特許第6361219号(P6361219)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361219
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】収納家具の電子錠付き開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/44 20060101AFI20180712BHJP
   E05C 9/08 20060101ALI20180712BHJP
   E05C 1/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   E05B65/44 A
   E05C9/08
   E05C1/10
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-64880(P2014-64880)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187345(P2015-187345A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年12月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】加賀山 健
【審査官】 渋谷 知子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−019172(JP,A)
【文献】 実開昭58−111769(JP,U)
【文献】 米国特許第04669394(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/44
E05C 1/10
E05C 9/08
A47B 88/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に取付けることにより、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動してなる収納家具の電子錠付き開閉装置であって、前記開閉板の縁部の内側に四角形の開口部を形成するとともに、該開口部より外側で縁部に沿って両端部にラッチを連動させた作動軸を回転可能に支持し、前記開閉操作ユニットは、ユニットケースの表面側に回転可能に支持した前記引手と前記電子錠の認証パネルを設けるとともに、引手装着空間を設けたユニットケースの一側に前記開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸を受け入れ可能である溝を形成してなり、前記ユニットケースを引手と認証パネルを前記開口部から表面に臨ませた状態で開閉板の裏面に取付けるとともに、前記溝に受け入れた作動軸に固定した連動部材と前記引手の可動部を当接して引手の手前側への回転変位に対してラッチの係合が解除される方向に作動軸を回転駆動することを特徴とする収納家具の電子錠付き開閉装置。
【請求項2】
前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記引手の手前側への回転変位によってその可動部に当接した前記連動部材を介して前記作動軸を弾性付勢力に抗して回転するように連係し、前記引手を操作しない状態において前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容して、前記開閉板を筐体に対して閉止可能としてなる請求項1記載の収納家具の電子錠付き開閉装置。
【請求項3】
前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記ユニットケース内で電子錠の操作によって前記引手の回転変位をロックした状態で、前記開閉板を筐体に対して閉止する際に、前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容してなる請求項1記載の収納家具の電子錠付き開閉装置。
【請求項4】
