(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、図面は本実施形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
【0021】
<定着ベルト>
本実施形態に係る定着ベルトは、基材層と、前記基材層の外周面上に設けられ、フッ素含有樹脂及び前記フッ素含有樹脂よりも硬度が高い第1の粒子を含む表面層と、前記フッ素含有樹脂よりも硬度が高く、前記基材層の外周面に接着し又は一部分が埋め込まれた第2の粒子と、を有して構成されている。
【0022】
図1は本実施形態に係る定着ベルトの一例について厚さ方向の断面の一部を概略的に示している。本実施形態に係る定着ベルトは管状(円筒形状)の無端ベルトであり、
図1に示す定着ベルト62は、基材層5と、基材層5上に配置された表面層3とが接着して構成されている。表面層3にはフッ素含有樹脂2中にフッ素含有樹脂2よりも硬度が高い第1の粒子4が分散している。一方、基材層5の外周面には、表面層3に含まれるフッ素含有樹脂よりも硬度が高い第2の粒子6が、各粒子6の一部分が埋め込まれた状態で分散している。ここで、第2の粒子6が基材層5の外周面に一部分が埋め込まれているとは、第2の粒子6の一部分が基材層5の外周面を構成する表層部に埋め込まれ、残りの部分が基材層5の外周面から突き出た状態で固定されていることを意味する。
【0023】
未定着のトナー画像を記録媒体に定着させるための定着ベルトは、通常、基材層の上に離型性のよい表面層が積層されている。表面層3は、機械的強度の確保や紙等の記録媒体に対する滑り性の向上のため、
図7に示すように、フッ素含有樹脂2と充填剤(フィラー)104が含まれて構成されている。しかし、定着ベルトは、紙等の記録媒体の縁部が通過する部分が局所的に摩耗し易く、基材層5が露出するとトナーの固着などに起因した画像不良が生じ易い。
これに対し、本実施形態に係る定着ベルト62は、耐摩耗性を有する第1の粒子4が表面層3中に分散しているほか、耐摩耗性を有する第2の粒子6が基材層5の外周面に接着又は部分的に埋め込まれた状態で表面層3との界面に存在するため、
図2に示すように表面層3が局所的に摩耗しても耐摩耗性を有する粒子6が残り易く、定着ベルト62の局所的な摩耗による基材層5の露出が抑制されると考えられる。
【0024】
(表面層)
表面層3は、本実施形態に係る定着ベルト62の外周面(記録媒体との接触面)を構成する層であり、フッ素含有樹脂2及び該フッ素含有樹脂2よりも硬い第1の粒子4を含んで構成されている。
【0025】
−フッ素含有樹脂−
フッ素含有樹脂2は、耐熱性を有し、さらにトナーに対する離型性に優れる点で好適である。
表面層3に含まれるフッ素含有樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。これらの中でも特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)又はこれらの変性体は、耐熱性、機械特性等の面から好適である。
これらのフッ素含有樹脂は、それぞれ単独又は2種以上を組み合わせて使用される。また、フッ素含有樹脂の分子量は特に制限はない。
【0026】
−第1の粒子−
表面層3はフッ素含有樹脂2よりも硬度が高い第1の粒子4を含んでいる。表面層3に含まれるフッ素含有樹脂2よりも硬度が高い第1の粒子4を含むことで耐摩耗性並びに紙等の記録媒体に対する滑り性が向上する。
【0027】
表面層3に含まれる第1の粒子4の大きさは、平均粒径1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、2μm以上8μm以下の範囲がより望ましい。
第1の粒子4の形状は特に限定されず、不定形、燐片状、針状、繊維状等の粒子が使用される。これらの中でも不定形な粒子がより望ましい。
【0028】
表面層3に含まれる第1の粒子4として、無機材料を含む粉末(無機材料粉末)、耐熱性樹脂粉末等が挙げられる。
無機材料粉末としては、公知の無機材料粉末から選択して使用される。具体的には、二硫化モリブデン、六方晶窒化硼素、マイカ、グラファイト、タルク、黒鉛等の層状構造を有する潤滑性充填剤;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化セリウム、複合金属酸化物等の金属酸化物;炭化珪素、炭化ホウ素等の炭化物;立方晶窒化硼素、窒化珪素等の窒化物;さらに、ガラス粉末、珪酸アルミ、ホウ酸アルミニウム、金属粉末、炭素繊維、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩化合物等が挙げられる。
【0029】
耐熱性樹脂粉末の耐熱性樹脂としては、例えば、(弗化)ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、全芳香族ポリエステル系樹脂、変性PTFE、架橋PTFE等が挙げられる。
【0030】
さらに、耐熱性樹脂に無機充填剤をマイクロカプセル化した粉末等を使用してもよい。
また、表面層に含まれるフッ素含有樹脂との密着性を向上させるために、フッ素系のカップリング剤で表面処理した充填剤を使用してもよい。
【0031】
−その他の添加剤−
表面層3には、上記第1の粒子4のほか、導電剤などの他の添加剤が含まれていてもよい。
表面層3に含み得る導電剤としては、その配合量によって表面抵抗率が調整されれば特に限定されないが、例えば、以下の電子伝導性系導電剤とイオン伝導性系導電剤が挙げられる。
電子伝導性系導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金等の金属又は合金;酸化錫、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化錫−酸化インジウムや酸化錫−酸化アンチモン複合酸化物等の金属酸化物が挙げられる。
イオン伝電性導電剤としては、スルホン酸塩、アンモニア塩、及び、カチオン系、アニオン系、ノニオン系等の各種の界面活性剤等が挙げられる。
【0032】
