(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記保持筒体は、略半円筒形状の2つの保持具片の両端部を互いに連結して構成され、前記両端部のうち一方の端部が回転軸を介して連結されることによって、これら保持具片の他の端部から開閉可能となっており、かつ、一方の保持具片に設けられる縦リブと他方の保持具片に設けられる縦リブは、前記保持筒体の中心線を介して、それぞれが線対称に配置されることを特徴とする請求項1に記載の杭保持装置。
前記保持筒体の径方向における前記縦リブの長さは、前記回転軸を介して前記2つの保持具片を開放して、前記一の保持具片及び前記他の保持具片の前記回転軸側にそれぞれ設けられる前記縦リブの先端部が当接した際に、その開放角が少なくとも60度以上の大きさとなる長さであることを特徴とする請求項2に記載の杭保持装置。
前記縦リブは、該縦リブの基端側を支持する補強部材を介して、前記保持筒体の前記外周面に着脱可能に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の杭保持装置。
前記テーパ面は、その内周面を略円筒形状に変更可能とする適合部材が設置可能な構成となっていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の杭保持装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
複数の既製杭を連結させる際に、ワイヤを使わずに、杭保持装置によって大径化、重量化された既製杭を安定した状態で保持するためには、既製杭に設けられる係止手段がある程度以上の重量に対する耐久性を有する必要がある。また、複数の既製杭を連結させて杭孔に建て込む際には、施工作業の効率を高めるためにも、杭保持装置による既製杭の保持がぶれることなく、より確実に定位置に保持されることが重要となる。
【0008】
さらに、杭保持装置を既製杭に取り付ける際に、その作業を効率的に行うためには、クレーン等の重機械を用いずに、人力で直接行えることが好ましい。すなわち、杭保持装置を既製杭に取り付ける作業を効率的に行うためには、人力での取り付けが可能となるように、杭保持装置の軽量化が図られることが望ましい。特許文献1及び特許文献2の既製杭の埋設方法では、何れもワイヤを使用しないで、複数の既製杭を連結可能としているが、杭保持装置の軽量化を図った上で定位置での安定した保持状態の維持に関しては、言及していない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、装置の軽量化を図った上で既製杭の定位置での安定した保持状態の維持の可能な、新規かつ改良された杭保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、杭孔に既製杭を建て込む際に、前記杭孔の開口部で前記既製杭を略鉛直方向に保持可能な杭保持装置であって、前記既製杭の外周面の所定の部位に巻着される略円筒形状の保持筒体と、前記保持筒体の外周面から該保持筒体の軸方向に沿って所定の角度間隔で放射状に突出するように設けられる少なくとも4つの縦リブとを備え、前記保持筒体の径方向における前記縦リブの長さは、前記杭孔の内径と前記既製杭の外径との差の1/2より大き
く、前記保持筒体は、その内周面に沿って環状に形成され、前記略鉛直方向における該内周面の底部側から頂部側に向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面からなる環状凹部を備え、前記既製杭は、略円柱形状の杭本体と、前記杭本体の外周面に沿って環状に一体成型され、該外周面の所定の位置から前記杭本体の一端部を有する方向に一定の割合で拡径して形成される杭側テーパ面が設けられる環状凸部とを備え、前記保持筒体を既製杭に巻着させる際に、前記環状凹部が前記環状凸部と嵌合され、前記テーパ面と前記杭側テーパ面が当接することを特徴とする杭保持装置。
【0011】
本発明の一態様によれば、保持筒体の外周部に設けた縦リブによって、杭孔開口部で保持筒体を支持可能とする構成としたので、保持筒体の小径化すると共に軽量化を図ることができる。
さらに、外周面に環状凸部が設けられる既製杭を保持筒体で支持する際に、環状凹部のテーパ面に既製杭の外周面側に有する環状凸部の杭側テーパ面からの荷重が均等にかかり易くなる。このため、保持筒体の軽量化を図った上で、大径化、重量化された既製杭を杭孔に建て込む際に、既製杭の定位置での安定した保持状態を維持することができる。
