(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、センサの取り付け作業性を良好にできると共に、ハーネスの配線作業の簡略化を図れ、コスト及び重量の低減を図れる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトルク測定装置付回転伝達装置は、トルク伝達軸と、特性変化部材と、センサ装置とを備える。
このうちのトルク伝達軸は、使用時にトルクを伝達するものである。
又、前記特性変化部材は、それぞれの特性を円周方向に関して変化させた第一被検出部と第二被検出部とを互いに隣接する状態で有し、使用時にこのトルク伝達軸と同期して回転する部分に支持されている。
更に、前記センサ装置は、前記第一、第二両被検出部に、その検出部を対向させた状態で使用時にも回転しない部分に支持されており、これら第一、第二両被検出部のうち、前記検出部を対向させた部分同士の円周方向の位相変化を検出可能としている。
【0009】
上述した様な本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を実施する場合には、例えば、前記センサ装置を、前記トルク伝達軸を回転自在に支持した転がり軸受を構成する外輪やハウジングに取り付ける事ができる。
【0010】
又、本発明のトルク測定装置付回転伝達装置
では、前記トルク伝達軸を中空状とし、このトルク伝達軸の内径側に、内軸を配置する。そして、この内軸の軸方向一端側部分を、このトルク伝達軸の軸方向一端側部分に直接又は間接的に相対回転不能に連結する。
さらに、前記特性変化部材を、互いに別体である、前記第一被検出部を有する第一特性変化部材と、前記第二被検出部を有する第二特性変化部材とから構成する。そして、このうちの第一特性変化部材を、前記トルク伝達軸の軸方向他端側部分を回転自在に支持した(トルク伝達軸の軸方向他端側部分に外嵌固定された)、転がり軸受を構成する内輪に取り付け、前記第二特性変化部材を、前記内軸の軸方向他端側部分に取り付ける。
尚、本明細書及び特許請求の範囲で、軸の軸方向一端側とは、当該軸の中央部よりも軸方向一端に近い側に存在する部分(一端部を含む)を言い、反対に、軸方向他端側とは、当該軸の中央部よりも軸方向他端に近い側に存在する部分(他端部を含む)を言う。
【0011】
又、
本発明を実施する場合には、実施の一態様として例えば、前記第一特性変化部材を、前記第一被検出部の磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させた第一エンコーダとすると共に、前記第二特性変化部材を、前記第二被検出部の磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させた第二エンコーダとする。
又、前記センサ装置を、前記第一被検出部に第一検出部を対向させて、この第一被検出部の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる第一センサと、前記第二被検出部に第二検出部を対向させて、この第二被検出部の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる第二センサと、これら第一、第二両センサを保持したホルダとを有するセンサユニットとする。
【0012】
或いは、別の態様として、前記第一、第二両特性変化部材のうち、何れか一方の特性変化部材を、磁性材製で、その被検出部を円周方向に関する凹凸形状とした、トルク検出用凹凸部材とすると共に、他方の特性変化部材を、非磁性導電材製で、その被検出部に複数の孔を円周方向に関して等間隔に有しており、前記トルク検出用凹凸部材の被検出部に対し径方向又は軸方向に重畳する状態で、このトルク検出用凹凸部材と前記センサ装置との間部分に配置される、トルク検出用有孔部材とする。
又、前記センサ装置を、検出部としてコイルを備え、前記第一、第二両被検出部同士の円周方向の位相変化に対応して、インピーダンスを変化させるコイルセンサユニットとする。
【0013】
又、本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を実施する場合には、例えば請求項
2に記載した発明の様に
、前記内軸の軸方向中間部外周面を、前記トルク伝達軸の内周面によって案内支持する
こともできる。
上述の様な請求項
2に記載した発明を実施する場合には、例えば、前記内軸の軸方向中間部外周面(前記トルク伝達軸の内周面によって案内される面)に、摩耗防止の為の表面処理を施す。
本発明とは異なる別発明では、前記特性変化部材を、互いに別体である、前記第一被検出部を有する第一特性変化部材と、前記第二被検出部を有する第二特性変化部材とから構成し、このうちの第一特性変化部材を、前記トルク伝達軸の軸方向他端側部分に直接又は間接的に取り付け、前記第二特性変化部材を、前記内軸の軸方向他端側部分に取り付ける。
【0014】
又、本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を実施する場合には、例えば、前記トルク伝達軸に、はすば歯車、かさ歯車等の、相手歯車との噛合部にアキシアル方向の反力が作用する入力歯車又は出力歯車を設ける。又、
本発明とは異なる別発明では、前記特性変化部材を、前記トルク伝達軸と同心の被検出面を備え、この被検出面の幅方向片半部に、円周方向に関する磁気特性変化の位相がこの被検出面の幅方向に対して所定方向に漸次変化する前記第一被検出部を、この被検出面の幅方向他半部に、円周方向に関する磁気特性変化の位相がこの被検出面の幅方向に対して前記所定方向と逆方向に漸次変化する前記第二被検出部を、それぞれ有するエンコーダとし、前記トルク伝達軸に直接又は間接的に取り付ける。
