(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように発光素子及び受光素子を用いた媒体検知装置では、機器を安価に構成しつつも素子のばらつきを吸収し、媒体の検知感度を安定させることができることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮してなされたものであり、機器を安価に構成しつつも媒体の検知感度を安定させることができる媒体検知装置、媒体検知方法、及び該媒体検知装置を備えた釣銭機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る媒体検知装置は、発光素子と、該発光素子が発した光を受光する受光素子とを備えた媒体検知装置であって、前記発光素子の発光時間及び消灯時間を制御する発光制御部と、前記発光時間及び消灯時間を記憶する記憶部と、時定数を有し、前記受光素子での受光量を時間要素に変換して受光信号を発生する受光部と、前記受光信号を2値化する比較部と、前記2値化した受光信号に基づき前記記憶部に記憶された発光時間を変更し、変更後の発光時間を該記憶部に設定する発光時間設定部とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る媒体検知方法は、発光素子と、該発光素子が発した光を受光する受光素子とを用いた媒体検知方法であって、時定数に基づき出力される前記受光素子での受光量を時間要素に変換して受光信号を発生する受光ステップと、前記受光信号を2値化する比較ステップと、前記2値化した受光信号に基づき前記発光素子の発光時間を変更する発光時間設定ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る釣銭機は、預り金の入金及び釣銭の出金を行う釣銭機であって、発光素子と、該発光素子が発した光を受光する受光素子とを有し、当該釣銭機で取扱う貨幣を検知する媒体検知装置を備え、前記媒体検知装置は、前記発光素子の発光時間及び消灯時間を制御する発光制御部と、前記発光時間及び消灯時間を記憶する記憶部と、時定数を有し、前記受光素子での受光量を時間要素に変換して受光信号を発生する受光部と、前記受光信号を2値化する比較部と、前記2値化した受光信号に基づき前記記憶部に記憶された発光時間を変更し、変更後の発光時間を該記憶部に設定する発光時間設定部とを備えることを特徴とする。
【0011】
このような構成及び方法によれば、発光素子での発光時間を変更し設定する発光時間設定部を有することにより、発光時間を調整しながら受光素子での受光検出時の発光時間を求め、そのときの発光時間で発光素子を発光させることができる。これにより、機器側で発光電流を可変としたり、受光感度をアンプにて可変したりする対策を講じることなく、ソフトウエア的に発光時間を変更するだけで製品毎のばらつきを吸収し、媒体の検知感度を安定させることができ、機器を安価に構成することができる。
【0012】
上記媒体検知装置では、前記記憶部に記憶された発光時間を予め設定された複数の設定値に基づき変更することで、前記発光素子及び前記受光素子での検知感度を変更する感度設定部を備えるとよい。また、上記媒体検知方法では、前記発光時間設定ステップで設定された発光時間を予め設定された複数の設定値に基づき変更することで、前記発光素子及び前記受光素子での検知感度を変更する感度設定ステップを有するとよい。そうすると、求めた受光検出時の発光時間を、さらに、予め設定された設定値によって変更することにより、検知感度を変更することができ、装置の設置環境等に柔軟に且つ容易に対応することができる。
【0013】
