特許第6361456号(P6361456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許6361456推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体
<>
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000002
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000003
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000004
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000005
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000006
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000007
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000008
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000009
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000010
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000011
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000012
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000013
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000014
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000015
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000016
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000017
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000018
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000019
  • 特許6361456-推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361456
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体
(51)【国際特許分類】
   F02K 9/90 20060101AFI20180712BHJP
   F02K 9/97 20060101ALI20180712BHJP
   F42B 10/66 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   F02K9/90
   F02K9/97
   F42B10/66
【請求項の数】11
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-213077(P2014-213077)
(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公開番号】特開2016-79917(P2016-79917A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 史典
(72)【発明者】
【氏名】谷 寛之
(72)【発明者】
【氏名】日向 大輔
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−202222(JP,A)
【文献】 特公昭50−012839(JP,B1)
【文献】 韓国公開特許第2002−0079073(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02K 9/00 − 9/97
F42B 10/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスを放出するノズル出口を有するノズルと、
第1回転軸の回りに回転する第1ジェットタブと、
第2回転軸の回りに回転する第2ジェットタブと、
前記第1ジェットタブを前記第1回転軸の回りに回転させ、前記第2ジェットタブを前記第2回転軸の回りに回転させる少なくとも1つの駆動部と
を備え、
前記ノズル出口の面に垂直で、前記ノズルの内側から前記ノズルの外側に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブは、前記ノズルよりも前記第1方向側に配置されており、
前記第1ジェットタブは、
前記第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、前記第1回転軸に接続された第1基端部と、
前記第1方向にみて前記ノズル出口に重ならない第1退避位置から前記ノズル出口に重なる第1進出位置に向けて進出可能な第1先端部と
を備え、
前記第2ジェットタブは、
前記第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、前記第2回転軸に接続された第2基端部と、
前記第1方向にみて前記ノズル出口に重ならない第2退避位置から前記ノズル出口に重なる第2進出位置に向けて進出可能な第2先端部と
を備え、
前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブは、所定の第1対称面に対して対称に配置され、前記所定の第1対称面に対して対称な形状を有し、かつ、前記少なくとも1つの駆動部によって前記所定の第1対称面に対して対称に駆動され、
前記第1ジェットタブの最先端と前記第1回転軸との間の距離は、前記第1回転軸と前記所定の第1対称面との間の距離よりも大きく、
前記第2ジェットタブの最先端と前記第2回転軸との間の距離は、前記第2回転軸と前記所定の第1対称面との間の距離よりも大きい
推力偏向装置。
【請求項2】
前記駆動部を制御する駆動制御部を更に備え、
前記駆動部は、
前記第1ジェットタブを前記第1回転軸の回りに回転させる第1駆動部と、
前記第2ジェットタブを前記第2回転軸の回りに回転させる第2駆動部と
を有し、
前記駆動制御部は、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を同期制御することにより、前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブを前記所定の第1対称面に対して対称に駆動する
請求項1に記載の推力偏向装置。
【請求項3】
前記駆動部の動力を前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブに同時に伝達する動力分割機構を更に備える
請求項1に記載の推力偏向装置。
【請求項4】
前記動力分割機構は、
第1シャフトであって、前記第1シャフトの先端部が前記第1ジェットタブに連結された前記第1シャフトと、
前記第1シャフトに設けられた第1歯車と、
第2シャフトであって、前記第2シャフトの先端部が前記第2ジェットタブに連結され、前記第2シャフトの基端部が前記駆動部に連結された前記第2シャフトと、
前記第2シャフトに設けられた第2歯車と
を備え、
前記第1歯車は、前記第2歯車と噛み合うように配置されている
請求項3に記載の推力偏向装置。
【請求項5】
前記第1ジェットタブは、第1内側面を備え、
前記第2ジェットタブは、第2内側面を備え、
前記第1内側面及び第2内側面は、前記第1ジェットタブが前記第1進出位置にあり、かつ前記第2ジェットタブが前記第2進出位置にあるとき、互いに対面すると共に平行である
請求項1から4のいずれか一項に記載の推力偏向装置。
【請求項6】
前記第1ジェットタブの前記第1先端部は、先端に向かうにつれて先細る形状であり、
前記第2ジェットタブの前記第2先端部は、先端に向かうにつれて先細る形状である
請求項1から5のいずれか一項に記載の推力偏向装置。
【請求項7】
前記第1先端部の厚みは、前記第1基端部の厚みよりも薄く、
前記第2先端部の厚みは、前記第2基端部の厚みよりも薄い
請求項1から6のいずれか一項に記載の推力偏向装置。
【請求項8】
前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブを含むタブ対を含む複数のタブ対を備える
請求項1から7のいずれか一項に記載の推力偏向装置。
【請求項9】
前記複数のタブ対の全てが同時に駆動された場合であっても、前記複数のタブ対の各々は、他のいずれのタブ対とも軌跡が干渉することのないように、前記各タブ対を構成する各ジェットタブの形状及び配置が設定されている
請求項1から8のいずれか一項に記載の推力偏向装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の推力偏向装置を備える飛しょう体。
【請求項11】
推力偏向装置を用いる推力偏向方法であって、
前記推力偏向装置は、
燃焼ガスを放出するノズル出口を有するノズルと、
第1回転軸の回りに回転する第1ジェットタブと、
第2回転軸の回りに回転する第2ジェットタブと、
