(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の基板と、前記第1の基板と対向配置される第2の基板と、前記第2の基板の上に配置されたスペーサと、前記スペーサの先端と対向するように前記第1の基板上に配置されたスペーサ台座と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に配置される液晶とを有する液晶表示素子であって、
前記スペーサが、
[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、
[B]重合性不飽和化合物、
[C]感放射線性重合開始剤、並びに
[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種 、
とを含有する感放射線性樹脂組成物によって形成されることを特徴とする液晶表示素子。
さらに[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体が、架橋性基を有する構造単位を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を用いて説明する。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」には、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線および荷電粒子線等が含まれる。
【0035】
実施形態1.
<液晶表示素子>
本発明の第1実施形態の液晶表示素子は、例えば、パッシブマトリクス方式の液晶表示素子やアクティブマトリクス方式の液晶表示素子として使用することができる。アクティブマトリクス方式の液晶表示素子は、携帯型電子機器向けのディスプレイ(モニター)、パーソナルコンピュータ用のディスプレイ、印刷やデザイン向けのディスプレイ、医療用機器のディスプレイ、液晶テレビ等に用いられている。
【0036】
図1は、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の構成の一例を示す模式的な構成図である。
【0037】
図2は、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の画素の回路構成の一例を説明する模式的な回路図である。
【0038】
アクティブマトリクス方式である本発明の第1実施形態の液晶表示素子1は、例えば、
図1に示すように、画像を表示する液晶表示パネル31、第1の駆動回路32、第2の駆動回路33、制御回路34およびバックライト35を有して構成される。
【0039】
液晶表示パネル31は、複数本の走査信号線36および複数本の映像信号線37を有し、映像信号線37はそれぞれ第1の駆動回路32に接続しており、走査信号線36はそれぞれ第2の駆動回路33に接続している。
【0040】
尚、
図1では、第2の駆動回路33に接続する4本の走査信号線36が示されているが、これは複数本の走査信号線36のうちの一部を模式的に示すものであり、実際の液晶表示パネル31には、さらに多数本の走査信号線36が密に配置されている。同様に、
図1には、第1の駆動回路32に接続する8本の映像信号線37が示されているが、これは複数本の映像信号線37のうちの一部を模式的に示すものであり、実際の液晶表示パネル31には、さらに多数本の映像信号線37が密に配置されている。
【0041】
また、液晶表示パネル31の画像を表示する表示領域38は、マトリクス状に配置された多数の画素の集合として構成されている。表示領域38において1つの画素が占有する領域は、例えば、隣接する2本の走査信号線36と、隣接する2本の映像信号線37とにより囲まれる領域に相当する。このとき、1つの画素の回路構成は、例えば、
図2に示すような構成になっており、アクティブ素子として機能するTFT43、画素電極42、共通電極41(対向電極と称することもある。)および液晶40を有する。そして、液晶表示パネル31には、
図2に示すように、例えば、複数の画素の共通電極41を共通化する共通化配線39が設けられている。
【0042】
液晶表示パネル31は、TFT43の設けられた第1の基板であるTFT基板(
図1および
図2中には図示されない。)と、TFT基板と対向配置される第2の基板(以下、対向基板と称することもある。)、TFT基板と対向基板との間に配置される液晶40とを有する構造になっている。このとき、TFT基板と対向基板とは、表示領域38の外側に設けられた環状のシール材(
図1および
図2中には図示されない。)で接着されており、液晶40は、TFT基板、対向基板およびシール材で囲まれた空間に密封されている。そして、液晶表示素子1の液晶表示パネル31は、TFT基板、液晶40および対向基板を挟持して対向配置された一対の偏光板(
図1および
図2中には図示されない。)を有する。また、液晶表示素子1は、観察者側となる前面側とは反対の背面側に配置され、背面側から液晶表示パネル31に光を放射するバックライト35を有する。
【0043】
尚、TFT基板は、ガラス基板等の絶縁基板の上に走査信号線36、映像信号線37、アクティブ素子であるTFT43および画素電極42等が形成された基板である。また、液晶表示素子1の駆動方式がIPSモードやFFSモード等の横電界駆動方式である場合、液晶表示パネル31の共通電極41および共通化配線39はTFT基板に配置されている。また、液晶表示素子1の駆動方式がVAモードやTNモード等の縦電界駆動方式である場合、液晶表示パネル31の共通電極41は対向基板に配置されている。縦電界駆動方式の液晶表示素子1の場合、液晶表示パネル31の共通電極41は、通常、すべての画素で共有される大面積の一枚のべた状の平板電極であり、共通化配線39は設けられていない。
【0044】
液晶表示素子1において、第1の駆動回路32は、映像信号線37を介してそれぞれの画素の画素電極42に加える映像信号(階調電圧ということもある)を生成する駆動回路であり、一般に、ソースドライバ、データドライバ等と称されている駆動回路である。また、第2の駆動回路33は、走査信号線36に加える走査信号を生成する駆動回路であり、一般に、ゲートドライバ、走査ドライバ等と称されている駆動回路である。
【0045】
また、制御回路34は、第1の駆動回路32の動作の制御、第2の駆動回路33の動作の制御およびバックライト35の輝度の制御等を行う回路であり、一般に、TFTコントローラ、タイミングコントローラ等と称されている制御回路である。
【0046】
また、バックライト35は、例えば、冷陰極蛍光灯等の蛍光灯または発光ダイオード(LED)等の光源であり、バックライト35から放射された光は、図示されない反射板、導光板、光拡散板、プリズムシート等により面状光線に変換されて液晶表示パネル31に照射される。
【0047】
以上の構成を有する本発明の第1実施形態の液晶表示素子1は、TFT基板と対向基板との間に液晶40が挟持されるとともに、柱状形状を有するスペーサ(
図1および
図2中には図示されない。)を設けて構成されている。すなわち、液晶表示素子1においては、液晶40が密封された空間に、それぞれの画素における液晶40の厚さ(セルギャップとも称することがある。)の均一化するためのスペーサが複数設けられている。液晶表示素子1において、この複数のスペーサは、例えば、対向基板に設けることができる。また、TFT基板上には、スペーサの先端と対向するようにスペーサ台座(
図1および
図2中には図示されない。)を設けることができる。
【0048】
以下、本発明の第1実施形態の液晶表示素子1の構造、特に、スペーサの配置された液晶表示パネル31の各画素の構造について、より詳細に説明する。
【0049】
図3は、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の画素部を模式的に説明する平面図である。
【0050】
本発明の第1実施形態の液晶表示素子1は、横電界駆動方式であるFFSモードの液晶表示素子である。
【0051】
図3に示すように、液晶表示素子1において、走査信号線36と映像信号線37とで囲まれたマトリクス状の各領域に画素が形成されている。各画素においては、下側に平面ベタでITO(Indium Tin Oxide)によって形成された共通電極41が形成され、共通電極41の端部には、共通電極41にコモン電位を供給するための共通化配線39がオーバーラップして形成されている。共通電極41の上に後述する絶縁性の膜を挟んでスリットを有する画素電極42が形成されている。画素電極42に映像信号が供給されると、共通電極41との間にスリットを介して液晶40(
