特許第6361182号(P6361182)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361182
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】蓄冷型冷凍機
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   F25B9/00 H
   F25B9/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-47400(P2014-47400)
(22)【出願日】2014年3月11日
(65)【公開番号】特開2015-169426(P2015-169426A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155767
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 憲志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 啓一
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−038862(JP,A)
【文献】 特開2005−030652(JP,A)
【文献】 特開2001−244109(JP,A)
【文献】 特開2012−248726(JP,A)
【文献】 特開平11−097233(JP,A)
【文献】 米国特許第05775109(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00,9/14
H01F 5/00,6/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端部及び他方端部を有する円筒形状に形成されるとともに内部に蓄冷材が充填されたシリンダ部材を備え、前記シリンダ部材内で作動ガスを往復移動させるとともに前記シリンダ部材の一方端部内にて作動ガスに膨張仕事をさせることによって前記シリンダ部材の一方端部にて冷熱が発生するように構成された蓄冷型冷凍機であって、
前記シリンダ部材の一方端部内にて発生した冷熱を被冷却体に伝達するための冷熱伝達部材を備え、
前記冷熱伝達部材が、
前記シリンダ部材の一方端部の外周側面に周方向に沿って接触するとともに、前記シリンダ部材の一方端部に接続され、前記シリンダ部材の一方端部内にて発生した冷熱が伝達される冷熱取り出し部と、
前記冷熱取り出し部から連続して形成され、前記被冷却体に設けられる被冷却面に接触することにより前記冷熱取り出し部に伝達された冷熱が前記被冷却体に伝達されるように前記被冷却体に接続された接続部と、を備え
前記接続部は、締結部材を介して前記被冷却体に接続され、
前記冷熱取り出し部は、前記接続部と前記被冷却体とを接続する前記締結部材の締め付け力により前記シリンダ部材の一方端部に接続されるとともに、前記締結部材の締め付け力を弱めることにより前記シリンダ部材の一方端部から取り外し可能に構成される、蓄冷型冷凍機。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄冷型冷凍機において、
前記接続部が変形可能である、蓄冷型冷凍機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蓄冷型冷凍機において、
前記冷熱伝達部材は、前記シリンダ部材の一方端部の外周側面に周方向に沿って接触するようにリング状に形成されているリング部分と、前記リング部分から連続して伸びている延設部分とを有し、前記リング部分により前記冷熱取り出し部が構成され、前記延設部分により前記接続部が構成される、蓄冷型冷凍機。
【請求項4】
請求項に記載の蓄冷型冷凍機において、
前記冷熱伝達部材は、可撓性を有する金属薄板の積層体により構成される、蓄冷型冷凍機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄冷型冷凍機に関する。
【背景技術】
【0002】
GM(ギホード・マクマホン)冷凍機、スターリング冷凍機、パルス管冷凍機等により代表される蓄冷型冷凍機は、蓄冷材が充填されたシリンダ部材を備え、シリンダ部材内で作動ガスを往復移動させるとともに、シリンダ部材の一方端部(低温端部)内にて作動ガスに膨張仕事をさせることによって、シリンダ部材の一方端部にて冷熱が発生するように構成される。発生した冷熱を被冷却体に与えることによって、被冷却体が冷却される。また、発生した冷熱は作動ガスの移動によってシリンダ部材内の蓄冷材に蓄えられる。故に、蓄冷材として低温比熱或いは極低温比熱の大きな物質が好ましく用いられる。
【0003】
4K〜20K程度の極低温を得るためには、作動ガスを2段階に膨張させる2段式の蓄冷型冷凍機が好ましく用いられる。2段式の蓄冷型冷凍機として特許文献1に2段型GM冷凍機が開示される。2段型GM冷凍機は、大径の1段目シリンダ部と小径の2段目シリンダ部とを有する段付き円筒形状のシリンダ部材を備える。1段目シリンダ部の一方端部内にて作動ガスが膨張することにより、60〜100K程度の低温(冷熱)を得ることができ、2段目シリンダ部の一方端部内にて作動ガスが膨張することにより、4〜20K程度の極低温(冷熱)を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−47368号公報
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
従来の蓄冷型冷凍機によれば、シリンダ部材の一方端部(低温端部)の先端面に被冷却体の被冷却面が接触される。従って、特殊な形状の被冷却面にシリンダ部材の一方端部の先端面を面接触させることは困難であった。また、被冷却面の配置形状が変更された場合、シリンダ部材の一方端部(低温端部)の先端面を被冷却面の配置形状に適合させるために、新たにシリンダ部材を作製しなければならなかった。
