特許第6361205号(P6361205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361205
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】光線反射樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20180712BHJP
   F21V 7/24 20180101ALI20180712BHJP
【FI】
   G02B5/08 A
   G02B5/08 C
   F21V7/24
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-59752(P2014-59752)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-184414(P2015-184414A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年10月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増子 啓介
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
【審査官】 小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−036076(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/101043(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/123833(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0004373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00 − 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン(A)と、熱可塑性樹脂(B)とを含み、前記二酸化チタン(A)が、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成してなる第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成してなる第二の被覆層を有し、
前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物およびその加水分解縮合反応物の少なくともいずれかであり、
前記熱可塑性樹脂(B)は、ポリエステル樹脂である、光線反射樹脂組成物。

一般式(1) (C2x+1−ySi(OR)4−z
(式中、xは1〜12の整数であり、yは3〜25の整数であり、zは1〜3の整数であり、Rは、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。ここで、zが1または2の場合、Rは同一でも相違していても良い)
【請求項2】
前記金属酸化物が、さらにケイ素酸化物およびジルコニウム酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1記載の光線反射樹脂組成物。
【請求項3】
前記第二の被覆層が、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して0.3〜3重量部被覆してなることを特徴とする請求項1または2記載の光線反射樹脂組成物。
【請求項4】
二酸化チタンと酸化アルミニウムとを撹拌して第一の被覆層を形成する工程、
次いで二酸化チタンとフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物とを撹拌して第二の被覆層を形成し二酸化チタン(A)を得る工程、
前記二酸化チタン(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練造粒する工程を含み、
前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物およびその加水分解縮合反応物の少なくともいずれかであり、
前記熱可塑性樹脂(B)は、ポリエステル樹脂である、
光線反射樹脂組成物の製造方法。

一般式(1) (C2x+1−ySi(OR)4−z
(式中、xは1〜12の整数であり、yは3〜25の整数であり、zは1〜3の整数であり、Rは、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。ここで、zが1または2の場合、Rは同一でも相違していても良い)
【請求項5】
前記二酸化チタンとフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物とを撹拌して第二の被覆層を形成し二酸化チタン(A)を得る工程が、
(1)第一の被覆層を有する二酸化チタンを水性スラリーから固液分離し、乾燥した後、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物と気相中で接触させることにより、被覆層を形成する工程、または、
(2)第一の被覆層を有する二酸化チタンと前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物
をスラリー中で接触させることで形成する工程
である、請求項4記載の光線反射樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂(B)100重量部と、二酸化チタン(A)50〜160重量部とを含み、
