(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
砲腔を有する砲身に装填される弾丸の先端部における前記砲身の中心軸から離れた位置に取り付けられて前記砲身の中心軸に平行な方向にレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記砲身の中心軸上に配置されて前記レーザ光源からのレーザ光を受光して映し出すスクリーン手段と、
前記スクリーン手段に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点位置を、時間に対応させて連続して撮像する撮像手段とから構成される螺旋状の腔線が内壁に形成された砲腔内の弾丸の速度測定装置であって、
前記撮像手段にて撮像したレーザ光の前記輝点位置と、当該輝点位置に対応する時間と、前記腔線の螺旋のピッチと、に基づいて、砲腔内における弾丸の速度を算出する速度算出手段を有する、
砲腔内の弾丸の速度測定装置。
砲腔を有する砲身に装填される弾丸の先端部における前記砲身の中心軸から離れた位置に取り付けられて前記砲身の中心軸に平行な方向にレーザ光を出射するレーザ光源と、
前記砲身の中心軸上に配置されて前記レーザ光源からのレーザ光を反射する反射手段と、
前記反射手段にて反射されたレーザ光を受光して映し出すスクリーン手段と、
前記スクリーン手段に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点位置を、時間に対応させて連続して撮像する撮像手段とから構成される螺旋状の腔線が内壁に形成された砲腔内の弾丸の速度測定装置であって、
前記撮像手段にて撮像したレーザ光の前記輝点位置と、当該輝点位置に対応する時間と、前記腔線の螺旋のピッチと、に基づいて、砲腔内における弾丸の速度を算出する速度算出手段を有する、
砲腔内の弾丸の速度測定装置。
【背景技術】
【0002】
内壁に螺旋状の腔線が形成された砲腔を有する砲身から発射される弾丸(飛翔体)は、腔線に沿って旋回運動しながら砲身から発射されることで、弾丸の飛翔姿勢が安定し、ターゲットへの命中精度が向上される。砲身の内壁における薬室の先端から砲口に至るまでには、前記腔線が形成され、薬室の先端における前記腔線は起端部と呼ばれ、前記腔線が徐々に形成されるようにテーパー状の形状となっている。また弾丸(いわゆる旋転弾)には、側面の一部に、弾帯とよばれる軟金属製の帯状部材が周方向に巻回されるように設けられ、当該弾帯の個所が弾丸の最も大きな外径となる個所となっている。弾丸は起端部と弾帯が接触するように装填され、発射装薬内の発射薬からの燃焼ガスによって加圧されて弾丸の弾帯は腔線によって切り込みが開始される。そして弾帯の切り込みが完了すると、弾丸は、弾帯の切り込み溝によって腔線に案内されて旋回及び加速しながら砲腔内を移動し、砲口から発射される。
【0003】
なお、砲腔内における弾丸は、砲口に向かって徐々に速度を増加させていくが、ここで、弾帯の切り込み時において発射薬からの燃焼ガスの圧力が低いと、弾帯の切り込み中における弾丸の速度が徐々に低下し不均一となって射撃毎に弾丸の射出速度が変動し、命中精度が低下する。また発射薬の燃焼ガスの圧力が過度に低いと、弾丸が砲腔内で一時的に停止するスティッキング現象(停弾現象)が発生し、弾丸の射出速度が大きく変動することが知られている。そのため、弾丸のスティッキング現象が発生しているか否かを測定する要求が高まっている。
【0004】
そこで特許文献1では、飛翔体(弾丸)の先端に、砲身から突出する長尺状の被測定体を固定し、当該被測定体に赤外線等の光を照射し、その反射光を検出して、砲身内を移動中の弾丸の速度を測定する、移動体の位置測定装置が開示されている。砲身内を移動中の弾丸の速度を測定することができれば、スティッキング現象が発生しているか否かが判る。また、砲身内を移動中の弾丸の速度を測定する他の方法として、弾丸の射出方向からレーダー波を照射してドップラー効果を利用した、ドップラーレーダーを用いる方法や、歪ゲージを砲身に複数取り付けて、弾丸の移動による歪を検出する方法や、弾丸内に加速度センサーと記録装置を搭載して、記録した加速度から速度を求める方法等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、砲身内に装填された弾丸の先端に、砲身から突出する非常に長尺の被測定体を固定する必要がある。この長尺の被測定体は、砲身内における弾丸の高速移動によって変形する場合があり測定精度が低くなる可能性があるので、あまり好ましくない。また変形を防止するために被測定体の剛性を高くすると被測定体の質量が増加し、実際の弾丸の速度を正しく測定することができなくなる可能性があるので、剛性の向上も困難である。更に、弾丸の先端から出射方向に向けて長尺の被測定体が固定されているので、砲身から射出された弾丸の射出方向が不安定となる可能性があるので、実施場所が制限されてしまう。
