特許第6361084号(P6361084)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361084近距離無線通信システム、通信端末、および通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361084
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】近距離無線通信システム、通信端末、および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/10 20090101AFI20180712BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20180712BHJP
   H04W 76/19 20180101ALI20180712BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04W84/10 110
   H04M1/00 U
   H04W76/19
   H04W92/18
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-50061(P2014-50061)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-177229(P2015-177229A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】太田 太
【審査官】 齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−162322(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0018000(US,A1)
【文献】 特開2012−238971(JP,A)
【文献】 特表2007−527129(JP,A)
【文献】 特開2006−319946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
H04M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線通信により相互通信可能に端末間接続される少なくとも3つの通信端末を備え、
前記通信端末それぞれは、前記端末間接続が解除された後の再接続時に接続相手先端末を特定する通信制御部を備えており、
前記通信制御部は、
直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブルと、
前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブルと、
を備え、
かつ前記通信制御部は、前記再接続時には、前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順に最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する、ことを特徴とする、近距離無線通信システム。
【請求項2】
少なくとも2台の他の通信端末との間で近距離無線通信により相互通信可能に端末間接続される通信端末であって、
前記端末間接続が解除された後の再接続時に接続相手先端末を特定する通信制御部を備えており、
前記通信制御部は、
直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に、前記他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブルと、
前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブルと、
を備え、
かつ前記通信制御部は、前記再接続時には、前記再接続時には、前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順で最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する、
ことを特徴とする、通信端末。
【請求項3】
通信端末が、少なくとも2台の他の通信端末との間で近距離無線通信により行う通信方法であって、
前記通信端末が直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に前記他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブル設定ステップと、
前記通信端末が前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブル設定ステップと、
前記通信端末が、他の通信端末との間の再接続時に前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順で最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する通信相手先端末特定ステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信により相互通信する複数の通信端末からなる近距離無線通信システム、通信端末、および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、近距離無線通信システムとして、複数の通信端末を組み合わせ、それら通信端末をブルーツース(登録商標)通信等の近距離無線通信によって接続して相互通信するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−141744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の近距離無線通信システムでは、一旦端末間の接続が解除された状態から接続が再開された状態に移行する際(例えば一方の通信端末で生じた瞬断後の接続再起動時)には、接続を再開する通信端末と直前の接続先通信端末とが自動的に接続される。これは、各通信端末には、以前に接続先として設定されていた接続先通信端末の接続に関するデータが登録されており、このデータを用いれば、起動時等の再接続時には、接続先通信端末として、再接続直前に接続されていた接続先通信端末を自動的に認識して再接続することができるためである。