前記二酸化チタン(A)は、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して、酸化アルミニウム1.0〜5重量部で形成してなる第一の被覆層、およびフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物0.3〜3重量部で形成してなる第二の被覆層を備え
前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表されるシラン化合物およびその加水分解縮合反応物の少なくともいずれかであり、
前記熱可塑性樹脂(B)は、ポリエステル樹脂である、光線反射用マスターバッチ。

一般式(1) (C2x+1−ySi(OR)4−z
(式中、xは1〜12の整数であり、yは3〜25の整数であり、zは1〜3の整数であり、Rは、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。ここで、zが1または2の場合、Rは同一でも相違していても良い)
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載の光線反射樹脂組成物、または熱可塑性樹脂と請求項6記載の光線反射用マスターバッチとの混合物のいずれかを成形してなる反射板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光線反射樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディスプレイ、照明の光源には、蛍光灯、白熱灯、冷陰極管、LEDが使用されており、これらの光源光を面全体に拡散させ、視認性や電力を削減するため、光源の背面に光線反射板等が設けられている。一般的に光線反射板には、金属系反射板や熱可塑性樹脂反射シートが使用されている。
【0003】
上記金属系反射板には、一般的に白色に塗装された鋼板や、アルミニウム板などが使用されているが、金属系の反射板は光源からの光が特定方向への反射となり面全体での均一な反射効果が得られにくい。一方、樹脂系の反射シートは、反射特性は優れるものの、光源の高寿命化や、高出力化に伴いシートの耐熱、耐光劣化が促進され、経時で黄変するため反射率の低下が問題となっている。そのため、反射板に二酸化チタンと紫外線吸収剤を配合して樹脂劣化を抑制し、反射性能を維持できるとした技術や、硫酸バリウムと二酸化チタンを併用した特許が開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−66512号公報
【特許文献2】特開2006−212925公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、反射率を上げるために樹脂中に二酸化チタンを多量に含む反射板用途において、樹脂組成物を作製する際に紫外線吸収剤を単に配合する方法では、紫外線吸収剤が二酸化チタンに物理的に遮蔽され、効率的な紫外線遮蔽ができない。また、効率的に紫外線を遮蔽するために紫外線吸収剤を多量に配合すると、ブリードアウト現象が生じ、経時で遮蔽効果の低下や、他の物性に悪影響を及ぼすことがある。また、ブリードアウトは、温度が高いほど生じやすく、高出力の光源ほど起こりやすいため、近年多用されている光源ではより顕著となる。そのため、紫外線吸収剤を用いず、二酸化チタンの無機表面処理により耐熱、耐光性を付与する試みがなされている。しかし、樹脂に混合する場合、無機処理のみでは二酸化チタンが凝集し、樹脂中に均一に分散しないため反射率の低下を招く。そのため、有機処理を施す必要があるが、一般的に有機処理は耐熱、耐光性に乏しく、成形品の黄色を促進する問題がある。
【0006】
本発明は、長期間光源にさらされても低分子化合物のブリード現象や成形品の黄変がなく、反射率の低下を抑制できる光線反射用樹脂組成物、及びマスターバッチとその成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成してなる第一被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成してなる第二の被覆層を有する二酸化チタンと、熱可塑性樹脂を含む光線反射樹脂組成物である。
【0008】
即ち、本発明は、二酸化チタン(A)と、熱可塑性樹脂(B)とを含み、前記二酸化チタン(A)が、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成してなる第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成してなる第二の被覆層を有する光線反射樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物が、フルオロアルキル基含有シラン、フルオロアルキル基含有シロキサンの少なくともいずれかであることを特徴とする前記光線反射樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、前記フルオロアルキル基含有シランが、下記一般式(1)で表されるシラン化合物およびその加水分解縮合反応物の少なくともいずれかであることを特徴とする前記光線反射樹脂組成物に関する。
一般式(1) (Cx2x+1-yyzSi(OR)4-z
(式中、xは1〜12の整数であり、yは3〜25の整数であり、zは1〜3の整数であり、Rは、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。ここで、zが1または2の場合、Rは同一でも相違していても良い)
【0011】
また、本発明は、前記金属酸化物が、さらにケイ素酸化物およびジルコニウム酸化物の少なくともいずれかを含むことを特徴とする前記光線反射樹脂組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、前記第二の被覆層が、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して0.3〜3重量部被覆してなることを特徴とする前記光線反射樹脂組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、二酸化チタンと酸化アルミニウムとを撹拌して第一の被覆層を形成する工程、
