特許第6361283号(P6361283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361283反射型マスクブランクおよび反射型マスク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361283
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランクおよび反射型マスク
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20180712BHJP
【FI】
   G03F1/24
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-106882(P2014-106882)
(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公開番号】特開2015-222783(P2015-222783A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福上 典仁
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/037564(WO,A1)
【文献】 特開2015−122468(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/071086(WO,A1)
【文献】 特開2007−088414(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068223(WO,A1)
【文献】 特開2006−173446(JP,A)
【文献】 特開2012−104751(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0127780(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0260288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/027、
G03F 1/00−1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された多層反射層と、該多層反射層の上に形成され保護層と、該保護層の上に形成された吸収層とを具備した反射型マスクブランクであって、
保護層と吸収層の間にガスバリア層が具備されているか、又は、保護層と吸収層の間にガスバリア層が具備されていると共に多層反射層の最上層にSiO層を有しているかのいずれかであり、
前記ガスバリア層は、少なくともAg、Cu、Au、Al、Si、Ni、Fe、Pt、W、Cr、Ti、Taを1種類以上含む材料から成る固体金属、SiO、Al、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のいずれかからなる1.5nm以上の膜厚である、
ことを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記SiO層は、多層反射層の最上層Siの最表面が酸素終端処理されて形成されたSiO層であることを特徴とする請求項1記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
請求項1または2に記載の反射型マスクブランクを用いて、吸収層をエッチングにより部分的に除去して作製したことを特徴とする反射型マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極端紫外線(Extreme Ultra Violet;以下「EUV」と略す)を光源とするEUVリソグラフィなどに利用される反射型マスクブランクおよび反射型マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、波長が13.5nm近傍のEUVを光源に用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィは光源波長が短く光吸収性が非常に高いため、真空中で行われる必要がある。また、EUVの波長領域においては、ほとんどの物質の屈折率は1よりもわずかに小さい値であるため、EUVリソグラフィにおいては、従来から用いられてきた透過型の屈折光学系を使用することができず、反射型の光学系となる。従って、原版となるEUVリソグラフィ用のフォトマスク(以下、EUVマスクと呼ぶ)も、従来の透過型のマスクは使用できないため、反射型のマスクとする必要がある。
【0003】
