(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第2線状部における奥行き方向に向かう面は、前記整流ネット部を通過する際の空気の流量が所定量を超えて前記整流ネット部が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となるように設計されていることを特徴とする請求項1に記載の吸気音低減装置。
【背景技術】
【0002】
吸気管内には、吸気量を制御するためにスロットルバルブが設けられている。ここで、スロットルバルブが急激に開いた際に、異音が発生する問題がある。このような異音が発生することを抑制するために、網目状に設けられた線状部により構成される整流ネットをスロットルバルブの下流側に設けることで、空気の流れを整流させる技術が知られている。また、この整流ネットを、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケットに設ける技術も知られている。一般的に、このような技術においては、整流ネットは金属などの剛性の高い材料により構成され、ガスケットはゴムなどの弾性体により構成される。しかしながら、この場合には、コストが高くなるため、整流ネットも弾性体により構成し、整流ネット部とガスケット部とを一体に備える吸気音低減装置も知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このように、整流ネット部が弾性体により構成される場合には、金属などの剛性の高い材料で構成される場合とは異なり、変形し易い性質を有する。そのため、弾性体製の整流ネット部の場合には、耐久性を高めるために、変形し難い構成とするのが望ましい。ここで、整流ネット部を構成する線状部を太くすることも考えられるが、単に線状部を太くしただけだと、網目が狭くなり、空気の流れを阻害してしまう。空気の流れが阻害されると、流量が低下することにより、エンジンへの必要空気量が確保されずに、燃焼効率を悪化する原因となってしまう。そこで、線状部の幅は狭くして網目を広くしつつ、線状部の厚みを厚くして整流ネット部の変形を抑制することが考えられる。しかしながら、このような構成を採用した場合でも、検証の結果、流量の低下を十分に抑制することが困難なことが分かった。この点について、
図8〜
図10を参照して説明する。
【0004】
図8及び
図9は仮想技術に係る吸気音低減装置の平面図であり、
図8は外力が作用していない状態を示し、
図9は空気の流れにより整流ネット部が変形した状態を示している。
図10は仮想技術に係る線状部の模式的断面図であり、
図9中のYY断面図である。この仮想技術に係る吸気音低減装置500は、環状のガスケット部510と、このガスケット部510の内側(径方向の内側)に一体に設けられる整流ネット部520とから構成される。また、吸気音低減装置500は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。整流ネット部520は、ガスケット部510の円の中心から外側に向かって径方向に伸びる複数の線状部521と、上記円の中心に対して同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の線状部522とから構成される。これら複数の線状部521,522は幅に対して奥行きが長くなるように構成されている。
【0005】
以上のように構成される吸気音低減装置500においては、スロットルバルブが開いて空気が流れた状態になると、整流ネット部520はガスケット部510の円の中心付近が空気の流れる方向の下流側に向かって突き出るように変形する。ここで、空気が流れる方向に見て、整流ネット部520が変形する前と空気の流れにより変形した後で、径方向に伸びる複数の線状部521に関しては、面積の変化は(殆ど)ない。これに対して、周方向に伸びる複数の線状部522に関しては、面積が広くなるように変化する。これは、整流ネット部520が空気の流れにより変形する際に、周方向に伸びる複数の線状部522の場合、当該線状部522が伸びる方向を中心軸線として回転する方向(
図10中T方向)に変形することが原因である。つまり、線状部522には、ねじり変形が生じる。なお、
図10においては、線状部522について、変形前を点線で示し、変形後を実線で示し
ている。この図から、空気が流れる方向に見て、整流ネット部520が変形する前は、線状部522の範囲がS1であるのに対して、変形後は線状部522の範囲S2(>S1)となり、面積が広くなるように変化することが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、整流ネット部の変形を抑制しつつ、空気の流量の低下の抑制を図ることのできる吸気音低減装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0009】
すなわち、本発明の吸気音低減装置は、
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部を構成する網目状の線状部は、径方向に伸びる複数の第1線状部と、周方向に伸びる複数の第2線状部とを備えており、第2線状部の奥行きが、第1線状部の奥行きよりも長く設定されると共に、