第1ジェットタブを前記第1回転軸の回りに回転させ、前記第2ジェットタブを前記第2回転軸の回りに回転させる少なくとも一の駆動部と
を備え、
前記ノズル出口の面に垂直で、前記ノズルの内側から前記ノズルの外側に向かう方向を第1方向と定義するとき、前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブは、前記ノズルよりも前記第1方向側に配置されており、
前記第1ジェットタブは、
前記第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、前記第1回転軸に接続された第1基端部と、
前記第1方向にみて前記ノズル出口に重ならない第1退避位置から前記ノズル出口に重なる第1進出位置に向けて進出可能な第1先端部と
を備え、
前記第2ジェットタブは、
前記第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、前記第2回転軸に接続された第2基端部と、
前記第1方向にみて前記ノズル出口に重ならない第2退避位置から前記ノズル出口に重なる第2進出位置に向けて進出可能な第2先端部と
を備え、
前記第1ジェットタブ及び前記第2ジェットタブは、所定の第1対称面に対して対称に配置され、かつ、前記所定の第1対称面に対して対称な形状を有し、
前記第1回転軸と前記第2回転軸との間の距離が回転軸間距離であり、
前記第1先端部の面中心と前記第2先端部の面中心との間の距離が先端部間距離であり、
前記第1ジェットタブが前記第1退避位置にあり、かつ前記第2ジェットタブが前記第2退避位置にあるとき、前記先端部間距離は、前記回転軸間距離よりも大きく、
前記推力偏向方法は、
前記駆動部が、前記先端部間距離が単調に減少するように、前記第1ジェットタブを前記第1退避位置から前記第1進出位置へ駆動し、かつ前記第2ジェットタブを前記第2退避位置から前記第2進出位置へ駆動するステップと、
前記駆動部が、前記先端部間距離が単調に増加するように、前記第1ジェットタブを前記第1進出位置から前記第1退避位置へ駆動し、かつ前記第2ジェットタブを前記第2進出位置から前記第2退避位置へ駆動するステップと
を備える
推力偏向方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力偏向装置、推力偏向方法、及び飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の推力の方向を偏向する手段の1つとして、ジェットタブ方式の推力偏向装置が知られている。この方式の推力偏向装置は、飛しょう体(例えば、ミサイル)に搭載されている。本願明細書では、ジェットタブ方式の推力偏向装置に焦点を当てる。以下、この方式の推力偏向装置を単に「推力偏向装置」と呼ぶ。
【0003】
典型的な推力偏向装置は、複数のジェットタブを備えている。複数のジェットタブは、飛しょう体のノズルの後方に配置されている。なお、「ジェットタブ」は、「タブ」、「スポイラー」又は「偏向体」とも呼ばれる。
【0004】
推力偏向装置は、概略次のように動作する。はじめ、複数のジェットタブの全ては、ノズル出口に重ならない位置にある。飛しょう体の推力の方向が所定の方向(例えば、ピッチ角が増加する方向)に偏向されるとき、複数のジェットタブのうち、対象のジェットタブがノズル出口に重なる位置に進出する。このことにより、ノズルから放出される燃焼ガスが対象のジェットタブに当り、その燃焼ガス流の方向が変化する。その変化に応じて、飛しょう体の軌道が変化する。
【0005】
推力偏向装置に関連する文献として、特許文献1は、必要なローリングモーメントが得られないという課題の一解決策を提案している。特許文献2は、飛しょう体の飛行制御を向上させるべく、ジェットタブ自体の改良策を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−297800号公報
【特許文献2】特開2012−202222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
推力偏向装置が飛しょう体に搭載される場合、推力偏向装置自体は小さい方が望ましい。そこで、本願発明者は、推力偏向装置の小型化及び軽量化に着目した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、「発明を実施するための形態」で使用される符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの符号は、「特許請求の範囲」の記載と「発明を実施するための形態」との対応関係を明確にするために付加されたものである。ただし、これらの符号は、「特許請求の範囲」に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いられるものではない。
【0009】