このような反射型マスクの元となる反射型マスクブランクは、低熱膨張性基板の上に、露光光源波長に対して高い反射率を示す多層反射層と、多層反射層の表面を保護するための保護層、露光光源波長を吸収する吸収層とが順次形成されており、更に基板の裏面には、露光機内における静電チャックのための裏面導電膜が形成されている。また、保護層と吸収層の間に、吸収層をエッチング加工する際の下地へのダメージを抑えるための緩衝層を有する構造を持つマスクブランクもある。
【0004】
反射型マスクブランクから反射型マスクへ加工する際には、EBリソグラフィとエッチング技術とにより吸収層を部分的に除去し、緩衝層を有する構造の場合は緩衝層も同様に除去し、吸収部と反射部とからなる回路パターンを形成する。このように作製された反射型マスクによって反射された光像が反射光学系を経て半導体基板上に転写される。
【0005】
現在の標準的なEUVマスクブランク(EUVリソグラフィ用の反射型マスクブランク)に用いられる多層反射層は、Si(シリコン)とMo(モリブデン)をそれぞれ約4.2nmと約2.8nmの膜厚で交互に成膜されており、トータルで40〜50ペア(=80層から100層程度)から成る。また、多層反射層の最上層は、Moと比較して化学的安定性の高いSiとなっている。SiやMoは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つSiとMoのEUV光における屈折率差が大きいので、SiとMoの界面での反射率を高く出来るために用いられている。最初の界面でEUV光の一部が反射されるが、残りの反射できずに透過したEUV光は次の界面、さらには次の界面で、というように40回(40ペアの場合)の反射するチャンスがある。各界面で反射したEUV光は、それぞれ位相が揃っており、それらの合算が多層反射層からのEUV反射率となる。ブランクメーカ各社から販売されているEUVマスクブランク(EUVマスク用基板)では、概ね60〜65%程度である。
【0006】
保護層や緩衝層は、マスクを作製する際のドライエッチング工程、マスクパターン修正工程、マスク洗浄工程において、多層反射層へのダメージ防止層として重要な役割を担っている。現在の標準的なEUVマスクブランクの保護層には洗浄耐性及びエッチング耐性が高いとされているルテニウム(Ru)が、緩衝層にはCrNが用いられている。緩衝層が存在するタイプのブランクにおいても、最終的には緩衝層はエッチング除去されて、所望のEUVマスクが完成する。(例えば特許文献1、2参照)
【0007】
しかしながら、現在のRuやRu化合物を保護層に用いたブランク構造では、マスク作製におけるドライエッチング工程、洗浄工程、熱処理工程や、エネルギーの高いEUV露光によって、Ru保護層や多層反射層の最上層Siにダメージが発生し、EUV反射率の低下やパーティクル発生を引き起こし、その結果として、転写パターンの精度低下を招いてしまうことが分かってきた。
【0008】
ここで言うダメージとは、Ru保護層の場合、酸化、剥離(ピーリング)、亀裂(クラック)を意味し、多層反射層の最上層Siの場合、酸化、腐食(エッチング)を意味する。メカニズムとしては次のように考えられている。酸素原子が存在する環境下で、EUV光やUV光のエネルギー照射や、アニールやベーク等の熱処理、洗浄時の薬液処理、ドライエッチング処理等がなされると、Ru層が酸化され脆性化する。それとともに、Ru層を酸素原子が透過して、多層反射層の最上層Siが酸化する。Siが酸化するとSiOとなり体積膨張を起こすため、Ru層にクラックやRu層と多層反射層との間にピーリングを発生させる。それがまた、酸素原子の透過を加速させるため、最上層SiやRu層のダメージを加速させるという悪循環を引き起こす。(例えば非特許文献1参照)
【0009】
これらのダメージは、Ru層自体が酸素原子と反応してしまうことと、Ru層が酸素原子を完全に遮断出来ていないことが根本原因であり、EUVマスクの品質と寿命の観点から何らかの改善が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−249434号公報
【特許文献2】特許第4158960号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Proc.of SPIE Vol.8322 832211−1(2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、EUVマスク作製工程やEUV露光中に、保護層や多層反射層にダメージが発生し難いEUVマスクブランクおよびEUVマスクを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による反射型マスクブランクは、
基板上に形成された多層反射層と、該多層反射層の上に形成された保護層と、該保護層の上に形成された吸収層とを具備した反射型マスクブランクであって、
保護層と吸収層の間にガスバリア層が具備されているか、又は、保護層と吸収層の間にガスバリア層が具備されていると共に多層反射層の最上層にSiO層を有しているかのいずれかであり、