【0006】
また、シリンダ部材の一方端部(低温端部)において、冷却された低温の作動ガスは、シリンダ部材の内周側面に沿って流れる場合が多い。このため、発生した冷熱を取り出し得る部分のうち最も温度が低下する部分は、シリンダ部材の一方端部(低温端部)の外周側面である。従来においては最も温度が低下するシリンダ部材の一方端部(低温端部)の外周側面から冷熱を取り出していないので、冷凍機の冷凍能力を十分に活かしきれていないという問題がある。加えて、シリンダ部材の一方端部(低温端部)の先端面の面積は小さいので、従来の吸熱方式では吸熱量が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は、被冷却面の形状に応じて新たにシリンダ部材を作製する必要がなく、且つ、効率的に冷熱を取り出すことができるように構成された蓄冷型冷凍機を提供することを目的とする。
【0008】
(課題を解決するための手段)
本発明は、一方端部及び他方端部を有する円筒形状に形成されるとともに内部に蓄冷材が充填されたシリンダ部材を備え、シリンダ部材内で作動ガスを往復移動させるとともにシリンダ部材の一方端部内にて作動ガスに膨張仕事をさせることによってシリンダ部材の一方端部にて冷熱が発生するように構成された蓄冷型冷凍機であって、シリンダ部材の一方端部内にて発生した冷熱を被冷却体に伝達するための冷熱伝達部材を備え、冷熱伝達部材が、シリンダ部材の一方端部の外周側面に周方向に沿って接触するとともに、シリンダ部材の一方端部に接続され、シリンダ部材の一方端部内にて発生した冷熱が伝達される冷熱取り出し部と、冷熱取り出し部から連続して形成され、被冷却体に設けられる被冷却面に接触することにより冷熱取り出し部に伝達された冷熱が被冷却体に伝達されるように被冷却体に接続された接続部と、を備え、接続部は、締結部材を介して被冷却体に接続され、冷熱取り出し部は、接続部と被冷却体とを接続する締結部材の締め付け力によりシリンダ部材の一方端部に接続されるとともに、締結部材の締め付け力を弱めることによりシリンダ部材の一方端部から取り外し可能に構成される、蓄冷型冷凍機を提供する。
【0009】
本発明によれば、シリンダ部材の一方端部内にて発生した冷熱が冷熱伝達部材を介して被冷却体に伝達されることにより、被冷却体が冷却される。また、冷熱伝達部材の冷熱取り出し部は、シリンダ部材のうち最も温度が低下する一方端部の外周側面に周方向に沿って接触している。このためシリンダ部材から効率的に冷熱を取り出すことができる。
【0010】
また、上記のように効率的に冷熱を取り出すことができることから、冷熱伝達部の接続部の形状自由度、特に被冷却面に接触する接続部の形状自由度は高い。よって、複雑な形状の被冷却面、あるいは、冷熱の発生部位から遠くに位置する被冷却面、等に適合するように接続部を構成した場合であっても、十分に冷熱を被冷却体に伝達することができる。
【0011】
また、被冷却面の配置形状が変更された場合、その被冷却面の配置形状に適合するように接続部を形成すればよく、被冷却面の配置形状に合わせてシリンダ部材をその都度作製する必要がない。このように、本発明によれば、被冷却面の配置形状に合わせて新たにシリンダ部材を作製する必要がなく、且つ、効率的に冷熱を取り出すことができるように構成された蓄冷型冷凍機を提供することができる。
【0012】
接続部は変形可能であるのがよい。好ましくは、接続部は、被冷却面の配置形状に応じてその配置形状に適合するように変形可能であるのがよい。これによれば、被冷却面に接触するように被冷却面の配置形状に応じて接続部を変形させることによって、被冷却体の被冷却面がどのような配置形状であっても、シリンダ部材を新たに作製することなく蓄冷型冷凍機で発生した冷熱を被冷却体に伝達することができる。なお、「被冷却面の配置形状」とは、被冷却面の位置、形状、向き、を総称した概念である。
【0013】
また、冷熱取り出し部は、シリンダ部材の一方端部に取り外し可能に接続される。つまり、冷熱伝達部がシリンダ部材の一方端部に取り外し可能である。これによれば、被冷却面の配置形状が変更された場合、現在使用されている冷熱伝達部材をシリンダ部材から取り外し、変更後の被冷却面の配置形状に適合する接続部を有する冷熱伝達部材に付け替えることができる。このように冷熱伝達部のみを交換することにより、被冷却面の配置形状に合わせてシリンダ部材を新たに製することなく、蓄冷型冷凍機で発生した冷熱を被冷却体に伝達することができる。
【0014】
冷熱伝達部材は、シリンダ部材の一方端部の外周側面に周方向に沿って接触するようにリング状に形成されているリング部分と、リング部分から連続して伸びている延設部分とを有するのがよい。そして、リング部分により冷熱取り出し部が構成され、延設部分により接続部が構成されるのがよい。この場合、冷熱伝達部材は、可撓性を有する金属薄板の積層体により構成されるのがよい。これによれば、冷熱取り出し部と接続部が一体的に形成されているので熱伝達損失を抑えることができる。また、延設部(接続部)を折り曲げたり捩じったり撓ませたりすることにより、様々な被冷却面の位置、形状、向き、に合うように接続部を変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る2段型GM冷凍機を示す部分断面概略図である。
図2】被冷却体への冷熱伝達部材の取付態様を図1の上方から見た平面図である。
図3】被冷却体への冷熱伝達部材の取付態様の別例を示す図である。
図4】被冷却体への冷熱伝達部材の取付態様のさらに別例を示す図である。
図5】被冷却体への冷熱伝達部材の取付態様のさらに別例を示す図である。
図6】第2実施形態に係る2段型GM冷凍機を示す部分断面概略図である。
図7】冷熱伝達部のシリンダ部への取付態様を示す平面図である。
図8】被冷却体への冷熱伝達部の取付態様の別例を示す部分断面概略図である。
