特許第6361310号(P6361310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361310フラットケーブルの製造方法及びフラットケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361310
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】フラットケーブルの製造方法及びフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20180712BHJP
   H01B 7/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H01B13/00 525D
   H01B7/08
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-127603(P2014-127603)
(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公開番号】特開2016-9521(P2016-9521A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池澤 祐一
(72)【発明者】
【氏名】小山 恵司
(72)【発明者】
【氏名】平川 剛
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−009520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き枠から繰り出される複数本の電線を平面状に配列して、その配列面の上側または下側のいずれか一方から絶縁フィルムを貼り付けるフラットケーブルの製造方法であって、
並列させた複数本の前記電線の前記巻き枠に近い側を並列された複数の溝部を有する整列部の前記溝部にそれぞれ収容させ、並列させた前記電線の前記巻き枠から遠い側を把持部によって把持させ、それぞれの前記電線を屈曲させる複数の屈曲形成部を前記把持部と前記整列部との間に配置させる電線配置工程と、
前記整列部に対して、前記把持部を前記電線の配列面内で移動させることで、それぞれの前記電線を各前記屈曲形成部との接触箇所で屈曲させる電線屈曲工程と、
前記電線に対して配列面の上側または下側のいずれか一方から前記絶縁フィルムを貼り付ける絶縁フィルム貼付工程と、
を含むフラットケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記電線屈曲工程において、各前記屈曲形成部を、前記把持部の移動に伴って前記配列面内における複数の前記溝部の配列方向と直交する方向に沿って移動させることで、屈曲させる前記電線同士の間隔を維持させる、
請求項1に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記電線配置工程において、前記電線を収容可能な複数の溝部を有する保持部を前記把持部と各前記屈曲形成部との間に配置させて前記電線を前記保持部の溝部へ収容させ、
前記電線屈曲工程において、前記把持部とともに前記保持部を前記把持部と同方向に移動させる、
請求項1または請求項2に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記電線屈曲工程において、複数本の前記電線の張力をそれぞれ個別に調整する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフラットケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記絶縁フィルム貼付工程において、前記電線に対して前記整列部の前記溝部の上から前記配列面の上側に前記絶縁フィルムを貼り付けた後、前記整列部を前記電線の前記配列面から遠ざけ、前記電線の前記配列面の他側に前記絶縁フィルムを貼り付ける、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフラットケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルの製造方法及びフラットケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットケーブルの配線経路によっては、導体を曲げて取り付けなければいけない場合がある。そのような場合に、従来は、絶縁導体が同一平面上に複数本直線状に並べられたフラットケーブルを、当該複数本の絶縁導体同士を連結させ、複数本の絶縁導体の連結部にケーブル長手方向に沿って切り込みを入れてスリットを設けることで、フラットケーブルを同一平面上で屈曲させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−119071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のフラットケーブルにおいては、複数本の絶縁導体の連結部に設けられるスリットにより絶縁導体を傷つけないためには、連結された絶縁導体同士の間隔を所定距離以上に保つ必要があり、フラットケーブルをその幅方向において大型化せざるを得ない。また、フラットケーブルを折り曲げることにより厚さが増す。これらは限られた場所に配線する場合にデメリットとなる。また、フラットケーブルを折り曲げ加工する手間も必要である。
