特許第6361138号(P6361138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361138
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】発光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20180712BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20180712BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20180712BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
   C07D209/86
   C07D403/14
   C09K11/06 690
【請求項の数】6
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2013-511447(P2013-511447)
(86)(22)【出願日】2013年3月4日
(86)【国際出願番号】JP2013055876
(87)【国際公開番号】WO2013133224
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】特願2012-47589(P2012-47589)
(32)【優先日】2012年3月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】長尾 和真
(72)【発明者】
【氏名】市橋 泰宜
(72)【発明者】
【氏名】池田 篤
(72)【発明者】
【氏名】富永 剛
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/148909(WO,A1)
【文献】 特開平08−003547(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/162162(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
H05B 33/00 − 33/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層および発光層を備え、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、
前記正孔輸送層は下記一般式(1)で表される化合物を含み、かつ前記発光層は、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物であって、下記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子。
【化1】
(一般式(1)中、R〜R18は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、−P(=O)R1920からなる群より選ばれる。R19およびR20は、アリール基またはヘテロアリール基である。Lは、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。但し、2つのカルバゾール骨格は、R〜R10のいずれかの位置と、R11〜R14のうちいずれかの位置でLと連結する。なお、R〜R18には、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびカルバゾール骨格は含まれない。Rは、下記一般式(2)で表される基である。
【化2】
一般式(2)中、R21〜R25はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、または置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基である。ただし、R21〜R25の少なくとも2つは、アルキル基、アリール基、アルコシキ基、またはハロゲンで置換されたアリール基、もしくは置換基を有しないアリール基であって、該アリール基のうち置換基を除く部分は芳香族炭化水素のみで構築される。Rは、下記一般式(3)で表される基である。
【化3】
一般式(3)中、R26〜R30は、水素である。なお、一般式(1)において、RとRが異なる基である。
【化4】
一般式(4)中、R51〜R55、およびR56〜R57はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。Yは、−N(R58)−、−C(R5960)−、酸素原子、または硫黄原子である。R58〜R60はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。R58〜R60は、隣接する置換基同士で環を形成してもよい。L〜Lは、単結合またはアリーレン基である。X〜Xは、炭素原子または窒素原子を表し、X〜Xが窒素原子の場合には、窒素原子上の置換基であるR51〜R55は存在しない。但し、X〜X中の窒素原子の数は、1〜3である。Lは、単結合またはアリーレン基である。)
【請求項2】
前記電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物は、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【化5】
(一般式(5)中、R51〜R57、およびL〜Lは前記と同様である。R61は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。Lはアリーレン基である。)
【請求項3】
前記電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物は、下記一般式(6)または(7)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
【化6】
【化7】
(一般式(6)または式(7)中、R51〜R57、およびL〜Lは前記と同様である。R61は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。)
【請求項4】
前記正孔輸送層は、下記一般式()で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の発光素子。
【化8】
(式()中、R〜R、およびR18は前記と同様であり、R〜R、R〜R17は水素である。)
【請求項5】
前記一般式(4)〜(7)において、X〜X中の窒素原子の数は1〜3であり、且つX〜Xのうちの隣接する2つ以上が同時に窒素原子になることはないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の発光素子。
【請求項6】
前記一般式(4)〜(7)において、X、X、Xが窒素原子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを光に変換できる発光素子に関する。より詳しくは、本発明は、表示素子、フラットパネルディスプレイ、バックライト、照明、インテリア、標識、看板、電子写真機および光信号発生器などの分野に利用可能な発光素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔が両極に挟まれた有機蛍光体内で再結合する際に発光するという有機薄膜発光素子の研究が、近年活発に行われている。この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、蛍光材料を選ぶことによる多色発光が特徴であり、注目を集めている。
【0003】
この研究は、コダック社のC.W.Tangらによって有機薄膜素子が高輝度に発光することを示して以来、多数の実用化検討がなされており、有機薄膜発光素子は、携帯電話のメインディスプレイなどに採用されるなど着実に実用化が進んでいる。しかし、まだ技術的な課題も多く、中でも素子の高効率化と長寿命化の両立は大きな課題のひとつである。
【0004】
素子の駆動電圧は、正孔や電子といったキャリアを発光層まで輸送するキャリア輸送材料に大きく左右される。このうち正孔を輸送する材料(正孔輸送材料)としてカルバゾール骨格を有する材料が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。また、上記カルバゾール骨格を有する材料は高い三重項準位を有することから、発光層のホスト材料として知られている(例えば、特許文献3〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−3547号公報
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2010−0079458号公報
【特許文献3】特開2003−133075号公報
【特許文献4】国際公開第2011/132683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では素子の駆動電圧を十分に下げることは困難であった。また、素子の駆動電圧を下げることができたとしても、素子の発光効率、耐久寿命が不十分であった。このように、高い発光効率、さらに耐久寿命も両立させる技術は未だ見出されていない。
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、発光効率および耐久寿命を改善した有機薄膜発光素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の発光素子は、陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層および発光層を備え、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、前記正孔輸送層は、下記一般式(1)で表される化合物を含み、かつ前記発光層は、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物であって、下記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする。
