(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361196
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】配管支持具
(51)【国際特許分類】
F22B 37/10 20060101AFI20180712BHJP
F22B 37/20 20060101ALI20180712BHJP
F28F 9/013 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
F22B37/10 602Z
F22B37/20 B
F28F9/013 D
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-54686(P2014-54686)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-175498(P2015-175498A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】清水 章
(72)【発明者】
【氏名】久保 英人
(72)【発明者】
【氏名】三角 唯斗
(72)【発明者】
【氏名】武永 計介
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−013106(JP,A)
【文献】
実開昭57−001302(JP,U)
【文献】
特開昭61−167790(JP,A)
【文献】
実開昭58−160395(JP,U)
【文献】
特開2014−129963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/10
F22B 37/20
F28F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行かつ間隔をあけて配設された複数の配管直線部を互いに連結して支持する配管支持具において、
前記複数の配管直線部のそれぞれの外側に装着される複数のスリーブと、
前記複数のスリーブを連結する連結部材と、
複数の前記スリーブおよび配管直線部のそれぞれの間に、前記スリーブおよび前記配管直線部と隙間を有して介在する円筒状の複数のプロテクターであって、前記配管直線部の周方向において少なくとも部分的に前記配管直線部と固定されるが、前記スリーブとは固定されないプロテクターと、
前記配管直線部と前記プロテクターとの隙間で形成される空間と前記スリーブの外表面側の空間との間での気体の流れを許容する気体流通構造と、
を有し、
前記プロテクターは、その周方向において全周にわたって溶接されることによって前記配管直線部に固定されており、
前記気体流通構造は、前記プロテクターに形成された少なくとも1つの貫通孔であること
を特徴とする配管支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の配管支持具において、
前記気体流通構造は、前記プロテクターに形成された貫通孔と同軸上に位置して前記スリーブに形成された貫通孔をさらに含むこと
を特徴とする配管支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行かつ間隔をあけて配設された複数の配管直線部を互いに連結して支持する配管支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を燃料とし得るボイラとして、循環流動層ボイラが知られている。循環流動層ボイラは、火炉、サイクロンおよび熱交換器を有している。
【0003】
熱交換器の内部には、熱交換される流体が流れる配管が引き回されている。配管は、流体の流れ方向が反転を繰り返すように屈曲され、屈曲した両端部の間は配管直線部とされている。配管直線部は、配管が互いに平行にかつ間隔をあけて配設された部分である。循環流動層ボイラに用いられる熱交換器においては、配管内部で発生するバブリングなどにより配管自体が振動する。配管の振動を抑制するため、配管直線部同士が連結部材で連結されて、配管が支持されている。
【0004】
図4Aおよび
図4Bに、従来の配管支持構造を示す。図に示す配管支持構造では、各配管直線部331aにスリーブ442が装着されている。スリーブ442は、2つの半スリーブを円筒状となるように向かい合わせ、当接部において外側から当て板444を溶接によって接合することによって構成されている。各スリーブ442は、連結部材441によって互いに連結され、これによって、配管直線部331aは互いの間隔を維持した状態で支持される。
【0005】
配管直線部331aは、熱による伸びが生じる。そのため、配管直線部331aとスリーブ442とは完全には固定されておらず、スリーブ442が装着された部分において配管直線部331aの伸びを許容するように、両者間に隙間が存在している。
【0006】
このように、配管直線部331aの寸法変化を許容した状態で装着されたスリーブ442を用いることによって、配管の振動の問題および熱による伸びの問題を解決している。