【0005】
本発明は、複数本の電線をその並列方向に屈曲させた状態を容易に得ることができるとともに、幅方向および厚さ方向において小型のフラットケーブルの製造方法及びフラットケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるフラットケーブルの製造方法は、
(1)巻き枠から繰り出される複数本の電線を平面状に配列して、その配列面の上側または下側のいずれか一方から絶縁フィルムを貼り付けるフラットケーブルの製造方法であって、
並列させた複数本の前記電線の前記巻き枠に近い側を並列された複数の溝部を有する整列部の前記溝部にそれぞれ収容させ、並列させた前記電線の前記巻き枠から遠い側を把持部によって把持させ、それぞれの前記電線を屈曲させる複数の屈曲形成部を前記把持部と前記整列部との間に配置させる電線配置工程と、
前記整列部に対して、前記把持部を前記電線の配列面内で移動させることで、それぞれの前記電線を各前記屈曲形成部との接触箇所で屈曲させる電線屈曲工程と、
前記電線に対して配列面の上側または下側のいずれか一方から前記絶縁フィルムを貼り付ける絶縁フィルム貼付工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数本の電線をその並列方向に屈曲させた状態を容易に得ることができるとともに、幅方向および厚さ方向において小型のフラットケーブルの製造方法及びフラットケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るフラットケーブルの平面図である。
図2図1に示すフラットケーブルのA−A線における断面図である。
図3】本実施形態に係るフラットケーブルの製造方法に用いられる製造装置の概略構成図である。
図4】製造装置の整線部を構成する整線ローラ及び押えローラの正面図である。
図5】加工部内の平面図である。
図6】把持部の正面図である。
図7】整列ブロックの断面図である。
図8】屈曲形成部の正面図である。
図9】屈曲形成部の斜視図である。
図10】電線配置工程を説明する加工部内の平面図である。
図11】電線屈曲工程を説明する図であって、(a)から(c)は、それぞれ加工部内の平面図である。
図12】絶縁フィルム貼付工程を説明する電線の配列面の上側に絶縁フィルムが配置された状態の平面図である。
図13】フラットケーブルの製造方法の変形例を説明する加工部内の平面図である。
図14】変形例における電線屈曲工程を説明する図であって、(a)から(c)は、それぞれ加工部内の平面図である。
図15】変形例における絶縁フィルム貼付工程を説明する電線の配列面の上側に絶縁フィルムが配置された状態の平面図である。
図16】他の電線を備えたフラットケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈本発明の実施形態の概要〉
最初に本発明の実施形態の概要を説明する。
本発明にかかるフラットケーブルの製造方法の一実施形態は、
(1)巻き枠から繰り出される複数本の電線を平面状に配列して、その配列面の上側または下側のいずれか一方から絶縁フィルムを貼り付けるフラットケーブルの製造方法であって、
並列させた複数本の前記電線の前記巻き枠に近い側を並列された複数の溝部を有する整列部の前記溝部にそれぞれ収容させ、並列させた前記電線の前記巻き枠から遠い側を把持部によって把持させ、それぞれの前記電線を屈曲させる複数の屈曲形成部を前記把持部と前記整列部との間に配置させる電線配置工程と、
前記整列部に対して、前記把持部を前記電線の配列面内で移動させることで、それぞれの前記電線を各前記屈曲形成部との接触箇所で屈曲させる電線屈曲工程と、
前記電線に対して配列面の上側または下側のいずれか一方から前記絶縁フィルムを貼り付ける絶縁フィルム貼付工程と、を含む。
(1)の製法によれば、複数本の電線を傷つけることなく並列方向に屈曲させた状態を容易に得ることができ、小型のフラットケーブルを製造することができる。
【0010】
(2)前記電線屈曲工程において、各前記屈曲形成部を、前記把持部の移動に伴って複数の前記溝部の配列方向と直交する方向に沿って移動させることで、屈曲させる前記電線同士の間隔を維持させてもよい。
(2)の製法によれば、各電線同士が近接したり蛇行するなどの不具合のないフラットケーブルを製造できる。
【0011】
(3)前記電線配置工程において、前記電線を収容可能な複数の溝部を有する保持部を前記把持部と各前記屈曲形成部との間に配置させて前記電線を前記保持部の溝部へ収容させ、
前記電線屈曲工程において、前記把持部とともに前記保持部を前記把持部と同方向に移動させてもよい。
(3)の製法によれば、保持部により、電線の一端側の整列状態を確実に維持させることができる。
【0012】
(4)少なくとも前記電線屈曲工程において、複数本の前記電線の張力をそれぞれ個別に調整してもよい。