【化1】
(一般式(1)中、R〜R18は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、−P(=O)R1920からなる群より選ばれる。R19およびR20は、アリール基またはヘテロアリール基である。Lは、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。但し、2つのカルバゾール骨格は、R〜R10のいずれかの位置と、R11〜R14のうちいずれかの位置でLと連結する。なお、R〜R18には、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびカルバゾール骨格は含まれない。Rは、下記一般式(2)で表される基である。
【化2】
一般式(2)中、R21〜R25はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、または置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基である。ただし、R21〜R25の少なくとも2つは、置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基であって、芳香族炭化水素のみで構築される。Rは、下記一般式(3)で表される基である。
【化3】
一般式(3)中、R26〜R30はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、または置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基であって、芳香族炭化水素のみで構築される。
【化4】
一般式(4)中、R51〜R55、およびR56〜R57はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。Yは、−N(R58)−、−C(R5960)−、酸素原子、または硫黄原子である。R58〜R60はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。R58〜R60は、隣接する置換基同士で環を形成してもよい。L〜Lは、単結合またはアリーレン基である。X〜Xは、炭素原子または窒素原子を表し、X〜Xが窒素原子の場合には、窒素原子上の置換基であるR51〜R55は存在しない。但し、X〜X中の窒素原子の数は、1〜3である。Lは、単結合またはアリーレン基である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高い発光効率を有し、さらに十分な耐久寿命も兼ね備えた有機電界発光素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、陽極と陰極の間に少なくとも正孔輸送層および発光層を備え、電気エネルギーにより発光する発光素子であって、前記正孔輸送層が下記一般式(1)で表される化合物を含み、かつ前記発光層が電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物である下記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする発光素子である。
【0011】
本発明に用いられる、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する一般式(4)で表される化合物は、高い電子注入輸送能を有するため、発光層として用いることで高発光効率かつ低駆動電圧の有機薄膜発光素子を与えることができる。しかしながらこの発光層は、非常に高い電子注入輸送能を有するため、組み合わせて用いられる正孔輸送層の種類によっては、発光層内の再結合領域が正孔輸送層側に局在化し、三重項エネルギーと電子が正孔輸送層に漏れるため、素子の発光効率低下と耐久性劣化の要因となることがある。
【0012】
これに対し本発明者らは、一般式(1)で表される化合物を正孔輸送層として用いることで、高い発光効率と耐久性の大幅な改善が可能となることを見出した。つまり、一般式(1)で表される化合物は、高い電子ブロック性、高い三重項エネルギーを有しており、発光層内の再結合領域が正孔輸送層側に局在化しても、三重項エネルギーと電子を発光層内に閉じ込めることができるため、高効率化と長寿命化が可能となった。
【0013】
すなわち、正孔輸送層に一般式(1)で表される化合物を用い、かつ発光層に電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する一般式(4)で表される化合物を用いることは、高発光効率と耐久性を両立する上で好ましい組み合わせである。
【0014】
本発明における一般式(1)で表される化合物について詳細に説明する。
【化5】
【0015】
一般式(1)中、R〜R18は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、シリル基、−P(=O)R1920からなる群より選ばれる。R19およびR20は、アリール基またはヘテロアリール基である。Lは、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。但し、2つのカルバゾール骨格は、R〜R10のいずれかの位置と、R11〜R14のうちいずれかの位置でLと連結する。なお、R〜R18には、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびカルバゾール骨格は含まれない。
【0016】
は、下記一般式(2)で表される基である。
【化6】
【0017】
一般式(2)中、R21〜R25はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、または置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基である。ただし、R21〜R25の少なくとも2つは、置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基であって、芳香族炭化水素のみで構築される。
【0018】
は、下記一般式(3)で表される基である。
【化7】
一般式(3)中、R26〜R30はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、または置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基であって、芳香族炭化水素のみで構築される。
【0019】
一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、分子中にカルバゾール骨格が2個含まれるものであり、R〜R18には、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびカルバゾール骨格は含まれない。これにより、高い薄膜安定性と優れた耐熱性を有する。なお、カルバゾール骨格が3個以上含まれる場合は熱的分解が懸念されるため2個であることが好ましい。
【0020】
また、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、N上の置換基が、芳香族炭化水素のみで構築される、置換基を有するもしくは置換基を有しないアリール基を少なくとも2つ有するフェニル基であることにより、電子ブロック性に優れた性能を示す。N上の置換基であるフェニル基が、少なくとも2つのアリール基を置換基として有することで、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物のガラス転移温度(Tg)が高くなり、電子ブロック性が顕著に向上する。その結果、発光層内の電荷バランスを改善し、発光効率や寿命などの発光素子性能を向上させることができる。また、N上の置換基であるフェニル基の、置換基であるアリール基の数が3つ以上になると、立体的に混み合うためにその合成が困難となる。したがって、前記アリール基の数は2つであることが好ましい。
【0021】
また、一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物が、一般式(8)で表される化合物であることにより、高い正孔輸送性を発現し、層内での正孔移動度の向上に繋がるため低駆動電圧が可能となる。
【化8】
式(8)中、R〜R、およびR18は前記と同様である。
【0022】
また、カルバゾール骨格が連結されることで、カルバゾール骨格自体が有する高い三重項準位を維持することが可能であり、容易な失活を抑制できるため、高い発光効率が達成される。特に、一般式(1)および(8)におけるR〜Rが異なる基であることが好ましい。この場合、分子が非対称構造となるため、カルバゾール骨格同士の相互作用抑制効果が高くなり、安定な薄膜が形成でき、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0023】
また、一般式(1)におけるR〜R30、ならびに一般式(8)におけるR〜R、およびR18には、アントラセン骨格およびピレン骨格は含まれない。すなわち、一般式(1)および一般式(8)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、分子内にアントラセン骨格およびピレン骨格を含まないことが好ましい。アントラセン骨格およびピレン骨格は、それ自体の三重項準位が低く、本発明のカルバゾール骨格を有する化合物が、アントラセン骨格またはピレン骨格を置換基として有した場合、化合物の三重項準位を下げてしまうからである。一般式(1)および一般式(8)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物が正孔輸送層に用いられる場合、三重項準位が低いと、三重項発光性ドーパントを含有する発光層に直接接していると三重項励起エネルギーの漏れが発生し、発光効率が低下する。また、一般式(1)および一般式(8)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物が発光層に用いられる場合、三重項発光材料の励起エネルギーを閉じ込める効果が十分に発揮できず、発光効率が低下する。