【0007】
同様に、配管の振動の問題および熱による伸びの問題を解決する他の構造として、特許文献1に記載された構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−13106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、
図4Aおよび4Bに示した構造では、配管直線部331aとスリーブ442との間に隙間が存在しているため、その隙間にダスト(微少な異物)が進入する可能性があった。隙間にダストが進入すると、配管直線部331aの伸縮の繰り返しに伴い、スリーブ442によって支持されている部分に摩耗が生じる。摩耗が進行していくと、最悪の場合には配管に穴が開き、中を流れる流体がこの穴から噴出してしまう懸念があった。
【0010】
この問題は、循環流動層ボイラの熱交換器内には循環灰や砂が存在していることから、上記の配管の支持構造を循環流動層ボイラの熱交換器に適用した場合に特に顕著である。しかし、ダストの進入による問題は、循環流動層ボイラの熱交換器に限られる問題ではなく、高温にさらされ、かつダストが存在する雰囲気内での配管の支持構造に共通の問題である。
【0011】
本発明は、スリーブによって配管を支持する場合において、配管とスリーブとの間にダストが進入することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の配管支持具は、互いに平行かつ間隔をあけて配設された複数の配管直線部を互いに連結して支持する配管支持具において、
前記複数の配管直線部のそれぞれの外側に装着される複数のスリーブと、
前記複数のスリーブを連結する連結部材と、
複数の前記スリーブおよび配管直線部のそれぞれの間に、前記スリーブおよび前記配管直線部と隙間を有して介在する円筒状の複数のプロテクターであって、前記配管直線部の周方向において少なくとも部分的に前記配管直線部と固定されるが、前記スリーブとは固定されないプロテクターと、
前記配管直線部と前記プロテクターとの隙間で形成される空間と前記スリーブの外表面側の空間との間での気体の流れを許容する気体流通構造と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、連結部材によって複数の配管直線部が互いに連結されることにより、配管直線部の振動が抑制される。また、配管直線部とスリーブとの間にプロテクターが介在しており、しかも配管直線部とプロテクターとが固定されているので、ダストによる配管直線部の摩耗を抑制することができる。さらに、気体流通構造を設けたことにより、配管直線部とプロテクターとの間で熱膨張した気体を、気体流通構造を通じてスリーブの外表面側へ排出でき、それによって、配管直線部とプロテクターの温度を均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用しうる循環流動層ボイラの一例の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す熱交換器内の配管を示す図である。
【
図3A】
図2に示す配管支持構造の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、本発明を適用しうる循環流動層ボイラの一例の概略構成図が示される。
図1に示す循環流動層ボイラは、火炉10と、サイクロン20と、熱回収器25と、熱交換器30とを有する。
【0016】
火炉10は、砂や石灰石等からなる流動材を空気および燃料と混合して燃焼するように構成されている。火炉10の上部にはサイクロン20が接続され、火炉10内での燃焼により発生した燃焼ガスとともに火炉10から排出された流動材は、サイクロン20によって燃焼ガスから分離される。
【0017】
熱交換器30はサイクロン20の下部に配置されており、サイクロン20によって燃焼ガスから分離された流動材は、この熱交換器30で熱交換されて火炉10に戻される。サイクロン20で燃焼ガスから分離された流動材は灰などの粗粒であるダストを含んでいる。したがって、熱交換器30へは、このダストを含んだ流動材が導入される。サイクロン20の出口には熱回収器25が接続されており、サイクロン20から排出された燃焼ガスは、ここで熱回収されて排ガスとして大気中へ放出される。
【0018】
次に、熱交換器30について
図2を参照して説明する。
【0019】
熱交換器の内部には、
図2に示すように、熱交換用の流体が流通する配管31が引き回されている。配管31の数は任意であってよく、図示した例では2本の配管31が配置されている。配管31は、水平方向に延びており、流体が流れ方向の反転を交互に繰り返しながら流れるように両端が屈曲している。配管31の屈曲した両端部の間の部分は、配管直線部31aとなっており、これら配管直線部31aは、互いに平行かつ間隔をあけて配設されている。
【0020】
熱交換器内部での配管31の支持は適宜のブラケット等によって行われるが、振動および熱による伸びがより生じやすい配管直線部31aにおいては、上下に配置された全ての配管31が、配管支持具40を用いた配管支持構造によって支持されている。