この場合、上記媒体検知装置では、前記複数の設定値は、前記発光時間を前記受光素子による検出感度を優先させる設定とする感度優先設定値と、前記発光時間を前記発光素子及び前記受光素子の汚れに対する耐性を優先させる設定とする耐汚れ優先設定値とを含んでもよい。また、上記媒体検知方法では、前記複数の設定値は、前記発光時間を前記受光素子による検出感度を優先させる設定とする感度優先設定値と、前記発光時間を前記発光素子及び前記受光素子の汚れに対する耐性を優先させる設定とする耐汚れ優先設定値とを含んでもよい。例えば、媒体検知装置が搭載された釣銭機の使用場所によっては、媒体検知装置が設けられた投入部付近が汚れやすい環境のため多少汚れた場合であっても誤検知とはしたくない場合や、外来光の影響により投入検知がし難い場所、さらには硬貨や紙幣を少数枚(例えば、1円1枚等)投入した場合においても確実に投入検知を行いたい場合等、各種事情がある。そこで、前記感度優先設定値及び前記耐汚れ優先設定値とに基づき発光時間を設定することにより、その使用場所や設置環境、設置された店舗の実情等を踏まえ、用途に応じて検知感度を柔軟に切り換えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光素子の発光時間を変更するだけで、製品毎のばらつきを吸収し、媒体の検知感度を安定させることができるため、機器を安価に構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る媒体検知装置について、この装置を備えた釣銭機との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る媒体検知装置10を備えた釣銭機12の平面図であり、
図2は、
図1に示す釣銭機12の正面図である。
【0018】
図1及び
図2に示すように、釣銭機12は、硬貨の入金及び出金を担当する硬貨処理部14と、紙幣の入金及び出金を担当する紙幣処理部16とを備え、上位機となるPOS端末18と接続され、スーパーマーケット等の店舗において預り金の入金や釣銭の出金を自動で行うレジシステムを構成している。POS端末18は、例えば、硬貨処理部14に設けられた上位インターフェース12aを介して接続される。
【0019】
硬貨処理部14は、投入口20に投入された預り金となる硬貨を内部に収納する一方、出金指令に基づき釣銭となる硬貨を出金口22から外部に払出す装置である。硬貨処理部14の上面には当該釣銭機12への入金額や出金額等を表示し、さらに各種設定入力を行うための操作表示部24が設けられている。紙幣処理部16は、投入口26に投入された預り金となる紙幣を内部に収納する一方、出金指令に基づき釣銭となる紙幣を出金口28から外部に払出す装置である。紙幣処理部16の下部には、内部に収納した紙幣を回収する際に使用する回収庫30が設けられている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る釣銭機12では、硬貨処理部14の投入口20に投入される硬貨の検知用として、該投入口20に媒体検知装置10を設けている。紙幣処理部16の投入口26にも同様な媒体検知装置(図示せず)を設けているが、以下では、硬貨処理部14の投入口20に設けた構成を例示して本実施形態に係る媒体検知装置10を説明する。
【0021】
図3は、硬貨処理部14の投入口20の構成を模式的に示す平面図であり、
図4は、
図3に示す投入口20の内部構造を示す側面図である。
【0022】
図3及び
図4に示すように、投入口20は、上方から硬貨32を投入可能な漏斗形状を有する。投入口20の側面には、媒体検知装置10の検出部(光センサ)34を構成する発光素子34a及び受光素子34bが複数組(本実施形態では3組)設けられている。同じ組となる発光素子34aと受光素子34bは、投入された硬貨32が落下する空間を挟んで互いに対向配置されており、発光素子34aから発せられた光を対向する受光素子34bで受光し、この光が硬貨32で遮光されることで該硬貨32の投入を検知する。
【0023】
投入口20には、底部を構成する無端状の搬送ベルト36と、搬送ベルト36による硬貨32の搬送方向下流側でその搬送面と対向し、該搬送ベルト36と反対方向に回転するリバースローラ38とが設けられている。搬送ベルト36によって搬送されつつリバースローラ38によって1枚ずつ繰出された硬貨32は、その下流側に設けられた無端状の搬送ベルト40と搬送板42との間をさらに搬送され、釣銭機12の内部に入金される。
【0024】
図5は、本発明の一実施形態に係る媒体検知装置10の制御系統を示すブロック図であり、
図6は、
図5に示す媒体検知装置10の検出部34を構成する発光・受光回路の構成例を示す概略回路図である。
【0025】
図5に示すように、媒体検知装置10の制御系統は、記憶部44と、発光制御部46と、発光素子34aと、受光素子34bを有する受光部48と、電圧比較器50と、発光時間設定部52とを備える。
