(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記燃焼触媒回復部は、前記改質用原料供給部によって前記改質用原料を前記改質部に供給して、前記燃焼触媒において前記アノードオフガスに含まれる前記可燃成分を燃焼させることにより、前記燃焼触媒を昇温させる昇温処理を実行して、前記急激な温度変化を前記燃焼触媒に与える請求項1に記載の燃料電池システム。
前記燃焼触媒回復部は、前記燃焼部において前記アノードオフガスが着火しない条件を満たす場合に、前記改質用原料供給部によって前記改質用原料を前記改質部に供給して、前記燃焼触媒において前記アノードオフガスを燃焼させて、前記燃焼触媒を昇温させる前記昇温処理を実行する請求項2に記載の燃料電池システム。
前記燃焼触媒回復部は、前記燃料電池における前記発電が停止している運転待機中に、前記急激な温度変化を前記燃焼触媒に与える請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(燃料電池システムの構成)
以下、本発明による燃料電池システム100の一実施形態について説明する。
図1に示すように、燃料電池システム100は、発電ユニット10及び貯湯槽21を備えている。発電ユニット10は、筐体10a、燃料電池モジュール11、熱交換器12、インバータ装置13、水タンク14、及び制御装置15を備えている。
【0011】
燃料電池モジュール11は、ケーシング31、蒸発部32、改質部33、及び燃料電池34を備えている。ケーシング31は、断熱性材料で箱状に形成されている。本実施形態では、断熱性材料は、シリカ及びアルミナを主成分とするセラミックファイバーで構成されている。蒸発部32は、後述する燃焼部36によって燃焼された燃焼排ガスにより加熱されて、供給された改質水を蒸発させて水蒸気を生成するとともに、供給された改質用原料を予熱するものである。蒸発部32は、このように生成された水蒸気と予熱された改質用原料とを混合して改質部33に供給する。
【0012】
蒸発部32には、改質用原料供給管11aの一端が接続されている。改質用原料供給管11aの他端には、供給源Gsが接続されている。供給源Gsは、改質用原料を供給するものである。改質用原料としてはLPG(液化石油ガス)、メタンガスを主成分とする天然ガスなどの改質用気体燃料、灯油、ガソリン、メタノールなどの改質用液体燃料がある。改質用原料としてLPGを用いた実施形態について、本実施形態の燃料電池システム100を説明する。
【0013】
改質用原料供給管11aには、上流から順番に原料流量センサ11a1、原料ポンプ11a2が設けられている。原料流量センサ11a1は、蒸発部32に供給されている改質用原料の流量、すなわち単位時間あたりの流量を検出するものであり、その検出結果(検出信号)を制御装置15に送信している。原料ポンプ11a2(改質用原料供給部に該当)は、改質用原料を蒸発部32に供給することにより、改質用原料を改質部33に供給する装置であり、制御装置15からの制御指令値によって供給源Gsからの改質用原料供給量(供給流量(単位時間あたりの流量))を調整するものである。
【0014】
蒸発部32には、水供給管11bの一端が接続されている。水供給管11bの他端には、水タンク14に接続されている。水供給管11bは、改質水ポンプ11b1が設けられている。このような構成によって、水タンク14から改質水が蒸発部32に供給される。
【0015】
燃料電池34には、カソードエア供給管11cの一端が接続されている。カソードエア供給管11cの他端には、カソードエアブロワ11c1が接続されている。カソードエアブロワ11c1(酸化剤ガス供給部に該当)は、カソードエア(酸化剤ガス)を燃料電池34に供給するものである。カソードエア供給管11cのカソードエアブロワ11c1の下流側には、燃料電池34に供給されるカソードエアの流量を検出するカソードエア流量センサ11c2が設けられている。
【0016】
改質部33は、後述する燃焼部36によって燃焼された燃焼排ガスにより加熱されて水蒸気改質反応に必要な熱が供給されることで、蒸発部32から供給された混合ガス(改質用原料、水蒸気)から改質ガスを生成して導出するものである。改質部33内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素などを含んだガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。改質ガスは、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の天然ガス(メタンガス)、改質に使用されなかった改質水(水蒸気)を含んでいる。このように、改質部33は、改質用原料と改質水とから改質ガス(燃料)を生成して燃料電池34に供給する。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応である。