【0005】
このような再接続は、通信端末で生じた瞬断後の再起動時には便利であるが、再接続先の通信端末は、直前の接続先の通信端末に限定されてしまう。しかしながら、端末間の接続を解除した状態から接続を再開する際における接続先は、直前の接続先の通信端末とは限らず、意図的に接続先を変更する場合もある。そのため、接続再開時に意図的に接続先を変更したい場合には、接続再開後に手動で接続先を変更する作業を行わねばならず、この作業に手間がかかる。
【0006】
そこで、本発明は、近距離無線通信システムにおいて、接続再開時における手動の接続設定操作を減らして作業性を高めることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の近距離無線通信システムは、
近距離無線通信により相互通信可能に端末間接続される少なくとも3つの通信端末を備え、
前記通信端末それぞれは、前記端末間接続が解除された後の再接続時に接続相手先端末を特定する通信制御部を備えており、
前記通信制御部は、
直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブルと、
前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブルと、
を備え、
かつ前記通信制御部は、前記再接続時には、前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順に最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する。
【0008】
本発明の通信端末は、
少なくとも2台の他の通信端末との間で近距離無線通信により相互通信可能に端末間接続される通信端末であって、
前記端末間接続が解除された後の再接続時に接続相手先端末を特定する通信制御部を備えており、
前記通信制御部は、
直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブルと、
前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブルと、
を備え、
かつ前記通信制御部は、前記再接続時には、前記再接続時には、前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順で最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する。
【0009】
本発明の通信方法は、 通信端末が、少なくとも2台の他の通信端末との間で近距離無線通信により行う通信方法であって、
前記通信端末が直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に他の通信端末に第1の接続優先度を設定する第1の接続先特定テーブル設定ステップと、
前記通信端末が前記他の通信端末に当該端末の装置機能毎に第2の接続優先度を設定する第2の接続先特定テーブル設定ステップと、
前記通信端末が、他の通信端末との間の再接続時に前記第2の接続先特定テーブルにおける前記第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、前記第1の接続優先度における接続優先度が、前記直前の接続相手先端末を最優先として時間を遡って前記接続順で最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する通信相手先端末特定ステップとを含む。
【0010】
本発明によれば、第2の接続先特定テーブルにおける第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、第1の接続先特定テーブルにおける第1の接続優先度が最も高い(最直近に接続された)他の通信端末を、通信相手先端末となるよう特定するので、各通信端末は、所望する機能を有しかつ最直近に接続されていたものの現在未接続状態である他の通信端末と接続されることになる。これにより、再接続時において、所望する相手先端末と接続されないために手動で再接続をやり直す、といった手間が大幅に省略される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、接続再開時における手動の接続設定操作が削減されてその分、作業者が通信設定時に行う作業における作業性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態にかかる通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の通信端末の要部の構成を示すブロック図である。
図3】第1の接続先特定テーブルの構成を示す図である。
図4】第2の接続先特定テーブルの構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の通信端末が実施する再接続制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明にかかる近距離無線通信システムを、その実施の形態を示した図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1図2に示したブロック図において、1A1〜1A3は無線機であり、1B1〜1B3は多機能携帯電話(以下、スマートホンと称する)であり、1Cはパーソナルコンピュータであり、1Dは、ゲーム機であり、2は無線ヘッドセットであり、3は近距離無線通信システムである。
【0015】