前記開閉操作ユニットにおける引手と認証パネルが上下方向若しくは左右方向に隣接して配置され、該引手と認証パネルの間に、区画枠部を前記ユニットケースの表面側に一体的に形成してなる請求項1〜3何れか1項に記載の収納家具の電子錠付き開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納家具の電子錠付き開閉装置に係わり、更に詳しくはキャビネット等の収納家具の扉若しくは引出しを開閉するために設ける引手を備えた電子錠付き開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、扉若しくは引出しを開閉するために、扉若しくは引出し前板に、筐体の框部に対して係脱するラッチを操作する引手を設けるとともに、ラッチの開放側への動作を規制する施錠具を備えたキャビネット等の収納家具は各種提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユニットケース内に回動可能に引手を設けるとともに、押釦錠装置を組み込み、該ユニットケースを扉の背面側に着脱可能に取付けるとともに、扉に設けた開口から前記引手と押釦錠装置の押釦が前面に臨むように取付け、そしてラッチを回転駆動する作動軸をユニットケースに交差させて扉の裏面近傍に配置するとともに、前記引手の可動部と作動軸とを連動体でリンク連結して、引手の動作とラッチの動作を連動させた構造の開閉装置を備えた収納什器が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ケーシングに、把手とシリンダー錠、カードキー施錠機構及びシリンダー錠の開閉動作に連動して回転するラッチを備えるとともに、前面側に把手、シリンダー錠の差込口及びテンキー操作部を設け、このケーシングを扉板の矩形開口部に裏面側から挿入して取付け、前記把手、シリンダー錠の差込口、テンキー操作部を扉板の前面に露出させた構造の錠前装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、扉をラッチするとともに、操作部の操作を通じてそのラッチ解除を行い得るようにしたものであって、前記操作部を、基端側に設けた取付軸まわりに回転可能に支持し、操作窓を閉止する位置と、この操作窓から退避して操作窓を開成する押し込み位置との間で移動可能として、押し込み位置でラッチ解除されるように構成するとともに、開成した操作窓の内側に、指を掛けることによって扉を目的位置へ移動させる操作力を付与し得る指掛け部を設けてなるラッチ装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、ケーシングに設けた指差し込み用の凹部の開口部の対向位置に、該開口部を塞ぐように一対の蓋板を凹部内へ押し込み回動可能且つ外側へ復帰するように弾性付勢して取付け、前記蓋板を凹部内に押し込んだ際に該蓋板の表面が指掛け部となる構造の引手が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−019172号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129598号公報
【特許文献3】特開2002−174065号公報
【特許文献4】実公平6−10044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構造では、引手と施錠具がユニットケースに予め組み込まれているものの、ラッチを駆動する作動軸はユニットケースを扉の裏面に取付けた後に、ユニットケースと交差するように扉の裏面近傍に回動可能に取付ける必要があった。また、ユニットケースは、ケース本体と裏カバーとからなるので、前記作動軸を組み付ける際には裏カバーを外す必要があり、組み立てが煩雑である。製品管理上は、ハード的な機構部を備えた扉本体と、製造工程も異なるデリケートな施錠具を備えたユニットケースを別々に管理し、出荷時に扉本体にユニットケースのみを取付けるようにすることが理想的であるが、ラッチと作動軸を最後に組み付ける構造であるので、理想的な製品管理ができない。
【0009】
また、特許文献2に記載のものは、ケーシングに、把手と施錠具の他にラッチまで組み込まれ完全に機構部もユニット化されたものであるが、ラッチを1箇所のみしか設けることができず、大型の扉や引出し前板のように、扉の上下端部と引出し前板の左右端部にラッチを設けるような使い方はできない。
【0010】
また、特許文献3に記載されたものは、操作部を押し込んでラッチを解除し、操作窓の内側に設けた指掛け部に指を掛けて引くことによって扉を手前に開放することができるものの、前記操作部は指の関節部で押してラッチを解除状態に維持する必要があるが、指掛け部を引く際に指の関節部が手前に移動すると操作部も前方へ移動し、ラッチがキャビネット本体に係合する方向に変位するので、再度ラッチが係合して扉が開かなくなる事態も想定される。また、特許文献4に記載されたものは、通常は両側の蓋板で凹部を閉じることができるので、外観性において優れ、しかもどちらの蓋板を押し込み操作しても指掛け部として扉等を手前に引くことができるものの、ラッチとの連動性はない。