表面層の厚さは、ベルトの長寿命化、機械的強度、柔軟性、摩耗耐久性を確保するため、通常5μm以上100μm以下であり、望ましくは10μm以上50μm以下の範囲である。
【0033】
(基材層)
基材層5は表面層3を支持し、定着ベルト62の内周面を構成する層である。
基材層5は定着ベルト62としての機械的強度、柔軟性等を有する材料から構成され、公知の各種樹脂材料、金属材料等から選択される。
【0034】
基材層5を構成し得る樹脂材料としては、一般的に、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる樹脂が適している。
基材層を構成するエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、フッ素樹脂、ポリイミド(PI、熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド)、フッ化ポリイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等が挙げられる。これらの中でも、ポリイミド、フッ化ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等は、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れるので望ましい。
【0035】
基材層5を構成し得る金属材料としては、例えば、SUS、ニッケル、銅、アルミ等の各種金属が挙げられる。
なお、前述した樹脂材料と金属材料を積層して基材層としてもよい。
【0036】
定着ベルト62としての機械的強度を有するとともに柔軟性を確保するため、基材層5の厚さは、通常、20μm以上150μm以下であり、望ましくは40μm以上100μm以下の範囲である。
【0037】
(第2の粒子)
基材層5の外周面には、表面層3に含まれるフッ素含有樹脂2よりも硬度が高い第2の粒子6が接着して、又は、各粒子6の一部分が埋め込まれて分散している。
【0038】
基材層5の外周面に接着又は一部分が埋め込まれた第2の粒子6(以下、「基材層の外周面に固定された第2の粒子」と称する場合がある。)としては、例えば、表面層3に含まれる第1の粒子4と同種の粒子が使用される。すなわち、第2の粒子6は、表面層3に含まれる第1の粒子4と同様に表面層3に含まれるフッ素含有樹脂よりも硬度が高く、耐摩耗性が高いものが好ましい。例えば、二硫化モリブデン、六方晶窒化硼素、マイカ、グラファイト、タルク、黒鉛等の層状構造を有する潤滑性充填剤;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化セリウム、複合金属酸化物等の金属酸化物;炭化珪素、炭化ホウ素等の炭化物;立方晶窒化硼素、窒化珪素等の窒化物;さらに、ガラス粉末、珪酸アルミ、ホウ酸アルミ、金属粉末、炭素繊維、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩化合物等が挙げられる。
【0039】
基材層5の外周面に固定された第2の粒子6は、上記無機材料に限らず、耐熱性を有する樹脂粉末などを用いてもよい。第2の粒子6を構成し得る樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、全芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0040】
基材層5の外周面に固定された第2の粒子6の大きさは、平均粒径1μm以上10μm以下の範囲が望ましく、2μm以上8μm以下の範囲がより望ましい。
第2の粒子6の形状は特に限定されず、不定形、燐片状、針状、繊維状等の粒子が使用される。これらの中でも不定形な粒子がより望ましい。
【0041】
第2の粒子6を基材層5の外周面に接着した状態又は粒子6の一部分が埋め込まれた状態にする方法としては、例えば、第2の粒子6の一部分が基材層5の外周面に直接埋め込まれて固定される様に形成したのち、その上に直接に表面層3を積層する方法、基材層5を構成する樹脂材料と表面層3を構成するフッ素含有樹脂との接着性を向上させるための基材層5の樹脂材料とは異なる材質の耐熱性の接着剤を基材層5の上に薄層として塗布し、第2の粒子の一部分が接着層に埋め込まれ、残りの部分が接着層から突き出た状態で固定したのちに表面層3を積層してもよい。
【0042】
なお、基材層5の外周面に接着剤を使用して第2の粒子6を固定する場合には基材層5の表面の材質は金属であってもよい。
接着層は一般的にプライマーと呼ばれ、耐熱性樹脂又は金属製の基材層とフッ素含有樹脂を含む表面層に対して加熱焼成により接着剤として作用し、基材層5と表面層3とを強く接着するものが望ましい。
【0043】
なお、接着層は必ずしもフッ素含有樹脂に対して加熱接着性を有するものでなくてもかまわないが、基材層5と表面層3に含まれるフッ素含有樹脂2との接着性が不足する場合には、基材層5に対して第2の粒子6の一部分が基材層5の外周面に直接埋め込まれて固定されるように形成したのち、更にその上にプライマーを、第2の粒子が埋没しない程度の厚みで塗布することが好ましい。
【0044】
第2の粒子6の材質は表面層3に含まれる第1の粒子4と同種の材質であることが好適であるが、材質が異なる粒子でも構わない。
【0045】
また、第2の粒子6の大きさは、表面層3に含まれる第1の粒子4の大きさと同程度の粒径でもよいが、第2の粒子6の一部分が基材層5の外周面に埋め込まれてしまうことから、第2の粒子6は、表面層3に分散される第1の粒子4より平均粒径が大きいことがより好ましい。なお、各粒子4,6の平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置によって測定される。
【0046】
基材層5の外周面上で凸状に突出する第2の粒子6の分布密度は、その上に積層される表面層3が摩耗した際に表面層3中に分散された第1の粒子4が露出する分布密度と同程度とすることが望ましい。具体的には、基材層5の外周面に占める第2の粒子6が露出した部分の総面積面積(分布密度)の比率は5%以上25%以下の範囲が好適であり、10%以上20%以下の範囲がより好ましい。なお、基材層5の外周面における第2の粒子6の分布密度は、デジタル式光学顕微鏡(デジタルマイクロスコープ)で観察して求められる。