無線機1A1〜1A3とスマートホン1B1〜1B3とパーソナルコンピュータ(PC)1Cとゲーム機1Dと無線ヘッドセット2とは、近距離無線通信により端末間接続されて相互通信する機能を備えた通信端末の一例であって、それぞれが近距離無線通信モジュール4を備えている。本実施の形態で近距離無線通信システム3は、これら通信端末1A1〜1A3、1B1〜1B3、1C、1D、2によって構成されているが、構成する装置の数は随意増減可能である。
【0016】
無線機1A1〜1A3は、近距離無線通信を実行する構成(近距離無線通信モジュール4)の他に、近距離無線通信とは異なる汎用の無線通信により図示しない他の無線機との間で無線通信を行う機能を有している。スマートホン1B1〜1B3は、近距離無線通信を実行する構成(近距離無線通信モジュール4)の他に、近距離無線通信とは異なる汎用の移動体無線通信により図示しない他のスマートホンや携帯電話との間で音声ならびにデータ通信を行う機能を有している。パーソナルコンピュータ1Cは、近距離無線通信により他の通信端末との間でデータ通信する構成(近距離無線通信モジュール4を含む)を有している。ゲーム機1Dは、近距離無線通信により他のゲーム機等との間で対戦型ゲームを実行する構成(近距離無線通信モジュール4を含む)を有している。無線ヘッドセット2は、操作者の頭部に装着されて、無線機1A1〜1A3、スマートホン1B1〜1B3、パーソナルコンピュータ1C等との間で近距離無線通信を介して音声データの送受を行う装置であって、近距離無線通信モジュール4と無線ヘッドセット2全体を制御するCPU5とマイクロホン6とスピーカ7とを備える。
【0017】
各通信端末1A1〜1A3、1B1〜1B3、1C、1D、2が有する近距離無線通信モジュール4は、マイクロコントロ−ルユニット(以下、MCUと称する)10を備える。MCU10は、HCIファームウェア層10aとアプリケーション層10bとを備える。アプリケーション層10bに実装されるソフトウェアはバーチャルマシン(以下、VMと称す)の管理下で動作する。VMは、MCU10上において、HCIファームウェア層10aやアプリケーション層10bの動作をエミュレートするソフトウェアやフレームワークである。HCIファームウェア層10aには、HCI(ホストコントローラインタフェース)のプロトコルで動作するHCIファームウェアが実装されている。HCIファームウェアには、近距離無線通信の通信制御を行うソフトウェアが含まれる。
【0018】
アプリケーション層10bには、ホストソフトウェアおよびホスト上で動作するアプリケーションが実装されている。アプリケーション層10bに実装されているアプリケーションには、通信制御部14が含まれる。
【0019】
通信制御部14は、近距離無線通信の制御を行うコントローラアプリケーションである。通信制御部14は、通信相手先通信端末との間の近距離無線通信を制御するものであって、第1の接続先特定テーブル14Aと第2の接続先特定テーブル14Bとを備える。
【0020】
図3図4に第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bが示される。第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bには、通信相手先端末との間の通信に関するデータが登録順で格納されている。図中、これらテーブル14A、14Bでは、上段側に行くほど登録時点が古いことを示している。
【0021】
図3に示す第1の接続先特定テーブル14Aでは、近距離無線通信における通信相手先端末を特定するアドレス情報(以下、BDADDRと称する)とリンクキーとが互いに対応付けられて上述した登録順に格納されている。ここで、リンクキーとは、通信相手先端末との間の接続(ペアリング)が成功した時点でその接続を特定するために、接続(ペアリング)毎に個別に付与される接続特定データ(いわばパスワード)である。
【0022】
さらに、第1の接続先特定テーブル14Aでは、直前に接続していた接続相手先端末を最優先として時間を遡って接続順に通信相手先端末に接続優先度が設定されている。この優先度が、本発明における第1の接続優先度である。第1の接続優先度は、indexデータとして第1の接続先特定テーブル14Aに登録されている。indexデータにおいて、接続最優先 は"0" であり、以降、順次"1","2","3"...の順で優先度が低くなる。
【0023】
図4に示す第2の接続先特定テーブル14Bでは、装置機能を特定するクラス・オブ・デバイスデータ(以下、Codと称する)と、通信端末の装置機能を示す名称データとが互いに対応付けられて上述した登録順に格納されている。ここで装置機能とは、通信端末それぞれをその装置の機能により分類したものであって、本実施の形態を例にして具体的にいえば、“無線機“、“スマートホン”、“パーソナルコンピュータ”、“ゲーム機”、“無線ヘッドセット”等がある。
【0024】
図4において、”0×100”は、“パーソナルコンピュータ”(PC)を特定するCodであり、”0×20C”は、“スマートホン”を特定するCodであり、”0×1F00”は、“無線機”を特定するCodであり、”0×814”は、“ゲーム機”を特定するCodである。
【0025】
さらに通信制御部14では、図示はしないが、装置機能の中で通信相手先端末として再接続する際に、再接続を優先する装置機能を順番付けして設定している。この優先度が、本発明における第2の接続優先度である。本実施の形態の通信制御部14では、例として、“無線機”を第1優先装置機能(最優先で接続する装置機能)に設定し、他の装置機能を第2優先装置機能群(第1優先より優先度が低い装置機能群)に設定している。接続先特定テーブル14Bは、通信制御部14に設定されている、再接続を優先する装置機能の順番付けを読み出して用いている。
【0026】
なお、上述した説明では、再接続を優先する装置機能の順番付は、通信制御部14に登録するとしたが、この他、再接続を優先する装置機能の順番付は、第2の接続先特定テーブル14Bに登録してもよい。さらには、再接続を優先する装置機能の順番付は、通信制御部14や第2の接続先特定テーブル14Bに固定的に設定してもよいし、ユーザが任意にそのデータを設定するようにしてもよい。