【0021】
配管支持具40は、
図3Aおよび
図3Bに示すように、連結部材41、複数のスリーブ42および複数のプロテクター43を有している。
【0022】
各配管直線部31aの外側にはそれぞれプロテクター43を介在させてスリーブ42が装着されている。プロテクター43およびスリーブ42は円筒状に構成された部材であり、配管直線部31a、プロテクター43およびスリーブ42は、配管直線部31aとプロテクター43との間およびプロテクター43とスリーブ42との間に隙間を有して、同心状に配置されている。各スリーブ42は、連結部材41によって互いに連結され、これによって、配管直線部31aは互いの間隔を維持した状態で支持される。
【0023】
プロテクター43の両端には、プロテクター43がその全周にわたって配管直線部31aと溶接されることによって、溶接部46が形成されている。これによって、プロテクター43は配管直線部31aの外周面上に固定されている。プロテクター43は、スリーブ42と同じ材料で構成されていてもよいし、異なる材料で構成されていてもよい。
【0024】
スリーブ42は、2つの半スリーブを円筒状となるように向かい合わせ、これらの当接部において、その全域にわたって両者を溶接することによって溶接部45が形成されている。スリーブ42は、プロテクター43の外周面上に配置されているだけであり、プロテクター43に固定されてはいない。スリーブ42の構造は、上記の構成に限られるものではなく、プロテクター43の外周面を保持できる構造であれば任意の構造を採用することができる。
【0025】
プロテクター43およびスリーブ42には、配管直線部31aとプロテクター43との隙間で形成される空間とスリーブ42の概評面側の空間との間での気体の流れを許容する気体流体構造として、それらを貫通する貫通孔44が形成されている。貫通孔44は同軸上に位置しており、したがって、貫通孔44を通して配管直線部31aの表面を視認することができる。貫通孔44の数は一つであってもよいし複数であってもよい。図示した例では、スリーブ42およびプロテクター43の軸方向に沿う方向に並んだ3個で1列の貫通孔44を、配管直線部31aの中心に対して点対称となる位置に2箇所、合計で6個配置している。
【0026】
上記の配管支持具40を用いた配管支持構造によれば、連結部材41によって複数の配管直線部31aが互いに連結されることにより、配管直線部31aの振動が抑制される。また、配管直線部31aとスリーブ42との間にプロテクター43が介在しており、しかも配管直線部31aとプロテクター43とは溶接によって固定されているので、スリーブ42とプロテクター43との隙間にダストが進入したとしても、配管直線部31aが摩耗することはない。さらに、貫通孔44を設けたことにより、配管直線部31aのプロテクター43で覆われた部分において配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体は、貫通孔44を通じてスリーブ42の外表面側へ排出される。そのため、配管直線部31aとプロテクター43の温度が均一になり、結果的に、両者の熱伸び量の差により発生する溶接部46の損傷を回避することができる。
【0027】
上記のように、貫通孔44は、熱膨張した気体をスリーブ42の外表面側へ排出することによって配管直線部31aとプロテクター43との温度差を解消する役割を果たす。よって、貫通孔44のサイズは、雰囲気中に存在する循環灰などのダストが詰まりにくいサイズであることが望ましい。ダストにより、配管直線部31aとプロテクター43との隙間は、貫通孔44の周囲において気体が流通できる程度に閉塞されることにより、配管直線部31aとプロテクター43との隙間へのダストの進入は抑制される。したがって、配管直線部31aとプロテクター43との隙間は、ダストによって上記のように閉塞される程度の大きさとされることが好ましい。
【0028】
ダストが詰まりにくい貫通孔44のサイズとしては、例えば円形断面の貫通孔44の場合、直径は、想定されるダストの粒径の3倍以上、好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上であり、かつ、プロテクター43の厚みとの間でのアスペクト比(プロテクター43の厚み/貫通孔44の直径)が1〜3程度であることが好ましい。この設計基準に従えば、プロテクター43の厚みが6mmである場合、貫通孔44の直径を2〜6mmとすることができる。
【0029】
以上、好ましい実施形態を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更することができる。
【0030】
