(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記取得部により取得された前記動体の運動状態が前記運動モデルから乖離しているか否かに基づいて、前記動体の状態が異常状態であるか否かを判定する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の状態判定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記非特許文献1に記載された技術では、距離変化を計測することができるものの、対象物体がどのような状態であるかを精度よく判定することは困難であった。具体的には、距離変化に基づいて状態を判定する場合に、誤報が生じたり速報性が犠牲なったりする場合があった。以下に、対象物体を人とし、転倒又は夜間の徘徊等の異常状態を判定する例を想定して、距離変化に基づく状態判定方法について説明する。例えば、距離変化に基づく状態判定方法として、所定時間以上の時間、対象物体の位置変化がない場合に、転倒等の異常状態であると判定する方法が考えられる。しかし、この方法によれば、実際には異常状態ではなく座る等して安静に過ごしている状態を、異常状態として判定した誤報が生じる可能性があった。また、この方法によれば、転倒が発生したとしても、所定時間経過するまで異常状態として判定することが困難であり、速報性が犠牲になっていた。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、対象物体の状態をより精度よく判定することが可能な、新規かつ改良された状態判定装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、対象の空間に存在する動体の運動状態を示す情報を取得する取得部と、前記空間に部分空間を複数設定する設定部と、前記設定部により設定された各前記部分空間から前記取得部により取得された前記動体の運動状態の統計情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記統計情報に基づいて、前記動体の運動モデルを推定するモデル推定部と、前記取得部により取得された前記動体の運動状態と前記モデル推定部により推定された前記運動モデルとを比較することで、前記動体の状態を判定する判定部と、を備える状態判定装置が提供される。
【0008】
前記モデル推定部は、前記部分空間の用途を推定し、前記部分空間を用途ごとに統合した統合空間ごとに前記運動モデルを推定してもよい。
【0009】
前記モデル推定部は、時間帯毎に前記運動モデルを推定してもよい。
【0010】
前記運動モデルは、前記統合空間に前記動体が滞留する時間を示す滞留時間を含んでもよい。
【0011】
前記運動状態は、前記動体の位置及び速度を含み、前記統計情報は、前記部分空間における前記動体の存在確率及び速度分布を含み、前記運動モデルは、前記統合空間における速度を含んでもよい。
【0012】
前記運動状態は、前記動体の位置及び身体活動量を含み、前記統計情報は、前記部分空間における前記動体の存在確率及び身体活動量分布を含み、前記運動モデルは、前記統合空間における身体活動量を含んでもよい。
【0013】
前記判定部は、前記取得部により取得された前記動体の運動状態が前記運動モデルから乖離しているか否かに基づいて、前記動体の状態が異常状態であるか否かを判定してもよい。
【0014】
前記状態判定装置は、前記判定部による判定結果を出力する出力部をさらに備えてもよい。
【0015】
前記運動モデルは、前記動体の速度又は身体活動量が継続して閾値以下になる時間を示す静止時間を含んでもよい。
【0016】
前記動体は、人間であり、前記取得部は、前記動体の居住空間をセンシング対象とするセンサにより観測されたセンシング情報から前記動体の運動状態を示す情報を取得してもよい。
【0017】