【0026】
記憶部44は、読書き可能なメモリであり、発光制御部46によって駆動制御される発光素子34aの発光時間及び消灯時間を記憶している。記憶部44に記憶された発光時間は、発光時間設定部52で新たに算出・設定された発光時間に書き換えられることがある。
【0027】
発光制御部46は、記憶部44に記憶された設定に基づき、発光素子34aの発光時間及び消灯時間を制御する制御部である。
【0028】
発光素子34aは、例えば、LED(発光ダイオード)である。
図6に示すように、発光素子34a側の回路は、抵抗R1,R2,R3と、トランジスタQとを有する。
【0029】
受光部48は、受光素子34bを有し、受光素子34bでの受光量を時間要素に変換して受光信号を発生する。受光素子34bは、例えば、フォトトランジスタである。
図6に示すように、受光素子34b側の回路は、抵抗R4,R5,R6,R7と、電圧比較器50とを備える。
【0030】
電圧比較器50は、2つの入力電圧を比較して2値化して出力するコンパレータである。電圧比較器50では、プラス側の入力端子に受光素子34bからの出力電圧が入力され、マイナス側の入力端子に受光素子34bの電源電圧として、例えば、プルアップ電圧(5V)の中央値(例えば、2.5V)が入力される。
【0031】
発光時間設定部52は、記憶部44に記憶された発光時間を変更し、変更後の発光時間を該記憶部44に設定するものであり、詳細は後述するが、発光素子34a及び受光素子34bの製品毎のばらつきを抑制するために受光素子34bでの遮光検知結果に基づき発光時間を適宜調整するものである。さらに、発光時間設定部52は、記憶部44に記憶された発光時間を予め操作表示部24等によって設定された複数の設定値(本実施形態では、感度優先設定値、耐汚れ優先設定値)に基づき変更する感度設定部54を備える。感度設定部54により、発光素子34a及び受光素子34bでの検知感度を当該釣銭機12の設置店舗の環境や実情に適した設定とすることができる。
【0032】
ところで、このような媒体検知装置10において、硬貨32のような不透過物体の有無検出は、発光素子34aを光らせたままの状態を例とすると、ディジタル的な有り/無しの扱いとして、硬貨32の未検出時(透光時)には受光素子34b側が飽和電圧(
図6のB部では、略0V)となり、硬貨32の検出時(遮光時)には受光素子34b側が電源電圧(
図6のB部では、例えばプルアップ電圧の5V)となる。
【0033】
ところが、実際には、フォトトランジスタのような受光素子34bは、コレクタ−ベース間に静電容量Cobを有し、負荷抵抗RLとにより等価的に積分回路となり、時定数CRから、応答時間(ターンオン時間)t=a(係数)×Cob×hFE×RL、の遅れ時間を生じることになる。従って、発光素子34aを光らせても(ON)、即時には上記したような飽和電圧とはならず、時定数CRにより徐々に飽和電圧(0V)に到達する。他方、飽和電圧に到達する前に発光素子34aを消すと(OFF)、時定数CRにより徐々にプルアップ電圧(5V)に到達する三角波形を示す。
【0034】
なお、上式におけるhFEは受光のエネルギを電流に変換する感度であり、受光素子34bの製品毎のばらつきや汚れによる受光量の減少によって電流値が変わり、発光素子34aのON/OFFに対する追従性が悪化(遅延)する。このため、所定時間で発光素子34aをON/OFFした場合、汚れの無い状態では、飽和部分を持った台形波形であっても、汚れが進むと飽和する時間が減少して行き、さらに汚れて光電量が減ると三角波形となる。逆に汚れの無い、十分な光電量が得られる状態であっても、発光素子34a側のON/OFFの間隔を短くすることで、時定数CRにより三角波形を得ることができる。つまり、発光素子34aのON/OFFの時間を通常の時間より短くすることで、素子のばらつきや汚れによる光電流の現象を捉えることが可能となる。
【0035】
そこで、上記した事象を回路の演算部で認識するために、
図6の回路図では、電圧比較器50の一方の入力電圧としてプルアップ電圧の中央値(2.5V)を与え、もう一方の入力電圧として、受光素子34bからの電圧を与えている。これにより、飽和している受光電圧時にはC部に0Vが得られ、発光側がOFF又は硬貨を検出している場合にはC部に5V(プルアップ電圧)が得られることになる。