【0012】
このとき、本発明の一態様では、前記保持筒体は、略半円筒形状の2つの保持具片の両端部を互いに連結して構成され、前記両端部のうち一方の端部が回転軸を介して連結されることによって、これら保持具片の他の端部から開閉可能となっており、かつ、一方の保持具片に設けられる縦リブと他方の保持具片に設けられる縦リブは、前記保持筒体の中心線を介して、それぞれが線対称に配置されることとしてもよい。
【0013】
このようにすれば、保持筒体を既製杭に取り付け易くした上で、より安定した状態で保持筒体が縦リブで支持されるようになる。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記保持筒体の径方向における前記縦リブの長さは、前記回転軸を介して前記2つの保持具片を開放して、前記一の保持具片及び前記他の保持具片の前記回転軸側にそれぞれ設けられる前記縦リブの先端部が当接した際に、その開放角が少なくとも60度以上の大きさとなる長さであることとしてもよい。
【0015】
このようにすれば、保持筒体の外周部に縦リブを設けても、保持筒体を既製杭に取り付ける際に必要となる開放角を確保することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記縦リブは、該縦リブの基端側を支持する補強部材を介して、前記保持筒体の前記外周面に着脱可能に取り付けられることとしてもよい。
【0017】
このようにすれば、縦リブをより安定した状態で保持筒体の外周面に取り付けられ、かつ、既製杭の径や重量及び杭孔の径等に応じて所望の長さの縦リブを容易に着脱することができる。
【0020】
また、本発明の一態様では、前記テーパ面の内周面に所定の範囲内のゴム硬度を有する衝撃緩衝部材が設けられることとしてもよい。
【0021】
このようにすれば、既製杭を支持する際における既製杭への衝撃を緩和し、かつ既製杭の製造誤差等がある場合における既製杭のがたつきを低減して、定位置における安定した保持が可能となる。
【0022】
また、本発明の一態様では、前記テーパ面は、その内周面を略円筒形状に変更可能とする適合部材が設置可能な構成となっていることとしてもよい。
【0023】
このようにすれば、既製杭の外周面に環状凸部等が設けられていないストレート杭の保持にも適用可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明によれば、保持筒体の外周部に設けた縦リブによって、杭孔開口部で保持筒体を支持可能とする構成としたので、装置の軽量化を図った上で既製杭の定位置での安定した保持状態の維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0027】
まず、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の構成について、図面を使用しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の概略構成を示す平面図であり、
図3は、
図1のA−A断面図である。なお、
図3は、既製杭10を保持している状態の杭保持装置100の連結部106、107を回避したA−A断面図となっている。
【0028】
本発明の一実施形態に係る杭保持装置100は、
図1乃至
図3に示すように、杭孔50に既製杭10を建て込む際に、既製杭10を略鉛直方向に保持するために、杭孔50の開口部50aに設置して使用される。杭保持装置100は、
図1に示すように、略円筒形状の保持筒体102と、4枚の板状の縦リブ120を備える。保持筒体102の上端側には、ワイヤ等の吊り具を係止するための吊りピース126が設けられている。なお、本実施形態では、縦リブ120は、4枚設けられているが、保持筒体102の支持手段として最低限の安定性を確保するために、少なくとも4枚以上設けられていればよいので、それ以上の枚数の縦リブ120が設けられる構成としてもよい。
【0029】
保持筒体102は、既製杭10の外周面12cの所定の部位に巻着されて、既製杭10を略鉛直方向に保持する。保持筒体102の外径は、杭孔50の径よりも小さくなるように形成する。
【0030】