(4)の製法によれば、複数本の電線を容易にかつ無理なく屈曲させることができる。
【0013】
(5)前記絶縁フィルム貼付工程において、前記電線に対して前記溝部の上から配列面の上側に前記絶縁フィルムを貼り付けた後、前記整列部を前記電線の配列面から遠ざけ、前記電線の配列面の他側に前記絶縁フィルムを貼り付けてもよい。
(5)の製法によれば、屈曲箇所を有する電線の配列面の上下両面に絶縁フィルムが貼り付けられたフラットケーブルを容易に製造できる。
【0014】
〈本発明の実施形態の詳細〉
以下、本発明に係るフラットケーブルの製造方法及びフラットケーブルの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、フラットケーブル10は、平面状に配列された複数本(本例では5本)の電線11と、配列された5本の電線11を覆う一対の絶縁フィルム12とを備えている。電線11は、それぞれ絶縁フィルム12から一端11A及び他端11Bが露出されている。フラットケーブル10の露出された電線11の一端11A及び他端11Bは、基板へはんだ付けされて接続される端子部とされている。なお、電線11の一端11A及び他端11Bにコネクタが取り付けられる場合もある。
【0016】
電線11は、略扁平な矩形断面状の平角導体からなるもので、例えば錫メッキ銅導体から構成されている。電線11は、その中心軸方向に垂直な断面において、縦方向の長さ(厚さ)L1と横方向の長さ(幅)L2との比が例えば2:1〜1:10の範囲となるように設定されている。各電線11の幅は、例えば0.3mm以下である。
【0017】
一対の絶縁フィルム12は、例えばポリエステル樹脂などから形成されている。絶縁フィルム12には、その互いに対向する面に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂などからなる接着層13が設けられている。絶縁フィルム12は、例えば幅が50〜180mmで、厚さ(接着層および基材層の厚さ)が50〜75μm程度である。
【0018】
一対の絶縁フィルム12は、平面状に配列された電線11をその配列面の上下の両側から挟み込んだ状態で、接着層13を介して互いに貼り合わされている。これにより、複数本の電線11が絶縁フィルム12により覆われて一体化されている。
【0019】
フラットケーブル10は、一つ以上(本例では一つ)の屈曲部21を有している。この屈曲部21では、5本の電線11が、配列順が変更されることなく配列面に沿って屈曲されている。絶縁フィルム12は、屈曲された5本の電線11の全体を覆うように、電線11の配列の外形に沿った形状とされている。屈曲部21での電線11の屈曲角度は、配線箇所に応じて、例えば45度以上90度以下で屈曲される。
【0020】
本例のフラットケーブル10では、屈曲部21での屈曲角度は、90度とされている。これにより、フラットケーブル10は、5本の電線11の配列順が変更されることなく、5本の電線11の一端11A側の並列方向における中心線C1と5本の電線11の他端11B側の並列方向における中心線C2とが直交されている。
【0021】
次に、フラットケーブル10を製造する製造装置100について説明する。
図3に示すように、製造装置100は、電線供給部101と、整線部102と、加工部103とを有している。
【0022】
電線供給部101は、複数(本例では5つ)のサプライリール111(巻き枠の一例)を有しており、それぞれのサプライリール111から整線部102へ電線11が繰り出される。また、電線供給部101は、サプライリール111毎にダンサローラ112を有している。各ダンサローラ112は、各サプライリール111から整線部102へ繰り出される電線11の張力をそれぞれ調整する。
【0023】
図4に示すように、整線部102は、整線ローラ121と、この整線ローラ121に沿って配置された押えローラ122とを有している。整線ローラ121は、軸方向に等間隔に配列された複数の溝部121aを有しており、これらの溝部121aに、電線11が通される。本例では、電線供給部101から繰り出される5本の電線11が、整線部102によって互いに等間隔に並列された状態に整線される。このとき、押えローラ122は、整線ローラ121の溝部121aからの電線11の脱線を防止する。
【0024】
加工部103(図3参照)は、電線11を屈曲させ、その後、電線11の配列面の上下から絶縁フィルム12を貼り付ける。
【0025】
図5に示すように、加工部103は、把持部131と、整列ブロック(整列部の一例)141と、電線11毎に設けられた複数(本例では5つ)の屈曲形成部152a,152b,152c,152d,152e(以下、総称する場合は屈曲形成部152と称する)と、保持ブロック(保持部の一例)161とを備えている。加工部103において、サプライリール111に近い側から遠い側に向けて、整列ブロック141、屈曲形成部152、保持ブロック161及び把持部131が順に配置されている。
【0026】