【0007】
また、ドップラーレーダーを用いる方法では、最も測定したい弾丸の一時的な停止状態では、最もドップラー効果が発生しない低速状態あるいは停止状態であり測定精度が低くなるので、適していない。また、歪ゲージを用いる方法では、砲身の長手方向に沿って砲身に複数の歪ゲージを取り付けるのが手間であり、かつ厚肉の試験砲での測定は困難である。また、数十ミリ間隔程度の離散的な測定しかできないので、測定精度が低い。また、加速度センサーを弾丸内に搭載する方法では、速度を求めるために、記録した加速度を2回積分する必要があり、誤差が増大され、測定精度が低い。また測定した加速度データを得るには、発射された弾丸を回収する必要があるので、非効率であるとともに、実施場所が制限される。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、よりシンプルな装置にて、螺旋状の腔線が内壁に形成された砲腔内を移動中の弾丸の速度を、より高精度に、より容易に測定することができる砲腔内の弾丸の速度測定装置、及び砲腔内の弾丸の速度測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る砲腔内の弾丸の速度測定装置は次の手段をとる。まず、本発明の第1の発明は、砲腔を有する砲身に装填される弾丸の先端部における前記砲身の中心軸から離れた位置に取り付けられて前記砲身の中心軸に平行な方向にレーザ光を出射するレーザ光源と、前記砲身の中心軸上に配置されて前記レーザ光源からのレーザ光を受光して映し出すスクリーン手段と、前記スクリーン手段に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点位置を、時間に対応させて連続して撮像する撮像手段とから構成される螺旋状の腔線が内壁に形成された砲腔内の弾丸の速度測定装置であって、前記撮像手段にて撮像したレーザ光の前記輝点位置と、当該輝点位置に対応する時間と、前記腔線の螺旋のピッチと、に基づいて、砲腔内における弾丸の速度を算出する速度算出手段を有する、砲腔内の弾丸の速度測定装置である。
【0010】
この第1の発明によれば、汎用品の小型のレーザ光源を利用できるので、弾丸の先端への固定も比較的容易であり、よりシンプルに測定装置を構成することができる。また当該レーザ光源は、体積も質量も非常に小さいので、弾丸の出射速度にほとんど影響を及ぼさない。そして、螺旋状の腔線が形成された砲腔内を移動中の弾丸の旋回速度を、レーザ光の輝点の位置の移動速度として、比較的容易に測定することが可能であり、腔線の螺旋のピッチに基づいて、測定した旋回速度から砲腔内の移動速度へと、高精度に換算することができる。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、砲腔を有する砲身に装填される弾丸の先端部における前記砲身の中心軸から離れた位置に取り付けられて前記砲身の中心軸に平行な方向にレーザ光を出射するレーザ光源と、前記砲身の中心軸上に配置されて前記レーザ光源からのレーザ光を反射する反射手段と、前記反射手段にて反射されたレーザ光を受光して映し出すスクリーン手段と、前記スクリーン手段に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点位置を、時間に対応させて連続して撮像する撮像手段とから構成される螺旋状の腔線が内壁に形成された砲腔内の弾丸の速度測定装置であって、前記撮像手段にて撮像したレーザ光の前記輝点位置と、当該輝点位置に対応する時間と、前記腔線の螺旋のピッチと、に基づいて、砲腔内における弾丸の速度を算出する速度算出手段を有する、砲腔内の弾丸の速度測定装置である。
【0012】
