特許第6361154号(P6361154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6361154-操作検出装置 図000002
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361154
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】操作検出装置
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/34 20060101AFI20180712BHJP
   G10B 3/12 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G10H1/34
   G10B3/12 130
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-21940(P2014-21940)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-148736(P2015-148736A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】播本 寛
【審査官】 上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−271367(JP,A)
【文献】 特開2008−158066(JP,A)
【文献】 特開2002−023758(JP,A)
【文献】 特開平05−011747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/34
G10B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作子と、
前記操作子を回動可能に支持する回動支持部と、
弾性体で形成され、前記操作子に連動して動作する部位が接触することによって前記部位の動作に対して緩衝作用を与えるドーム部と、前記ドーム部の底部において前記ドーム部の外壁の外側に延びるフランジ部とを備えるドーム部材と、
前記ドーム部よりも回動支持部側に配置され、前記操作子の動作を検出するスイッチと、
前記ドーム部材および前記スイッチを支持する支持部材とを有し
前記ドーム部材および前記スイッチは前記支持部材に形成された単一の平面に支持され、
前記操作子の動作に連動して動作する単一の平面である前記部位が前記ドーム部および前記スイッチに接触する、
操作検出装置。
【請求項2】
前記スイッチはフランジ部を有し、当該スイッチのフランジ部は前記ドーム部材のフランジ部と共通の部材であり、
前記支持部材は、前記スイッチへの配線を有するとともに前記フランジ部が取り付けられる基板である、
請求項1に記載の操作検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作子の動作を検出する操作検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器等を操作するための操作子の動作をスイッチで検出する操作検出装置が知られている。また、電子楽器等を操作するための操作子においては、アコースティック楽器が備える操作子の操作感を可能な限り忠実に再現するための構成が採用されることが多い。特に、アコースティック楽器においては、操作子を動作させた場合に操作子に反力が作用するため、電子楽器においては、当該反力を再現するための部材が備えられる場合が多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、鍵の押鍵により回動するハンマーによってハンマーの一端でスイッチが接触し、ハンマーの他端でクリックゴムを変形させる構成が開示されている。また、特許文献2には、棚板上に弾性体のレットオフ素子が備えられ、当該棚板の凹部にスイッチが備えられる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−8973号公報
