特許第6361388号(P6361388)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6361388-感熱転写記録媒体 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361388
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】感熱転写記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   B41M5/44 410
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-182521(P2014-182521)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-55491(P2016-55491A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】福永 悟大
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/041779(WO,A1)
【文献】 特開2002−127620(JP,A)
【文献】 国際公開第99/025553(WO,A1)
【文献】 特開2013−14091(JP,A)
【文献】 特開2012−210806(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0107933(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に耐熱滑性層を備え、前記基材の他方の面に下引き層、染料層をこの順に備えた感熱転写記録媒体において、
前記下引き層は、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含み、
前記下引き層の100℃における貯蔵弾性率G′は、1.0E+06N/m以上であることを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記下引き層の100℃における貯蔵弾性率G′は、1.0E+08N/m以上であることを特徴とする請求項1に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記ポリビニルピロリドンのフィッケンチャーの公式におけるK値は、30以上100以下の範囲内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記ポリエステルと前記アクリルとの共重合比は、重量比で20:80から40:60までの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記共重合体と前記ポリビニルピロリドンとの組成比は、重量比で70:30から30:70までの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記下引き層は、その下引き層の形成に用いる下引き層用塗布液を前記基板上に塗布し、乾燥して形成されたものであり、
前記下引き層の乾燥後の塗布量は、0.05g/m以上0.30g/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の感熱転写記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体は、サーマルリボンと呼ばれており、例えば、感熱転写方式のプリンタに使用されるインクリボンのことである。この感熱転写記録媒体に係る従来技術としては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1には、基材の一方の面に感熱転写層を備え、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を備えた感熱転写記録媒体が記載されている。ここで感熱転写層は、インクを含んだ層(染料層)を備えており、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0003】
このような感熱転写記録媒体に対しては、例えば、熱転写の印字速度の高速化、熱転写画像の高濃度、高品質といった様々な要求がある。
これに対し、特許文献1に記載されている感熱転写記録媒体を用いて、昨今の昇華転写方式の高速プリンタにて印画を行ったところ、例えば、十分な印画濃度が得られなかったり、熱転写の際に異常転写が生じたりして、十分に満足できる品質の印画物が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2005−231354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、異常転写の発生を防止し、印画における転写感度を向上した感熱転写記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る感熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層を備え、前記基材の他方の面に下引き層、染料層をこの順に備えた感熱転写記録媒体において、前記下引き層は、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含み、前記下引き層の100℃における貯蔵弾性率G′は、1.0E+06N/m以上のものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係る感熱転写記録媒体であれば、高速印画時における転写感度を向上させることができ、且つ異常転写の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る感熱転写記録媒体の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。また、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置については、その記載を省略している。
【0010】
(感熱転写記録媒体1)
本発明の実施形態に係る感熱転写記録媒体1は、図1に示すように、基材10の一方の面にはサーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層40が形成されており、基材10の他方の面には下引き層20と染料層30とがこの順で形成されている。以下、これらの部材の詳細について説明する。
【0011】
(基材10)
基材10は、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度とが要求される。そのため、基材10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、及びコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体が使用可能である。これらの中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、基材10は、操作性、加工性を考慮し、その厚さが2μm以上50μm以下の範囲内のものが使用可能である。その範囲内のものでも、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上9μm以下の範囲内のものが好ましい。
【0012】
また、基材10において、耐熱滑性層40及び下引き層20を形成する面の少なくとも一方に、接着処理を施すことも可能である。この接着処理としては、例えば、コロナ処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、プラズマ処理、プライマー処理等を適用することができる。また、それらの処理を二種以上併用することもできる。この接着処理を施すことで、基板10に対する耐熱滑性層40や下引き層20の接着性を高めることができる。
【0013】
(下引き層20)