【0017】
改質部33には、改質部33の温度(触媒の温度)を検出する改質部温度センサ33a(改質部温度検出部に該当)が設けられている。改質部温度センサ33aの検出結果(検出信号)は制御装置15に送信される。
【0018】
燃料電池34は、改質部33によって生成された改質ガスとカソードエアブロワ11c1によって供給されたカソードエア(酸化剤ガス)とによって発電するものである。燃料電池34は、燃料極、空気極(酸化剤極)、及び両極の間に介装された電解質からなる複数のセル34aが積層されて構成されている。本実施形態の燃料電池34は、固体酸化物形燃料電池であり、電解質として固体酸化物の一種である酸化ジルコニウムを使用している。燃料電池34の燃料極には、燃料として水素、一酸化炭素、メタンガスなどが供給される。なお、燃料電池34の動作温度は400〜1000℃程度である。水素だけではなく天然ガスや石炭ガスなども直接燃料として用いることが可能である。
【0019】
セル34aの燃料極側には、燃料である改質ガスが流通する燃料流路34bが形成されている。セル34aの空気極側には、酸化剤ガスである空気(カソードエア)が流通する空気流路34cが形成されている。
【0020】
燃料電池34は、マニホールド35上に設けられている。マニホールド35には、改質部33からの改質ガスが改質ガス供給管38を介して供給される。燃料流路34bは、その下端(一端)がマニホールド35の燃料導出口に接続されており、その燃料導出口から導出される改質ガスが下端から導入され上端から導出されるようになっている。カソードエアブロワ11c1によって送出されたカソードエアはカソードエア供給管11cを介して供給され、空気流路34cの下端から導入され上端から導出されるようになっている。燃料電池34には、燃料電池34の温度を検出し、その検出結果(検出信号)を制御装置15に出力する燃料電池温度検出センサ34dが設けられている。燃料電池温度検出センサ34dは、燃料電池34の積層方向の中央部に設けられるのが好適である。
【0021】
燃焼部36は、燃料電池34と蒸発部32及び改質部33との間に設けられている。燃焼部36は、燃料電池34から排気される可燃成分を含むアノードオフガス(燃料オフガス)を、燃料電池34から排気されるカソードオフガス(酸化剤オフガス)で燃焼させて、燃焼後に発生する燃焼排ガスによって蒸発部32及び改質部33を加熱する。
【0022】
燃焼部36では、アノードオフガスが燃焼されて火炎37が発生している。燃焼部36には、アノードオフガスを着火させるための一対の着火ヒータ36a1,36a2が設けられている。
【0023】
熱交換器12は、燃料電池モジュール11から排気される燃焼排ガスが供給されるとともに貯湯槽21からの貯湯水が供給され、燃焼排ガスと貯湯水とを熱交換させる装置である。貯湯槽21は、貯湯水を貯湯するものであり、貯湯水が循環する(
図1にて矢印の方向に循環する)貯湯水循環ライン22が接続されている。貯湯水循環ライン22上には、貯湯槽21の下端から上端に向かって順番に循環ポンプ22a及び熱交換器12が配設されている。熱交換器12は、水タンク14に接続されている凝縮水供給管12aが接続されている。
【0024】
熱交換器12において、燃料電池モジュール11からの燃焼排ガスは、燃焼排ガス導入部12bを通って熱交換器12内に導入され、貯湯水との間で熱交換が行われて冷却され、燃焼排ガスに含まれる水蒸気が凝縮され凝縮水が生成される。熱交換後の燃焼排ガスは排気管12cを通り、筐体10aに設けられた排気口10bを通って、筐体10aの外部に排出される。また、凝縮された凝縮水は、凝縮水供給管12aを通って水タンク14に供給される。なお、水タンク14は、凝縮水をイオン交換樹脂によって純水化するようになっている。
【0025】
上述した熱交換器12、貯湯槽21及び貯湯水循環ライン22から、排熱回収システム20が構成されている。排熱回収システム20は、燃料電池モジュール11の排熱を貯湯水に回収して蓄える。
【0026】