又、前記センサ装置を、前記第一被検出部に第一検出部を対向させて、この第一被検出部の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる第一センサと、前記第二被検出部に第二検出部を対向させて、この第二被検出部の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる第二センサと、これら第一、第二両センサを保持したホルダとを有するセンサユニットとする。
【0015】
更に、本発明のトルク測定装置付回転伝達装置を実施する場合には、例えば、前記トルク伝達軸に関して、表面硬さをHV400以上とし、且つ、表面炭素濃度を0.2%以上とする。
【0016】
又、本発明を実施する場合に、前記トルク伝達軸にトルクを入力する為の入力部の位置(形成位置、設置位置)は特に限定されず、例えば軸方向一端部に設ける事もできるし、軸方向中間部、又は、軸方向他端部に設ける事もできる。又、入力部としては、例えば、前記トルク伝達軸の外周面又は内周面に、スプライン部(雄スプライン部又は雌スプライン部)、キー係合部、嵌合面部、螺子部を直接形成する構成を採用できる他、入力歯車、入力プーリ、入力スプロケット等を、前記トルク伝達軸と一体に設けたり、或いは、別体として結合固定する構成を採用できる。
又、同様に、前記トルク伝達軸からトルクを出力する為の出力部の位置(形成位置、設置位置)は特に限定されず、例えば軸方向一端部に設ける事もできるし、軸方向中間部、又は、軸方向他端部に設ける事もできる。又、出力部としては、例えば、前記トルク伝達軸の外周面又は内周面に、スプライン部(雄スプライン部又は雌スプライン部)、キー係合部、嵌合面部、螺子部を直接形成する構成を採用できる他、出力歯車、出力プーリ、出力スプロケット等を、前記トルク伝達軸と一体に設けたり、或いは、別体として結合固定する構成を採用できる。又、前記トルク伝達軸には、複数の出力部を設ける事も可能であり、この場合には、例えば歯数の異なる複数の出力歯車を設けたり、種類の異なる出力部(例えば出力プーリと出力歯車等)を設ける事ができる。
【0017】
又、本発明を実施する場合には、例えば、前記トルク伝達軸を、ハウジング等の使用時にも回転しない部分に対し、1乃至複数の軸受を用いて回転自在に支持する。この場合に使用する軸受としては、例えば深溝型、アンギュラ型等の玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、ラジアルニードル軸受、自動調心ころ軸受、滑り軸受等を使用できる。又、複数の軸受を使用する場合には、例えば、前記トルク伝達軸の軸方向中間部のうち、トルクの入力部と出力部との間部分を、回転自在に支持する事ができる。
又、本発明を実施する場合には、例えば、前記トルク伝達軸にトルクを入力する動力源の回転軸を、このトルク伝達軸と同軸、平行、又は直角に配置する事ができる。
【発明の効果】
【0018】
上述の様に構成する本発明のトルク測定装置付回転伝達装置によれば、センサの取り付け作業性を良好にできると共に、ハーネスの配線作業の簡略化を図れ、コスト及び重量の低減を図れる。
即ち、本発明の場合には、トルク伝達軸が伝達するトルクの大きさを検出する為に使用する特性変化部材を構成する第一、第二両被検出部を、1個所にまとめて隣接配置すると共に、これら第一、第両二被検出部に、1個のセンサ装置の検出部を対向させる構成を採用している。この為、このセンサ装置の取り付け作業性を良好にできる。又、ハーネスの本数を2本から1本に減らす事ができる為、ハーネスの配線作業を簡略化できると共に、コスト及び重量の低減を図れる。
【0019】
又、
本発明の場合には、第一特性変化部材を、前記トルク伝達軸に比べて寸法の小さい内輪に取り付けている為、このトルク伝達軸に取り付ける場合に比べて、第一特性変化部材の取り付け作業性を良好にする事ができる。
又、請求項
2に記載した発明の場合には、トルク伝達軸の内径側に配置された内軸を、このトルク伝達軸により軸方向に離隔した2個所で支持する事ができる。この為、トルク伝達軸の回転振動が大きくなる領域(高トルク、高速回転域)であっても、前記内軸の振れを抑える事ができる。従って、この内軸に取り付けられた第二特性変化部の振れを抑える事ができる。この結果、この第二特性変化部の振れに基づき、トルクの測定性能が低下する(センサ装置の分解性能が悪化する)事を防止できる。更に、前記内軸の軸方向中間部外周面に、摩耗防止の為の表面処理を施せば、この内軸の外周面のうちで、前記トルク伝達軸によって案内支持される面に、過度の摩耗が生じる事を有効に防止できる
。
又、本発明を実施する場合に、センサ装置を、トルク伝達軸を回転自在に支持した転がり軸受を構成する外輪に取り付ければ、このセンサ装置を構成する検出部と、特性変化部材を構成する第一、第二両被検出部との隙間管理を容易に且つ厳密に行う事ができる。これに対し、前記センサ装置を、ハウジングに取り付ければ、ハウジングの変形がトルクの検出精度に与える影響を小さくできる。
更に、前記トルク伝達軸に関して、その表面硬さをHV400以上とし、且つ、表面炭素濃度を0.2%以上とすれば、前記トルク伝達軸の耐久性の向上を図れる為、自動車や風力発電装置等、特に耐久性が要求される用途に好ましく適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[実施の形態の第1例]
本発明の実施の形態の第1例に就いて、
図1を参照しつつ説明する。本例のトルク測定装置付回転伝達装置5は、例えば自動車用の自動変速機に組み込んで使用する。この様なトルク測定装置付回転伝達装置5は、図示しないハウジング(ミッションケース)と、ベルト式CVT等のインプットシャフト(又はカウンタシャフト)として機能する中空状(中空筒状)のトルク伝達軸6と、転がり軸受7と、出力歯車8と、内軸9と、第一エンコーダ10と、第二エンコーダ11と、1個のセンサユニット12とを備える。
【0022】
前記トルク伝達軸6は、炭素鋼の如き合金鋼により中空円筒状に造られたもので、軸方向一端部(