下引き層20は、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m以上であり、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含んだものである。このような下引き層20を形成することによって異常転写が発生せず、かつ、染料層30に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られる。この点について、以下詳細に説明する。なお、上記スルホン酸基を有するポリエステルとは、例えば、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルである。
【0014】
ここで、「異常転写」とは、熱転写時に基材10から染料層30が剥離し、染料層30と被転写体とが融着する現象である。発明者らが検討した結果、この異常転写が発生しやすい温度はおよそ100℃であることがわかっている。そのため、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m未満であると染料層30と下引き層20との密着性が低下して異常転写が発生しやすくなる。なお、100℃における貯蔵弾性率G′は、より好ましくは1.0E+08N/m以上1.0E+10N/m未満の範囲内である。100℃における貯蔵弾性率G′がこの範囲内にあれば、転写感度がより高く、印画時にシワがより発生しにくい。なお、100℃における貯蔵弾性率G′は、1.0E+10N/m以上であっても問題なく使用できるが、汎用の材料を用いた場合には、1.0E+10N/m未満となるのが通常である。
【0015】
また、本実施形態では、下引き層20の100℃における貯蔵弾性率G′が、仮に1.0E+06N/m以上を満たさない場合であっても、さらに他の樹脂をブレンドしたり、架橋剤や硬化剤を添加することによって、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m以上になれば下引き層20として用いることができる。
100℃における貯蔵弾性率G′を調整するために添加可能な架橋剤や硬化剤として、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、キレート化合物、メラミン、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物などを挙げることができるが、特に限定されるものではない。
なお、下引き層20の動的粘弾性特性は、特定周波数、及び特定温度における、動的粘弾性スペクトルの損失正接、又は損失正接及び貯蔵弾性率により規定される。本実施形態において、この動的粘弾性の測定は、周波数10Hz、20℃から200℃の温度範囲、昇温速度3℃/min、試験片は約0.1mmで行った。
【0016】
下引き層20には、上述した異常転写の防止のみならず、転写感度を向上させるための染料バリア性と、さらには通常溶剤系からなる染料層30を下引き層20上に積層させるために耐溶剤性とが求められる。このため、下引き層20の主成分を、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンとしている。
【0017】
ここで、「染料バリア性」とは、染料層30に含まれる染料が基材10側に拡散するのをブロック(防止)する性質を意味する。また、「主成分」とは、本発明の効果を損なわない限り、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンに、さらに他の成分が添加されていても良い旨を表しており、前述の共重合体及びポリビニルピロリドンが、下引き層形成時の全体からみて50質量%超で含まれることを意味する。ここで、下引き層20に占める前述の共重合体及びポリビニルピロリドンの割合は、好ましくは80質量%以上である。
【0018】
また、下引き層20に添加可能な他の成分としては、例えば、コロイド状無機顔料超微粒子、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の添加剤を使用することができる。なお、コロイド状無機顔料超微粒子としては、例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナあるいはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。
【0019】
下引き層20に含まれるスルホン酸基を有するポリエステル成分は、基材10との密着性や耐溶剤性を得るために必須となる。また、下引き層20に含まれるグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリル成分は、染料バリア性や耐溶剤性を得るために必須となる。ここで、それぞれの成分を単にブレンドした場合は、アクリル成分とポリエステル成分との相溶性が良好でないため、材料としての安定性に欠ける。さらには、ポリエステル成分が有する基材10との密着性、アクリル成分が有する耐溶剤性や染料バリア性が共に得られず、それぞれの成分を単独で用いた場合よりも性能が低下する結果となる。これは相溶性の悪いポリマー同士のブレンドにより非相溶の海島構造が形成され、密着性を有するポリエステル成分と染料バリア性を有するアクリル成分とが局所的に存在するため(つまり、下引き層20全体としてみたときに密着性が悪い箇所と染料バリア性が悪い箇所とが存在するため)と考えられる。
【0020】
一方で、アクリル成分とポリエステル成分とを共重合することにより、相溶性の悪さが改善される。これにより、アクリル成分とポリエステル成分が相分離することなく、下引き層20全体に、アクリル成分とポリエステル成分とが存在するために、それぞれの成分が有する機能(つまり、密着性、耐溶剤性、染料バリア性)が効果的に発現したものと考えられる。
【0021】
以下、下引き層20に含まれるポリエステル成分の詳細について説明する。
スルホン酸基を有するポリエステルの共重合成分であるジカルボン酸成分は、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物を必須成分とし、例えば、フタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸及び、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0022】
エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物以外のジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために、密着性の向上、耐加水分解性に優れているからである。なお、本実施形態においては、特にテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
また、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン酸−2,7−ジカルボン酸などのアルカリ金属塩(スルホン酸のアルカリ金属塩)及び、これらのエステル形成性誘導体が挙げられ、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩及び、そのエステル形成性誘導体がより好ましく用いられる。これは、スルホン酸基を有することによって耐溶剤性が向上するためである。
【0023】
スルホン酸基を有するポリエステルの共重合成分であるジグリコ−ル成分としては、例えば、ジエチレングリコールと炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコ−ルの具体例としては、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,2−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,6−ヘキサンジオール、p−キシリレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ルなどが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用してもよい。
【0024】
以下、下引き層20に含まれるアクリル成分の詳細について説明する。
下引き層20に含まれるアクリル成分としては、例えば、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの単独あるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー単独、あるいは上記モノマーと共重合できる他のラジカル重合性不飽和モノマーが挙げられる。