【0047】
また、耐摩耗性向上の点からトナーに対する離型性を損なわない範囲で、表面層の外周面から摩耗時に露出する第1の粒子の分布密度に比べ、基材層の外周面上に露出する第2の粒子の分散密度を5%以上10%以下の範囲で高くすることがより好ましい。
【0048】
さらに、定着ベルトの表面層以外の層(基材層又は接着層)においても、導電性、熱伝導性、絶縁性、剥離性、摺動性、補強等の目的に応じ、各種添加剤を添加してもよい。各種添加剤としては表面層に添加される添加剤が挙げられる。
【0049】
尚、本実施形態に係る定着ベルトは、主に基材層上にフッ素含有樹脂及び第1の粒子を含む表面層を積層した2層構造を有するが、2層構造に限定されず、基材層と表面層との間に接着層又は他の層が配置されていてもよい。
また、本実施形態に係る定着ベルトは、その形状、大きさ等については特に限定されない。
【0050】
(定着ベルトの製造方法)
本実施形態に係る定着ベルトを製造する方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によって好適に製造される。
【0051】
−第1の製造方法−
先ず、金型として金属製の円筒管の表面に離型剤を焼き付けしたのち、前記金型にポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン(NMP)分散溶液(ポリイミドワニス)をフローコーティング(螺旋巻き塗布)法により塗布し、次いで前記金型を回転しながらポリイミド前駆体を含む塗布液膜を乾燥させながら平滑化し半乾燥状態のポリイミド前駆体塗布膜とする。
【0052】
次に、前記半乾燥状態の塗布膜の形成に使用したポリイミド前駆体溶液(N−メチルピロリドン分散溶液)を更にNMPで希釈した溶液に充填剤粒子(第2の粒子)を分散した分散溶液を、前記半乾燥状態のポリイミド前駆体塗布膜(半乾燥膜)上に前記と同様にフローコーティング、スプレーコーティングなどの塗布法により重ね塗りを行う。更に回転状態で加熱乾燥させて、基材層の表面上に充填剤粒子が基材層に部分的に埋設した状態で分散した基材層が形成される。
【0053】
上記ポリイミド前駆体溶液に充填剤粒子を分散した分散溶液を塗布する代わりに、例えば、半乾燥膜の表面に充填剤粒子を乾式で吹き付けた後、更に粒子を押圧して粒子の一部分を塗膜表面に埋没させることによって基材層を形成してもよい。
【0054】
次に、充填剤粒子の一部が基材層の表面に埋設した状態で分散した基材層の上にフッ素含有樹脂及び充填剤粒子(第1の粒子)を含む表面層を形成する。フッ素含有樹脂及び充填剤粒子を含む表面層形成用塗布液を、浸漬塗布、スプレー塗布法等の公知の塗布法によって基材層上に塗布する。さらに乾燥と焼成を行うことにより本実施形態に係る無端ベルトが製造される。
【0055】
−第2の製造方法−
ポリイミド基材を形成した後、ポリイミド基材上に接着剤によって充填剤粒子(第2の粒子)を接着し、次いで表面層を形成してもよい。
【0056】
具体的には、前記第1の製造方法と同様の金型の表面にポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン分散溶液(ポリイミドワニス)を塗布し、更に乾燥及び焼成を行って一旦ベルト状のポリイミド基材フィルムを作製する。
【0057】
ポリイミド基材を作製した後、基材上にポリイミドとフッ素含有樹脂との接着性を確保するためにプライマー溶液を接着剤としてプライマー溶液に充填剤粒子(第2の粒子)を分散した溶液をポリイミド基材上に塗布してポリイミド基材の表面に充填剤粒子の一部が接着した状態で分散した基材層を形成する。
通常、プライマー層の厚さは数μm以下で分散溶液を塗布及び乾燥して溶媒が揮発した後には、充填剤粒子の一部分はプライマー層に埋没し、残りの部分がポリイミド基材の表面上で凸形状に突き出た状態となる。
【0058】
上記のようにして充填剤粒子がポリイミド基材の表面に接着した状態で分散した基材上にフッ素含有樹脂及び充填剤粒子(第2の粒子)を含む表面層形成用塗布液を浸漬塗布法、スプレー塗布法等の公知の塗布法によって塗布し、さらに乾燥と焼成を行うことにより本実施形態に係る定着ベルトが製造される。
【0059】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る定着ベルトが適用される画像形成装置について説明する。
本実施形態に係る定着ベルトを適用する画像形成装置は、記録媒体上の未定着のトナー像を熱及び圧力を加えて定着させるものであれば特に限定されない。なお、本実施形態に係る定着ベルトは、加圧部材(加圧ベルト)として特に好適に用いられる。
ここでは、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。
【0060】
図3に示すように、本実施形態に係る画像形成装置100は、像形成部として、電子写真方式により各色成分のトナー像を形成する複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備える。また、転写部として、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより各像保持体11の表面に形成した各色成分のトナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)する一次転写部10と、中間転写ベルト上に転写した重なり合ったトナー像を記録媒体である用紙Pに一括転写(二次転写)する二次転写部20を有する。さらに、定着部として、二次転写された画像を用紙P上に定着する定着装置60を備える。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有する。
【0061】
