている。測定値Bでは、吐出口34の数が4個であるのに対し、測定値Aでは、吐出口34の数が10個であるので、山の数が増加している。さらに、測定値Bと比較して、エッチング量の分布を示す線が、左右方向に延びる直線(エッチング量が一定の直線)に近づいており、エッチングの均一性が改善されている。
【0069】
以上のように本実施形態では、処理液を案内する供給流路47が、複数の上流流路48に分岐している。これにより、吐出口34の数を増加させることができる。さらに、複数の下流流路52に分岐した分岐上流流路が複数の上流流路48に含まれているので、吐出口34の数をさらに増加させることができる。
供給流路47を流れる処理液は、上流流路48または下流流路52から吐出口34に供給され、回転軸線A1まわりに回転する基板Wの上面に向けて吐出される。複数の吐出口34は、回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されている。したがって、1つの吐出口34だけに処理液を吐出させる場合と比較して、基板W上の処理液の温度の均一性を高めることができる。これにより、処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
【0070】
また本実施形態では、吐出停止中に、薬液を上流流路48に供給し、下流ヒータ53に加熱させる。したがって、吐出停止中であっても、下流ヒータ53の温度が安定した状態を維持できる。そのため、直ぐに薬液の吐出を再開できる。さらに、吐出停止中は、下流ヒータ53によって加熱された薬液をリターン流路54を介して薬液タンク41に戻すので、薬液の消費量を低減できる。しかも、複数の流量調整バルブ50を含むリターン流量調整ユニットは、吐出停止中にリターン流路54から薬液タンク41に戻る薬液の流量を減少させるので、薬液タンク41内の薬液に与えられる熱量を低減でき、液温の変動を抑えることができる。
【0071】
また本実施形態では、吐出中だけでなく、吐出停止中にも、薬液が下流ヒータ53に供給され、下流ヒータ53によって加熱される。吐出停止中に下流ヒータ53に加熱された薬液は、上流流路48からリターン流路54に流れる。薬液タンク41に向かってリターン流路54内を流れる薬液は、クーラー56によって冷却される。したがって、クーラー56によって冷却された薬液が、薬液タンク41に戻る。そのため、薬液タンク41内の薬液の温度の変動をさらに抑えることができる。
【0072】
また本実施形態では、複数の下流流路52の上流端がチャンバー7内に配置されている。分岐上流流路は、チャンバー7内で複数の下流流路52に分岐している。したがって、分岐上流流路がチャンバー7の外で分岐している場合と比較して、各下流流路52の長さ(液体が流れる方向の長さ)を短縮できる。これにより、処理液から下流流路52への伝熱による処理液の温度低下を抑制できる。
【0073】
また本実施形態では、複数の上流流路48の上流端が流体ボックス5内に配置されている。供給流路47は、流体ボックス5内で複数の上流流路48に分岐している。したがって、供給流路47が流体ボックス5よりも上流の位置で複数の上流流路48に分岐している場合と比較して、各上流流路48の長さ(液体が流れる方向の長さ)を短縮できる。これにより、処理液から上流流路48への伝熱による処理液の温度低下を抑制できる。
【0074】
また本実施形態では、下流ヒータ53によって上流温度よりも高温の下流温度で加熱された処理液が、最内上流流路(第1上流流路48A)以外の上流流路48から最内吐出口(第1吐出口34A)以外の吐出口34に供給され、この吐出口34から吐出される。つまり、上流温度の処理液が最内吐出口から吐出される一方で、上流温度よりも高温の処理液が、最内吐出口よりも外側に位置する吐出口34から吐出される。
【0075】
このように、基板Wの上面に供給される処理液の温度が回転軸線A1から離れるにしたがって段階的に増加するので、同じ温度の処理液を各吐出口34に吐出させる場合と比較して、温度の均一性を高めることができる。これにより、処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
また本実施形態では、第1吐出口34Aと第2吐出口34Bとが平面視で径方向Drに並んでいる。複数の吐出口34が平面視で径方向Drに並ぶように、同じ長さの複数のノズル26を長手方向D1に直交する水平方向に並べると、複数のノズル26全体の幅が増加する(
図9参照)。複数の吐出口34が平面視で径方向Drに並ぶように、長さが異なる複数のノズル26を鉛直方向に並べると、複数のノズル26全体の高さが増加する(
図10参照)。
【0076】
これに対して、本実施形態では、複数のアーム部28を長手方向D1に直交する水平な配列方向D2に並べる。さらに、複数のアーム部28の先端28aが長手方向D1に関して回転軸線A1側から第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で並ぶように、複数のアーム部28の先端28aを長手方向D1にずらす(
図4参照)。これにより、複数のノズル26全体の幅および高さの両方を抑えながら、複数の吐出口34を平面視で径方向Drに並べることができる。