【特許文献2】実公平7−49512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術においては、操作子の動作を検出するタイミングと操作子に反力を作用させるタイミングとの関係を設計通りの関係にすることが困難であった。例えば、鍵盤楽器の鍵の動作を再現する場合、反力のピークのタイミングは発音(スイッチのオン)タイミングよりも若干早くなるべきである。しかし、特許文献1に開示された技術においては、ハンマーの一端でスイッチを動作させ、他端でクリックゴムを変形させる構成であり、スイッチとクリックゴムとの距離が離れているとともに、スイッチとクリックゴムとが異なる部材(部位)に取り付けられる。従って、スイッチの動作タイミングとクリックゴムの変形タイミングとを調整するためには、スイッチとクリックゴムとのそれぞれにハンマーが接触するタイミングを調整する必要がある。しかし、両者の距離は離れているため、各部材にハンマーが接触するタイミングを調整するのは非常に難しい。また、ハンマーは鍵の動作に応じて回動するが、ハンマーの回動軸にはハンマーを円滑に動作させるために若干のゆとりを設ける必要がある。従って、ハンマーの位置は変動し得るとともに、ハンマーの先端が接触する部位は回動軸から遠い部位であり、設計通りの位置でスイッチとハンマーを接触させるとともにクリックゴムとハンマーを接触させることは極めて困難である。さらに、鍵盤楽器の鍵の動作において、反力のピークのタイミングと発音のタイミングは非常に近いため、特許文献1に開示された技術では、反力のピークのタイミングが発音タイミングよりも遅くなる場合も発生し得る。このため、利用者に非常な違和感を与えることがあり得る。
【0006】
特許文献2に開示された技術においては、棚板の凹部にスイッチが取り付けられており、凹部は棚板の上面を加工するなどによって形成されるため、凹部の深さが設計と異なると、設計通りのタイミングでスイッチを動作させることができない。さらに、特許文献2においては、スイッチを動作させる部材が鍵の下方に向けて突出しており、部材の突出量が設計と異なると設計通りのタイミングでスイッチを動作させることができない。そして、スイッチの動作タイミングを調整するためには、部材の突出量を調整しなくてはならず、多数の鍵で設計通りのタイミングを実現することは困難である。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、操作子に反力を作用させるタイミングと操作子の動作を検出するタイミングとの関係を設計通りの関係にすることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、操作子と、弾性体で形成されたドーム部とドーム部の底部においてドーム部の外壁の外側に延びるフランジ部とを備えるドーム部材と、操作子の動作を検出するスイッチと、ドーム部材およびスイッチを支持する支持部材と、を備える操作検出装置であって、ドーム部材およびスイッチは支持部材に形成された単一の平面に支持され、操作子の動作に連動して動作する単一の平面がドーム部材とスイッチとに接触する、操作検出装置を構成する。
【0008】
すなわち、ドーム部材とスイッチが、支持部材に形成された単一の平面で支持されるため、支持部材を単に平面に形成すればドーム部材とスイッチとを支持する部位を形成することができ、深さを高精度で調整するなどの高度な加工精度が要求されない。また、ドーム部材およびスイッチが異なる部材に支持される場合と比較して、ドーム部材およびスイッチとこれらに接触する部材との相対位置関係が変動し得る要素が少なくなり、ドーム部材およびスイッチを設計通りのタイミングで動作させることが容易になる。
【0009】
さらに、ドーム部に接触して操作子に対して反力を作用させる部位と、操作子の動作を検出するためにスイッチに接触する部位とが、単一の平面である。従って、各部位の位置関係を調整し得る構成と比較して、変動し得る要素が少なくなり、ドーム部材およびスイッチを設計通りのタイミングで動作させることが容易になる。従って、操作子に反力を作用させるタイミングと操作子の動作を検出するタイミングとの関係を設計通りの関係にすることが可能である。
【0010】
ここで、操作子は、利用者が操作する部材であれば良く、鍵盤楽器の鍵やペダル等が操作子となり得る。ドーム部材は、ドーム部およびフランジ部を備えていれば良く、ドーム部は弾性体で形成されることにより、操作子に連動して動作する部位(ドーム部およびスイッチに接触する単一の平面を有する部位)が当該ドーム部に接触することで変形し、その反力によって操作子に連動して動作する部位の動作に対して緩衝作用を与えることができればよい。ドーム部は、変形できるように中空であれば良く、底部から頂部に向けて内径および外径が徐々にまたは段階的に小さくなるように構成されることが好ましい。また、ドームの形状は半球状であっても良いし、略矩形の形状であっても良い。むろん、ドームの内壁や外壁に種々の形状(例えば椀状の部位や操作子に連動して動作する部位との接触面となる部位)が形成されていても良い。
【0011】