本実施形態では、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーあるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーが必要となる。これはグリシジル基及びカルボキシル基は、染料との相溶性が悪いため、染料バリア性を有するからである。つまり、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を含有することによって、転写感度が向上する。さらには、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤及び酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤に対する耐溶剤性が向上する。
【0025】
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルといったグリシジルエーテル類などが挙げられる。
また、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0026】
グリシジル基含有あるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと共重合できるラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和ニトリル、アリル化合物、含窒素系ビニルモノマー、炭化水素ビニルモノマー又はビニルシラン化合物が挙げられる。
上述のビニルエステルとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、高級第3級ビニルエステル、塩化ビニル、臭化ビニルが挙げられる。
【0027】
また、上述の不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルが挙げられる。
【0028】
また、上述の不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ブトキシメチロールアクリルアミドが挙げられる。
また、上述の不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。
また、上述のアリル化合物としては、例えば、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリルが挙げられる。
【0029】
また、上述の含窒素系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールが挙げられる。
また、上述の炭化水素ビニルモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、ビニルトルエン、ブタジエンが挙げられる。
また、上述のビニルシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシランが挙げられる。
【0030】
下引き層20におけるポリエステルとアクリルとの共重合比は、重量比で20:80から40:60までの範囲内であることが好ましい。これは、下引き層20において、ポリエステル成分が20%を下回ると、高い印画濃度が得られるが基材10との密着性が不足する傾向になり、ポリエステル成分が40%以上になると、密着性は十分であるが印画濃度が低下する傾向となるためである。
【0031】
下引き層20に含まれるポリエステルは、ジカルボン酸とジグリコールとをエステル化あるいはエステル交換反応後に重縮合反応させる製造方法によって得ることができ、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
また、下引き層20に含まれるポリエステルとアクリルとの共重合体の製造方法については、なんら限定されるものではない。例えば、乳化重合の場合は、ポリエステル分散液あるいは水溶液を用いてアクリルモノマーを乳化して重合する方法や、ポリエステル分散液あるいは水溶液にアクリルモノマーを滴下しながら重合する方法が挙げられる。
【0032】
以下、下引き層20に含まれるポリビニルピロリドンの詳細について説明する。
発明者らが見出した、ポリエステルとアクリルとの共重合体にポリビニルピロリドンを含ませることで、両者(つまり、共重合体とポリビニルピロリドン)をそれぞれ単独で使用した場合と比較して、転写感度が増加するのは、ポリビニルピロリドンが、染料を吸着しやすい性質を持つ共重合体中のスルホン酸基を有するポリエステル部位の近傍に存在することで、染料の吸着を防止したためと考えられる。
【0033】
また、ポリエステルとアクリルとの共重合体と、ポリビニルピロリドンとの組成比は、重量比で70:30から30:70までの範囲内であることが好ましい。これは、ポリビニルピロリドンの比率が30%を下回ると、高い印画濃度が得られにくくなり、ポリビニルピロリドンの比率が70%以上になると、高い印画濃度が得られにくく保存安定性が低下するためである。なお、保存安定性の低下は、ポリビニルピロリドンが有する吸湿性に由来する。
【0034】
このポリビニルピロリドンとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)又はこれらの共重合体が挙げられる。さらには、変性ポリビニルピロリドン樹脂などが挙げられる。この変性ポリビニルピロリドン樹脂は、例えば、N−ビニルピロリドン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である。なお、共重合形態は、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であり、特に限定されるものではない。上記のN−ビニルピロリドン系モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)及びその誘導体が挙げられる。また、その誘導体としては、例えば、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0035】
N−ビニルピロリドン系モノマーと共重合するモノマー成分としては、例えば、下記のビニル重合性モノマーが挙げられる。そのモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルカプロラクタム、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、四ふっ化エチレン、ふっ化ビニリデン等が挙げられる。
【0036】
本実施形態における下引き層20で使用するポリビニルピロリドンは、フィッケンチャーの公式におけるK値で、30以上100以下の範囲内のものであることが好ましい。特に好ましいのは、60以上90以下の範囲内である。上記K値が30未満のポリビニルピロリドンを用いると、印画における転写感度の向上の効果が薄くなり、100超のポリビニルピロリドンを用いると、塗布液の粘度が高まり塗工適正が低下するので、好ましくない。
【0037】
下引き層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.05g/m以上0.30g/m以下の範囲内であることが好ましい。下引き層20の乾燥後の塗布量が0.05g/m未満の場合には、染料層30の積層時における下引き層20の劣化により、高速印画時における転写感度が不足し、基材10あるいは染料層30との密着性に問題を抱える不安がある。
【0038】
一方、下引き層20の乾燥後の塗布量が0.30g/m超の場合には、感熱転写記録媒体1自体の感度は変わらず、印画濃度は飽和する。よって、コスト面の観点から0.30g/m以下であることが好ましい。
ここで、下引き層20の乾燥後の塗布量とは、下引き層形成用の塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。また、後述する染料層30の乾燥後の塗布量及び耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量も、同様に、各塗布液を塗布、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。
【0039】
(染料層30)