図1の右端部)外周面に、トルクの入力部であるスプライン部(雄スプライン部)13が形成されている。このスプライン部13には、図示しないクラッチ、筒型軸継手、フランジ型軸継手、流体継手(トルクコンバータを含む)等の動力継手がスプライン係合され、前記トルク伝達軸6と同軸上に配置されたエンジンやモータ等の動力源の回転軸と接続されている。尚、前記スプライン部13には、図示しない入力歯車をスプライン係合し、前記トルク伝達軸6とは同軸上に存在しない動力源の回転軸と接続する事も可能である。又、このトルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分(
図1の左端寄り部分)は、前記ハウジングに対し、前記転がり軸受7により回転自在に支持されている。従って、本例の場合には、前記トルク伝達軸6は、片持ち式の支持構造となる。更に、本例の場合には、このトルク伝達軸6に、焼き入れ、焼き戻し処理等の熱処理を行い、このトルク伝達軸6aの表面硬さをHV400以上とすると共に、表面炭素濃度を0.2%以上としている。
【0023】
前記転がり軸受7は、例えば深溝型、アンギュラ型等の玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、ラジアルニードル軸受、自動調心ころ軸受等であり、それぞれが円環状の外輪及び内輪と、複数個の転動体とから構成されている。このうちの外輪は、前記ハウジングに内嵌固定されており、前記内輪は、前記トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分に外嵌固定されている。前記各転動体は、前記外輪の内周面に形成された外輪軌道と、前記内輪の外周面に形成された内輪軌道との間に、保持器により保持された状態で、転動自在に設けられている。
【0024】
前記出力歯車8は、炭素鋼の如き合金鋼製のはすば歯車又は平歯車であり、前記トルク伝達軸6の軸方向中間部に、このトルク伝達軸6と一体に形成(固定)されている。尚、前記出力歯車8を、このトルク伝達軸6とは別体として、このトルク伝達軸6の軸方向中間部外周面に外嵌固定する事もできる。この場合には、この嵌合部を、同心性を確保する為の円筒面嵌合部と、相対回転を防止する為のインボリュートスプライン係合部とを、軸方向に隣接配置した構成を採用できる。
【0025】
前記内軸9は、炭素鋼の如き合金鋼又は合成樹脂により略円柱状(又は円管状)に造られたもので、前記トルク伝達軸6の内径側に、このトルク伝達軸6と同心に配置されている。又、前記内軸9は、その軸方向一端部(
図1の右端部)を、このトルク伝達軸6の軸方向一端部に相対回転不能に連結すると共に、その軸方向他端部(
図1の左端部)を、前記トルク伝達軸6の軸方向他端開口から軸方向他側に突出させている。図示の構造の場合には、前記内軸9の軸方向一端部を、前記トルク伝達軸6の軸方向一端部に相対回転不能に連結する為に、この内軸9の軸方向一端部に設けた大径部41の外周面と、このトルク伝達軸6の軸方向一端部内周面とを、相対回転不能に締り嵌めにより嵌合固定している。尚、これら両周面同士を、相対回転不能に連結する為に、例えばインボリュートスプラインやキーによる係合を採用する事もできる。又、本例の場合には、前記内軸9のうち、前記大径部41から軸方向に外れた部分の外周面と、前記トルク伝達軸6の内周面との間部分には、軸方向全長且つ全周に亙って、隙間(微小隙間)が設けられている。この間部分には、潤滑油を充満させて、フィルムダンパとして機能させる事もできる。
【0026】
前記第一エンコーダ10は、前記転がり軸受7を構成する内輪に支持固定されている。言い換えれば、この第一エンコーダ10は、この転がり軸受7を構成する内輪を介して、前記トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分に間接的に取り付けられている。この為、前記第一エンコーダ10は、このトルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分と共に(同期して)回転可能である。これに対し、前記第二エンコーダ11は、前記内軸9のうちで、前記トルク伝達軸6の軸方向他端開口から軸方向他側に突出した部分(軸方向他端部)に外嵌固定されている。言い換えれば、前記第二エンコーダ11は、前記内軸9を介して、前記トルク伝達軸6の軸方向一端部に間接的に取り付けられている。この為、前記第二エンコーダ11は、このトルク伝達軸6の軸方向一端部と共に(同期して)回転可能である。
【0027】
又、前記第一、第二両エンコーダ10、11は、前記転がり軸受7を構成する内輪又は前記内軸9の軸方向他端部に支持固定される、磁性金属板から造られた断面クランク形で円環状の支持環14、15と、これら各支持環14、15の外周面に固定された、円筒状の永久磁石製のエンコーダ本体16、17とから成る。尚、これらエンコーダ本体16、17中に含有する磁性粉としては、例えば、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト等のフェライト系の磁性粉や、サマリウム−鉄、サマリウム−コバルト、ネオジウム−鉄−ボロン等の希土類元素の磁性粉を採用できる。そして、前記第一エンコーダ10を構成するエンコーダ本体16の外周面を、第一被検出部18とし、又、前記第二エンコーダ11を構成するエンコーダ本体17の外周面を、第二被検出部19としている。これら第一、第二両被検出部18、19は、互いの直径が等しく、互いに同心に、且つ、軸方向に隣り合う状態で近接(例えば軸方向に10mm以内、好ましくは5mm以内の間隔をあけて)配置されている。又、前記第一、第二両被検出部18、19には、それぞれS極とN極とが、円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されており、磁気特性を円周方向に関して交互に且つ等ピッチで変化させている。前記第一、第二両被検出部18、19の磁極(S極、N極)の総数は、互いに一致している。尚、第一エンコーダ(エンコーダ本体)を、内輪に対して支持環を介する事なく直接取り付けても良い。又、第二エンコーダを構成する支持環の内周面に雌ねじを形成し、この雌ねじを内軸の軸方向他端部に形成した雄ねじ部に螺合させる事により、第二エンコーダを内軸の軸方向他端部に取り付けても良い。