【0077】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前記実施形態では、ノズル26の数が、4本である場合について説明したが、ノズル26の数は、2または3本であってもよいし、5本以上であってもよい。
前記実施形態では、薬液タンク41に向かってリターン流路54を流れる薬液をクーラー56で冷却する場合について説明したが、リターン流路54を介して薬液タンク41に戻る薬液の流量の調整によって、薬液タンク41内の薬液を設定温度付近に維持できるのであれば、クーラー56を省略してもよい。つまり、リターン流路54を流れる薬液をクーラー56で冷却せずに薬液タンク41に戻してもよい。
【0078】
前記実施形態では、下流ヒータ53が第1上流流路48Aに設けられておらず、第1上流流路48A以外の全ての上流流路48に下流ヒータ53が設けられている場合について説明したが、第1上流流路48Aを含む全ての上流流路48に下流ヒータ53が設けられていてもよい。リターン流路54についても同様である。
前記実施形態では、ノズルヘッド33が第1ノズル26Aに設けられておらず、第1ノズル26A以外の全てのノズル26にノズルヘッド33が取り付けられている場合について説明したが、第1ノズル26Aを含む全てのノズル26にノズルヘッド33が設けられていてもよい。これとは反対に、全てのノズル26にノズルヘッド33が設けられていなくてもよい。
【0079】
前記実施形態では、3つの下流流路52と3つの吐出口34とが、1つのノズルヘッド33に形成されている場合について説明したが、1つのノズルヘッド33に形成されている下流流路52および吐出口34の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
前記実施形態では、分岐上流流路(第1上流流路48A以外の上流流路48)が、チャンバー7内で複数の下流流路52に分岐している場合について説明したが、分岐上流流路は、チャンバー7の外で分岐していてもよい。
【0080】
前記実施形態では、複数の吐出口34が、平面視で径方向Drに並んでいる場合について説明したが、複数の吐出口34が、回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されるのであれば、複数の吐出口34は、平面視で径方向Drに並んでいなくてもよい。
前記実施形態では、複数のノズル26を静止させながら、複数のノズル26に薬液を吐出させる場合について説明したが、複数のノズル26をノズル回動軸線A2まわりに回動させながら、複数のノズル26に薬液を吐出させてもよい。
【0081】
前記実施形態では、全ての吐出バルブ51が同時に開かれ、全ての吐出バルブ51が同時に閉じられる場合について説明したが、制御装置3は、外側の吐出口34が処理液を吐出している時間が、内側の吐出口34が処理液を吐出している時間よりも長くなるように、複数の吐出バルブ51を制御してもよい。
前記実施形態では、供給流路47に薬液を供給する薬液流路42が設けられている場合について説明したが、供給流路47に液体を供給する複数の処理液流路が設けられていてもよい。
【0082】
たとえば、第1液体が第1液体流路から供給流路47に供給され、第2液体が第2液体流路から供給流路47に供給されてもよい。この場合、第1液体および第2液体が供給流路47で混合されるので、第1液体および第2液体を含む混合液が、供給流路47から複数の上流流路48に供給される。第1液体および第2液体は、同種の液体であってもよいし、異なる種類の液体であってもよい。第1液体および第2液体の具体例は、硫酸および過酸化水素水の組み合わせと、TMAHおよび純水の組み合わせである。
【0083】
制御装置3は、基板Wの表面の各部に供給される処理液の温度を処理前の薄膜の厚みに応じて制御することにより、処理後の薄膜の厚みを均一化してもよい。
図11は、処理前後における薄膜の厚みと基板Wに供給される処理液の温度とのイメージを示すグラフである。
図11の一点鎖線は、処理前の膜厚を示しており、
図11の二点鎖線は、処理後の膜厚を示している。
図11の実線は、基板Wに供給される処理液の温度を示している。
図11の横軸は、基板Wの半径を示している。処理前の膜厚は、基板処理装置1以外の装置(たとえば、ホストコンピュータ)から基板処理装置1に入力されてもよいし、基板処理装置1に設けられた測定機によって測定されてもよい。
【0084】
図11に示す例の場合、制御装置3は、処理液の温度が処理前の膜厚と同様に変化するように、基板処理装置1を制御してもよい。具体的には、制御装置3は、複数の上流流路48での処理液の温度が、処理前の膜厚に応じた温度となるように、複数の下流ヒータ53を制御してもよい。
この場合、処理前の膜厚が相対的に大きい位置に相対的に高温の処理液が供給され、処理前の膜厚が相対的に小さい位置に相対的に低温の処理液が供給される。基板Wの表面に形成された薄膜のエッチング量は、高温の処理液が供給される位置で相対的に増加し、低温の処理液が供給される位置で相対的に減少する。そのため、処理後の薄膜の厚みが均一化される。
【0085】
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。