【実施例】
【0038】
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、
1H−NMRおよび
13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取し、評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0039】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの固有粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価することができる。
【0040】
(3)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
【0041】
(4)厚みムラ
フィルムを10cm×10cmに切り出し、長手方向に5点、幅方向に5点、のべ10点の厚みを(3)と同様にして測定し、その総加平均値、最大値、最小値から以下の式に従い厚みムラを求めた。
a = (最大値−総加平均)/総加平均×100
b = (総加平均−最小値)/総加平均×100
厚みムラ(%) = a+b。
【0042】
(5)融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定することができる。本発明において、ポリエステルA層とポリエステルB層とを有する積層ポリエステルフィルムの場合は、各層の融点を測定し、融点の高い層をポリエステルA層、低い方の層をポリエステルB層とした。
【0043】
(6)結晶融解前の微小吸熱ピーク温度(Tmeta)
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K7121−1987、JIS K7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際の結晶融解ピークの前に現れる微小の吸熱ピーク温度をTmetaとして読み取った。
【0044】
(7)150℃における100%延伸時の応力
引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUCT−100)を用いて、フィルムの任意の一方向(X方向)および、X方向と直交する方向(Y方向)に切り出した幅10mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mm(初期試料長)となるようにセットし、温度150℃、湿度65%RHの条件に設定した恒温層中で60秒間の予熱後、引張速度300mm/分で引張試験を行い、サンプルが100%伸張したとき(チャック間距離が100mmとなったとき)のX方向およびY方向の応力の平均値を求めた。測定はX方向を任意に定めた5サンプルについてX方向、Y方向のサンプルを切り出し、X方向、Y方向のそれぞれについて5回の測定を行った。
【0045】
(8)25℃におけるヤング率
(7)と同様に切り出したサンプルについて、オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”を用いて、幅10mm、長さ150mmに切断したフィルムをチャック間距離50mmの装置にセットして、引張速度300mm/分、温度25℃、相対湿度65%の条件下で引張試験を行い、得られた荷重−伸び曲線の立ち上がり部の接線からヤング率を求めた。測定はX方向を任意に定めた5サンプルについてX方向、Y方向のサンプルを切り出し、X方向、Y方向のそれぞれについて5回の測定を行った。
【0046】
(9)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの任意の一方向(X方向)の屈折率(n
X)および、X方向と直交する方向(Y方向)の屈折率フィルムの長手方向の屈折率(n
Y)、厚み方向の屈折率(n
ZD)を測定し、下記式から面配向係数(fn)を算出した。
fn=(n
X+n
Y)/2−n
ZD
面配向係数は、フィルムの両面について測定を行い、表には、高い方の面配向係数の値を記載した。測定はX方向を任意に定めた5サンプルについてX方向、Y方向のサンプルを切り出し、X方向、Y方向のそれぞれについて測定を行った。
【0047】
(10)面内複屈折Δn
下記式に従い面内複屈折率Δnを算出した。
Δn=|n
α−n
β|
ただし、n
αは面内の最大屈折率、n
βをそれに直交する方向の屈折率とする。なお、本発明のフィルムにおいては、(8)の測定にて得られたn
Xの最大値をn
αとし、それに直交する方向の屈折率をn
βとした。測定はフィルムの両面について行い、表には、高い方のΔnの値を記載した。
【0048】
(11)引裂伝播抵抗
荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K−7128−2−1998に従って測定した。サンプルは、フィルムの任意の一方向(X方向)および、X方向と直交する方向(Y方向)にそれぞれ長さ75mm×幅63mmの長方形とし、幅方向中央部に端から20mmの切れ込みを入れ、残り43mmを引裂いたときの指示値を読み取る。引裂伝播抵抗の値としては、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値とした。なお、測定は各方向10回ずつ行い、その平均値を採用した。
【0049】
(12)150℃において100%延伸後の引裂伝播抵抗
引張試験機(オリエンテック社製テンシロンUCT−100)を用いて、フィルムの任意の一方向(X方向)および、X方向と直交する方向(Y方向)に切り出した幅30mmのサンプルフィルムをチャック間長さ50mm(初期試料長)となるようにセットし、温度150℃、湿度65%RHの条件に設定した恒温層中で60秒間の予熱後、引張速度300mm/分でサンプルを100%伸張した。サンプルの真ん中を中心として、伸長方向に長さ75mm、伸長後の幅のサンプルを切り出し、幅方向中央部に端から20mmの切れ込みを入れ、残り43mmを荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて引裂いたときの指示値を読み取る。引裂伝播抵抗の値としては、指示値より求めた引裂力(N)をフィルム厚み(mm)で除した値とした。なお、測定は100%伸長サンプル10個についてそれぞれ行い、その平均値を採用した。
【0050】
(13)成型加工性
本発明のポリエステルフィルムを、450℃の遠赤外線ヒーターを用いて、表面温度が
150℃の温度になるように加熱し、70℃に加熱した円筒形金型(底面直径50mm、
高さ20mm)に沿って真空成型を行った。円筒形金型は、エッジ部分のRを1mm、2
mm、3mmの3種類準備して真空成型を行った。金型に沿って成型できた状態を以下の
基準で評価した。
S:R1mmで成型できた(R1mmを再現できた)。
A:R2mmで成型できた(R2mmを再現できた)が、R1mmでは成型できなかった。
B:R3mmで成型できた(R3mmを再現できた)が、R2mmは成型できなかった。
C:R3mmで成型できなかった。
B以上を合格とした。
【0051】
(14)剥離破れ試験
本発明のポリエステルフィルム表面に、ポリアリレート/MEK分散体をダイコーターにて塗工・乾燥を行った(乾燥温度:150℃、乾燥時間:1分、巻出張力:200N/m、巻取張力:100N/m)。得られたポリアリレートが塗布されたポリエステルフィルムを、熱風オーブンに投入し、長手方向に100%の一軸延伸を行った(オーブン温度:150℃、幅方向フリー)。その後、ポリアリレート層を剥離し、剥離の様子、および剥離後のポリエステルフィルムの状態を以下の基準で評価した。
S:問題なく剥離が可能である。
A:破れはあるが方向によっては剥離が可能。
B:破れてしまい剥離が困難。
A以上を合格とした。
【0052】
(ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0053】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0054】
(ポリエステルB)