【0036】
従って、発光素子34aを短い発光時間から徐々に長い点灯時間に走査すれば、C部にて5Vから0Vに変化する時間を求めることができる。そして、5Vから0VにC部の変化があった時間近傍に発光時間を設定した場合、硬貨32有りを見つける感度が高くなるが、逆に多少の汚れがあっても硬貨32が有りと検知する誤検知の状態になり易くなると言うことができる。
【0037】
次に、以上のように構成された媒体検知装置10の一動作例を説明する。
【0038】
図7は、媒体検知装置10による発光素子34aの発光時間の設定方法の一例を示すフローチャートである。
【0039】
図7に示す発光素子34aの発光時間の設定動作は、例えば、釣銭機12における通常の検知動作とは別の専用の設定モードで任意のタイミングで実行されてもよく、釣銭機12における通常の検知動作(入金動作)の終了後に適宜自動的に実行されてもよく、釣銭機12の設置時の初期設定の一つとして実行されてもよい。
【0040】
先ず、
図7のステップS1では、記憶部44に記憶されている発光時間メモリを初期化し、初期設定の発光時間メモリ値を設定する。続いて、ステップS2において、発光制御部46の制御下に、ステップS1で設定された発光時間メモリ値で発光素子34aを発光させる。
【0041】
ステップS3では、発光制御部46が発光素子34aによる発光時間が発光時間メモリ値まで到達したか否かの判定を継続し(ステップS3のNo)、発光時間メモリ値まで到達したと判定された場合には(ステップS3のYes)、そのときの発光素子34bでの遮光状態から透光状態までの遮光/発光状態(切り換わり時間T1)を記憶部44に記録し、発光素子34aを消灯する(ステップS4)。
【0042】
次に、ステップS6において、ステップS5の消灯の直前に受光素子34bで受光有りの状態が検知されているか否か、つまり受光部48が発光素子34bが発光したにも関わらず遮光状態のままであるか、それとも受光状態が検知されたか否かを判定する(受光ステップ及び比較ステップ)。そして、ステップS6の判定結果により、遮光が検知されている場合には(ステップS6のYes)、ステップS7〜S9を実行し、受光が検知された場合には(ステップS6のNo)、ステップS10〜S12を実行する。
【0043】
ここで、ステップS1〜S6での発光素子34aの発光(点灯)に基づく受光素子34bでの遮光や透光の検知と、遮光状態と透光状態との切り換わり時間T1とについて、
図8及び
図9のタイムチャートを参照して具体的に説明する。
【0044】
図8は、発光素子34aによる発光タイミングの一例を示すタイムチャートであり、
図9は、
図8に示す発光タイミングに対する受光素子34bの受光状態を示すタイムチャートである。
図8中に示すA部は、
図6中のA部での電圧の状態を示しており、
図8中のチャート(1)は時刻t1のみの短時間発光が行われ、チャート(3)は時刻t1〜t3までの長時間発光が行われ、チャート(2)は発光時間設定部52による発光時間の調整時に時刻t1〜t2までの時間発光を行った場合の状態を示している。また、
図9中に示すB部及びC部は、それぞれ発光素子34aの発光中の
図6中のB部及びC部での電圧の状態を示しており、
図9中のチャート(4)は
図8中のチャート(1)に対応し、
図9中のチャート(5)は
図8中のチャート(2)に対応し、
図9中のチャート(6)は
図8中のチャート(3)に対応している。
【0045】
発光素子34aの寿命の要素には、電流値×時間がある。そこで、発光素子34aを長期に渡って使用するために、
図8に示すように間欠発光させることが一般的である。そこで、本実施形態では、所定の定周期内で発光素子34aを所定時間発光させ、消灯の直前に受光しているかを判定することで、ステップS6の遮光検知を行うものとした。
【0046】
より具体的には、本実施形態では、検出部34に硬貨32が無い状態において、1ms(ミリ秒)の定周期内(
図8中の時刻t1〜t20間のインターバル)で、0.1msの間発光させ(
図8中の時刻t1〜t2間)、消灯の直前に受光素子34bで受光がなされたか否かを判定する。すなわち、受光部48は、この0.1msの発光時間内で0.01ms刻みで受光検知し、