各縦リブ120は、保持筒体102の外周面102dから径外方向へ放射状に突出するように設けられる。また、各縦リブ120の上部、下部は、それぞれ保持筒体102の軸方向上部側、軸方向下部側の位置に配置される。すなわち、各縦リブ120は、保持筒体102の軸方向(
図1に示すZ方向)に沿って配置される。
【0031】
このように、保持筒体102を杭孔50よりも小径化しても、保持筒体102の外周面102dに縦リブ120を取り付けることによって、杭支持装置100を杭孔50内へ落下させることなく設置できる。なお、隣接する縦リブ120間の角度間隔等の設置条件の詳細については、後述する。
【0032】
本実施形態では、縦リブ120は、当該縦リブ120の基端側を支持する補強部材を介して、保持筒体102の外周面102dに対して略垂直に設けられると共に、外周面102dに着脱可能に取り付けられる。
【0033】
具体的には、縦リブ120を挟み込むように設けられた略矩形の一対の補強板121が外周面102dに対して略鉛直方向に立設するように、溶接等により取り付けられる。そして、一対の補強板121間に縦リブ120を挟持した状態で、縦リブ120が両補強板121間にボルト124で固定される。
【0034】
また、各補強板121の頂部側と底部側のそれぞれは、補強支持部122、123によって支持されている。補強支持部122、123は、それぞれ略三角形形状の部材であり、保持筒体102の外周面102dに対して略鉛直方向に立設するように、溶接等により取り付けられる。
【0035】
このように、補強部材となる補強板121及び補強支持部122、123で縦リブ120を補強するため、既製杭10を保持したときに保持筒体102を介して縦リブ120に作用する荷重によって当該縦リブ120が変形することを防止できる。また、補強板121及び補強支持部122、123を介して、縦リブ120を保持筒体102に取り付けることができるため、既製杭10の径や重量及び杭孔50の径等に応じて、所望の大きさや長さの縦リブ120に容易に交換することができる。
【0036】
本実施形態では、杭孔10の開口部50aの周囲に略U字型の杭受け台60を設けてから、当該杭受け台60にそれぞれの縦リブ120を載置させることによって、杭保持装置100が杭孔50の開口部50aに設置される。なお、杭孔50が形成される地盤GNが安定している場合等には、杭受け台60を置かずに、直接、杭保持装置100の縦リブ120を地表面上に載置してもよい。
【0037】
なお、杭受け台60や地表面上に縦リブ120を載置するために、縦リブ120の長さは、少なくとも杭孔50と既製杭10との間の隙間より大きくする必要がある。すなわち、保持筒体102の径方向における縦リブ120の長さ(
図4に示す縦リブ120の長さl)は、杭孔50の直径と既製杭10の外径との差の1/2、換言すると杭孔50の半径と既製杭10の断面半径との差より大きくする必要がある。
【0038】
このように、保持筒体102の外周面102dに設けた縦リブ120によって、保持筒体102を支持可能とする構成としたので、保持筒体120を小径化すると共に軽量化を図ることができる。すなわち、従来では、既製杭10の大径化に伴って、杭保持装置100の保持筒体102も大型化して、それに伴って重量化も例えば1トン程度になっていた。保持筒体102が1トン程度の場合、杭保持装置100の移動の際や、杭保持装置100を既製杭10に取り付ける際に、必ずクレーン等の重機械を使用する必要があり、その取り付け作業が大がかりで非効率的となっていた。
【0039】
このため、本実施形態では、既製杭10を保持するのに必要な最小限の大きさに保持筒体102を形成し、かつ、当該保持筒体102の外径を杭孔50の径より小さくすることで、杭保持装置100の重量を従来の約半分程度にした場合であっても、杭保持装置100を当該開口部50aの周辺地盤GNで支持可能とした。そして、その保持筒体102の支持手段として、保持筒体102の外周面102dに縦リブ120を放射状に取り付けた。また、保持筒体102の支持手段として、保持筒体102の外周面102dから当該保持筒体102の軸方向に沿って放射状に突出する縦リブ120を取り付けたので、保持筒体102の重量に対する強度も保った上で当該保持筒体102の変形も防止できる。
【0040】
さらに、本実施形態では、保持筒体102は、
図3に示すように、その内周面側に既製杭10の杭本体12の外周面12cに形成された環状凸部18と嵌合可能な環状凹部が形成され、当該環状凸部を覆うように既製杭10に巻着されることによって、既製杭10を略鉛直方向に支持する。具体的には、
