特許第6361243号(P6361243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361243
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】加工変質検出センサを備える工作機械
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/10 20060101AFI20180712BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20180712BHJP
   B24B 5/35 20060101ALI20180712BHJP
   B24B 5/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B24B49/10
   B24B49/04 A
   B24B5/35
   B24B5/04
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-78432(P2014-78432)
(22)【出願日】2014年4月7日
(65)【公開番号】特開2015-199152(P2015-199152A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】向出 尚正
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−052088(JP,A)
【文献】 特開昭57−173444(JP,A)
【文献】 特開平02−095543(JP,A)
【文献】 特開2013−071204(JP,A)
【文献】 特開2011−245592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/00−49/18
B24B 5/04
B24B 5/35
B24B 5/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
被加工物の表面に接触する接触子と、
前記本体部に支持され、前記接触子が固定され、且つ、前記被加工物の寸法に応じて前記本体部に対して変位するアーム部と、
前記本体部に対する前記アーム部の変位に基づいて前記被加工物の寸法に応じた信号を出力する寸法測定センサと、
前記アーム部に設けられ、前記被加工物の加工変質状態に応じた信号を出力する非接触式の加工変質検出センサと、
を備え
前記寸法測定センサは、前記被加工物の円筒状部位の外径又は内径に応じた信号を出力し、
前記加工変質検出センサは、前記接触子と当該加工変質検出センサとを結ぶ直線を前記被加工物の中心軸線に平行となるように、前記アーム部に設けられ、前記加工変質状態の量に応じた信号を出力する渦電流検出センサ又はバルクハウゼンノイズ検出センサであり、
前記接触子と前記被加工物との接触により、前記加工変質検出センサと前記被加工物との間にギャップが作られる、加工変質検出センサを備える工作機械。
【請求項2】
前記加工変質検出センサは、前記接触子が前記被加工物に接触する状態において、前記寸法測定センサによる測定の最中に、前記加工変質状態に応じた信号を出力する、請求項1に記載の加工変質検出センサを備える工作機械。
【請求項3】
前記加工変質検出センサは、前記アーム部のうち前記本体部より前記接触子側に設けられる、請求項1又は2に記載の加工変質検出センサを備える工作機械。
【請求項4】
前記寸法測定センサは、前記被加工物の円筒状部位の外径又は内径に応じた信号を出力し、
前記工作機械は、前記アーム部において前記被加工物の中心軸線に平行に設けられる複数の前記加工変質検出センサを備える、請求項1〜の何れか一項に記載の加工変質検出センサを備える工作機械。
【請求項5】
前記アーム部の延在方向に平行で、且つ、前記接触子の移動軌跡を含む平面を基準平面と定義し、
前記工作機械は、
前記アーム部において前記基準平面に対して一方に離れた位置に設けられる、前記加工変質検出センサとしての第一加工変質検出センサと、
前記アーム部において前記基準平面に対して他方に離れた位置に設けられ、前記第一加工変質検出センサに起因する前記アーム部、前記接触子及び前記第一加工変質検出センサの重心の偏りを抑制するバランスウエイトと、
を備える、請求項1〜の何れか一項に記載の加工変質検出センサを備える工作機械。