熱交換器12の燃焼排ガス導入部12bの入口がケーシング31に接続されている部分、すなわちケーシング31の導出口31aには、燃焼触媒28が設けられている。燃焼触媒28には、燃焼部36から排気される燃焼排ガスが導入される。燃焼触媒28は、燃焼排ガスに含まれる燃焼部36において未燃焼の可燃成分(例えば、水素、メタンガス、一酸化炭素など)を触媒反応によって燃焼させる。燃焼触媒28には、プラチナやパラジウムなどの貴金属をセラミックの単体などに担持させたものが含まれる。なお、燃焼触媒28は、水素、メタンガス、一酸化炭素などの可燃成分を火炎燃焼でなく触媒反応によって燃焼させるため、この可燃成分の燃焼速度が速く、この可燃成分の燃焼効率も高いため未燃焼排ガスの排出を抑制することができる。
【0027】
燃焼触媒28には、燃焼触媒ヒータ28aが設けられている。燃焼触媒ヒータ28aは、制御装置15の指示によって加熱される電気式のヒータであり、燃焼触媒28を加熱して、燃焼触媒28を触媒の活性温度まで上昇させるために使用されるものである。また、燃焼触媒28の直下流位置には、燃焼触媒28の出口から排気されるガスの温度(以下、適宜、燃焼触媒出口ガス温度と略す)を検出するための出口ガス温度センサ28bが設けられている。出口ガス温度センサ28bの検出結果(検出信号)は制御装置15に送信される。
【0028】
インバータ装置13は、燃料電池34によって発電された電流を掃引する。この電流を以下に、掃引電流と呼ぶ。そして、インバータ装置13は、掃引した直流電流である掃引電流を交流電流に変換し、当該交流電を交流の系統電源16a及び外部電力負荷16c(例えば電化製品)に接続されている電源ライン16bに出力する。インバータ装置13は、掃引電流の電流値を検出することができ、掃引電流量を増減させることができる。インバータ装置13には、系統電源16aからの交流電流が電源ライン16bを介して入力される。そして、インバータ装置13は、入力された交流電流を所定の直流電流に変換して補機(各ポンプ、ブロワ、ヒータなど)や制御装置15に出力する。
【0029】
制御装置15は、燃料電池システム100を統括制御するものである。制御装置15は、補機を駆動して燃料電池システム100の運転を制御する。制御装置15は、原料流量センサ11a1によって検出された改質用原料の蒸発部32への流量に基づいて、原料ポンプ11a2が蒸発部32に供給する改質用原料の流量をフィードバック制御する。また、制御装置15は、カソードエア流量センサ11c2によって検出されたカソードエアの燃料電池34への流量に基づいて、カソードエアブロワ11c1が燃料電池34に供給するカソードエアの流量をフィードバック制御する。
【0030】
制御装置15は、原料ポンプ11a2によって蒸発部32に供給される改質用原料の流量を調整する。そして、制御装置15は、改質水ポンプ11b1によって蒸発部32に供給される改質水の流量を調整する。更に、制御装置15は、カソードエアブロワ11c1によって燃料電池34に供給されるカソードエアの流量を調整する。このようにして、制御装置15は、燃料電池34で発電される発電電力を調整するとともに、燃焼部36で発生した熱量を調整して、蒸発部32及び改質部に供給される熱量を調整する。
【0031】
(燃焼触媒回復処理の概要)
以下に、
図2に示すタイムチャートを用いて、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜を損傷させて、燃焼触媒28の触媒反応を回復させる「燃焼触媒回復処理」について説明する。「燃焼触媒回復処理」は、
図2に示すように、燃焼触媒28の表面を急激に昇温させるとともに(t1〜t2、t3〜t4、t5〜t6、t7〜t8,t9〜t10)、燃焼触媒28の表面を急激に降温させて(t2〜t3、t4〜t5、t6〜t7、t8〜t9、t10〜t11)、燃焼触媒28に急激な温度変化を繰り返し与えることにより、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜に損傷を与える処理である。この「燃焼触媒回復処理」が実行されると、燃焼触媒28を被覆しているシリカ被膜に亀裂が入り、又はこのシリカ被膜が燃焼触媒28の表面から剥がれ落ちる。すると、燃焼触媒28の表面が燃焼排ガスと接触できるようになり、燃焼触媒28の触媒反応が回復する。なお、燃焼触媒28の表面の昇温は一時的であるために、燃焼触媒28の昇温に伴う燃焼触媒28の劣化は無視できるほど小さい。以下、
図3に示すフローチャートを用いて、第一実施形態の「燃焼触媒回復処理」について詳細に説明する。
【0032】
(第一実施形態の燃焼触媒回復処理)
燃料電池システム100に電源が投入されると、
図3に示すように、プログラムはステップS11に進む。