前記センサは、送信波を送信して前記動体により反射された反射波を観測するセンサであってもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、対象の空間に存在する動体の運動状態を示す情報を取得する取得部と、前記空間に部分空間を複数設定する設定部と、前記設定部により設定された各前記部分空間から前記取得部により取得された前記動体の運動状態の統計情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記統計情報に基づいて、前記動体の運動モデルを推定するモデル推定部と、前記取得部により取得された前記動体の運動状態と前記モデル推定部により推定された前記運動モデルとを比較することで、前記動体の状態を判定する判定部と、として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、対象物体の状態をより精度よく判定することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.概要>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る状態判定システムの概要について説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る状態判定システムの概要を説明するための説明図である。
図1に示すように、本実施形態に係る状態判定システムは、状態判定装置1及びセンサ2を有する。
【0024】
図1に示すように、センサ2は例えば部屋の一角に設置され、対象物体である動体3が存在する部屋全体をセンシング対象としている。センサ2は、例えばいわゆるドップラーレーダであってもよい。状態判定装置1は、センサ2から出力されたセンシング情報に基づいて、動体3の状態を判定する。状態判定装置1は、例えばPC(Personal Computer)等であってもよい。
図1に示した例では、動体3は人である。
【0025】
図1に示した部屋には、ベッド、椅子、テーブル、ドアが存在しており、部屋内の空間の用途は場所によって異なり得る。例えば、人3は、生活用スペースであるテーブルの近くの空間には、小さな動作で長い時間滞留し得る。また、人3は、ベッドからテーブルの奥側を通ってドアに至るまでのスペースを移動用のスペースとして、大きな動作で短い時間滞留し得る。さらに、夜には、人3は、ベッド上を睡眠用のスペースとして、小さな動作で長い時間滞留し得る。
【0026】
このような用途が異なる空間では、人3の異常状態を判定するための基準がそれぞれ異なっていることが望ましい。例えば、小さな動作で長い時間滞留することは、生活用スペースでは正常状態であると考えられる一方、移動用スペースでは転倒又は失神等の異常状態であると考えられるためである。
【0027】
そこで、本発明の一実施形態に係る状態判定装置1は、用途が異なる空間ごとに運動モデルを推定しておき、推定した運動モデルを用いて状態判定を行う。これにより、状態判定装置1は、人の生活サイクルや部屋内のレイアウトに応じて、人の状態をより精度よく判定することが可能となる。
【0028】
また、
図1に示した例のように、人の生活を常時センシングして異常状態を判定する技術においては、対象となる人のプライバシー保護の要請が強い。そこで、状態判定装置1は、センサ2からのセンシング情報に基づいて空間の用途を推定する。状態判定装置1は、部屋内のレイアウト等の事前情報を必須としないので、センシング対象である人のプライバシーを保護しつつ、異常状態を適切に判定することができる。
【0029】
以上、本発明の一実施形態に係る状態判定システムの概要を説明した。以下、
図2〜
図7を参照して、本実施形態について詳細に説明する。
【0030】
<2.構成例>
[2−1.センサの構成例]
センサ2は、送信波を送信して動体により反射された反射波を観測するセンサである。センサ2は、電波、超音波、音波、マイクロ波、ミリ波、又は光等の送信波を送信して、動体3により反射された反射波を観測する。センサ2は複数設けられてもよい。センサ2は、送信波と反射波とにより得られるビート信号を、センシング情報として出力する。一般的に、動体の速度に比例して反射波の周波数が変化することが知られており、この変化した周波数差がビート信号の周波数となる。センシングの対象となる動体としては、例えば人間、車などの多様な動体が考えられる。センサ2のセンシング対象である空間を、以下では対象空間とも称する。
【0031】
以上、本実施形態に係るセンサ2の構成例を説明した。続いて、
図2を参照して、本実施形態に係る状態判定装置1の構成例を説明する。
【0032】
[2−2.状態判定装置の構成例]