本発明の第1の観点の推力偏向装置(1)は、燃焼ガス(G)を放出するノズル出口(11)を有するノズル(10)と、第1回転軸(211)の回りに回転する第1ジェットタブ(201)と、第2回転軸(212)の回りに回転する第2ジェットタブ(202)と、第1ジェットタブを第1回転軸の回りに回転させ、第2ジェットタブを第2回転軸の回りに回転させる少なくとも1つの駆動部(30)とを備える。ノズル出口の面に垂直で、ノズルの内側からノズルの外側に向かう方向を第1方向(Z軸の正方向)と定義するとき、第1ジェットタブ及び第2ジェットタブは、ノズルよりも第1方向側に配置されている。第1ジェットタブは、第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、第1回転軸に接続された第1基端部(221)と、第1方向にみてノズル出口に重ならない第1退避位置(P11)からノズル出口に重なる第1進出位置(P21)に向けて進出可能な第1先端部(231)とを備える。第2ジェットタブは、第1方向にみてノズル出口と重ならないように配置され、第2回転軸に接続された第2基端部(222)と、第1方向にみてノズル出口に重ならない第2退避位置(P12)からノズル出口に重なる第2進出位置(P22)に向けて進出可能な第2先端部(232)とを備える。第1ジェットタブ及び第2ジェットタブは、所定の第1対称面(SUR)に対して対称に配置され、所定の第1対称面に対して対称な形状を有し、かつ、少なくとも1つの駆動部によって所定の第1対称面に対して対称に駆動される。第1ジェットタブの最先端(241)と第1回転軸との間の距離(D1)は、第1回転軸と所定の第1対称面との間の距離(D2)よりも大きい。第2ジェットタブの最先端(242)と第2回転軸との間の距離(D3)は、第2回転軸と所定の第1対称面との間の距離(D4)よりも大きい。
【0010】
好適には、推力偏向装置は、駆動部を制御する駆動制御部(40)を更に備える。駆動部は、第1ジェットタブを第1回転軸の回りに回転させる第1駆動部(30)と、第2ジェットタブを第2回転軸の回りに回転させる第2駆動部(30)とを有する。駆動制御部は、第1駆動部及び第2駆動部を同期制御することにより、第1ジェットタブ及び第2ジェットタブを前記所定の第1対称面に対して対称に駆動する。
【0011】
好適には、推力偏向装置は、駆動部の動力を第1ジェットタブ及び第2ジェットタブに同時に伝達する動力分割機構(50)を更に備える。
【0012】
好適には、動力分割機構は、第1シャフト(51)であって、第1シャフトの先端部(512)が第1ジェットタブ(20)に連結された第1シャフトと、第1シャフトに設けられた第1歯車(52)と、第2シャフト(51)であって、第2シャフトの先端部(512)が第2ジェットタブ(20)に連結され、第2シャフトの基端部(511)が駆動部に連結された前記第2シャフトと、第2シャフトに設けられた第2歯車(52)とを備える。第1歯車は、第2歯車と噛み合うように配置されている。
【0013】
好適には、第1ジェットタブは、第1内側面(27)を備える。第2ジェットタブは、第2内側面(27)を備える。第1内側面及び第2内側面は、第1ジェットタブが第1進出位置にあり、かつ第2ジェットタブが第2進出位置にあるとき、互いに対面すると共に平行である。
【0014】
好適には、第1ジェットタブの第1先端部は、先端に向かうにつれて先細る形状である。第2ジェットタブの第2先端部は、先端に向かうにつれて先細る形状である。
【0015】
好適には、第1先端部の厚み(TH1)は、第1基端部の厚み(TH2)よりも薄い。第2先端部の厚み(TH1)は、第2基端部の厚み(TH2)よりも薄い。
【0016】
好適には、推力偏向装置は、第1ジェットタブ及び第2ジェットタブを含むタブ対(TAB)を含む複数のタブ対(TAB−TAB)を備える。
【0017】
好適には、複数のタブ対の全てが同時に駆動された場合であっても、複数のタブ対の各々は、他のいずれのタブ対とも軌跡が干渉することのないように、各タブ対を構成する各ジェットタブの形状及び配置が設定されている。
【0018】
好適には、飛しょう体(6)は、推力偏向装置(1、1B、1C)を備える。
【0019】
本発明の第2の観点の推力偏向方法は、推力偏向装置(1)を用いる推力偏向方法である。前記推力偏向装置は、燃焼ガス(G)を放出するノズル出口(11)を有するノズル(10)と、第1回転軸(21)の回りに回転する第1ジェットタブ(20)と、第2回転軸(21)の回りに回転する第2ジェットタブ(20)と、第1ジェットタブを第1回転軸の回りに回転させ、第2ジェットタブを第2回転軸の回りに回転させる少なくとも一の駆動部(30)とを備える。ノズル出口の面に垂直で、ノズルの内側からノズルの外側に向かう方向を第1方向と定義するとき、第1ジェットタブ及び第2ジェットタブは、ノズルよりも第1方向側に配置されている。