図3には図示されない。)に電気力線が発生し、これによって液晶40の液晶分子を基板面と平行な平面内で回転動作させて、図示されないバックライトからの光の量を制御することによって画像を形成することができる。
【0052】
図3に示すように、走査信号線36の上にはTFTが形成されている。すなわち、走査信号線36の上には、ゲート絶縁膜(
図3には図示されない。)を挟んで半導体層104が形成されている。ドレイン電極105は映像信号線37が分岐したものである。ドレイン電極105と対向してソース電極106が形成され、ソース電極106は、画素領域に延在し、スルーホール109を介して画素電極42と電気的に接続している。
【0053】
図3に示すように、走査信号線36の上に、画素電極42と同じ材料を用いたスペーサ台座114が形成されている。スペーサ台座114と走査信号線36との間には絶縁性の膜が配置されている。また、スペーサ台座114の上には、配向膜113(
図3中、図示されない。)が形成されている。スペーサ台座114に対応する部分には、対向基板に形成された柱状形状のスペーサ204の先端が接触している。
【0054】
図4は、
図3のA−A’線に沿った断面構造を模式的に示す断面図である。
【0055】
図4に示すように、TFT基板100の外側には偏光板120が形成され、対向基板200の外側には偏光板220が形成されている。TFT基板100と対向基板200の間に液晶40が挟持されている。すなわち、液晶表示素子1は、液晶40が、TFT基板100と対向基板200とにより挟持され、さらに、その外側から一対の偏光板120、220により挟持される。
【0056】
図4に示すように、TFT基板100の液晶40側の面上には、透明電極であるITOによる共通電極41が形成されている。共通電極41の端部には共通電極41にコモン電位を供給するための共通化配線39がオーバーラップしている。共通電極41は、走査信号線36と絶縁して形成されている。
【0057】
走査信号線36は2層構造を有し、下層は共通電極41と同じITOによる導電層361で形成され、上層は、共通化配線39と同じ金属からなる金属膜362によって形成されている。走査信号線36を形成する金属膜362は、例えば、MoWあるいはAl合金等から形成することができる。
【0058】
走査信号線36および共通電極41を覆ってゲート絶縁膜103が形成され、ゲート絶縁膜103の上にパッシベーション膜107が形成されている。パッシベーション膜107の上に透明導電材料であるITOによって画素電極42が形成されている。一方、走査信号線36上のパッシベーション膜107の上には画素電極42と同じITOによってスペーサ台座114が形成されている。
【0059】
スペーサ台座114は、、正方形、長方形、円形、長円形および楕円形等の平面形状を有することができるが、角のない円形や長円形や楕円形の平面形状とすることが好ましい。そして、
図4に示すように、スペーサ台座114の液晶40側の上端部は、画素電極42の液晶40側の上端部よりも高くなるように形成されている。
【0060】
配向膜113は、このような構造のTFT基板上に、配向膜形成用の配向剤を塗布し、その塗膜を硬化させて配向処理をすることにより形成される。
【0061】
また、
図4に示すように、対向基板200にはブラックマトリクス201とカラーフィルタ202が形成されている。ブラックマトリクス201はスペーサ台座114部分を覆うように配置されている。したがって、この部分において、液晶40の配向制御が十分ではない状態であっても、バックライトからの光が透過して、表示の品位を低下させることはない。
【0062】
図4に示すように、カラーフィルタ202を覆ってオーバーコート膜203が形成され、オーバーコート膜203上には、TFT基板100側に突設するように、柱状形状のスペーサ204が形成されている。
【0063】
スペーサ204は、例えば、感放射線性の樹脂組成物を用い、フォトリソグラフィ方を利用したパターニングによって、対向基板200上に形成することができる。スペーサ204は、例えば、TFT基板100側の先端が平坦な円錐台を有することができる。後述するように、スペーサ204は、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0064】
そして、
図4に示すように、対向基板200上に設けられたスペーサ204は、その先端が、TFT基板100に配置されたスペーサ台座114と対向するように配置されている。
【0065】
対向基板200では、オーバーコート膜203およびスペーサ204を覆ってTFT基板と同様の配向膜113が形成されている。
尚、対向基板200において、配向膜113を形成するための配向剤を塗布すると、オーバーコート膜203の上は所定の膜厚の配向膜113が形成されるが、突設する柱状形状のスペーサ204の先端にはレベリング効果によって配向膜113は殆ど形成されないことがある。
【0066】
以上の構造を有する本発明の第1実施形態の液晶表示素子1は、液晶40を挟持する対向基板200の上にスペーサ204を設けるとともに、もう一方のTFT基板100上にそのスペーサ204を受けるためのスペーサ台座114を設けて構成される。そして、液晶表示素子1の使用時の押圧等により、液晶40を挟持するTFT基板100と対向基板200との間にずれが生じることを防止することができる。その結果、両基板間のずれによって生じる光漏れの発生を抑制し、表示品位の低下を抑えることができる。
【0067】
そして、本発明の第1実施形態の液晶表示素子1は、配向膜113の一部がスペーサ204とスペーサ台座114との間の挟み込まれる構造を有する。
【0068】
配向膜113は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料から構成される。そして、上述したように、スペーサ台座114は、例えば、ITO等の無機材料からなる。また、スペーサ204は、例えば、感放射線性の樹脂組成物を用いて形成された樹脂材料からなる。このようなスペーサ204とスペーサ台座114に挟み込まれた配向膜113は、従来は、長期間の液晶表示素子1の使用により、押圧や振動を受けて、削れを発生させることがあった。そして、液晶表示素子1中に、削れによる配向膜113の破片が発生することがあった。
【0069】
このような、配向膜113の削れは、スペーサ204を構成する樹脂材料の特性、特に、硬さに関する特性を調整して最適なものとすることによって低減が可能である。
【0070】
すなわち、スペーサ204の硬さを配向膜113と同様とすることができれば、押圧や振動等が加えられたとしても、配向膜113に加わる負荷が低減されて、配向膜113の削れを低減することができる。
【0071】
その場合、より簡便な方法として、配向膜113と同様の樹脂材料を用いてスペーサ204を構成することができれば、配向膜113とスペーサ204の硬さ特性をマッチさせることができ、配向膜113の削れを低減することができる。また、少なくとも、スペーサ204の構成成分に、配向膜113の構成成分と同様の成分を含有させることができれば、配向膜113の削れを低減することができる。
【0072】
本発明の第1実施形態の液晶表示素子1はスペーサ204の構成に、スペーサの構成材料として新規に採用された材料を使用する。本実施形態のスペーサ204は、後述する本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成される。すなわち、本発明の第1実施形態の液晶表示素子1の有するスペーサ204は、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成され、構成材料が新規であって、配向膜113の削れを低減し、液晶表示素子1における表示品位の低下を抑えることができる。
【0073】
次に、本発明の第1実施形態の液晶表示素子1のスペーサ204の形成に好適に用いることができる、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物について説明する。
【0074】
実施形態2.