これらの置換基のうち、水素は重水素であってもよい。
【0024】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などの飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。置換されている場合の追加の置換基には特に制限は無く、例えば、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等を挙げることができ、この点は、以下の記載にも共通する。また、アルキル基の炭素数は特に限定されないが、入手の容易性やコストの点から、通常1以上20以下、より好ましくは1以上8以下の範囲である。
【0025】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、シクロアルキル基とは、例えば、シクロプロピル、シクロヘキシル、ノルボルニル、アダマンチルなどの飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキル基部分の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。
【0026】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、複素環基とは、例えば、ピラン環、ピペリジン環、環状アミドなどの炭素以外の原子を環内に有する脂肪族環を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。複素環基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
一般式(1)で表される化合物において、アルケニル基とは、例えば、ビニル基、アリル基、ブタジエニル基などの二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0027】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、シクロアルケニル基とは、例えば、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基などの二重結合を含む不飽和脂環式炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シクロアルケニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アルキニル基とは、例えば、エチニル基などの三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。アルキニル基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上20以下の範囲である。
【0028】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アルコキシ基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などのエーテル結合を介して脂肪族炭化水素基が結合した官能基を示し、この脂肪族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アルキルチオ基の炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アルキルチオ基の炭素数は特に限定されないが、通常、1以上20以下の範囲である。
【0029】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アリールエーテル基とは、例えば、フェノキシ基など、エーテル結合を介した芳香族炭化水素基が結合した官能基を示し、芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アリールチオエーテル基とは、アリールエーテル基のエーテル結合の酸素原子が硫黄原子に置換されたものである。アリールエーテル基における芳香族炭化水素基は置換基を有していても有していなくてもよい。アリールエーテル基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
【0030】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ターフェニル基などの芳香族炭化水素基を示す。アリール基は、置換基を有していても有していなくてもよい。アリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、6以上40以下の範囲である。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、ヘテロアリール基とは、フラニル基、チオフェニル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、ピラジニル基、ナフチリジル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、インドリル基などの炭素以外の原子を一個または複数個環内に有する環状芳香族基を示し、これは無置換でも置換されていてもかまわない。ヘテロアリール基の炭素数は特に限定されないが、通常、2以上30以下の範囲である。
【0031】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、ハロゲンとは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を示す。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基は、置換基を有していても有していなくてもよく、置換基としては例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、これら置換基はさらに置換されてもよい。
【0032】
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、アミノ基は置換基を有していても有していなくてもよく、置換基としては例えばアリール基、ヘテロアリール基などが挙げられ、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。
一般式(1)および一般式(8)で表される化合物において、シリル基とは、例えば、トリメチルシリル基などのケイ素原子への結合を有する官能基を示し、これは置換基を有していても有していなくてもよい。シリル基の炭素数は特に限定されないが、通常、3以上20以下の範囲である。また、ケイ素数は、通常、1以上6以下の範囲である。
【0033】
一般式(1)で表される化合物において、Lは、単結合、アリーレン基またはヘテロアリーレン基である。但し、2つのカルバゾール骨格は、R〜R10のいずれかの位置と、R11〜R14のうちいずれかの位置でLと連結する。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ターフェニレン基、アントラセニレン基、ピレニレン基など、ヘテロアリーレン基としては、フラニレン基、チオフェニレン基、ピリジレン基、キノリニレン基、イソキノリニレン基、ピラジニレン基、ピリミジレン基、ナフチリジレン基、ベンゾフラニレン基、ベンゾチオフェニレン基、インドリレン基、ジベンゾフラニレン基、ジベンゾチオフェニレン基、カルバゾリレン基などが例示される。これらは置換基を有していても有していなくてもよい。
なお、2つのカルバゾール骨格が、R〜R10のいずれかの位置と、R11〜R14のうちいずれかの位置でLと連結するとは、例えばRの位置でLと連結する場合を例に挙げると、一方のカルバゾール骨格におけるRが結合している炭素原子とLが直接結合することをいい、かかる場合、置換基であるRは存在しない。
【0034】
さらに、本発明の発光素子は、発光層が、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物であって、下記一般式(4)で表される化合物を含有することを特徴とする。発光層が、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物である下記一般式(4)ので表される化合物を含有すると、高い電子注入輸送性を示すため、発光効率が向上する。また、安定な薄膜が形成できるため、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0035】
本発明における一般式(4)で表される電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物について詳細に説明する。
【0036】
ここで言う電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、高い電子親和性を有する。電子受容性窒素を有する本発明の化合物は、高い電子注入輸送性を示すため、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