【0011】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に、前記引手と電子錠の認証パネルを開閉板の開口部から表面側に臨ませて取付けることにより、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動し、ラッチ機構付きの開閉板と開閉操作ユニットを別々に管理可能な収納家具の電子錠付き開閉装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題解決のために、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に取付けることにより、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動してなる収納家具の電子錠付き開閉装置であって、前記開閉板の縁部の内側に四角形の開口部を形成するとともに、該開口部より外側で縁部に沿って両端部にラッチを連動させた作動軸を回転可能に支持し、前記開閉操作ユニットは、ユニットケースの表面側に回転可能に支持した前記引手と前記電子錠の認証パネルを設けるとともに、引手装着空間を設けたユニットケースの一側に前記開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸を受け入れ可能である溝を形成してなり、前記ユニットケースを引手と認証パネルを前記開口部から表面に臨ませた状態で開閉板の裏面に取付けるとともに、前記溝に受け入れた作動軸に固定した連動部材と前記引手の可動部を当接して引手の手前側への回転変位に対してラッチの係合が解除される方向に作動軸を回転駆動することを特徴とする収納家具の電子錠付き開閉装置を構成した(請求項1)。
【0013】
ここで、前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記引手の手前側への回転変位によってその可動部に当接した前記連動部材を介して前記作動軸を弾性付勢力に抗して回転するように連係し、前記引手を操作しない状態において前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容して、前記開閉板を筐体に対して閉止可能としてなることが好ましい(請求項2)。
【0014】
また、前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記ユニットケース内で電子錠の操作によって前記引手の回転変位をロックした状態で、前記開閉板を筐体に対して閉止する際に、前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容してなることも好ましい(請求項3)。
【0015】
以上にしてなる請求項1に係る発明の収納家具の電子錠付き開閉装置は、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に取付けることにより、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動してなる収納家具の電子錠付き開閉装置であって、前記開閉板の縁部の内側に四角形の開口部を形成するとともに、該開口部より外側で縁部に沿って両端部にラッチを連動させた作動軸を回転可能に支持し、前記開閉操作ユニットは、ユニットケースの表面側に回転可能に支持した前記引手と前記電子錠の認証パネルを設けるとともに、引手装着空間を設けたユニットケースの一側に前記開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸を受け入れ可能である溝を形成してなり、前記ユニットケースを引手と認証パネルを前記開口部から表面に臨ませた状態で開閉板の裏面に取付けるとともに、前記溝に受け入れた作動軸に固定した連動部材と前記引手の可動部を当接して引手の手前側への回転変位に対してラッチの係合が解除される方向に作動軸を回転駆動するので、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に、前記引手と電子錠の認証パネルを開閉板の開口部から表面側に臨ませて取付けるだけで、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動した状態に簡単に組み立てることができ、またラッチ機構付きの開閉板と開閉操作ユニットを別々に管理可能であるので、製造工程を合理化できる。
【発明の効果】
【0016】