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の第2実施形態である感放射線性樹脂組成物は、本発明の第1実施形態である液晶表示素子のスペーサの形成に好適に用いることができる。本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたスペーサは、例えば、基板から突設する柱状の形状を有することができる。すなわち、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて適当な基板上にその塗膜を形成し、感放射線性を利用したパターニングを行った後、硬化膜として、基板上に樹脂からなる柱状のスペーサを形成することができる。
【0075】
このとき、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、ポジ型およびネガ型のいずれの感放射線性も選択して備えることが可能である。
【0076】
本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、[B]重合性不飽和化合物、[C]感放射線性重合開始剤、並びに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種を含有してなる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物は感放射線性を有する。また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。
【0077】
以下、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0078】
[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体
本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体(以下、単に[A]重合体と言うことがある。)は、
(A1)カルボキシル基を有する構造単位(以下「構造単位(A1)」という。)、
(A2)架橋性基を有する構造単位(以下「構造単位(A2)」という。)および
(A3)下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(A3)」という。)を有する。[A]重合体は、(A4)上記(A1)〜(A3)以外の構造単位(以下「構造単位(A4)」という。)を有していてもよい。
【0079】
【化3】
(式(2)中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基およびフェニル基のうちのいずれかを示し、nは1〜6の整数を示す。)
【0080】
上記式(2)におけるR
2の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。また、上記式(2)におけるR
2の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等を;炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0081】
上記式(2)におけるR
3の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。また、上記式(2)におけるR
3の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等を;炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0082】
上記式(2)におけるR
4の炭素数1〜6のアルキル基は、直鎖状、分岐状および環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができる。また、上記式(2)におけるR
4の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基等を;炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基等を挙げることができる。
【0083】
上記式(2)におけるnは、2〜6の整数であることが好ましく、特には3または4であることが好ましい。
【0084】
構造単位(A2)は、架橋性基を有する構造単位である。架橋性基としては、オキセタニル基、オキシニル基および(メタ)アクリロイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有することが好ましい。すなわち、構造単位(A2)は、オキセタニル基、オキシニル基および(メタ)アクリロイル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種を有する構造単位である。
【0085】
上記構造単位(A1)は、(a1)不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物よりなる群から選択される少なくとも1種(以下、「化合物(a1)」という。)に由来する構造単位であることが好ましく;
上記構造単位(A2)は、(a2)オキシラニル基またはオキセタニル基を有する重合性不飽和化合物(以下、「化合物(a2)」という。)に由来する構造単位であることが好ましく;
上記構造単位(A3)は、(a3)下記式(a3)で表される化合物(以下、「化合物(a3)」という。)に由来する構造単位であることが好ましく;
【0086】
【化4】
(式(a3)中のR
1、R
2、R
3、R
4およびnは、それぞれ、上記式(2)におけるのと同じ意味である。)
上記構造単位(A4)は、(a4)上記(a1)〜(a3)以外の重合性不飽和化合物(以下、「化合物(a4)」という。)に由来する構造単位であることが好ましい。
【0087】
上記化合物(a1)としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物等を挙げることができる。上記モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等を;
上記ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等を;
上記ジカルボン酸の無水物としては、上記したジカルボン酸の無水物等を、それぞれ挙げることができる。これらのうち、共重合反応性、得られる共重合体の現像液に対する溶解性の点から、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸または無水マレイン酸が好ましい。
化合物(a1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0088】
上記化合物(a2)は、オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物およびオキセタニル基を有する重合性不飽和化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0089】
オキシラニル基を有する重合性不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、α−アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステル、重合性不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物等を;
オキセタニル基を有する重合性不飽和化合物として、例えば、オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等を、それぞれ挙げることができる。
【0090】
上記化合物(a2)について、それらの具体例としては、
(メタ)アクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−メチルグリシジル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシブチル、(メタ)アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.0
2.6]デシル(メタ)アクリレート、等を;
α−アルキルアクリル酸オキシラニル(シクロ)アルキルエステルとして、例えば、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル等を;
重合性不飽和結合を有するグリシジルエーテル化合物として、例えば、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル等を;
オキセタニル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、2−エチル−3−((メタ)アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロイルオキシメチルオキセタン等を、それぞれ挙げることができる。
【0091】
これら具体例のうち、特に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.0
2.6]デシルメタアクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.0
2.6]デシルアクリレート、3−メタクリロイルオキシメチル−3−エチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンまたは3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタンが、重合性の点から好ましい。
【0092】
上述した化合物(a2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0093】
[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させて得られる。反応後の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位は、下記式(3)で表される構造単位であることが望ましい。
【0095】
上記式(3)中、R
10およびR
11は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。cは、1〜6の整数である。R
12は、下記式(3−1)または下記式(3−2)で表される2価の基である。
【0097】
上記式(3−1)中、R
13は、水素原子またはメチル基である。上記式(3−1)および上記式(3−2)中、*は、酸素原子と結合する部位を示す。
【0098】
上記式(3)で表される構造単位について、例えば、カルボキシル基を有する共重合体に、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル等の化合物を反応させた場合、式(3)中のR
12は、式(3−1)となる。一方、カルボキシル基を有する共重合体に、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等の化合物を反応させた場合、式(3)中のR
12は、式(3−2)となる。
【0099】
上述した重合体中のカルボキシル基とエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和化合物との反応においては、必要に応じて適当な触媒の存在下において、好ましくは重合禁止剤を含む重合体の溶液に、エポキシ基を有する不飽和化合物を投入し、加温下で所定時間攪拌する。上記触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。上記重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール等が挙げられる。反応温度は、70℃〜100℃が好ましい。反応時間は、8時間〜12時間が好ましい。
【0100】
[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体における(A2)(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位の含有量は、[A]重合体全成分のうちの10モル%〜70モル%であることが好ましく、20モル%〜50モル%であることがより好ましい。
【0101】
(A2)(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構造単位の含有量が10モル%より少ない場合、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の放射線への感度が低下する傾向にあり、得られる硬化膜の耐熱性も十分でない。また、70モル%より多く含有する場合では、現像時の現像不良の原因となり、現像残渣が発生しやすくなる。
【0102】
上記化合物(a3)としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができる。
化合物(a3)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0103】
上記化合物(a4)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステル、含酸素複素5員環または含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、共役ジエン化合物およびその他の重合性不飽和化合物を挙げることができる。これらの具体例としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル等を;
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、(メタ)アクリル酸2−(トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸イソボロニル等を;
(メタ)アクリル酸アリールエステルとして、例えば、アクリル酸フェニル等を;
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル等を;
不飽和ジカルボン酸ジアルキルエステルとして、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル等を;