図3に示すように、環状凹部として、その内周面側に当該保持筒体102の底部102b側から頂部102a側に向けて一定の割合で拡径して形成されるテーパ面102cが設けられる。
【0041】
テーパ面102cは、保持筒体102の内周面側に沿って環状に形成され、その内周面側に、所定の範囲内のゴム硬度を有する硬質ゴム等からなる衝撃緩衝部材110が設けられる。本実施形態では、既製杭10に杭保持装置100を取り付ける際に、既製杭10への衝撃を確実に緩和し、かつ既製杭10の製造誤差等に基づくクリアランスがある場合における既製杭10のがたつきを低減して、定位置における安定した保持が可能となるように、衝撃緩衝部材110のゴム硬度は、50度以上100度未満の範囲内としている。すなわち、大径化に伴う重量化が進む既製杭10の荷重による衝撃を緩衝しながら、当該既製杭10を定位置に保持するためには、衝撃緩衝部材110のゴム硬度の数値範囲は、50度以上100度未満であることが好ましい。
【0042】
テーパ面102cに設けられる衝撃緩衝部材110は、ゴム硬度が上記範囲内の材質であればよく、例えば、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等のゴム系の材質や、ポリスチレン等の合成樹脂系の材質といった弾性材や緩衝材として使用されるものが適用される。本明細書中における「ゴム硬度」とは、ISO7619やJIS_K_6253の規格に基づいたデュロメータを計測器に用いて測定した弾性材や緩衝材の硬度をいう。なお、本実施形態に係る杭保持装置100の保持筒体102の内周面側に有するテーパ面102cに設けられる衝撃緩衝部材110の詳細な構成等については、後述する。
【0043】
このように、本実施形態では、既製杭10を杭保持装置100で支持する際に、既製杭10の環状凸部18に設けられるテーパ面14(杭側テーパ面)と、保持筒体102の内周面側に設けられるテーパ面102c(支持側テーパ面)が衝撃緩衝部材110を介して互いに対向する構成となっている。このため、既製杭10を杭保持装置100で支持する際に、環状凹部となる支持側テーパ面102cに対向する杭側テーパ面14に均等に荷重がかかり易くなる。従って、大径化に伴い重量化された既製杭10を杭孔50に建て込む際に、定位置に安定した状態で支持することが可能になる。
【0044】
また、本実施形態に係る杭保持装置100は、
図2に示すように、保持筒体102が略同一の形状を有する略半円筒形状の2つの保持具片103、104の両端部103a、103b、104a、104bを互いに連結することによって、略円筒形状に構成される。各保持具片103、104は、それぞれの両端部103a、103b、104a、104bが互いに連結部106、107を介して、連結されている。
【0045】
これら連結部106、107のうち、一方の支持固定用連結部106は、回転用固定ピン105で連結されている。具体的には、支持固定用連結部106は、一方の保持具片103の一端部103bと他方の保持具片104の一端部104bとを回転用固定ピン105で支持固定している。すなわち、支持固定用連結部106は、回転軸として保持具片103、104を回転可能に支持固定している。
【0046】
これに対して、他方の開閉用連結部107は、着脱が可能な開閉用脱着ボルト107aで保持具片103、104を連結している。具体的には、開閉用連結部107は、一方の保持具片103の一端部103aと他方の保持具片104の一端部104aとを開閉用脱着ボルト107aで着脱可能に連結している。
【0047】
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の詳細な構成について、図面を使用しながら説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置の一接続部を開放した状態を示す平面図である。
【0048】
図4に示すように、開閉用連結部107は、開閉用脱着ボルト107aを外すと、保持具片103、104がそれぞれ支持固定用連結部106を中心に回転自在となって、開放される。すなわち、開閉用連結部107は、開閉用脱着ボルト107aの抜き差しによって着脱可能に構成され、既製杭10に杭保持装置100を着脱する際には、開閉用脱着ボルト107aを外して、保持具片103、104を開閉する。
【0049】
また、