第1ジェットタブは、第1方向にみて前記ノズル出口と重ならないように配置され、第1回転軸に接続された第1基端部(22)と、第1方向にみてノズル出口に重ならない第1退避位置(P1)からノズル出口に重なる第1進出位置(P2)に向けて進出可能な第1先端部(23)とを備える。第2ジェットタブは、第1方向にみてノズル出口と重ならないように配置され、第2回転軸に接続された第2基端部(22)と、第1方向にみてノズル出口に重ならない第2退避位置(P1)からノズル出口に重なる第2進出位置(P2)に向けて進出可能な第2先端部(23)とを備える。第1ジェットタブ及び第2ジェットタブは、所定の第1対称面に対して対称に配置され、かつ、所定の第1対称面に対して対称な形状を有する。第1回転軸と第2回転軸との間の距離が回転軸間距離(D5)である。第1先端部(23)の面中心(28)と第2先端部(23)の面中心(282)との間の距離が先端部間距離(D6)である。第1ジェットタブが第1退避位置にあり、かつ第2ジェットタブが第2退避位置にあるとき、先端部間距離は、回転軸間距離よりも大きい。推力偏向方法は、駆動部が、先端部間距離(D6)が単調に減少するように、第1ジェットタブを第1退避位置から第1進出位置へ駆動し、かつ第2ジェットタブを第2退避位置から第2進出位置へ駆動するステップと、駆動部が、先端部間距離(D6)が単調に増加するように、第1ジェットタブを第1進出位置から第1退避位置へ駆動し、かつ第2ジェットタブを第2進出位置から第2退避位置へ駆動するステップとを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型化及び軽量化された推力偏向装置を提供することができる。これに加え、小型化及び軽量化された推力偏向装置を備える飛しょう体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、推力偏向装置の主要部の模式図である。
図2A図2(A)は、推力偏向角の説明図である。
図2B図2(B)は、ノズル出口面積Aの説明図である。
図2C図2(C)は、重なり面積Aの説明図である。
図3図3は、偏向力Fの大きさと面積比Sとの関係を示す図である。
図4図4は、ジェットタブ20aが受ける力の説明図である。
図5図5は、第1の実施の形態に係る推力偏向装置1の斜視図である。
図6図6は、第1タブ対TAB周辺の部分拡大図である。
図7図7は、第1の実施の形態に係る推力偏向装置1によって得られる偏向力の説明図である。
図8図8は、他の観点の推力偏向装置1Aによって得られる偏向力の説明図である。
図9図9は、第1ジェットタブ20の周辺における推力偏向装置の側方断面図である。
図10図10は、推力偏向装置1を後方からみた図である。
図11図11は、進出位置にある第1タブ対TABの外観図である。
図12図12は、ジェットタブ20の他の形状を例示する外観図である。
図13図13は、推力偏向装置1の駆動系を示すブロック図である。
図14図14は、第1タブ対TABに対応する動力分割機構50を図示している。
図15図15は、第2の実施の形態に係る推力偏向装置1Bを後方からみた図である。
図16図16は、第3の実施の形態に係る推力偏向装置1Cを後方からみた図である。
図17図17は、第4の実施の形態に係る飛しょう体6の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に関連づけて説明する。以下の実施の形態において、同一の部材には原則として同一の符号が付され、その繰り返しの説明は省略される。符号の添え字は、同種の部材を区別するためのものである。その区別が不要の場合、添え字は、適宜省略される。
【0023】
1.方向の定義
本願明細書では、X軸、Y軸及びZ軸を持つ直交座標が使用される。図1及び図9に示すように、ノズル(10;10)の中心軸(O)がZ軸に対応している。Z軸の正方向は、ノズルの内部で燃焼ガス流(G1)が流れる方向に対応している。「第1方向」は、ノズル出口(11、11)の面に垂直で、ノズル(10;10)の内側からノズル出口の外側に向かう方向で定義される。言い換えれば、「第1方向」は、Z軸に対応している。Y軸は、X軸及びZ軸の双方に対して垂直である。
【0024】
2.主な用語の定義
1)「ノズル」とは、図1及び図9に示すように、ノズル内壁面(12;12)を含む部分に加え、ノズルの外装部分も含む。
2)「ノズル出口」とは、図1及び図9に示すように、例えばノズルの後端、具体的には、図1の図番11a、図9の図番11で示される部分を指す。。
3)「ノズル出口の面」とは、上記「ノズル出口」を含む面である。
4)「後方」とは、Z軸の正方向を指す。「ノズルの後方」とは、図1及び図9に示すように、ノズルの後端よりも燃焼ガス(G1)が放出される側の方向を指す。
5)「前方」とは、Z軸の負方向を指す。
6)「同時」とは、厳密な同時に加え、実質的に同時も含む。