第1線状部と第2線状部は、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されていることを特徴とする。
【0010】
以上のように構成された本発明の吸気音低減装置によれば、整流ネット部が空気の流れにより変形すると、径方向に伸びる第1線状部については、奥行き方向に伸びるように変形し、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向には変形しない。つまり、ねじり変形は生じない。これに対し、周方向に伸びる第2線状部については、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形する。つまり、ねじり変形が生じる。しかし、本発明においては、第2線状部の奥行きは、第1線状部の奥行きよりも長く設定されており、かつ第1線状部と第2線状部は、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている。従って、第2線状部は、第1線状部との結合部よりも下流側の部分が上流側の部分よりも空気の流れの影響を受ける。そして、当該結合部よりも上流側の部分は空気の流れを妨げる方向に第2線状部を変形させる機能が発揮されるのに対して、下流側の部分は空気の流れを妨げない方向に第2線状部を変形させる機能が発揮される。上記の通り、本発明によれば、結合部よりも下流側の部分が上流側の部分よりも空気の流れの影響を受けるので、第2線状部は空気の流れを妨げない方向に変形する。また、第2線状部が空気の流れを妨げない方向に変形することにより結合部に生じる力(モーメント)は、第1線状部を元の形状に戻す方向に変形させる力となる。これにより、整流ネット部の変形を抑制することができる。
【0011】
第2線状部における奥行き方向に向かう面は、前記整流ネット部を通過する際の空気の流量が所定量(予め設定された量)を超えて前記整流ネット部が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となるように設計されているとよい。
【0012】
これにより、空気の流れを妨げてしまうことをより一層抑制することができ、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。また、整流ネット部の変形を助長させることもない。
【0013】
第2線状部における奥行き方向に向かう面は、空気が流れる方向に向かって縮径するテーパ面により構成されているとよい。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、整流ネット部の変形を抑制しつつ、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
(実施例1)
図1〜
図4を参照して、本発明の実施例1に係る吸気音低減装置について説明する。
図1は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の平面図である。
図2は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の模式的断面図であり、
図1中のXX断面図である。
図3は本発明の実施例1に係る吸気音低減装置の使用時の様子を示す模式的断面図である。なお、
図3中の吸気音低減装置の断面図は、
図1中のXX断面図に相当する。
図4は本発明の実施例1に係る整流ネット部の挙動説明図である。
【0018】
<吸気音低減装置の構成>
本実施例に係る吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。そして、この吸気音低減装置100は、環状のガスケット部110と、整流ネット部120とから構成される。整流ネット部120は、ガスケット部110の内側(径方向の内側)に一体に設けられる。なお、金型成形によって、ガスケット部110と整流ネット部120とを一体に備える吸気音低減装置100を成形することができる。金型成形に関する技術は公知であるので、その説明は省略する。
【0019】
そして、ガスケット部110は、吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する役割を担っている。また、整流ネット部120は、網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる役割を担っている。
【0020】
本実施例に係る吸気音低減装置100は、吸気管内においてスロットルバルブ400の下流側(吸気の際において、空気が流れる方向の下流側)に配置される。また、本実施例においては、吸気管を構成するインテークマニホールド200(一方の管)とスロットルボディ300(他方の管)との接続部付近に、吸気音低減装置100が配置される。なお、本実施例においては、スロットルバルブ400の回転軸は水平方向に伸びるように設置される。また、このスロットルバルブ400は、