【0028】
前記センサユニット12は、合成樹脂製のホルダ20と、このホルダ20の先端部に軸方向に隣接する状態で包埋(保持)された、第一、第二両センサ21、22と、1本のハーネス23とを備える。これら第一、第二両センサ21、22のそれぞれの検出部(第一検出部及び第二検出部)には、ホール素子、ホールIC、MR素子(GMR素子、TMR素子、AMR素子を含む)等の磁気検出素子が組み込まれており、前記ホルダ20を前記転がり軸受7を構成する外輪に支持固定した状態で、このうちの第一センサ21の第一検出部を、前記第一被検出部18に、前記第二センサ22の第二検出部を、前記第二被検出部19に、それぞれ近接対向させている。この為、前記第一センサ21は、前記第一被検出部18の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させ、又、前記第二センサ22は、前記第二被検出部19の磁気特性変化に対応して出力信号を変化させる。本例の場合には、この様な前記第一、第二両センサ21、22の出力信号を、軸方向に引き出された1本のハーネス23を通じて、図示しない演算器に送信する。又、図示の構造の場合、前記ホルダ20は、前記転がり軸受7を構成する外輪の軸方向他端面に支持固定されている。
【0029】
以上の様な構成を有する本例のトルク測定装置付回転伝達装置5の場合、前記センサユニット12を構成する第一、第二両センサ21、22の出力信号は、前記トルク伝達軸6と共に前記第一、第二両エンコーダ10、11が回転する事に伴い、それぞれ周期的に変化する。ここで、この変化の周波数(及び周期)は、前記トルク伝達軸6の回転速度に見合った値をとる。従って、これら周波数(又は周期)と回転速度との関係を予め調べておけば、この周波数(又は周期)に基づいて、この回転速度を求められる。又、前記トルク伝達軸6によりトルクを伝達する際には、前記スプライン部13と前記出力歯車8との間部分が弾性的に捩れ変形する事に伴い、前記トルク伝達軸6の軸方向両端部同士(第一、第二両エンコーダ10、11同士)が回転方向に相対変位する。そして、この様に第一、第二両エンコーダ10、11同士が回転方向に相対変位する結果、前記第一、第二両センサ21、22の出力信号同士の間の位相差比(=位相差/1周期)が変化する。ここで、この位相差比は、前記トルクに見合った値をとる。従って、これら位相差比とトルクとの関係を予め調べておけば、この位相差比に基づいて、このトルクを求められる。
【0030】
特に本例のトルク測定装置付回転伝達装置5によれば、センサの取り付け作業性を良好にできると共に、ハーネスの配線作業の簡略化を図れ、コスト及び重量の低減を図れる。
即ち、本例の場合には、前記トルク伝達軸6の軸方向一端部の位相を、このトルク伝達軸6の内径側に配置され、その軸方向他端部がこのトルク伝達軸6の軸方向他端開口から突出した前記内軸9に伝達する事ができる。この為、このトルク伝達軸6の軸方向他端部の位相を検出する為の前記第一エンコーダ10と、このトルク伝達軸6の軸方向一端部の位相を検出する為の第二エンコーダ11とを、このトルク伝達軸6の軸方向に関して他端側部分に隣接配置する(まとめて配置する)事ができる。従って、本例の場合には、前記第一、第二両センサ21、22を前記ホルダ20に保持した1個のセンサユニット12を使用できる為、センサの取り付け作業性を良好にできる。具体的には、前記ホルダ20を、前記転がり軸受7を構成する外輪に取り付ける作業を1回行うだけで、前記第一、第二両センサ21、22を高精度に位置決めする事ができる。又、ハーネスの本数を2本から1本に減らす事ができる為、ハーネスの配線作業の簡略化を図れる(取り回し性を良好にできる)と共に、コスト及び重量の低減を図れる。
【0031】
又、本例の場合には、前記ホルダ20を、前記転がり軸受7を構成する外輪に支持固定している為、前記第一、第二両センサ21、22の検出部と、前記第一、第二両エンコーダ10、11(特に内輪に支持された第一エンコーダ10)の被検出部(第一、第二両被検出部18、19)との径方向に関する隙間を、容易に且つ厳密に管理する事が可能になる。又、前記第一エンコーダ10を、前記トルク伝達軸6に比べて、寸法が小さく且つ重量の軽い前記転がり軸受7を構成する内輪に取り付けている為、この第一エンコーダ10を、前記トルク伝達軸6に直接取り付ける場合に比べて、この第一エンコーダ10の取り付け作業性を良好にする事ができる。更に、本例の場合には、前記トルク伝達軸6の表面硬さをHV400以上とすると共に、表面炭素濃度を0.2%以上としている為、このトルク伝達軸6aの耐久性の向上を図れる。従って、本例のトルク測定装置付回転支持装置を、自動車や風力発電装置等、特に耐久性が要求される用途に好ましく適用できる。しかも、本例の場合には、前記トルク伝達軸6を前記転がり軸受7により回転自在に支持している為、滑り軸受により支持する構成を採用した場合に比べて、前記トルク伝達軸6に作用する摩擦トルクを小さく抑えられる。この為、このトルク伝達軸6が伝達するトルクを大きく確保できて、前記第一、第二両センサ21、22の出力信号から得られるトルクの測定精度を良好にできる。
【0032】
[
参考例の第
1例]
本発明
に関する参考例の第
1例に就いて、
図2を参照しつつ説明する。本
参考例の特徴は、第一エンコーダ10aを構成する支持環14aを、トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分を回転自在に支持する転がり軸受7を構成する内輪に代えて、このトルク伝達軸6の軸方向他端部外周面に直接支持する(外嵌固定する)構成を採用した点にある。この様な構成を有する本
参考例の場合には、前記実施の形態の第1例の場合(内輪に取り付ける場合)に比べて、前記支持環14aを小型化し易くなる為、製造コストの低減を図る上で有利になる。又、本
