(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、前記一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、前記左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する連通路と、該連通路に連通接続し、前記左輪側シリンダに充填された流体を給排する第1の逆相用アキュムレータと、当該連通路に連通接続し、前記右輪側シリンダ内に充填された流体を給排する第2の逆相用アキュムレータと、当該連通路への前記第1及び第2の逆相用アキュムレータの連通接続部間に介装し、常時連通絞り部を有する第1の連通制御装置と、該第1の連通制御装置と前記第1及び第2の逆相用アキュムレータの少なくとも一方との間に第2の連通制御装置を介して連通接続する少なくとも一つの同相用アキュムレータとを備えたことを特徴とする車両のサスペンション装置。
前記第1の連通制御装置が、前記常時連通絞り部として内蔵オリフィスを有するリニアソレノイドバルブで構成され、前記第2の連通制御装置が開閉ソレノイドバルブで構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンション装置。
前記同相用アキュムレータが、前記第1の逆相用アキュムレータに連通接続する第1の同相用アキュムレータと、前記第2の逆相用アキュムレータに連通接続する第2の同相用アキュムレータとから成り、前記第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、前記第2の連通制御装置が、前記第1の同相用アキュムレータを開閉する第1の開閉ソレノイドバルブと、前記第2の同相用アキュムレータを開閉する第2の開閉ソレノイドバルブで構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンション装置。
前記第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、前記第2の連通制御装置が、前記同相用アキュムレータ内の流体圧と前記第1及び第2の逆相用アキュムレータ内の流体圧との圧力差に応じて開閉する圧力感応開閉弁機構で構成されていることを特徴とする請求項1記載の車両のサスペンション装置。
【背景技術】
【0002】
車両のロール運動を適切に抑制するように制御するサスペンション制御装置に関し、例えば、下記の特許文献1には、「電磁弁や電子制御装置等を必要とすることなく、簡単な構成で、乗り心地及び悪路走破性の向上と、走行安定性の確保を両立させ得るサスペンション制御装置を提供する」ことを目的とし(特許文献1の段落〔0005〕に記載)、「車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、前記一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、前記左輪側シリンダの車両上方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する第1の連通路と、前記左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する第2の連通路とを備え、該第2の連通路、前記第1の連通路、前記左輪側シリンダ及び前記右輪側シリンダに流体を充填して成る車両のサスペンション制御装置において、前記第1の連通路と前記第2の連通路との間に介装され、常時は前記第1の連通路と前記第2の連通路とを連通し、前記流体が前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側へ移動するときに生ずる圧力差が所定値以上となったときに、前記第1の連通路及び第2の連通路の一方側から他方側への前記流体の移動を阻止する弁機構を備えることとした」装置が提案されている(同段落〔0006〕に記載)。
【0003】
また、下記の特許文献2には、「車両の右左の同じ側同志の油圧ダンパのピストンロッド突出側と反対側のシリンダ内同志を管路によって連通するとともに、該管路の中途にリザーブタンクを設け、そのリザーブタンクの始端に減衰力を発生するベースバルブを固設する一方、内部を油室とガス室とに仕切る可動壁を配置することによって通常のダンパ特性を維持する一方、ローリングスピードを遅らせ、滑らかなローリングを行わせて、乗り心地の改善を図る」ことを目的とし(特許文献2の段落〔0004〕に記載)、「左または右の同じ側にある油圧ダンパのピストンロッド突出側と反対側の油圧シリンダ内同志を管路によって連通するべく構成するとともに、該管路の中途にリザーブタンクを設け、そのリザーブタンクの始端に減衰力を発生するベースバルブを固設する一方、内部を油室とガス室とに仕切る可動壁を配置した」4輪車用懸架装置が提案されている(同段落〔0005〕に記載)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のサスペンション制御装置は、左輪側シリンダの車両上方側の圧力室と右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する第1の連通路と、左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と右輪側シリンダの車両上方側の圧力室とを連通接続する第2の連通路とを備えたものであり、二つの油圧配管によって所謂クロス配管が構成されているので、車両搭載時の制約が大きい。