この第2の発明では、第1の発明に対して、反射手段を設けることで、スクリーン手段及び撮像手段の配置位置を、自由に変更することができる。例えば、弾丸が砲口から離脱する際に発生する衝撃波等の影響がより小さく、より高精度に測定可能となる位置を選定し、選定した位置にスクリーン手段及び撮像手段を配置できるので、砲腔内の弾丸の速度を、より高精度に測定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。なお、X軸、Y軸、Z軸が記載されている図において、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、弾丸の発射方向がZ軸方向である。
【0015】
●[砲身10の内部構造(
図1)と、弾丸20の外観及びレーザ光源22の取付状態(
図2)]
図1の断面図に示すように、砲身10は、弾丸や発射装薬が装填される装填空間11Aを有する薬室11と、螺旋状の腔線12Bが形成された砲腔12Aを有する砲腔部12と、を有している。なお砲身10において符号13は砲口であり、符号14は装填口であり、弾丸と発射装薬が装填された後には装填口14が閉鎖部材50にて閉鎖される。また装填空間11Aの内径D1は、砲腔12Aの内径D2よりも大きい。また符合ZJは、砲身10の中心軸を示している。また薬室11と砲腔部12との境界部である起端部15では、内径D1から内径D2へと内径が小さくなるので、テーパ状の傾斜が設けられている。
【0016】
図2に示すように、弾丸20は、略円柱状であり、側面の一部には、銅合金等の軟金属で形成された弾帯21が、周方向に巻回されるように設けられている。また弾帯21の部分の外径D3は、弾丸20の外径における最も大きな外径であり、
図1に示す内径D1よりも小さく、内径D2よりも大きい。なお弾丸20において、弾帯21とは異なる個所の外径D4は、内径D1よりも小さく、かつ内径D2よりも小さい。弾帯21には、後述するように、起端部15によって、腔線12Bに沿った溝が切り込まれる。
【0017】
また弾丸20の先端部は平面状に形成されており、弾丸20の先端部における砲身の中心軸ZJから離れた位置には、中心軸ZJに平行な方向にレーザ光LZを出射するレーザ光源22と、レーザ光源22用の電源23とが接着剤等(例えばエポキシ系接着剤)にて取り付けられている(固定されている)。なお、レーザ光源22から出射されるレーザ光LZが、中心軸ZJから所定距離D5(例えば約50[mm])だけ離れていれば、中心軸ZJから電源23は離れていなくてもよい。例えばレーザ光源22には、JIS規格(JIS C 6802)で定められている0.2mW出力(クラス1)の小出力レーザーから、500mW(クラス3B)の高出力レーザーまで使用できるが、発射薬の燃焼ガスの影響を受けないように、60[mW]や100[mW]程度の比較的大きな出力であることが好ましい。また電源には一般的な乾電池等を用いることが可能であり、抵抗等を介してレーザ光源22への電圧を調整すればよい。
【0018】
●[砲身10内への弾丸20及び発射装薬60の装填状態(
図3)]
図3は、
図1に示した砲身10の装填空間11A内に、弾丸20、発射装薬60を装填した状態を示している。装填空間11Aの砲口13の側には起端部15に弾帯21が接するように弾丸20が装填され、装填空間11Aの装填口14の側には発射装薬60が装填され、装填口14は閉鎖部材50にて閉鎖される。このとき、レーザ光源22からレーザ光LZが出射されており、中心軸ZJから所定距離D5から離れた位置に、且つ中心軸ZJに平行に、レーザ光LZが出射されている。
【0019】
●[第1の実施の形態の、砲腔内の弾丸の速度測定装置(
図4)]
次に
図4(A)及び(B)を用いて、第1の実施の形態における砲腔内の弾丸の速度測定装置(以下、速度測定装置と記載する)の全体構成について説明する。第1の実施の形態の速度測定装置1は、レーザ光源22、スクリーン手段32、撮像手段33、速度算出手段70等にて構成されている。なお
図4(A)は、速度測定装置1の略側面図を示し、
図4(B)は速度測定装置1の略平面図を示している。
【0020】
レーザ光源22は、例えばレーザーダイオードであり、弾丸20の先端部に固定されて、砲身10の中心軸ZJから所定距離D5だけ離れて中心軸ZJに平行なレーザ光LZを出射する。なお符号22Kはレーザ光LZの旋回軌跡を示しているが、この旋回軌跡22Kは、弾丸20が砲腔部12中を移動中である場合に現れる。