【請求項6】
前記バランスウエイトは、前記加工変質検出センサとしての第二加工変質検出センサである、請求項に記載の加工変質検出センサを備える工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工変質検出センサを備える工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加工変質検出センサを備える工作機械は、例えば、特許文献1〜4に記載されている。特許文献1には、砥石台に当該センサが設けられる。また、これらの文献に記載の加工変質検出センサは、被加工物に接触させて、加工変質層の検出を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−245592号公報
【特許文献2】特開2010−184343号公報
【特許文献3】特開2011−13147号公報
【特許文献4】特開2011−252877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、加工変質検出センサが被加工物に接触するため、センサ先端の摩耗が問題となる。一方、非接触式の加工変質検出センサを用いて高精度な検出を行うためには、センサと被加工物とのギャップを小さくしつつ、且つ、ギャップを一定に保持する必要がある。
【0005】
本発明は、高精度な加工変質層の検出を可能となる非接触式の加工変質検出センサを備える工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1)加工変質検出センサを備える工作機械は、本体部と、被加工物の表面に接触する接触子と、前記本体部に支持され、前記接触子が固定され、且つ、前記被加工物の寸法に応じて前記本体部に対して変位するアーム部と、前記本体部に対する前記アーム部の変位に基づいて前記被加工物の寸法に応じた信号を出力する寸法測定センサと、前記アーム部に設けられ、前記被加工物の加工変質状態に応じた信号を出力する非接触式の加工変質検出センサと、を備え、前記寸法測定センサは、前記被加工物の円筒状部位の外径又は内径に応じた信号を出力し、前記加工変質検出センサは、前記接触子と当該加工変質検出センサとを結ぶ直線を前記被加工物の中心軸線に平行となるように、前記アーム部に設けられ、前記加工変質状態の量に応じた信号を出力する渦電流検出センサ又はバルクハウゼンノイズ検出センサであり、前記接触子と前記被加工物との接触により、前記加工変質検出センサと前記被加工物との間にギャップが作られる。
【0007】
本体部、接触子、アーム部及び寸法測定センサは、いわゆる定寸装置を構成する。つまり、非接触式の加工変質検出センサは、定寸装置のアーム部に設けられる。ここで、接触子は、被加工物の寸法が変化した場合であっても、アーム部が本体部に対して変位することにより、被加工物に接触した状態を維持できる。そして、接触子が被加工物に接触している状態においては、アーム部は、被加工物の近傍に位置する。従って、接触子が被加工物に接触している状態において、加工変質検出センサと被加工物とのギャップが小さくなり、且つ、当該ギャップがほぼ一定に保持される。その結果、加工変質検出センサは、高精度な加工変質層の検出を行うことができる。
【0008】
(請求項2)前記加工変質検出センサは、前記接触子が前記被加工物に接触する状態において、前記寸法測定センサによる測定の最中に、前記加工変質状態に応じた信号を出力するようにしてもよい。つまり、寸法測定センサによる被加工物の寸法測定と、加工変質検出センサによる加工変質層の検出とが、同時に行われる。これにより、寸法変化と加工変質状態の変化との関係が把握される。
【0009】
(請求項3)前記加工変質検出センサは、前記アーム部のうち前記本体部より前記接触子側に設けられるようにしてもよい。接触子が被加工物に接触しているため、アーム部のうち接触子に近い位置ほど、加工変質検出センサと被加工物とのギャップが小さくなり、且つ、ギャップがより一定となる。従って、より高精度に加工変質層が検出される。
【0011】
(請求項)前記寸法測定センサは、前記被加工物の円筒状部位の外径又は内径に応じた信号を出力し、前記工作機械は、前記アーム部において前記被加工物の中心軸線に平行に設けられる複数の前記加工変質検出センサを備えるようにしてもよい。これにより、被加工物の軸方向に広範囲の加工変質層が一度に検出される。
【0012】