また、一般的なショックアブソーバと異なる特有の構成のシリンダ等が必要とされる。一方、上記特許文献2に記載の懸架装置においては単一の油圧配管で構成されているが、「左または右の同じ側にある油圧ダンパのピストンロッド突出側と反対側の油圧シリンダ内同志を管路によって連通するべく構成する」、即ち、車両の同じ側の車輪間で流体的に連通するものであり、車両のロール時の減衰力を発生させることはできるものの、ロール剛性を変化させるものではない。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な構成で、車両の運動状態に応じて減衰力を発生させると共にロール剛性を変化させ得るサスペンション装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するため、本発明の車両のサスペンション装置は、車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、前記一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し前記車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、前記左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と前記右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する連通路と、該連通路に連通接続し、前記左輪側シリンダに充填された流体を給排する第1の逆相用アキュムレータと、当該連通路に連通接続し、前記右輪側シリンダ内に充填された流体を給排する第2の逆相用アキュムレータと、当該連通路への前記第1及び第2の逆相用アキュムレータの連通接続部間に介装し、常時連通絞り部を有する第1の連通制御装置と、該第1の連通制御装置と前記第1及び第2の逆相用アキュムレータの少なくとも一方との間に第2の連通制御装置を介して連通接続する少なくとも一つの同相用アキュムレータとを備えることとしたものである。
【0008】
上記のサスペンション装置において、前記第1の連通制御装置が、前記常時連通絞り部として内蔵オリフィスを有するリニアソレノイドバルブで構成され、前記第2の連通制御装置が開閉ソレノイドバルブで構成されるものとするとよい。
【0009】
更に、前記同相用アキュムレータが、前記第1の逆相用アキュムレータに連通接続する第1の同相用アキュムレータと、前記第2の逆相用アキュムレータに連通接続する第2の同相用アキュムレータとから成り、前記第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、前記第2の連通制御装置が、前記第1の同相用アキュムレータを開閉する第1の開閉ソレノイドバルブと、前記第2の同相用アキュムレータを開閉する第2の開閉ソレノイドバルブで構成されるものとするとよい。
【0010】
あるいは、上記のサスペンション装置において、前記第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、前記第2の連通制御装置が、前記同相用アキュムレータ内の流体圧と前記第1及び第2の逆相用アキュムレータ内の流体圧との圧力差に応じて開閉する圧力感応開閉弁機構で構成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のサスペンション装置においては、車両の前車軸及び後車軸のうちの少なくとも一方の車軸の左側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第1のピストン、及び該第1のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し車体に支持する第1のハウジングを有する左輪側シリンダと、一方の車軸の右側の車輪支持部に一端を支持し減衰力調整機構を有する第2のピストン、及び該第2のピストンを介して車両上方側の圧力室及び車両下方側の圧力室を形成し車体に支持する第2のハウジングを有する右輪側シリンダと、左輪側シリンダの車両下方側の圧力室と右輪側シリンダの車両下方側の圧力室とを連通接続する連通路と、該連通路に連通接続し、左輪側シリンダに充填された流体を給排する第1の逆相用アキュムレータと、当該連通路に連通接続し、右輪側シリンダ内に充填された流体を給排する第2の逆相用アキュムレータと、当該連通路への第1及び第2の逆相用アキュムレータの連通接続部間に介装し、常時連通絞り部を有する第1の連通制御装置と、該第1の連通制御装置と第1及び第2の逆相用アキュムレータの少なくとも一方との間に第2の連通制御装置を介して連通接続する少なくとも一つの同相用アキュムレータとを備えることとしたものであるので、簡単な構成で、車両の運動状態に応じて適切に減衰力を発生させると共にロール剛性を変化させることができる。
【0012】