ステップS11において、制御装置15は、燃料電池システム100の運転時間が、前回「燃焼触媒回復処理」(ステップS21以降の処理)を実行してから規定時間(例えば、1万時間)を越えたと判断した場合には(ステップS11:YES)、プログラムをステップS12に進める。一方で、制御装置15は、燃料電池システム100の運転時間が、前回「燃焼触媒回復処理」を実行してから規定時間を越えていないと判断した場合には(ステップS11:NO)、ステップS11の処理を繰り返す。
【0033】
ステップS12において、制御装置15は、燃料電池システム100が運転待機中であると判断した場合には(ステップS12:YES)、プログラムをステップS13に進める。一方で、制御装置15は、燃料電池システム100が運転待機中でないと判断した場合には(ステップS12:NO)、ステップS12の処理を繰り返す。なお、運転待機中とは、燃料電池34における発電の準備中である起動運転の前の状態であり、燃料電池34における発電が停止している待機状態である。このように、燃料電池システム100が運転待機中である場合に限り、制御装置15は、ステップS13以降の処理を実行する。一方で、燃料電池システム100が、上述した起動運転中や、燃料電池34が発電している発電運転中、燃料電池34の発電を停止している運転停止中である場合には、制御装置15は、ステップS13以降の処理を実行しない。
【0034】
ステップS13において、制御装置15は、燃料電池温度検出センサ34dからの検出結果に基づいて、燃料電池34の温度が着火温度(例えば、300℃)より低く、且つ改質部温度センサ33aからの検出結果に基づいて、改質部33の温度がコーキング発生温度(例えば100℃)より低いと判断した場合には(ステップS13:YES)、プログラムをステップS21に進める。一方で、制御装置15は、燃料電池34の温度が着火温度以上であり、又は改質部33の温度がコーキング発生温度以上であると判断した場合には(ステップS13:NO)、ステップS13の処理を繰り返す。なお、燃料電池34の温度が着火温度よりも低い場合には、燃料流路34bを通過したアノードオフガス(改質用原料)が燃焼部36で自然に着火しない。また、改質部33の温度がコーキング発生温度よりも低い場合には、改質部33に改質用原料が供給されたとしても、改質部33において改質用原料によるコーキングの発生が抑制される。
【0035】
ステップS21において、制御装置15は、カソードエアブロワ11c1を駆動させて、カソードエアの燃料電池34への供給を開始する。このステップS21の処理によって、燃焼触媒28へのカソードエアの供給が開始される。
【0036】
ステップS22において、制御装置15は、燃焼触媒ヒータ28aをONする。このステップS22の処理によって、燃焼触媒28は、触媒の活性温度に向かって昇温する。
【0037】
ステップS23において、制御装置15は、出口ガス温度センサ28bの検出結果に基づいて、燃焼触媒出口ガス温度が触媒活性温度(例えば200℃)以上であると判断した場合には(ステップS23:YES)、プログラムをステップS24に進める。一方で、制御装置15は、燃焼触媒出口ガス温度が触媒活性温度よりも低いと判断した場合には(ステップS23:NO)、ステップS23の処理を繰り返す。なお、燃焼触媒出口ガス温度が触媒活性温度以上である場合には、燃焼触媒28の表面が触媒の活性温度以上となっていて、燃焼触媒28において可燃成分が燃焼可能となっている。
【0038】
ステップS24において、制御装置15は、原料ポンプ11a2を駆動させて、改質用原料の改質部33への供給を開始させることにより、燃焼触媒28の表面を昇温させる昇温処理を開始させる。このステップS24の処理において、改質部33に供給された改質用原料は、改質部33において改質されず、燃料電池34において発電に使用されず、燃焼部36において燃焼されない。このため、可燃成分が多量に含まれるアノードオフガスが燃焼触媒28に供給され、このアノードオフガスが燃焼触媒28において触媒反応によって燃焼されて、燃焼触媒28において多量の燃焼熱が発生する。原料ポンプ11a2は、燃焼触媒28の表面温度が第一温度勾配α以上で昇温するように、改質用原料を供給する。なお、第一温度勾配αとは、単位時間Δtあたりの温度変化Δαを、前記単位時間Δtで除した値(α=Δα/Δt(
図2示))であり、例えば10℃/sである。燃焼触媒28の表面温度が第一温度勾配α以上のような急激な温度変化で昇温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0039】