染料層30は、例えば、熱移行性染料、バインダー、溶剤などを配合して染料層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成されたものである。染料層30の乾燥後の塗布量は、1.0g/m程度が適当である。なお、染料層30は、1色の単一層で構成したり、色相の異なる染料を含む複数の層を、同一基材の同一面に面順次に、繰り返し形成したりすることもできる。
【0040】
染料層30に含まれる熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散もしくは昇華移行する染料であれば使用可能であり、特に限定されるものではなない。この熱移行性染料のうち、イエロー成分としては、例えば、ソルベントイエロー56、16、30、93、33、ディスパースイエロー201、231、33等を挙げることができる。また、マゼンタ成分としては、例えば、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。また、シアン成分としては、例えば、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。なお、墨の染料としては、前述の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0041】
染料層30に含まれるバインダーとしては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0042】
ここで、染料層30の染料とバインダーとの配合比率は、質量基準で、(染料)/(バインダー)=10/100〜300/100が好ましい。これは、(染料)/(バインダー)の比率が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られないためである。また、この比率が300/100を超えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体を形成した際に保存安定性が悪くなり染料が析出し易くなってしまうためである。また、染料層30には、性能を損なわない範囲で、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0043】
(耐熱滑性層40)
耐熱滑性層40は、例えば、バインダー、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤などを配合して耐熱滑性層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥して形成したものである。この耐熱滑性層40の乾燥後の塗布量は、0.1g/m以上2.0g/m以下の範囲内が適当である。
耐熱滑性層40に含まれるバインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
【0044】
また、耐熱滑性層40に含まれる機能性添加剤としては、例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
【0045】
また、耐熱滑性層40に含まれる充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
また、耐熱滑性層40に含まれる硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、及びその誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0046】
(作用効果)
(1)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、基材10の一方の面に耐熱滑性層40を備え、基材10の他方の面に下引き層20、染料層30をこの順に備えており、下引き層20を、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含んだものとし、下引き層20の100℃における貯蔵弾性率G′を1.0E+06N/m以上としている。
このため、異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層30に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。
【0047】
(2)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引き層20の100℃における貯蔵弾性率G′を1.0E+08N/m以上としている。
このため、高速印画時における転写感度をより高めることができ、且つ、印画時に発生するシワの量をより低減することができる。
(3)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、ポリビニルピロリドンのフィッケンチャーの公式におけるK値を30以上100以下の範囲内としている。
このため、高速印画時における転写感度を高めることができ、且つ、塗布液の粘度が適正な値となり塗工適正を最適なものとすることができる。
【0048】
(4)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、ポリエステルとアクリルとの共重合比を重量比で20:80から40:60までの範囲内としている。
このため、下引き層20と基材10との密着性を高めることができ、且つ、高速印画時における印画濃度を高めることができる。
(5)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、共重合体とポリビニルピロリドンとの組成比を重量比で70:30から30:70までの範囲内としている。
このため、高速印画時における印画濃度をさらに高めることができ、且つ、保存安定性を高めることができる。
【0049】
(6)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引き層用塗布液を基板10上に塗布し、乾燥させて下引き層20を形成しており、その下引き層20の乾燥後の塗布量を0.05g/m以上0.30g/m以下の範囲内としている。
このため、基材10あるいは染料層30と、下引き層20との密着性を高めることができ、且つ、高速印画時であっても十分な印画濃度を維持することができる。また、感熱転写記録媒体の製造コストが高騰するのを防止することができる。
【0050】
(下引き層用塗布液)
上述した下引き層20を形成するための下引き層用塗布液について、以下説明する。
本実施形態で用いられる下引き層用塗布液は、スルホン酸基を有するポリエステルとグリシジル基及びカルボキシル基の少なくともいずれか一方を有するアクリルとの共重合体、及びポリビニルピロリドンを含んだものである。
また、この下引き層用塗布液において、ポリビニルピロリドンのフィッケンチャーの公式におけるK値は、30以上100以下の範囲内であることが好ましい。
【0051】
また、この下引き層用塗布液において、ポリエステルとアクリルとの共重合比は、重量比で20:80から40:60の範囲内であることが好ましい。
また、この下引き層用塗布液において、ポリエステル及びアクリルの共重合体と、ポリビニルピロリドンとの組成比は、重量比で70:30から30:70の範囲内であることが好ましい。
この下引き層用塗布液を用いて形成した下引き層20を備えた感熱転写記録媒体1であれば、異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層30に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。
【0052】
(製造方法)
上述した耐熱滑性層40、下引き層20、染料層30は、いずれも汎用の塗布方法にて塗布し、乾燥することで形成可能である。各層の塗布方法としては、例えば、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
なお、上記塗布方法を用いて、基材10上に上記下引き層用塗布液を塗布し、乾燥することで、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m以上である下引き層20を形成することができる。
【実施例1】
【0053】