例えば、左輪側シリンダ及び右輪側シリンダが同相で作動した場合には、両者の減衰力調整機構によって減衰力が発生するが、このとき、第2の連通制御装置を介して同相用アキュムレータを連通状態とすれば、両シリンダで給排される流体は同相用アキュムレータ並びに第1及び第2の逆相用アキュムレータにて吸収されるので、減衰力に対する反力を小さく抑えることができる。これに対し、左輪側シリンダ及び右輪側シリンダが逆相で作動した場合には、第1及び第2の逆相用アキュムレータは第1の連通制御装置内の常時連通絞り部を介して相互に連通しているので、両者間の圧力変化に位相差が生じ、この位相差に起因する減衰力が、左輪側シリンダ及び右輪側シリンダの減衰力調整機構によって発生する減衰力に対し、上乗せされることになるので、逆相時の減衰力が増大する。更に、第1の連通制御装置を制御することとすれば、上記の上乗せ分の減衰力を適宜制御することも可能となる。
【0013】
そして、逆相時における第1及び第2の逆相用アキュムレータ内の流体は、時間の経過に従い、第1の連通制御装置内の常時連通絞り部を介して初期状態に戻るので、一時的に剛性も変化することとなる。而して、車両がロールするような逆相時には、減衰力が増大することにより、ロール速度を低下させることができると共に、上記の一時的な剛性変化により、車両の回頭性が良好なものとなり、車両の運動性能が向上する。更に、第1及び第2の連通制御装置を適宜制御することによって、車両の運動状況に応じたロール制御を行うことも可能となる。
【0014】
上記のサスペンション装置において、第1の連通制御装置が、常時連通絞り部として内蔵オリフィスを有するリニアソレノイドバルブで構成され、第2の連通制御装置が開閉ソレノイドバルブで構成されるものとすれば、上記の上乗せ分の減衰力を適宜制御することも可能となる。そして、逆相時における第1及び第2の逆相用アキュムレータの流体は、時間の経過に従い、連通路及びリニアソレノイドバルブの内蔵オリフィスを介して初期状態に戻るので、一時的に剛性も変化することとなる。
【0015】
更に、同相用アキュムレータが、第1の逆相用アキュムレータに連通接続する第1の同相用アキュムレータと、第2の逆相用アキュムレータに連通接続する第2の同相用アキュムレータとから成り、第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、第2の連通制御装置が、第1の同相用アキュムレータを開閉する第1の開閉ソレノイドバルブと、第2の同相用アキュムレータを開閉する第2の開閉ソレノイドバルブで構成されるものとすれば、第1及び第2の開閉ソレノイドバルブを開閉することにより、同相時には剛性が低くなり、逆相時には剛性が高くなる。更に、第1及び第2の開閉ソレノイドバルブの開閉を個々に制御すれば、ロール剛性の制御を緻密に行うことができる。
【0016】
あるいは、第1の連通制御装置がオリフィス部材で構成され、第2の連通制御装置が、同相用アキュムレータ内の流体圧と第1及び第2の逆相用アキュムレータ内の流体圧との圧力差に応じて開閉する圧力感応開閉弁機構で構成されるものとすれば、機械的な機構のみの簡単な構成で、減衰力を発生させると共にロール剛性を変化させることができるので、安価な装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の望ましい実施形態を図面を参照して説明する。先ず、
図1は本発明の一実施形態に係るサスペンション装置を示すもので、本実施形態では、車両の後車軸に左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが搭載されている。左輪側シリンダRLは、車両後方左側の車輪支持部(図示せず)にロッド11aの一端が支持される第1のピストン11と、この第1のピストン11を介して車両上方側の圧力室12及び車両下方側の圧力室13が形成され、車体(図示せず)に支持される第1のハウジング10を有する。第1のピストン11には減衰力調整機構14が配設されている。同様に、右輪側シリンダRRは、車両後方右側の車輪支持部(図示せず)にロッド21aの一端が支持される第2のピストン21と、この第2のピストン21を介して車両上方側の圧力室22及び車両下方側の圧力室23が形成され、車体(図示せず)に支持される第2のハウジング20を有する。また、第2のピストン21にも減衰力調整機構24が配設されている。
【0019】
そして、左輪側シリンダRLの車両下方側の圧力室13と右輪側シリンダRRの車両下方側の圧力室23とが連通路RP0によって連通接続されており、この連通路RP0を含み左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRR内にオイル等の流体が充填される。更に、連通路RP0には、第1の逆相用アキュムレータ31及び第2の逆相用アキュムレータ32が夫々連通路RP1又は連通路RP2を介して連通接続されており、この連通路RP0への第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32の連通接続部間にリニアソレノイドバルブ50が介装されている。
【0020】
而して、左輪側シリンダRLに充填された流体は第1の逆相用アキュムレータ31によって給排され、右輪側シリンダRR内に充填された流体は第2の逆相用アキュムレータ32によって給排されるように構成されている。更に、リニアソレノイドバルブ50と第2の逆相用アキュムレータ32との間に、連通路SP0及びこれに介装される開閉ソレノイドバルブ60を介して、単一の同相用アキュムレータ40が連通接続されている。