各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、矢印A方向に回転する像保持体(感光体ドラム)11と、感光体ドラム11を帯電する帯電器12と、感光体ドラム11上に静電潜像を形成するレーザ露光器13と、各色成分トナーを収容し感光体ドラム11上の静電潜像をトナーにより可視像化してトナー像を形成する現像器14とを有する。また、感光体ドラム11上に形成する各色成分のトナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16と、感光体ドラム11上の残留トナーを除去する異物除去部材(ドラムクリーナ)17と、を有する。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の順に略直線状に配置されている。
【0062】
中間転写ベルト15は、各種ロールにより、
図3に示す矢印B方向に循環駆動する。各種ロールとして、中間転写ベルト15を駆動する駆動ロール31と、中間転写ベルト15を支持する支持ロール32と、中間転写ベルト15に一定の張力を与えるとともに蛇行を防止する張力ロール33と、二次転写部20に設ける背面ロール25と、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けるクリーニング部背面ロール34とを有している。
【0063】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟み感光体ドラム11に対向する一次転写ロール16を有する。二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像を保持する面側に配置している二次転写ロール(転写部材)22と、二次転写ロール22の対向電極として中間転写ベルト15の裏面側に配置された背面ロール25と、背面ロール25に二次転写バイアスを印加する給電ロール26とを有する。
【0064】
二次転写部20の下流側に、中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去する中間転写ベルトクリーナ35が配置されている。イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成のタイミングをとるための基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配置されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配置されている。
【0065】
用紙搬送系には、用紙収容部50と、用紙収容部50中の用紙(P)を取り出して搬送するピックアップロール51と、用紙Pを搬送する搬送ロール52と、用紙Pを二次転写部20へと送る搬送台53と、二次転写ロール22により二次転写された用紙Pを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55と、用紙Pを定着装置60に導く定着入口ガイド56とを有する。
【0066】
次に、本実施形態に係る画像形成装置100の基本的なプロセスについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置100では、画像読取装置(図示せず)等から出力される画像データに画像処理を施した後、画像データをY、M、C、Kの4色の色材階調データに変換し、レーザ露光器13に出力する。レーザ露光器13は、入力される色材階調データに応じ、例えば、半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの矢印A方向に回転する各感光体ドラム11に照射する。各感光体ドラム11の表面を帯電器によって帯電した後、レーザ露光器13によって表面を走査露光し、静電潜像を形成する。形成した静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0067】
次に、感光体ドラム11上に形成されたトナー像を、一次転写部10において中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写を行う。中間転写ベルト15は矢印B方向に移動してトナー像を二次転写部20に搬送する。用紙搬送系は、トナー像を二次転写部20に搬送するタイミングに合わせて、用紙収容部50から用紙Pを供給する。
二次転写部20では、中間転写ベルト15上に保持された未定着のトナー像を、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれた用紙P上に静電転写する。その後、トナー像を静電転写した用紙Pを搬送ベルト55により定着装置60まで搬送し、定着装置60は、用紙P上の未定着トナー像に熱及び圧力を加え、用紙Pにトナー像を定着する。定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置100の排出部に設けた排紙受け部(不図示)に搬送される。
【0068】
<定着装置>
次に、
図4及び
図5を用いて定着装置60についてより具体的に説明する。
図4に示すように、定着装置60は、回転方向Cに回転駆動する定着ロール(第1の回転体)61、定着ロール61の回転に伴って回転方向Dに回転(従動回転)する定着ベルト(第2の回転体)62、定着ベルト62の内側に配置され、定着ベルト62を定着ロール61に圧接させる圧力部材としての圧力パッド64(ここでは、弾性圧力パッド64bと、高剛性パッド64aにより構成されている)、及びシート状の摺動部材68から主要部が構成されている。
また、用紙Pを定着ロール61から剥離する補助手段として、接触領域Nの下流側に、剥離補助部材70が設置されている。剥離補助部材70は、定着ロール61の回転方向Cと対向する向き(カウンタ方向)に、定着ロール61と近接する状態で配置される剥離バッフル71と、剥離バッフル71を保持するホルダ72とで構成されている。
なお、本実施形態に限定されず、圧力部材は、定着ベルト62と定着ロール61とが相対的に加圧されるように配置されていればよい。従って、定着ベルト62側が定着ロール61に加圧されても良く、定着ロール61側が定着ベルト62を介して圧力パッド64によって加圧されても良い。
【0069】
定着ロール61は、金属製のコア(円筒状芯金)611の周囲に耐熱性の弾性体層612、及び離型層613を積層して構成されている。