図2は、本実施形態に係る状態判定装置1の論理的な構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、状態判定装置1は、取得部10、設定部20、統計情報算出部30、記憶部40、モデル推定部50、判定部60、及び出力部70を有する。
【0033】
(1)取得部10
取得部10は、対象の空間に存在する動体の運動状態を示す情報(以下、運動状態情報とも称する)を取得する機能を有する。例えば、取得部10は、センサ2から出力された対象空間のセンシング情報から、対象空間に存在する動体の運動状態情報を取得する。運動状態情報は、例えば動体の位置及び速度を示す情報を含み得る。
【0034】
例えば、取得部10は、ビート信号の位相変化に基づいて動体の速度を算出する。また、取得部10は、ビート信号を用いて動体の位置を算出する。ビート信号に基づく動体の位置(距離及び方位)の算出方法は多様に考えられる。例えば、取得部10は、センサ2に一定時間ごとに僅かに異なる2種類の周波数の送信波を交互に送信させて、ビート信号の位相差に基づいてセンサ2と動体との間の直線距離を算出してもよい。また、取得部10は、アレイ信号処理によりセンサ2から見た動体の方位を計算してもよい。また、センサ2が部屋の四隅に設置される場合、取得部10は、ビート信号から算出される1次元の距離変化の計測結果を組み合わせて、2次元の位置推定を行ってもよい。また、送信波の周波数及び反射波の受信パワー特性の指向性が向く方向をそれぞれ相違させて複数のセンサ2が1カ所に設置される場合、取得部10は、各センサ2の指向性の特性、複数のセンサ2間の指向性が向く方向の角度差、及び複数のセンサ2により受信された反射波のパワーに基づいて、動体の方位を推定してもよい。
【0035】
図1に示した例では、動体は、人間である。また、取得部10は、人間の居住空間をセンシング対象とするセンサ2により観測されたセンシング情報から運動状態情報を取得する。このように、本技術は、老人、幼児、又は病人等の人間の見守り用途に用いられ得る。
【0036】
取得部10は、取得した運動状態情報を、設定部20へ出力する。
【0037】
(2)設定部20
設定部20は、対象空間に部分空間を複数設定する機能を有する。部分空間の設定方法は任意である。設定部20は、部分空間同士を隣接するよう設定してもよいし、離間するよう設定してもよい。また、設定部20は、部分空間を所定の形状で設定してもよいし、バラバラの形状で設定してもよい。また、設定部20は、部分空間を重複しないよう設定してもよいし、重複するよう設定してもよい。なお、設定部20は、自動的に部分空間を設定してもよいし、ユーザ操作に応じて設定してもよい。本明細書では、一例として、設定部20は対象空間にメッシュ状の部分空間を設定するものとする。
【0038】
設定部20は、取得部10から出力された対象空間全体の運動状態情報のうち、設定した各部分空間から取得された運動状態情報をそれぞれ抽出する。例えば、設定部20は、運動状態情報が含む動体の位置を参照することで、運動状態情報がどの部分空間の範囲内から取得されたかを判定する。そして、設定部20は、抽出した部分空間毎の運動状態情報を、統計情報算出部30又は判定部60へ出力する。
【0039】
(3)統計情報算出部30
統計情報算出部30は、設定部20により設定された各部分空間から取得部10により取得された動体の運動状態の統計情報を算出する機能を有する。例えば、統計情報算出部30は、設定部20から出力された部分空間毎の運動状態情報から、部分空間毎に統計情報を算出する。統計情報は、例えば部分空間における動体の存在確率及び速度分布を示す情報を含み得る。
【0040】
例えば、統計情報算出部30は、所定時間のうち各部分空間に動体が位置する時間の長さに基づいて、各部分空間における動体の存在確率を算出する。また、統計情報算出部30は、部分空間毎に運動状態情報が示す速度を集計して速度分布を算出する。なお、統計情報算出部30は、カーネル密度推定等を用いてもよい。
【0041】
統計情報算出部30は、算出した統計情報を記憶部40へ出力する。
【0042】
(4)記憶部40
記憶部40は、所定の記録媒体に対してデータの記録再生を行う部位である。記憶部40は、例えばHDD(Hard Disc Drive)として実現される。もちろん記録媒体としては、フラッシュメモリ等の固体メモリ、固定メモリを内蔵したメモリカード、光ディスク、光磁気ディスク、ホログラムメモリなど各種考えられ、記憶部40としては採用する記録媒体に応じて記録再生を実行できる構成とされればよい。