含酸素複素5員環または含酸素複素6員環を有する(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロピラン−2−イル、(メタ)アクリル酸2−メチルテトラヒドロピラン−2−イル等を;
ビニル芳香族化合物として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等を;
共役ジエン化合物として、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン等を;
その他の重合性不飽和化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を、それぞれ挙げることができる。
【0104】
以上で挙げた化合物(a4)のうち、共重合反応性の点から、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカン−8−イル、スチレン、p−メトキシスチレン、メタクリル酸テトラヒドロフラン−2−イル、1,3−ブタジエン等が好ましい。
【0105】
化合物(a4)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0106】
本実施形態における好ましい[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体は、上記のような化合物(a1)〜(a4)を、それぞれ、以下の割合で含む重合性不飽和化合物の混合物を共重合することにより、合成することができる。
【0107】
化合物(a1):好ましくは0.1モル%〜30モル%、より好ましくは1モル%〜20モル%、さらに好ましくは5モル%〜15モル%
化合物(a2):好ましくは1モル%〜95モル%、より好ましくは10モル%〜60モル%、さらに好ましくは20モル%〜30モル%
化合物(a3):好ましくは50モル%以下、より好ましくは1モル%〜40モル%、さらに好ましくは10モル%〜30モル%
化合物(a4):好ましくは80モル%以下、より好ましくは1モル%〜60モル%、さらに好ましくは25モル%〜50モル%
の範囲で使用することが好ましい。
【0108】
本発明の感放射線性樹脂組成物は、各化合物を上記の範囲で含有する重合性不飽和化合物の混合物を共重合して得られた[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体を含有することにより、良好な塗布性および高い弾性回復力が損なわれることなく高い解像度が達成されるから、小さいサイズのパターンであっても特性のバランスが高度に調整された硬化膜を与えることができることとなり、好ましい。
【0109】
[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、好ましくは2000〜100000であり、より好ましくは5000〜50000である。この範囲のMwを有する[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体を使用することにより、良好な塗布性および高い弾性回復力が損なわれることなく高い解像度が達成されるから、小さいサイズのパターンであっても特性のバランスが高度に調整された硬化膜を与えることができることとなる。
【0110】
本発明における[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体は、上記のような重合性不飽和化合物の混合物を、好ましくは適当な溶媒中において、好ましくはラジカル重合開始剤の存在下で重合することにより製造することができる。
【0111】
上記重合に用いられる溶媒としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸3−メトキシブチル、シクロヘキサノールアセテート、ベンジルアルコール、3−メトキシブタノール等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0112】
上記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4―シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0113】
[B]重合性不飽和化合物
本発明における[B]重合性不飽和化合物は、後述する[C]感放射線性重合開始剤の存在下において放射線を照射することにより重合する不飽和化合物である。このような[B]重合性不飽和化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルが、重合性が良好であり、且つ形成されるスペーサの強度が向上する点から好ましい。
【0114】
上記単官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)(2−ヒドロキシプロピル)フタレート、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックス(登録商標)M−101、同M−111、同M−114、同M−5300(以上、東亞合成(株)製);KAYARAD(登録商標)TC−110S、同TC−120S(以上、日本化薬(株)製);ビスコート158、同2311(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0115】
上記2官能(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの市販品としては、商品名で、例えば、アロニックス(登録商標)M−210、同M−240、同M−6200(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)HDDA、同HX−220、同R−604(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)、ライトアクリレート1,9−NDA(共栄社化学(株)製等を挙げることができる。
【0116】
上記3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとの混合物;エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートおよびイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合物;
直鎖アルキレン基および脂環式構造を有し且つ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有し且つ3個、4個または5個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物とを反応させて得られる多官能ウレタンアクリレート系化合物等を挙げることができる。
【0117】
上述した3官能以上の(メタ)アクリル酸エステルの市販品としては、商品名で、例えばアロニックス(登録商標)M−309、同M−400、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同TO−1450(以上、東亞合成(株)製)、KAYARAD(登録商標)TMPTA、同DPHA、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DPEA−12(以上、日本化薬(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400(以上、大阪有機化学工業(株)製)や、多官能ウレタンアクリレート系化合物を含有する市販品として、ニューフロンティア(登録商標)R−1150(第一工業製薬(株)製)、KAYARAD(登録商標)DPHA−40H(日本化薬(株)製)等を挙げることができる。
【0118】
これらのうち、特に、ω―カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物;
トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレートとトリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレートとの混合物;
エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、多官能ウレタンアクリレート系化合物、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレートを含有する市販品等が好ましい。
【0119】
上記のような[B]重合性不飽和化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0120】
本発明の感放射線性樹脂組成物における[B]重合性不飽和化合物の使用割合は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは30質量部〜250質量部であり、さらに好ましくは50質量部〜200質量部である。[B]重合性不飽和単量体の使用割合を上記の範囲とすることにより、現像残差の問題を生じることなく、弾性回復率に優れる硬化膜を、高い解像度で形成することができることとなり、好ましい。
【0121】
[C]感放射線性重合開始剤
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[B]重合性不飽和化合物とともに[C]感放射線性重合開始剤を含有する。[C]感放射線性重合開始剤は、例えば、[C]光ラジカル重合開始剤である。[C]光ラジカル重合開始剤は、放射線に感応して[B]重合性不飽和化合物の重合を開始し得る活性種を生じる成分である。このような[C]光ラジカル重合開始剤としては、オキシムエステル系開始剤、アセトフェノン系開始剤、ビイミダゾール系開始剤等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0122】
上述したオキシムエステル系開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−〔9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0123】
これらのうち、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)またはエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
【0124】
上述したアセトフェノン系開始剤としては、例えば、α−アミノケトン系開始剤、α−ヒドロキシケトン系開始剤が挙げられる。
【0125】
上記α−アミノケトン系開始剤としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
【0126】
上記α−ヒドロキシケトン系開始剤としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0127】
上記アセトフェノン系開始剤としては、α−アミノケトン系開始剤が好ましく、特に、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましい。
【0128】
ビイミダゾール系開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールまたは2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、そのうち、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
【0129】
[C]光ラジカル重合開始剤は、上述したように、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0130】
[C]感放射線性重合開始剤が[C]光ラジカル重合開始剤である場合、その含有量は、[A]重合体100質量部に対して、1質量部〜40質量部が好ましく、5質量部〜30質量部がより好ましい。[C]光ラジカル重合開始剤の含有量を1質量部〜40質量部とすることで、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、低露光量であっても、高い耐溶媒性、高い硬度および高い密着性を有するスペーサを形成できる。
【0131】
[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体
本実施形態に用いられるポリイミドおよびポリイミド前駆体として好ましい樹脂は、重合体の構成単位中にカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するポリイミド樹脂である。構成単位中にこれらのアルカリ可溶性の基を有することでアルカリ現像性(アルカリ可溶性)を備え、アルカリ現像時に露光部のスカム発現を抑えることができる。
【0132】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に用いられるポリイミドおよびポリイミド前駆体として好ましい樹脂は、例えば、酸成分とアミン成分とを縮合して得られるポリイミド樹脂である。酸成分としてはテトラカルボン酸二無水物を選択することが好ましく、アミン成分には、ジアミンを選択することが好ましい。
【0133】
ポリイミドおよびポリイミド前駆体として好ましい構造は、特に限定されるものではないが、下記式(I−1)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0135】
上記式(I−1)中、R
21は4価〜14価の有機基、R
22は2価〜12価の有機基を表す。
R
23およびR
24は、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を示し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。aおよびbは0〜10の整数を表す。
【0136】
上記式(I−1)中、R
21は、ポリイミド樹脂の形成に用いられたテトラカルボン酸二無水物の残基を表しており、4価〜14価の有機基である。中でも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0137】
ポリイミド樹脂の形成に用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9−ビス{4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル}フルオレン二無水物または下記に示した構造の酸二無水物等が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0139】