ステップS31において、制御装置15は、出口ガス温度センサ28bの検出結果に基づいて、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度(例えば400℃)以上であると判断した場合には(ステップS31:YES)、プログラムをステップS32に進める。一方で、制御装置15は、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度より低いと判断した場合には(ステップS31:NO)、ステップS31の処理を繰り返す。なお、燃焼触媒出口ガス温度と燃焼触媒28の表面温度との間には相関関係が有る。このため、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度に達した場合には、燃焼触媒28の表面温度は、
図2に示す第二温度T2(例えば800℃)以上に昇温している。このように、燃焼触媒28の表面温度が、第二温度T2以上に昇温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0040】
ステップS32において、制御装置15は、原料ポンプ11a2を停止させて、改質用原料の改質部33への供給を停止させる。このステップS32の処理によって、可燃成分が多量に含まれるアノードオフガスの燃焼触媒28への供給が停止され、燃焼触媒28における燃焼熱の発生が停止される。
【0041】
ステップS33において、制御装置15は、燃焼触媒ヒータ28aをOFFすることにより、燃焼触媒28の表面を降温させる降温処理を開始させる。このステップS33の処理によって、燃焼触媒ヒータ28aによる燃焼触媒28への熱の供給が停止されて、カソードエアブロワ11c1によってカソードエアが燃焼触媒28に供給されて、燃焼触媒28の表面は冷却されて降温する。カソードエアブロワ11c1は、燃焼触媒28の表面温度が第二温度勾配β未満で降温するように、カソードエアを供給する。なお、第二温度勾配βとは、単位時間Δtあたりの温度変化Δβを、前記単位時間Δtで除した値(β=Δβ/Δt(
図2示))であり、例えば−10℃/sである。燃焼触媒28の表面温度が第二温度勾配β未満のような急激な温度変化で降温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。なお、温度変化Δβを絶対値でとった場合には、カソードエアブロワ11c1は、燃焼触媒28の表面温度が第二温度勾配β以上で降温するように、カソードエアを供給する。
【0042】
ステップS41において、制御装置15は、出口ガス温度センサ28bの検出結果に基づいて、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度(例えば250℃)以下であると判断した場合には(ステップS41:YES)、プログラムをステップS42に進める。一方で、制御装置15は、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度よりも高いと判断した場合には(ステップS41:NO)、ステップS41の処理を繰り返す。なお、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度に達した場合には、燃焼触媒28の表面温度は、
図2に示す第一温度T1(例えば250℃)以下に降温している。燃焼触媒28の表面温度が、第一温度T1以下に降温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0043】
ステップS42において、制御装置15は、カウンタを1加算する。
ステップS43において、制御装置15は、カウンタが規定回数(例えば5回)を越えたと判断した場合には(ステップS43:YES)、プログラムをステップS44に進める。一方で、制御装置15は、カウンタが規定回数を越えていないと判断した場合には(ステップS43:NO)、プログラムをステップS22に戻す。このように、カウンタが規定回数を超えるまで、ステップS22〜ステップS41の処理が規定回数繰り返される。これにより、燃焼触媒28の表面が急激な昇温と降温を繰り返し、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が十分に損傷する。この結果、このシリカ被膜に亀裂が入り、又はこのシリカ被膜が燃焼触媒28の表面から剥がれ落ちる。
【0044】
ステップS44において、制御装置15は、カソードエアブロワ11c1によるカソードエアの供給を停止させる。
【0045】
(本実施形態の効果)
以上の説明から明らかなように、制御装置15(燃焼触媒回復部)は、