【0043】
例えば、記憶部40は、統計情報算出部30から出力された統計情報を記憶する。より詳しくは、記憶部40は、動体の状態が正常状態である期間における統計情報を蓄積する。
【0044】
(5)モデル推定部50
モデル推定部50は、記憶部40に記憶された統計情報に基づいて、動体の運動モデルを推定する機能を有する。モデル推定部50は、記憶部40に記憶された人間の通常生活における統計情報に基づいて運動モデルを推定するので、例えば実際に人間を転倒させて転倒モデルを生成する等の手間が不要である。
【0045】
例えば、モデル推定部50は、部分空間の用途を推定し、部分空間を用途ごとに統合した統合空間ごとに運動モデルを推定する。居住空間に係る用途としては、例えば移動用(通路)又は生活用(部屋)等が考えられ、さらに細かい粒度では食事用(テーブル)又は睡眠用(ベッド)等が考えられる。ここで、
図3を参照して、モデル推定部50による運動モデルの推定について具体的に説明する。
【0046】
図3は、本実施形態に係る運動モデルについて説明するための説明図である。
図3に示す例では、センサ2のセンシング対象である対象空間が、メッシュ状の部分空間に分割されている。
図3に示すように、符号110に示す領域の部分空間に係る統計情報によると、速度分布が低速度に偏っている。よって、モデル推定部50は、符号110に示す領域の部分空間の用途は生活用であると推定する。そして、モデル推定部50は、符号110に示す生活用の部分空間を統合した生活用スペースについて、生活用の運動モデルを推定する。また、符号120に示す領域の部分空間に係る統計情報によると、速度分布が高速度に偏っている。よって、モデル推定部50は、符号120に示す領域の部分空間の用途は移動用であると推定する。そして、モデル推定部50は、符号120に示す移動用の部分空間を統合した移動用スペースについて、移動用の運動モデルを推定する。また、符号130に示す領域の部分空間に係る統計情報によると、存在確率が低い。よって、モデル推定部50は、符号130に示す領域の部分空間は使用されていない(人が入らない)と推定する。そして、モデル推定部50は、符号130に示す使用されていない部分空間を統合した不使用スペースについて、不使用スペースのための運動モデルを推定する。
【0047】
モデル推定部50は、用途が異なる統合空間ごとに運動モデルを推定することにより、対象空間全体に対して単一の運動モデルを推定する場合と比較して、精度のよい運動モデルを推定することが可能となる。これにより、状態判定装置1による状態判定精度が向上する。なお、モデル推定部50は、隣り合う又は近い部分空間は同じ用途である確率が高いものとして、用途を推定してもよい。この場合、モデル推定部50は、例えば移動用スペースと生活用スペースとが交互に現れるような不自然な推定を回避することができる。また、モデル推定部50は、用途ごとにひとまとまりの空間として、部分空間を統合することができる。
【0048】
モデル推定部50が推定する運動モデルは多様に考えられる。例えば、運動モデルは、統合空間に動体が滞留する時間を示す滞留時間を含んでいてもよい。例えば、モデル推定部50は、移動用スペースには短い滞留時間を設定した運動モデルを推定し、生活用スペースには長い滞留時間を設定した運動モデルを推定する。これにより、状態判定装置1は、例えば廊下のように滞留時間が少ない空間において人間の長い滞留を検知した場合に、転倒又は失神等の異常状態を判定することが可能となる。また、運動モデルは、統合空間における速度を含んでいてもよい。例えば、モデル推定部50は、移動用スペースには高速度を設定した運動モデルを推定し、生活用スペースには低速度を設定した運動モデルを推定する。これにより、状態判定装置1は、例えば廊下のように移動速度が速い空間において人間の移動速度が遅いことを検知した場合に、怪我又は麻痺等の異常事態を判定することが可能となる。
【0049】
他の例として、運動モデルは、統合空間における身体活動量(METs:Metabolic Equivalents)を含んでいてもよい。これにより、状態判定装置1は、例えば廊下のように移動等で身体活動量が大きい空間において人間の身体活動量が小さいことを検知した場合に、転倒又は失神等の異常状態を判定することが可能となる。なお、運動モデルに身体活動量が採用される場合、運動状態情報は、動体の位置及び身体活動量を示す情報を含み、統計情報は、部分空間における動体の存在確率及び身体活動量分布を含み得る。なお、身体活動量に関するセンシング情報を観測するセンサ2の例としては、例えば動体に装着されるジャイロセンサ、加速度センサ、又は心拍計等が挙げられる。