図9】被冷却体への冷熱伝達部の取付態様のさらに別例を示す部分断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る蓄冷型冷凍機である2段型GM冷凍機を示す部分断面概略図である。図1に示すように、本実施形態に係る2段型GM冷凍機1は、シリンダ部材2と、ディスプレーサ3と、駆動装置4と、圧力振動装置5と、第1冷熱伝達部材61と、第2冷熱伝達部材62とを備える。
【0017】
シリンダ部材2は、第1シリンダ部21及び第2シリンダ部22を有する。第1シリンダ部21は、低温端部(一方端部)211及びその反対側の高温端部(他方端部)212を有する円筒形状に形成される。第2シリンダ部22は、低温端部(一方端部)221及びその反対側の高温端部(他方端部)222を有する円筒形状に形成される。なお、図1においては、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)が上方の端部として表され、高温端部(212、222)が下方の端部として表されているが、ここにおける「上方」、「下方」は、図面を参照した説明の便宜のために用いているのみであって、絶対空間における「上方」、「下方」を意味するものではない。また、以下の説明においても、「上」、「下」といった方向を表す用語は、図面を参照した説明の便宜のために用いるのみであって、必ずしも絶対空間における「上」、「下」を意味するものではない。
【0018】
第1シリンダ部21の内径は第2シリンダ部の内径よりも大きく、第1シリンダ部21の外径は第2シリンダ部22の外径よりも大きい。第1シリンダ部21の上部に第2シリンダ部22が接続される。このため、第1シリンダ部21の低温端部211と第2シリンダ部22の高温端部222がそれぞれの端面で連結されており、シリンダ部材2は先端側(図1において上方側)に向かうほど径が小さくなる段付円筒形状を呈する。また、第1シリンダ部21の内部空間が第2シリンダ部22の内部空間に連通している。従って、シリンダ部材2の内部空間の形状は、先端側(図1において上方側)に向かうほど径が小さくなる段付き円柱形状である。
【0019】
ディスプレーサ3はシリンダ部材2の内部空間に配設される。ディスプレーサ3は、内部に円柱状の空間が形成された第1ピストン部31及び第2ピストン部32を有する。第1ピストン部31の内径は第2ピストン部32の内径よりも大きく、第1ピストン部31の外径は第2ピストン部32の外径よりも大きい。第1ピストン部31の上部に第2ピストン部32が接続される。このためディスプレーサ3もシリンダ部材2と同様に、先端側(図1において上方側)に向かうほど径が小さくなる段付き円筒形状を呈する。
【0020】
第1ピストン部31の外径は第1シリンダ部21の内径よりも僅かに小さい。第1ピストン部31が第1シリンダ部21内に同軸的に配設される。また、第2ピストン部の外径は第2シリンダ部22の内径よりも僅かに小さい。第2ピストン部32は、図1に示すように第1ピストン部31の図1において上端面から上方に延設され、第2シリンダ部22の内部空間に進入している。
【0021】
第1ピストン部31の軸方向長さ(高さ)は、第1シリンダ部21の内部空間の軸方向長さ(高さ)よりも短い。従って、第1シリンダ部21内の空間のうち、第1ピストン部31の上端面よりも上方に第1膨張空間21aが形成され、第1ピストン部31の下端面よりも下方に背面空間21bが形成される。図1からわかるように、第1膨張空間21aは第1シリンダ部21の低温端部211内の空間により構成され、背面空間21bは第1シリンダ部21の高温端部222内の空間により構成される。また、第2シリンダ部22の内部空間のうち、第2ピストン部32の上端面よりも上方に第2膨張空間22aが形成される。第2膨張空間22aは第2シリンダ部22の低温端部221内の空間により構成される。
【0022】
ディスプレーサ3は、第1ピストン部31の図1において下方の端部に接続されたロッド36を介して駆動装置4に接続される。駆動装置4は、例えばモータ及びスコッチヨークなどにより構成されており、駆動することによってロッド36をその軸方向に往復駆動させる。ロッド36の往復駆動によって、ロッド36に接続したディスプレーサ3がシリンダ部材2内で往復移動する。
【0023】
シリンダ部材2に第1連通路23が形成される。第1連通路23の一方端がシリンダ部材2内の背面空間21bに開口する。第1連通路23の他方端は、圧力振動装置5に接続される。圧力振動装置5は、本実施形態では、コンプレッサ51と、高圧開閉弁52と、低圧開閉弁53と、開閉制御装置54と、共通通路55とを備える。
【0024】
コンプレッサ51は、作動ガスとしてのヘリウムガスを吸入口51aから吸入し、内部にてヘリウムガスを圧縮し、圧縮した高圧のヘリウムガスを吐出口51bから吐出する。従って、コンプレッサ51の吸入口51a側にて低圧が生成され、コンプレッサ51の吐出口51b側にて高圧が生成される。
【0025】
高圧開閉弁52は2つのポートを有し、開状態であるときに2つのポートの連通を許容し、閉状態であるときに2つのポートの連通を遮断することができるように構成される。高圧開閉弁52の2つのポートのうちの一方のポートがコンプレッサ51の吐出口51bに接続され、他方のポートが共通通路55の一方端に接続される。低圧開閉弁も2つのポートを有し、開状態であるときに2つのポートの連通を許容し、閉状態であるときに2つのポートの連通を遮断することができるように構成される。低圧開閉弁53の2つのポートのうちの一方のポートがコンプレッサ51の吸入口51aに接続され、他方のポートが共通通路55の一方端に接続される。共通通路55の他方端が、シリンダ部材2に形成された第1連通路23に接続される。
【0026】