【0037】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環基とは、ピリジル基、キノリニル基、イソキノリニル基、キノキサニル基、ピラジニル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、フェナントロリニル基、イミダゾピリジル基、トリアジル基、アクリジル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ビピリジル基、ターピリジル基など、上記ヘテロアリール基のうち、炭素以外の原子として、少なくとも電子受容性の窒素原子を一個または複数個環内に有する芳香族複素環基を示す。本発明で使用する電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物において、1の芳香族複素環に含まれる電子受容性窒素の数は1〜3である。但し、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物が、電子受容性窒素を含む芳香族複素環を複数有する場合は、4以上の電子受容性窒素を有していても良い。なお、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基は、アルキル基またはシクロアルキル基を置換基として有していてもよい。
【0038】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物がモノアジン化合物、ジアジン化合物、およびトリアジン化合物であると、電子輸送層からの電子の受け取りが容易になり、発光層への電子注入性が高くなるため、再結合確率が高くなり発光効率が向上するので好ましい。
【0039】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物が下記一般式(4)で表される化合物であると、高い電子注入輸送性を示すため、発光効率が向上する。また、安定な薄膜が形成できるため、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0040】
また、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基の置換基が下記一般式(4)で表される基であると、高い三重項準位を維持することが可能であり、無放射失活を抑制できるため、高い発光効率が達成される。また、分子同士の相互作用抑制効果が高くなり、安定な薄膜が形成でき、耐久性の向上につながるため好ましい。
【0041】
【化9】

一般式(4)中、R51〜R55、およびR56〜R57はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。Yは、−N(R58)−、−C(R5960)−、酸素原子、または硫黄原子である。R58〜R60はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基である。R58〜R60は、隣接する置換基同士で環を形成してもよい。L〜Lは、単結合またはアリーレン基である。X〜Xは、炭素原子または窒素原子を表し、X〜Xが窒素原子の場合には、窒素原子上の置換基であるR51〜R55は存在しない。但し、X〜X中の窒素原子の数は、1〜3である。Lは、単結合またはアリーレン基である。
【0042】
一般式(4)において、L〜Lのアリーレン基とは、芳香族化合物(アレーン)の2個の環炭素原子から、それぞれ1個の水素原子を除去することにより生成する2価の基をいい、例えば、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレニレン基、フェナントリレン基、ターフェニレン基などが例示される。これらは置換基を有していても有していなくてもよい。
その他の置換基の説明は、一般式(1)で表される化合物と同様である。
【0043】
一般式(4)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物は、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有することで電子注入輸送が優れるため好ましく、さらに、カルバゾール骨格と、Y1を含む縮合環構造であるジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、フルオレン骨格およびカルバゾール骨格が連結することで、正孔注入・輸送特性が優れるため好ましい。従来のカルバゾール骨格を有する化合物は、発光素子材料として必ずしも十分な性能を有するものではなかった。例えば、4,4’−di(9H−carbazol−9−yl)−1,1’−biphenyl(略名:CBP)や、1,3−di(9H−carbazol−9−yl)benzene(略名:mCP)は、リン光ホスト材料や励起子ブロック材料として汎用の材料であるが、いずれも駆動電圧が高くなるという問題があった。本発明者らは、その改良の検討において、一般式(4)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物の正孔輸送能と電子輸送能の強さに着目した。一般式(4)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物を発光層のホスト材料に用いることで、発光層に接する正孔輸送層や電子輸送層からのキャリアを効率よく受け取ることが可能となり、高い発光効率と低電圧効果が可能となる。さらに一般式(1)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物と組み合わせることで、過剰のキャリアをブロックすることが可能となり、耐久性が良くなる相乗効果が得られる。
【0044】
また、一般式(4)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物のうち、カルバゾール骨格の連結位置が一般式(5)で表される化合物が好ましい。
【化10】
一般式(5)中、R51〜R57、およびL〜Lは前記と同様である。R61は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、複素環基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、カルボニル基、カルボキシル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、アミノ基、またはシリル基である。Lはアリーレン基である。
【0045】
上記一般式(5)で表される化合物のように、カルバゾール同士が3,3’位で連結することでベンジジン骨格と同様の構造となり、正孔輸送性がさらに向上する。さらに、一般式(5)で表される化合物において、Lがアリーレン基であると、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基の持つ高い電子輸送能を強めることが可能となり、発光層中の正孔と電子のバランスを調整することが可能となる。このため、発光層中で再結合する確率が高まるために発光効率が向上する。
【0046】
また、一般式(4)で表されるカルバゾール骨格を有する化合物のうち、カルバゾール骨格の連結位置が一般式(6)または(7)で表される化合物が好ましい。下記一般式(6)または(7)で表される化合物のように、カルバゾール同士が非対称に連結することで高い薄膜安定性が可能となる。
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
一般式(4)〜(7)において、L〜Lは単結合であることが好ましい。L〜Lが単結合であることにより、カルバゾール骨格と、Y1を含む縮合環構造であるジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、フルオレン骨格およびカルバゾール骨格が連結することで、正孔輸送特性が向上する安定な膜質を得ることが可能となる。さらに、原料の入手性において、R56、R57およびR61は水素であることが好ましい。
一般式(4)〜(7)において、X〜X中の窒素原子の数は1〜3であり、且つX〜Xのうちの隣接する2つが同時に窒素原子となることはない。一般式(4)〜(7)で表される化合物は、X〜Xのうちの隣接する2つが同時に窒素原子となることがないため、熱的に弱い窒素−窒素二重結合がなくなり、分子全体の熱的安定性が向上する。また、電子輸送層からの電子の受け取りが容易になり、発光層への電子注入性が高くなるため、再結合確率が高くなり発光効率が向上するので好ましい。
【0050】
中でも、熱的安定性および電子注入・輸送特性の両立の点で、X、X、Xが窒素原子である一般式(4)〜(7)で表される化合物がより好ましい。
一般式(4)〜(7)において、R51〜R55のうち少なくとも2つがアリール基であることがXを含む環構造の酸化還元耐性を向上させるために好ましい。より好ましくは、高い三重項準位を維持できるフェニル基である。
【0051】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物として、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
【0052】
【化13】
【0053】
【化14】
【0054】
【化15】
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
【化18】
【0058】
【化19】
【0059】
【化20】
【0060】
【化21】
【0061】
【化22】
【0062】
【化23】
【0063】
【化24】
【0064】
【化25】
【0065】
【化26】
【0066】
【化27】
【0067】
【化28】
【0068】
【化29】
【0069】
【化30】
【0070】
【化31】
【0071】
一般式(1)で表される化合物は、合成の容易さ、正孔輸送性の観点から下記一般式(8)で表されるようにカルバゾール同士が連結されることが好ましい。
【化32】
【0072】
さらに、発光素子の耐久性向上の観点から、非対称のカルバゾール2量体であることが好ましい。対称構造においては、結晶性が高く薄膜の安定性に欠け、素子の耐久性が低下するためである。
【0073】
このような一般式(1)または(8)で表される化合物として、具体的には以下のような化合物が挙げられる。
【0074】
【化33】
【0075】
【化34】
【0076】
【化35】
【0077】
【化36】
【0078】
【化37】
【0079】
【化38】
【0080】
【化39】
【0081】
【化40】
【0082】