次いで二酸化チタンとフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物とを撹拌して第二の被覆層を形成し二酸化チタン(A)を得る工程、
前記二酸化チタン(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練造粒する工程を含む光線反射樹脂組成物の製造方法に関する。
【0014】
また、本発明は、熱可塑性樹脂(B)100重量部と、二酸化チタン(A)50〜160重量部とを含み、
前記二酸化チタン(A)は、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して、酸化アルミニウム1.0〜5重量部で形成してなる第一の被覆層、およびフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物0.3〜3重量部で形成してなる第二の被覆層を備えたことを特徴とする光線反射用マスターバッチに関する。
【0015】
また、本発明は、前記光線反射樹脂組成物、前記製造方法で得た光線反射樹脂組成物、または熱可塑性樹脂と前記光線反射用マスターバッチとの混合物のいずれかを成形してなる反射板に関する。
【発明の効果】
【0016】
上記構成の本発明によれば、二酸化チタンを使用したことで可視領域の波長を反射させることができるため、ディスプレイ等の視認性向上、消費電力の削減に寄与する。また、赤外領域の光を反射することで成形品内の蓄熱を防止し、耐久性の向上も期待される。また、酸化アルミニウムで形成した第一の被覆層に加えて、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成した第二の被覆層を有する二酸化チタンを含むことで光源の熱、光による劣化を抑制することができる。また、耐光性を付与するために紫外線吸収剤を配合する場合と比較してブリードアウトが無く、経時での汚染、黄変による反射率低下や、物性低下を生じにくくし、持続して高い反射率が得られる。
【0017】
本発明により、二酸化チタンの反射効果によるディスプレイ等の視認性向上、消費電力の削減が可能で、長期間使用した場合でも、光源の熱、光によって起こるブリードアウト現象、成形品の黄色が起こりにくい光線反射シートを形成できる光線反射樹脂組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「任意の数A以上、任意の数B以下」及び「任意の数A〜任意の数B」の記載は、数A及び数Aより大きい範囲であって、数B及び数Bより小さい範囲を意味する。
【0019】
本発明の光線反射樹脂組成物は、二酸化チタン(A)と、熱可塑性樹脂(B)とを含み、前記二酸化チタン(A)は、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成してなる第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成してなる第二の被覆層を有する。この光線反射樹脂組成物は、樹脂層に成形して使用し、ディスプレイ用反射板、照明用反射板等に使用することができる。
【0020】
本発明において二酸化チタン(A)は、可視光、赤外光を反射する性質を有する。また、前記二酸化チタン(A)は、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成した第一の被覆層およびフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成した第二の被覆層を有するため、二酸化チタンが樹脂中に均一に分散し、光源による熱劣化、光劣化による樹脂の黄変や分解を抑制し、高い反射率を持続することができる。これは、第二の被覆層フルオロアルキル基による耐熱、耐光性向上によるものと考えられる。フルオロアルキル基は、他の官能基と比較し臨界表面張力が低い。そのため、樹脂に配合された場合、樹脂−空気界面において表面自由エネルギーを小さくしようとする力が働く。そのため、界面にフルオロアルキル基が偏析しやすくなり、結合エネルギーの大きい炭素−フッ素結合による優れた耐熱、耐光性と、界面付近のチタン存在量の増加により樹脂劣化の抑制を可能にしていると推察される。
【0021】
本発明において、二酸化チタン(A)は、平均一次粒子径0.15〜1.0μmが好ましい。平均一次粒子径が、0.15〜1.0μmの範囲にあることで可視領域から赤外領域の幅広い波長領域で反射効果が得られる。特に、光源の可視領域の高い反射効果を得たい場合、平均一次粒子径0.15〜0.35μmの二酸化チタンを用いることが好ましく、赤外領域の反射効果を得たい場合、0.35〜1.0μmの二酸化チタンを用いることが好ましい。また、広波長領域にわたって反射効果を高めるため、平均一次粒子径が異なる2種以上の二酸化チタンを用いることもできる。
二酸化チタン(A)の結晶形態は、ルチル型、アナターゼ型、およびブルカイト型が使用できるが、ルチル型が好ましい。ルチル型は、他のタイプと比較して、屈折率が高く、反射効率が高い。
なお、平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡の拡大画像(例えば千倍〜一万倍)から観察できる粒子径(例えば50個程度)を平均したものである。二酸化チタン(A)の粒子形状は、球状、楕円体状等公知の粒子形状を使用できる。
【0022】
また、二酸化チタン(A)は、酸化アルミニウムを含む金属酸化物で形成した第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物で形成した第二の被覆層を有することが重要である。これらの被覆層が存在することで、反射シート、板等の成形品の黄色を抑制できる。