図6に示すように、把持部131は、上下一対の把持部材132を備えている。これらの把持部材132には、複数(本例では5つ)の把持溝133が等間隔に形成されている。これらの把持溝133には、電線11が収容される。把持部131は、把持部材132によって電線11を配列面の上下から挟み込む。これにより、電線11は、各把持部材132の把持溝133に収容されて等間隔に配置された状態で把持部131に把持される。把持部131は、電線11の配列面である水平面内で移動可能とされている。
【0027】
図7に示すように、整列ブロック141は、並列された複数(本例では5つ)の溝部142を有している。これらの溝部142には、電線11が上半分だけ露出した状態で収容される。この整列ブロック141は、金属から形成されたもので、少なくとも溝部142には、収容する電線11との摩擦を低減させるために、フッ素樹脂がコーティングされていることが好ましい。
【0028】
屈曲形成部152は、把持部131と整列ブロック141との間に配置される(図5参照)。また、図8及び図9に示すように、屈曲形成部152は、台座153と、台座153に支持されたローラ154とを備えている。台座153は、鉛直に配置された支持棒155の上端に固定されている。支持棒155は、鉛直方向の中心軸を中心として回動可能とされている。
【0029】
ローラ154は、胴部156と、胴部156の両端に設けられた鍔部157とを有している。ローラ154は、その中心軸が水平方向に配置された状態で台座153に支持され、中心軸を中心として回転可能とされている。ローラ154には、上方側から電線11が配置される。電線11は、ローラ154の胴部156上に配置されることで、その両側部が鍔部157によって保持される。これにより、電線11は、屈曲形成部152に接触した状態となる。
【0030】
これらの屈曲形成部152a〜152eのうちの少なくとも一側部に配置された屈曲形成部152aを除く屈曲形成部152b〜152eは、整列ブロック141の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動可能とされている。
【0031】
図5に示すように、保持ブロック161は、把持部131と、屈曲形成部152との間に配置されている。この保持ブロック161は、整列ブロック141と同様に、並列された複数(本例では5つ)の溝部162を有している(図7参照)。これらの溝部162には、電線11が上半分だけ露出した状態で収容される。
【0032】
この保持ブロック161は、整列ブロック141と同様に、金属から形成されたもので、少なくとも溝部162には、収容する電線11との摩擦を低減させるために、フッ素樹脂がコーティングされていることが好ましい。また、この保持ブロック161は、把持部131とともに、電線11の配列面である水平面内で移動可能とされている。
【0033】
次に、上記の製造装置100を用いてフラットケーブル10を製造する場合について各図を参照しながら工程毎に説明する。
【0034】
(電線配置工程)
電線供給部101による電線11の送り出しを停止させた状態で、図10に示すように、並列させた5本の電線11を把持部131の把持部材132によって上下から挟み込み、電線11を把持部131で把持させる。また、電線11の把持部131で把持した箇所よりもサプライリール111に近い部分を、整列ブロック141の溝部142及び保持ブロック161の溝部162に収容させるとともに、屈曲形成部152に電線11を保持させる。
【0035】
(電線屈曲工程)
図11(a)に示すように、整列ブロック141に対して、把持部131および保持ブロック161を電線11の配列面内で回動させながら一側部側(図11(a)中矢印A方向)へ向かって移動させる。これにより、各電線11を、各屈曲形成部152a〜152eとの接触箇所で一側部側へ屈曲させる。また、屈曲形成部152aを除く屈曲形成部152b〜152eを、整列ブロック141の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させる。各屈曲形成部152b〜152eの移動量は、電線11の屈曲側と反対側へ向かって大きくする。これにより、屈曲させる各電線11同士の間隔を維持させる。
【0036】
把持部131を移動させて電線11を屈曲させる際に、屈曲形成部152では、台座153が鉛直方向の軸線を中心として回動するとともに、電線11の移動に伴ってローラ154が水平方向の軸線を中心として回転する。これにより、屈曲される電線11は、屈曲形成部152との接触箇所が円滑に変位することとなり、電線11に作用する力が極力抑えられる。
【0037】
また、把持部131を移動させて電線11を屈曲させる際に、各電線11は、把持部131の移動にともなって引っ張られる。このとき、各ダンサローラ112が、各電線11の張力を個別に調整して均一な張力とする。これにより、5本の電線11は容易にかつ無理なく屈曲される。
【0038】
図11(b)に示すように、整列ブロック141に対して、さらに、把持部131を電線11の配列面内で回動させながら一側部側(図11(b)中矢印A方向)へ向かって移動させるとともに、屈曲形成部152aを除く屈曲形成部152b〜152eを、整列ブロック141の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させる。これにより、各電線11を、さらに各屈曲形成部152a〜152eとの接触箇所で屈曲させる。