開閉制御装置54は、高圧開閉弁52と低圧開閉弁53のいずれか一方が開いているときに他方が閉じているように、これらの開閉弁の開閉作動を制御する。開閉制御装置54の作動により、共通通路55内の圧力が高圧から低圧に、或いは低圧から高圧に切り替えられる。高圧開閉弁52、低圧開閉弁53、及び開閉制御装置54は、これらが一体となったロータリバルブユニットにより構成されていてもよい。この場合、駆動源として駆動装置4に内蔵されたモータなどを利用して、ディスプレーサ3の往復移動と圧力振動装置5による高低圧の切り替え作動を連動させてもよい。
【0027】
第1ピストン部31の内部空間内には、約60〜100K程度の低温における比熱が大きい材質からなる第1蓄冷材33が充填される。第1蓄冷材33は、例えばりん青銅により形成された金網などの積層体により構成するすることができる。第1蓄冷材33が充填されている第1ピストン部31の内部空間を、以下、第1蓄冷室31aと呼ぶ。また、第2ピストン部32の内部空間内には、約4〜20K程度の極低温における比熱が大きい材質からなる第2蓄冷材34が充填される。第2蓄冷材34として、例えば鉛球などを用いることができる。第2蓄冷材34が充填されている第2ピストン部32の内部空間を、以下、第2蓄冷室32aと呼ぶ。
【0028】
第1ピストン部31に、第2連通路311、第3連通路312、第4連通路313が形成される。第2連通路311は第1ピストン部31の下端壁に形成されており、第1蓄冷室31aの図1において下方の部分と背面空間21bとを連通する。第3連通路312は第1ピストン部31の側周壁の上端部分に形成されており、第1蓄冷室31aの図1において上方の部分と第1膨張空間21aとを連通する。第4連通路313は第1ピストン部31の上端壁に形成されており、第1蓄冷室31aの図1において上方の部分と第2蓄冷室32aの下方の部分とを連通する。
【0029】
第2ピストン部32に、第5連通路321が形成される。第5連通路321は、第2ピストン部32の側周壁の上端部分に形成されており、第2蓄冷室32aの図1において上方の部分と第2膨張空間22aとを連通する。
【0030】
第1ピストン部31の外周側面の図1において下方部分に、周方向にわたって第1シールリング314が取り付けられている。第1シールリング314によって、背面空間21bと第1膨張空間21aとの連通が遮断される。また、第2ピストン部32の外周側面の下方部分であって、第2シリンダ部22の内周側面と対面する部分に、第2シールリング322が取り付けられる。第2シールリング322によって、第1膨張空間21aと第2膨張空間22aとの連通が遮断される。
【0031】
第2蓄冷室32aの上端部及び下端部に、第2蓄冷室32a内に充填されている第2蓄冷材34(例えば鉛球)の径よりも小さいメッシュ径を有する金網35が配設される。金網35によって、第2蓄冷室32a内の第2蓄冷材34が外部に漏出することが防止される。
【0032】
第1冷熱伝達部材61は、第1シリンダ部21の低温端部211の外周側面に取り付けられる。第2冷熱伝達部材62は、第2シリンダ部22の低温端部221の外周側面に取り付けられる。第1冷熱伝達部材61は、第1シリンダ部21の低温端部211内にて発生した冷熱を被冷却体C1に伝達する。第2冷熱伝達部材62は、第2シリンダ部22の低温端部221内にて発生した冷熱を被冷却体C2に伝達する。
【0033】
第1冷熱伝達部材61は、リング部分61aと延設部分61bとを有し、第2冷熱伝達部材62は、リング部分62aと延設部分62bとを有する。以下において、第1冷熱伝達部材61と第2冷熱伝達部材62とを区別せずに説明するときは、これらを総称して、冷熱伝達部材6と称し、リング部分61aとリング部分62aを区別せずに説明するときは、これらを総称して、リング部分6aと称し、延設部分61bと延設部分62bを区別せずに説明するときは、これらを総称して、延設部分6bと称する。
【0034】
図2は、被冷却体への冷熱伝達部材6の取付態様を図1の上方から見た平面図である。図2に示すように、冷熱伝達部材6は、複数枚の金属薄板を重ね合わせて積層した積層体により構成される。金属薄板は薄いために可撓性を有する。従って、可撓性を有する金属薄板を積層した積層体は変形させることができる。例えば、曲げたり捩じったりすることができる。金属薄板の材質は熱伝導の良好な材質であるのがよい。例えば、アルミニウム、或いは銅が、金属薄板の材質として好ましく用いられる。
【0035】
冷熱伝達部材6は、金属薄板の積層体の中間部分を丸めるとともに、丸められた部分の一方の端部から連続した部分と他方の端部から連続した部分とを重ね合わせることにより形成される。こうして形成された冷熱伝達部材6のうち、丸められた部分がリング部分6aであり、リング部分6aから連続して延びている部分が延設部分6bである。
【0036】
上記のようにして形成された冷熱伝達部材6のリング部分6aは、径方向が金属薄板の積層方向に一致したリング形状をなす。そして、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面2aを取り囲むように、シリンダ部(21、22)に対してリング部分6aが配設される。そのため、リング部分6aの内周面が低温端部(211、221)の外周側面2aに周方向に沿って接触する。また、延設部分6bは、リング部分6aから連続して形成されており、リング部分6aから径外方に延設される。
【0037】
また、冷熱伝達部材6の延設部分6bには、複数の貫通孔6cが設けられる。これらの貫通孔6cは、延設部分6bを構成する金属薄板の積層方向に沿って延設される。これらの貫通孔6cにボルトBTがそれぞれ挿通される。貫通孔6cを挿通したボルトBTに被冷却体C(C1、C2)を挟んでナットNTを螺合することにより、締結部材(ボルトBT及びナットNT)を介して被冷却体Cが延設部分6bに接続される。また、こうした締結部材による締結力は、リング部分6aを閉じるように(すなわちリング部分6aの内径を縮めるように)リング部分6aにも作用する。このためリング部分6aがシリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)を締め付ける。斯かる締め付け力によってリング部分6aの内周面がシリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面2aに密着するとともに、冷熱伝達部材6がシリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)に固定される。