図3中矢印R方向に回転することで、弁が開くように構成されている。以上の構成により、スロットルバルブ400の開き始めの状態においては、吸気管内の上部側の空気の流れA1と、下部側の空気の流れA2が生じる(
図3参照)。
【0021】
本実施例においては、吸気管の管は円筒形状である。そのため、ガスケット部110は円環形状となっている。このガスケット部110は、インテークマニホールド200の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き210とスロットルボディ300の端面の内周に沿って形成された環状の切り欠き310とで形成される環状溝に嵌合されるように配置される。これにより、ガスケット部110は、インテークマニホールド200の端面と、スロットルボディ300の端面との間に挟み込まれることで、これらの端面間の隙間を封止する機能を発揮する。
【0022】
整流ネット部120は、平面形状が円形のガスケット部110の内側に設けられている。そして、整流ネット部120は、ガスケット部110の円の中心から外側に向かって径方向に放射状に伸びる複数の線状部(以下、第1線状部121と称する)と、上記円の中心に対して同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の線状部(以下、第2線状部122と称する)とから構成される。これら複数の第1線状部121と複数の第2線状部122とによって、網目が形成される。なお、本実施例においては、隣り合う第1線状部121の間の角度がほぼ等しく設定されている。また、隣り合う第2線状部122の径方向の間隔がほぼ等しく設定されている。これにより、整流ネット部120の網目は、ガスケット部110の円の中心付近が細かく、中心から遠ざかるにつれて粗くなっている。
【0023】
また、本実施例においては、
図3に示すように、スロットルバルブ400と整流ネット部120との間隔が、スロットルバルブ400のバルブ本体部分の長さよりも短い。そのため、スロットルバルブ400が整流ネット部120に突き当たらないように、整流ネット部120は、平面形状が円形であるガスケット部110の内側のほぼ半分の領域を占めるように設けられている。なお、残りのほぼ半円形の領域は空洞となっている。そして、吸気音低減装置100が吸気管内に配置された状態においては、整流ネット部120が設けられている半円形の領域が上部に配置され、空洞状の半円形の領域が下部に配置される。これにより、スロットルバルブ400が全開しても、スロットルバルブ400が整流ネット部120に突き当たることはない。なお、
図3中、スロットルバルブ400が閉じた状態を実線で示し、開き始めの状態を点線で示している。スロットルバルブ400が90°回転することで、完全に弁が開いた状態となる。
【0024】
<線状部の詳細>
整流ネット部120を構成する第1線状部121及び第2線状部122について、より詳細に説明する。本実施例に係る整流ネット部120においては、第2線状部122の奥行きが、第1線状部121の奥行きよりも長く設定されている。また、第2線状部122は、幅よりも奥行きが長く設定されている。なお、「幅」とは、空気が流れる方向に線状部を見た場合における線状部の幅である。また、「奥行き」は、線状部の表面から裏面までの距離(例えば、
図2において、第1線状部121,第2線状部122の図中左側の端から右側の端までの距離)に相当する。
【0025】
そして、第1線状部121と第2線状部122は、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている。つまり、第2線状部122において、空気が流れる方向における上流側の端面から第1線状部121と第2線状部122との結合部123までの距離L1よりも、空気が流れる方向における下流側の端面から結合部123までの距離L2の方が長くなるように構成されている。なお、本実施例に係る第2線状部122は、空気が流れる前の状態において、空気が流れる方向に真っ直ぐに伸びるように構成されている。つまり、第2線状部における奥行き方向に向かう面(外周面及び内周面)は、空気が流れる前の状態において、空気が流れる方向に真っ直ぐに伸びるように構成されている。
【0026】
<整流ネット部の挙動>
特に、
図3及び
図4を参照して、整流ネット部120の挙動について説明する。
図3に示すように、スロットルバルブ400が開くと、吸気管内の上部側の空気の流れA1と、下部側の空気の流れA2が生じる。これらの空気の流れA1,A2は、吸気管に対して平行ではなく、上部側の空気の流れA1は上方から下方に向かって流れていき、下部側の空気の流れA2は下方から上方に向かって流れていく。その後、スロットルバルブ400は、水平状態になるまで開く。スロットルバルブ400が全開した状態においては、空気は吸気管と略平行に流れる。
【0027】
そして、整流ネット部120は、空気の流れによって、
図3中点線で示すように、ガスケット部110の円の中心付近が空気の流れる方向の下流側に向かって突き出るように変形する。これにより、径方向に伸びる第1線状部121については、奥行き方向(空気の流れる方向の下流方向)に伸びるように変形する。ただし、第1線状部121は、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向には変形しない。つまり、ねじり変形は生じない。