【0023】
前記第一の被覆層は、金属酸化物で形成し酸化アルミニウムを含むことが必要である。酸化アルミニウムは、アルミニウムの含水酸化物であっても良く、含水アルミナ(Al23・nH2O)が好ましい。その他の金属酸化物としてはアルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、アンチモン、スズの酸化物や含水酸化物が挙げられる。
前記金属酸化物は、さらにケイ素酸化物およびジルコニウム酸化物を少なくともいずれか含むことが好ましい。ケイ素またはジルコニウム酸化物を含むことで二酸化チタンの光触媒活性をより低減できるため、熱可塑性樹脂の劣化をより抑制することができる。前記ケイ素酸化物は、ケイ素の含水酸化物であっても良く、シリカや含水シリカ(SiO2・nH2O)が好ましい。また前記ジルコニウム酸化物は、ジルコニウムの含水酸化物(ZrO2・nH2O)で表面被覆されていても良い。なお本発明では、酸化アルミニウムの他に、ケイ素酸化物、ジルコニウム酸化物で形成した被覆層であっても、第一の被覆層とする。
【0024】
二酸化チタン(A)の第一の被覆層は、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して、酸化アルミニウム1〜5重量部で被覆することが好ましく、より好ましくは1〜4重量部、さらに好ましくは、1.5〜4重量部である。また、ケイ素酸化物またはジルコニウム酸化物は、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して、それぞれ0.1〜3重量部で被覆することが好ましく、より好ましくは、0.1〜2.0重量部である。
【0025】
第二の被覆層は、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を使用する。フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、フルオロアルキル基含有シラン、フルオロアルキル基含有シロキサンが好ましい。より好ましくは、下記一般式(1)で表されるシラン化合物およびその加水分解縮合反応物の少なくともいずれかである。これらの化合物を用いることで、二酸化チタンへの均一な表面被覆が可能となり、より、耐熱性、耐光性が得られやすくなる。
一般式(1) (Cx2x+1-yyzSi(OR)4-z
(式中、xは1〜12の整数であり、yは3〜25の整数であり、zは1〜3の整数であり、Rは、アルキル基、アリール基、アシル基を表す。ここで、zが1または2の場合、Rは同一でも相違していても良い)
なお、Rはメチル、エチル等のアルキル基や、フェニル等のアリール基、アセチル、プロピオニル、ベンゾイル等のアシル基が挙げられるが、加水分解、縮合反応速度の観点からメチル、エチル等のアルキル基が好ましい。xはフルオロ基含有アルキルの炭素数を示し、1〜12の整数が好ましく、炭素数が少ない方が、耐熱、耐光性の観点から好ましい。また、yはフルオロ基の数を示し、3〜25の整数が好ましいが、コスト面から3〜13の整数がより好ましい。zはフルオロアルキル基数を示し、1〜3の整数であるが、二酸化チタン表面への均一な被覆、加水分解速度の観点からz=1が好ましい。
【0026】
第二の被覆層が、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して0.3〜3重量部被覆することが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0重量部、さらに好ましくは0.3〜1.5重量部である。0.3重量部未満の場合、耐熱、耐光性の効果が不足する恐れがあり、3重量部を超える場合、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物同士での縮合反応が進みすぎて、ゲル状物質が生成する恐れがある。
【0027】
フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物としては、フルオロアルキル基含有シラン化合物、およびその加水分解物、およびその縮合反応物、ならびにフルオロアルキル基含有シロキサン等が挙げられる。
【0028】
フルオロアルキル基含有シランとしては、例えば3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルジクロロシラン、トリフルオロアセトキシトリメチルシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、ジメトキシメチル−3,3,3−トリフロオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。好ましくは、アルキルオキシ基含有のジメトキシメチル−3,3,3−トリフロオロプロピルシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランであり、さらに好ましくは、アルキル炭素数が少なく、フルオロ基の多い、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等である。
【0029】
フルオロアルキル基含有シロキサンとしては、例えば3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,1,3,5,5,5−ヘプタメチルトリシロキサン、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサンまたはそれらの共重合体等が挙げられる。好ましくは、フルオロアルキル基数の多い、1,3,5−トリス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラキス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等である。