【化41】
【0083】
【化42】
【0084】
【化43】
【0085】
【化44】
【0086】
一般式(1)または(8)で表される化合物は公知の方法で製造できる。すなわち9位が置換されたカルバゾールのブロモ体と、9位が置換されたカルバゾールのモノボロン酸との鈴木カップリング反応で容易に合成できるが、製造方法はこれに限定されない。
次に、本発明の発光素子の実施の形態について詳細に説明する。本発明の発光素子は、陽極と陰極、およびそれら陽極と陰極との間に介在する正孔輸送層および発光層を有し、該発光層が電気エネルギーにより発光する。
【0087】
このような発光素子における陽極と陰極の間の層構成は、正孔輸送層と発光層からなる構成の他に、
1)正孔輸送層/発光層/電子輸送層
2)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層
3)正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
4)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
といった積層構成が挙げられる。また、上記各層は、それぞれ単一層、複数層のいずれでもよく、ドーピングされていてもよい。
【0088】
本発明の発光素子において、陽極と陰極は、素子の発光のために十分な電流を供給するための役割を有するものであり、光を取り出すために少なくとも一方は透明または半透明であることが望ましい。通常、基板上に形成される陽極を透明電極とする。
【0089】
本発明の発光素子において、陽極に用いる材料は、正孔を有機層に効率よく注入できる材料、かつ光を取り出すために透明または半透明であれば、酸化亜鉛、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの導電性金属酸化物、あるいは、金、銀、クロムなどの金属、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマーなど特に限定されるものでないが、ITOガラスやネサガラスを用いることが特に望ましい。これらの電極材料は、単独で用いてもよいが、複数の材料を積層または混合して用いてもよい。透明電極の抵抗は素子の発光に十分な電流が供給できればよいので限定されないが、素子の消費電力の観点からは低抵抗であることが望ましい。例えば300Ω/□以下のITO基板であれば素子電極として機能するが、現在では10Ω/□程度の基板の供給も可能になっていることから、20Ω/□以下の低抵抗の基板を使用することが特に望ましい。ITOの厚みは抵抗値に合わせて任意に選ぶ事ができるが、通常50〜300nmの間で用いられることが多い。
【0090】
また、発光素子の機械的強度を保つために、発光素子を基板上に形成することが好ましい。基板は、ソーダガラスや無アルカリガラスなどのガラス基板が好適に用いられる。ガラス基板の厚みは、機械的強度を保つのに十分な厚みがあればよいので、0.5mm以上あれば十分である。ガラスの材質については、ガラスからの溶出イオンが少ない方がよいので無アルカリガラスの方が好ましい。または、SiOなどのバリアコートを施したソーダライムガラスも市販されているのでこれを使用することもできる。さらに、第一電極が安定に機能するのであれば、基板はガラスである必要はなく、例えば、プラスチック基板上に陽極を形成しても良い。ITO膜形成方法は、電子線ビーム法、スパッタリング法および化学反応法など特に制限を受けるものではない。
【0091】
本発明の発光素子において、陰極に用いる材料は、電子を効率よく発光層に注入できる物質であれば特に限定されない。一般的には白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウム、インジウムなどの金属、またはこれらの金属とリチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの低仕事関数金属との合金や多層積層などが好ましい。中でも、主成分としてはアルミニウム、銀、マグネシウムが電気抵抗値や製膜しやすさ、膜の安定性、発光効率などの面から好ましい。特にマグネシウムと銀で構成されると、本発明における電子輸送層および電子注入層への電子注入が容易になり、低電圧駆動が可能になるため好ましい。
【0092】
さらに、陰極保護のために白金、金、銀、銅、鉄、錫、アルミニウムおよびインジウムなどの金属、またはこれら金属を用いた合金、シリカ、チタニアおよび窒化ケイ素などの無機物、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、炭化水素系高分子化合物などの有機高分子化合物を、保護膜層として陰極上に積層することが好ましい例として挙げられる。ただし、陰極側から光を取り出す素子構造(トップエミッション構造)の場合は、保護膜層は可視光領域で光透過性のある材料から選択される。これらの電極の作製法は、抵抗加熱、電子線ビーム、スパッタリング、イオンプレーティングおよびコーティングなど特に制限されない。
【0093】
本発明の発光素子において、正孔注入層は陽極と正孔輸送層の間に挿入される層である。正孔注入層は1層であっても複数の層が積層されていてもどちらでもよい。正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層が存在すると、より低電圧駆動し、耐久寿命も向上するだけでなく、さらに素子のキャリアバランスが向上して発光効率も向上するため好ましい。
【0094】
正孔注入層に用いられる材料は特に限定されないが、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB),ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)といったアリールアミン誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体、チオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが用いられる。一般式(1)または(8)で表される化合物も、同様に正孔注入層に用いることができ、これらの中でも浅いHOMO準位を有するものが、陽極から正孔輸送層へ円滑に正孔を注入輸送するという観点からより好ましく用いられる。
【0095】
これらの材料は単独で用いてもよいし、2種以上の材料を混合して用いてもよい。また、複数の材料を積層して正孔注入層としてもよい。さらにこの正孔注入層が、アクセプター性材料単独で構成されているか、または上記のような正孔注入材料にアクセプター性材料をドープして用いると、上述した効果がより顕著に得られるのでより好ましい。アクセプター性材料とは、単層膜として用いる場合は接している正孔輸送層と、ドープして用いる場合は正孔注入層を構成する材料と電荷移動錯体を形成する材料である。このような材料を用いると正孔注入層の導電性が向上し、より素子の駆動電圧低下に寄与し、発光効率の向上、耐久寿命向上といった効果が得られる。
【0096】
アクセプター性材料の例としては、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、塩化アンチモンのような金属塩化物、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ルテニウムのような金属酸化物、トリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネート(TBPAH)のような電荷移動錯体が挙げられる。また分子内にニトロ基、シアノ基、ハロゲンまたはトリフルオロメチル基を有する有機化合物や、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレンなども好適に用いられる。これらの化合物の具体的な例としては、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4−TCNQ)、ラジアレーン誘導体、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、C60、およびC70などが挙げられる。
【0097】
これらの中でも、金属酸化物やシアノ基含有化合物が取り扱いやすく、蒸着もしやすいことから、容易に上述した効果が得られるので好ましい。正孔注入層がアクセプター性材料物単独で構成される場合、または正孔注入層にアクセプター性材料がドープされている場合のいずれの場合も、正孔注入層は1層であってもよいし、複数の層が積層されて構成されていてもよい。
【0098】
アクセプター性材料は、特に限定されるものではないが、一般式(1)または(8)で表される化合物に対して0.1〜50質量部、さらに好ましくは0.5〜20質量部の範囲で用いられるのが好ましい。
【0099】
本発明の発光素子において、正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を発光層まで輸送する層である。一般式(1)または(8)で表される化合物は、高い三重項準位、高い正孔輸送特性および薄膜安定性を有しているため、発光素子の正孔輸送層に好適に用いられる。正孔輸送層は単層であっても複数の層が積層されて構成されていてもどちらでもよい。
複数層の正孔輸送層から構成される場合は、一般式(1)または(8)で表される化合物を含む正孔輸送層は、発光層に直接接していることが好ましい。一般式(1)または(8)で表される化合物は高い電子ブロック性を有しており、発光層から流れ出る電子の侵入を防止することができるからである。さらに、一般式(1)または(8)で表される化合物は、高い三重項準位を有しているため、三重項発光材料の励起エネルギーを閉じ込める効果も有している。そのため、発光層に三重項発光材料が含まれる場合も、一般式(1)で表される化合物を含む正孔輸送層は、発光層に直接接していることが好ましい。
【0100】