コア611の外径及び肉厚は、本実施形態では、通常、外径20mm以上40mm以下であり、例えば、アルミニウム製の場合は1mm以上3mm以下、SUS又は鉄製の場合は0.4mm以上1.5mm以下程度である。
耐熱性の弾性体層612の材料としては、例えば、硬度が15°以上45°以下(JIS−A)程度のシリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
【0070】
離型層613の材料としては、フッ素樹脂が挙げられる。具体的には、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。また、それらの複合材料、又それらの樹脂にカーボン、アルミナ、硫酸バリウム等のフィラーを配合したものを使用してもよい。離型層613の厚みは、望ましくは5μm以上50μm以下、より望ましくは10μm以上40μm以下である。本実施形態では、厚さ30μmのPFAチューブを被覆している。
【0071】
定着ロール61の内部には、加熱手段としてのハロゲンヒータ66が配置されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置100の制御部40(
図3参照)は、温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンヒータ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が設定温度(例えば、170℃)を維持するように調整する。
【0072】
定着ベルト62は、内部に配置された圧力パッド64とベルト走行ガイド63と、さらに
図5に示すように、両端部に配置された蛇行防止部材80によって回転自在に支持されている。ベルト走行ガイド63は低摩擦材料で形成され、定着ベルト62の内周面との摺擦抵抗が低減される。また、ベルト走行ガイド63は低熱伝導性材料で形成され、定着ベルト62からの熱伝導を抑制している。
【0073】
そして、定着ロール61と定着ベルト62は互いの外周面で接触して用紙(P)が供給される接触領域N(押圧部)を形成し、定着ベルト62は接触領域Nにおいて定着ロール61に対して相対的に加圧して配置されている。接触領域Nには、定着入口ガイド56を介し用紙Pが供給される。
なお、接触領域Nに供給する記録媒体は、用紙Pに限られず、例えばプラスチックフィルム等のシートであってもよい。シートとしては、画像が記録される記録媒体に限られるものでなく、種々の用途のシートが用いられる。また、その枚数としては、1枚でもよいし、ラミネートシートを作製する場合のように複数枚であってもよい。
【0074】
圧力パッド64は、定着ベルト62の内側に配置され、定着ベルト62を介して定着ロール61に押圧され、これにより定着ロール61と定着ベルト62との間で接触領域Nが形成されている。圧力パッド64は、ホルダ65に支持され、弾性圧力パッド(プレニップ用)64bを接触領域Nの入口側に配置し、幅の広い接触領域Nを確保している。また、高剛性パッド(剥離ニップ用)64aを接触領域Nの出口側に配置し、定着ロール61に歪みを与えている。
弾性圧力パッド64bの材料は、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の弾性体や板バネ等が挙げられる。また、定着ロール61の外周面に倣うように凹形状を有している。
高剛性パッド64aの材料は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性樹脂や、それらの樹脂にガラスファイバー等を添加し強化した材料、鉄、アルミニウム、SUS等の金属が挙げられる。
【0075】
弾性圧力パッド64b及び高剛性パッド64aの定着ベルト62と接する面に摺動部材68が設けられ、定着ベルト62の内周面と圧力パッド64との摺動抵抗を低減している。摺動部材68の材料は、例えば、シンタード成型したPTFE樹脂シート、フッ素樹脂を含浸させたガラス繊維シート、ガラス繊維にフッ素樹脂のフィルムシートを加熱融着して挟み込んだ積層シート等が挙げられる。
なお、圧力パッド64と定着ロール61との間の圧力は、バネ等の部材(図示せず)によって荷重が負荷され、その荷重は、例えば、A4サイズ対応(A4SEF通紙幅対応)の装置で100N以上350N以下、A3サイズ対応(A4LEF通紙幅対応)の装置で150N以上450N以下程度である。
【0076】
ホルダ65には、定着装置60の長手方向にわたって、潤滑剤塗布部材67が配置されている。潤滑剤塗布部材67は、定着ベルト62の内周面に対して接触するように配置され、アミノ変性シリコーンオイル等の潤滑剤を適量供給する。これにより、定着ベルト62と摺動部材68との摺動部に潤滑剤を供給し、摺動部材68を介した定着ベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗がさらに低減される。
【0077】
また、本実施形態に係る定着装置60は、定着ベルト62の端面に接触し、その蛇行を防止する蛇行防止部材80を備えている。
図5は、蛇行防止部材を説明する図である。
図5に示すように、蛇行防止部材80は、支持部801と、フランジ部802と、挿入部803と、を有し、その挿入部803を定着ベルト62の両端部から挿入し、フランジ部802を定着ベルト62が蛇行した際にその端面と突き当たるように一定の距離で離間させた状態で配置される。
【0078】
定着ベルト62はベルト走行ガイド63の外周面に沿って回転する。また、定着ベルト62は圧力パッド64よって定着ロール61に押圧され、その押圧力による定着ロール61からの摩擦力で従動して回転する。この際、部品寸法のバラツキや接触領域Nを通過する用紙Pの影響を受ける。そして、定着ロール61からの摩擦力が幅方向で不均一になると、定着ベルト62は軸方向に移動する力が働き、いずれかの端部に片寄る、いわゆるベルトウォークが発生する。蛇行防止部材80を備えることにより定着ベルト62の蛇行が抑制される。
なお、蛇行防止部材80は、PPS、PET、PBT、LCP等の耐熱性樹脂や、更に耐久性や摩擦係数を下げるためのフィラーを加えたものによって形成されている。