(請求項)前記アーム部の延在方向に平行で、且つ、前記接触子の移動軌跡を含む平面を基準平面と定義し、前記工作機械は、前記アーム部において前記基準平面に対して一方に離れた位置に設けられる、前記加工変質検出センサとしての第一加工変質検出センサと、前記アーム部において前記基準平面に対して他方に離れた位置に設けられ、前記第一加工変質検出センサに起因する前記アーム部、前記接触子及び前記第一加工変質検出センサの重心の偏りを抑制するバランスウエイトと、を備えるようにしてもよい。
【0013】
バランスウエイトによって、第一加工変質検出センサに起因する重心の偏りが抑制される。従って、アーム部、接触子、第一加工変質検出センサ及びバランスウエイトを含む移動体全体の重心が、基準平面上に位置する。その結果、移動体が安定して動作する。そうすると、寸法測定及び加工変質層の検出が、高精度に行われる。
【0014】
(請求項)前記バランスウエイトは、前記加工変質検出センサとしての第二加工変質検出センサであるとしてもよい。第一加工変質検出センサと第二加工変質検出センサとが、相互にバランスをとる関係となる。従って、バランスをとりつつ、広範囲の加工変質層が検出される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態の工作機械の平面図である。
図2】測定ユニットのZ軸方向から見た図である。
図3図2の3−3断面図である。
図4図2の4−4断面図である。
図5】粗研から微研に至る加工において、被加工物の外径と、加工変質検出センサの出力を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1.工作機械の構成)
本発明の実施形態の工作機械の構成について、図1を参照して説明する。工作機械の例として、円筒状の被加工物Wを回転駆動させながら研削する円筒研削盤10を挙げる。円筒研削盤10は、ベッド11と、砥石台12と、テーブル13と、砥石車14と、主軸15と、心押台16と、測定ユニット17とを備える。
【0017】
砥石台12は、ベッド11上にX軸方向に往復可能に設けられる。テーブル13は、ベッド11上に、X軸方向に直交するZ軸方向に往復可能に設けられる。砥石車14は、砥石台12にZ軸方向に平行な軸回りに回転自在に支持され、砥石台12に設けられる砥石軸回転モータ(図示せず)により回転駆動される。主軸15は、テーブル13上に、Z軸方向に平行な軸回りに回転自在に支持され、主軸回転モータ(図示せず)により回転駆動される。主軸15は、被加工物Wの一端を把持する。心押台16は、テーブル13上に設けられ、被加工物Wの他端を支持する。
【0018】
測定ユニット17は、被加工物Wの加工部位の寸法を測定すると共に、被加工物Wの加工部位の加工変質層の検出を行う。本実施形態においては、測定ユニット17は、被加工物Wの外周面の外径を測定すると共に、被加工物Wの外周面からの所定深さにおける加工変質層の検出を行う。つまり、測定ユニット17は、定寸装置としての機能と、加工変質層の検出装置としての機能とを備える。
【0019】
(2.測定ユニットの詳細構成)
測定ユニット17の詳細構成について、図2図4を参照して説明する。図2図4に示すように、測定ユニット17は、ベッド11に設けられた本体部21と、一対のアーム部22a,22bと、一対の接触子23a,23bと、一対の寸法測定センサ24a,24bと、第一加工変質検出センサ25と、第二加工変質検出センサ26とを備える。ここで、本体部21、一対のアーム部22a,22bと、一対の接触子23a,23bと、一対の寸法測定センサ24a,24bとは、いわゆる定寸装置を構成する。
【0020】
一対のアーム部22a,22bは、支持部21a,21bを支点として、本体部21に揺動可能に支持される。一対のアーム部22a,22bは、本体部21からX軸方向に延在するように設けられる。さらに、一対のアーム部22a,22bは、X,Z軸に直交するY軸方向に対向するように、且つ、被加工物WをY軸方向に挟むように設けられる。つまり、一対のアーム部22a,22bは、被加工物Wの外周面から僅かなギャップを介して配置される。
【0021】
一対の接触子23a,23bの各々は、一対のアーム部22a,22bの各々の一端側であって被加工物W側(他のアーム部22a,22b側)に突出するように固定される。一対の接触子23a,23bは、一対のアーム部22a,22bの各々の幅方向(Z軸方向)の中央に設けられる。各接触子23a,23bの先端は、被加工物Wの外周の表面に接触する。
