特許第6361336号(P6361336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361336
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】電力変換装置一体型電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/06 20060101AFI20180712BHJP
   H02K 9/02 20060101ALI20180712BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180712BHJP
   H02K 5/18 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H02K9/06 F
   H02K9/02 B
   H05K7/20 H
   H02K5/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-142103(P2014-142103)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-19400(P2016-19400A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】松本 悟史
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−333596(JP,A)
【文献】 特表2009−502104(JP,A)
【文献】 特開2013−241877(JP,A)
【文献】 特開2014−082824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/06
H02K 5/18
H02K 9/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機への電力を変換する電力変換装置とが一体的に配置された電力変換装置一体型電動機であって、
前記電動機の回転軸の軸方向一端部が突出するようにして前記電動機を収納する電動機側筐体と、
前記電動機の回転軸の軸方向他端部側に配置されて前記電動機側筐体に接続され、前記電力変換装置を収納する電力変換装置側筐体と、
前記電動機側筐体から突出する前記電動機の回転軸の軸方向一端部に取付けられて前記電力変換装置側筐体側から前記電動機側筐体側に空気を流す外部ファンと、
前記電力変換装置側筐体のうち、前記電動機の回転軸の軸方向他端部側に形成され、前記電動機の回転軸の軸方向他端部側に突出するように形成された曲面端部と
を備えたことを特徴とする電力変換装置一体型電動機。
【請求項2】
少なくとも前記電力変換装置側筐体の外周面に放熱用のフィンを形成し、前記フィンの一部又は全部を前記電力変換装置側筐体の曲面端部より前記電動機の回転軸の軸方向他端部側に延長し且つ延長されたフィンの延長端部を前記電動機の回転軸の軸方向で同じ位置としたことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置一体型電動機。
【請求項3】
前記曲面端部が半球型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置一体型電動機。
【請求項4】
前記フィンの延長端部のうち、前記電動機の回転軸の径方向外側部を前記曲面端部に倣うように円弧状にしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の電力変換装置一体型電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機に電力変換装置が一体的に取付けられた電力変換装置一体型電動機に関し、例えば電力変換装置が電動機の回転軸の軸線方向に配置されるような場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