【0030】
これらのフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物は、1種または2種以上を使用できる。
【0031】
二酸化チタンと酸化アルミニウムとを撹拌して第一の被覆層を形成する工程、
次いで二酸化チタンとフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物とを撹拌して第二の被覆層を形成し二酸化チタン(A)を得る工程、
前記二酸化チタン(A)と熱可塑性樹脂(B)を混練造粒する工程を含むことが好ましい。この工程により、経済的かつ簡易的に二酸化チタン表面に被覆することが可能となる。ここで言う表面への被覆は、共有結合、水素結合等の化学結合や、分子間力等による物理吸着が含まれるが、より好ましくは、化学結合の形成である。また、被覆するための撹拌時間は、1分〜2時間が効率、取り扱いの観点から好ましい。より好ましくは、3分〜1時間である。
【0032】
二酸化チタンに対する被覆層の形成方法を説明する。
【0033】
第一の被覆層を形成する方法は、公知の方法を使用できる。例えば、酸化アルミニウムで被覆する場合、二酸化チタン粒子を分散させた水性スラリーにアルミニウム化合物の水溶液を添加し、酸性化合物または塩基性化合物の水溶液を用いてpH4〜9に調整することで酸化アルミニウムの被覆層を形成できる。その後、必要に応じて濾過、洗浄、乾燥を行っても良い。pHの調整に用いる酸性酸化物としては、硫酸、塩酸等の無機酸、または酢酸、ギ酸等の有機酸を用いることができる。また、塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の公知の化合物を用いることができる。水性スラリー中の二酸化チタン粒子の不揮発分濃度は、50〜800g/lが好ましく、100〜600g/lがより好ましい。所定の不揮発分濃度にすることで均一な厚みの被覆層が得やすくなる。
【0034】
前記アルミニウム化合物は、例えばアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、および硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミナ、含水アルミナ等が挙げられる。
【0035】
ケイ素酸化物またはジルコニウム酸化物で被覆する場合は、ケイ素化合物またはジルコニウム化合物を使用して、酸化アルミニウムと同様の方法でケイ素酸化物または酸化アルミニウムの被覆層を形成できる。また、複数の金属酸化物で被覆層を形成する場合、アルミニウム化合物を含む混合物で被覆層を形成できる。また、各化合物を順次使用して被覆層を形成しても良く被覆層を形成する順序は、制限を受けない。これらの被覆方法の中でも、ケイ素酸化物またはジルコニウム酸化物の被覆層の形成後に酸化アルミニウムが最外層になるように被覆層を形成することが熱可塑性樹脂との分散性の観点からより好ましい。さらに、二酸化チタン(A)の被覆層を形成する際に脱水、乾燥、粉砕などの工程が容易になり歩留まりがより向上する。なお本発明では、金属酸化物で形成した第一の被覆層が、例えば、酸化アルミニウムの被覆層、ケイ素酸化物の被覆層、ジルコニウム酸化物の被覆層と3層を有する場合であっても、第一の被覆層とする。
【0036】
前記ケイ素化合物は、例えばケイ酸ナトリウムなどの水溶性ケイ酸アルカリ金属塩が挙げられる。またジルコニウム化合物としては、例えば硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
前記ジルコニウム化合物は、例えば硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
【0037】
第二の被覆層を形成する方法は、(1)第一の被覆層を有する二酸化チタンを水性スラリーから固液分離し、乾燥した後、前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物と気相中で接触させることにより、被覆層を形成する方法(以下、気相法という)、または、(2)第一の被覆層を有する二酸化チタンと前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物をスラリー中で接触させることで形成する方法(以下、液相法という)があるが、ハンドリングの観点から気相法の方が好ましい。
【0038】
前記気相法は、例えば流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機や、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、二酸化チタンと前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を攪拌、混合することで実施できる。フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物が室温において固体または、粘度の高い液体である時、アルコール等の有機溶媒で希釈して使用することもできる。この場合、使用する有機溶媒は撹拌機内で揮発させることが好ましい。
【0039】
前記液相法は、第一の被覆層を形成した後、続けて、当該スラリーに前記フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を添加し、攪拌、混合することで実施できる。
【0040】
本発明において熱可塑性樹脂(B)は、従来既知の熱可塑性樹脂が使用でき、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、含フッ素樹脂等があげられるが、耐熱性、機械物性の観点からポリエステル樹脂が好ましい。
【0041】