参考例の場合にも、第一エンコーダ(エンコーダ本体)を、トルク伝達軸6の軸方向他端部に対し支持環を介さずに、直接固定する事もできる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0033】
[実施の形態の第
2例]
本発明の実施の形態の第
2例に就いて、
図3を参照しつつ説明する。本例の特徴は、センサユニット12aを構成するホルダ20aを、トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分を回転自在に支持する転がり軸受7を構成する外輪に代えて、図示しないハウジングに対して支持固定する構成を採用した点にある。この様な構成を有する本例の場合には、前記実施の形態の第1例の場合(外輪に取り付ける場合)に比べて、ホルダ20aの取付構造に関する自由度を高くできる。又、ハウジングの変形時に、第一、第二両センサ21、22が、第一、第二エンコーダ10、11に対して同方向に変位する為、前記ハウジングの変形が、トルクの検出精度に与える影響を小さくできる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例及び
参考例の第
1例の場合と同様である。
【0034】
[
参考例の第
2例]
本発明
に関する参考例の第
2例に就いて、
図4を参照しつつ説明する。本
参考例の特徴は、第一エンコーダ10aを構成する支持環14aを、トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分を回転自在に支持する転がり軸受7を構成する内輪に代えて、このトルク伝達軸6の軸方向他端部に直接支持する(外嵌固定する)構成を採用すると共に、センサユニット12aを構成するホルダ20aを、トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分を回転自在に支持する転がり軸受7を構成する外輪に代えて、図示しないハウジングに対して支持固定する構成を採用した点にある。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例〜第
2例
及び参考例の第1例の場合と同様である。
【0035】
[
参考例の第
3例]
本発明
に関する参考例の第
3例に就いて、
図5〜7を参照しつつ説明する。本
参考例のトルク測定装置付回転伝達装置5aは、図示しないハウジング(ミッションケース)と、インプットシャフト(又はカウンタシャフト)として機能する中空状(中空筒状)のトルク伝達軸6と、転がり軸受7と、出力歯車8と、1個のエンコーダ24と、1個のセンサユニット12とを備える。
【0036】
前記エンコーダ24は、前記転がり軸受7を構成する内輪に支持固定される、磁性金属板から造られた断面クランク形で円環状の支持環25と、この支持環25の外周面に全周に亙り固定された、円環状で永久磁石製のエンコーダ本体26とから構成されている。このエンコーダ本体26の外周面には、S極とN極とが円周方向に関して交互に且つ等ピッチで配置されており、これらS極とN極との境界は、軸方向中央部が円周方向に関して最も突出した(又は凹んだ)V字形になっている。そして、被検出面である前記エンコーダ本体26の外周面のうち、幅方向片半部(
図5、6の右半部、
図7の下半部)を、円周方向に関する磁気特性変化の位相がこの外周面の幅方向に対して所定方向に漸次変化する第一被検出部27とし、幅方向他半部(
図5、6の左半部、
図7の上半部)を、円周方向に関する磁気特性変化の位相が前記外周面の幅方向に対して前記所定方向と逆方向に漸次変化する第二被検出部28としている。尚、図示は省略するが、エンコーダを、トルク伝達軸6の軸方向他端部に、直接外嵌固定する構造を採用する事もできる。
【0037】
本
参考例の場合には、前記トルク測定装置付回転伝達装置5a全体として、1個のエンコーダ24のみを用いており、このエンコーダ24に、前記第一被検出部27と前記第二被検出部28とを設けている。この為、前記トルク伝達軸6の内側には、前記実施の形態の第1〜
2例
及び参考例の第1〜2例の構造の様に、内軸9は設けていない。従って、図示は省略するが、トルク伝達軸を中実状とする事もできる。
【0038】
又、本
参考例の場合にも、前記センサユニット12を構成するホルダ20を、前記トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分を回転自在に支持する転がり軸受7を構成する外輪に対して支持固定している。そして、この状態で、前記ホルダ20の先端部に包埋された第一、第二センサ21、22のうち、第一センサ21の第一検出部を、前記第一被検出部27に、前記第二センサ22の第二検出部を、前記第二被検出部28に、それぞれ近接対向させている。又、前記第一、第二両センサ21、22の検出部が、前記エンコーダ24の外周面に対向する位置は、このエンコーダ24の円周方向に関して同じ位置としている。言い換えれば、前記第一、第二両センサ21、22の検出部は、前記トルク伝達軸6の中心軸を含む同一仮想平面上に配置されている。尚、図示は省略するが、センサユニットを構成するホルダを、ハウジングに対して支持固定する事もできる。
【0039】
又、前記トルク伝達軸6に、アキシアル荷重(初期設定予圧に基づくアキシアル荷重も含む)が作用していない状態で、N極に着磁された部分とS極に着磁された部分との軸方向中間部で円周方向に関して最も突出した部分(境界の傾斜方向が変化する部分)が、前記第一、第二両センサ21、22の検出部同士の間の丁度中央位置に存在する様に、前記各部材21、22、24の設置位置を規制している。従って、この様な中立状態では、前記第一、第二両センサ21、22の検出部は、
図7の(A)の実線イ、イ上、即ち、前記最も突出した部分から軸方向に同じだけずれた部分に対向する。従って、前記第一、第二両センサ21、22の出力信号の位相は、同図の(C)に示す様に一致する。
【0040】