種々の機器の駆動源として用いられる電動機として、電力変換装置を一体的に備えた電力変換装置一体型電動機が知られている。下記特許文献1には、電動機と電力変換装置とを一体化し、電動機の動力で回転する内部ファンを電力変換装置側の筐体内に備えた電力変換装置一体型電動機が開示されている。この電力変換装置一体型電動機では、内部ファンによって電力変換装置側筐体の内部空間内で空気の循環流を発生し、電力変換装置側筐体内の配線基板を冷却する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1419568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、電力変換装置側筐体の内部空間内の循環流で冷却された配線基板の熱は、結局、電力変換装置側筐体に伝熱される。この電力変換装置側筐体には、放熱用のフィンが設けられているが、この電力変換装置側筐体自体の温度が冷却されなければ、如何に内部の循環流で配線基板を冷却しようとしても、筐体内部空間内の冷却には自ずと限界が生じる。この問題は、電力変換装置側筐体内の内部ファンの有無に関わらず、電力変換装置側筐体の内部空間の温度は、最終的には電力変換装置側筐体自体に伝熱されるのであるから、電力変換装置側筐体自体を冷却することが重要である。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、電力変換装置側筐体自体を効率よく冷却することが可能な電力変換装置一体型電動機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によれば、電動機と、電動機への電力を変換する電力変換装置とが一体的に配置された電力変換装置一体型電動機であって、電動機の回転軸の軸方向一端部が突出するようにして電動機を収納する電動機側筐体と、電動機の回転軸の軸方向他端部側に配置されて電動機側筐体に接続され、電力変換装置を収納する電力変換装置側筐体と、電動機側筐体から突出する電動機の回転軸の軸方向一端部に取付けられて電力変換装置側筐体側から電動機側筐体側に空気を流す外部ファンと、電力変換装置側筐体のうち、電動機の回転軸の軸方向他端部側に形成され、電動機の回転軸の軸方向他端部側に突出する曲面端部とを備えた電力変換装置一体型電動機が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電力変換装置一体型電動機によれば、電力変換装置側筐体側から電動機側筐体側への空気の流れが、特に電力変換装置側筐体の外周面から乖離することがなく、電力変換装置側筐体を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の電力変換装置一体型電動機の第1実施形態を示す外観斜視図である。
図2図1の電力変換装置一体型電動機の縦断面図である。
図3図1の電力変換装置一体型電動機の外周部における空気の流れの説明図である。
図4図1の電力変換装置一体型電動機の使用説明図である。
図5】本発明の電力変換装置一体型電動機の第2実施形態を示す外観斜視図である。
図6】本発明の電力変換装置一体型電動機の比較例を示すものであり、外周部における空気の流れの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の電力変換装置一体型電動機の第1実施形態について、図面を引用して説明する。第1実施形態の電力変換装置一体型電動機の外観を示す図1では、図の手前側に電力変換装置1が、図の奥側に電動機2が配置されており、それらは一連に連結されている。このうち、電力変換装置1は電力変換装置側筐体3に収納され、電動機2は電動機側筐体4に収納され、電力変換装置側筐体3と電動機側筐体4とは筐体連結部材兼蓋部材5を介して連結されている。これらの筐体3、4や蓋部材5は、凡そ円筒形であるが、電力変換装置側筐体3の電動機2側と反対側の先端部(底板部3a)は、後述するように、半球型の曲面端部6となっている。また、これらの筐体3、4や蓋部材5は、熱伝導性に優れた金属材料、例えばアルミダイキャストで形成されている。
【0009】
この電力変換装置一体型電動機の縦断面を示す図2では、電動機2の回転軸7が図の左右方向に向けて配置されている。電動機側筐体4は、円板状の底板部4aが図2の右方に配置される有底円筒体である。また、筐体連結部材兼蓋部材5は、電動機側筐体4と同じ外径の円筒体であり、その軸方向中央部には蓋部5aが形成されている。電動機側筐体4は、図2の左方端部の開口部が筐体連結部材兼蓋部材5の蓋部5aで覆われ、これにより電動機側筐体4が密閉されている。回転軸7は、電動機側筐体4の底板部4aの中央部及び筐体連結部材兼蓋部材5の蓋部5aの中央部に圧入された軸受8で回転自在に支持されている。この回転軸7は、図2の右方端部、即ち軸方向一端部が電動機側筐体4の底板部4aを貫通して外部に突出している。
【0010】
電動機側筐体4と筐体連結部材兼蓋部材5とで囲まれた電動機側内部空間では、回転軸7の外周にロータコア9が一体的に形成され、ロータコア9の径方向外側には、電動機側筐体4に固定されるステータコア10が形成されている。これにより、電動機側筐体4内には電動機2が構成され、例えばステータコア10に電力を供給することで回転軸7が回転される。また、例えばステータコア10への供給電力を調整することにより、回転軸7の回転状態を調整することが可能となる。なお、回転軸7の外部突出部分のうち、電動機側筐体4に近い箇所には、電力変換装置側筐体3から電動機側筐体4に向けて空気の流れを創生するための外部ファン11が取付けられている。