【0050】
また、運動モデルは、動体の速度又は身体活動量が継続して閾値以下になる時間を示す静止時間を含んでいてもよい。これにより、状態判定装置1は、人間があまりに長い時間静止していることを検知した場合に、座位中断の必要性が高いという異常事態を判定することが可能となる。
【0051】
モデル推定部50は、時間帯毎に運動モデルを推定してもよい。モデル推定部50は、記憶部40に記憶された時間帯毎の統計情報から、時間帯毎の運動モデルを推定する。例えば、モデル推定部50は、1時間毎、日中/夜間、1日毎、1週間毎、又は季節毎等の任意の粒度で、運動モデルを推定してもよい。ここで、
図4及び
図5を参照して、モデル推定部50による時間帯ごとの運動モデルの推定について具体的に説明する。
【0052】
図4及び
図5は、本実施形態に係る運動モデルについて説明するための説明図である。
図4に示す例は、日中の運動モデルの推定例を示しており、
図5に示す例は、夜間の運動モデルの推定例を示している。
図4に示すように、符号210に示す領域の部分空間に係る日中の統計情報によると、速度分布が低速度に偏っている上に頻度が低く、存在確率が低い。また、
図5に示すように、符号210に示す領域の部分空間に係る夜間の統計情報によると、速度分布が低速度に偏っている上に頻度が高く、存在確率は高い。よって、モデル推定部50は、符号210に示す領域の部分空間の用途は睡眠用(ベッド)であると推定する。そして、モデル推定部50は、符号210に示す睡眠用の部分空間を統合した睡眠用スペースについて、夜間の睡眠用の運動モデルを推定する。一方で、
図4に示すように、符号220に示す領域の部分空間に係る日中の統計情報によると、速度分布が低速度に偏っており、存在確率が高い。また、
図5に示すように、符号220に示す領域の部分空間に係る夜間の統計情報によると、速度分布がなく、存在確率は低い(ゼロである)。よって、モデル推定部50は、符号220に示す領域の部分空間の用途は活動用(ベッド以外の生活用)であると推定する。そして、モデル推定部50は、符号220に示す活動用の部分空間を統合した活動用スペースについて、日中の活動用の運動モデルを推定する。
【0053】
モデル推定部50は、時間帯ごとに運動モデルを推定することにより、単一の運動モデルを推定する場合と比較して、精度のよい運動モデルを推定することが可能となる。これにより、状態判定装置1は、より細やかな状態判定を行うことが可能となる。例えば、認知症の徘徊などの場合には、状態判定装置1は、夜間に睡眠用スペース以外の場所において高速度で動く動体を検知した場合に、異常状態であると判定することが可能となる。また、ベッドからのずり落ちなどの場合には、夜間に睡眠用スペース以外の場所において低速度で、又はほとんど動かない動体を検知した場合に、異常状態であると判定することが可能となる。
【0054】
モデル推定部50は、推定した運動モデルを判定部60へ出力する。
【0055】
(6)判定部60
判定部60は、取得部10により取得された動体の運動状態とモデル推定部50により推定された運動モデルとを比較することで、動体の状態を判定する機能を有する。具体的には、判定部60は、取得部10により取得された動体の運動状態が、運動モデルから乖離しているか否かに基づいて、動体の状態が異常状態であるか否かを判定する。例えば、判定部60は、取得部10により取得された動体の速度及び位置を一時的に蓄積して、各統合空間における滞留時間及び平均速度を算出する。そして、判定部60は、動体の位置に対応する統合空間の運動モデルが示す滞留時間及び速度と算出結果とを比較して、乖離度合が閾値を超える場合は異常状態であると判定し、閾値以下である場合は通常状態であると判定する。
【0056】
(7)出力部70
出力部70は、判定部60による判定結果を出力する機能を有する。例えば、出力部70は、表示装置、音声出力装置、又はメール等で遠隔地への通知を行う通信装置として実現されてもよい。出力部70は、状態判定装置1の管理者、病院又は見守り対象の人間の家族等へ、判定結果を出力してもよい。また、出力部70は、見守り対象の人間に、例えば座位中断を行うよう促す通知を出力してもよい。