さらに、ドーム部は操作子に連動して動作する部位の接触によって弾性変形できるように弾性体で形成されていれば良い。従って、弾性体の素材は限定されず、ゴム等の各種の樹脂や弾性力を発生させる金属等、各種の素材で構成可能である。ドーム部において緩衝作用を発生させるためにドーム部から操作子に連動して動作する部位に作用する反力は0より大きければ良い。
【0012】
フランジ部は、ドーム部の底部においてドーム部の外壁の外側に延びる部位であれば良い。すなわち、フランジ部がドーム部の底部の周囲に延びることにより、フランジ部からドーム部が突出するようにドーム部材が形成され、フランジ部においてドーム部材を支持することで支持部材からドーム部が突出し、操作子に連動して動作する部位をドーム部に接触させて緩衝作用を生じさせることができるように構成されていれば良い。また、フランジ部の形状は特に限定されない。例えば、ドーム部の底部が円形である場合に、フランジ部も当該円形の同心円状に円形の外周を有していても良いし、円形以外の形状、例えば、矩形であっても良い。むろん、複数のドーム部のフランジ部同士が連結される構成(シート状のフランジ部の複数の位置にドーム部が形成された構成)であってもよく、種々の構成を採用可能である。
【0013】
スイッチは、操作子の動作を検出することができればよく、操作子の動作に連動して動作する単一の平面が動作することによってオンまたはオフになればよい。従って、例えば、操作子の動作に連動して動作する単一の平面が動作することで可動接点を固定接点に接触させ、または接触を解除させるスイッチ等によって構成可能である。
【0014】
支持部材は、ドーム部材およびスイッチを支持することができればよい。ドーム部材はフランジ部で支持されればよく、フランジ部を支持部材に取り付けることで支持部材にドーム部材が支持された状態となればよい。スイッチの形状は任意であり、スイッチを支持部に取り付けることで支持することができればよい。なお、スイッチがフランジ部を有し、当該スイッチのフランジ部がドーム部材のフランジ部と共通の部材で構成されている(スイッチにおいて、ドーム部材と共有のフランジ部を備える)場合、スイッチおよびドーム部材のフランジ部を支持部材に取り付けるのみでスイッチおよびドーム部材を支持部材に支持させることができる。むろん、この場合、スイッチにおいてもフランジ部から突出するドーム状の突出部を備えていても良い。さらに、支持部材が基板で構成される場合、基板にスイッチの配線を形成するとともに当該基板でスイッチを支持することが可能になり、フランジ部を基板に取り付けることにより少数の部品で操作検出装置を構成することが可能になる。
【0015】
支持部材の形状は特に限定されず、薄い板状であっても良いしバルク状であっても良く、種々の形状を想定可能であるが、少なくとも1個平面を有しており、当該平面にドーム部材およびスイッチが取り付けられる。
【0016】
さらに、操作子の動作に連動して動作する単一の平面は、ドーム部およびスイッチに接触する面であれば良く、種々の部材で構成可能である。例えば、操作子の下方にドーム部材とスイッチとを配置する構成において、操作子の下面や下部に取り付けられた部材を平面に形成し、当該下面や下部に取り付けられた部材がドーム部およびスイッチに接触するように構成しても良い。また、鍵に連動してハンマーが回動する場合、当該ハンマーの一部を平面に形成し、当該平面がドーム部およびスイッチに接触するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(1A)(1C)(1D)は本発明の一実施形態にかかる操作検出装置を備える装置の説明図、(1B)はドーム部材を側方から眺めた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)鍵盤装置の構成:
(2)操作検出装置の構成:
(3)他の実施形態:
【0019】
(1)鍵盤装置の構成:
図1Aは本発明の一実施形態にかかる操作検出装置を備える鍵盤装置1の主要部を説明する説明図である。ここでは、鍵盤装置1を演奏可能な状態に配置した状態(図1Aのように配置した状態)における上下を上下と定義し、鍵盤装置1の演奏者から見た左右を右左と定義し、鍵盤装置の演奏者から見た前後を後前とそれぞれ定義する。従って、図1Aの上下が上下に対応し、図1Aの左右が前後に対応し、図1Aの紙面奥側が右、紙面手前側が左に対応する。なお、後述する他の実施形態、および、図1C以降も上下左右の定義は図1Aと同様である。
【0020】