【0011】
一方、電力変換装置側筐体3は、図2の左方端部、即ち電動機2の回転軸方向他端部の底板部3aが、外側に凸の半球型の曲面端部6になっている有底円筒体であり、図示右方端部の開口部が筐体連結部材兼蓋部材5の蓋部5aで覆われている。更に、電力変換装置側筐体3の周壁部3bと筐体連結部材兼蓋部材5の周壁部5bの間にはOリング12が介在され、これにより電力変換装置側筐体3が密閉されている。この電力変換装置側筐体3と筐体連結部材兼蓋部材5とで囲まれた電力変換装置側内部空間には、電力変換装置1としての中核をなすインバータモジュール13が収納されている。このインバータモジュール13は、例えば交流電圧を直流電圧に変換する電力変換部や、電動機2の回転軸7の回転状態を制御する制御部を備えている。制御部は、例えばステータコア10に供給する電力を電力変換部で変換された直流電圧のパルス幅変調などによって調整することで、電動機2の回転軸7の回転状態を制御する。
【0012】
このインバータモジュール13は、配線基板14上に形成されている。この配線基板14は、例えばガラスエポキシなどの樹脂からなる基板の表面に配線パターンが形成されたものである。この配線基板14は、電力変換装置側筐体3の内部に形成されている基板固定部15にビスなどの固定具16を介して固定されている。この配線基板には、種々の電子部品が実装されているが、それらの電子部品の中には、電力変換部に必要なダイオード用半導体装置や電解コンデンサ、制御部に必要なパワー半導体装置なども含まれている。これらダイオード用半導体装置や電解コンデンサ、パワー半導体装置は、扱う電力が大きく、発熱量も大きい。これらの電子部品を実装する配線基板14の熱は、電力変換装置側筐体3の内部空間を通じて電力変換装置側筐体3の外周面に伝熱される。なお、配線基板14は、表裏両面に配線パターンを形成するようにしても良い。また、2以上の配線基板14を組合せて用いることもできる。
【0013】
図1に示すように、電力変換装置側筐体3の外周面及び電動機側筐体4の外周面には、電動機2の回転軸7の軸方向に長手な放熱用のフィン17が、夫々の外周面から放射状に突出形成されている。これらのフィン17は、電力変換装置側筐体3及び電動機側筐体4の夫々と一体に形成されている。そして、電力変換装置側筐体3のフィン17のうち、図1の上下に対をなすフィン17と左右に対をなすフィン17は、電動機2の回転軸径方向外側部分が図の手前側、つまり電動機2の回転軸方向他端部側に延長され、その延長端部18が電動機2の回転軸方向で同じ位置になるようにしている。
【0014】
第1実施形態では、電動機2の回転軸7の軸方向一端部に取付けられた外部ファン11を電動機2で回転し、回転される外部ファン11により、電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側に空気の流れを創生する。電力変換装置側筐体3の底板部3a、即ち電動機2の回転軸他端部側端部は、外に凸の半円型の曲面端部6になっているので、図3に示すように、外部ファン11による空気の流れは、特に電力変換装置側筐体3の外周面に沿ってスムーズに流れる。更に、電力変換装置側筐体3の外周面及び電動機側筐体4の外周面には、電動機2の回転軸方向に長手な放熱用のフィン17が突出形成されているため、電力変換装置側筐体3の外周面は、外周面自体及びフィン17の表面に沿って流れる空気の流れで積極的に冷却される。その結果、電力変換装置側筐体3の内部空間も冷却され、インバータモジュール13が形成される配線基板14も冷却される。
【0015】
もし、電力変換装置側筐体3の底板部3aが、図6の比較例のように、電動機2の回転軸方向と直交する平坦面であったなら、外部ファン11によって空気の流れを創生しても、その空気の流れは電力変換装置側筐体3の底板部3aに衝突して、空気の流れそのものが電力変換装置側筐体3の外周面から乖離してしまう。空気の流れが電力変換装置側筐体3の外周面から乖離してしまうと、電力変換装置側筐体3の外周面に冷却用のフィン17を突出形成していても、そのフィン17の表面にも電力変換装置側筐体3の外周面にも空気の流れが沿って流れないから、フィン17も電力変換装置側筐体3の外周面も冷却されにくい。電力変換装置側筐体3の外周面が冷却されなければ、電力変換装置側筐体3の内部空間も冷却されず、インバータモジュール13が形成される配線基板14も冷却されない。
【0016】