例えば、上述した形態では貫通孔44はプロテクター43およびスリーブ42の双方を貫通して互いに同軸上に位置して形成されている例を示した。しかし、プロテクター43に形成される孔とスリーブ42に形成される孔とは互いに同軸上に位置している必要はなく、また、プロテクター43のみに貫通孔が形成されていてもよい。少なくともプロテクター43に貫通孔が形成されていれば、配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体を、プロテクター43に形成された貫通孔から、プロテクター43とスリーブ42との隙間を通って、スリーブ42の外表面側へ排出させることができる。ただし、熱膨張した気体をより良好に排出できるようにするためには、前述したように、貫通孔は、プロテクター43およびスリーブ42の双方に、互いに同軸上に位置して形成することが好ましい。
【0031】
また、上述した形態では、プロテクター43の両端が全周にわたって配管直線部31aに溶接されている例を示した。しかし、プロテクター43と配管直線部31aとは、両者間の十分な固定強度を確保できれば、周方向において部分的に溶接されていてもよい。この場合は、溶接されていない箇所を通じて、熱膨張した気体をスリーブ42の該表面側へ排出することができるので、上述した貫通孔を不要とすることができる。すなわち、配管直線部31aとプロテクター43との隙間を気体流通構造の少なくとも一部として利用し、配管直線部31aとプロテクター43との隙間のみ、または配管直線部31aとプロテクター43との隙間と少なくともプロテクター43に形成された貫通孔との組み合わせで気体流通構造を構成することができる。
【0032】
また、上述した配管支持構造は、循環流動層ボイラの熱交換器に限らず、任意の配管の支持、特にダストが存在する雰囲気中に設置される配管の支持に適用可能である。
【0033】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、以下の(1)〜(4)に記載する配管支持具が提供される。
【0034】
(1) 互いに平行かつ間隔をあけて配設された複数の配管直線部31aを互いに連結して支持する配管支持具40において、
前記複数の配管直線部31aのそれぞれの外側に装着される複数のスリーブ42と、
前記複数のスリーブ42を連結する連結部材41と、
複数の前記スリーブ42および配管直線部31aのそれぞれの間に、前記スリーブ42および前記配管直線部31aと隙間を有して介在する円筒状の複数のプロテクター43であって、前記配管直線部31aの周方向において少なくとも部分的に前記配管直線部31aと固定されるが、前記スリーブ42とは固定されないプロテクター43と、
前記配管直線部31aと前記プロテクター43との隙間で形成される空間と前記スリーブ42の外表面側の空間との間での気体の流れを許容する気体流通構造と、
を有することを特徴とする配管支持具。
【0035】
上記の配管支持具によれば、連結部材41によって複数の配管直線部31aが互いに連結されることにより、配管直線部31aの振動を抑制することができる。また、配管直線部31aとスリーブ42との間にプロテクター43を介在させ、しかも配管直線部31aとプロテクター43とが固定されることで、配管直線部31aの摩耗を抑制することができる。さらに、気体流通構造を設けたことにより、配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体を、気体流通構造を通じてスリーブ42の外表面側へ排出することができる。
【0036】
(2) 上記(1)に記載の配管支持具において、
前記プロテクター43は、その周方向において全周にわたって溶接されることによって前記配管直線部31aに固定されており、
前記気体流通構造は、前記プロテクター43に形成された少なくとも1つの貫通孔44であること
を特徴とする配管支持具。
【0037】
上記の配管支持具によれば、配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体を、貫通孔44およびプロテクター43とスリーブ42との隙間を通じて排出することができる。
【0038】
(3) 上記(2)に記載の配管支持具において、
前記気体流通構造は、前記プロテクター43に形成された貫通孔44と同軸上に位置して前記スリーブ42に形成された貫通孔44をさらに含むこと
を特徴とする配管支持具。
【0039】
上記の配管支持具によれば、配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体を、貫通孔44を通じて排出することができる。
【0040】
(4) 上記(1)に記載の配管支持具において、
前記プロテクター43は、その周方向において部分的に溶接されることによって前記配管直線部31aに固定されており、
前記配管直線部31aと前記プロテクター3との隙間によって前記気体流通構造の少なくとも一部が構成されること
を特徴とする配管支持具。
【0041】
上記の配管支持具によれば、配管直線部31aとプロテクター43との間で熱膨張した気体を、配管直線部31aとプロテクター43との隙間を通じて排出することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 火炉
20 サイクロン
25 熱回収器
30 熱交換器
31 配管
31a 配管直線部
40 配管支持具
41 連結部材
42 スリーブ
43 プロテクター
44 貫通孔
45、46 溶接部