特許第6361275号(P6361275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361275
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】測温抵抗素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/18 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   G01K7/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-101173(P2014-101173)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-219047(P2015-219047A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390007744
【氏名又は名称】山里産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】新舛 智治
(72)【発明者】
【氏名】藤室 孝之
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭47−035745(JP,B1)
【文献】 特公平03−032005(JP,B2)
【文献】 特公昭56−004033(JP,B2)
【文献】 特開昭58−188082(JP,A)
【文献】 特開昭59−035384(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00475667(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/08,7/18
H05B 3/48
H01C 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の保持体の収容孔に抵抗線を収容し、
前記抵抗線が収容された前記収容孔の隙間に、絶縁粉末を充填した後、
前記絶縁粉末が充填された前記収容孔に、絶縁性の微小粒子のコロイドを含浸させ、
これにより前記絶縁粉末間、及び前記絶縁粉末と前記抵抗線の間に前記微小粒子を介在させてなることを特徴とする測温抵抗素子の製造方法。
【請求項2】
前記コロイドの含浸の後、さらに焼成を施す請求項記載の測温抵抗素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性の保持体の収容孔に抵抗線を収容するとともにその隙間に絶縁物を充填して構成される測温抵抗素子、これを備えた測温抵抗体及び測温抵抗素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測温抵抗素子を備える測温抵抗体は、素子内部の抵抗線の抵抗値が温度によって変化することを利用した温度センサーである。抵抗線の抵抗値は、温度以外に歪によっても変動し、この「歪」は温度センサーにとって測定誤差となる。抵抗線が振動により保持体の収容孔内部で動くと、歪が生じ、抵抗値が変動して測定誤差となる。また螺旋状の隣接する抵抗線同士が接触すれば断線の虞もある。他方、抵抗線が動かないように、収容孔にガラスや樹脂を溶融充填して完全にモールドしてしまうと、振動による抵抗線の動きは防止できるものの、温度測定の際の温度変化で抵抗線が伸縮したり、抵抗線と保持体との間に熱膨張差が生じると、モールドガラスや樹脂を通じて抵抗線に大きな歪をもたらし、同じく抵抗値が変動して測定誤差となる。
【0003】
そこで従来から、抵抗線と収容孔の隙間に耐熱性の絶縁粉末を充填することで、抵抗線の移動を防止しつつ、熱による抵抗線の伸縮や保持体との間の熱膨張差による相対移動を許容し、抵抗線に歪が生じることを防止することを目指した測温抵抗素子が提供されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、測温抵抗素子は小型のものでは外径が0.7mm以下となり、小さな収容孔に抵抗線を収容した後、その隙間に絶縁粉末を均一に充填することは実際上難しく、保持体に振動を与えながら時間をかけて絶縁粉末を入れても内部に粗密、片寄りが避けられず、充填が不十分で抵抗線が大きく動いてしまう箇所ができるという課題、品質が安定しないという課題があった。
【0004】
これに対し、絶縁粉末に加えて、ガラスや樹脂の可融性粉末を一緒に充填し、その後加熱焼成してガラスや樹脂の粉末を溶融し、絶縁粉末同士を結合させてなる測温抵抗素子が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、ガラスや樹脂を溶かして絶縁粉末表面や抵抗線表面を濡らし、この完全に溶融したガラス等を介して結合するので、強い強度で結合されることになる。さらに、大きさも比重も異なる二種類の粉末を小さな収容孔の隙間に均一に混合された状態に充填することは実際上難しく、充填の際に加える振動によって同じ種類の粉末ごとに集まり、絶縁粉末のみ、あるいは可融性粉末のみの部分が多く出来てしまう。
【0005】