【0079】
この構成の定着装置60では、未定着のトナー像を有する用紙Pを定着ロール61と定着ベルト62とが接触する領域Nに通過させるときに、未定着のトナー像を有する面は定着ロール61に、反対側の面は定着ベルト62にそれぞれ接触して加圧されるとともに、ハロゲンヒータ66によって定着ロール61を介して用紙P上の未定着のトナー像が加熱されて用紙Pに定着される。
【実施例】
【0080】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
<画像形成装置による通紙試験>
後述する実施例1と比較例1で作製した無端ベルトを、
図4に示す構成を有する定着装置に定着ベルトとして装着した。
定着装置中の定着ロールは、肉厚0.5mm、外径25mmの炭素鋼管の表面上に、シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製LSR)を厚さ0.6mm、最外表面層として、厚さ30μmのPFAチューブ(PFA:テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)が一体に被覆されるように、内径約26.2mmの金型にPFAチューブ及び炭素鋼管を挿入したのちPFAチューブ及び炭素鋼管の隙間にシリコーンゴムを注入成型することにより成形した。尚、PFAチューブは、PFA(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製950HP−Plus)を押し出し成型し、内面をエキシマレーザーにより処理した。
【0082】
さらに、この定着装置を
図3に示す構成を有する画像形成装置に取り付け、以下の条件で通紙試験を行った。
用紙はレターサイズの富士ゼロックス社製 XEROX4200紙(80g/cm
2)を使用し、画像密度は文字画像で5%とした。
画像形成装置により75000枚の画像形成を実施し、走行終了後の表面層の摩耗量の評価を行った。
【0083】
尚、通紙試験に際し、定着ロールと定着ベルトとの接触域の圧力(ニップ圧力)を、通常の1.3倍に増大し、また、定着ベルトの内側に供給するオイル潤滑剤の量は、通常の30%とした。このように、評価条件を厳しい条件とし、定着ベルトの耐摩耗性を評価した。
【0084】
<表面層の最大摩耗量>
画像形成前の定着ベルトの厚さと75000枚の画像形成後の厚さをそれぞれ測定し、画像形成前後での厚さ変化量を摩耗量とした。定着ベルトの軸方向に沿って定着ベルトの全長を5mm間隔で測定した。また、周方向の測定位置は90°置きの4ヶ所とした。それらの測定値の中の最大値を表面層の最大摩耗量とした。また基材層の摩耗はごく僅かで測定バラツキ精度の範囲内であるため0とした。
なお、表面層の厚さの測定は、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の渦電流式膜厚計ISOSCOPE MP30を使用して行った。
【0085】
(実施例1)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0086】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0087】
次に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に7.5質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行った。さらに乾燥を行うことにより基材層形成用乾燥膜を形成した。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約5%であり、凸状部の平均高さは約1.5μmであった。
【0088】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名BMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0089】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0090】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0091】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は21.1μmであった。
【0092】
(実施例2)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0093】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0094】
次に、充填剤として平均粒径5.2μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH−60)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に7.5質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布し、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約5%で、凸状部の高さは約3.5μmであった。
【0095】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名BMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0096】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0097】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0098】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は19.0μmであった。
【0099】