前記ガスバリア層は、少なくともAg、Cu、Au、Al、Si、Ni、Fe、Pt、W、Cr、Ti、Taを1種類以上含む材料から成る固体金属、SiO、Al、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)のいずれかからなる1.5nm以上の膜厚である、
ことを特徴とする
【0018】
多層反射層の最上層に形成されるSiO層は、多層反射層の最上層Siの最表面が酸素終端処理されて形成されたSiO層であることが好適である。
【0020】
本発明の反射型マスクブランクを用いて作製される反射型マスクは、吸収層のみをエッチングにより部分的に除去(パターニング)して得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による反射型マスクブランクおよび反射型マスクは、
保護層と吸収層の間にガスバリア層が具備されており、更には多層反射層の最上層にSiの最表面が酸素終端処理されて形成されたSiO層を有しているので、EUVマスク作製工程やEUV露光中に、保護層や多層反射層にダメージが発生し難いEUVマスクブランクおよびEUVマスクを提供することが可能となるため、EUV反射率低下やパーテ
ィクル発生を抑制でき、結果として、高品質の半導体デバイスを製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の三つの実施形態に係る反射型マスクブランクの構造を、それぞれ(a)〜(c)で示す概略断面図。
図2】本発明の三つの実施形態に係る反射型マスクの構造を、それぞれ(a)〜(c)で示す概略断面図。
図3】従来の反射型マスクブランクの構造を示す概略断面図。
図4】従来の反射型マスクの構造を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
(従来の反射型マスクブランクの構成)
まず、従来の反射型マスクブランクの構成について説明する。図3は、従来の反射型マスクブランク100の構造の概略断面図である。
【0025】
図3に示す従来の反射型マスクブランク100は、基板1の表面に多層反射層2、保護層3、吸収層4が順次形成され、基板の裏面に導電膜5が形成された構造を有している。また、保護層3と吸収層4の間には、緩衝層が介在する場合もある。緩衝層は、吸収層4のマスクパターン修正時(イオンビーム、微細プローブによる機械的研削等)に、下地の保護層3にダメージを与えないために設けられる層である。最近のEUVマスクブランクには緩衝層が無い場合が多いため、図3には緩衝層は示していない。
【0026】
(本実施形態に係る反射型マスクブランクの構成)
次に、本実施形態に係る反射型マスクブランクの構成について説明する。図1は本実施形態に係る反射型マスクブランク101、102、103の構造を、それぞれ(a)〜(c)で示す概略断面図である。
【0027】
図1(a)〜(c)に示す、それぞれの本発明の反射型マスクブランクは、基板1上に、少なくとも、多層反射層2、保護層3、吸収層4が順次形成されており、基板1の裏面には導電膜5を有している。
【0028】
図1(a)に示す本発明の反射型マスクブランク101は、保護層3と吸収層4の間にガスバリア層6を有している。また、図1(b)に示す本発明の反射型マスクブランク102は、多層反射層2と保護層3の間にSiO層7を有した構造となっている。また、図1(c)に示す本発明の反射型マスクブランク103は、保護層3と吸収層4の間にガスバリア層6を、多層反射層2と保護層3の間にSiO層7を有した構造となっている。
【0029】
本発明の反射型マスクブランク101において、ガスバリア層6を設けることにより、保護層3の酸化や保護層3を酸素が透過しての多層反射層2の酸化、さらには、それに伴う保護層3のクラックやピーリングを防ぐことが可能となる。
【0030】
前記ガスバリア層6は、特に酸素透過率の低い材料である、固体金属、SiO、Al2O3、ダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン、すなわちdiamond−like carbonの略)のいずれかから成る。
【0031】
前記ガスバリア層6が固体金属である場合は、やはり酸素透過率の低いAg、Cu、Au、Al、Si、Ni、Fe、Pt、W、Cr、Ti、Ru、Ta、Moを1種類以上含む材料から成る。
【0032】
前記ガスバリア層6が十分に低い酸素透過率を得るためには、その膜厚は、少なくとも1.5nm以上である。
【0033】
本発明の反射型マスクブランク102において、ブランク作製段階で予めSiO層7を設けることにより、EUVマスク作製工程やEUV露光によって酸素が保護層3を透過した場合でも、多層反射層2の酸化を防ぐことが可能となる。さらには、それに伴う保護層3のクラックやピーリングを防ぐことが可能となる。
【0034】