【0039】
図11(c)に示すように、さらに、把持部131を電線11の配列面内で回動させながら一側部側(図11(c)中矢印A方向)へ向かって移動させ、電線11を所定角度(本例では90度)に屈曲させたら、把持部131及び各屈曲形成部152b〜152eの移動を停止させる。
【0040】
なお、電線11の屈曲角度は、把持部131の移動位置を変更することで、例えば、45度以上90度以下の範囲で容易に調整できる。また、各屈曲形成部152b〜152eは、初めから整列ブロック141の溝部142の配列方向に直交する方向へずらした位置に配置させておいてもよい。この場合も、電線11の間隔を維持させた状態で屈曲させることが可能である。
【0041】
(絶縁フィルム貼付工程)
図12に示すように、電線11の配列面の上方側へ絶縁フィルム12を供給し、上方側からヒータ板(図示略)を下降させ、電線11に絶縁フィルム12を押し付けて加熱する。これにより、電線11に対して、その配列面の上側に絶縁フィルム12を接着させて貼り付ける。電線11に対して配列面の上側に絶縁フィルム12を貼り付けた後、整列ブロック141、屈曲形成部152及び保持ブロック161を下降させて電線11の配列面から遠ざける。この状態で、電線11の配列面の下方側へ絶縁フィルム12を供給し、下方側からヒータ板(図示略)を上昇させ、電線11に絶縁フィルム12を押し付けて加熱する。これにより、電線11に対して、その配列面の下側に絶縁フィルム12を接着させて貼り付ける。
【0042】
(切断工程)
把持部131による電線11の一端側の把持を解除させるとともに、電線11のうち絶縁フィルム12から露出した部分を切断してフラットケーブル10を加工部103から取り出す。
【0043】
図12に示すように、加工部103から取り出したフラットケーブル10の絶縁フィルム12の余分な部分(図12中斜線で示す部分)を切断して除去する。これにより、一箇所の屈曲部21を有するフラットケーブル10(図1参照)が得られる。
【0044】
以上説明した上記のフラットケーブル10の製造方法によれば、並列させた5本の電線11の一端側を把持部131で把持させ、電線11の把持した箇所より他端側を整列ブロック141の溝部142にそれぞれ収容させ、各屈曲形成部152a〜152eにそれぞれの電線11を保持させて接触させた状態で、整列ブロック141に対して把持部131を電線11の配列面内で移動させる。これにより、複数本の電線11を傷つけることなく並列方向に屈曲させた状態を容易に得ることができる。そして、複数本の電線11を屈曲させた状態で配列面の上下側から絶縁フィルム12を貼り付けることで、幅方向および厚さ方向において小型のフラットケーブル10を製造することができる。
【0045】
また、各屈曲形成部152b〜152eを、把持部131の移動に伴って整列ブロック141の複数の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させる。これにより、各電線11を屈曲させる際に、各電線11同士の間隔を維持させることができる。これにより、各電線11同士が近接したり蛇行するなどの不具合のないフラットケーブル10を製造できる。なお、各電線11の曲げの内側となる屈曲形成部152aも、把持部131の移動に伴って整列ブロック141の複数の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させても良い。
【0046】
また、電線配置工程において、保持ブロック161の溝部162へ電線11を収容させて、電線屈曲工程において、把持部131とともに保持ブロック161を移動させる。これにより、電線11の一端側の整列状態を確実に維持させることができる。
【0047】
また、従来、フラットケーブルの配線経路が屈曲している場合、フラットケーブルを折り曲げる等の加工処理を行って、フラットケーブルを曲げて取り付けなければいけなかった。しかし、本実施形態に係るフラットケーブル10によれば、予め屈曲部21が形成されているため、屈曲した部分を有する複雑な配線経路に対しても、折り曲げのための加工処理を行うことなく配線作業を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態に係るフラットケーブル10によれば、電線11の配列面の上側及び下側から絶縁フィルム12が貼り合わされているので、絶縁フィルム12によって電線11を確実に保護することができ、配線時における電線11の損傷を抑制できる。なお、絶縁フィルム12は、電線11の配列面の上側または下側のいずれか一方だけでも良い。
【0049】
なお、絶縁フィルム貼付工程において、電線11の進行方向に沿って長尺の絶縁フィルム12を供給し、加熱ローラに当該絶縁フィルム12を送り込みながら加熱ローラによって絶縁フィルム12と電線11とを挟んで加熱して貼り付けても良い。
【0050】
(変形例)
次に、フラットケーブル10の製造方法の変形例について説明する。