以下に、本発明の各実施例及び各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明は実施例に限定されるものではない。
<耐熱滑性層付き基材の作製>
基材として、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に、下記組成の耐熱滑性層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/mになるように塗布し、100℃1分間乾燥した。その後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材を得た。
【0054】
<耐熱滑性層用塗布液>
・アクリルポリオール樹脂 12.5部
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル 2.5部
・タルク 6.0部
・2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー 4.0部
・トルエン 50.0部
・メチルエチルケトン 20.0部
・酢酸エチル 5.0部
【0055】
<スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体の作製方法>
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部及び、反応触媒として酢酸亜鉛1部を仕込んだ。
【0056】
次いで、それらを130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン1部を添加した後、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行ない、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを純水に溶解し、次いでグリシジル基含有アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジルをポリエステルの重量比で30:70となるように加え、さらに重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、モノマー乳化液を作製した。
【0057】
次いで、冷却管付き反応容器に、純水と上記モノマー乳化液とを仕込み、20分間窒素ガスを吹き込んで十分脱酸素を行った。その後、上記純水と上記モノマー乳化液とを1時間かけて徐々に昇温し、75〜85℃を維持しつつ3時間反応を行い、スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体を得た。また、同様の方法で、スルホン酸基含有ポリエステル/カルボキシル基含有アクリル共重合体及び各重合比のポリエステルアクリル共重合体を得た。
【0058】
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層を形成した。引き続き、その下引き層の上に、下記組成の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/mになるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層を形成した。こうして、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0059】
<下引き層用塗布液−1>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0060】
<染料層用塗布液>
・C.I.ソルベントブルー63 6.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 4.0部
・トルエン 45.0部
・メチルエチルケトン 45.0部
【0061】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−2>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値30) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0062】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−3>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値90) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0063】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−4>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 3.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) 1.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0064】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−5>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) 1.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) 3.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0065】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−6>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値90) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0066】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−7>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(20:80) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値90) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0067】
(実施例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−8>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(40:60) 2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値90) 2.50部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0068】
(実施例9)
実施例3で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.03g/mになるように下引き層用塗布液を塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
(実施例10)
実施例3で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を乾燥後の塗布量が0.35g/mになるように下引き層用塗布液を塗布、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例10の感熱転写記録媒体を得た。
【0069】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下引き層を形成することなく、実施例1と同様の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/mになるように塗布、乾燥することで、染料層を形成した。こうして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
(比較例2)
下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−9>