図2に示すように、急激な温度変化を燃焼触媒28に与えることにより、燃焼触媒28を被覆して触媒反応を阻害するシリカ被膜を損傷させる。これによれば、燃焼触媒28を被覆しているシリカ被膜が損傷して、このシリカ被膜に亀裂が入り、又はこのシリカ被膜が燃焼触媒28から剥がれ落ちる。このため、燃焼触媒28の表面が燃焼排ガスと接触できるようになり、燃焼触媒28の触媒反応が回復する。
【0046】
制御装置15(燃焼触媒回復部)は、原料ポンプ11a2(改質用原料供給部)によって改質用原料を改質部33に供給して(
図3のステップS24)、燃焼触媒28においてアノードオフガスに含まれる可燃成分を燃焼させることにより、燃焼触媒28を昇温させる。これによれば、可燃成分の燃焼速度が速く、可燃成分の燃焼効率も高い触媒反応によって可燃成分が燃焼されるので、燃焼触媒28の表面は急激な温度勾配で昇温し、燃焼触媒28を被覆して触媒反応を阻害するシリカ被膜は確実に損傷する。
【0047】
制御装置15(燃焼触媒回復部)は、カソードエアブロワ11c1(酸化剤ガス供給部)によってカソードエア(酸化剤ガス)を燃焼触媒28に供給することにより、燃焼触媒28を降温させる。これによれば、燃焼触媒28の昇温時だけでなく、燃焼触媒28の降温時においても、急激な温度変化を燃焼触媒28に与えることができ、燃焼触媒28を被覆しているシリカ被膜は、より確実に損傷する。また、燃焼触媒28を被覆しているシリカ被膜は、より短時間で損傷する。
【0048】
制御装置15(燃焼触媒回復部)は、燃焼部36においてアノードオフガスが着火しない条件を満たす場合、つまり、燃料電池34の温度が着火温度より低い場合に(
図3のステップS13でYESと判断)、原料ポンプ11a2(改質用原料供給部)によって改質用原料を改質部33に供給して、燃焼触媒28においてアノードオフガスを燃焼させて、燃焼触媒28の表面を昇温させる昇温処理を実行する。これによれば、燃焼部36においてアノードオフガスが燃焼されずに、可燃成分が多量に含まれるアノードオフガスが燃焼触媒28に供給される。そして、燃焼部36においてアノードオフガスを燃焼させた場合と比較して、多量の可燃成分が含まれるアノードオフガスが燃焼触媒28において触媒反応によって燃焼される。その結果、燃焼触媒28において多量の燃焼熱が発生し、燃焼触媒28の表面が急激な温度勾配で昇温される。このため、燃焼触媒28を被覆して触媒反応を阻害するシリカ被膜はより確実に損傷し、より確実に燃焼触媒28の触媒反応は回復する。
【0049】
制御装置15(燃焼触媒回復部)は、改質部33の温度が、改質用原料による改質部33へのコーキングが発生しない温度である場合に(
図3のステップS13でYESと判断)、原料ポンプ11a2(改質用原料供給部)によって改質用原料を改質部33に供給して、燃焼触媒28においてアノードオフガスを燃焼させて、燃焼触媒28を昇温させる昇温処理を実行する。これによれば、改質部33への改質用原料の供給に伴う、改質部の33コーキングの発生が抑制される。
【0050】
制御装置15(燃焼触媒回復部)は、燃料電池34における発電が停止している運転待機中に(
図3のステップS12でYESと判断)、急激な温度変化を燃焼触媒28に与える「燃焼触媒回復処理」(ステップS21以降の処理)を実行する。これによれば、燃料電池34の起動運転中に「燃焼触媒回復処理」が実行される場合と比較して、燃料電池34の起動が遅くならない。また、燃焼触媒28の温度が燃料電池34の発電中と比較して低下している運転待機中に、燃焼触媒28が昇温されるので、燃焼触媒28の温度上昇勾配が急となり、燃焼触媒28を被覆して触媒反応を阻害するシリカ被膜はより確実に損傷する。
【0051】
(第二実施形態の燃焼触媒回復処理)
以下に、第二実施形態の「燃焼触媒回復処理」について、第一実施形態の「燃焼触媒回復処理」と異なる点について説明する。第二実施形態の「燃焼触媒回復処理」では、燃焼触媒28においてアノードオフガスに含まれる可燃成分を燃焼させて燃焼触媒28を昇温させる代わりに、燃焼触媒ヒータ28aで直接燃焼触媒28を昇温させる。
以下、
図4に示すフローチャートを用いて、第二実施形態の「燃焼触媒回復処理」について詳細に説明する。
【0052】
燃料電池システム100に電源が投入されると、
図4に示すように、プログラムはステップS111に進む。ステップS111、ステップS112の処理は、それぞれ、第一実施形態の
図3に示すステップS11、ステップS12の処理と同様の処理である。
【0053】