1,4−シクロヘキサンジメタノールがグリコール成分に対し33mol%共重合された共重合ポリエステル(イーストマン・ケミカル社製 GN001)を、シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレートとして使用した(固有粘度0.75)。
【0055】
(ポリエステルC)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が70モル%、ネオペンチルグリコール成分が30モル%であるネオペンチルグリコール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.75)。
【0056】
(ポリエステルD)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が85モル%、ジエチレングリコール成分が15モル%であるジエチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0057】
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が82.5モル%、イソフタル成分が17.5モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0058】
(ポリエステルF)
ジカルボン酸成分としてテレフタル成分が85モル%、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が15モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%である2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0059】
(粒子マスター)
ポリエステルA中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0060】
(実施例1)
A/B/Aの3層積層フィルムとした。各層の組成を表の通りとして、A層用の原料とB層用の原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を277℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を277℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させA層/B層/A層からなる3層積層未延伸フィルムを得た。次いで、長手方向への延伸前に加熱ロールにてフィルム温度を上昇させ、延伸温度85℃で長手方向に3.1倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。
【0061】
次いでテンター式横延伸機にて延伸前半温度100℃、延伸中盤温度130℃、延伸後半温度150℃で幅方向に3.7倍延伸し、そのままテンター内にて、熱処理前半部を210℃として、このゾーンにて5.3%の微延伸を行い、熱処理中盤温度220℃でさらに恒温の熱処理を行った後、熱処理後半にて幅方向に3%のリラックスを掛けながら温度200℃で熱処理を行い、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0062】
(実施例2)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
(実施例3)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
(実施例4)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0065】
(実施例5)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0066】
(実施例6)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0067】
(実施例7)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0068】
(実施例8)
組成を表の通りに変更し、熱処理前半温度を200℃、熱処理中盤温度を210℃、熱処理後半温度を190℃にした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0069】
(実施例9)
組成を表の通りに変更した以外は実施例8と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0070】
(実施例10)
熱処理前半部での微延伸倍率を2.4%とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0071】
(実施例11)
熱処理前半部での微延伸倍率を4.2%とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0072】
(実施例12)
熱処理前半部での微延伸倍率を8.1%とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0073】
(実施例13)
熱処理前半部での微延伸倍率を10.0%とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0074】
(実施例14)
熱処理前半温度を223℃、熱処理中盤温度を233℃、熱処理後半温度を213℃にした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0075】
(実施例15)
熱処理前半温度を200℃、熱処理中盤温度を210℃、熱処理後半温度を190℃にした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0076】
(実施例16)
幅方向の延伸倍率を4.0%にした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0077】
(実施例17)
フィルムの積層比を5/40/5(A層/B層/A層)とした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み50μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0078】
(比較例1)
組成を表の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0079】
(比較例2)
熱処理前半温度を190℃、熱処理中盤温度を195℃、熱処理後半温度を180℃にした以外は実施例1と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
(比較例3)
単層フィルムとした。組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を270℃、B層押出機シリンダー温度を277℃で溶融し、A層とB層合流後の短管温度を277℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。その後は、実施例1と同様にしてフィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0081】
(比較例4)
組成を表の通りに変更した以外は比較例3と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0082】
(比較例5)
組成を表の通りに変更した以外は比較例3と同様にして、フィルム厚み75μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
【表7】
【0090】
【表8】
【0091】
表中の略語の意味は以下のとおりである。
EG:エチレングリコール
CHDM:1,4−シクロヘキサンジメタノール
DEG:ジエチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
NDC:2,6−ナフタレンジカルボン酸