図7のステップS4では受光素子34bでの受光量を時間要素に変換して発生させた受光信号を電圧比較器50で2値化することにより、遮光状態(受光無し)の状態から非遮光状態(受光有り)の状態に変移したときの発光時間を切り換わり時間T1として求め、これを記憶部44に記録する。
【0047】
例えば、
図9中のチャート(4)では、
図6中のB部での電圧がプルアップ電圧(5V)の中央値(2.5V)を示す中央線Mに到達していないため、電圧比較器50により、C部の電圧が飽和電圧(0V)となり、受光有りの状態に変移しない。一方、
図9中のチャート(5)では、
図6中のB部での電圧が中央線Mを超えるため、B部での電圧が中央線Mを超えている間はC部の電圧がプルアップ電圧(5V)となり、受光有りの状態に変移する。同様に、
図9中のチャート(6)では、
図6中のB部での電圧が中央線Mを超えるため、B部での電圧が中央線Mを超えている間はC部の電圧がプルアップ電圧(5V)となり、受光有りの状態に変移する。そして、これらチャート(5),(6)のように、受光無しの状態から受光有りの状態に変移したところの発光時間を切り換わり時間T1として求める。
【0048】
図7に戻り、先ず、ステップS6の遮光検知判定において、遮光が検知されている場合は(ステップS6のYes)、今回のステップS2〜S5で実施された発光時間メモリ値での発光時間では受光有りの状態への変移がなされず、切り換わり時間T1を得ることができなかったということになる(例えば、
図9中のチャート(4)参照)。そこで、発光時間設定部52は、ステップS7において、(今回の)発光時間メモリ値に所定の調査時間(例えば、
図8中のチャート(1)をチャート(2)とする時刻t2分の時間0.1ms)を加算し、新たな発光メモリ値として記憶部44に記録し、発光素子34aでの発光時間を延長するように調整する(発光時間設定ステップ)。
【0049】
ステップS8では、ステップS7で新たに設定した発光時間メモリ値が、予め規定されている設定可能時間範囲内であるか否かを判定する。この設定可能時間範囲とは、発光素子34aの発光時間の上限値を規定するものであり、発光時間が過度に延長され、発光素子34aの寿命に悪影響を及ぼすことを抑制するために設定されている。このステップS8において、発光時間メモリ値が設定可能時間範囲外であると判断された場合には(ステップS8のNo)、設定不可エラーをセットし(ステップS9)、処理を終了する。
【0050】
一方、ステップS8において、発光時間メモリ値が設定可能時間範囲内であると判断された場合には(ステップS8のYes)、ステップS2に戻り、ステップS7で新たに設定された発光時間メモリ値で再び発光素子34aを発光させる。このステップS2〜S8までの動作が繰り返されることにより、実行の都度、ステップS7で加算される調査時間分だけ発光時間が延長される。
【0051】
その結果、ステップS6の遮光検知判定において、遮光が検知されていない場合、つまり受光が検知された場合には(ステップS6のNo)、今回のステップS2〜S5で実施された発光時間メモリ値での発光時間で受光有りの状態への変移がなされ、切り換わり時間T1が得られたということになる(例えば、
図9中のチャート(5)参照)。そこで、ステップS10が実行され、当該媒体検知装置10における感度設定部54に対し、予め遮光優先の設定がなされているか(ステップS10のYes)、又は予め耐汚れ優先の設定がなされているか(ステップ10のNo)が判断される。
【0052】
具体的には、上記のような切り換わり時間T1に関し、受光素子34bでの受光量が多ければ、短い時間で受光有りの状態となるが、素子の汚れが進むと、発光素子34aを長い時間発光させないと受光有りの状態に切り換えることができなくなる。換言すれば、短時間で受光有りとなる検出部34では、固定の発光時間(例えば、0.1ms)の発光では十分飽和(0V)しているので硬貨32の検出が難しく、反対に長時間で受光有りに変移する検出部34では、所定時間の発光をした場合、硬貨32の検出が容易、つまり検出感度が高い状態となる。
【0053】