鍵盤装置1は、鍵10を複数個左右方向に並べて支持するための支持部20を備えており、支持部20は、当該支持部20の上部から上方に向けて延びる鍵回動支持部20aを備えている。鍵回動支持部20aは、支持点を中心にして各鍵10を回動可能に支持する。また、支持部20は、支持部20の上部から上方に向けて延びる鍵ガイド部材20bを備えており、鍵10の下部には当該鍵ガイド部材20bを挿入可能な穴が形成され、鍵10が回動する際に、当該穴から鍵ガイド部材20bが脱落しないように構成される。従って、鍵10は、鍵ガイド部材20bによって回動方向が規制される。
【0021】
各鍵10の前方には、下方に延びるとともに支持部20の前方端に形成された穴に挿入される鍵上限ストッパ10aを備えている。鍵上限ストッパ10aは、下部において後方に屈曲する屈曲部を備え、当該屈曲部と支持部20の上面との間においては、支持部20の上面の裏側にストッパ21aが取り付けられている。従って、鍵10は、鍵上限ストッパ10aによって回動方向が規制される。
【0022】
さらに、鍵10には図示しない復帰力発生部材(バネ等)で上方に向けた復帰力が作用している。従って、通常の状態においては鍵上限ストッパ10aがストッパ21aに接触した状態、すなわち、鍵10が図1Aに示す状態となっており、押鍵されると鍵10は鍵回動支持部20aの支持点を回動中心にして回動する。なお、支持部20の上面にはストッパ21bが取り付けられており、押鍵によって鍵10が回動すると、鍵10の下面がストッパ21bに接触して鍵10の動作が規制され、停止する。なお、上記の説明は白鍵で代表して説明したが、黒鍵も同様の構造である。本実施形態にかかる鍵盤装置1は、鍵10の押鍵に対する反力を発生させるとともに、鍵10の動作を検出するために操作検出装置を備える。
【0023】
(2)操作検出装置の構成:
操作検出装置30は、ドーム部材31とスイッチ32と支持部材33とを備えており、支持部材33を介して支持部20に対して取り付けられる。支持部材33は、端部に取り付けられたボス33aによって支持部20に取り付けられる。本実施形態における支持部材33は、薄い板状の基板であり、少なくとも1個の平面が形成され、当該平面にスイッチのための配線が形成されるとともに、当該平面上にドーム部材31とスイッチ32とが支持される。なお、支持部20には、支持部材33にドーム部材31およびスイッチ32が支持された状態において、ドーム部材31およびスイッチ32の上部を支持部20の上方に突出させる穴が形成されている。
【0024】
図1Bはドーム部材31およびスイッチ32を右側から眺めた状態を示す図である。本実施形態において、ドーム部材31およびスイッチ32は弾性体によって一体的に形成される。ドーム部材31は、ドーム部31aとフランジ部31bとによって構成される。ドーム部31aは中空であり、底部Bから頂部Sに向けて所定の高さになるまで内径および外径が徐々に小さくなる。所定の高さより高い部位においては、ドーム部31aの壁面が一定の内径および外径でフランジ部31bに垂直な方向に延びる。
【0025】
ドーム部31aの頂部Sは鍵10の下面に設けられたアクチュエータ10bが接する部位であり、1個の鍵10に対して少なくとも1個のドーム部31aが対応するように複数個のドーム部31aが形成されて支持部20に取り付けられる。ドーム部材31は弾性体によって形成されるため、鍵10が回動してドーム部31aの頂部Sに接触し、さらにドーム部31aを押しつぶすように動作すると、所定の反力が鍵10に作用する。鍵10が頂部Sに接触した後において、ドーム部材31から鍵10に作用する反力の大きさは回動量の増加とともに増加し、ある回動量において反力の大きさがピークに達し、その後、反力の大きさは回動量の増加とともに減少する。
【0026】
スイッチ32は、ドーム部32aとフランジ部31bとによって構成される。すなわち、ドーム部材31とスイッチ32とにおいては、フランジ部31bを共有している。フランジ部31bは、ドーム部31a、32aの底部においてドーム部31a、32aの外壁の外側に延びる部位であり、本実施形態におけるフランジ部31bは薄いシート状の部位である。
【0027】
本実施形態において、スイッチ32とドーム部材31とはほぼ同様の外形であり、鍵10が回動すると鍵10の下面に設けられたアクチュエータ10bがドーム部32aの頂部Sに接触し、さらに鍵10が回動すると鍵10の下面に設けられたアクチュエータ10bによってドーム部32aが押しつぶされるように変形する。ただし、本実施形態においてスイッチ32のドーム部32aは、ドーム部材31のドーム部31aよりも後側(鍵回動支持部20a側)に位置するため、スイッチ32の頂部Sから鍵10に対して作用する反力は、ドーム部材31の頂部Sから鍵10に対して作用する反力よりも小さく、本実施形態においてはほぼ無視できる。