上記に示した構造の酸二無水物において、R
25は酸素原子、C(CF
3)
2、C(CH
3)
2またはSO
2を示す。R
26およびR
27は水素原子、水酸基またはチオール基を示す。
【0140】
上記式(I−1)において、R
22は、ポリイミド樹脂の形成に用いられたジアミンの残基を表しており、2価〜12価の有機基である。中でも芳香族環または環状脂肪族基を含有する炭素原子数5〜40の有機基が好ましい。
【0141】
ポリイミド樹脂の形成に用いられるジアミンの具体的な例としては、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルヒド、3,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、4,4’−ジアミノジフェニルスルヒド、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンまたは下記に示した構造のジアミン等が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0143】
上記に示した構造のジアミンにおいて、R
35は酸素原子、C(CF
3)
2、C(CH
3)
2またはSO
2を示す。R
36〜R
39は水素原子、水酸基またはチオール基を示す。
【0144】
また、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成し、その後に形成される硬化膜と基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲で、R
21またはR
22にシロキサン構造を有する脂肪族の基を共重合してもよい。具体的には、アミン成分であるジアミンとして、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサン等を1モル%〜10モル%共重合したもの等が挙げられる。
【0145】
上記式(I−1)において、R
23およびR
24はカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基またはチオール基を示す。aおよびbは0〜10の整数を示す。得られる感放射線性樹脂組成物の安定性からは、aおよびbは0が好ましいが、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、aおよびbは1以上が好ましい。
【0146】
このR
23およびR
24のアルカリ可溶性基の量を調整することで、アルカリ水溶液に対する溶解速度が変化するので、この調整により適度な溶解速度を有した感放射線性樹脂組成物を得ることができる。
【0147】
上記R
23およびR
24がいずれもフェノール性水酸基である場合、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液に対する溶解速度をより適切な範囲とするためには、(a)ポリイミド樹脂がフェノール性水酸基量を(a)1kg中2モル〜4モル含有することが好ましい。フェノール性水酸基量をこの範囲とすることで、より高感度および高コントラストの感放射線性樹脂組成物が得られる。
【0148】
また、上記式(I−1)で表される構成単位を有するポリイミドは、主鎖末端にアルカリ可溶性基を有することが好ましい。このようなポリイミドは高いアルカリ可溶性を有する。アルカリ可溶性基の具体例としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基およびチオール基等が挙げられる。主鎖末端へのアルカリ可溶性基の導入は、末端封止剤にアルカリ可溶性基を持たせることにより行うことができる。末端封止剤は、モノアミン、酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物等を用いることができる。
【0149】
末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、5−アミノ−8−ヒドロキシキノリン、1−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−ヒドロキシ−4−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−7−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−6−アミノナフタレン、2−ヒドロキシ−5−アミノナフタレン、1−カルボキシ−7−アミノナフタレン、1−カルボキシ−6−アミノナフタレン、1−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−カルボキシ−7−アミノナフタレン、2−カルボキシ−6−アミノナフタレン、2−カルボキシ−5−アミノナフタレン、2−アミノ安息香酸、3−アミノ安息香酸、4−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸、5−アミノサリチル酸、6−アミノサリチル酸、2−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノ−4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、2−アミノチオフェノール、3−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0150】
末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物としては、無水フタル酸、無水マレイン酸、ナジック酸無水物、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、3−ヒドロキシフタル酸無水物等の酸無水物、3−カルボキシフェノール、4−カルボキシフェノール、3−カルボキシチオフェノール、4−カルボキシチオフェノール、1−ヒドロキシ−7−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−6−カルボキシナフタレン、1−ヒドロキシ−5−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−7−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−6−カルボキシナフタレン、1−メルカプト−5−カルボキシナフタレン、3−カルボキシベンゼンスルホン酸、4−カルボキシベンゼンスルホン酸等のモノカルボン酸類およびこれらのカルボキシル基が酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、1,5−ジカルボキシナフタレン、1,6−ジカルボキシナフタレン、1,7−ジカルボキシナフタレン、2,6−ジカルボキシナフタレン等のジカルボン酸類の一方のカルボキシル基だけが酸クロリド化したモノ酸クロリド化合物、モノ酸クロリド化合物とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールやN−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドとの反応により得られる活性エステル化合物等が好ましい。これらを2種以上用いてもよい。
【0151】
末端封止剤に用いられるモノアミンの導入割合は、全アミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。末端封止剤として用いられる酸無水物、モノカルボン酸、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物の導入割合は、ジアミン成分に対して、好ましくは0.1モル%以上、特に好ましくは5モル%以上であり、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは90モル%以下である。複数の末端封止剤を反応させることにより、複数の異なる末端基を導入してもよい。
【0152】
上記式(I−1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂において、構成単位の繰り返し数は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、また200以下が好ましく、100以下がより好ましい。この範囲であれば本実施形態の感光性樹脂組成物を厚膜で使用することが可能になる。
【0153】
本実施形態において、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体として好ましいポリイミド樹脂は、上記式(I−1)で表される構成単位のみからなるものであってもよいし、他の構成単位との共重合体あるいは混合体であってもよい。その際、一般式(I−1)で表される構成単位をポリイミド樹脂全体の10質量%以上含有することが好ましい。10質量%以上であれば、熱硬化時の収縮を抑えることができ、厚膜の硬化膜の作製に好適である。共重合あるいは混合に用いられる構成単位の種類および量は、最終加熱処理によって得られるポリイミド樹脂の耐熱性を損なわない範囲で選択することが好ましい。例えば、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの構成単位はポリイミド樹脂中70質量%以下が好ましい。
【0154】
本実施形態において、好ましいポリイミドは、例えば、公知の方法を用いてポリイミド前駆体を得、これを公知のイミド化反応法を用いてイミド化させる方法を利用して合成することができる。ポリイミド前駆体の公知の合成法としては、ジアミンの一部を末端封止剤であるモノアミンに置き換えて、または、酸二無水物の一部を末端封止剤であるモノカルボン酸、酸無水物、モノ酸クロリド化合物、モノ活性エステル化合物に置き換えて、アミン成分と酸成分を反応させることで得られる。例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン(一部をモノアミンに置換)を反応させる方法、低温中でテトラカルボン酸二無水物(一部を酸無水物、モノ酸クロリド化合物またはモノ活性エステル化合物に置換)とジアミンを反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン(一部をモノアミンに置換)と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン(一部をモノアミンに置換)と反応させる方法等がある。
【0155】
また、本実施形態のポリイミドのイミド化率は、例えば、以下の方法で容易に求めることができる。まず、ポリマーの赤外吸収スペクトルを測定し、ポリイミドに起因するイミド構造の吸収ピーク(1780cm
−1付近、1377cm
−1付近)の存在を確認する。次に、そのポリマーを350℃で1時間熱処理し、赤外吸収スペクトルを測定し、1377cm
−1付近のピーク強度を比較することによって、熱処理前ポリマー中のイミド基の含量を算出し、イミド化率を求める。
【0156】
本実施形態においてポリイミドのイミド化率は、耐薬品性、高収縮残膜率の点から80%以上であることが好ましい。
【0157】
また、本実施形態において好ましいポリイミドに導入された末端封止剤は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端封止剤が導入されたポリイミドを、酸性溶液に溶解し、ポリイミド樹脂の構成単位であるアミン成分と酸無水物成分に分解し、これをガスクロマトグラフィ(GC)や、NMR測定することにより、ポリイミド樹脂の形成に用いられた末端封止剤を容易に検出できる。これとは別に、末端封止剤が導入されたポリマー成分を直接、熱分解ガスクロクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトルおよび13C−NMRスペクトルで測定することによっても、容易に検出可能である。
【0158】
(その他の任意成分)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、[B]重合性不飽和化合物、[C]感放射線性重合開始剤、並びに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種に加え、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、その他の任意成分を含有できる。ここで使用可能なその他の成分としては、例えば、[E]接着助剤、[F]界面活性剤、[G]重合禁止剤等を挙げることができる。その他の任意成分は、2種以上を混合して使用してもよい。以下、各任意成分について記載する。
【0159】
[E]接着助剤
上記[E]接着助剤は、形成される硬化膜と基板との接着性をさらに向上するために使用することができる。このような[E]接着助剤としては、上記化合物(a3)と同じものを使用することができるほか、トリメトキシシリル安息香酸、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等等を使用することができる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物における[E]接着助剤の使用割合は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは1質量部〜10質量部である。[E]接着助剤の含有割合を上記の範囲とすることにより、形成される硬化膜と基板との密着性が効果的に改善される。
【0160】
[F]界面活性剤
上記[F]界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を挙げることができる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物における[F]界面活性剤の使用割合は、[A]重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部〜0.6質量部である。
【0161】
[G]重合禁止剤
上記[G]重合禁止剤は、露光若しくは加熱によって発生したラジカルを捕捉し、または酸化によって生成した過酸化物を分解することにより、[A]重合体の分子の開裂を抑制する成分である。本実施形態の感放射線性樹脂組成物が[F]重合禁止剤を含有することにより、形成される硬化膜中の重合体分子の解裂劣化が抑制されるから、硬化膜の例えば耐光性等を向上させることができる。
【0162】