そこで、本実施形態では、媒体検知装置10毎に、それが搭載される釣銭機12等の設置環境や設置店舗等の事情に応じて、検出変移時の発光時間を上記ステップS4のようにして求め、さらに、検出感度を優先させる設定(感度優先設定)とするか、又は、汚れに対する耐性を優先させる設定(耐汚れ優先設定)とするかを、予め操作表示部24等によって設定しておく。
【0054】
そして、ステップS10の遮光優先判定において、感度優先設定が設定されている場合には(ステップS10のYes)、ステップS11を実行し、感度設定部54は現在の発光時間メモリ値に所定の遮光優先時間を加算した新たな発光時間メモリ値(感度優先設定値)を算出し(感度設定ステップ)、処理を終了する。この感度優先設定値は、例えば、ステップS4で記録した切り換わり時間T1の1.5倍となるように設定されている。一方、耐汚れ優先設定が設定されている場合には(ステップS10のNo)、ステップS12を実行し、感度設定部54は現在の発光時間メモリ値に所定の安定化時間(耐汚れ優先時間)を加算した新たな発光時間メモリ値(耐汚れ優先設定値)を算出し(感度設定ステップ)、処理を終了する。この感度優先設定値は、例えば、ステップS4で記録した切り換わり時間T1の2.0倍となるように設定されている。以降、当該媒体検知装置10では、上記のように設定された新たな発光時間メモリ値(感度優先設定値又は耐汚れ優先設定値)によって発光素子34aを発光させる。なお、ステップS11によって感度優先設定とした後、汚れによって誤検知を発生するようになった場合には、自動的に発光時間を延ばす構成としてもよい。
【0055】
以上のように、本実施形態に係る媒体検知装置10は、発光素子34aの発光時間及び消灯時間を制御する発光制御部46と、発光時間及び消灯時間を記憶する記憶部44と、時定数CRを有し、受光素子34bでの受光量を時間要素に変換して受光信号を発生する受光部48と、該受光信号を2値化する電圧比較器(比較部)50と、2値化した受光信号に基づき記憶部44に記憶された発光時間を変更し、変更後の発光時間を該記憶部44に設定する発光時間設定部52とを備える。
【0056】
このように、発光素子34aでの発光時間を変更し設定する発光時間設定部52を有することにより、発光時間を調整しながら受光素子34bでの受光検出時の発光時間を求め、そのときの発光時間で発光素子34aを発光させることができる。これにより、媒体検知装置10の機器側で発光電流を可変としたり、受光感度をアンプにて可変したりする対策を講じずに、上記のように発光時間を変更するだけで、製品毎のばらつきを吸収し、媒体の検知感度を安定させることができ、機器を安価に構成することができる。例えば、本実施形態では、
図7中のステップS2〜S8の処理により発光素子34a及び受光素子34bの製品毎のばらつきを考慮した発光時間を設定できる。
【0057】
また、媒体検知装置10では、記憶部44に記憶された発光時間を予め設定された複数の設定値(感度優先設定値又は耐汚れ優先設定値)に基づき変更することで、発光素子34a及び受光素子34bでの検知感度を変更する感度設定部54を備える。これにより、上記のように求めた受光検出時の発光時間を、さらに、予め設定された設定値によって変更することで、検知感度を変更することができ、当該媒体検知装置10の設置環境等に柔軟に且つ容易に対応することができる。例えば、本実施形態では、
図7中のステップS10〜S12の処理により媒体検知装置10の設置環境等を考慮した発光時間を設定できる。
【0058】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0059】
例えば、上記実施形態に係る釣銭機12では、媒体検知装置10を硬貨処理部14の投入口20に設けた構成を例示したが、上記の通り媒体検知装置10は紙幣処理部16の投入口26に設けてもよく、硬貨処理部14や紙幣処理部16の出金口22,28に設けてもよい。さらには、媒体検知装置10は、釣銭機12の内部に設置された硬貨や紙幣の搬送路の途中や収納庫の入口又は出口等、当該釣銭機12で取扱う貨幣の検知用として適宜用いることができる。
【0060】
また、上記のような媒体検知装置10は、釣銭機12以外、例えば、当該釣銭機12を設置した図示しない店舗の入出金機等での貨幣検知用として、さらには貨幣以外の物品の検知用として用いても勿論よい。