【0057】
以上、本実施形態に係る状態判定装置1の構成例を説明した。続いて、
図6及び
図7を参照して、本実施形態に係る状態判定装置1の動作処理例を説明する。
【0058】
<3.動作処理例>
[3−1.運動モデル推定処理]
図6は、本実施形態に係る状態判定装置1において実行される運動モデル推定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0059】
図6に示すように、まず、ステップS102で、取得部10は、対象空間に存在する動体の運動状態を示す運動状態情報を取得する。例えば、取得部10は、センサ2から出力された対象空間のセンシング情報から、運動状態情報として、対象空間に存在する動体の位置及び速度を示す情報を取得する。
【0060】
次いで、ステップS104で、設定部20は、部分空間を設定する。例えば、設定部20は、対象空間にメッシュ状の部分空間を設定する。
【0061】
次に、ステップS106で、統計情報算出部30は、統計情報を算出する。例えば、統計情報算出部30は、設定部20により設定された部分空間において取得部10により取得された運動状態情報から、動体の存在確率及び速度分布を含む統計情報を部分空間毎に算出する。算出された統計情報は、記憶部40に記憶される。
【0062】
次に、ステップS108で、モデル推定部50は、部分空間の用途を推定する。例えば、モデル推定部50は、速度分布が低速度に偏っており存在確率が高い部分空間の用途は生活用であると推定する。また、モデル推定部50は、速度分布が高速度に偏っており存在確率が低い部分空間の用途は移動用であると推定する。
【0063】
次いで、ステップS110で、モデル推定部50は、用途ごとに統合空間を設定する。例えば、モデル推定部50は、用途ごとに部分空間を連結等して統合する。例えば、モデル推定部50は、生活用の部分空間を統合して生活用スペース(部屋)を設定する。また、モデル推定部50は、移動用の部分空間を統合して移動用スペース(廊下)を設定する。
【0064】
そして、ステップS112で、モデル推定部50は、運動モデルを推定する。例えば、モデル推定部50は、移動用スペースには短い滞留時間及び高速度を設定した運動モデルを推定し、生活用スペースには長い滞留時間及び低速度を設定した運動モデルを推定する。
【0065】
以上、本実施形態に係る運動モデル推定処理の一例を説明した。続いて、
図7を参照して、本実施形態に係る状態判定処理の一例を説明する。
【0066】
[3−2.状態判定処理]
図7は、本実施形態に係る状態判定装置1において実行される状態判定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0067】
図7に示すように、まず、ステップS202で、取得部10は、対象空間に存在する動体の運動状態を示す運動状態情報を取得する。
【0068】
次いで、ステップS204で、判定部60は、動体の状態を判定する。例えば、判定部60は、取得部10により取得された動体の運動状態が、運動モデル推定処理により推定された運動モデルから乖離しているか否かに基づいて、動体の状態が異常状態であるか否かを判定する
【0069】
正常状態であると判定された場合(ステップS206/NO)、処理は再度ステップS202に戻る。
【0070】
一方で、異常状態であると判定された場合(ステップS206/YES)、ステップS208で、出力部70は、状態判定結果を出力する。例えば、出力部70は、管理者等へ異常状態である旨を通知する。
【0071】
以上、本実施形態に係る状態判定処理の一例を説明した。
【0072】
<4.まとめ>
以上、
図1〜
図7を参照して、本発明の一実施形態について詳細に説明した。上記説明したように、状態判定装置1は、対象空間に設定した部分空間を複数設定し、各部分空間において取得された動体の運動状態の統計情報を記憶しておく。そして、状態判定装置1は、記憶された統計情報から運動モデルを推定し、推定した運動モデルを用いて動体の状態を判定する。状態判定装置1は、部分空間毎の統計情報から運動モデルを推定するので、対象物体の状態をより精度よく判定することが可能である。例えば、対象物体が人である場合、状態判定装置1は、人の居住空間のレイアウトに応じて適切な状態判定を行うことが可能である。