7)「対称面」とは、図5図10図15及び図16にそれぞれ示すように、第1から第6対称面(SUR‐SUR)の各々を指す。対称面の数は、タブ対の個数分ある。例えば、図5において第1タブ対(TAB)に着目すると、第1対称面(SUR)は、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20の間にある平面である。第1対称面は、ノズルの中心軸を含んでいる。
【0025】
3.推力偏向装置の原理
3.1.偏向力
本題に入る前に、推力偏向装置の原理を簡単に説明する。図1は、推力偏向装置1aの主要部の側方断面図である。なお、図1では、ノズル10aが中心軸Oに対して回転対称であることに留意されたい。
【0026】
ノズル10aは、そのスロート14aからノズル出口11aに向かうにつれて、ノズル10aの口径が大きくなるように構成されている。ノズル出口11aの後方に、ジェットタブ20aが配置されている。図1では、ジェットタブ20aの一部がノズル出口11aに重なっている。
【0027】
燃焼ガスG1は、スロート14aからノズル出口11aの方向に膨張しながら流れる。そして、燃焼ガスG1は、ノズル出口11aからノズル10aの外部へと放出される。ただし、ジェットタブ20aの存在により、ジェットタブ20aの前方に高圧領域REGが発生する。高圧領域REGでは、燃焼ガスG1の流入が抑制される。高圧領域REGの前方部分SPを起点として、斜め衝撃波SHWが発生する。斜め衝撃波SHWによって、燃焼ガスG1は、偏向され、偏向流G2としてノズル10aの外部へと放出される。このとき、偏向流G2のY軸方向成分(ノズル10aの中心軸Oに対して垂直方向)により偏向力Fが発生する。偏向力Fによって、ノズル10a(ノズル10aを備える飛しょう体)を推進させる推力が偏向される。
【0028】
3.2.ジェットタブの形状
ジェットタブの形状は任意でよい。この点について、図2(A)、図2(B)、図2(C)及び図3を参照して説明する。図2(A)は、推力偏向角の説明図である。図2(A)は、ノズル1aの側面に加え、ロケットモータ7の側面を示している。ロケットモータ7には、推進力Fx及び偏向力Fyが作用する。推進力Fxは、中心軸(O)方向に働く力である。偏向力Fyは、図1に示す偏向力Fに対応する。このとき、推力偏向角θは、Arctan(Fy/Fx)で定義される(θ≧0)。図2(B)は、ノズル出口面積Aの説明図である。ノズル出口面積Aとは、ノズル内壁面12aで囲まれる部分、つまり、ノズル出口11aの面積を指している。図2(C)は、重なり面積Aの説明図である。重なり面積Aとは、ジェットタブ20aがノズル出口11aと重なっている部分の面積を指している。実際には、複数のジェットタブ20aが設けられている。ここでは、説明を明確にするため、1個のジェットタブ20aを例に挙げる。
【0029】
図3は、推力偏向角θと面積比Sとの関係を示す図である。面積比Sは、重なり面積Aとノズル出口面積Aとの比(S=A/A)で表される。このとき、推力偏向角θは、面積比S=A/Aの単調増加の関数で表される。つまり、重なり面積Aが増加するにつれて、推力偏向角θも増加する。また、重なり面積Aが増加するにつれて、図2(A)に示す偏向力Fyも、概ね増加する。このことから、必要な偏向力を得るためには、基本的には、ジェットタブ20aの形状が任意でよいことが分かる。
【0030】
4.本願発明者によって認識された課題
同じ偏向力を得ることができるならば、ジェットタブの大きさは、できるだけ小さい方がよい。それは、このことが推力偏向装置の小型化及び軽量化につながるためである。本願発明者は、この点に着目した。しかしながら、そのためには、次の点を考慮する必要がある。
【0031】
このことを、図4を参照して説明する。図4は、ジェットタブ20aが受ける力の説明図である。ここでは、ジェットタブ20は、概ね直方体の形状を持っており、ノズル出口11aを含む面に対して平行である。ジェットタブ20aは、燃焼ガスG1から流体力学的な力を受ける。図4では、ジェットタブ20aの先端部23aがノズル10aの後方でノズル出口11aに重なっている。
【0032】
燃焼ガスG1は、ノズル10aのスロート(不図示)からノズル出口11aへ向かって放出されている。このとき、ジェットタブ20は、大別して、燃焼ガスG1から2種類の力を受ける。1つ目は、ジェットタブ20aの内側面27aが受ける力F1である。2つ目は、ジェットタブ20aの表面25aが受ける力F2である。流体力学の観点では、これら二つの力が支配的である。
【0033】