【0028】
これに対し、周方向に伸びる第2線状部122については、線状部が伸びる方向を中心軸線として回転する方向に変形する。つまり、ねじり変形が生じる。そのため、第2線状部122は、空気が流れる方向の上流側が縮径し、下流側が拡径するように変形する。ここで、上記の通り、第2線状部122の奥行きは、第1線状部121の奥行きよりも長く設定されており、かつ第1線状部121と第2線状部122は、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている。従って、第2線状部122は、第1線状部122との結合部123よりも下流側の部分が上流側の部分よりも空気の流れの影響を受ける。そして、結合部123よりも上流側の部分は空気の流れを妨げる方向に第2線状部122を変形させる機能が発揮されるのに対して、下流側の部分は空気の流れを妨げない方向に第2線状部122を変形させる機能が発揮される。上記の通り、本実施例においては、結合部123よりも下流側の部分が上流側の部分よりも空気の流れの影響を受けるので、第2線状部122は空気の流れを妨げない方向に変形する。より具体的には、
図4に示すように、空気の流れ(矢印A参照)により、第2線状部122は圧力を受けて、下流側の部分が矢印B方向に変形する。つまり、第2線状部122は、空気が流れる方向に見て、面積が狭くなる方向に変形する。
【0029】
また、第2線状部122が空気の流れを妨げない方向に変形することにより結合部123に生じる力(図中、C方向のモーメント)は、第1線状部122を元の形状に戻す方向に変形させる力となる。これにより、整流ネット部120の変形を抑制することができる。
【0030】
<本実施例に係る吸気音低減装置の優れた点>
以上のように本実施例に係る吸気音低減装置100によれば、スロットルバルブ400が開いた際に、空気の流れにより整流ネット部120が変形し、周方向に伸びる第2線状部122には、空気の流れを妨げる方向にねじり変形が生じる。しかしながら、第2線状
部122は、空気の圧力を受けて、空気の流れを妨げない方向、つまり元の状態に戻るように変形する。また、この第2線状部122の変形により結合部123に生じる力は、第1線状部122を元の形状に戻す方向に変形させる力となる。これらのことが相俟って、整流ネット部120の変形を効果的に抑制することが可能となる。また、これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【0031】
(実施例2)
図5及び
図6には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1においては、第2線状部における奥行き方向に向かう面は、空気が流れる前の状態において、空気が流れる方向に真っ直ぐに伸びるように構成される場合を示した。これに対し、本実施例においては、第2線状部における奥行き方向に向かう面が、空気が流れる前の状態において、空気が流れる方向に対して傾斜するように構成される場合を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0032】
図5は本発明の実施例2に係る吸気音低減装置の模式的断面図である。また、
図6は本発明の実施例2に係る整流ネット部の挙動説明図である。本実施例に係る吸気音低減装置100においても、上記実施例1の場合と同様に、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成される。そして、この吸気音低減装置100も、環状のガスケット部110と、整流ネット部120とから構成される。また、整流ネット部120は、平面形状が円形のガスケット部110の内側(径方向の内側)に一体に設けられる。そして、整流ネット部120は、ガスケット部110の円の中心から外側に向かって径方向に放射状に伸びる複数の第1線状部121と、上記円の中心に対して同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の第2線状部122aとから構成される。これら複数の第1線状部121と複数の第2線状部122aとによって、網目が形成される。
【0033】
また、第2線状部122aの奥行きが、第1線状部121の奥行きよりも長く設定されて点、及び、第2線状部122aは、幅よりも奥行きが長く設定されている点についても、上記実施例1の場合と同様である。更に、第1線状部121と第2線状部122aは、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている点についても、上記実施例1の場合と同様である。つまり、第2線状部122aにおいて、空気が流れる方向における上流側の端面から第1線状部121と第2線状部122aとの結合部123までの距離L1よりも、空気が流れる方向における下流側の端面から結合部123までの距離L2の方が長くなるように構成されている。
【0034】