【0073】
また、状態判定装置1は、部分空間の用途を推定し、部分空間を用途ごとに統合した統合空間ごとに運動モデルを推定する。このため、状態判定装置1は、例えば移動用、生活用、食事用、又は睡眠用等の多様な用途で用いられる空間ごとに運動モデルを推定することが可能となる。用途が異なる空間においては人の動きも異なるので、状態判定装置1は、用途に応じた運動モデルを用いることにより、より精度よく人の状態を判定することが可能となる。
【0074】
例えば、状態判定装置1は、移動用スペース等の存在確率が低い場所に人が滞留する場合に異常であると判定し、生活スペースなどに人が滞留する場合には正常であると判定することができる。このように、状態判定装置1は、誤った状態判定を回避することができるので、誤報を削減することができる。また、状態判定装置1は、移動用スペース等の高速度で人が移動する空間において、低速又はほとんど動かずにじっとしている人が検知された場合に、転倒などの異常であると判断することができる。このように、状態判定装置1は、空間の用途に応じて短い時間で異常状態を判定することができるので、速報性を確保することができる。
【0075】
また、状態判定装置1は、統計情報に基づいて運動モデルを推定するので、部屋のレイアウト等の事前情報は不要である。このため、状態判定装置1は、見守り用途に用いられる場合に、判定対象である人のプライバシーを保護することができる。
【0076】
また、状態判定装置1は、時間帯毎に運動モデルを推定してもよい。これにより、状態判定装置1は、より細やかな状態判定を行うことが可能となる。例えば、対象物体が人である場合、状態判定装置1は、人の生活サイクルに応じて適切な状態判定を行うことが可能である。
【0077】
また、状態判定装置1は、送信波を送信して動体により反射された反射波を観測するセンサからのセンシング情報を用いて状態判定を行う。このため、状態判定装置1は、例えばKinect(登録商標)等のジェスチャ認識装置や撮像装置を用いて状態判定を行う技術と比較して、判定対象である人のプライバシーを保護することができる。人の見守り用途に用いられる装置は、居住空間を常時センシングすることを考慮すると、プライバシー保護の要請は高いと考えられる。また、送信波及び受信波を用いるセンサは、遮蔽物があっても対象空間をセンシング可能であるため、状態判定装置1は、例えばKinect等のジェスチャ認識装置や撮像装置を用いて状態判定を行う技術と比較して、障害物が存在し得る居住空間での使用に適する。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、状態判定装置1は人の見守り用途として用いられる例を説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、状態判定装置1は、侵入防止等のセキュリティ用途として用いられてもよい。例えば、状態判定装置1は、人が足早に通り過ぎることが多い集合住宅の通路において、移動速度が遅く、ドアの前の空間での滞留時間が長い動体について、ドアを不正に開錠しようとする泥棒であるという判定を行ってもよい。
【0080】
また、本明細書において説明した状態判定装置1は、単独の装置として構成されてもよく、一部または全部が別々の装置で構成されても良い。例えば、
図2に示した状態判定装置1の機能構成例のうち、取得部10、設定部20、統計情報算出部30、記憶部40、モデル推定部50、及び判定部60が、センサ2及び出力部70とネットワーク等で接続されたサーバ等の装置に備えられていても良い。取得部10、設定部20、統計情報算出部30、記憶部40、モデル推定部50、及び判定部60がサーバ等の装置に備えられる場合は、センサ2からの情報がネットワーク等を通じて当該サーバ等の装置に送信され、判定部60による判定結果が返信されて出力部70により出力される。
【0081】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、コンピュータによる実行時にRAMに読み込まれ、CPUなどのプロセッサにより実行される。
【0082】
また、本明細書においてフローチャート及びシーケンス図を用いて説明した処理は、必ずしも図示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。