・ポリビニルピロリドン(K値30) 5.0部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0070】
(比較例3)
下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−10>
・ポリビニルピロリドン(K値90) 5.0部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0071】
(比較例4)
下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−11にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−11>
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 5.00部
・純水 47.5部
・イソプロピルアルコール 47.5部
【0072】
(比較例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−12にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−12>
・グリシジル基含有アクリル樹脂 5.00部
・純水 47.5部
・イソプロピルアルコール 47.5部
【0073】
(比較例6)
下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−13にした以外は、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−13>
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) 5.00部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0074】
(比較例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−14にした以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−14>
・グリシジル基含有アクリル樹脂 7.00部
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 3.00部
・純水 45.0部
・イソプロピルアルコール 45.0部
【0075】
(比較例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層を下記組成の下引き層用塗布液−15にした以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感熱転写記録媒体を得た。
<下引き層用塗布液−15>
・メトキシメチル化ナイロン(メトキシメチル化率 約30%)5.00部
・純水 57.0部
・イソプロピルアルコール 38.0部
【0076】
<被転写体の作製>
基材として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/mになるように塗布、乾燥した。こうして、感熱転写用の被転写体を作製した。
<受像層用塗布液>
・塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
・アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
・トルエン 40.0部
・メチルエチルケトン 40.0部
【0077】
<印画評価>
実施例1〜10、比較例1〜8の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した。その結果を表1に示す。なお、最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
・印画環境:23℃50%RH
・印加電圧:29V
・ライン周期:0.9msec
・印画密度:主走査300dpi 副走査300dpi
【0078】
<異常転写評価>
実施例1〜10、比較例1〜8の感熱転写記録媒体に関して、常温にて養生された感熱転写記録媒体と被転写体とを使用し、48℃5%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表1に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。△以上が実用上問題ないレベルである。
○:被転写体への異常転写が、認められない
△:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0079】
<動的粘弾性の測定>
粘弾性スペクトロメータ(EXSTAR DMS6100)を用い、下記条件で評価を行った。その結果を表1に示す。
・周波数:10Hz
・温度範囲:20℃から200℃
・昇温速度:3℃/min
・試験片:約0.1mm
【0080】
【表1】
【0081】
表1に示す結果から、下引き層の100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m以上である実施例1〜10、比較例2〜4、6、8の感熱転写記録媒体は、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m未満である比較例5、7と比較して、異常転写が発生しないことがわかった。
また、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+08N/m以上である実施例1、3、5〜10、比較例3、8は、100℃における貯蔵弾性率G′が1.0E+06N/m以上1.0E+08N/m未満である実施例2、4、比較例2、4、6と比較して、異常転写に対して効果が高く、好ましいことがわかった。
【0082】
また、比較例6のスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルとの共重合体は、下引き層が設けられていない比較例1及びスルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例4と比較して、高速印画時における転写感度が高いことがわかった。
また、ポリステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例1〜10とポリステル−アクリル共重合体単体である比較例6、ポリビニルピロリドン単体である比較例2、3とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上していることが確認された。このことから、ポリビニルピロリドンを混合すると転写感度が高くなることがわかった。
【0083】
また、混合するポリビニルピロリドンのK値が大きいほど転写感度が向上することがわかった。
さらに、ポリステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられた(実施例1、4、5を参照)。その傾向から、好ましい混合比率は、ポリエステルとアクリルとの共重合体と、ポリビニルピロリドンとが、重量比で70:30から30:70までの範囲内であることがわかった。
【0084】
また、実施例9の感熱転写記録媒体では、下引き層の塗布量が0.05g/m未満であるため、実施例3の感熱転写記録媒体と比較して、幾分転写感度の低下と密着性の低下とが確認された。
また、実施例10の感熱転写記録媒体は、同じく実施例3の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層の塗布量が0.30g/m超であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることがわかった。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できる。このため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書などのカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
【符号の説明】
【0086】
1:感熱転写記録媒体
10:基材
20:下引き層
30:染料層
40:耐熱滑性層
図1