【0028】
なお、スイッチ32の内部における頂部Sの裏側には鍵10の動作を検出するための図示しない可動接点が取り付けられる。一方、支持部材33においては、スイッチ32が支持される位置に鍵10の動作を検出するための図示しない固定接点が形成されている。従って、鍵10の動作によってスイッチ32が変形し、可動接点が固定接点に接触すると、支持部材33に形成された配線に接続された回路によって鍵10が操作されたことを検出することができる。本実施形態においては、当該回路によって鍵10が操作されたことが検出された場合に、鍵10に応じた音が発音される。
【0029】
そして、本実施形態においては、押鍵されることによって鍵10が回動する場合に、ドーム部材31における反力の大きさのピークのタイミングがスイッチ32における可動接点が固定接点に接触するタイミング(発音のタイミング)よりも早くなるように、ドーム部材31およびスイッチ32の形状が設計される。すなわち、反力の大きさのピークのタイミングと発音のタイミングの順序がアコースティックピアノにおける順序と同一になるように、ドーム部材31およびスイッチ32の形状が設計される。
【0030】
以上のように、本実施形態は、ドーム部材31とスイッチ32とが支持部材33に形成された平面の1個にて支持される構成であり、ドーム部材31とスイッチ32とはともにアクチュエータ10bという共通の部材から力を受ける。従って、凹部にスイッチを支持する構成などのように、深さを高精度で調整するなどの高度な加工精度が要求されない。また、ドーム部材31およびスイッチ32が異なる部材に支持される場合と比較して、ドーム部材31およびスイッチ32とこれらに接触する部材との相対位置関係が変動し得る要素が少なくなり、ドーム部材31およびスイッチ32を設計通りのタイミングで動作させることが容易になる。
【0031】
さらに、本実施形態における鍵10に設けられたアクチュエータ10bの下面は平面であり、当該下面がドーム部材31の頂部Sおよびスイッチ32の頂部Sの双方に接触する。従って、ドーム部材31で発生する反力を鍵10に作用させるための部位と、鍵10の動作を検出するためにスイッチ32に接触する部位とは、双方とも鍵10に設けられたアクチュエータ10bの下面であり、単一の平面である。このため、ドーム部材31で発生する反力を鍵10に作用させるための部位と、鍵10の動作を検出するためにスイッチ32に接触する部位とが異なることにより、両部位の位置関係を個別に調整し得る構成と比較して変動し得る要素が少なくなる。この結果、ドーム部材31およびスイッチ32を設計通りのタイミングで動作させることが容易になる。従って、複数の鍵10についての操作検出装置において、アコースティックピアノのタッチを再現するように設計された状態を容易に実現することができる。さらに、アコースティックピアノにおいては、反力のピークのタイミングと発音のタイミングとが非常に近いが、両タイミングが逆になることを防止することができ、演奏者に違和感を与えることを防止することができる。
【0032】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、ドーム部材およびスイッチが支持部材に形成された単一の平面に支持され、操作子の動作に連動して動作する単一の平面がドーム部およびスイッチに接触する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、ドーム部材31の頂部およびスイッチ32の頂部に接触する平面は鍵10の下面に設けられたアクチュエータ10bに限定されない。
【0033】
図1Cは、ドーム部材31の頂部およびスイッチ32の頂部に接触する平面が、復帰力発生部材であるハンマーに形成された平面である場合の実施形態を示す説明図である。図1Cにおいて、鍵100は、支持部200から上方に突出する鍵回動支持部200aに回動可能に支持されている。当該鍵100の下面には、下方に突出する突出部100aが形成されている。支持部200の上部からは下方に突出するハンマー回動支持部200bが形成されており、一端に錘が取り付けられたハンマー210がハンマー回動支持部200bに回動可能に支持される。
【0034】
ハンマー210における錘と逆側の端部は、突出部100aの先端に形成された軸を上部210bと下部210cの間で挟んだ状態でスライドさせることが可能な挿入部210aとなっている。従って、鍵100が押鍵されると、鍵100が回動するとともに突出部100aが挿入部210aを下方に移動させる。この結果、ハンマー210はハンマー回動支持部200bを中心に回動するが、ハンマー210には錘の重量によって図1Cの時計回りに回動するような力が作用しているため、鍵100には押鍵前の状態に復帰させようとする復帰力が作用する。