【0022】
一対の接触子23a,23bは、被加工物Wの中心軸線Lを介して対向するように設けられる。つまり、2つの接触子23a,23bが被加工物Wに接触する位置の離間距離は、被加工物Wの加工部位の外径に相当する。従って、一対のアーム部22a,22bは、被加工物Wの外径の寸法に応じて本体部21に対して変位する。各接触子23a,23bは、被加工物Wの外径の寸法が変化した場合であっても、各アーム部22a,22bが本体部21に対して変位することにより、被加工物Wに接触した状態を維持できる。
【0023】
寸法測定センサ24aは、本体部21に設けられ、本体部21に対するアーム部22aの変位を検出する。寸法測定センサ24bは、本体部21に設けられ、本体部21に対するアーム部22bの変位を検出する。つまり、一対の寸法測定センサ24a,24bは、本体部21に対するアーム部22a,22bの各々の変位に基づいて、被加工物Wの外径の寸法に応じた信号を出力する。
【0024】
なお、一対の寸法測定センサ24a,24bは、一対のアーム部22a,22bの各々が規定された位置に到達したときに信号を出力するようにしてもよいし、一対のアーム部22a,22bの各々の位置に応じた信号を常時出力するようにしてもよい。前者の場合には、一対の寸法測定センサ24a,24bは、被加工物Wの外径の寸法が規定値に到達したときに信号を出力する。後者の場合には、一対の寸法測定センサ24a,24bは、被加工物Wの外径の寸法に相当する信号を逐次出力する。
【0025】
第一,第二加工変質検出センサ25,26は、被加工物Wの加工変質層を検出する。第一,第二加工変質検出センサ25,26は、被加工物Wの加工変質状態に応じた信号を出する非接触式のセンサである。例えば、第一,第二加工変質検出センサ25,26は、公知の渦電流検出センサ、バルクハウゼンノイズ検出センサなどを適用される。第一,第二加工変質検出センサ25,26は、接触子23aが被加工物Wに接触する状態において、寸法測定センサ24a,24bによる測定の最中に、加工変質状態に応じた信号を出力する。つまり、被加工物Wの寸法変化と被加工物Wの加工変質状態の変化との関係が把握される。
【0026】
第一,第二加工変質検出センサ25,26は、いわゆる定寸装置のアーム部22aに設けられる。特に、第一,第二加工変質検出センサ25,26は、アーム部22aの先端側(アーム部22aのうち本体部21より接触子23a側)に設けられる。接触子23aが被加工物Wに接触している状態において、第一,第二加工変質検出センサ25,26は、僅かなギャップを介して設けられる。
【0027】
ここで、接触子23aが被加工物Wに接触している状態においては、アーム部22aは、被加工物Wの近傍に位置する。従って、接触子23aが被加工物Wに接触している状態においては、第一,第二加工変質検出センサ25,26と被加工物Wとのギャップが小さくなり、且つ、当該ギャップがほぼ一定に保持される。
【0028】
より詳細には、図3及び図4に示すように、第一,第二加工変質検出センサ25,26は、当該センサ25,26と接触子23aとを結ぶ直線を被加工物Wの中心軸線Lに平行となるように、アーム部22aに設けられる。従って、加工によって被加工物Wの加工部位の外径が変化した場合であっても、第一,第二加工変質検出センサ25,26と被加工物Wの表面とのギャップが一定に維持される。つまり、高精度な加工変質層が検出される。
【0029】
さらに、第一加工変質検出センサ25は、図3及び図4に示す基準平面Sに対して一方に離れた位置に設けられる。一方、第二加工変質検出センサ26は、基準平面Sに対して他方に離れた位置に設けられる。基準平面Sは、アーム部22aの延在方向に平行で、且つ、接触子23aの移動軌跡を含む平面と定義する。詳細には、第一加工変質検出センサ25と第二加工変質検出センサ26は、被加工物Wの中心軸線Lに平行に設けられる。これにより、被加工物Wの軸方向に広範囲の加工変質層が一度に検出される。
【0030】
上記配置によって、第二加工変質検出センサ26は、第一加工変質検出センサ25に起因するアーム部22a、接触子23a及び第一加工変質検出センサ25の重心の偏りを抑制するバランスウエイトとして機能する。より詳細には、アーム部22a、接触子23a、第一,第二加工変質検出センサ25,26を含んで構成される移動体全体の重心は、基準平面S上に位置する。その結果、当該移動体が安定して動作する。そうすると、寸法測定及び加工変質層の検出が、高精度に行われる。