本発明で使用するポリエステル樹脂とは、分子の主鎖にエステル結合を持っている高分子量の熱可塑性樹脂であり、ジカルボン酸またはその誘導体と2価アルコールまたは2価フェノール化合物とから得られる重縮合化合物、ジカルボン酸またはその誘導体と環状エーテル化合
物とから得られる重縮合化合物、環状エーテル化合物の開環重合物などが挙げられる。ここで、ジカルボン酸の誘導体とは酸無水物、エステル化物である。ジカルボン酸は脂肪族であっても芳香族であってもよいが、耐熱性の観点から芳香族がより好ましい。また、芳香族ジカルボン酸または脂環族ジカルボン酸等の酸成分とジオール成分による重合体であり、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。また、これらの混合などによるポリマーブレンドでもよい。芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、p−カルボキシルフェニル酢酸、m−フェニレンジグリゴール酸、p−フェニレンジグリコール酸、ジフェニルジ酢酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジ酢酸、ジフェニルメタン−p,p′−ジカルボン酸、ジフェニルエタン− m,m′−ジカルボン酸、スチルベンジルカルボン酸、ジフェニルブタン−p,p′−ジカルボン酸、ベンゾフェノン− 4,4′−ジカルボン酸、ナフタリン− 1,4−ジカルボン酸、ナフタリン−1,5−ジカルボン酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、ナフタリン−2,7−ジカルボン酸、p−カルボキシフェノキシ酢酸、p−カルボキシフェノキシブチル酸、1,2−ジフェノキシプロパン−p,p′−ジカルボン酸、1,5−ジフェノキシペンタン−p,p′−ジカルボン酸、1,6−ジフェノキシヘキサン−p,p′−ジカルボン酸、p−(p−カルボキシフェノキシ)安息香酸、1,2−ビス(2−メトキシフェノキシ)−エタン−p,p′−ジカルボン酸、1,3−ビス(2−メトキシフェノキシ)プロパン−p,p′−ジカルボン酸、1,4−ビス(2−メトキシフェノキシ)ブタン−p,p′−ジカルボン酸、1,5−ビス(2−メトキシフェノキシ)−3−オキシペンタン−p,p′−ジカルボン酸などを挙げることができ、また脂肪酸ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、コルク酸、マゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。好ましいジカルボン酸の例は、芳香族ジカルボン酸類である。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,4−ジオール、cis−2−ブテン−1,4−ジオール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。好ましい2価アルコールの例は、エチレングリコール、ブタン−1,4−ジオール、あるいはシクロヘキサンジメタノールである。2価フェノール化合物の例としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールAなどを挙げることができる。前記環状エーテル化合物としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを挙げることができる。これらジオール成分は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明の光線反射樹脂組成物は、二酸化チタンを高濃度で配合したペレット状のマスターバッチとして製造することが好ましい。前記マスターバッチは、熱可塑性樹脂(B)を含む原料を溶融混練し、さらにペレット状に成形することで製造できる。二酸化チタンは、一旦、マスターバッチとして樹脂中に予備分散した後で、希釈樹脂の熱可塑性樹脂と配合(溶融混錬)して所望の成形品を製造すると、二酸化チタン(A)を熱可塑性樹脂中により均一に分散しやすくなる。また、樹脂への熱履歴が少なくなるため、樹脂劣化が抑制される。具体的には、マスターバッチは、熱可塑性樹脂(B)100重量部に対して、二酸化チタン(A)を50〜160重量部配合することが好ましい。ここで、原料の溶融混練は、予め原料を一般的な高速せん断型混合機であるヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を用いて混合した後に行っても、混合せずに、溶融混練する際に、別々に混練機に投入してもよい。
前記溶融混練は、例えば単軸混練押出機、二軸混練押出機、またはタンデム式二軸混練押出機等を用いるのが好ましい。
【0043】
本発明の光線反射樹脂組成物は、例えば、車のヘッドライト、屋外水銀灯、液晶ディスプレイ用バックライト、電飾看板、照明、植物工場、太陽電池裏面保護シートなどの反射板またはシートが好ましい。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0045】
実施例および比較例に用いる原料を以下に示す。
【0046】
二酸化チタンの金属酸化物による表面被覆方法の例を以下に示す。なお表面被覆方法は、下記方法に限定されないことは言うまでも無い。
【0047】
[フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物]
(c−1)3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業製L S−1090
(c−2)3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオ クチルトリエトキシシラン:デグサ社製F8261