【0035】
本実施形態において、支持部200の下部には、挿入部210aの可動範囲に操作検出装置300が取り付けられる。すなわち、支持部200には、支持部材330が取り付けられ、支持部材330に形成された単一の平面にドーム部材310およびスイッチ320が取り付けられる。さらに、ドーム部材310およびスイッチ320は、頂部が上方に向くように支持部材330に取り付けられている。従って、鍵100の回動によってハンマー210が回動して挿入部210aが下方に移動すると、挿入部210aの下部210cの下面がドーム部材310の頂部およびスイッチ320の頂部の双方に接触する。この構成であっても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0036】
さらに、操作検出装置による操作の検出対象である操作子は鍵盤楽器の鍵に限定されず、種々の操作子を想定可能である。図1Dは、鍵盤楽器等において演奏者が足で操作する操作子であるペダルに本発明の1実施形態にかかる操作検出装置を取り付けた場合の構成例を示す説明図である。本実施形態において、ペダルは、アコースティックピアノのダンパペダルの機能を実現するペダルである。
【0037】
ペダル101は、支持部201に取り付けられるペダル回動支持部201aに回動可能に支持される。また、ペダル101に対しては、図示しない復帰力発生部材によって図1Dの時計回り方向に復帰力が作用している。ペダル101の下方には、操作検出装置301が支持される。すなわち、支持部201はペダル201の下方で前方に突出しており、当該突出した部位に支持部材331が取り付けられる。支持部材331は薄い板状の部材であり、支持部材331に形成された単一の平面にドーム部材311およびスイッチ321が取り付けられる。さらに、ドーム部材311およびスイッチ321は、頂部が上方に向くように支持部材331に取り付けられている。
【0038】
さらに、ペダル101の下部には凹部101bが形成されており、凹部101bの底面Sbは平面状に形成されている。ドーム部材311およびスイッチ321のそれぞれは、上述のドーム部材31およびスイッチ32のそれぞれと類似した形状であるが、本実施形態におけるドーム部材311およびスイッチ321において、フランジ部は共有されていない。
【0039】
ダンパペダルにおいては、一般的に、ペダルの踏み込み操作を開始すると、ペダルのストロークに応じて反力が徐々に大きくなるハーフペダル領域の過程で徐々に、ダンパが戻らない状態(音が長期にわたって響く状態)に移行していく。そこで、ドーム部材311においては、凹部101bの底面Sbによって押しつぶされて変形することにより、ハーフペダル領域における反力を再現するように構成されている。またダンパペダルにおいてはハーフペダル領域においてダンパが戻らない状態に移行するため、本実施形態においては、ドーム部材311からペダル101に作用する反力の大きさのピークのタイミングと、スイッチ321における可動接点が固定接点に接触するタイミングとが、同時になるように設計されている。すなわち、本実施形態においては、ペダル101が操作されて、ハーフペダル領域が再現されている過程でスイッチ321における可動接点が固定接点に接触すると、支持部材331に形成された配線に接続された回路によってペダル101が操作されたことが検出され、鍵によって指示された音が長期にわたって響くように発音される。
【0040】
この構成であっても、ドーム部材311とスイッチ321とが共通の部材である指示部材331に支持され、ペダル101に形成された凹部101bの底面Sbがドーム部材331とスイッチ321との双方を押圧し、変形させる。従って、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、以上のような構成は、ダンパペダルの他にも、シフトペダルの機能やソステヌートペダルの機能を実現する際に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10…鍵、10a…鍵上限ストッパ、20…支持部、20a…鍵回動支持部、20b…鍵ガイド部材、21a…ストッパ、21b…ストッパ、30…操作検出装置、31…ドーム部材、31a…ドーム部、31b…フランジ部、32…スイッチ、32a…ドーム部、33…支持部材、33a…ボス、100…鍵、100a…突出部
図1