【0031】
つまり、第二加工変質検出センサ26が第一加工変質検出センサ25に対するバランスウエイトとして機能するため、センサ25,26が相互にバランスをとりつつ、軸方向に広範囲の加工変質層が検出される。
【0032】
(3.寸法測定センサ及び加工変質検出センサの出力)
第一,第二加工変質検出センサ25,26は、例えば、特開2011−106932号公報に記載されるように、渦電流検出センサを適用し、被加工物Wの加工変質状態に応じた信号を出力する。励磁電流によって被加工物Wに渦電流が誘導され、渦電流による誘導起電力が加工変質状態に応じて変化することから、当該誘導起電力に応じて加工変質状態が検出される。
【0033】
ここで、励磁電流の周波数と被加工物Wの表面からの検出深さとは、反比例の関係を有する。そこで、各センサ25,26には、それぞれ、表面から深い位置(例えば、約680μm)を検出深さとする低周波側の第一周波数(例えば、0.5kHz)の励磁電流と、表面から浅い位置(例えば、約30μm)を検出深さとする高周波側の第二周波数(例えば、250kHz)の励磁電流とが供給される。
【0034】
一対の寸法測定センサ24a,24bは、被加工物Wの外径が予め設定された値D1,D2に達したときに信号を出力する。値D1は、粗研から微研に切り替える被加工物Wの外径であり、値D2は、微研を終了する被加工物Wの外径である。
【0035】
上記において、被加工物Wの外径と、第一加工変質検出センサ25による出力値とを、図5の上段及び下段に示す。図5の上段に示すように、時刻T1に粗研が開始され、時刻T2に被加工物Wの外径がD1に達することで、粗研から微研に切り替えられ、時刻T3に被加工物Wの外径がD2に達することで、微研を終了する。図5の下段において、Aで示す二点破線が、第一周波数の励磁電流による出力であり、Bで示す実線が、第二周波数の励磁電流による出力である。
【0036】
図5の下段に示すように、粗研開始から微研終了に至る間において研削を行っている最中に、第一加工変質検出センサ25による出力が取得される。このように、被加工物Wの研削が行われながら、加工変質層の検出が可能となる。なお、便宜上、図5の下段には、第一加工変質検出センサ25の出力のみを示すが、第二加工変質検出センサ26の出力を示すことは当然に可能である。
【0037】
時刻T1からT2の間の粗研中では、被加工物Wの表面から浅い位置及び深い位置共に、加工変質層が発生していることが分かる。時刻T2からT3の間の微研中において、被加工物Wの表面から浅い位置及び深い位置共に、加工変質層が減少していることが分かる。つまり、作業者は、粗研開始から微研終了までの研削の最中において、加工変質状態の変化を把握できる。特に、第一,第二加工変質検出センサ25,26はアーム部22aに設けられるため、被加工物Wの外径が変化した場合であっても、検出される加工変質状態は非常に高精度である。つまり、作業者は、加工変質状態の変化をより高精度に把握できる。
【0038】
(4.その他)
上記実施形態における測定ユニット17は、被加工物Wの外周面の寸法(外径)を測定すると共に、被加工物Wの外周面からの所定深さにおける加工変質層の検出を行うこととした。この他に、測定ユニット17は、被加工物Wの内周面の寸法(内径)を測定すると共に、被加工物Wの内周面からの所定深さにおける加工変質層の検出を行うようにすることができる。また、被加工物Wは、円筒状に限られず、板状の場合であっても、測定ユニット17は、被加工物Wの表面の寸法を測定すると共に、被加工物Wの表面からの所定深さにおける加工変質層の検出を行うようにすることもできる。
【0039】
また、上記実施形態における測定ユニット17は、第一,第二加工変質検出センサ25,26を備えることとした。この他に、測定ユニット17は、第一加工変質検出センサ25を備え、第二加工変質検出センサ26に置換して単なるバランスウエイトを備えるようにしてもよい。この場合も、移動体のバランスがとられる。
【符号の説明】
【0040】
10:円筒研削盤(工作機械)、 17:測定ユニット、 21:本体部、 22a,22b:アーム部、 23a,23b:接触子、 24a,24b:寸法測定センサ、 25:第一加工変質検出センサ、 26:第二加工変質検出センサ(バランスウエイト)、 L:被加工物Wの中心軸線、 S:基準平面、 W:被加工物
図1
図2
図3
図4
図5