以上にしてなる請求項1に係る発明の収納家具の電子錠付き開閉装置は、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に取付けることにより、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動してなる収納家具の電子錠付き開閉装置であって、前記開閉板の縁部の内側に四角形の開口部を形成するとともに、該開口部より外側で縁部に沿って両端部にラッチを連動させた作動軸を回転可能に支持し、前記開閉操作ユニットは、ユニットケースの表面側に回転可能に支持した前記引手と前記電子錠の認証パネルを設けるとともに、一側に前記作動軸を受け入れる溝を形成してなり、前記ユニットケースを引手と認証パネルを前記開口部から表面に臨ませた状態で開閉板の裏面に取付けるとともに、前記溝に受け入れた作動軸に固定した連動部材と前記引手の可動部を当接して引手の手前側への回転変位に対してラッチの係合が解除される方向に作動軸を回転駆動するので、引手と電子錠を一体に組み込んだ開閉操作ユニットを、キャビネット等の収納家具の扉若しくは引出し前板からなる開閉板の裏面に、前記引手と電子錠の認証パネルを開閉板の開口部から表面側に臨ませて取付けるだけで、開閉板の裏面側に予め取付けられたラッチの作動軸と引手が連動した状態に簡単に組み立てることができ、またラッチ機構付きの開閉板と開閉操作ユニットを別々に管理可能であるので、製造工程を合理化できる。
【0017】
請求項2によれば、前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記引手の手前側への回転変位によってその可動部に当接した前記連動部材を介して前記作動軸を弾性付勢力に抗して回転するように連係し、前記引手を操作しない状態において前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容して、前記開閉板を筐体に対して閉止可能としてなるので、開閉板を筐体から開いた状態から引手を操作しなくても、開閉板を閉じるだけでラッチを筐体の框部に設けた係合部に係合させることができる。
【0018】
請求項3によれば、前記作動軸はラッチが筐体の框部に設けた係合部に係合する方向に回転するように弾性付勢してあり、前記ユニットケース内で電子錠の操作によって前記引手の回転変位をロックした状態で、前記開閉板を筐体に対して閉止する際に、前記ラッチが前記係合部に対する係合を解除する方向への作動軸の回転変位を許容してなるので、開閉板を筐体から開いた状態で、電子錠で引手の回転変位をロックしても、開閉板を閉じるだけでラッチを筐体の框部に設けた係合部に係合させることができる。
【0019】
請求項4によれば、前記開閉操作ユニットにおける引手と認証パネルが上下方向若しくは左右方向に隣接して配置され、該引手と認証パネルの間に、区画枠部を前記ユニットケースの表面側に一体的に形成してなるので、引手操作領域と認証操作領域を区画枠部で確実に分離できて操作性に優れるとともに、外観性にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】扉付きキャビネットの斜視図である。
図2】扉付きキャビネットの開閉操作部の部分拡大図を示し、(a)は通常閉止状態、(b)はカバーを押し込んで引手を引いた状態である。
図3】引出しキャビネットの斜視図である。
図4】引出しキャビネットの開閉操作部の部分拡大図を示し、(a)は通常閉止状態、(b)はカバーを押し込んで引手を引いた状態である。
図5】扉本体の裏面構造を示す部分背面図である。
図6】扉本体と開閉操作ユニットの関係を示す分解斜視図である。
図7】扉本体に開閉操作ユニットを取付けた状態を示す斜視図である。
図8】扉の開閉操作ユニット部分における通常閉止状態の横断平面図である。
図9】同じくカバーを押し込んで引手を引いた状態の横断平面図である。
図10】同じく施錠状態のまま扉を閉止した場合のラッチの動作を示す横断平面図である。
図11】引出し前板の裏面構造を示す斜視図である。
図12】扉付きキャビネットの他の実施形態を示す斜視図である。
図13】同じく扉付きキャビネットの開閉操作部の部分拡大図を示し、(a)は通常閉止状態、(b)は引手を引いた状態である。
図14】引出しキャビネットの他の実施形態を示す斜視図である。
図15】同じく引出しキャビネットの開閉操作部の部分拡大図を示し、(a)は通常閉止状態、(b)は引手を引いた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。図1及び図2は扉付きキャビネットを示し、図3及び図4は引出しキャビネットを示し、図5図10は要部の詳細を示し、図中符号Aは扉付きキャビネット、Bは引出しキャビネット、1は筐体、2は開閉板、3は開閉操作部、4は開閉操作ユニット、5はラッチ、6は作動軸、7はユニットケース、8は電子錠、9は引手、10はカバー、11は認証パネルをそれぞれ示している。
【0022】
本実施形態の扉付きキャビネットA及び引出しキャビネットBは、それぞれ複数台を組み合わせて、あるいはオープン棚や他の種類のキャビネトと組み合わせて縦横に連結してシステム収納家具を構成するものである。通常は、下段に引出しキャビネットB、上段に扉付きキャビネットAを連結してそれを左右に連結してシステム収納家具を構成する場合が多い。このシステム収納家具を壁面に沿って設置する場合や、それ自体で室内を区画するために用いる場合もある。