(c−3)3−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,1,3,5,5,5− ヘプタメチルトリシロキサン:信越化学工業製LS−8210
【0048】
[非フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物]
(d−1)n−プロピルトリメトキシシラン:信越化学工業製LS−1382
(d−2)オクチルトリエトキシシラン:信越化学工業製LS−5580
【0049】
<二酸化チタンの表面被覆層形成1>
ルチル型二酸化チタン粒子を水と混合して、二酸化チタンの重量として300g/lの水性スラリーを調整した。このスラリーを60℃に保持したまま、撹拌しながら二酸化チタン100重量部に対して、アルミン酸ナトリウムをAl23換算で2.0重量部添加した後、硫酸でpHを5に調整することでアルミニウム酸化物の第一の被覆層を形成した。その後、濾過、洗浄し、さらに120℃で16時間乾燥した。その後、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン0.5重量部を添加して110℃になるまで混合することで第二の被覆層を形成した。これによりアルミニウムの含水酸化物及びフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を使用した表面被覆層を有する平均一次粒子径0.21μmの二酸化チタン(A−1)を得た。なお、二酸化チタンの平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡の拡大画像から観察できる粒子径(20個〜50個)を平均したものである。
【0050】
<二酸化チタンの表面被覆層形成2>
ルチル型二酸化チタン粒子を水と混合して、二酸化チタンの重量として300g/lの水性スラリーを調整した。このスラリーを60℃に保持したまま、撹拌しながら二酸化チタンの100重量部に対して、ケイ酸ナトリウムをSiO2換算で0.5重量部添加した。次いで硫酸でpHを約5に調整することでケイ素酸酸化物の被覆層を形成した。引き続き撹拌しながら表面被覆する前の二酸化チタンの100重量部に対して、アルミン酸ナトリウムをAl23換算で4.0重量部添加した後、硫酸でpHを5に調整することでアルミニウム酸化物の被覆層を形成した。その後、濾過、洗浄し、さらに120℃で16時間乾燥した。その後、表面被覆する前の二酸化チタン100重量部に対して3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン1.0重量部を添加して110℃になるまで混合することで第二の被覆層を形成した。これによりアルミニウムの含水酸化物、ケイ素の含水酸化物及びフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を使用した表面被覆層を有する平均一次粒子径0.31μmの二酸化チタン(A−2)を得た。
【0051】
上記(A−1)と同様の方法により(A−4)、(A−5)、(A−7)、(A−11)について表1に記載した比率で、二酸化チタンに被覆層を形成した。また、上記(A−2)と同様の方法により(A−3)、(A−6)、(A−8)、(A−9)、(A−10)についても表1に記載した比率で、二酸化チタンに被覆層を形成した。
【0052】
さらに、上記(A−1)と同様の方法により(A−13)は、表1の記載に従って第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物以外の第二の被覆層を形成した。また、上記(A−2)と同様の方法により(A−12)は、表1の記載に従って第一の被覆層と、フルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物以外の第二の被覆層を形成した。
【0053】
二酸化チタンの被覆層および被覆量を表1に示す。
【0054】
【表1】
表1の数値は重量部を表す。
【0055】
<二酸化チタン>
表1に示した被覆層を有する二酸化チタン。
<熱可塑性樹脂>
(B−1)ポリエチレンテレフタレート(三井化学社製SA135)
(B−2)ポリシクロヘキシレンエチレンテレフタレート(デュポン社製サーミックスP CT)
(B−3)ポリカーボネート(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンS3 000)
【0056】
[実施例1]
熱可塑性樹脂(B−1)100重量部と二酸化チタン(A−1)100重量部とを別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所社製)を用いて290℃で溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状のマスターバッチとしての光線反射樹脂組成物を得た。
【0057】
得られた光線反射樹脂組成物20重量部と熱可塑性樹脂(B−1)80重量部の混合物に単層Tダイフィルム成形機(東洋精機社製)を用いて温度280℃にて押出し成形を行い、耐久試験(耐熱、耐光試験)、反射率測定、ブリード試験に使用する光線反射シート(それぞれ厚さ500μm)を得た。
【0058】
[実施例2〜15]
光線反射樹脂組成物の原料および配合量を調整して、それぞれ表2に示す配合に変更し
た以外は実施例1と同様にして光線反射樹脂組成物を使用した光線反射シートを得た。
ただし、実施例9〜13は参考例である。
【0059】
なお、表2および表3の配合比は、光線反射樹脂組成物を用いたシート成形後の重量比を示している。
【0060】
【表2】
表2の各マスターバッチは、熱可塑性樹脂と二酸化チタンの種類および配合を変更した以外は実施例1と同様にして、それぞれ表2に示す所定濃度の光線反射樹脂組成物を得た。
【0061】
[実施例16]