正孔輸送層は、一般式(1)または(8)で表される化合物のみから構成されていてもよいし、本発明の効果を損なわない範囲で他の材料が混合されていてもよい。この場合、上記の正孔注入層に用いられる材料と同様の材料群が好ましい例として挙げられるが、正孔輸送層に用いる場合は、正孔注入層に用いる材料と同等もしくはそれより深いHOMO準位の材料を選択することがより好ましい。この場合、用いられる他の材料としては、例えば、4,4’−ビス(N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(TPD)、4,4’−ビス(N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(NPD)、4,4’−ビス(N,N−ビス(4−ビフェニリル)アミノ)ビフェニル(TBDB)、ビス(N,N’−ジフェニル−4−アミノフェニル)−N,N−ジフェニル−4,4’−ジアミノ−1,1’−ビフェニル(TPD232)といったベンジジン誘導体、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチル(フェニル)アミノ)トリフェニルアミン(1−TNATA)などのスターバーストアリールアミンと呼ばれる材料群、ビス(N−アリールカルバゾール)またはビス(N−アルキルカルバゾール)などのビスカルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、ベンゾフラン誘導体、チオフェン誘導体、オキサジアゾール誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの複素環化合物、ポリマー系では前記単量体を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールおよびポリシランなどが挙げられる。
【0101】
本発明の発光素子において、発光層は単一層、複数層のどちらでもよい。発光層が複数層である場合、各発光層は発光材料(ホスト材料、ドーパント材料)によりそれぞれ形成され、各発光層はホスト材料とドーパント材料との混合物であっても、ホスト材料単独であっても、2種類のホスト材料と1種類のドーパント材料との混合物であっても、いずれでもよい。すなわち、本発明の発光素子では、各発光層において、ホスト材料もしくはドーパント材料のみが発光してもよいし、ホスト材料とドーパント材料がともに発光してもよい。電気エネルギーを効率よく利用し、高色純度の発光を得るという観点からは、発光層はホスト材料とドーパント材料の混合からなることが好ましい。また、ホスト材料とドーパント材料は、それぞれ一種類であっても、複数の組み合わせであっても、いずれでもよい。ドーパント材料はホスト材料の全体に含まれていても、部分的に含まれていても、いずれでもよい。ドーパント材料は積層されていても、分散されていても、いずれでもよい。ドーパント材料は発光色の制御ができる。ドーパント材料の量は、多すぎると濃度消光現象が起きるため、ホスト材料に対して30質量%以下で用いることが好ましく、さらに好ましくは20質量%以下である。ドーピング方法は、ホスト材料との共蒸着法によって形成することができるが、ホスト材料と予め混合してから同時に蒸着してもよい。
【0102】
電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物は、高い電子輸送性および薄膜安定性を有しているため、発光素子の発光層に好適に用いられる。また、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物は、高い電子輸送性および薄膜安定性を有しているため、ホスト材料に用いることが好ましい。
【0103】
さらに、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物は、高い三重項準位を有するものが多いことから、三重項発光材料を使用した素子のホスト材料として用いることが好ましい。電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物として、特に好適なものは、一般式(4)〜(7)で表される化合物を挙げることができる。
【0104】
本発明の発光素子において、発光材料は、電子受容性窒素を含む芳香族複素環基を有する化合物の他に、以前から発光体として知られていたアントラセンやピレンなどの縮合環誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウムを始めとする金属キレート化オキシノイド化合物、ビススチリルアントラセン誘導体やジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、そして、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが特に限定されるものではない。
【0105】
発光材料に含有されるホスト材料は、化合物一種のみに限る必要はなく、一般式(4)〜(7)で表される化合物を複数混合して用いたり、一般式(4)〜(7)で表される化合物とその他のホスト材料とを混合して用いてもよい。また、一般式(4)〜(7)で表される化合物を積層、または一般式(4)〜(7)で表される化合物とその他のホスト材料とを積層して用いてもよい。他のホスト材料としては、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、トリフェニレン、ペリレン、フルオランテン、フルオレン、インデンなどの縮合アリール環を有する化合物やその誘導体、N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンなどの芳香族アミン誘導体、トリス(8−キノリナート)アルミニウム(III)をはじめとする金属キレート化オキシノイド化合物、ジスチリルベンゼン誘導体などのビススチリル誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、インデン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、ポリマー系では、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリチオフェン誘導体などが使用できるが、これらに限定されるものではない。中でも、発光層が三重項発光(りん光発光)を行う際に用いられるホストとしては、金属キレート化オキシノイド化合物、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアジン誘導体、トリフェニレン誘導体などが好適に用いられる。
【0106】
発光材料に含有されるドーパント材料は、特に限定されないが、ナフタレン、アントラセン、フェナンスレン、ピレン、トリフェニレン、ペリレン、フルオレン、インデンなどのアリール環を有する化合物やその誘導体(例えば2−(ベンゾチアゾール−2−イル)−9,10−ジフェニルアントラセンや5,6,11,12−テトラフェニルナフタセンなど)、フラン、ピロール、チオフェン、シロール、9−シラフルオレン、9,9’−スピロビシラフルオレン、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、イミダゾピリジン、フェナントロリン、ピラジン、ナフチリジン、キノキサリン、ピロロピリジン、チオキサンテンなどのヘテロアリール環を有する化合物やその誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、4,4’−ビス(2−(4−ジフェニルアミノフェニル)エテニル)ビフェニル、4,4’−ビス(N−(スチルベン−4−イル)−N−フェニルアミノ)スチルベンなどのアミノスチリル誘導体、芳香族アセチレン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、アルダジン誘導体、ピロメテン誘導体、ジケトピロロ[3,4−c]ピロール誘導体、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−(2’−ベンゾチアゾリル)キノリジノ[9,9a,1−gh]クマリンなどのクマリン誘導体、イミダゾール、チアゾール、チアジアゾール、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどのアゾール誘導体およびその金属錯体およびN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4’−ジフェニル−1,1’−ジアミンに代表される芳香族アミン誘導体などが挙げられる。
【0107】
中でも、発光層が三重項発光(りん光発光)を行う際に用いられるドーパントとしては、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)からなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体化合物であることが好ましい。配位子は、フェニルピリジン骨格、フェニルキノリン骨格、またはカルベン骨格などの含窒素芳香族複素環を有することが好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではなく、要求される発光色、素子性能、ホスト化合物との関係から適切な錯体が選ばれる。具体的には、トリス(2−フェニルピリジル)イリジウム錯体、トリス{2−(2−チオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、トリス{2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、トリス(2−フェニルベンゾチアゾール)イリジウム錯体、トリス(2−フェニルベンゾオキサゾール)イリジウム錯体、トリスベンゾキノリンイリジウム錯体、ビス(2−フェニルピリジル)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス{2−(2−チオフェニル)ピリジル}イリジウム錯体、ビス{2−(2−ベンゾチオフェニル)ピリジル}(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス(2−フェニルベンゾチアゾール)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス(2−フェニルベンゾオキサゾール)(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビスベンゾキノリン(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、ビス{2−(2,4−ジフルオロフェニル)ピリジル}(アセチルアセトナート)イリジウム錯体、テトラエチルポルフィリン白金錯体、{トリス(セノイルトリフルオロアセトン)モノ(1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、{トリス(セノイルトリフルオロアセトン)モノ(4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、{トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン)モノ(1,10−フェナントロリン)}ユーロピウム錯体、トリスアセチルアセトンテルビウム錯体などが挙げられる。また、特開2009−130141号公報に記載されているリン光ドーパントも好適に用いられる。これらに限定されるものではないが、高効率発光が得られやすいことから、イリジウム錯体または白金錯体が好ましく用いられる。