【0023】
前記扉付きキャビネットAは、図1に示すように、筐体1の開口部を塞ぐように左右に開閉板2,2を両側へ回動開閉可能に設け、両開閉板2,2の召し合わせ部において右側の開閉板2が左側の開閉板2を押さえ込んで閉止状態を維持する構造であり、そして右側の開閉板2の召し合わせ部に沿った下部には開閉操作部3を設け、該開閉操作部3を操作して前記開閉板2の上下端に設けた後述のラッチ5を、作動軸6を介して回転駆動して筐体1の上下框部に係脱するようになっている。以後、特に区別をする必要があるときには、前記扉付きキャビネットAの開閉板2を扉2Aと記載する。
【0024】
一方、前記引出しキャビネットBは、図3に示すように、筐体1に多段に引出し12,…を設け、各引出し12の前面に設けた開閉板2で筐体1の開口部を塞ぎ、各開閉板2の上縁中央部には開閉操作部3を設け、該開閉操作部3を操作して前記開閉板2の左右両端に設けた後述のラッチ5を、作動軸6を介して回転駆動して筐体1の左右框部に係脱するようになっている。以後、特に区別をする必要があるときには、前記引出しキャビネットBの開閉板2を前板2Bと記載する。
【0025】
前記開閉操作部3は、前記開閉板2に形成した長方形の開口部13から、開閉操作ユニット4のユニットケース7に設けた引手9、カバー10及び電子錠8の認証パネル11を表面側に露出して構成している。ここで、前記扉2Aに設けた開閉操作部3は、図2に示すように、縦長の開口部13内の上側に引手9とカバー10を左右に配置し、下側に電子錠8の認証パネル11を配置するとともに、それらの中間に区画枠部14を水平に配置して構成している。また、前記前板2Bに設けた開閉操作部3は、図4に示すように、横長の開口部13内の左側に引手9とカバー10を上下に配置し、右側に電子錠8の認証パネル11を配置するとともに、それらの中間に区画枠部14を垂直に配置して構成している。ここで、前記開閉板2の縁部の内側に形成した開口部13には、前記引手9とカバー10、認証パネル11及び区画枠部14のみが露出し、前記ユニットケース7によって開口部13の周囲に縁が形成されない構造である。
【0026】
前記開閉板2の裏面側で前記開口部13より外側で縁部に沿って回転可能に保持した前記作動軸6の両端部には、前記ラッチ5,5を直接連結し又は連動軸を介して回動可能に連動させて取付けるとともに、該ラッチ5が筐体1の框部に形成した図示しない係合部に係合する方向に弾性付勢している。その状態で前記開閉板2の裏面側に前記開閉操作ユニット4を着脱可能に取付けると、前記引手9の可動部と前記作動軸6に固定した連動部材15が当接状態で連動するようになっている。そして、前記カバー10を指先でユニットケース7内に押し込むと同時に該引手9に指を掛けて手前に引いて回動させると、前記作動軸6が回動して前記ラッチ5の係合が解除する方向に回転し、当該開閉板2を手前へ開放することができるのである。
【0027】
基本的な構造は、前記扉付きキャビネットAと引出しキャビネットBで同じであるので、扉付きキャビネットAの扉2Aに設ける開閉操作ユニット4と作動軸6及びラッチ5の構造を、図2図5図9に基づいて詳細に説明する。先ず、図5及び図6に示すように、スチール製の前記扉2Aには遊端(召し合わせ部)の側縁のやや内側に縦長の開口部13を形成するとともに、該開口部13の裏側周縁部にスチール製の板部材16をスポット溶接し、該板部材16の上下部に後方へ突出した断面L字形の固定片17,17を折曲形成している。そして、前記扉2Aの裏面遊端側の側縁に沿い前記開口部13と交差しない外側位置に、断面四角形の前記作動軸6を適宜な軸受18により回動可能に支持するとともに、該作動軸6の上下端部に前記ラッチ5,5を回転不能に嵌着している。そして、前記作動軸6の中間部で前記開口部13の側方位置に、合成樹脂製の前記連動部材15を回転不能に嵌挿し、又はインサート成形によって一体的に形成している。前記連動部材15は上下中央部に開口部13に向けて連動片19を突設するとともに、上下端部に開口部13に向けて受片20,20を突設し、少なくとも一方の該受片20と前記扉2Aの裏面若しくは板部材16との間に圧縮コイルばね21を介装するとともに、該圧縮コイルばね21の一端部を前記受片20に保持し、該圧縮コイルばね21によって前記ラッチ5を筐体1の框部に設けた係合部に係合する回転方向に弾性付勢している。ここで、筐体1の框部に設けるラッチ5を係脱する係合部は、係合孔で構成する。
【0028】