この状態で加熱して可融性粉末を溶かすと、これら可融性粒子の集まりが溶けて一体化した大きなガラスの塊ができたり当該ガラスを介して絶縁粉末が強固に結合された領域と、何ら結合されていない絶縁粉末の集まりの領域に二極化され、かえって抵抗線に部分的に大きな歪が生じてしまうといった虞がある。つまり、結合が弱い領域や過度に強固な領域ができやすく、結合が弱い領域では抵抗線が大きく動いて歪による抵抗値の誤差が生じ、強固な結合領域では抵抗線が自らの伸縮や保持体との熱膨張差で歪が生じやすく、同じく抵抗値の誤差が生じる。またこのように結合が弱い領域の抵抗線が局所的に動き、強い領域で強固に拘束されると、動く部分での抵抗線の歪や破損がより起こりやすくなる。その結果、大きな測定誤差が生じたり品質がばらつくといった課題を解決できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭47−35745号公報
【特許文献2】特公平3−32005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、抵抗線の外部からの振動等に起因する動き(あばれ)を抑制しつつ、熱による抵抗線の伸縮や保持体との間の熱膨張差による相対移動を許容して抵抗線に歪が生じることを防止でき、これにより抵抗線の断線や測定誤差が生じることを防止できるとともにこのように測定誤差の少ない高品質なものを安定して効率よく提供できる測温抵抗素子、これを備える測温抵抗体を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題解決のために鋭意検討した結果、サブマイクロメートルオーダ以下の微小粒子を用いることで、粒子を溶かして絶縁粉末を強固に結合するのではなく、微小であるが由に急激に増している分子間力や静電気力に基づく付着力により、絶縁粉末間、絶縁粉末と抵抗線の間に、緩い適度な拘束ないし結合が実現できるとともに、この微小粒子をコロイドとすれば、先に充填されている絶縁粉末の隙間にほぼ均質に拡散・介在させることができ、抵抗線に部分的に大きな歪が生じることも防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、絶縁性の保持体の収容孔に抵抗線を収容し、前記抵抗線が収容された収容孔の隙間に、絶縁粉末を充填し、前記絶縁粉末が充填された収容孔に、絶縁性の微小粒子のコロイドを含浸させ、これにより絶縁粉末間、及び絶縁粉末と抵抗線の間に前記微小粒子を介在させてなることを特徴とする測温抵抗素子を提供する。ここに「絶縁粉末」は従来から測温抵抗素子に充填されている絶縁粉末と同様の大きさ、すなわち小さなものでも粒径(有効径)がおよそ10μm程度以上の粉末、「微小粒子」はコロイド粒子として一般的な大きさであるサブマイクロメートルオーダ粒子ないしナノメートルオーダ粒子をいう。
【0010】
ここで、絶縁粉末間、及び絶縁粉末と抵抗線の間に微小粒子を介在させた状態で、さらに焼成してなるものが好ましい。焼成は絶縁粉末や微小粒子の溶融温度よりも低い温度で加熱し、焼結させる処理である。
【0011】
また、このような測温抵抗素子を保護管の内部に収容し、内部導線に接続してなる測温抵抗体を構成することが好ましい。
【0012】
また本発明は、絶縁性の保持体の収容孔に抵抗線を収容し、前記抵抗線が収容された収容孔の隙間に、絶縁粉末を充填した後、前記絶縁粉末が充填された収容孔に、絶縁性の微小粒子のコロイドを含浸させ、これにより絶縁粉末間、及び絶縁粉末と抵抗線の間に前記微小粒子を介在させてなることを特徴とする測温抵抗素子の製造方法をも提供する。
【0013】
ここで、前記コロイドの含浸の後、さらに焼成を施すことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上にしてなる本願発明によれば、絶縁粉末が充填された収容孔に、絶縁性の微小粒子のコロイドを含浸させ、これにより絶縁粉末間、及び絶縁粉末と抵抗線の間に前記微小粒子を均質に分散された状態で介在させてなるので、振動等による抵抗線の移動、断線、歪の発生を抑制できると同時に、熱による抵抗線の伸縮や保持体との間の熱膨張差による相対移動を許容することができ、測定誤差の少ない高品質なものを安定して効率よく提供することができる。
【0015】
すなわちサブマイクロメートルオーダ以下の微小粒子は分子間力や静電気力が急激に増しており、付着性・凝集性が高く、乾燥後にはコロイド分散質である当該微小粒子が絶縁粉末の間、絶縁粉末と抵抗線の間に凝集状態で残存し、絶縁粉末や抵抗線の動きを適度に拘束する。またコロイドであるので、絶縁粉末を充填した状態でその隙間に収容孔全体にわたり均質に分散した状態に含浸させることが容易にでき、これにより微小粒子も隙間全体にまんべんなく均質に分散した状態で介在させることができる。
【0016】
したがって、全体としてムラのない均質な拘束力で、振動による微小粒子、抵抗線の不要な早い動きを抑制するとともに、熱による緩やかな膨張、伸縮の動きは微小粒子も徐々に動いて許容することができ、歪の発生による測定誤差のない高品質な測温抵抗体を安定して効率よく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の代表的実施形態に係る測温抵抗素子の製造手順を示す説明図。
図2】(a)は図1(c)のコロイド含浸前の孔内部の状態を示す拡大図、(b)は図1(d)のコロイド含浸後乾燥前の孔内部の状態を示す拡大図、(c)は図1(e)の完成品の孔内部の状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
本発明に係る測温抵抗素子1は、図1に示すように、絶縁性の保持体2の収容孔20に抵抗線3を収容し、抵抗線3が収容された収容孔20の隙間に、絶縁粉末4を充填した後、当該絶縁粉末4が充填された収容孔20に対して更に、絶縁性の微小粒子6が均一に分散したコロイド5を含浸させ、これにより絶縁粉末4間、及び絶縁粉末4と抵抗線3の間に微小粒子6を介在させて絶縁粉末4や抵抗線3の動きを適度に拘束させたものである。