そして、本実施例の場合、第1線状部121及び第2線状部122aにおいては、奥行き方向に向かう面が、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量(予め設定された量)を超えて整流ネット部120が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となるように設計されている。より具体的には、第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面は、空気が流れる方向に向かって縮径するテーパ面により構成されている。この第2線状部122aの構成のみ、上記実施例1の構成と異なっている。なお、奥行き方向に向かう面とは、第1線状部121の場合には、奥行き方向に対して平行な面に相当し、第2線状部122aの場合には、外周面と内周面(つまり、
図5,6中の上面と下面)に相当する。
【0035】
実施例1でも説明したように、第1線状部121の場合には、スロットルバルブ400の開閉により、空気の流れに応じて、線状部が伸びる方向に伸び縮みするものの、ねじり変形は生じない。従って、第1線状部121については、外力を受けていない状態で、奥行き方向に向かう面を奥行き方向に対して平行な面となるように設計すれば、奥行き方向に向かう面は、空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態で、空気
の流れる方向と略平行となるように設計されていると言える。
【0036】
これに対して、第2線状部122aの場合には、整流ネット部120が空気の流れにより変形すると、ねじり変形が生じる。そこで、本実施例においては、第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面を、空気が流れる方向に向かって縮径するテーパ面としている。そして、第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面の傾斜角度は、当該奥行き方向に向かう面が、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となるように設計されている。
【0037】
<整流ネット部の挙動>
特に、
図6を参照して、整流ネット部120の挙動について説明する。実施例1において説明したように、スロットルバルブが全開した状態においては、空気は吸気管と略平行に流れる。なお、
図6中の矢印Aは空気が流れる方向を示している。また、
図6においては、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量(予め設定された量)を超えた状態における整流ネット部120の様子を示している。スロットルバルブが開いて空気が流れた状態になると、整流ネット部120はガスケット部110の円の中心付近が空気の流れる方向の下流側に向かって突き出るように変形する。ここで、上記の通り、第1線状部121における奥行き方向に向かう面は、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態においても、空気の流れる方向と略平行となる。また、第2線状部122aについては、空気の流れによってねじり変形が生じることにより、奥行き方向に向かう面は、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となる。従って、第1線状部121及び第2線状部122aのいずれについても、奥行き方向に向かう面は、スロットルバルブが全開して、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えた状態においても、空気の流れる方向と略平行となっている。これにより、空気の流れが妨げられることはない。
【0038】
<本実施例に係る吸気音低減装置の優れた点>
本実施例に係る吸気音低減装置100によれば、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態において、第1線状部121及び第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面は、空気の流れる方向と略平行となるように設計されている。従って、空気の流れを妨げてしまうことを抑制することができる。これにより、空気の流量の低下の抑制を図ることができる。また、整流ネット部120の変形を助長してしまうこともない。
【0039】
また、本実施例においては、第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面は、整流ネット部120が変形する前の状態において、スロットルバルブが開き始めた直後の空気の流れる方向(
図3の矢印A1参照)に向かって傾いている。これにより、スロットルバルブが開き始めた直後においても、空気の流れを妨げてしまうことを抑制することができる。なお、スロットルバルブの下流側に、網目状の部材を配置しておけば、網目を構成する線状部の幅が狭くても、異音の発生を抑制できることが知られている。従って、本実施例においては、第1線状部121及び第2線状部122aのいずれについても、奥行き方向に向かう面は、スロットルバルブが開き始めた直後における空気の流れに対して略平行となっているが異音の発生を抑制する機能は十分に発揮される。