図2に示すように、一方の保持具片103に設けられる縦リブ120と、他方の保持具片104に設けられる縦リブ120は、より安定した状態で保持筒体102が縦リブ120で支持されるように、保持筒体102の中心Oを通る中心線L1を介して、それぞれが線対称に配置されている。すなわち、各縦リブ120と中心線L1とのなす角度θは、略同一である。当該角度θは、縦リブ120の長さを必要最小限に抑えた上で安定した支持を実現するためには、20〜30度程度が好ましい。なお、ここで言及する「中心線」とは、保持筒体102を閉じた状態での支持固定用連結部106と開閉用連結部107を結ぶ
図2に示すY軸方向に展開する中心線L1をいう。
【0050】
また、
図4に示すように、杭保持装置100を既製杭10に着脱する際には、保持具片103、104を開いた状態で両保持具片103、104間に既製杭10を挿通させるため、両保持具片103、104間に、少なくとも既製杭10の外径以上の開口スペースを確保する必要がある。具体的には、保持具片103、104を開いた際に、保持具片103の端部103aと保持具片104の端部104aとの距離が既製杭10の外径以上である必要がある。即ち、両保持具片103、104の開放角αを少なくとも60度以上とする必要がある。
【0051】
そして、支持固定用連結部106を中心にして2つの保持具片103、104を共に最大限まで開くと、縦リブ120の先端部120a同士が当接する場合がある。このような場合でも、両保持具片103、104の開放角αが少なくとも60度以上となるように、保持筒体102の径方向における縦リブ120の長さlを設定する必要がある。
【0052】
このように、本実施形態の杭保持装置100は、保持筒体102を2つの保持具片103、104を連結部106、107で連結した構成としているので、保持筒体102の開閉が容易に行えるようになり、既製杭10に保持筒体102を装着し易くなる。このため、施工現場における既製杭10の建て込み作業の効率化が図れる。また、縦リブ120の長さlを既製杭10への保持筒体102の取り付け作業に、最低限に必要な開放角αを確保できる長さとしているので、当該取り付け作業の効率性を確保しながら、保持筒体102の軽量化を図ることができる。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の保持筒体102の内周面側に設けられる衝撃緩衝部材110の構成について、図面を使用しながら説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の保持筒体102の内周面側に設けられる衝撃緩衝部材110の設置状態を示す正面図であり、
図6は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の保持筒体102の内周面側に設けられる衝撃緩衝部材110の設置状態を示す断面図である。また、
図7は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置100の保持筒体102の内周面側に設けられる衝撃緩衝部材110を構成する弾性緩衝片112の概略構成図であり、(A)は平面図、(B)は、
図7(A)のB−B断面図である。
【0054】
保持筒体102の内周面側に設けられるテーパ面102cには、衝撃緩衝部材110が設けられている。本実施形態では、衝撃緩衝部材110は、
図5に示すように、複数の略台形形状の衝撃緩衝片112がテーパ面102cに沿って、所定の間隔で隙間114を形成しながら周方向へ並列して設けられる構成となっていることを特徴とする。すなわち、各衝撃緩衝片112がスリット状の隙間114を介して互いに並列することによって、テーパ面102cに衝撃緩衝部材110が設けられる。
【0055】
それぞれの衝撃緩衝片112は、
図6に示すように、テーパ面102cに形成されたボルト孔115に嵌合されるボルト116によって固定されている。また、衝撃緩衝片112の下側には、衝撃緩衝片112が下方へ移動することを防止するための係止部118が周方向に沿って設けられている。このように、係止部118を設けることによって、既製杭10を保持する際に当該既製杭10の移動に伴って衝撃緩衝片112が下方へ引っ張られて、衝撃緩衝片112が剥がれてしまうことを防止できる。
【0056】
衝撃緩衝片112は、上端に向かって拡径するように形成されるテーパ面102cを覆うように、スリット状の隙間114を介して並列して設けられるので、