又、前記トルク伝達軸6は、図示しないハウジングに対して、前記転がり軸受7により回転自在に支持されており、この転がり軸受7には予圧(初期設定予圧)が付与されている。この為、前記トルク伝達軸6は、この予圧の大きさに応じた分だけ、前記中立状態からアキシアル方向に僅かに変位する。又、前記トルク伝達軸6は、軸方向中間部に設けられたはすば歯車である出力歯車8と、図示しない相手歯車である別のはすば歯車との噛合部に作用する反力のうち、アキシアル方向の分力(アキシアル荷重)に基づき、アキシアル方向に変位する。従って、前記トルク伝達軸6に、この様な予圧やアキシアル荷重が作用した状態では、前記第一、第二両センサ21、22の検出部は、
図7の(A)の実線イ、イ上から幅方向に関して同方向にずれ、破線ロ、ロ上、又は、鎖線ハ、ハ上に対向する。そして、この状態では、前記第一、第二両センサ21、22の出力信号の位相は、同図の(B)又は(D)に示す様にずれる。この様にして生じる第一、第二両センサ21、22の出力信号同士の間に存在する位相差(位相差比)は、前記噛合部に作用するアキシアル荷重に基づくアキシアル変位量と、前記予圧に基づくアキシアル変位量との合計に見合った値となる。従って、前記第一、第二両センサ21、22の出力信号同士の間に存在する位相差から、前記予圧に基づくアキシアル変位量分を差し引く(組み付け時に校正を行う)事で、前記トルク伝達軸6が伝達するトルクの大きさに見合った値である、前記噛合部に作用するアキシアル荷重に基づくアキシアル変位量を求められる。この結果、本
参考例の場合には、前記演算器に予め記憶させておいた、前記位相差(位相差比)と、前記アキシアル変位量(アキシアル荷重)と、前記トルクとの関係を表す、式やマップを利用して、前記トルク伝達軸6が伝達するトルクの大きさを求める事ができる。尚、本
参考例を実施する場合には、転がり軸受に予圧を付与した状態を中立状態として、トルク伝達軸が伝達するトルクを求める事もできる。
【0041】
以上の様な構成を有する本
参考例の場合には、前記トルク測定装置付回転伝達装置5a全体として、1個のエンコーダ24を使用するのみで、前記トルク伝達軸6が伝達するトルクの大きさ及び方向を求める事ができる。この為、部品点数の削減に伴うコストの低減を図れる。又、前記トルク伝達軸6の内径側に、内軸9(
図1〜4参照)を配置しなくて済む為、このトルク伝達軸6の設計の自由度を向上できる。更には、このトルク伝達軸6の強度確保を図る面からも有利になる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0042】
[実施の形態の第
3例]
本発明の実施の形態の第
3例に就いて、
図8〜9を参照しつつ説明する。本例の場合には、転がり軸受7(
図9では円すいころ軸受)を構成する内輪に、トルク検出用有孔部材である、トルク検出用スリーブ29を支持固定している。これに対し、内軸9の軸方向他端部に、トルク検出用凹凸部材30を支持固定している。尚、図示は省略するが、トルク検出用スリーブを、トルク伝達軸6の軸方向他端部に、直接外嵌固定する構造を採用する事もできる。
【0043】
このうちのトルク検出用凹凸部材30は、鉄系合金等の磁性材製で、全体を円筒状に形成されており、軸方向中間部外周面に、外周面形状を円周方向に関する凹凸形状(歯車形状)とした、特許請求の範囲に記載した第二被検出部に相当するトルク検出用凹凸部31を設けている。尚、
図9には、内軸9の外周面に直接、トルク検出用凹凸部31を形成した構造を示している。
【0044】
一方、前記トルク検出用スリーブ29は、アルミニウム合金等の導電性を有する非磁性金属板製で、全体を段付円筒状に形成されており、前記転がり軸受7を構成する内輪に支持固定された大径筒部32と、小径筒部33とを有する。このうちの小径筒部33は、特許請求の範囲に記載した第一被検出部に相当し、前記トルク検出用凹凸部31(第二被検出部)の外径側に、このトルク検出用凹凸部31と径方向に近接した状態で同心に配置されている。又、この状態で、前記小径筒部33は、前記トルク検出用凹凸部材30と後述するコイルセンサユニット34との間部分に位置している。又、前記小径筒部33には、複数の略矩形の貫通孔である窓孔35、35が、軸方向に複列に、且つ、円周方向に関して等間隔に設けられており、これら両列の窓孔35、35の円周方向位相は、互いに半ピッチずれている。
【0045】
又、前記転がり軸受7を構成する外輪に対し、断面L字形で全体を円環状とした支持部材36を利用して、コイルセンサユニット34を支持固定している。このコイルセンサユニット34は、前記トルク検出用凹凸部31及び前記トルク検出用スリーブ29の小径筒部33の外径側に同心に配置されている。又、前記コイルセンサユニット34は、円筒状の検出本体37と、この検出本体の外周面から径方向外方に突出する状態で設けられた、図示しない樹脂製の台座と、この台座に植設された、図示しない複数本(例えば4本)の金属製のピンから成る接続端子とを備える。前記検出本体37は、コイルを巻回して成る円筒状の複数(図示の例では2つ)のコイルボビン38、38と、これら各コイルボビン38、38を覆った金属製のヨーク部材39とから成る。前記接続端子は、前記検出本体37の円周方向の一部に径方向外方に突出する状態で設けられており、前記各コイルボビン38、38に接続されている。又、前記接続端子は、図示しない回路基板に接続され、1本のハーネス23を通じて、前記コイルセンサユニット34の出力信号を演算器に送信する。尚、図示は省略するが、コイルセンサユニットを、ハウジングに対して支持固定する事もできる。
【0046】
上述の様な構成を有する本例のトルク測定装置付回転伝達装置5bの場合にも、前記トルク伝達軸6によりトルクが伝達されると、このトルクの方向及び大きさに応じた分だけ、このトルク伝達軸6の軸方向一端部に前記内軸9を介して間接的に取り付けられた前記トルク検出用凹凸部材30のトルク検出用凹凸部31と、前記トルク伝達軸6の軸方向他端寄り部分に前記内輪を介して間接的に取り付けられた前記トルク検出用スリーブ29の小径筒部33との、円周方向に関する位置関係が変化する。そして、この位置関係の変化に応じた分だけ、前記コイルセンサユニット34を構成するコイルボビン38、38のインピーダンスに変化が生じる。従って、このインピーダンス変化に基づいて、前記トルクの方向及び大きさを検出できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0047】