【0108】
ドーパント材料として用いられる上記三重項発光材料は、発光層中に各々一種類のみが含まれていてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。三重項発光材料を二種以上用いる際には、ドーパント材料の総質量がホスト材料に対して30質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは20質量%以下である。好ましいドーパントとして、以下のような例が挙げられる。
【0109】
【化45】
【0110】
更に、発光層は、上記ホスト材料および三重項発光材料の他に、発光層内のキャリヤバランスの調整、または発光層の層構造の安定化を目的とした第3成分を含んでいてもよい。具体的には以下のような例が挙げられる。
【0111】
【化46】
【0112】
本発明の発光素子において、電子輸送層とは、陰極から電子が注入され、さらに電子を輸送する層である。電子輸送層には、電子注入効率が高く、注入された電子を効率良く輸送することが望まれる。そのため電子輸送層は、電子親和力が大きく、しかも電子移動度が大きく、さらに安定性に優れ、トラップとなる不純物が製造時および使用時に発生しにくい物質であることが要求される。特に膜厚を厚く積層する場合には、低分子量の化合物は結晶化するなどして膜質が劣化しやすいため、安定な膜質を保つ分子量400以上の化合物が好ましい。しかしながら、正孔と電子の輸送バランスを考えた場合に、電子輸送層が陽極からの正孔が再結合せずに陰極側へ流れるのを効率よく阻止できる役割を主に果たすならば、電子輸送能力がそれ程高くない材料で構成されていても、発光効率を向上させる効果は電子輸送能力が高い材料で構成されている場合と同等となる。したがって、本発明における電子輸送層には、正孔の移動を効率よく阻止できる正孔阻止層も同義のものとして含まれる。
【0113】
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(III)などのキノリノール錯体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体が挙げられる。本発明の電子輸送材料に用いられる電子輸送材料としては、駆動電圧を低減し、高効率発光が得られることから、電子受容性窒素、ならびに炭素、水素、窒素、酸素、ケイ素、およびリンの中から選ばれる元素で構成される芳香族複素環構造を有する化合物を用いることが好ましい。
【0114】
ここで言う電子受容性窒素とは、隣接原子との間に多重結合を形成している窒素原子を表す。窒素原子が高い電子陰性度を有することから、該多重結合は電子受容的な性質を有する。それゆえ、電子受容性窒素を含む芳香族複素環は、高い電子親和性を有する。電子受容性窒素を有する電子輸送材料は、高い電子親和力を有する陰極からの電子を受け取りやすくし、より低電圧駆動が可能となる。また、発光層への電子の供給が多くなり、再結合確率が高くなるので発光効率が向上する。
【0115】
電子受容性窒素を含むヘテロアリール環としては、例えば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、キノリン環、キノキサリン環、ナフチリジン環、ピリミドピリミジン環、ベンゾキノリン環、フェナントロリン環、イミダゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、フェナンスロイミダゾール環などが挙げられる。
【0116】
これらのヘテロアリール環構造を有する化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ピラジン誘導体、フェナントロリン誘導体、キノキサリン誘導体、キノリン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、ビピリジンやターピリジンなどのオリゴピリジン誘導体、キノキサリン誘導体およびナフチリジン誘導体などが好ましい化合物として挙げられる。中でも、トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼンなどのイミダゾール誘導体、1,3−ビス[(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾリル]フェニレンなどのオキサジアゾール誘導体、N−ナフチル−2,5−ジフェニル−1,3,4−トリアゾールなどのトリアゾール誘導体、バソクプロインや1,3−ビス(1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンなどのフェナントロリン誘導体、2,2’−ビス(ベンゾ[h]キノリン−2−イル)−9,9’−スピロビフルオレンなどのベンゾキノリン誘導体、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロールなどのビピリジン誘導体、1,3−ビス(4’−(2,2’:6’2”−ターピリジニル))ベンゼンなどのターピリジン誘導体、ビス(1−ナフチル)−4−(1,8−ナフチリジン−2−イル)フェニルホスフィンオキサイドなどのナフチリジン誘導体が、電子輸送能の観点から好ましく用いられる。また、これらの誘導体が、縮合多環芳香族骨格を有していると、ガラス転移温度が向上すると共に、電子移動度も大きくなり発光素子の低電圧化の効果が大きいのでより好ましい。さらに、素子耐久寿命が向上し、合成のし易さ、原料入手が容易であることを考慮すると、縮合多環芳香族骨格は、アントラセン骨格、ピレン骨格またはフェナントロリン骨格であることが特に好ましい。上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、上記電子輸送材料の2種以上を混合して用いたり、その他の電子輸送材料の一種以上を上記の電子輸送材料に混合して用いても構わない。
【0117】
好ましい電子輸送材料としては、特に限定されるものではないが、具体的には以下のような例が挙げられる。
【0118】
【化47】
【0119】
【化48】
【0120】
上記電子輸送材料は単独でも用いられるが、ドナー性材料を混合して用いてもよい。ここで、ドナー性材料とは電子注入障壁の改善により、陰極または電子注入層からの電子輸送層への電子注入を容易にし、さらに電子輸送層の電気伝導性を向上させる化合物である。
ドナー性材料の好ましい例としては、アルカリ金属、アルカリ金属を含有する無機塩、アルカリ金属と有機物との錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属を含有する無機塩またはアルカリ土類金属と有機物との錯体などが挙げられる。アルカリ金属、アルカリ土類金属の好ましい種類としては、低仕事関数で電子輸送能向上の効果が大きいリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムといったアルカリ金属や、マグネシウム、カルシウム、セリウム、バリウムといったアルカリ土類金属が挙げられる。
【0121】
また、真空中での蒸着が容易で取り扱いに優れることから、金属単体よりも無機塩、あるいは有機物との錯体の状態であることが好ましい。さらに、大気中での取扱を容易にし、添加濃度の制御のし易さの点で、有機物との錯体の状態にあることがより好ましい。無機塩の例としては、LiO、LiO等の酸化物、窒化物、LiF、NaF、KF等のフッ化物、LiCO、NaCO、KCO、RbCO、CsCO等の炭酸塩などが挙げられる。また、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の好ましい例としては、大きな低電圧駆動効果が得られるという観点ではリチウム、セシウムが挙げられる。また、有機物との錯体における有機物の好ましい例としては、キノリノール、ベンゾキノリノール、ピリジルフェノール、フラボノール、ヒドロキシイミダゾピリジン、ヒドロキシベンズアゾール、ヒドロキシトリアゾールなどが挙げられる。中でも、より発光素子の低電圧化の効果が大きいという観点ではアルカリ金属と有機物との錯体が好ましく、さらに合成のしやすさ、熱安定性という観点からリチウムと有機物との錯体がより好ましく、比較的安価で入手できるリチウムキノリノールが特に好ましい。
【0122】
電子輸送層のイオン化ポテンシャルは、特に限定されないが、好ましくは5.6eV以上8.0eV以下であり、より好ましくは6.0eV以上7.5eV以下である。
発光素子を構成する上記各層の形成方法は、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、分子積層法、コーティング法など特に限定されないが、通常は、素子特性の点から抵抗加熱蒸着または電子ビーム蒸着が好ましい。