図7(A)に示すように、上底112aが下底112bよりも幾分長い略台形形状となっている。衝撃緩衝片112の上底112aと下底112bの長さは、各衝撃緩衝片112が等間隔の隙間114を介して配列されるように、テーパ面102cのテーパ角の大きさに応じて適宜決められる。また、衝撃緩衝片112の表面には、
図7(A)、(B)に示すように、既製杭10の荷重をより分散させ易くするために、溝部117が設けられている。
【0057】
このように、本実施形態では、衝撃緩衝部材110を複数の衝撃緩衝片112をスリット状の隙間114を介して、並列した構成とすることによって、既製杭10の荷重が衝撃緩衝部材110を構成する衝撃緩衝片112のそれぞれに分散させることができる。このため、使用頻度に伴い、衝撃緩衝部材110の一部が変形、劣化した場合でも、その変形、劣化した部位に該当する衝撃緩衝片112のみを交換すればよいので、衝撃緩衝部材110の性能を維持するためのメンテナンスが容易になる。すなわち、衝撃緩衝部材110の一部変形に伴う交換頻度を低減することができる。
【0058】
また、衝撃緩衝部材110が1枚の衝撃緩衝片112のみで構成されると、既製杭10を保持した際に生じる衝撃緩衝片112の周方向への伸びを吸収することができずに、衝撃緩衝片112の一部が内方へ向かって伸びることがある。このような場合に、内方へ向かって伸びた衝撃緩衝片112の一部によって、既製杭10が押されて既製杭10の中心軸と杭保持装置100の中心軸とがずれてしまう虞がある。このため、本実施形態では、衝撃緩衝部材110を複数の衝撃緩衝片112をスリット状の隙間114を介して、並列した構成としている。
【0059】
なお、衝撃緩衝部材110を構成する衝撃緩衝片112の設置方法は、上述の内容に限定されない。すなわち、テーパ面102cへの衝撃緩衝編12の取り付け方は、ボルト止め以外の他の態様でも可能である。例えば、
図8(A)に示すように、テーパ面102cの下端側に係止フック218を設けて、既製杭10を杭保持装置100に保持させるために落とし込むタイミングで衝撃緩衝片212を差し込むようにして設けることとしてもよい。また、
図8(B)に示すように、衝撃緩衝片312の上端側に保持筒体102の頂部102aに係止可能なフック部313を設ける構成として、後付可能としてもよい。このような変形例に係る衝撃緩衝片212、312を用いることによって、事前にボルト留めせずに、施工作業の過程で容易に着脱可能として、施工作業の効率向上が図られる。
【0060】
このように、本実施形態では、テーパ面の内周面に所定の範囲内のゴム硬度を有する衝撃緩衝部材110を設けることによって、既製杭10を支持する際における既製杭10への衝撃を緩和できる。また、弾性力を有する衝撃緩衝部材110をテーパ面102cに設けることによって、既製杭10の製造誤差等がある場合に生ずるクリアランスを埋め合わせることができるので、杭保持装置100で保持する際における既製杭10のがたつきを低減して、定位置における安定した保持が可能となる。
【0061】
前述した本実施形態に係る杭保持装置100では、杭本体12の外周面12cに環状凸部18を備える既製杭10を保持するために、保持筒体102の内周面側にテーパ面102cを設けた構成としている。しかしながら、本実施形態の杭保持装置100は、環状凸部18のないストレート杭に適応可能とするために、
図9に示すように、その内周面130cを略円筒形状に変更可能とする適合部材130が設置可能な構成としてもよい。
【0062】
具体的には、上底130aが下底130bより大きい構成となる適合部材130をテーパ面102cにボルト132で留めて、内周面130cを略円筒形状とする。このとき、衝撃緩衝片112を固定するためのボルト孔115と共通して使用可能な構成としても、別途、ボルト孔を設ける構成としてもよい。
【0063】
次に、本発明の一実施形態に係る杭保持装置に適用した場合の施工動作について、図面を使用しながら説明する。
図10(A)乃至(D)は、本発明の一実施形態に係る杭保持装置を使用した施工動作の説明図である。
【0064】
まず、
図10(A)に示すように、杭孔50の開口部50aに杭受け台60を設置する。次に、吊り治具152及び吊り治具端板154からなる杭吊り装置150を既製杭10の頂部に取り付けて、既製杭10を吊り上げる。具体的には、吊り治具152を既製杭10の頂部に取り付けると共に、既製杭10の頂部に吊り治具端板154をボルトやナット等で取り付けて、ワイヤ156を介して、既製杭10を吊り上げる。そして、施工現場となる地盤GNに形成された杭孔50上へ既製杭10を移動させる。