(実施例3)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0100】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0101】
次に、充填剤として平均粒径5.2μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名BMH−60)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に22質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行い、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約15%で、凸状部の高さは約3.5μmであった。
【0102】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0103】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0104】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0105】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は17.9μmであった。
【0106】
(実施例4)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0107】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0108】
次に、充填剤として平均粒径5.2μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH−60)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に35質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行い、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約25%で、凸状部の高さは約3.5μmであった。
【0109】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0110】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0111】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0112】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は16.9μmであった。
【0113】
(実施例5)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0114】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0115】
次に、充填剤として平均粒径5.2μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH−60)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に43質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行い、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約30%で、凸状部の高さは約3.5μmであった。
【0116】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0117】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0118】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0119】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は15.2μmであった。但し、ベルト両端摩耗部においてトナーの固着により軽微な画質不良が発生した。
【0120】
(実施例6)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0121】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0122】
次に、充填剤として平均粒径5.2μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH−60)をポリイミドとフッ素樹脂との接着用のプライマー溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名PJ−YL902)に34質量%分散した溶液を前記ポリイミド基材上にフローコーティングにより塗布し、さらに乾燥を行った。
ベルト表面上から観察した基材表面中の充填剤粒子による凸状部の総面積は約25%で、凸状部の平均高さは約4.0μmであった。
【0123】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
【0124】
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0125】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有するポリイミド基材上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布液を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行った。