このような[G]重合禁止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、アルキルホスファイト化合物、チオエーテル化合物等を挙げることができるが、これらのうちのヒンダードフェノール化合物を好ましく使用することができる。
【0163】
上記ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、3,3’,3’,5’,5’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリル)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等を挙げることができる。
【0164】
これらの市販品としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)AO−20、同AO−30、同AO−40、同AO−50、同AO−60、同AO−70、同AO−80、同AO−330(以上、(株)ADEKA製)、sumilizer(登録商標)GM、同GS、同MDP−S、同BBM−S、同WX−R、同GA−80(以上、住友化学(株)製)、IRGANOX(登録商標)1010、同1035、同1076、同1098、同1135、同1330、同1726、同1425WL、同1520L、同245、同259、同3114、同565、IRGAMOD295(以上、BASF社製)、ヨシノックス(登録商標)BHT、同BB、同2246G、同425、同250、同930、同SS、同TT、同917、同314(以上、(株)エーピーアイコーポレーション製)等を挙げることができる。
【0165】
本実施形態における[G]重合禁止剤としては、上記のうちのペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]およびトリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトよりなる群から選択される1種以上を使用することが好ましい。
【0166】
[G]重合禁止剤の含有割合は、[A]重合体100質量部に対して、10質量部以下とすることが好ましく、0.1質量部〜5質量部とすることがより好ましい。この範囲の含有割合とすることにより、本発明の多の効果を阻害することなく、硬化膜の開裂劣化を効果的に抑制することができることとなる
【0167】
(感放射線性樹脂組成物の調製)
次に、本発明の感放射線性樹脂組成物の調製について説明する。
【0168】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、[B]重合性不飽和化合物、[C]感放射線性重合開始剤、並びに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種に加え、必要に応じて、界面活性剤等のその他の任意成分を混合して調製される。このとき、液状の感放射線性樹脂組成物を調製するため、有機溶剤を用いることができる。有機溶剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用できる。
【0169】
有機溶剤の機能としては、感放射線性樹脂組成物の粘度等を調節して、例えば、基板等への塗布性を向上させることのほか、操作性、成形性を向上させること等が挙げられる。有機溶剤等の含有によって実現される感放射線性樹脂組成物の粘度としては、例えば、0.1mPa・s〜50000mPa・s(25℃)が好ましく、より好ましくは、0.5mPa・s〜10000mPa・s(25℃)である。
【0170】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に使用可能な有機溶剤としては、他の含有成分を溶解または分散させるとともに、他の含有成分と反応しないものを挙げることができる。
【0171】
例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート等のエステル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0172】
本実施形態の感放射線性樹脂組成物において用いられる有機溶剤の含有量は、粘度等を考慮して適宜決めることができる。
【0173】
次に、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いたスペーサの形成について説明する。
【0174】
(スペーサの形成)
本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いたスペーサの形成においては、下記の工程[1]〜工程[4]をこの順で含むことが好ましい。
【0175】
[1] [A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、[B]重合性不飽和化合物、[C]感放射線性重合開始剤、並びに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種を含有する本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を、基板上に形成する工程(以下、「工程[1]」と言うことがある。)。尚、本工程の基板には、カラーフィルタやオーバーコートのほか、TFT等のアクティブ素子や電極や配線やパッシベーション膜等が形成されていてもよい。
【0176】
[2] 工程[1]で形成された感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「工程[2]」と言うことがある。)。
[3] 工程[2]で放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「工程[3]」と言うことがある。)。
[4] 工程[3]で現像された塗膜を加熱する工程(以下、「工程[4]」と言うことがある。)。
【0177】
工程[1]〜工程[4]によれば、樹脂からなる所定形状のパターンが形成され、基板上に所望とする組成の樹脂からなるスペーサを形成することができる。例えば、液晶表示素子を構成する、カラーフィルタやオーバーコートの形成された対向基板上に柱状形状のスペーサを形成することができる。
【0178】
以下、上述の工程[1]〜工程[4]についてより詳細に説明する。
【0179】
[工程[1]]
本工程では、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する。この基板において、一方の面に本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を塗布した後、プレベークを行って有機溶媒等の溶媒を蒸発させ、塗膜を形成する。
【0180】
基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラスおよび無アルカリガラス等のガラス基板、シリコン基板、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミドおよびポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。また、これらの基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の前処理を施しておくこともできる。
【0181】
感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法またはスピンナ法と称されることもある。)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法)、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用できる。これらのうち、均一な厚みの膜を形成できる点から、スピンコート法またはスリット塗布法が好ましい。
【0182】
上述のプレベークの条件は、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分の種類、配合割合等によって異なるが、70℃〜120℃の温度で行うのが好ましく、時間は、ホットプレートやオーブン等の加熱装置によって異なるが、おおよそ1分間〜10分間程度とすることができる。
【0183】
[工程[2]]
次いで、本工程では、工程[1]で形成された基板上の塗膜の少なくとも一部に、放射線を照射する。この場合、塗膜の一部に放射線を照射する際には、所定のマスクパターンを有するフォトマスクを介して行うことが好ましい。例えば、スペーサ形成用のマスクパターンを有するフォトマスクを介し、放射線照射を行うことが好ましい。
【0184】
放射線の照射に使用される放射線としては、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を使用できる。これらの放射線の中でも、波長が190nm〜450nmの範囲にある放射線が好ましく、特に365nmの紫外線を含む放射線が好ましい。
【0185】
工程[2]における放射線の照射量は、放射線の波長365nmにおける強度を、照度計(OAI model356、OAI Optical Associates Inc.製)により測定した値として、好ましくは100J/m
2〜10000J/m
2、より好ましくは500J/m
2〜6000J/m
2である。
【0186】
[工程[3]]
次いで、本工程では、工程[2]で得られた放射線照射後の塗膜を現像することにより、不要な部分を除去して、硬化膜として、所定のスペーサのパターンを形成する。使用する感放射線性樹脂組成物の塗膜がネガ型の場合は、放射線の非照射部分が不要部分となる。また、使用する感放射線性樹脂組成物の塗膜がポジ型の場合は、放射線の照射部分が不要部分となる。
【0187】
工程[3]の現像工程に使用される現像液としては、アルカリ(塩基性化合物)の水溶液からなるアルカリ現像液の使用が好ましい。アルカリの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア等の無機アルカリ;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0188】
また、このようなアルカリ現像液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。アルカリ現像液におけるアルカリの濃度は、適当な現像性を得る観点から、好ましくは0.1質量%〜5質量%とすることができる。現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法、シャワー法等の適宜の方法を利用することができる。現像時間は、感放射線性樹脂組成物の組成によって異なるが、好ましくは10秒間〜180秒間程度である。このような現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、例えば、圧縮空気や圧縮窒素で風乾させることによって、所望のスペーサのパターンを形成することができる。
【0189】
[工程[4]]
次いで、本工程では、工程[3]で得られた基板上のパターン状の塗膜を、ホットプレートやオーブン等の適当な加熱装置により加熱して、硬化膜としてスペーサを形成する。加熱温度としては、150℃〜350℃が好ましい。150℃以上の加熱温度とすることで塗膜の十分な硬化が可能となる。また、350℃以下とすることで、基板上にカラーフィルタが形成されていたとしても、その熱劣化を防止することができる。以上のような点から、加熱温度としては、150℃〜300℃がより好ましい。硬化時間としては、例えば、ホットプレート上では5分間〜30分間、オーブン中では30分間〜180分間が好ましい。加熱後の塗膜の膜厚、すなわち、スペーサの高さは、適用される液晶表示素子の液晶の厚み(セルギャップ)に対応し、1μm〜10μm程度の範囲内で、所望の値が設定される。
【0190】
以上のように、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物は、本発明の第1実施形態の液晶表示素子のスペーサの形成に好適に用いることができる。そして、[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体、[B]重合性不飽和化合物、[C]感放射線性重合開始剤を含有するとともに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種を含有して構成される。
【0191】
上述したように、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の配向膜は、例えば、ポリイミドを用いて形成される。したがって、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された柱状のスペーサは、その構成成分に、配向膜の構成成分と同様の成分を含有する。すなわち、本発明の第1実施形態の液晶表示素子のスペーサは、配向膜と同様の樹脂材料を用いて構成される。したがって、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成された柱状のスペーサを有する本発明の第1実施形態の液晶表示素子は、スペーサとスペーサ台座との間に挟み込まれた配向膜の削れを低減することができる。
【0192】
また、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体とともに、[D]ポリイミドおよびポリイミド前駆体のうちから選ばれる少なくとも1種を含有して構成される。したがって、現像工程後の加熱工程において、相分離現象の発現が期待できる。その結果、本発明の第2実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたスペーサでは、その表層部分において、ポリイミドの偏在が期待される。その結果、本発明の第1実施形態の液晶表示素子においては、スペーサ台座との間で配向膜を挟み込むスペーサの先端が、偏在するポリイミドによって形成されることになる。したがって、本発明の第1実施形態の液晶表示素子のスペーサが、配向膜と同様の樹脂材料を用いて構成されて、スペーサとスペーサ台座との間に挟み込まれた配向膜の削れを低減することができる。
【0193】
次に、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の構成に好適に用いられ、スペーサとスペーサ台座との間に挟み込まれることになる配向膜について説明する。特に、その配向膜を形成するための配向剤について説明する。
【0194】
実施形態3.