【0065】
次に、
図10(B)に示すように、杭保持装置100を杭受け台60上に設置する。その際に、杭保持装置100の開閉用脱着ピン105bを外して、保持具片103b、103cがそれぞれ開放された状態(
図4参照)で設置する。
【0066】
続いて、開放された状態の杭保持装置100の内方を通過するように既製杭10を杭孔50内に建て込む。既製杭10を杭孔50に建て込む過程において、環状凸部18のテーパ面14が杭孔50の開口部50aに近づいてきたら、開閉用脱着ピン105bを開閉用連結部106bに挿入して保持具片103b、103cを連結し、杭保持装置100を閉じた状態(
図2参照)にする。
【0067】
その後、既製杭10を降下させて、環状凸部18のテーパ面14と杭保持装置100のテーパ面102cとを密接させることで杭保持装置100により既製杭10を保持する。そして、既製杭10から杭吊り装置150を取り外す。
【0068】
本実施形態では、環状凸部18の下側にテーパ面14を設け、かつ、杭保持装置100の保持筒体102の内周面側にテーパ面102cを設ける構成の既製杭10の支持方式となっている。このため、杭保持装置100を杭孔50の開口部50aに設置してから、そのまま既製杭10を落とし込むことによって、環状凸部18のテーパ面14がそのまま保持筒体102のテーパ面102cに嵌合されて支持されるように、杭保持装置100を既製杭10に取り付けられる。すなわち、既製杭10に杭保持装置100を取り付け易くした上で、既製杭10の自重によって、そのまま保持筒体102のテーパ面102cで支持される方向に導かれるので、確実に定位置で既製杭10が保持されるようになる。
【0069】
そして、
図10(C)に示すように、杭保持装置100を取り付けた下杭となる既製杭10aの頂部側に連結する上杭となる既製杭10bに杭吊り装置150を取り付けて、下杭10aの頂部12a側に向けて、上杭10bを移動させる。
【0070】
その後、
図10(D)に示すように、下杭10aの頂部12aと上杭10bの底部12bが当接したら、下杭10aと上杭10bの継手作業を行う。継手作業が完了したら、杭保持装置100を下杭10aから取り外して、上杭10bの環状凸部18が杭孔50の開口部50aに近づくまで、上杭10bを杭孔50に挿入する。
【0071】
このような手順を繰り返すことによって、既製杭10の継手作業をしながら、連結された既製杭10を杭孔50に建て込めるようになる。本実施形態では、既製杭10の外周面12cにテーパ面14を有する環状凸部18を設け、かつ、既製杭10に巻着される杭保持装置100の保持筒体102の内周面側の全周に亘ってテーパ面102cからなる環状凹部を設けている。このため、既製杭10を保持筒体102で支持する際に、環状凹部のテーパ面102cに既製杭10の外周面側に有する環状凸部18からの荷重が分散されて、均等にかかり易くなる。
【0072】
すなわち、大径化、重量化された既製杭10を杭保持装置100の保持筒体102で支持する際に、定位置での安定した保持状態を維持することができる。換言すると、既製杭10を杭孔50に建て込む過程において、杭保持装置100で既製杭10を保持する際に、既製杭10がぶれることなく、より安定した状態で定位置に既製杭10を略鉛直方向に保持することができる。
【0073】
このため、既製杭10を継ぎ足しながら杭孔50に建て込む作業の効率が上がると同時に、かかる施工作業における安全性も向上される。また、下杭10aに上杭10bを継ぎ足して連結する際に、テーパ面14が設けられる環状凸部18を備える下杭10aがテーパ面102cからなる環状凹部を備える保持筒体102によって定位置に保持されるので、下杭10aと上杭10bを精度よく連結できる。
【0074】
なお、上記のように本発明の各実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0075】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、杭保持装置の構成、動作も本発明の各実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。