【0038】
また、被冷却体Cには被冷却面Sが設けられていて、締結部材を介して被冷却体Cが延設部分6bに接続されたときに、被冷却面Sに延設部分6bの片側面が面接触する。この場合において、延設部分6bは金属薄板の積層体により構成されており、比較的自由に撓むことができる。従って、被冷却面Sの形状に合わせて延設部分6bを変形させることにより、十分に冷熱が被冷却面Sに伝わるように、被冷却面Sに延設部分6bを面接触させることができる。
【0039】
上記構成の2段型GM冷凍機において、以下に、その作動について簡単に説明する。ディスプレーサ3がシリンダ部材2内にて図1において最も上方に位置しているときには、圧力振動装置5の高圧開閉弁52が開いており低圧開閉弁53が閉じている。従って、高圧の作動ガスが、共通通路55、第1連通路23を経由してシリンダ部材2内に導入される。次いで、ディスプレーサ3がシリンダ部材2に対して下方に変位される。すると、背面空間21b内の高圧の作動ガスが、第2連通路311を通って第1蓄冷室31aに導入される。第1蓄冷室31a内に導入された作動ガスは第1蓄冷材33から冷熱を奪うことにより冷却される。そして、第1蓄冷材33により冷却された作動ガスは第3連通路312を通って第1膨張空間21aに導入される。また、第1蓄冷室31a内に導入された作動ガスの一部は、第4連通路313を通って第2蓄冷室32aに導入される。第2蓄冷室32a内に導入された作動ガスは第2蓄冷材34から冷熱を奪うことにより冷却される。そして、第2蓄冷材34により冷却された作動ガスは第5連通路321を通って第2膨張空間22aに導入される。
【0040】
その後、圧力振動装置5の高圧開閉弁52が閉じるとともに低圧開閉弁53が開く。これによって、第1シリンダ部21の低温端部211側に位置する第1膨張空間21a内の作動ガス及び、第2シリンダ部22の低温端部221側に位置する第2膨張空間22a内の作動ガスが、それぞれ膨張仕事を行う。斯かる膨張仕事によって、それぞれの膨張空間21a,22a内、すなわち第1シリンダ部21の低温端部211内及び第2シリンダ部22の低温端部221内にて冷熱が発生する。
【0041】
次に、ディスプレーサ3がシリンダ部材2に対して上方に変位される。すると、第2膨張空間22a内の作動ガスは、第5連通路321、第2蓄冷室32a、第4連通路313、第1蓄冷室31a、第2連通路311を経由して、背面空間21bに導入される。このとき、第2蓄冷室32a内の第2蓄冷材34及び第1蓄冷室31a内の第1蓄冷材33に冷熱を奪われることによって、作動ガスが加熱される。また、第1膨張空間21a内の作動ガスは、第3連通路312、第1蓄冷室31a、第2連通路311を経由して、背面空間21bに導入される。このとき第1蓄冷室31a内の第1蓄冷材33に冷熱を奪われることによって、作動ガスが加熱される。
【0042】
次いで、圧力振動装置5の高圧開閉弁52が開くとともに低圧開閉弁53が閉じる。これによって、背面空間21b内の作動ガスが圧縮仕事を行う。斯かる圧縮仕事によって発生する熱は、コンプレッサ51の吐出側に設置された図示しない放熱器によって外部に放熱される。
【0043】
上記した熱サイクル(GMサイクル)が繰り返されることによって、第1膨張空間21a内が約60〜100K程度に冷却され、第2膨張空間22a内が約4〜20K程度に冷却される。第1膨張空間21a内(第1シリンダ部21の低温端部211内)で生じた冷熱は、第1冷熱伝達部材61のリング部分61aに伝達され、リング部分61aからさらに延設部分61bに冷熱が伝達される。そして、延設部分61bから第1被冷却体C1に伝達される。このようにして第1被冷却体C1が冷却される。また、第2膨張空間22a内(第2シリンダ部22の低温端部221内)で生じた冷熱は、第2冷熱伝達部材62のリング部分62aに伝達され、リング部分62aからさらに延設部分62bに伝達される。そして、延設部分62bから第2被冷却体C2に伝達される。このようにして第2被冷却体C2が冷却される。
【0044】
被冷却体C1、C2が冷却されている際に、第1膨張空間21aに流入或いは第1膨張空間21aから流出する作動ガスは、第3連通路312を通る。図1に示すように第3連通路312は、第1ピストン部31の側周面に形成されている。従って、第3連通路312を経由する作動ガスは、必然的に、第1ピストン部31の外周側面と第1シリンダ部21の内周側面との間の空間を通ることとなる。具体的には、第1蓄冷室31aから第3連通路312を経由して第1膨張空間21aに流れる作動ガスは、第1シリンダ部21の低温端部211の内周側面に沿って流れて第1膨張空間21aに進入する。また、第1膨張空間21aから第3連通路312を経由して第1蓄冷室31aに流れる作動ガスは、第1シリンダ部21の低温端部211の内周側面に沿って流れた後に第3連通路312を通って第1蓄冷室31a内に進入する。このように、第1シリンダ部21の低温端部211内において、冷却された低温の作動ガスは第1シリンダ部21の低温端部211の内周側面に沿って流れる場合が多い。このため、第1シリンダ部21の低温端部211内(第1膨張空間21a内)にて発生した冷熱を取り出し得る部分のうち最も温度が低下する部分は、第1シリンダ部21の低温端部211の外周側面である。本実施形態においては、最も温度が低下する第1シリンダ部21の低温端部211の外周側面に第1冷熱伝達部材61のリング部分61aが接触しているため、最も効率的に第1シリンダ部21から冷熱を取り出すことができる。