【0021】
スクリーン手段32は、砲身10の砲口の先の中心軸ZJ上に配置されている。そして、スクリーン手段32(受光手段)は、受光したレーザ光を映し出すスクリーン(例えば受光板)であり、スクリーン手段32の後方(レーザ光の入射方向に対して後方(受光面の裏側))に撮像手段33を配置する場合は、略半透明のスクリーンを使用し、
図4に示すようにスクリーン手段32の前方(レーザ光の入射方向に対して前方(受光面の側))に撮像手段33を配置する場合は、略半透明、あるいは非透明なスクリーンを使用することが好ましい。
【0022】
撮像手段33は、例えばハイスピードカメラであり、例えば数万コマ/秒〜数千コマ/秒に相当する所定時間間隔で、スクリーン手段32に映し出されたレーザ光LZの旋回軌跡22K上における、撮像時点の輝点(レーザ輝点)を、次々と撮像して記録する。当然であるが、撮像間隔が短いほど、砲腔内を移動中の弾丸の速度を、より高精度に測定することができる。撮像手段33は、スクリーン手段32に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点の位置を、時間に対応させて連続して撮像(記録)する。なお撮像手段33の方向は、スクリーン手段32の受光面に対して垂直となる方向に向けられていることが好ましい。
【0023】
速度算出手段70は、例えばパーソナルコンピュータであり、撮像手段33が撮像した画像データを取り込み、時間毎のレーザ光の輝点の位置(旋回角度)を認識し、輝点の位置と、当該輝点の位置の時間と、腔線12Bの螺旋のピッチと、に基づいて、砲腔12A内における弾丸20の速度を算出する。
【0024】
●[砲身10内における弾丸20の移動位置(
図6)と、レーザ光の旋回軌跡及び時間に対応する輝点の位置(
図7)と、測定した砲腔内の弾丸の速度(
図8)]
図6(A)〜(D)は、
図3に示した装填状態から、発射装薬60が点火されて、弾丸20が砲身10内を移動する様子を順に示している。
図6(A)に示す状態は、
図3に示すように、発射装薬60、弾丸20が薬室11に装填されている状態を示している。
【0025】
図6(B)に示す状態は、
図6(A)に示す状態から、発射装薬60に点火されて発射装薬の燃焼ガスの圧力によって、弾帯21の切り込みが開始された弾丸20の位置を示している。
【0026】
図6(C)に示す状態は、
図6(B)に示す状態から、弾丸20がさらに砲口に向かって移動し、弾帯21の切り込みが完了した弾丸20の位置を示している。
図6(B)に示す状態から
図6(C)に示す状態に至る弾丸20の経路(区間L2)では、腔線12Bによる弾帯21の切り込みを実行する区間である。この区間L2では、切り込みの初期では切り込みの抵抗が小さいので弾丸20の速度は徐々に上昇し、切り込みが進んで切り込みの抵抗が大きくなると弾丸20の速度は徐々に低下する。なお、弾丸20は腔線12Bに沿って旋回している。
【0027】
図6(D)に示す状態は、
図6(C)に示す状態から、弾帯21の切り込みが完了した弾丸20が、さらに砲口に向かって移動し、砲口から射出された弾丸20の位置を示している。
図6(C)に示す状態から
図6(D)に示す状態に至る弾丸20の経路(区間L3)では、すでに弾帯21の切り込み(腔線12Bによる切り込み)が完了しているので、弾丸20は、腔線12Bに沿って旋回しながら、発射装薬内の発射装薬の燃焼ガスの圧力によって徐々に加速して砲口に達する。なお、砲口から射出された後(区間L3以降)の弾丸20は、旋回状態を維持しながら飛翔する。
【0028】
以上、
図6(B)に示す状態から
図6(D)に示す状態では、弾丸20は、腔線12Bに沿って旋回しながら、砲腔12A内を移動する。また腔線12Bの螺旋のピッチは、一定に設定されているので、この区間L2及び区間L3では、弾丸20の旋回角度に対する弾丸20の砲腔12A内の移動距離は、
図5に示すような旋回角度・移動距離特性を示す。すなわち、区間L2及び区間L3(砲腔12A内)では、弾丸20の旋回角度がわかれば、弾丸20の移動距離がわかり、単位時間における弾丸20の移動距離から弾丸20の速度がわかる。なお、螺旋のピッチは、例えば「転度(腔線が1回転した際の砲身の中心軸方向の距離)」にて表現されている。