【0020】
保持体2や抵抗線3、絶縁粉末4については、従来から公知の各種測温抵抗素子と同様のものを用途に応じて広く採用できる。例えば、保持体2については、収容孔20として軸方向に延びる二穴や四穴の互いに平行な貫通孔を有するアルミナ、マグネシア、シリカ等のセラミック製の筒状体を用いることができる。抵抗線3としては、測温用のφ10〜40μm程度の螺旋状に延びる抵抗線(白金線等)を用いることができ、抵抗線3の両端には、例えばφ10μm〜0.5mm程度のリード線7を接続したものとすることができる。また、絶縁粉末4は、例えばアルミナ、マグネシア、シリカ等のセラミックを用いることができる。
【0021】
コロイド5の微小粒子6は、絶縁粉末4と同様の材料を用いることができ、特にアルミナ、マグネシア、シリカその他の耐熱性を有する無機粒子が好ましい。酸化ビスマス等を用いることもできる。これら微小粒子6を分散させる分散剤としては、エタノール等の有機溶媒系や水系などを用いることができる。
【0022】
具体的には、水や有機溶媒にアルミナ微粒子を分散させたアルミナゾルや、水や有機溶媒にコロイダルシリカを分散させたシリカゾルなど公知のものを測温抵抗素子の用途、サイズ、絶縁粉末の種類、粒径などに応じて、粘性などによる製造時の含浸性等を考慮し、適宜選択することができる。本例では液体であるが、気体のエアロゾルでも可能である。
【0023】
以下、図1(a)〜(e)の製造方法の手順に基づき、より詳細に説明する。
【0024】
図1(a)に示すように、抵抗線3の中間部を折り曲げてリード線7、7をそれぞれ保持体2の収容孔20、20に挿通させる。そして、抵抗線3の螺旋の間に隙間が生じる状態で保持体2の各収容孔20、20の下端開口を封止材21にて封止をする。封止材21は、従来から公知の種々の耐熱接着剤を用いることができ、特に、保持体2と熱膨張差を生じないものが好ましく、保持体2と同様、アルミナ、マグネシア、シリカ等のセラミック製の接着剤を用いることが好ましい。
【0025】
次に、図1(b)に示すように、絶縁粉末をバイブレータ等により振動を与えつつ上方より収容孔20、20内に流入させ、抵抗線3の螺旋間にも介在するように隙間全体にしっかりと充填する。抵抗線3の収容と同時に絶縁粉末4を充填してもよい。ここまでは従来と同じようにすることができる。
【0026】
次に、図1(c)に示すように、微小粒子のコロイド5を上方より収容孔20、20内に注入し、すでに充填されている絶縁粉末4間の隙間や絶縁粉末4と抵抗線3の隙間に含浸・浸透させることにより充填する。コロイド5は収容孔20の全体に含浸させる。コロイド5中に微小粒子6は均質に分散した状態であるため、コロイド5が全体に含浸された状態で、微小粒子6も隙間全体にまんべんなく均質に分散された状態に存在している。コロイド5の充填作業は、混合粉末の充填作業に比べて著しく容易であり、従来の絶縁粉末のみ充填したものに比べても効率が大きく低下することもない。
【0027】
次に、図1(d)に示すように、加熱装置8を用いて保持体を加熱する。これによりコロイド5の分散剤を揮発させて収容孔20の上端開口部から外部に排出し、微小粒子6が絶縁粉末4間の隙間、絶縁粉末4と抵抗線3の隙間に残存する。上記のとおり微小粒子6は分散剤の揮発前から隙間全体に均質に分散して存在しているので、揮発後も隙間全体にまんべんなく分散された状態で残存する。加熱装置8を用いる代わりに風乾や自然乾燥により揮発させてもよい。また、このような揮発処理を省略し、コロイド5充填後すぐに上端開口部を塞いでもよい。
【0028】
もし、微小粒子6と絶縁粉末4を混合してから充填する場合、このように微小粒子6が均質に分散できず、片寄りが生じる。また、コロイド5と絶縁粉末4を混ぜた状態で充填することも、このようなペースト状のものを振動を加えて隙間に充填することはできない(コロイドで表面が湿った絶縁粉末4は振動を加えても小さい収容孔に入れることは実際上できない。)。しかし本例のようにまず絶縁粉末4を充填した後、コロイド状の微小粒子6を含浸浸透させることで、結果として絶縁粉末の隙間全体に均質に微小粒子6を介在させることが可能となるのである。コロイド5の充填とコロイド分散剤の揮発処理を数回繰り返してもよい。これにより微小粒子6の充填量を増大させることができる。
【0029】
次に、図1(e)に示すように収容孔20の開口、該開口から突出している抵抗線3の中間部分を埋めるように、封止材22で保持体2の上端部を封止する。封止材22は、封止材21と同様、従来から公知の種々の耐熱接着剤を用いることができ、特に、保持体2と熱膨張差を生じないものが好ましく、保持体2と同様、アルミナ、マグネシア、シリカ等のセラミック製の接着剤を用いることが好ましい。
【0030】
そして、次に図示しないが素子全体を加熱炉に入れて焼成を行う。焼成を省略し、コロイドの分散剤を揮発させただけでも、微小粒子6表面は付着性(分子間力)が高く、それ自体で凝集することもあり、絶縁粉末の動きを封じるが、焼成により融点の下がった微小粒子表面が溶融はしないが表層軟化し、さらに接合力が増す。
【0031】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 測温抵抗素子
2 保持体
3 抵抗線
4 絶縁粉末
5 コロイド
6 微小粒子
7 リード線
8 加熱装置
20 収容孔
21 封止材
22 封止材
図1
図2