熱可塑性樹脂(B−1)100重量部と二酸化チタン(A−1)150重量部とを別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて290℃にて溶融混練することでペレット状のマスターバッチとしての光線反射樹脂組成物を得た。
【0062】
得られた光線反射樹脂組成物25重量部と熱可塑性樹脂(B−1)75重量部との混合物に単層Tダイフィルム成形機(東洋精機社製)を用いて温度280℃にて押出し成形を行い、耐久試験、反射率測定、ブリード試験に使用する光線反射シート(それぞれ厚さ500μm)を得た。
【0063】
[実施例17]
熱可塑性樹脂(B−1)100重量部と二酸化チタン(A−1)60重量部とを別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所製)を用いて290℃にて溶融混練することでペレット状のマスターバッチとしての光線反射樹脂組成物を得た。
【0064】
得られた光線反射樹脂組成物40重量部と熱可塑性樹脂(B−1)60重量部との混合
物に単層Tダイフィルム成形機(東洋精機社製)を用いて温度280℃にて押出し成形を
行い、耐久試験、反射率測定、ブリード試験に使用する光線反射シート(それぞれ厚さ5
00μm)を得た。
ただし、実施例5、9〜13は参考例である。

【0065】
[比較例1]
比較例1は、二酸化チタンA−1をA−12に変更した以外は実施例2と同様にして、ペレット状のマスターバッチとしての光線反射樹脂組成物を得た後、表3の配合量となるように調整して光線反射シートを得た。
【0066】
[比較例2、3]
比較例2は、熱可塑性樹脂(B−1)100重量部とフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物を表面被覆していない二酸化チタン(A−12)100重量部とを別々の供給口から二軸押出機(日本製鋼所社製)を用いて290℃で溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状のマスターバッチとしての光線反射樹脂組成物を得た。また、熱可塑性樹脂(B−1)95量部と紫外線吸収剤(E−1)5重量部とを別々の供給口から二軸押出機(日本製綱所社製)を用いて290℃で溶融混練し、ペレタイザーを使用してペレット状の紫外線吸収剤マスターバッチを得た。また、比較例3も二酸化チタンA−12をA−13に、紫外線吸収剤E−1をE−2に変更した以外は比較例2と同様にして、光線反射樹脂組成物と紫外線吸収剤マスターバッチを得た。
【0067】
得られた光線反射樹脂組成物30重量部と、紫外線吸収剤マスターバッチ2重量部と熱可塑性樹脂68重量部を用いて表3の配合量となるようにシート成形時に調整し、それぞれ光線反射シートを得た。
【0068】
<紫外線吸収剤>
(E−1)2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル ]−2H−ベンゾトリアゾール:BASF社製TINUVIN234
(E−2)2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾー ル
:BASF社製TINUVIN329
【0069】
【表3】
【0070】
実施例1〜17および比較例1〜3で得られた光線反射シートを以下の基準で評価し、評価結果を表4に示す。
【0071】
【表4】

【0072】
<耐熱性>
光線反射シートを、オーブンを用いて温度150℃の環境下、50時間静置することにより耐熱性試験を行った。その後、試験前後の黄色度(YI値)を、分光測色計(倉敷紡績社製)を用いて測定した。なお黄色度は紫外線による劣化度合いを示しており、値が低いほど劣化が少ない。また、光線反射シートの反射率も紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。反射率は白色標準板に対しての分光反射率を測定したものである。反射率の判定は波長400〜700nmの耐熱試験前後の反射率保持率を下記の基準で行った。
◎:反射率保持率が97%以上であり、実用上優れる。
〇:反射率保持率が95〜97%未満であり、実用上問題無し。
△:反射率保持率が93〜95%未満であり、実用範囲内。
×:反射率保持率が93未満であり、実用不可。
【0073】
<耐光性>
光線反射シートを、アイスーパーUVテスター(岩崎電気社製)を用いて温度63℃、湿度50%RH、照射強度100mW/cm2の環境下、12時間静置することにより耐光性試験を行った。その後、試験前後の黄色度(YI値)を、分光測色計(倉敷紡績社製)を用いて測定した。また、光線反射シートの反射率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。反射率は白色標準板に対しての分光反射率を測定したものである。反射率の判定は波長400〜800nmの耐光試験前後の反射率保持率を下記の基準で行った。
◎:反射率保持率が90%以上であり、実用上優れる。
〇:反射率保持率が85〜90%未満であり、実用上問題無し。
△:反射率保持率が80〜85%未満であり、実用範囲内。
×:反射率保持率が80未満であり、実用不可。
【0074】
<耐ブリード性>
光線反射シートのブリード有無を評価した。なお、試験は光線反射シートをガラスで挟み込み、オーブン内で温度150℃の環境下、12時間静置の条件によりブリード現象を促した。ブリードの判定は下記の基準で行った。
〇:目視によるブリードが確認されない。
×:ガラスへの付着があり、目視でブリードが確認された。
【0075】
表4の結果より、実施例1〜17は、全ての評価項目において優れた耐熱性、耐光性および耐ブリード性が得られた。一方、比較例1は耐光性、比較例2、3は耐熱性、耐ブリード性が不良となった。本発明では、二酸化チタン表面を、酸化アルミニウムを含む金属酸化物とフルオロアルキル基含有有機ケイ素化合物とで被覆することで、表面被覆を施さない二酸化チタンと比較して耐熱性、耐光性および耐ブリード性のいずれにも優れる結果が得られた。