【0021】
上記の第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32並びに同相用アキュムレータ40は、一般的な構造であり例えば特許文献1に記載されたものと同様であるので図示は省略するが、ハウジング内に収容されたピストンを介して、窒素ガス等の気体が封入されるガス室と調圧室が形成されており、この調圧室が上記の連通路RP0等を介して最終的に前述の圧力室13及び23に連通接続される。
【0022】
また、上記の減衰力調整機構14及び24も一般的な構造で、例えば特許文献2の
図2及び段落〔0008〕に記載の小孔、逆止弁等で構成されており、第1及び第2のピストン11及び21の作動に応じて左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRR内の減衰力を調整し得るように構成されている。以上のように、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRは一般的なショックアブソーバと同様の構成であり、特許文献1に記載のような別途特有の構成のシリンダ等を必要とすることなく、既存のショックアブソーバをそのまま用いることができるので、所謂アドオンで本実施形態を構成することも可能である。
【0023】
本実施形態においては、リニアソレノイドバルブ50によって第1の連通制御装置が構成されており、図示は省略するが、常時はリニアソレノイドバルブ50の内蔵オリフィスを介して上記の連通路RP0が連通しており、この内蔵オリフィスが第1の連通制御装置の常時連通絞り部として機能する。また、開閉ソレノイドバルブ60によって第2の連通制御装置が構成され、連通路SP0を開閉し得るように構成されている。これらのリニアソレノイドバルブ50及び開閉ソレノイドバルブ60は電子制御装置ECUによって、例えば以下のように制御される。
【0024】
即ち、各車輪に設けられた車高センサ(図示せず)等からの入力信号に基づき、電子制御装置ECUから駆動制御信号が出力され、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRの作動状態に応じてリニアソレノイドバルブ50が駆動制御されると、これを通過する流路面積が変化して減衰力が付与される。また、電子制御装置ECUの出力信号に応じて開閉ソレノイドバルブ60が開閉すると、開弁時(即ち同相時)には剛性が低くなり、閉弁時(即ち逆相時)には剛性が高くなる。尚、これらの作用については、以下の全体作動説明の中で詳述する。
【0025】
上記のように構成されたサスペンション装置において、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが同相で作動した場合、例えば両者が同時に圧縮されて第1及び第2のピストン11及び21が共に下降した場合、あるいは両者が同時に伸張されて第1及び第2のピストン11及び21が共に上昇した場合には、両者の減衰力調整機構14及び24によって減衰力が発生する。このとき、開閉ソレノイドバルブ60を開弁すれば、第1及び第2のピストン11及び21の各ロッド11a及び21aの入出によって給排される流体は、連通路SP0及び開位置の開閉ソレノイドバルブ60、並びに連通路RP1及びRP2を介して、同相用アキュムレータ40並びに第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32にて吸収されるので、反力を小さく抑えることができる。
【0026】
一方、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが逆相で作動した場合、例えば前者が圧縮されて第1のピストン11が下降し、後者が伸張されて第2のピストン21が上昇した場合には、開閉ソレノイドバルブ60を閉弁すれば、圧縮側の左輪側シリンダRLの圧力室13から、第1のピストン11のロッド11aの移動による流体(増加分)が第1の逆相用アキュムレータ31内に供給されると共に、伸張側の右輪側シリンダRRの圧力室23に対し、第2のピストン21のロッド21aの移動による流体(減少分)が第2の逆相用アキュムレータ32から供給される。この場合において、第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32は連通路RP0及びリニアソレノイドバルブ50の内蔵オリフィスを介して相互に連通しているので、これを通過する流体の圧力特性に
図6に示すような位相差が生じ、減衰力が発生する。
【0027】
図6において、実線はピストン(11又は12)のストローク変化を示し、二点鎖線は連通路RP0にオリフィス(例えば、リニアソレノイドバルブ50の内蔵オリフィス)が存在しない場合の圧力変化を示し、破線は連通路RP0にオリフィスが存在する場合の圧力変化を示す。
図6から明らかなように、連通路RP0にオリフィスが存在しない場合とオリフィスが存在する場合との間で、ストローク変化に対する圧力変化に位相差(Td)が生ずるが、この位相差(Td)に起因して(上乗せ分の)減衰力(Pd)生ずる。この結果、上記の減衰力(Pd)が、減衰力調整機構14及び24による減衰力に上乗せされるので、逆相時の減衰力がそれだけ増大することとなる。