まずここで、従来のEUVマスクブランクの多層反射層2の最上層Siの酸化に関する問題について説明する。多層反射層2の最上層Siはアモルファスであるため、ダングリングボンド(未結合手)が多く存在している。保護層3形成後のブランクやマスクの状態に、保護層3を透過してきた酸素原子が近づくと、容易に酸素と反応しSiO層を形成し、その際の体積膨張によって、保護層3にクラックやピーリングが発生してしまう問題があった。
【0035】
本発明の反射型マスクブランク102において、SiO層7を予め設けることによって、多層反射層2の最上層Siのダングリングボンドを無くし、酸素が保護層3を透過して近づいてきたとしても、反応することが無いため、多層反射層2の酸化は起き得ない。従って、最上層Siの体積膨張も発生しないため、保護層3のクラックやピーリングを防ぐことが可能となる。
【0036】
前記SiO層7は、多層反射層2の最上層Siの上に物理蒸着法や化学蒸着法による成膜、あるいは熱酸化、あるいはイオン注入法、拡散法によって形成することが可能である。
【0037】
前記SiO層7の別の構造として、多層反射層2の最上層Siの最表面が酸素終端処理されている構造であっても良い。この場合、やはり熱酸化、アニール処理などの方法が可能である。
【0038】
前記SiO層7は、多層反射層2の最上層自体が従来のSiではなく、SiO層であっても良い。
【0039】
本発明の反射型マスクブランク103は、本発明の反射型マスクブランク101と本発明の反射型マスクブランク102との構造を併せ持った構造である。本発明の反射型マスクブランク101のガスバリア層6による酸素透過の防止機能と、本発明の反射型マスクブランク102の多層反射層2の最上層の酸化防止機能の両方を併せ持つため、従来の課題を解決する構造として最も効果が大きい。
【0040】
次に、ガスバリア層6とSiO2層7以外の層について説明する。
【0041】
(多層反射層)
図1に示す反射型マスクブランクの多層反射層2は、EUV光に対して60%程度の反射率を達成できるように設計されており、モリブデン(Mo)層とシリコン(Si)層を交互に40〜50ペア積層した積層膜である。MoやSiは、EUV光に対する吸収(消衰係数)が小さく、且つMoとSiのEUV光での屈折率差が大きいので、SiとMoの界面での反射率を高くすることが出来る。
【0042】
(保護層、緩衝層)
図1に示す反射型マスクブランクの保護層3は2〜3nmの膜厚のルテニウム(Ru)層あるいは10nm程度の膜厚のシリコン(Si)層である。Ruからなる保護層3は、吸収層4の加工におけるストッパー層やマスク洗浄における薬液に対する保護層としての役割を果たすことができる。保護層3をSiにより構成する場合は、吸収層4との間に緩衝層が設けられる場合もある。緩衝層は、吸収層4のエッチングやパターン修正時に、緩衝層の下に隣接する多層反射層2の最上層を保護するために設けられ、クロム(Cr)の窒素化合物(CrN)で構成されている。
【0043】
(吸収層)
図1に示す反射型マスクブランクの吸収層4は、EUV光に対して吸収率の高いタンタル(Ta)の窒素化合物(TaN)から構成されている。他の材料として、タンタルホウ素窒化物(TaBN)、タンタルシリコン(TaSi)、タンタル(Ta)や、それらの酸化物(TaBON、TaSiO、TaO)でも良い。
【0044】
図1に示す反射型マスクブランクの吸収層4は、上層に波長190〜260nmの紫外光に対して反射防止機能を有する低反射層を設けた2層構造からなる吸収層であっても良
い。低反射層は、マスクの欠陥検査機の検査波長に対して、コントラストを高くし、検査性を向上させるためのものである。
【0045】
(裏面導電膜)
図1に示す反射型マスクブランクの導電膜5は、一般にはCrNで構成されるが、本発明のマスクブランクにおいては導電性があれば良く、金属材料からなる材料であれば良い。
【0046】
(本実施形態に係る反射型マスクの構成)
図2は、本発明の反射型マスクに係る概略断面図である。本発明の反射型マスクは、上述した構造の本発明のマスクブランク101、102、103に対して、図2(a)〜(c)は、それぞれ、描画やエッチング加工により作製した反射型マスク201、202、203である。マスクへの加工は通常のマスク作製方法でよい。
【0047】
こうして、EUVマスク作製工程やEUV露光中に保護層3や多層反射層2にダメージが発生し難いEUVマスクブランクおよびEUVマスクを提供することが可能となるため、EUV反射率低下やパーティクル発生を抑制でき、結果として、高品質の半導体デバイスを製造できる。
【実施例1】
【0048】
以下、本発明の実施例1を説明する。
【0049】
本実施例1で用意した低熱膨張ガラス基板1の表面に、SiとMoの40ペアからなる多層反射層2と、その上にRuからなる保護層3と、その上にAl(酸化アルミニウム)からなるガスバリア層6と、その上にTaSiからなる吸収層4とを、基板1の裏面にCrNからなる導電膜5を成膜し、本発明の実施例1の反射型マスクブランク101を作製した。この際のガスバリア層(Al)は、物理蒸着法(スパッタリング)により約5nmの膜厚で成膜した。