【0027】
第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bでは、通信相手先端末との間の近距離無線通信状態が変更になる毎にそのデータが更新される。ここで、接続状態が変更になる、とは、
・新たな通信相手先端末との間で新規登録(ペアリング)が成功すること、
・一旦、接続が解除されたのち、接続に関するデータが登録されている既存の通信相手先端末との間で、再接続が開始されること、
が例示される。
【0028】
前者の接続状態の更新時には、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bのデータが更新(追加)される。後者の接続状態の更新時には、第1の接続先特定テーブル14Aにおけるindexデータのみが更新される。
【0029】
第1の接続先特定テーブル14Aに格納された各通信端末のデータと、第2の接続先特定テーブル14Bに格納された各通信端末のデータとは、一対一で対応している。具体的には、第1の接続先特定テーブル14Aの最上段のデータ領域に情報が登録された通信相手先端末と、第2の接続先特定テーブル14Bの最上段のデータ領域に情報が登録された通信相手先端末とは一対一で対応しており、両者は同じ通信相手先端末である。同様に、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bの図中各段のデータ領域に情報が登録された通信相手先端末同士は一対一で対応している。
【0030】
通信制御部14は、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bを用いて、次のような再接続制御を行う。すなわち、再接続時において、通信制御部14は、第2の接続先特定テーブル14Bにおける第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群のうちで、第1の接続先特定テーブル14Aにおける第1の接続優先度が最も高い他の通信端末を通信相手先端末となるよう特定する。
【0031】
次に、無線ヘッドセット2を主端末として、他の通信端末を従端末とした近距離無線通信処理を、図5のフローチャートを参照して説明する。まず、接続相手先端末との間で最初の通信を行う(ペアリングを行う)毎に、各無線ヘッドセット2を含む全ての通信端末の通信制御部14では、その最初の通信によって得られる通信相手先端末の接続に関する情報が、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bに格納される。通常、近距離無線通信規格では、最大、8台の通信端末に関する接続情報が登録可能となっている。
【0032】
図3図4に示す例では、無線ヘッドセット2の通信制御部14における第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bには、“パーソナルコンピュータ(PC)1”、“スマートホン1”、“無線機1”、“スマートホン2”、“スマートホン3”、“無線機2”、“ゲーム機1”、“無線機3”の接続データが、この順序で登録されている。
【0033】
なお、本実施の形態では、無線ヘッドセット2が主端末であると想定して説明を行っているため、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bには、“無線ヘッドセット”の接続データは登録されていない。
【0034】
また、この例では、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bに示すように、最も直近の接続状態では、無線ヘッドセット2(主端末)はスマートホン2(従端末)に接続されていたと想定している。
【0035】
この状態で、無線ヘッドセット2と最直近に接続されていた通信相手先端末(この例ではスマートホン2)との間の接続状態が切断されたのち、接続が再開された場合、まず、主端末(無線ヘッドセット2)の通信制御部14は、第1の接続先特定テーブル14Aのindexデータを参照することで、index"0"が付与された通信相手先端末を、第1の接続優先度が最も高い通信相手先端末、すなわち、最も直近の接続状態で無線ヘッドセット2に接続されていた通信相手先端末として特定する。この場合、図中、上から4段目に登録された接続情報を有する通信相手先端末が第1の接続優先度が最も高い通信相手先端末として特定される(ステップS1、ステップS2)。
【0036】
ステップS1、S2で第1の接続優先度が最も高い通信相手先端末の特定が完了すると、さらに、通信制御部14は、第2の接続先特定テーブル14Bを参照することで、ステップS1、S2で特定した通信相手先端末の装置機能を特定する(ステップS3)。この場合、図中、第2の接続先特定テーブル14Bの上から4段目に登録された通信相手先端末に対応する装置機能が特定される。具体的には、通信相手先端末として“スマートホン2”が、またその装置機能として“スマートホン”がそれぞれ特定される。通信制御部14は、第2の接続先特定テーブル14Bを参照することで、さらに、ステップS3で特定した装置機能“スマートホン”に付与された第2の接続優先度を判断する(ステップS4)。
【0037】
前述したように、第2の接続先特定テーブル14Bでは、最も第2の接続優先度が高い装置機能は“無線機”に設定されているため、通信制御部14は、ステップS3において特定した装置機能“スマートホン”は、第2の接続優先度における最も高い優先度を有していないと判断する。
【0038】
このような判断を下した場合、通信制御部14は、ステップS5に移行して、第1の接続先特定テーブル14Aにおいて参照するindexデータを一つ加算する処理を行う。この場合は、参照するindexデータを、index"0"からindex"1"にインクリメントする。
【0039】