【0028】
上記に加え、電子制御装置ECUによってリニアソレノイドバルブ50の開度を制御することとすれば、上記の上乗せ分の減衰力を適宜制御することも可能となる。そして、逆相時における第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32内の流体は、時間の経過に従い、連通路RP0及びリニアソレノイドバルブ50の内蔵オリフィスを介して
図1の初期状態に戻るので、一時的に剛性も変化することとなる。
【0029】
而して、車両がロールするような逆相時には、減衰力が増大することにより、ロール速度を低下させることができると共に、上記の一時的な剛性変化により、車両の回頭性が良好なものとなり、車両の運動性能が向上する。更に、電子制御装置ECUによってリニアソレノイドバルブ50及び開閉ソレノイドバルブ60を適宜制御することによって、車両の運動状況に応じたロール制御を行うことも可能となる。
【0030】
図2は、本発明の他の実施形態に係るサスペンション装置を示すもので、同相用アキュムレータが、第1の逆相用アキュムレータ31に連通接続する第1の同相用アキュムレータ41と、第2の逆相用アキュムレータ32に連通接続する第2の同相用アキュムレータ42とから成り、第1の連通制御装置が固定オリフィスのオリフィス部材51で構成され、第2の連通制御装置が、第1の同相用アキュムレータ41及び連通路RP1に連通接続される連通路SP1を開閉する第1の開閉ソレノイドバルブ61と、第2の同相用アキュムレータ42及び連通路RP2に連通接続される連通路SP2を開閉する第2の開閉ソレノイドバルブ62で構成されている。その他の構成は
図1の構成と同様であるので、同じ構成要素には同じ符合を付して説明は省略する。
【0031】
図2に示すように構成されたサスペンション装置においては、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが同相で作動した場合には、両者の減衰力調整機構14及び24によって減衰力が発生する。このとき、第1及び第2の開閉ソレノイドバルブ61及び62を開弁すれば、第1及び第2のピストン11及び21の各ロッド11a及び21aの入出によって給排される流体は、連通路SP1及びSP2、開位置の第1及び第2の開閉ソレノイドバルブ61及び62、並びに連通路RP1及びRP2を介して、第1及び第2の同相用アキュムレータ41及び42並びに第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32にて吸収されるので、反力を小さく抑えることができる。また、第1及び第2の開閉ソレノイドバルブ61及び62を開閉することにより、開弁時(即ち同相時)には剛性が低くなり、閉弁時(即ち逆相時)には剛性が高くなるが、更に、電子制御装置ECUによって第1及び第2の開閉ソレノイドバルブ61及び62の開閉を個々に制御すれば、ロール剛性の制御をより緻密に行うことができる。
【0032】
一方、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが逆相で作動した場合には、第1及び第2の開閉ソレノイドバルブ61及び62を閉弁すれば、圧縮側の例えば左輪側シリンダRLから、第1のピストン11のロッド11aの移動による流体(増加分)が第1の逆相用アキュムレータ31内に供給されると共に、伸張側の例えば右輪側シリンダRRに対し、第2のピストン21のロッド21aの移動による流体(減少分)が第2の逆相用アキュムレータ32から供給される。この場合において、第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32は連通路RP0及びオリフィス部材51を介して相互に連通しているので、両者の圧力変化に位相差が生じ、前述と同様に減衰力が発生する。結果、その減衰力が、減衰力調整機構14及び24による減衰力に上乗せされることになるので、逆相時の減衰力が増大する。そして、逆相時における第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32内の流体は、時間の経過に従い、連通路RP0及びオリフィス部材51を介して
図2の初期状態に戻るので、一時的に剛性も変化することとなる。但し、
図1の実施形態のように上記の上乗せ分の減衰力を制御することはできない。
【0033】
図3乃至
図5は、本発明の更に他の実施形態に係るサスペンション装置を示すもので、第1の連通制御装置がオリフィス部材51で構成され、第2の連通制御装置がメカニカルバルブ70で構成されている。即ち、本実施形態においては、
図1及び
図2に記載のリニアソレノイドバルブ50、開閉ソレノイドバルブ60、61、62、並びに電子制御装置ECUの何れも用いることなく、オリフィス部材51及びメカニカルバルブ70という機械的な機構のみで構成されている。尚、その他の構成は
図1の構成と同様であるので、同じ構成要素には同じ符合を付して説明は省略する。
【0034】
上記のメカニカルバルブ70は、同相用アキュムレータ40内の流体圧と第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32内の流体圧との圧力差に応じて開閉する機械的な圧力感応開閉弁機構であり、