【0029】
図7は、区間L2及び区間L3において、撮像手段33にて撮像したレーザ光の輝点の位置の記録の例を示している。撮像手段33は、所定時間間隔にて、輝点の位置(旋回軌跡22K上における輝点の位置)を記録している。例えば時間t1では、輝点P1(t1、θ1)が記録され、時間t2では輝点P2(t2、θ2)が記録され、時間t3では輝点P3(t3、θ3)が記録され、時間t4では輝点P4(t4、θ4)が記録され、時間t5では輝点P5(t5、θ5)が記録されている。なお
図7において、旋回軌跡上の位置を示す旋回角度θ1〜θ5の基準となる基準位置は、どのように設定しても良く、適当な位置を基準位置とすればよい。
【0030】
速度算出手段70は、例えば、P1(t1、θ1)からP2(t2、θ2)に至る時間(t2−t1)と、旋回角度(θ2−θ1)と、腔線12Bの螺旋のピッチと、から輝点P1から輝点P2に至る弾丸20の速度を算出することができる。この場合、旋回角度(θ2−θ1)に対応する移動距離を、
図5に示す旋回角度・移動距離特性から求め、移動距離/(t2−t1)を求めることで、時間t1から時間t2の間の弾丸の速度を求めることができる。同様にして、速度算出手段70は、時間t2から時間t3の間の弾丸の速度、時間t3から時間t4の間の弾丸の速度、時間t4から時間t5の間の弾丸の速度・・等を求めることができる。
【0031】
図8は、横軸を時間、縦軸を弾丸20の速度に設定した座標に、上記の手順にて求めた弾丸20の速度(区間L2及び区間L3の速度)を示した時間・弾丸速度特性のグラフを示している。この時間・弾丸速度特性を見れば、作業者は、弾丸のスティッキング現象が発生しているか否か、容易に判断することができる。なお、弾丸のスティッキング現象が発生している場合は、
図8の点線で囲った(スティッキングの例)に示すように、速度がゼロとなる位置(
図8の(スティッキングの例)における「TE」にて示す位置)が存在する。このような状態が有れば、作業者は、スティッキング現象が発生していたことを、容易に判断することができる。なお、弾丸の速度が著しく低下、あるいは弾丸の速度の変化が滑らかでない場合(速度の下降中や上昇中に波打つ波形である場合)等であっても、作業者は、スティッキング現象が発生していたことを、容易に判断することができる。
【0032】
●[第2の実施の形態の、砲腔内の弾丸の速度測定装置(
図9)]
次に
図9を用いて、砲腔内の弾丸の速度測定装置の第2の実施の形態の構成について説明する。第2の実施の形態の速度測定装置1Bは、
図4(A)及び(B)に示す第1の実施の形態の速度測定装置1に対して、スクリーン手段32の代わりに反射手段31が中心軸ZJ上に配置されており、反射手段31の反射先にスクリーン手段32が配置されている点が異なる。以下、この相違点について主に説明する。
【0033】
反射手段31は、例えばレーザ反射ミラーであり、砲身10の砲口13の先の中心軸ZJ上に配置されている。そして反射手段31は、レーザ光源22からのレーザ光LZを、スクリーン手段32に向けて反射するように、中心軸ZJに対して所定の角度で傾斜するように配置されている。なお符号22Kはレーザ光LZの旋回軌跡を示しているが、この旋回軌跡22Kは、弾丸20が砲腔部12中を移動中である場合に現れる。なお、スクリーン手段32の構成は、第1の実施の形態と同様、受光したレーザ光を映し出すものであり、スクリーン手段32の後方(レーザ光の入射方向に対して後方(受光面の裏側))に撮像手段33が配置される場合は、略半透明のスクリーンを使用し、スクリーン手段32の前方(レーザ光の入射方向に対して前方(受光面の側))に撮像手段33が配置される場合は、略半透明、あるいは非透明なスクリーンを使用することが好ましい。
【0034】
そして撮像手段33は、第1の実施の形態と同様、スクリーン手段32に対して垂直となるように配置され、スクリーン手段32に映し出されたレーザ光の旋回軌跡上におけるレーザ光の輝点の位置を、時間に対応させて連続して撮像(記録)する。以下、砲腔12A内における弾丸20の速度の測定方法は、すでに説明した第1の実施の形態と同じであるので、説明は省略する。
【0035】