【0040】
また、本実施例においても、上記実施例1の場合と同様に、第2線状部122aの奥行きは、第1線状部121の奥行きよりも長く設定されており、かつ第1線状部121と第2線状部122aは、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている。従って、第2線状部122aは、第1線状部122との結合部123よりも下流側の部分
が上流側の部分よりも空気の流れの影響を受ける。第2線状部122aにおける結合部123よりも下流側の部分は、空気の圧力を受けて、空気の流れる方向に平行となるように矯正される。そのため、第2線状部122aにおける奥行き方向に向かう面は、安定的に、空気の流れる方向と平行となるように保たれる。従って、実施例1の場合に比べて、より一層空気の流量の低下の抑制を図ることができる。
【0041】
なお、
図5に示す例においては、複数の第2線状部122aについて、外力を受けていない状態における奥行き方向に向かう面の傾斜角度がいずれも同一となるように設計されている。ただし、整流ネット部120が空気の流れによって変形した場合、複数の第2線状部122aは、その配置位置によって変形量が異なる。そこで、これら複数の第2線状部122aの配置位置に応じて、上記の傾斜角度をそれぞれ異ならせるようにしてもよい。これにより、第2線状部122aの奥行き方向に向かう面を、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量を超えて整流ネット部120が変形した状態で、より的確に、空気の流れる方向と略平行となるようにすることができる。
【0042】
(実施例3)
図7には、本発明の実施例3が示されている。上記実施例1においては、整流ネット部がガスケット部の内側の略半円形の領域に設けられる場合の構成を示した。これに対して、本実施例においては、整流ネット部がガスケット部の内側の全領域に亘って設けられる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0043】
図7は本発明の実施例3に係る吸気音低減装置の平面図である。本実施例に係る吸気音低減装置100においても、上記実施例1の場合と同様に、環状のガスケット部110と、整流ネット部120Xとから構成される。また、整流ネット部120Xは、実施例1の場合と同様に、ガスケット部110の円の中心から外側に向かって径方向に放射状に伸びる複数の第1線状部121Xと、上記円の中心に対して同心円状に周方向に伸びるように設けられる複数の第2線状部122Xとから構成される。なお、第2線状部122Xの奥行きが、第1線状部121Xの奥行きよりも長く設定されて点、及び、第2線状部122Xは、幅よりも奥行きが長く設定されている点についても、上記実施例1の場合と同様である。また、第1線状部121Xと第2線状部122Xは、空気が流れる方向における上流側に偏った位置で結合されている点についても、上記実施例1の場合と同様である。本実施例においては、整流ネット部120Xがガスケット部110の内側の全領域に亘って設けられる点のみが上記実施例1の場合とは異なっている。
【0044】
以上のように構成された本実施例に係る吸気音低減装置100においても、上記実施例1の場合と同様の効果が得られることは言うまでもない。また、本実施例においては、上述した
図3に示す下部側の空気の流れA2についても整流することが可能となる。ただし、スロットルバルブ400が整流ネット部120に接触してしまわないように、スロットルバルブ400と整流ネット部120Xとの間隔を、スロットルバルブ400のバルブ本体部分の長さよりも長くする必要がある。
【0045】
ここで、
図3に示すように、スロットルバルブ400が開く際に、スロットルバルブ400の下端は空気が流れる方向に向かって移動する。そのため、下部側の空気の流れA2は、比較的滑らかに流れていくと考えられ、乱流は発生し難いと考えられる。これに対して、スロットルバルブ400が開く際に、スロットルバルブ400の上端は空気が流れる方向と逆方向に向かって移動する。そのため、上部側の空気の流れA1は、乱流が発生し易いと考えられる。従って、上部側の空気の流れA1が異音を発生させる原因となっており、下部側の空気の流れA2については、それほど異音を発生させる原因にはなっていないと考えられる。従って、上記実施例1で示した吸気音低減装置100のように、ガスケ
ット部110の内側の領域のうち、上部側の略半円形の領域にのみ整流ネット部120が設けられる構成を採用しても、十分に吸気音を低減させることができる。
【0046】
なお、本実施例に係る第2線状部122Xにおいても、上記実施例2で示した第2線状部122aの構成を適用することができる。つまり、第2線状部122Xの奥行き方向に向かう面を、整流ネット部120を通過する際の空気の流量が所定量(予め設定された量)を超えて整流ネット部120が変形した状態で、空気の流れる方向と略平行となるように設計することができる。