この変形例では、図13に示すように、円柱状のピンからなる屈曲形成部172a,172b,172c,172d,172e(以下、総称する場合は屈曲形成部172と称する)を用いて電線11を屈曲させる。屈曲形成部172は、平面視円形状に形成されており、それぞれ上方へ向かって突出されている。
【0051】
屈曲形成部172を用いて電線11を屈曲させる際には、電線配置工程において、各屈曲形成部172a〜172eをそれぞれ各電線11の屈曲させる方向の内側に配置させる。
【0052】
この状態で、図14(a)に示すように、把持部131を回動させながら、各電線11を各屈曲形成部172a〜172eとの接触箇所で一側部側へ屈曲させる。また、屈曲形成部172b〜172eを、整列ブロック141の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させ、屈曲させる電線11同士の間隔を維持させる。
【0053】
本例では、電線11を屈曲させる際に、屈曲形成部172は、鉛直方向の軸線を中心として回動する。これにより、屈曲される電線11は、屈曲形成部152との接触箇所が円滑に変位することとなり、電線11に作用する力が極力抑えられる。
屈曲形成部172をピンにしたので、電線11の間隔が狭い場合にも、電線11間に屈曲形成部172を入れることができる。電線11のピッチに応じてローラ方式とピン方式を使い分けるのがよい。
【0054】
また、図14(b)(c)に示すように、さらに、把持部131を回動させながら、屈曲形成部172b〜172eを、整列ブロック141の溝部142の配列方向と直交する方向に沿って移動させ、電線11を所定角度(本例では90度)に屈曲させたら、把持部131及び屈曲形成部172b〜172eの移動を停止させる。
【0055】
この変形例に係るフラットケーブル10の製造方法の場合も、各屈曲形成部172a〜172eにそれぞれの電線11を接触させた状態で、整列ブロック141に対して把持部131を電線11の配列面内で移動させることで、複数本の電線11を傷つけることなく並列方向に屈曲させた状態を容易に得ることができる。そして、複数本の電線11を屈曲させた状態で配列面の上下側から絶縁フィルム12を貼り付けることで、幅方向および厚さ方向において小型のフラットケーブル10を製造することができる。
【0056】
この変形例では、電線屈曲工程後に、電線11の屈曲方向の内側にピンからなる屈曲形成部172が突出した状態となっている。このため、電線11の屈曲後の絶縁フィルム貼付工程において、電線11の配列面の上側に絶縁フィルム12を貼り付ける際に、屈曲形成部172が絶縁フィルム12に対して接触してしまう。
【0057】
したがって、この変形例の場合、絶縁フィルム貼付工程において、図15に示すように、電線11の配列面の上側における電線11の屈曲箇所を除く部分に、平面視L字状の絶縁フィルム12を貼り付けて電線11を固定する。次いで、整列ブロック141、屈曲形成部172及び保持ブロック161を下降させて電線11の配列面から遠ざける。その後、電線11の配列面の下方側に絶縁フィルム12を接着させて貼り付け、さらに、電線11の配列面の上方側で露出された電線11の屈曲箇所に絶縁フィルム12を貼り付ける。
【0058】
なお、ピンからなる屈曲形成部172を下降させても電線11の屈曲状態が維持される場合は、屈曲形成部172を下降させた後に、電線11の配列面の上側全体に絶縁フィルム12を貼り付け、その後、整列ブロック141及び保持ブロック161を下降させて電線11の配列面の下方側に絶縁フィルム12を接着させて貼り付ければよい。
【0059】
以上、本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0060】
例えば、電線11として、絶縁体で被覆されていない例えば直径0.8mm以下の丸線導体を用いることもできる。直径0.3mm以下の丸線導体を使用すると各線のピッチを小さくして高密度配線可能である点で好ましい。また、絶縁体で被覆されていない丸線導体を用いることで、フラットケーブルを安価に製造することができる。
【0061】
また、電線11としては、図16に示すように、中心導体11aと、中心導体11aの周囲を覆う絶縁性の被覆11bとを含む細径絶縁電線11’を用いても良い。電線11として絶縁電線を用いると、配列された絶縁電線同士の短絡を確実に防止することができるフラットケーブル10’を提供することができる。
【0062】
また、電線11としては、絶縁電線の代わりに、中心導体と、中心導体の周囲を覆う絶縁性の被覆と、被覆の周囲を覆う外部導体とを含む細径同軸電線を用いることもできる。細径同軸電線は、外部導体の周囲を覆う絶縁性の外被があってもよい。電線11として同軸電線を用いることで、シールド特性に優れたフラットケーブル10’を提供することができる。
【符号の説明】
【0063】
10:フラットケーブル
11:電線
12:絶縁フィルム
131:把持部
141:整列ブロック(整列部の一例)
142:溝部
152a,152b,152c,152d,152e:屈曲形成部
161:保持ブロック(保持部の一例)
162:溝部
172a,172b,172c,172d,172e:屈曲形成部
図1
図2
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図16