また、冷却用のフィン17の一部を電力変換装置側筐体3の底板部3a、即ち半球型の曲面端部6より回転軸他端部側に延長し、その延長端部18を回転軸方向で同じ位置としたことにより、図4に示すように、フィン17の延長端部18を下向きにして電力変換装置一体型電動機を立てることができる。第1実施形態の場合、電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側に空気の流れを創生する外部ファン11は、外径が電力変換装置側筐体3や電動機側筐体4の外周面の外径よりも大きくなり、外部ファン11の径方向外側端部が接触しやすく、電力変換装置一体型電動機を安定した状態で置いておきにくい。しかしながら、フィン17の延長端部18を下向きにして電力変換装置一体型電動機を立てることができれば、電力変換装置一体型電動機を安定した状態で置いておくことができる。
【0017】
このように、第1実施形態の電力変換装置一体型電動機では、電動機2の回転軸7に取付けられた外部ファン11によって電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側に空気の流れが生じる。その際、電力変換装置側筐体3のうち、電動機2の回転軸方向他端部に、電動機2の回転軸方向他端部側に突出する曲面端部6が形成されているため、電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側への空気の流れが、特に電力変換装置側筐体3の外周面から乖離することがなく、電力変換装置側筐体3を効率よく冷却することができる。
【0018】
また、電力変換装置側筐体3の外周面に放熱用のフィン17を形成し、フィン17の一部を電力変換装置側筐体3の曲面端部6より電動機2の回転軸7の軸方向他端部側に延長し、延長されたフィン17の延長端部18を電動機2の回転軸7の軸方向で同じ位置とした。これにより、フィン17の延長端部18を下向きにして電力変換装置一体型電動機を立てることができ、電力変換装置一体型電動機を安定した状態で置いておくことができる。
【0019】
また、電力変換装置側筐体3の曲面端部6を半球型とすることで、電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側への空気の流れがスムーズに電力変換装置側筐体3の外周面を流れ、より効率よく電力変換装置側筐体3を冷却することができる。
さらに、電力変換装置側筐体3の曲面端部6が半球型でありながら、電力変換装置一体型電動機を安定した状態で立てることができるため、インバータモジュール13の取付けの容易性を損ねることがない。
【0020】
次に、本発明の電力変換装置一体型電動機の第2実施形態について、外観を示す図5を用いて説明する。この第2実施形態の電力変換装置一体型電動機は、第1実施形態の電力変換装置一体型電動機に類似しているので、同等の構成には同等の符号を用いて、その詳細な説明を省略する。また、第2実施形態の縦断面構成は、第1実施形態の縦断面構成と同等であるため、その詳細な説明を省略する。この第2実施形態では、電力変換装置側筐体3の外周面に形成されたフィン17の延長端部18のうち、電動機2の回転軸7の径方向外側部を、電力変換装置側筐体3の半球型の曲面端部6に倣うように円弧状にした。これにより、電力変換装置一体型電動機の組立など、電力変換装置側筐体3を手で持つ際に持ちやすい。
【0021】
なお、第1及び第2実施形態では、電力変換装置側筐体3内に内部ファンを備えていないが、前述の特許文献1と同様に、電力変換装置側筐体3内に内部ファンを備えても差し支えない。
また、本発明の電力変換装置一体型電動機の外部ファン11の形状は実施形態の形状に限定されるものではない。但し、電力変換装置側筐体3側から電動機側筐体4側に空気の流れを創生するためには、少なくとも電力変換装置側筐体3の外周面より外径の大きい外部ファン11が必要である。そして、そのように外径の大きい外部ファン11を用いる場合、電力変換装置一体型電動機を安定して置くことが難しくなるので、フィン17の一部を電力変換装置側筐体3よりも延長して、そのフィン17の延長端部18で電力変換装置一体型電動機を立てて置けるようにするのが望ましい。
【符号の説明】
【0022】
1 電力変換装置
2 電動機
3 電力変換装置側筐体
4 電動機側筐体
5 筐体連結部材兼蓋部材
6 曲面端部
7 回転軸
8 軸受
9 ロータコア
10 ステータコア
11 外部ファン
12 Oリング
13 インバータモジュール
14 配線基板
15 基板固定部
16 固定具
17 フィン
18 延長端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6