【0045】
また、被冷却体C1、C2が冷却されている際に、第2膨張空間22aに流入或いは第2膨張空間22aから流出する作動ガスは、第5連通路321を通る。図1に示すように第5連通路321は、第2ピストン部32の側壁に形成されている。従って、第5連通路321を経由する作動ガスは、必然的に、第2ピストン部32の外周側面と第2シリンダ部22の内周側面との間の空間を通ることとなる。具体的には、第2蓄冷室32aから第5連通路321を経由して第2膨張空間22aに流れる作動ガスは、第2シリンダ部22の低温端部221の内周側面に沿って流れて第2膨張空間22aに進入する。また、第2膨張空間22aから第5連通路321を経由して第2蓄冷室32aに流れる作動ガスは、第2シリンダ部22の低温端部221の内周側面に沿って流れた後に、第5連通路321を通って第2蓄冷室32a内に進入する。このように、第2シリンダ部22の低温端部221内において、冷却された低温の作動ガスは第2シリンダ部22の低温端部221の内周側面に沿って流れる場合が多い。このため、第2シリンダ部22の低温端部221内(第2膨張空間22a内)にて発生した冷熱を取り出し得る部分のうち最も温度が低下する部分は、第2シリンダ部22の低温端部221の外周側面である。本実施形態においては、最も温度が低下する第2シリンダ部22の低温端部221の外周側面に第2冷熱伝達部材62のリング部分62aが接触しているため、最も効率的に第2シリンダ部22から冷熱を取り出すことができる。
【0046】
ところで、GM冷凍機により冷却される対象は多岐に渡り、それ故に、被冷却体の形状及び被冷却面の配置形状は被冷却体によって異なる。従来では、シリンダ部材の低温端部の先端面に被冷却面を接触させるように構成されていたので、特殊な配置形状の被冷却面を冷却することは困難であった。また、被冷却体に最も冷熱が伝達されるように被冷却面の箇所を変更する場合もあり、こうした場合には、従来では、変更後の被冷却面にシリンダ部材の低温端部の先端面が接触できるように、シリンダ部材を新たに作製しなければならなかった。
【0047】
これに対し、本実施形態によれば、2段型GM冷凍機1にて生じた冷熱が一旦冷熱伝達部材6(第1冷熱伝達部材61及び第2冷熱伝達部材62)に伝達され、この冷熱伝達部材6を介して被冷却体C(C1、C2)に冷熱が伝達されるように構成されているため、冷熱伝達部材6の形状(特に延設部分6bの形状)を被冷却面Sの形状に合わせることによって、シリンダ部材をその都度作製せずとも、様々な形状の被冷却面に2段型GM冷凍機1にて生じた冷熱を伝達させることができる。
【0048】
また、上記のように効率的に冷熱を取り出すことができることから、冷熱伝達部6の延設部分6bの形状自由度は高い。よって、複雑な形状の被冷却面、あるいは、冷熱の発生部位から遠くに位置する被冷却面、等、従来では適合させることが困難な被冷却面に適合するように延設部分6bを構成した場合であっても、十分に冷熱を被冷却体Cに伝達することができる。
【0049】
また、冷熱伝達部材6は、図2に示すように、締結部材の締め付け力によってシリンダ部(21、22)に取り付けられているため、締結部材による締め付け力を弱めることによって、冷熱伝達部材6はシリンダ部(21、22)から簡単に取り外すことができる。すなわち、冷熱伝達部材6(リング部分6a)は、シリンダ部(21,22)の低温端部(211、221)に取り外し可能に接続されている。したがって、被冷却面が変更された場合には、変更後の被冷却面に接触し得るような冷熱伝達部材に取り換えることもできる。こうして冷熱伝達部材のみを交換することで、シリンダ部材2を新たに作製することなく、十分に冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0050】
図3は、被冷却体Cへの冷熱伝達部材6の取付態様の別例を示す図である。図3に示すように、被冷却面Sの位置に応じて被冷却面Sに延設部分6bを接続するための締結部材の取付位置を調整することにより、冷熱伝達部材6を様々な位置にある被冷却面Sに面接触させることができる。このため、被冷却面Sの位置がどのような位置であっても、シリンダ部材2を新たに作製することなく、十分に冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0051】
図4は、被冷却体Cへの冷熱伝達部材6の取付態様のさらに別例を示す図である。上述したように、冷熱伝達部材6の延設部分6bは可撓性を有する金属薄板の積層体により構成されていて、変形可能である。そのため、例えば図4に示すように、被冷却面Sの向きに応じて延設部分6bを折り曲げることにより、冷熱伝達部材6を様々な方向を向いた被冷却面Sに面接触させることができる。このため、被冷却面Sの向きがどのような向きであっても、延設部分6bを折り曲げることで(或いは捩じることで)、シリンダ部材2を新たに作製することなく、十分に冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0052】
図5は、被冷却体Cへの冷熱伝達部材6の取付態様のさらに別例を示す図である。上述したように延設部分6bは変形可能である。そのため、例えば図5に示すように、被冷却面Sの形状に応じて延設部分6bの形状を変形させることにより、冷熱伝達部材6を様々な形状の被冷却面Sに面接触させることができる。このため、被冷却面Sの形状がどのような形状であっても、延設部分6bを変形させることで、シリンダ部材2を新たに作製することなく、十分に冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る蓄冷型冷凍機について説明する。本例に係る蓄冷型冷凍機も、上記第1実施形態と同様に、2段型GM冷凍機である。本実施形態に係る2段型GM冷凍機は、基本的には第1実施形態に係る2段型GM冷凍機と同一の構造であり、異なるところは、冷熱伝達部の構造及び被冷却体への冷熱伝達部の取付態様のみである。従って、同一部分については同一の符号で示してその具体的説明は省略する。