制御装置15は、ステップS112でYESと判断すると、ステップS122において、燃焼触媒ヒータ28aをONすることにより、燃焼触媒28の表面を昇温させる昇温処理を開始させる。燃焼触媒ヒータ28aは、燃焼触媒28の表面温度が上述の第一温度勾配α以上で昇温するように、燃焼触媒28を加熱する。燃焼触媒28の表面温度が第一温度勾配α以上のような急激な温度変化で昇温すると、燃焼触媒28を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。このステップS122の処理によって、燃焼触媒28は、第一温度T1以下の温度から第二温度T2(
図2示)に向かって昇温する。
【0054】
ステップS123において、制御装置15は、出口ガス温度センサ28bの検出結果に基づいて、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度(例えば400℃)以上であると判断した場合には(ステップS123:YES)、プログラムをステップS133に進める。一方で、制御装置15は、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度より低いと判断した場合には(ステップS123:NO)、ステップS123の処理を繰り返す。なお、燃焼触媒出口ガス温度が規定昇温温度に達した場合には、燃焼触媒28の表面温度は、
図2に示す第二温度T2(例えば800℃)以上に昇温している。燃焼触媒28の表面温度が、第二温度T2以上に昇温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0055】
ステップS133において、制御装置15は、燃焼触媒ヒータ28aをOFFする。このステップS133の処理によって、燃焼触媒ヒータ28aによる燃焼触媒28への熱の供給が停止される。
【0056】
ステップS134において、制御装置15は、カソードエアブロワ11c1を駆動させて、カソードエアの燃料電池34への供給を開始することにより、燃焼触媒28の表面を降温させる降温処理を開始させる。このステップS134の処理によって、カソードエアが燃焼触媒28に供給されて、燃焼触媒28の表面は冷却されて降温する。カソードエアブロワ11c1は、燃焼触媒28の表面温度が上述の第二温度勾配β未満で降温するように、カソードエアを供給する。燃焼触媒28の表面温度が第二温度勾配β未満のような急激な温度変化で降温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0057】
ステップS141において、制御装置15は、出口ガス温度センサ28bの検出結果に基づいて、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度(例えば250℃)以下であると判断した場合には(ステップS141:YES)、プログラムをステップS142に進める。一方で、制御装置15は、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度よりも高いと判断した場合には(ステップS141:NO)、ステップS141の処理を繰り返す。なお、燃焼触媒出口ガス温度が規定降温温度に達した場合には、燃焼触媒28の表面温度は、
図2に示す第一温度T1(例えば250℃)以下に降温する。燃焼触媒28の表面温度が、第一温度T1以下に降温すると、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が確実に損傷する。
【0058】
ステップS142、ステップS143、ステップS144の処理は、それぞれ、第一実施形態の
図3に示すステップS42、ステップS43、ステップS44の処理と同様の処理である。但し、ステップS143において、カウンタが規定回数を超えた場合には、プログラムはステップS111に戻り、カウンタが規定回数を越えていない場合には、プログラムは、ステップS144に進む。このような、ステップS142〜ステップS144の処理によって、ステップS122〜ステップS141の処理が規定回数繰り返される。これにより、燃焼触媒28の表面が急激な昇温と降温を繰り返し、燃焼触媒28の表面を被覆しているシリカ被膜が十分に損傷する。この結果、このシリカ被膜に亀裂が入り、又はこのシリカ被膜が燃焼触媒28の表面から剥がれ落ちる。
【0059】
以上の説明から明らかなように、制御装置15(燃焼触媒回復部)は、燃焼触媒ヒータ28aによって燃焼触媒28を加熱することにより、燃焼触媒28を昇温させる。これによれば、燃焼触媒28は確実に昇温し、燃焼触媒28を被覆して触媒反応を阻害するシリカ被膜は確実に損傷する。また、電気式の燃焼触媒ヒータ28aによって、燃焼触媒28を昇温させているので、燃焼触媒28を昇温させるために改質用原料が消費されない。また、電気料金が安い時間帯の電力、例えば、深夜電力を燃焼触媒ヒータ28aに用いれば、低コストで燃焼触媒28の触媒反応を回復させることができる。