そして、前記開閉操作ユニット4は、図6図8に示すように、合成樹脂製のユニットケース7に引手9とカバー10を回転可能に取付けるとともに、電子錠8を内蔵して構成する。前記ユニットケース7は、前記固定片17,17の間に嵌る上下寸法を有し、上下端面に前記固定片17,17に接合する取付部22,22を突設し、上部には前側に開放した指挿入用の凹部23を形成するとともに、該凹部23の側方で扉2Aの側縁に対応する側を開放して引手装着空間24を設け、更に該引手装着空間24を設けた一側に前面側に開放し、前記作動軸6を受け入れるU字溝25を形成している。尚、前記連動部材15は、引手装着空間24に対応して受け入れられる。
【0029】
そして、前記引手9は、合成樹脂製の成形品であり、前記凹部23の開口部の略半分を閉鎖する大きさの指掛け部26を有し、該指掛け部26から側方に延びて前記引手装着空間24に位置するアーチ部27の端部を前記ユニットケース7の端部、つまり前記U字溝25より外側位置に垂直な支軸28にて枢支している。ここで、前記引手9のアーチ部27は、前記連動部材15を迂回して後方から先端にかけて前方へ湾曲した形状であり、該アーチ部27の基部で前記指掛け部26に連続する位置に前方へやや張り出した当止部29を設け、該当止部29が前記連動部材15の連動片19の先端に当接するようになっている。また、前記引手9の当止部29には、圧縮コイルばね30の一端を保持し、該圧縮コイルばね30の他端を前記開口部13の周縁の板部材16に圧接し、常に引手9が復帰する方向へ弾性付勢している。更に、前記引手9の指掛け部26は、指が当たる裏面側が複数の上下等間隔のリブ31,…で形成されており、該リブ31,…の包絡面が円弧状に湾曲した形状となっている。
【0030】
また、前記カバー10は、合成樹脂製の成形品であり、前記凹部23の開口部の略半分を閉鎖する大きさの表面板32を有し、該表面板32の端部から後方に延びた側片33の上下部に外側へ突出したヒンジ部34,34を形成し、該ヒンジ部34,34を前記ユニットケース7の引手装着空間24とは反対側の側板35に形成した開口36,36から外側へ引き出し、該側板35の外側面で前記開口36,36より上下部に突設した突片37,37間に保持した垂直な支軸38で前記ヒンジ部34,34を枢支する。更に、前記カバー10の表面板32の裏面と前記ユニットケース7の凹部23の底板39との間に圧縮コイルばね40を介装して当該カバー10が押し込み状態から復帰するように弾性付勢している。また、前記カバー10の表面板32の遊端には、前記引手9の遊端の裏側に係止する係止縁41を形成している。ここで、前記引手9の指掛け部26と前記カバー10の表面板32とは略同形で、通常状態において前記凹部23の開口部を閉鎖し、その表面が前記ユニットケース7の前面に対して扉2Aと板部材16の合計厚さ分だけ突出させている。
【0031】
また、前記電子錠8は、前記ユニットケース7の下部に内蔵し、その認証パネル11が前記引手9及びカバー10と同じだけユニットケース7の前面から突出している。本発明において、電子錠8の構造は限定されず、前記認証パネル11も暗証番号をテンキーで入力する方式でも、タッチパネルで入力する方式でも構わず、更に指紋認証方式やその他の磁気カード、LSIカードあるいは携帯電話から電磁的に入力する方式でも構わない。そして、前記認証パネル11を操作して前記電子錠8の電磁ソレノイド等のアクチュエータ(図示せず)を駆動し、前記ユニットケース7内で施錠片が変位して前記引手9の手前への変位を規制してロックする。
【0032】
このように構成した前記開閉操作ユニット4を、図6に示すように、予め作動軸6とラッチ5,5を装着した状態の扉2Aの裏面側に、前記固定片17,17の間に嵌挿するとともに、上下の取付部22,22を固定片17,17に接合してネジ止めすると、前記引手9の指掛け部26と前記カバー10の表面板32、更に電子錠8の認証パネル11が開口部13から表面に臨み、扉2Aの表面と略面一の状態になる。前記開閉操作ユニット4を扉2Aの裏面に取付けると同時に、前記作動軸6をユニットケース7のU字溝25に受け入れるとともに、前記連動部材15が引手9のアーチ部27の前側に位置し、該連動部材15の連動片19の先端が前記引手9の当止部29の前面に当接して連動するようになる。つまり、図9に示すように、前記カバー10を指先で凹部23内に押し込んで、前記引手9の指掛け部26の裏面側に指先を掛けて手前に引くと、前記支軸28を中心にアーチ部27が手前に回転し、それにより前記当止部29が連動片19を手前側に押して作動軸6を回転し、前記ラッチ5の係合が解除される方向に回転変位するのである。最後に、図8に示すように、前記開閉操作ユニット4を背後から覆うようにスチール製の保護カバー42を被せ、該保護カバー42をユニットケース7の裏面にネジ止めする。尚、前記圧縮コイルばね21,30,40は、キックばね、板ばね等の他の公知の弾性付勢手段に置き換えて良い。
【0033】