【0126】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0127】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は15.8μmであった。
【0128】
(実施例7)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0129】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0130】
次に、充填剤として平均粒径8.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBA)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に35質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行い、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約25%で、凸状部の高さは約6.5μmであった。
【0131】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2.1μmの硫酸バリウム(堺化学株式会社製:商品名硫酸バリウムBMH)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0132】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0133】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0134】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は14.8μmであった。
【0135】
(実施例8)
以下の操作に従い、無端ベルトを作製した。
先ず、外径30mm、長さ500mmのアルミニウム製の円筒管の表面をブラスト処理により粗面化し、さらに、シリコーン系離型剤を塗布し、200℃で60分間乾燥した。その後、さらに340℃で30分間加熱して焼き付け、表面粗さRaが0.8μmで、表面にシリコーン系離型剤を焼き付けた金型を用意した。
【0136】
次に、用意した金型の表面中央部400mmに、フローコーティング(螺旋巻き塗布)法により、粘度120Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(宇部興産株式会社製:商品名UワニスS)を塗布した。次いで、金型を100℃で50分間回転しながら塗布液を乾燥し、ポリイミド前駆体を含む平滑化した半乾燥膜を作製した。
【0137】
次に、充填剤として平均粒径8.4μmの酸化アルミニウム(フジミインコーポレーテッド社製:商品名WA#1500)を粘度15Pa・sに調整したポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液に37質量%分散した溶液を前記半乾燥膜上にフローコーティングにより塗布を行い、さらに乾燥を行った。
基材層形成用乾燥膜の表面(外周面)側から観察したところ、表面における充填剤粒子による凸状部の総面積は約25%で、凸状部の高さは約6.7μmであった。
【0138】
一方、フッ素樹脂(PFA)分散溶液(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製:商品名945HP−Plus)に、充填剤として平均粒径2μmの酸化アルミニウム(フジミインコーポレーテッド社製:商品名WA#6000)を、固形分中の割合が20質量%となるように配合した。
次いで、導電剤としてカーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラック分散溶液)を、固形分中の割合が2質量%となるように配合した。さらに、水及び増粘剤により溶液の粘度を調整し、表面層形成用塗布液を調製した。
【0139】
次に、前記金型表面に形成した、表面に凸状部を有する基材層形成用乾燥膜上に、前記表面層形成用塗布液を浸漬塗布法により塗布した。さらに塗布膜を80℃で10分間乾燥させた。さらに、380℃で60分間焼成を行い、基材層形成用乾燥膜中のポリイミド前駆体を硬化させて基材層及び表面層が積層した被膜を形成した。
【0140】
次いで、金型の表面に形成された被膜を金型表面から取り外し、さらに、両端部を切断して無端ベルトを得た。得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周面上に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0141】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。ベルト表面層の最大摩耗量は14.1μmであった。
【0142】
(比較例1)
実施例1において基材層の表面上に凸状部を形成するための充填剤分散液の塗布を実施しなかった以外は実施例1と同様にして無端ベルトの作製を行った。
得られた無端ベルトは、ポリイミド樹脂を含む厚さ70μmの基材層と、基材層の外周に形成された厚さ23μmの表面層とを有している。また、無端ベルトの寸法は、内径30mm、全長243mmである。
【0143】
このように作製した無端ベルトを定着ベルトとして実施例1と同様に定着装置に装着し、画像形成装置を使用して前記通紙試験を行った。結果を
図6に示す。表面層の最大摩耗量は約23μmであり、用紙両縁部が通過する箇所で表面層が摩耗して基材層の一部の露出が発生した。
【0144】
図6に示す結果から、基材層の表面上に凸状部を設けた定着ベルトの方が表面層の摩耗量が少なく、表面層の最大摩耗量は効果的に抑制されていることが分かる。
【0145】
実施例及び比較例で作製した定着ベルトの主な構成と摩耗量の評価結果を下記表1に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
以上、実施形態及び実施例について説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施してもよい。