<配向膜および配向剤>
本発明の第3実施形態の配向剤は、光配向性基を有する感放射線性重合体、または光配向性基を有さないポリイミドを主要な成分として含有する液晶配向剤である。これらはいずれも、例えば、200℃以下など、低温の加熱温度で配向膜を形成することが可能である。特に、光配向性基を有する感放射線性重合体を含有する配向剤が、より低温での配向膜形成が可能であって好ましい。このように本実施形態の配向剤は、低温の加熱工程による配向膜の形成が可能であるため、下層にある低温硬化による絶縁膜を高温加熱の状態に晒すことなく配向膜の形成を行うことができる。
【0195】
尚、本実施形態の配向膜を形成する、本実施の形態の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限りその他の成分を含有することができる。以下、本実施形態の配向剤の成分について説明する。
【0196】
本実施形態の配向剤の成分である上述の光配向性基を有する感放射線性重合体は、光配向性基を有する重合体である。この感放射線性重合体が有する光配向性基は、光照射により膜に異方性を付与する官能基であり、本実施の形態では、特に、光異性化反応および光二量化反応の少なくともいずれかを生じることにより膜に異方性を与える基である。
【0197】
光配向性基として具体的には、アゾベンゼン、スチルベン、α−イミノ−β−ケトエステル、スピロピラン、スピロオキサジン、桂皮酸、カルコン、スチルバゾール、ベンジリデンフタルイミジン、クマリン、ジフェニルアセリレンおよびアントラセンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物由来の構造を有する基である。上述の光配向性基としては、これらの中でも、桂皮酸由来の構造を有する基が特に好ましい。
【0198】
光配向性基を有する感放射線性重合体としては、上述の光配向性基が直接または連結基を介して結合された重合体であるのが好ましい。そのような重合体としては、例えば、ポリアミック酸およびポリイミドの少なくともいずれかの重合体に上述の光配向性基が結合したもの、ポリアミック酸およびポリイミドとは別の重合体に上述の光配向性基が結合したものが挙げられる。後者の場合、光配向性基を有する重合体の基本骨格としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン、ポリオルガノシロキサン等を挙げることができる。
【0199】
上述の感放射線性重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミドまたはポリオルガノシロキサンを基本骨格とするものが好ましい。また、これらの中でも、ポリオルガノシロキサンが特に好ましく、例えば、国際公開(WO)第2009/025386号に記載された方法により得ることができる。
【0200】
本実施形態の配向剤に含有されるポリイミドは、光配向性基を有さないポリイミドである。
このような光配向性基を有さないポリイミドは、光配向性基を有さないポリアミック酸を脱水閉環してイミド化することにより得ることができる。このようなポリアミック酸は、例えば、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることにより得ることができ、特開2010−97188号公報に記載されるようにして得ることができる。
【0201】
上述のポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有していたアミック酸構造のすべてを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造が併存する部分イミド化物であってもよい。ポリイミドは、そのイミド化率が30%以上であることが好ましく、50%〜99%であることがより好ましく、65%〜99%であることがより好ましい。このイミド化率は、ポリイミドのアミック酸構造の数とイミド環構造の数との合計に対するイミド環構造の数の占める割合を百分率で表したものである。ここで、イミド環の一部がイソイミド環であってもよく、例えば、特開2010−97188号公報に記載されるようにして得ることができる。
【0202】
上記配向剤のうち、本発明の第1実施形態の液晶表示素子の構成に好適に用いられる配向膜は、本発明の第3実施形態の配向剤を用いて形成される。本発明の第1実施形態の液晶表示素子の配向膜は、液晶の配向制御のため、光による配向処理がなされた光配向膜であることが好ましい。
【0203】
本発明の第1実施形態の液晶表示素子は、上述したように、例えば、柱状形状を有して対向基板から突設するスペーサを有している。したがって、液晶配向のための配向膜の配向処理は、従来法である、布で配向膜表面を擦るラビング法の適用が難しい。したがって、液晶を挟持する基板の表面に凹凸があっても配向処理を十分に行うことができる光配向処理の適用が好ましい。
【0204】
そのため、本発明の第3実施形態の配向剤は、下記式(1)で示される構造を含むポリイミド前駆体およびそのポリイミド前駆体を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択された少なくとも1種の重合体を含有して構成される。
【0205】
【化10】
(式(1)中、Arは2価の芳香族基を示し、Rは炭素数1〜8のアルキル基を示し、X
1〜X
4はそれぞれ独立に、水素または炭素数1〜3のアルキル基を示す。)
【0206】
本発明の第3実施形態の配向剤は、ポリイミド前駆体およびそのポリイミド前駆体を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種の重合体を含有することで、液晶に対して優れた配向制御性能を示す光配向膜を提供することができる。
【0207】
すなわち、本発明の第3実施形態の配向剤を用い、その配向剤の塗膜の形成工程およびその塗膜の加熱工程等を経て形成された配向膜は、上記式(1)で示される構造の重合体を前駆体とするポリイミドを含んで構成される。上記式(1)で示される構造の重合体を前駆体とするポリイミドはシクロブタン構造を含有して光反応性に富む。そして、そのポリイミドを含む配向膜は、光を用いた配向処理によって、液晶に対して優れた配向制御性能を示すことができる。
【実施例】
【0208】
以下、実施例に基づき本発明の実施形態を詳述するが、この実施例によって本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0209】
[合成例1]
<[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体([A]重合体)の合成>
冷却管および撹拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル4質量部およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート190質量部を仕込み、引き続きメタクリル酸55質量部、メタクリル酸ベンジル45質量部、並びに分子量調節剤としてのα−メチルスチレンダイマー2質量部を仕込み、緩やかに攪拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇し、この温度を4時間保持した後、100℃に上昇させ、この温度を1時間保持して重合することにより共重合体を含有する溶液を得た。次いで、この共重合体を含む溶液に、テトラブチルアンモニウムブロミド1.1質量部、重合禁止剤としての4−メトキシフェノール0.05質量部を加え、空気雰囲気下90℃で30分間攪拌後、メタクリル酸グリシジル74質量部を入れて90℃のまま10時間反応させることにより、重合体(A−1)を得た(固形分濃度=35.0%)。重合体(A−1)の重量平均分子量Mwは、9000であった。
【0210】
[合成例2]
<[A]カルボキシル基を有する構造単位を含む重合体([A]重合体)の合成>