以上、本実施の形態にて説明した砲腔内の弾丸の速度測定装置は、腔線に沿って弾丸が旋回することを利用し、非常にシンプルな構成にて実現することが可能であり、より高精度に、より容易に、弾丸の速度を測定することができる。また第2の実施の形態の速度測定装置1Bでは、第1の実施の形態の速度測定装置1に対して、反射手段を設けることで、スクリーン手段及び撮像手段の配置位置を自由に変更することができる。これにより、弾丸が砲口から離脱する際に発生する衝撃波等の影響が小さくなる位置にスクリーン手段及び撮像手段を配置することができるので、弾丸の速度を、より高精度に測定することができる。
【0036】
●[その他]
[レーザ光源の数とレーザ光の波長について]
以上に説明した実施の形態では、1個のレーザ光源22を弾丸20の先端部に設けた例を説明したが、2個以上のレーザ光源を弾丸20の先端部(かつ中心軸ZJから離れた位置)に設けるようにしてもよい。2個以上のレーザ光源を、中心軸ZJを中心とする同一半径の円周上に配置してもよいし、異なる半径の円周上にそれぞれのレーザ光源を配置してもよい。
【0037】
なお、レーザ光源から出射されるレーザ光の波長は特に限定せず、撮像手段33の感度にて撮像可能な波長であれば、どの波長であってもよい。また、2個以上のレーザ光源を設けた場合では、それぞれのレーザ光源にて異なる波長のレーザ光を出射するようにしてもよい。なお、レーザ光源が1個の場合は、発射装薬の燃焼ガスの影響を受けにくくなるように、波長のより短いレーザ光であることが好ましい。またレーザ光源が2個以上の場合は、それぞれのレーザ光源を特定しやすいように、レーザ光源毎に異なる波長とすることが好ましい。
【0038】
[レーザ光源の発光方式について]
レーザ光源が出射するレーザ光の発光方式には、連続発光方式とパルス発光方式との2種類の発光方式がある。連続発光方式は、レーザ光が途切れることなく連続して発光する方式であり、パルス発光方式は、繰り返される所定周期内において所定の発光時間と所定の消光時間とがある方式である(すなわち、レーザ光が点滅する)。当然であるが連続発光方式であることが望ましい。パルス発光方式のレーザ光源を用いた場合では、少なくとも撮像手段33にて撮像した画像データの2コマに1コマにはレーザ光の輝点が映るような周期で点滅することが好ましい。また、確実に画像データに輝点を残すために、1コマの画像の露光時間に対して50%以上の発光時間を有することが好ましい。また、パルス発光方式の場合、波長の異なる複数のレーザ光源を取り付け、発光タイミングがずれるように設定してもよい。
【0039】
[レーザ光の発光強度等について]
レーザ光の発光強度は、発射装薬の燃焼ガスの漏れ発光の強度よりも大きく、撮像手段の飽和光強度を超えない強度が望ましい。この強度に設定すれば、砲身内壁と弾丸の隙間から発射装薬の燃焼火炎の光が漏れ出ても、レーザ光の強度のほうが高いので、レーザ光の輝点と、燃焼火炎の光とを確実に区別することができる。また、撮像手段の入力部に、レーザ光の波長のみを透過するフィルタを取り付けるようにしてもよい。
【0040】
[中心軸ZJに沿うレーザ光を出射する補助レーザ光源の追加]
弾丸20の先端部の中心に、中心軸ZJに沿う(中心軸ZJと一致する)補助レーザ光を出射する補助レーザ光源を取り付けるようにしてもよい。この補助レーザ光源を取り付けると、バフェッティングの計測が(補助的に)可能となる。また、この補助レーザ光源の輝点の広がり状態等を用いることで、中心軸ZJから離れた位置に配置したレーザ光源からのレーザ光の輝点位置の解析精度が向上する。各画像を重ね合わせると、理想状態では、補助レーザ光源からの補助レーザ光の輝点は1点に重なり、レーザ光源からのレーザ光の輝点の軌跡は所定半径の円(真円)を描くが、バフェッティングが発生すると、補助レーザ光の輝点がぶれて径が広がり、レーザ光の輝点の軌跡は理想状態よりも大きな半径の円や楕円を描く。特に砲口の中心軸ZJ上に反射手段を設けている場合、反射手段の角度調整の関係で、レーザ光の輝点の軌跡が楕円となる場合がある。このような場合、補助レーザ光の輝点の位置を用いて、レーザ光の輝点の位置を補正することで、より高精度な解析が可能となる。
【0041】
本発明の砲腔内の弾丸の速度測定装置、及び砲腔内の弾丸の速度測定方法は、本実施の形態にて説明した外観、構造、構成、形状、方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。