【0123】
本発明の発光素子において、上記の各層の合計である有機層の厚みは、発光物質の抵抗値にもよるので限定することはできないが、1〜1000nmであることが好ましい。発光層、電子輸送層、正孔輸送層の膜厚はそれぞれ、好ましくは1nm以上200nm以下であり、さらに好ましくは5nm以上100nm以下である。
【0124】
本発明の発光素子は、電気エネルギーを光に変換できる機能を有する。ここで電気エネルギーとしては主に直流電流が使用されるが、パルス電流や交流電流を用いることも可能である。電流値および電圧値は特に制限はないが、素子の消費電力や寿命を考慮すると、できるだけ低いエネルギーで最大の輝度が得られるよう選ばれるべきである。
【0125】
本発明の発光素子は、例えば、マトリクスおよび/またはセグメント方式で表示するディスプレイとして好適に用いられる。
【0126】
本発明の発光素子において、マトリクス方式とは、表示のための画素が格子状やモザイク状など二次元的に配置され、画素の集合で文字や画像を表示する。画素の形状やサイズは用途によって決まる。例えば、パソコン、モニター、テレビの画像および文字表示には、通常一辺が300μm以下の四角形の画素が用いられ、また、表示パネルのような大型ディスプレイの場合は、一辺がmmオーダーの画素を用いることになる。モノクロ表示の場合は、同じ色の画素を配列すればよいが、カラー表示の場合には、赤、緑、青の画素を並べて表示させる。この場合、典型的にはデルタタイプとストライプタイプがある。そして、このマトリクスの駆動方法は、線順次駆動方法やアクティブマトリクスのどちらでもよい。線順次駆動はその構造が簡単であるが、動作特性を考慮した場合、アクティブマトリクスの方が優れる場合があるので、これも用途によって使い分けることが必要である。
【0127】
本発明の発光素子において、セグメント方式とは、予め決められた情報を表示するようにパターンを形成し、このパターンの配置によって決められた領域を発光させる方式である。例えば、デジタル時計や温度計における時刻や温度表示、オーディオ機器や電磁調理器などの動作状態表示および自動車のパネル表示などが挙げられる。そして、前記マトリクス表示とセグメント表示は同じパネルの中に共存していてもよい。
【0128】
本発明の発光素子は、各種機器等のバックライトとしても好ましく用いられる。バックライトは、主に自発光しない表示装置の視認性を向上させる目的に使用され、液晶表示装置、時計、オーディオ装置、自動車パネル、表示板および標識などに使用される。特に、液晶表示装置、中でも薄型化が検討されているパソコン用途のバックライトに本発明の発光素子は好ましく用いられ、従来のものより薄型で軽量なバックライトを提供できる。
【実施例】
【0129】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0130】
実施例1
ITO透明導電膜を50nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を、素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。その後、基板上に、抵抗加熱法によって、正孔注入層としてHI−1を10nm蒸着した。次に、第一正孔輸送層として、NPDを100nm蒸着した。次に、第二正孔輸送層として、HT−1を20nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料に化合物H−1を、ドーパント材料に化合物D−1を用い、ドーパント材料のドープ濃度が5質量%になるようにして40nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として、化合物E−1を20nmの厚さに積層した。
続いて、フッ化リチウムを0.5nm、アルミニウムを60nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここでいう膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率26.0lm/Wの緑色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、2700時間で輝度半減した。なお化合物NPD、HI−1、HT−1、H−1、D−1、E−1は以下に示す化合物である。
【0131】
【化49】
【0132】
実施例2〜9
第二正孔輸送層、ホスト材料、ドーパント材料として表1に記載した材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表1に示した。なお、HT−2〜HT−4、H−2〜H−4、D−2、D−3は以下に示す化合物である。
【0133】
【化50】
【0134】
比較例1〜8
第二正孔輸送層、ホスト材料として表1に記載した材料を用いた以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。各実施例の結果は表1に示した。なお、HT−5〜HT−8、H−5〜H−7は以下に示す化合物である。
【0135】
【化51】
【0136】
実施例10
電子輸送材料として表1に記載した材料を用い、化合物E−1の代わりに化合物E−1とドナー性材料(Li:リチウム)の共蒸着膜を蒸着速度比100:1(=0.2nm/s:0.002nm/s)で用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。結果を表1に示す。
【0137】
実施例11
電子輸送層として表1に記載した材料を用い、電子輸送層を二層積層構成とし、第一電子輸送層として化合物E−2を10nmの厚さに蒸着し、第二電子輸送層として化合物E−1とドナー性材料(CsCO:炭酸セシウム)の共蒸着膜を蒸着速度比100:1(=0.2nm/s:0.002nm/s)で25nmの厚さに蒸着して積層した以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。結果を表1に示す。なお、E−2は以下に示す化合物である。
【0138】
【化52】
実施例12
電子輸送層として表1に記載した材料を用い、化合物E−1の代わりに化合物E−3とドナー性材料(Liq:リチウムキノリノール)の共蒸着膜を蒸着速度比1:1(=0.05nm/s:0.05nm/s)で用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。結果を表1に示す。なお、E−3は上記に示す化合物である。
【0139】
実施例13
電子輸送層として表1に記載した材料を用い、化合物E−1の代わりに化合物E−4とドナー性材料(LiF:フッ化リチウム)の共蒸着膜を蒸着速度比1:1(=0.05nm/s:0.05nm/s)で用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。結果を表1に示す。なお、E−4は上記に示す化合物である。
【0140】
実施例14
電子輸送層として表1に記載した材料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして発光素子を作製した。結果を表1に示す。なお、E−5は上記に示す化合物である。
【0141】
【表1】
【0142】
実施例15
ITO透明導電膜を50nm堆積させたガラス基板(ジオマテック(株)製、11Ω/□、スパッタ品)を38×46mmに切断し、エッチングを行った。得られた基板を“セミコクリーン56”(商品名、フルウチ化学(株)製)で15分間超音波洗浄してから、超純水で洗浄した。この基板を、素子を作製する直前に1時間UV−オゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が5×10−4Pa以下になるまで排気した。その後、基板上に、抵抗加熱法によって、正孔注入層として化合物HI−1を10nm蒸着した。次に、第一正孔輸送層として、HT−8を100nm蒸着した。次に、第二正孔輸送層として、HT−1を50nm蒸着した。次に、発光層として、ホスト材料に化合物H−8を、ドーパント材料に化合物D−4を用い、ドーパント材料のドープ濃度が3質量%になるようにして30nmの厚さに蒸着した。次に、電子輸送層として、化合物E−1を35nmの厚さに積層した。
続いて、フッ化リチウムを0.5nm蒸着した後、アルミニウムを1000nm蒸着して陰極とし、5×5mm角の素子を作製した。ここで言う膜厚は、水晶発振式膜厚モニター表示値である。この発光素子を10mA/cmで直流駆動したところ、発光効率13.0lm/Wの高効率赤色発光が得られた。この発光素子を10mA/cmの直流で連続駆動したところ、3300時間で輝度半減した。なお化合物H−8、D−4は以下に示す化合物である。
【0143】
【化53】
【0144】
実施例16〜21
第二正孔輸送層として表2に記載した材料を用いたこと以外は実施例15と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。なお化合物HT−9、HT−10は以下に示す化合物である。
【0145】
【化54】
【0146】
比較例9〜11
第二正孔輸送層、ホスト材料として表2に記載した化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。なお化合物HT−11、H−9は以下に示す化合物である。
【0147】
【化55】
【0148】
実施例22〜23
第二正孔輸送層、電子輸送材料として表2に記載した材料を用いたこと以外は実施例15と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。
【0149】
実施例24〜31
第二正孔輸送層、ホスト材料として表2に記載した化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして発光素子を作製し、評価した。結果を表2に示す。なお化合物H−10〜H−17は以下に示す化合物である。
【0150】
【化56】
【0151】
【表2】