ステップS5の処理(indexデータ加算処理)を行ったのち、通信制御部14は、ステップS2に戻って、第1の接続先特定テーブル14Aを再度参照することで、前回のステップS2で特定した通信相手先端末の次に第1の接続優先度が高い通信相手先端末(換言すれば、最直近接続の一つ前に接続された通信相手先端末)を特定する。この場合、index"1"が付与された図中、上から5段目に登録された接続情報を有する通信相手先端末が特定される。さらに、通信制御部14は、ステップS2において再度特定した通信相手先端末を、第2の接続先特定テーブル14Bで参照することで、ステップS2で再度特定した通信相手先端末の装置機能を特定する(ステップS3)。この場合、図中、第2の接続先特定テーブル14Bの上から5段目に登録された通信相手先端末とその装置機能が特定される。具体的には、通信相手先端末として“スマートホン3”が、また装置機能として“スマートホン”がそれぞれ特定される。
【0040】
さらに、通信制御部14は、ステップS3で特定した装置機能“スマートホン”に付与された第2の接続優先度を再度判断する(ステップS4)。第2の接続先特定テーブル14Bでは、最も第2の接続優先度が高い装置機能は“無線機”に設定されているため、通信制御部14は、ステップS3で特定した装置機能“スマートホン”は、第2の接続優先度における最も高い接続優先度を有していない、と再度判断する。
【0041】
このような判断を下した通信制御部14は、ステップS5に移行して、第1の接続先特定テーブル14Aにおいて参照するindexデータを一つ加算する処理を行う。この場合は、参照するindexデータを、index"1"からindex"2"にインクリメントする。
【0042】
ステップS5の処理(indexデータ加算処理)を行ったのち、通信制御部14は、ステップS2に戻って、第1の接続先特定テーブル14Aを再度参照することで、前回のステップS2で特定した通信相手先端末の次に第1の接続優先度が高い通信相手先端末(換言すれば、最直近接続の二つ前に接続された通信相手先端末)を特定する。この場合、index"2"が付与された図中、上から6段目に登録された接続情報を有する通信相手先端末が特定される。
【0043】
さらに、通信制御部14は、ステップS2で特定した通信相手先端末を第2の接続先特定テーブル14Bでさらに参照することで、第1の接続優先度に基づいて特定された通信相手先端末の装置機能を特定する(ステップS3)。この場合、図中、第2の接続先特定テーブル14Bの上から6段目に登録された通信端末とその装置機能が特定される。具体的には、通信端末として“無線機2”が、また装置機能として“無線機”がそれぞれ特定される。
【0044】
さらに、通信制御部14は、ステップS3で特定した装置機能“無線機”に付与された第2の接続優先度を再度判断する(ステップS4)。第2の接続先特定テーブル14Bでは、第2の接続優先度が最も高い装置機能は“無線機”に設定されているため、通信制御部14は、ステップS3において特定した装置機能“無線機”は、第2の接続優先度における最も高い接続優先度を有している、と判断する。この判断を下した通信制御部14は、特定した無線機2との間の接続(近距離無線通信)を開始する(ステップS6)。
【0045】
以上の処理を行うことで、通信制御部14は、第2の接続先特定テーブル14Bにおける第2の接続優先度が最も高い他の通信端末群(通信相手先端末群)のうちで、第1の接続先特定テーブル14Aにおける第1の接続優先度が最も高い前記他の通信端末を通信相手先端末として特定する。
【0046】
本発明の近距離無線通信システムや通信装置では、上述した再接続を行うことで、操作者が再接続を要望すると、接続順に通信相手先端末の優先度が設定されている第1の接続先特定テーブ14Aと、予め第2の接続先特定テーブル14Bに設定しておいた装置機能による優先度とによって接続相手先端末に自動的に再接続することが可能となり、無用な手動接続を実施する手間が省かれて、作業性が向上する。
【0047】
以上説明した実施の形態では、主端末は、一度に単一の従端末とのみ接続を行う態様であった。しかしながら、主端末が一度に複数の従端末と接続を行うことが可能な態様においても、本発明を実施することができる。この態様では、第1の接続先特定テーブル14Aのみを用いた従前の再接続を行うことも、第1、第2の接続先特定テーブル14A、14Bを用いた本発明の再接続を行ってもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態では、最初に第1の接続先特定テーブル14Aにおける第1の接続優先度の高い順に、第2の接続先特定テーブル14Bにおける対応する通信端末の装置機能の優先度が最も高いか否かを判断することで通信相手先端末を特定しているが、通信相手先端末の特定方法はこれに限らない。例えば、最初に第2の接続先特定テーブル14Bにおいて第2の接続優先度の高い通信端末群について、第1の接続先特定テーブル14Aにおける対応する通信端末の接続順が最も直近である通信端末を通信相手先端末として特定してもよい。また、上述した実施の形態では、第1の接続先特定テーブル14Aおよび第2の接続先テーブル14Bの二つのテーブルを備えているが、1つの接続先特定テーブルに、接続順、BDADDR、リンクキー、CoD、名称データの全てを登録できるようにしてもよい。接続先特定テーブルを一つとした場合も、接続順に基づく第1の接続優先度の高い順に第2の接続優先度を判断してもよいし、第2の接続優先度の高い通信端末のうちから第1の接続優先度の最も高い通信端末を特定してもよい。さらには、再接続する通信相手先端末を特定するために、第2の接続優先度について使用するか否かを、ユーザが設定できるようにしても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1A1〜1A3 無線機
1B1〜1B3 スマートホン
1C パーソナルコンピュータ
1D ゲーム機
2 無線ヘッドセット
3 近距離無線通信システム
4 近距離無線通信モジュール
5 CPU
6 スピーカ
7 マイクロホン
10 MCU
10a HCIファームウェア層
10b アプリケーション層
14 通信制御部
14A 第1の接続先特定テーブル
14B 第2の接続先特定テーブル
図1
図2
図3
図4
図5