図3に示すように、三つの弁室71、72、73内に、夫々弁体71P、72P、73P並びに圧縮コイルばね71S、72S、73S(一対)が収容され、通常時は
図3に示す中立位置に保持されて各弁室が相互に連通している。そして、
図4に示すように左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが逆相で作動した場合には、メカニカルバルブ70(弁体71P、72P、73P)に付与される流体に圧力差が生じて、メカニカルバルブ70が閉弁し、
図5に示すように同相で作動した場合には、メカニカルバルブ70に付与される流体には圧力差が生じず、従って、メカニカルバルブ70は開弁状態となる。尚、
図3乃至
図5には表れていないが、同相用アキュムレータ40の容量は逆相用アキュムレータ31及び32の容量より大に設定されており、流体の出入による圧力変化が小さくなる。
【0035】
本実施形態のサスペンション装置においては、左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが逆相で作動した場合、例えば
図4に白抜矢印で示すように後者が圧縮されて第2のピストン21が下降し、前者が伸張されて第1のピストン11が上昇した場合には、メカニカルバルブ70に付与される流体に圧力差が生じ、従って、メカニカルバルブ70が閉弁するので、圧縮側の右輪側シリンダRRから、第2のピストン21のロッド21aの移動による流体(増加分)が第2の逆相用アキュムレータ32内に供給されると共に、伸張側の左輪側シリンダRLに対し、第1のピストン11のロッド11aの移動による流体(減少分)が第1の逆相用アキュムレータ31から供給される(この間の流体の流れを
図4に矢印で示す)。この場合において、第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32は連通路RP0及びオリフィス部材51を介して相互に連通しているので、両者の圧力変化に位相差が生じ、減衰力が発生する。結果、その減衰力が、減衰力調整機構14及び24による減衰力に上乗せされることになるので、逆相時の減衰力が増大する。そして、逆相時における第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32内の流体は、時間の経過に従い、連通路RP0及びオリフィス部材51を介して
図3の初期状態に戻るので、一時的に剛性も変化することとなる。
【0036】
一方、
図5に白抜矢印で示すように左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが同相で作動した場合には、両者の減衰力調整機構14及び24によって減衰力が発生する。この場合は、メカニカルバルブ70に付与される流体に圧力差が生じず、従って、メカニカルバルブ70は開弁状態にあるので、第1及び第2のピストン11及び21の各ロッド11a及び21aの入出によって給排される流体は、連通路RP0、RP1、RP2及びSP1、並びにメカニカルバルブ70を介して、第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32、並びに同相用アキュムレータ40にて吸収されるので、反力を小さく抑えることができる。このとき、同相用アキュムレータ40並びに第1及び第2の逆相用アキュムレータ31及び32内のガス圧が略等しくなるので、流体の殆どが(容量の大きい)同相用アキュムレータ40内に供給される。尚、本実施形態においても、メカニカルバルブ70の開弁時(即ち同相時)には剛性が低くなり、閉弁時(即ち逆相時)には剛性が高くなるが、
図1及び
図2に示す実施形態のようにロール剛性制御を行うことはできない。
【0037】
以上のように、本実施形態においては、リニアソレノイドバルブ50や開閉ソレノイドバルブ60等を備えていないので、
図1に示す実施形態のように前述の上乗せ分の減衰力制御を行うことはできず、また、
図1及び
図2に示す実施形態のようにロール剛性制御を行うこともできないが、機械的な機構のみの簡単な構成で、減衰力を発生させると共に剛性を変化させることができるので、安価な装置を提供することができる。
【0038】
尚、上記の各実施形態では、車両の後車軸に左輪側シリンダRL及び右輪側シリンダRRが搭載されているが、制御対象とする左輪側シリンダ及び右輪側シリンダが車両の前車軸に搭載されたものでも同様に構成することができ、また、何れの懸架方式に限定されるものでもない。
【符号の説明】
【0039】
RR 右輪側シリンダ
RL 左輪側シリンダ
14、24 減衰力調整機構
31 第1の逆相用アキュムレータ
32 第2の逆相用アキュムレータ
40 同相用アキュムレータ
41 第1の同相用アキュムレータ
42 第2の同相用アキュムレータ
50 リニアソレノイドバルブ(第1の連通制御装置)
51 オリフィス部材(第1の連通制御装置)
60 開閉ソレノイドバルブ(第2の連通制御装置)
61 第1の開閉ソレノイドバルブ(第2の連通制御装置)
62 第2の開閉ソレノイドバルブ(第2の連通制御装置)
70 メカニカルバルブ(圧力感応開閉弁機構、第2の連通制御装置)
RP0、RP1、RP2、SP0、SP1、SP2 連通路