[実施の形態の第
4例]
本発明の実施の形態の第
4例に就いて、
図10を参照しつつ説明する。本例の特徴は、トルク伝達軸6を、図示しないハウジングに対して、1対の転がり軸受7、40により回転自在に支持し、前記トルク伝達軸6を両持ち梁式の支持構造とした点にある。即ち、本例の場合には、前記トルク伝達軸6の軸方向中間部のうち、軸方向一端部に設けられたスプライン部13と出力歯車8が固定された部分との間部分を、第二の転がり軸受40により回転自在に支持している。この第二の転がり軸受40としては、深溝型、アンギュラ型等の玉軸受、円すいころ軸受、円筒ころ軸受、ラジアルニードル軸受等を採用可能である。又、本例の場合には、前記1対の転がり軸受7、40同士で、互いの接触角を逆向きとしている。この様な構成を有する本例の場合には、前記トルク伝達軸6の支持剛性を高める事ができる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同様である。
【0048】
[実施の形態の第
5例]
本発明の実施の形態の第
5例に就いて、
図11を参照しつつ説明する。本例の特徴は、トルク伝達軸6aをカウンタシャフトとして、このトルク伝達軸6aの軸方向中間部で、1対の転がり軸受7、40同士の間部分に、2個の出力歯車8a、8bを固定している(トルク伝達軸6aと一体に設けている)点にある。又、本例の場合、これら両歯車8a、8bの外周面に形成された歯数を、自動変速機の段数に応じて、互いに異ならせている。尚、出力歯車は、トルク伝達軸に対して一体的に設けても良いし、結合固定しても良い。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例及び第
4例の場合と同じである。
【0049】
[実施の形態の第
6例]
本発明の実施の形態の第
6例に就いて、
図12を参照しつつ説明する。本例の特徴は、トルク伝達軸6bの軸方向他端寄り部分の内周面に、その他の部分よりも内径寸法が小さくなった案内面42を形成している。又、前記トルク伝達軸6bの内径側に配置された内軸9aの軸方向中間部他端寄り部分で、径方向に関して前記案内面42と対向する部分に、軸方向一端部に設けた大径部41よりは外径寸法が小さいが、その他の部分よりは外径寸法が大きくなった被案内面43を形成している。そして、本例の場合には、前記案内面42とこの被案内面43とを隙間を介して径方向に近接対向させて、この被案内面43をこの案内面42によって案内支持している。尚、前記隙間の大きさは、小さい程好ましいく、例えば100μm以下とする事が好ましく、更に嵌めあい公差で、例えばH7/g6又はH7/g7とする事が好ましい。
【0050】
以上の様な構成を有する本例の場合には、前記内軸9aを、軸方向一端部に設けた大径部41と、軸方向中間部他端寄り部分に設けた前記被案内面43とにより、前記トルク伝達軸6bに対して軸方向に離隔した2個所で支持する事ができる(両持ち梁式の支持構造を採用できる)。この為、前記トルク伝達軸6bの回転振動が大きくなる領域(高トルク、高速回転域)であっても、前述した実施の形態の第1例の構造の様に、大径部41による1個所のみで支持する構造(片持ち式の支持構造)を採用した場合に比べて、前記内軸9aの回転振れを抑える事ができる。従って、この内軸9aの軸方向他端部に固定した第二エンコーダ11の振れを抑える事ができる。この結果、本例の構造によれば、この第二エンコーダ11の振れに基づき、トルクの測定性能が低下する事を防止できる。
その他の構成及び作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例の場合と同じである。
【0051】
[実施の形態の第
7例]
本発明の実施の形態の第
7例に就いて、
図13を参照しつつ説明する。本例の場合には、内軸9bの軸方向中間部他端寄り部分の外周面に形成された被案内面43aに、摩耗を防止する為の表面処理を施している。より具体的には、炭素鋼製の前記内軸9bに、焼入れ、焼戻し処理を施して、その硬度をHRC30〜50に規制し、その後、前記被案内面43aに、以下の(1)〜(6)の中から選択される表面処理を施している。
(1)二硫化モリブデン、二硫化タングステン、PTFE等の固体潤滑膜(デフリックコート)を、例えば固体潤滑剤の粒子を噴射して堆積させるショットピーニング加工により形成する。
(2)ダイヤモンドライクカーボン(DLC)を、プラズマCVD法やスパッタリング法などにより形成する。
(3)金、銅、銀、亜鉛、鉛、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム等の金属皮膜(例えば10μm以下の膜)を、例えばショットピーニング加工又はメッキにより形成する。
(4)リン酸マンガン、リン酸亜鉛又はリン酸亜鉛カルシウム等のリン酸塩処理を施し、化成処理膜を形成する。
(5)四三酸化鉄被膜処理(黒染め処理)により酸化被膜を形成する。
(6)硬質クロムメッキ、ニッケル亜鉛メッキ、無電解ニッケルメッキなどの硬質皮膜を形成する。
又、本例の場合には、上述の様な(1)〜(6)の中から選択される表面処理を施した後、前記被案内面43aに潤滑油やグリース等の潤滑剤を塗布している。
【0052】
以上の様な構成を有する本例の場合には、前記被案内面43aに、トルク伝達軸6bの内周面に形成された案内面42との擦れ合いに伴って、過度の摩耗が生じる事を有効に防止できる。この為、発生した摩耗粉が歯車同士の噛合部や転がり接触部等に侵入して、各部の寿命を低下させる事を有効に防止できる。
その他の構成及び効果に就いては、前記実施の形態の第1例及び第