【0054】
図6は、第2実施形態に係る2段型GM冷凍機1’を示す部分断面概略図である。図6に示すように、第2実施形態に係る2段型GM冷凍機1’は、第1冷熱伝達部材71と第2冷熱伝達部材72とを備える。第1冷熱伝達部材71は、第1シリンダ部21の低温端部211の外周側面に取り付けられ、第2冷熱伝達部材72は、第2シリンダ部22の低温端部221の外周側面に取り付けられる。以下において、第1冷熱伝達部材71と第2冷熱伝達部材72とを区別せずに説明するときは、これらを総称して、冷熱伝達部材7と称する。
【0055】
図7は、冷熱伝達部材7のシリンダ部(第1シリンダ部21、第2シリンダ部22)への取付態様を示す平面図である。図7に示すように、冷熱伝達部材7はリング形状を呈する。冷熱伝達部材7は、内周面7a、外周面7b、上端面7c、及び下端面7d(図6参照)を有する。内周面7aがシリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面2aに周方向に沿って接触している。また、上端面7cは、図6に示すように、被冷却体(C1、C2)の被冷却面Sに接触している。冷熱伝達部材7は、熱伝導の良好な金属で形成されているとよい。また、冷熱伝達部材7は、比較的硬度の低い金属で形成されているとよい。この場合、アルミニウム、銅などが、冷熱伝達部材7として好ましく用いられる。
【0056】
また、冷熱伝達部材7には、その内周面7aから外周面7bにかけて径方向に延びたスリット7eが形成されている。このスリット7eによって、冷熱伝達部材7の周方向に沿った隙間が上端面7cから下端面7dにかけて形成される。また、冷熱伝達部材7の外周面7bに一対の段差面7f,7fがスリット7eを挟んで対称的に形成される。さらに、それぞれの段差面7f,7fの基端から径外方に延設されるように一対の突部7g,7gが形成される。図7に示すように一対の突部7g,7gは、スリット7eを挟んで向かい合わされている。一対の突部7g,7gには、その延設方向に直交する方向に伸びるように貫通孔7i,7iがそれぞれ同心的に設けられる。これらの貫通孔7i,7iに締め付けボルトBT1が挿通される。締め付けボルトBT1の先端にナットNTが螺合される。締め付けボルトBT1にナットNTを螺合する際の締結力によってスリット7eにより形成される隙間が狭められることにより、冷熱伝達部材7がシリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面2aに取り付けられる。また、上記締結力を弱めることにより冷熱伝達部材7をシリンダ部(21、22)から取り外すことができる。すなわち、冷熱伝達部材7は、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)に取り外し可能に取り付けられる。
【0057】
また、図7に示すように、冷熱伝達部材7の上端面7cから下端面7dに貫通した複数の貫通孔7jが、冷熱伝達部材7の周方向に所定の間隔をあけて形成される。これらの貫通孔7jに取付ボルトBT2がそれぞれ挿通される。図6に示すように、取付ボルトBT2は、貫通孔7jに下端面7d側から挿通される。
【0058】
取付ボルトBT2は、冷熱伝達部材7の上端面7c上に載置される被冷却体C(C1、C2)に差し込まれて固定される。このように、取付ボルトBT2を介して、冷熱伝達部材7の上端面7cに被冷却体C(C1、C2)の被冷却面Sが面接触される。
【0059】
本実施形態に係る2段型GM冷凍機1’においても、第1シリンダ部21の低温端部211内(第1膨張空間21a内)にて発生した冷熱を取り出し得る部分のうち最も温度が低下する低温端部211の外周側面に第1冷熱伝達部材71の内周面7aが接触しているため、最も効率的に第1シリンダ部21から冷熱を取り出すことができる。同様に、第2シリンダ部22の低温端部221内(第2膨張空間22a内)にて発生した冷熱を取り出し得る部分のうち最も温度が低下する第2シリンダ部22の低温端部221の外周側面に第2冷熱伝達部材72の内周面7aが接触しているため、最も効率的に第2シリンダ部22から冷熱を取り出すことができる。そして、冷熱伝達部材7の内周面7aから連続して形成されている上端面7cが被冷却体Cの被冷却面Sに面接触しているため、効率的に冷熱を被冷却体C(C1、C2)に伝えることができる。
【0060】
また、冷熱伝達部材7は、図7に示すように、締め付けボルトBT1とナットNTとの螺合による締め付け力によってシリンダ部(21、22)に取り付けられているため、この締め付け力を弱めることによって、冷熱伝達部材7をシリンダ部(21、22)から取り外すことができる。従って、被冷却面が変更された場合には、変更後の被冷却面に接触し得るような冷熱伝達部材に取り換えることで、シリンダ部材を新たに作製することなく、十分に冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0061】
図8は、被冷却体への冷熱伝達部材7の取付態様の別例を示す部分断面概略図である。図8は、2段型GM冷凍機1’の第2シリンダ部22の低温端部221付近の概略断面図である。図8に示すように被冷却体C2の被冷却面Sが曲面である場合、その曲面に面接触するように、第2冷熱伝達部材72の上端面7cの形状を曲面に構成することもできる。このように、冷熱伝達部材7を様々な形状の被冷却面に面接触させて、十分に冷熱を被冷却体に伝えることができる。
【0062】