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル5質量部および酢酸3−メトキシブチル250質量部を仕込み、さらにメタクリル酸18質量部、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.0
2.6]デカン−8−イル25質量部、スチレン5部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン20質量部およびメタクリル酸グリシジル32質量部を仕込んで窒素置換した後、緩やかに撹拌しつつ、溶液の温度を80℃に上昇した。この温度を5時間保持して重合することにより重合体(A−2)を28.8質量%含有する溶液を得た。この重合体(A−2)のMwは12000であった。
【0211】
[合成例3]
<ポリイミドの合成>
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物(1.0モル)、ジアミン化合物としてN−メチル−4,4’−ジアミノジフェニルアミン(0.5モル)および3,5−ジアミノ安息香酸(0.5モル)を、NMP800gに溶解させ、60℃で6時間反応させた。
得られたポリアミック酸溶液を小量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%の溶液で粘度を測定したところ、60mPa・sであった。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1800gを追加し、ピリジン80gおよび無水酢酸100gを添加し110℃で4時間脱水閉環させた。イミド化反応後、系内の溶剤を新たなNMPで溶剤置換し(本操作にてイミド化反応に使用したピリジン、無水酢酸を系外に除去した)、イミド化率約80%のポリイミド(D−1)を約15重量%含有する溶液を得た。
【0212】
[実施例1]
<感放射線性樹脂組成物の調製>
[A]重合体として上記合成例1で得られた重合体(A−1)を含有する溶液を固形分換算で100質量部、[B]重合性不飽和化合物として下記の(B−1)100質量部、[C]光ラジカル重合開始剤として下記の(C−1)10質量部、(C−4)5質量部、ポリイミド(D−1)5質量部を混合し、固形分濃度が30質量%となるように溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加えた後、孔径0.5μmのミリポアフィルタでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物を調製した。
【0213】
[実施例2および比較例1]
[A]成分〜[D]成分として表1に記載した種類および量のものを使用したほかは上記実施例1と同様に実施して、感放射線性樹脂組成物をそれぞれ得た。比較例1の感放射線性樹脂組成物は、[D]成分のポリイミドを含有していない。
【0214】
実施例および比較例で用いた各成分の詳細を以下に示す。
【0215】
[B]重合性不飽和化合物
B−1:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(KAYARAD(登録商標) DPHA、日本化薬(株)製)
B−2:イソシアヌル酸EO変性ジアクリレートおよびイソシアヌル酸EO変性トリアクリレートとの混合物(アロニックス(登録商標)M−313東亞合成(株)製)
【0216】
[C]感放射線性重合開始剤
C−1:1,2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](イルガキュア(登録商標)OXE01、BASF社製)
C−2:エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(イルガキュア(登録商標)OXE02、BASF社製)
【0217】
【表1】
【0218】
[実施例3]
<配向剤の調製と配向膜の形成>
光配向性基を有する感放射線性重合体を含む配向剤として、国際公開(WO)2009/025386号パンフレットの実施例6に記載の液晶配向剤A−1をスピンナにより各種基板上に塗布する。次いで、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、内部を窒素置換したオーブン中、180℃で1時間加熱して膜厚80nmの塗膜を形成した。次いで、この塗膜表面に、Hg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/m
2を、基板表面に垂直な方向に対して40°傾いた方向から照射し、光配向膜を有する各種基板を製造した。
【0219】
[実施例4]
<液晶表示素子の製造と評価>
本実施例の液晶表示素子は、アクティブマトリクス方式のFFSモード液晶表示素子である。本実施例の液晶表示素子は、
図1〜
図4を用いて説明した本発明の第1実施形態の液晶表示素子1と同様の構造を有する。
【0220】
本実施例の液晶表示素子は、TFTの形成されたTFT基板を製造し、カラーフィルタの形成された対向基板を製造し、その後、TFT基板と対向基板とを張り合わせて液晶を封入することにより製造した。
【0221】
まず、公知の方法および特許文献1に記載の方法に従いTFT基板を製造した。すなわち、厚さ0.7mmのガラス基板上に、ITOによる共通電極、共通電極にオーバーラップするクロム(Cr)による共通化配線および走査信号線を順次形成し、次いで、走査信号線および共通電極を覆う窒化シリコンからなるゲート絶縁膜を形成した後、走査信号線上にTFTを形成した。
【0222】
次に、パッシベーション膜を形成後、所定の領域に、エッチングによってパッシベーション膜を貫通するスルーホールを形成した後、パッシベーション膜上にITOからなる共通電極とスペーサ台座を形成した。
【0223】
次に、実施例3で調製した配向剤を塗布して配向膜を形成し、光照射による光配向処理を行った。そして、TFT基板を製造した。
【0224】
次に、公知の方法および特許文献1に従い対向基板を製造した。対向基板にはスペーサが形成されており、その形成は、上述した実施例1,実施例2で調整したスペーサ形成用感放射線性組成物によって形成した。オーバーコート膜の上に形成されたスペーサはテーパ形状を有し、その高さは、約4.2μmであった。尚、対向基板の配向膜は、実施例3で調製した配向剤を塗布して形成し、光照射による光配向処理を行った。
【0225】
次に、製造されたTFT基板と対向基板とを張り合わせて液晶を封入した。すなわち、対向基板の表示領域の外周部に環状のシール材を塗布し、シール材で囲まれた領域に液晶を滴下した後、TFT基板との張り合わせを行った。液晶は、誘電異方性Δεが正で、屈折率異方性Δnが0.075のネマティック液晶組成物を用いた。液晶の厚み(セルギャップ)はスペーサの高さとほぼ同じ4.2μmであった。
【0226】
次に、一対の偏光板を用い張り合わせた。そして、第1の駆動回路、第2の駆動回路、制御回路、バックライト等を接続してモジュール化し、液晶表示素子を製造した。
【0227】
次に、製造された本実施例の液晶表示素子を用い、振動試験を行った。振動試験は、液晶表示素子を振動試験装置に固定した状態で、その振動試験装置を液晶表示素子の面外方向に動かして液晶表示素子を振動させて行った。具体的には、振動数が5分間で50Hzから100Hzまで変調(スイープ)するサイン振動を加速度1.0Gで30分間液晶表示素子に加えて振動試験を行った。
【0228】
振動試験の結果、本実施例の液晶表示素子では、配向膜の削れに起因する微小な輝点等の表示ムラは発生していないことがわかった。
【0229】
次に、比較例1で調製した比較例となる感放射線性樹脂組成物を使用してスペーサを形成した以外は上述と同様の方法により比較例となる液晶表示素子を製造した。そして、上述したのと同様の振動試験を行った。
その結果、比較例となる液晶表示素子では、配向膜の削れに起因する微小な輝点等の表示ムラが多数発生し、表示品位の低下が生じていることがわかった。