【0060】
(別の実施形態)
以上説明した第一実施形態の「燃焼触媒回復処理」では、燃焼部36においてアノードオフガスが着火しない条件を満たす場合に(
図3のステップS13においてYES判断)、原料ポンプ11a2によって改質用原料を改質部33に供給して、燃焼部36においてアノードオフガスを着火させずに、燃焼触媒28においてアノードオフガスに含まれる可燃成分を燃焼させて、燃焼触媒28を昇温させている。しかし、燃焼部36においてアノードオフガスを燃焼させて、燃焼触媒28において燃焼排ガス中に含まれる可燃成分を燃焼させて、燃焼触媒28を昇温させる実施形態であっても差し支え無い。
【0061】
以上説明した実施形態では、燃焼触媒28の昇温と降温を規定回数繰り返して、燃焼触媒28の表面を被覆するシリカ被膜を損傷させている。しかし、燃焼触媒28の昇温と降温を1回だけ行うことにより、燃焼触媒28の表面を被覆するシリカ被膜を損傷させる実施形態であっても差し支え無い。また、燃焼触媒28の表面温度が第一温度T1以下である状態において、燃焼触媒28の表面温度を第二温度T2以上に第一温度勾配α以上の温度勾配で1回だけ昇温させて、燃焼触媒28の表面を被覆するシリカ被膜を損傷させる実施形態であっても差し支え無い。また、燃焼触媒28の表面温度が第二温度T2以上である状態において、燃焼触媒28の表面温度を第一温度T1以下に第二温度勾配β未満の温度勾配で1回だけ降温させて、燃焼触媒28の表面を被覆するシリカ被膜を損傷させる実施形態であっても差し支え無い。
【0062】
改質用原料としてメタンガスを用いた実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、
図3のステップS13における着火温度は例えば400℃であり、ステップS23における触媒活性温度は例えば400℃であり、ステップS31における規定昇温温度は例えば500℃であり、ステップS41における規定降温温度は例えば450℃である。
【0063】
以上説明した実施形態では、
図3のステップS11や
図4のステップS111において、燃料電池システム100の運転時間が、前回「燃焼触媒回復処理」(ステップS21やステップS122以降の処理)を実行してから規定時間を越えた場合に、プログラムがステップS12やステップS112に進み、「燃焼触媒回復処理」が実行される。しかし、燃焼触媒28の触媒反応の低下が検出された場合に、「燃焼触媒回復処理」が実行される実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、例えば、燃焼触媒28の出口から排気されるガス中に含まれる一酸化炭素濃度を検出する一酸化炭素濃度センサ(図示せず)によって、上記ガス中に含まれる一酸化炭素が既定値以上となった場合に、燃焼触媒28の触媒反応の低下が検出される。
【0064】
以上説明した実施形態では、「燃焼触媒回復処理」は、燃料電池システム100の運転待機中に実行される。しかし、「燃焼触媒回復処理」が、燃料電池システム100の起動運転中や運転停止中に実行される実施形態であっても差し支え無い。
【0065】
以上説明した実施形態では、昇温処理や降温処理において、燃焼触媒28の表面を昇温又は降温させている。しかし、昇温処理や降温処理において、燃焼触媒28の内部を昇温又は降温させることにより、燃焼触媒28の表面を昇温又は降温させる実施形態であっても差し支え無い。
【0066】
出口ガス温度センサ28bの代わりに、燃焼触媒28の温度を直接検出する燃焼触媒温度センサ(図示せず)を設けても差し支え無い。この実施形態では、
図3のステップS23において、制御装置15は、燃焼触媒温度センサからの検出結果に基づいて、燃焼触媒28の表面温度が触媒の活性温度以上であるか否かを判断する。また、
図3のステップS31や
図4のステップS123において、制御装置15は、燃焼触媒温度センサからの検出結果に基づいて、燃焼触媒28の表面温度が
図2に示す第二温度T2以上に昇温しているか否かを判断する。また、
図3のステップS41や
図4のステップS141において、制御装置15は、燃焼触媒温度センサからの検出結果に基づいて、燃焼触媒28の表面温度が
図2に示す第一温度T1以下に降温しているか否かを判断する。
【0067】
以上の説明では、燃焼触媒28の表面を被覆するシリカ被膜を損傷させる実施形態について本発明を説明した。しかし、燃焼触媒28の表面を被覆して触媒反応を阻害する被膜であって、急激な温度変化の付与によって損傷する被膜であれば、本発明の技術的思想は適用可能である。