以上説明したように、上記第1実施形態及び第2実施形態に係る2段型GM冷凍機1,1’は、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)内にて発生した冷熱を被冷却体C(C1、C2)に伝達するための冷熱伝達部材(6、7)を備える。また、冷熱伝達部材(6、7)は、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面に周方向に沿って接触するとともに、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)に接続され、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)内にて発生した冷熱が伝達される冷熱取り出し部(第1実施形態においてはリング部分6a、第2実施形態においては内周面7a)と、冷熱取り出し部から連続して形成され、被冷却体Cに設けられる被冷却面Sに接触することにより冷熱取り出し部に伝達された冷熱が被冷却体Cに伝達されるように、被冷却体Cに接続された接続部(第1実施形態においては延設部分6b、第2実施形態においては上端面7c)と、を備える。
【0063】
上記第1、第2実施形態によれば、冷熱取り出し部(6a、7a)がシリンダ部(21、22)のうち最も温度が低下する低温端部(211、221)の外周側面に周方向に沿って接触しているので、シリンダ部(21、22)から効率的に冷熱を取り出すことができる。
【0064】
また、被冷却面Sの配置形状が変更された場合、その被冷却面の配置形状に適合するように接続部を形成することにより、シリンダ部材2を新たに作製することなく、冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0065】
また、冷熱取り出し部(6a、7a)は、シリンダ部(21,22)の低温端部(211、221)に取り外し可能に接続される。従って、被冷却体の形状、特に被冷却面の配置形状に応じて、その配置形状に合った冷熱伝達部材を用いることにより、シリンダ部材2を新たに作製することなく、冷熱を被冷却体Cに伝えることができる。
【0066】
また、上記第1実施形態によれば、図3に示すように、締結部材の取付位置を調整して、被冷却面Sに接触する面を変更することができる。このため、被冷却面がどのような位置にあっても、締結部材の取付位置を調整して接続部(延設部分6b)を被冷却面Sに面接触させることにより、シリンダ部材2を新たに作製することなく、発生した冷熱を被冷却体Cに伝達することができる。また、上記第1実施形態によれば、被冷却面Sの配置形状に応じて接続部(延設部分6b)を変形させて、冷熱伝達部材6を被冷却面Sに面接触させることにより、シリンダ部材2を新たに作製することなく、発生した冷熱を被冷却体Cに伝達することができる。
【0067】
また、上記第1実施形態によれば、冷熱伝達部材6は、シリンダ部(21、22)の低温端部(211、221)の外周側面に周方向に沿って接触するようにリング状に形成されているリング部分6aと、リング部分6aから連続して伸びている延設部分6bとを有する。そして、リング部分6aにより冷熱取り出し部が構成され、延設部分6bにより接続部が構成される。さらに、上記第1実施形態によれば、冷熱伝達部材6は、可撓性を有する金属薄板の積層体により構成される。これによれば、冷熱取り出し部と接続部が一体的に形成されているので熱伝達損失を抑えることができる。また、延設部分6bを曲げたり、捩じったり、撓ませたりすることにより、様々な被冷却面の位置、形状、向き、に合うように延設部分6bを変形させることができる。
【0068】
以上、本発明の様々な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記第1、第2実施形態においては、2段式の蓄冷型冷凍機について説明したが、1段の蓄冷型冷凍機にも本発明を適用することができる。また、上記第1、第2実施形態においては、蓄冷側冷凍機としてGM冷凍機を例にとって説明したが、その他の蓄冷型冷凍機、例えばスターリング冷凍機、パルス管冷凍機、等にも、本発明を適用することができる。また、上記第1実施形態によれば、金属薄板の積層体により冷熱伝達部材6を構成した例を説明したが、熱伝導性の良好なものであればどのようなもので冷熱伝達部材を構成してもよい。さらに、上記第1実施形態において示した延設部分6を捩じることによって、延設部分6を被冷却面の向きに合わせることもできる。また、上記第2実施形態においては、冷熱伝達部材7の上端面7cに被冷却面Sを接触させた例を示したが、例えば図9に示すように、冷熱伝達部材7の外周面7bから突出するように継手状の突部73を連続的に形成し、この継手状の突部73に被冷却体Cの被冷却面Sを接触させるように構成してもよい。このようにすることにより、どのような配置形状の被冷却体に対しても、十分に冷熱を伝達させることができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0069】
1…2段型GM冷凍機(蓄冷型冷凍機)、2…シリンダ部材、2a…外周側面、21…第1シリンダ部、21a…第1膨張空間、21b…背面空間、211…低温端部(一方端部)、22…第2シリンダ部、22a…第2膨張空間、221…低温端部(一方端部)、23…第1連通路、3…ディスプレーサ、31…第1ピストン部、31a…第1蓄冷室、32…第2ピストン部、32a…第2蓄冷室、33…第1蓄冷材、34…第2蓄冷材、4…駆動装置、5…圧力振動装置、6…冷熱伝達部材、6a,61a,62a…リング部(冷熱取り出し部)、6b,61b,62b…延設部(接続部)、7…冷熱伝達部材、7a…内周面(冷熱取り出し部)、7b…外周面、7c…上端面(接続部)、7d…下端面、7e…スリット、61,71…第1冷熱伝達部材、62,72…第2冷熱伝達部材、311…第2連通路、312…第3連通路、313…第4連通路、321…第5連通路、BT…ボルト、BT1…締め付けボルト、BT2…取付ボルト、NT…ナット、C,C1,C2…被冷却体、S…被冷却面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9