前記引手9から手を放した状態、若しくは電子錠8によって引手9がロックされた状態で扉2Aを閉じると、図10に示すように、前記ラッチ5が筐体1の框部に設けた係合孔(図示せず)の孔縁を滑って先端の爪が通過するように回転する。つまり、ラッチ5が係合を解除する方向に回転変位し、それに伴って前記作動軸6も回転するが、前記連動部材15の連動片19が前記引手9の当止部29から離れる方向の変位であるから許容されるのである。そして、前記ラッチ5の爪が係合孔の孔縁を通過すると、前記圧縮コイルばね21の弾性付勢力によって係合する方向に回動復帰し、ラッチ5が筐体1の係合部に係合する。この機構は、いわゆる蹴り込み手段と称する。ここで、前記電子錠8によってユニットケース7内で引手9をロックせず、前記連動部材15をロックする場合には、開放状態にある扉2Aを施錠したまま閉止する際に、前記ラッチ5を作動軸6に対して係合を解除する方向に弾性付勢力に抗して回転変位を許容しなければならないが、その場合には作動軸6とラッチ5の連結部に公知の蹴り込み手段を設ける。この機構は、本出願人の先願に係る特許文献1にも開示されている。
【0034】
図11は、引出しの前板2Bに前記同様の開閉操作ユニット4を取付けた状態を示している。この場合、前記前板2Bの上縁に沿って横長の開口部13を設け、それに応じて前記開閉操作ユニット4も横長のユニットケース7となり、図4に示すように、該ユニットケース7の左側で上側に引手9を、下側にカバー10を設け、右側に電子錠8の認証パネル11を設けている。前記作動軸6は、前板2Bの裏面上縁に沿って回転可能に支持し、該作動軸6の両端は下方へ直角に折曲して操作片43を形成し、一方、裏面の側縁に沿って垂直に連動軸44を回転可能に支持し、該連動軸44の上端部を内方へ直角に折曲して形成した連動片45を前記操作片43の前側に交差させ、更に連動軸44の下端にラッチ5を固定した構造となっている。また、前記ラッチ5の基部から前板2Bの中心方向を延びた弾性片47を前板2Bの裏面に圧接し、該ラッチ5の先端が外側へ回転する方向に弾性付勢している。そして、前記引手9を手前に引くと、前記作動軸6が回転し、前記操作片43が連動片45を前側に変位させ、それにより前記連動軸44が右回りに回転してラッチ5が内向きに回転変位する。前記筐体1の側框部には、前記ラッチ5を係合する爪片(図示せず)を突設してあり、引出し12の押し込み格納時には前板2Bが閉止し、ラッチ5の先端部に形成した係止孔46が前記爪片に係合している。そして、引手9を手前に引いたときにラッチ5が内側に回転変位し、係止孔46と爪片との係合が開示されて引出し12を引き出すことが可能になる。このラッチ5による係脱機構は公知のものである。
【0035】
ここで、前述の実施形態では、前記引手9の指掛け部26と前記カバー10の表面板32とは略同形としたが、前記引手9が凹部23内に位置し、前記カバー10が凹部23の開口部全体を閉鎖する大きさとしても良い。この場合、前記カバー10を凹部23内に押し込んで凹部23内に隠れている引手9を手前に引くと、該引手9が凹部23内で変位して前記作動軸6を回転させるようにする。
【0036】
図12図15は、前記カバー10を省略したタイプの他の実施形態である。図12及び図13は、扉付きキャビネットA1を示し、図14及び図15は引出しキャビネットB1を示している。前記カバー10が存在しない以外は、前記同様であるので、同一構成には同一符号を付してその説明は省略する。この場合、前記ユニットケース7の凹部23が一部露出したままとなる。
【符号の説明】
【0037】
A,A1 扉付きキャビネット、
B,B1 引出しキャビネット、
1 筐体、 2 開閉板、
2A 扉、 2B 前板、
3 開閉操作部、 4 開閉操作ユニット、
5 ラッチ、 6 作動軸、
7 ユニットケース、 8 電子錠、
9 引手、 10 カバー、
11 認証パネル、 12 引出し、
13 開口部、 14 区画枠部、
15 連動部材、 16 板部材、
17 固定片、 18 軸受、
19 連動片、 20 受片、
21 圧縮コイルばね、 22 取付部、
23 凹部、 24 引手装着空間、
25 U字溝、 26 指掛け部、
27 アーチ部、 28 支軸、
29 当止部、 30 圧縮コイルばね、
31 リブ、 32 表面板、
33 側片、 34 ヒンジ部、
35 側板、 36 開口、
37 突片、 38 支軸、
39 底板、 40 圧縮コイルばね、
41 係止縁、 42 保護カバー、
43 操作片、 44 連動軸、
45 連動片、 46 係止孔、
47 弾性片。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
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