6例の場合と同じである。
【0053】
[実施の形態の第
8例]
本発明の実施の形態の第
8例に就いて、
図14を参照しつつ説明する。本例の場合には、トルク伝達軸6bの内周面に形成された案内面42と、内軸9aの外周面に形成した被案内面43との間に、これらトルク伝達軸6b及び内軸9aとは別体の、環状のブッシュ51を介在させている。このブッシュ51としては、例えば滑り軸受やラジアルニードル軸受を採用する事ができる。
【0054】
以上の様な構成を有する本例の場合には、前記案内面42と前記被案内面43とが直接擦れ合う事がない為、これら両面42、43が摩耗する事に起因した摩耗粉が発生する事を防止できる。又、これら両面42、43に、仕上処理を施したり、摩耗防止の為の表面処理を施す必要がなくなる為、装置の加工コストを抑える事もできる。
その他の構成及び効果に就いては、前記実施の形態の第1例及び第
6例の場合と同じである。
【0055】
[実施の形態の第
9例]
本発明の実施の形態の第
9例に就いて、
図15を参照しつつ説明する。本例の場合には、上述した実施の形態
及び参考例の各例の構造とは異なり、トルク伝達軸6cにトルクを伝達する動力源が、このトルク伝達軸6cと同軸上に配置されない構造の1例を示している。この様な本例の場合、このトルク伝達軸6cにトルクを入力する為の入力歯車44を、このトルク伝達軸6cの軸方向中間部に、このトルク伝達軸6cと一体に設けており、トルクを出力する為の出力歯車8cを、このトルク伝達軸6cの軸方向一端寄り部分に、このトルク伝達軸6cと一体に設けている。尚、前記入力歯車44及び前記出力歯車8cとしては、平歯車やはすば歯車を採用できる。又、本例の場合には、前記トルク伝達軸6cのうち、前記入力歯車44及び前記出力歯車8cが設置された部分を挟んだ両側部分(軸方向他端寄り部分及び軸方向一端部)を、1対の転がり軸受45a、45bにより、図示しないハウジングに対し回転自在に支持している。尚、この様な構成を有する本例の構造は、ディファレンシャルギヤを持つ軸と対になる軸である、例えばカウンタ軸に適用できる。
前記トルク伝達軸6cに関するトルクの入力部及び出力部、並びに、このトルク伝達軸6cの支持構造が異なる以外の構成及び得られる作用効果に就いては、前記実施の形態の第1例及び第
6例の場合と同様である。
【0056】
[実施の形態の第
10例]
本発明の実施の形態の第
10例に就いて、
図16を参照しつつ説明する。本例の場合には、上述した実施の形態の第
9例の構造と同様に、トルク伝達軸6dにトルクを入力する為の入力歯車44を、このトルク伝達軸6dの軸方向中間部に、このトルク伝達軸6dと一体又は別体に設けると共に、このトルク伝達軸6dからトルクを出力する為の出力歯車8cを、このトルク伝達軸6dの軸方向一端寄り部分に、このトルク伝達軸6dと一体又は別体に設けている。そして、特に本例の場合には、この様なトルク伝達軸6dをハウジングに対して回転自在に支持する為の1対の転がり軸受45a、45cの配置を、上述した実施の形態の第
9例の構造の場合とは異ならせている。即ち、本例の場合には、前記トルク伝達軸6dのうち、前記出力歯車8cが設置された部分よりも軸方向一端側ではなく、この出力歯車8cが設置された部分よりも軸方向中央寄り部分を、前記転がり軸受45cにより支持している。これにより、前記入力歯車44を軸方向両側から挟む様に、前記両転がり軸受45a、45cを配置している。尚、前記入力歯車44及び前記出力歯車8cとしては、平歯車、はすば歯車、かさ歯車又はハイポイドギヤを採用できる。
以上の様に、前記トルク伝達軸6dを回転自在に支持する為の支持構造が異なると共に、本例の構造では案内面と被案内面とを設ける構造(両持ち梁式の支持構造)を採用していない点を除き、上述した実施の形態の第
9例の場合と同様である。
【0057】
[実施の形態の第
11例]
本発明の実施の形態の第
11例に就いて、
図17を参照しつつ説明する。本例の場合には、上述した実施の形態の第
10例の構造と同様に、トルク伝達軸6dにトルクを入力する為の入力歯車44を、このトルク伝達軸6dの軸方向中間部に、このトルク伝達軸6dと一体又は別体に設けると共に、このトルク伝達軸6dからトルクを出力する為の出力歯車8cを、このトルク伝達軸6dの軸方向一端寄り部分に、このトルク伝達軸6dと一体又は別体に設けている。そして、特に本例の場合には、この様なトルク伝達軸6dをハウジングに対して回転自在に支持する為に、3個の転がり軸受45a、45c、45dを使用している。即ち、本例の場合には、前記実施の形態の第
10例の構造と同様の位置を回転自在に支持する2個の転がり軸受45a、45cに加えて、前記トルク伝達軸6dのうち、前記入力歯車44が設置された部分の軸方向一端側に隣接した部分を、前記転がり軸受45dにより支持している。
その他の構成及び作用効果に就いては、上述した実施の形態の第
10例の場合と同様である。
【0058】
[実施の形態の第
12例]
本発明の実施の形態の第
12例に就いて、
図18を参照しつつ説明する。本例は、前述した実施の形態の第
9例の変形例である。即ち、この第
9例の場合には、トルク伝達軸6cの軸方向中間部に入力歯車44を設けていたのに対し、本例の場合には、トルク伝達軸6cの軸方向中間部に、ベルト式の入力プーリ46を固設している。又、この様なトルク伝達軸6cの軸方向両端部を、図示しないハウジングに対して、1対の転がり軸受45a、45bにより回転自在に支持している。そして、図示しないハウジングに対し1対の転がり軸受47a、47bにより回転自在に支持され、前記トルク伝達軸6cと平行に配置された中間軸48の軸方向中間部に固定された出力プーリ49と、前記入力プーリ46との間に、ベルト50を掛け渡している。
以上の様に、トルクを入力する為の入力部の構造が異なる以外の構造及び得られる作用効果に就いては、前記実施の形態の第
9例の場合と同様である。
尚、前記各プーリ46、49は、ベルト式無段変速機を構成するプーリとする事もできる。