【0050】
また、別途本実施例1で用意した低熱膨張ガラス基板1の表面に、SiとMoの40ペアからなる多層反射層2と、その上にSiO層7と、その上にRuからなる保護層3と、その上にTaSiからなる吸収層4とを、基板1の裏面にCrNからなる導電膜5を成膜し、本発明の実施例1の反射型マスクブランク102を作製した。この際のSiO層7は、物理蒸着法(スパッタリング)により約5nmの膜厚で成膜した。
【0051】
また、別途本実施例1で用意した低熱膨張ガラス基板1の表面に、SiとMoの40ペアからなる多層反射層2と、その上にSiO層7と、その上にRuからなる保護層3と、その上にAl(酸化アルミニウム)からなるガスバリア層6と、その上にTaSiからなる吸収層4とを、基板1の裏面にCrNからなる導電膜5を成膜し、本発明の実施例1の反射型マスクブランク103を作製した。この際のSiO層7とガスバリア層6は、物理蒸着法(スパッタリング)により、それぞれ約5nmの膜厚で成膜した。
【0052】
次いで、上記のように作製した本発明の実施例1のマスクブランク101、102、103の全て対して、ポジ型化学増幅レジスト(FEP171:富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を300nmの膜厚に塗布し、電子線描画機(JBX9000:日本電子社製)によって所定のパターンに描画し、その後110℃、10分のPEBおよびスプレー現像(SFG3000:シグマメルテック社製)をすることにより、レジストパターンを形成した。
【0053】
次いで、レジストパターンをエッチングマスクとして用い、CFプラズマとCl
ラズマによるドライエッチングによって、吸収層4をエッチングした後、残ったレジストを剥離洗浄することで、本発明の実施例1の反射型マスク201、202、203を作製した。
【0054】
本発明の実施例1の反射型マスク201、202、203の洗浄耐性を評価するために、従来の反射型マスクブランク100から作製した反射型マスク200と、繰り返しオゾン洗浄(オゾン水)による比較実験を行った。オゾン洗浄処理(1回あたり10分)を全マスクに対して実施したところ、従来の反射型マスク200は、36回の処理でRu層のピーリングが発生し、86回の処理でRu層が完全に消失したのに対し、本発明の反射型マスク201、202、203では、300回を超えてもRuからなる保護層3のピーリングは確認出来なかった。なお、本評価におけるRuからなる保護層3のピーリングの確認には、1回毎の洗浄処理後に、その都度、フォトマスク用の走査型電子顕微鏡(アドバンテスト社)を用いて観察した。また、剥離した部分の表面の組成を正確に確認するために、オージェ電子分光装置(日立ハイテクノロジーズ)を使用した。
【実施例2】
【0055】
以下、本発明の実施例2を説明する。
【0056】
実施例1と同様に、本発明の実施例2の反射型マスク201、202、203および従来の反射型マスク200を作製し、繰り返しSPM洗浄(硫酸+過酸化水素水+純水)による比較実験を行った。SPM洗浄処理(1回あたり10分)を全マスクに対して実施したところ、従来の反射型マスク200は、51回の処理でRuからなる保護層3のピーリングが発生し、116回の処理でRuからなる保護層3が完全に消失したのに対し、本発明の実施例2の反射型マスク201、202、203では、300回を超えてもRu層のピーリングは確認出来なかった。
【実施例3】
【0057】
以下、本発明の実施例3を説明する。
【0058】
実施例1と同様に、本発明の実施例3の反射型マスク201、202、203および従来の反射型マスク200を作製し、ホットプレートを用いたベーキング処理による比較実験を行った。ベーキング処理(1回あたり200度10分、空気環境)を全マスクに対して実施したところ、従来の反射型マスク200は、36回の処理でRuからなる保護層3のクラックが発生したのに対し、本発明の反射型マスク201、202、203では、300回を超えてもRuからなる保護層3のクラックは確認出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、EUV光を用いる反射型マスクブランクおよび反射型マスクに有用である。
【符号の説明】
【0060】
1…基板
2…多層反射層
3…保護層
4…吸収層
5…裏面導電膜
6…ガスバリア層
7…SiO
100…従来の反射型マスクブランク
101…本発明の反射型マスクブランク
102…本発明の反射型マスクブランク
103…本発明の反射型マスクブランク
200…従来の反射型マスク
201…本発明の反射型マスク
202…本発明の反射型マスク
203…本発明の反射型マスク
図1
図2
図3
図4