1つ目の力F1について述べる。図4に示すように、力F1は、ジェットタブ20aの内側面27aに対して垂直に働く力である。初め、ジェットタブ20aは、ノズル出口11に重ならない位置にある(想像線:二点鎖線を参照)。その後、ジェットタブ20aは、この位置からノズル出口11aに重なる位置へ駆動部30aによって回転される。このとき、駆動部30aは、力F1によって回転を妨げられる方向に力を受ける。この力によって、ジェットタブ20aは、流体負荷トルクTを受ける。流体負荷トルクTの方向は、ジェットタブ20aの回転方向と逆向きである。流体負荷トルクTの大きさは、力F1×スパンL1で表される。スパンL1は、ジェットタブ20aとシャフト51aが連結されている位置からジェットタブ20が力F1を受ける位置までの距離である。なお、ここで言う、力F1は、ある代表点に作用する力である。実際にジェットタブ20aが受ける力は、各点に作用する力の総和である。具体的には、ジェットタブ20aが受ける流体負荷トルクTは、各点に作用する流体負荷トルク(F1×L1)の総和である。
【0034】
二つ目の力F2について述べる。図4に示すように、力F2は、ジェットタブ20aの表面25aに対して垂直に働く力である。力F2によって、ジェットタブ20aの先端部23aが、燃焼ガス流(G1)の方向に押される。この力によって、ジェットタブ20aは、曲げモーメントMを受ける。曲げモーメントMの大きさは、力F2×スパンL2で表される。スパンL2は、シャフト51からジェットタブ20aが力F2を受ける位置までの距離である。なお、ここで言う、力F2は、ある代表点に作用する力である。実際にジェットタブ20aが受ける力は、各点に作用する力の総和である。具体的には、ジェットタブ20aが受ける曲げモーメントMは、各点に作用する曲げモーメント(F2×L2)の総和である。
【0035】
ジェットタブ20aの厚みTHが更に薄くなれば、ジェットタブ20aの内側面27aに対して垂直に働く力F1は、その分小さくなる。しかしながら、ジェットタブ20aの強度がその分低下する。他方、ジェットタブ20aがノズル出口11aと重なる部分が更に小さくなれば、ジェットタブ20aの表面25aに対して垂直に働く力F2は、その分小さくなる。しかしながら、所望する偏向力Fを得ることが難しくなる。したがって、所望する偏向力Fを確保しつつ、ジェットタブ20aにかかる力F1、F2をできるだけ低減させる工夫が求められる。
【0036】
5.第1の実施の形態
5.1.概要
第1の実施の形態の概要を図5及び図6を参照して説明する。図5は、第1の実施の形態に係る推力偏向装置1の斜視図である。図5に示すように、推力偏向装置1は、ノズル10と、第1‐第8ジェットタブ20‐20と、駆動部30とを備える。第1‐第8ジェットタブ20‐20は、第1‐第8回転軸21‐21をそれぞれ備える。ノズル10は、ノズル出口11と、ノズル底部13とを備える。駆動部30は、第1ジェットタブ20を第1回転軸21の回りに回転させ、第2ジェットタブ20を第2回転軸21の回りに回転させる。
【0037】
本実施の形態では、1個のジェットタブ20にかかる力を低減させつつ、所望する偏向力Fを得るために、2個のジェットタブ20で1つのタブ対TABが構成されている。その詳細は、次の通りである。第1タブ対TABが第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20で構成されている。同様に、第2タブ対TABが第3ジェットタブ20及び第4ジェットタブ20で構成されている。第3タブ対TABが第5ジェットタブ20及び第6ジェットタブ20で構成されている。第4タブ対TABが第7ジェットタブ20及び第8ジェットタブ20で構成されている。
【0038】
各タブ対TABを構成する2個のジェットタブ20の間に、第1‐第4対称面SUR‐SURがある。第1タブ対TABに着目すると、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20の間に、第1対称面SURがある。第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20は、第1対称面SURに対して対称に配置され、第1対称面SURに対して対称な形状を有する。いずれのタブ対TABも同じ構成を持つ。以下の説明では、特に断りのない限り、第1タブ対TABに焦点を当てる。
【0039】
図6は、第1タブ対TAB周辺の部分拡大図である。図6に示すように、第1ジェットタブ20は、第1回転軸21に接続された第1基端部22と、第1先端部23とを更に備える。第2ジェットタブ20は、第2回転軸21に接続された第2基端部22と、第2先端部23とを更に備える。第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20の各々は、Z軸方向(第1方向)にみて、ノズル出口11と重ならないように配置されている。第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20は、駆動部30によって、第1回転軸21及び第2回転軸21の回りにそれぞれ回転する。第1回転軸21及び第2回転軸21は、互いに離間している。両者の位置は、それぞれ固定されている。
【0040】
ここで、第1回転軸21と第1最先端24(第1回転軸21から最も離れた第1ジェットタブ20上の点)との間の距離は、距離D1で表される。第1回転軸21から第1対称面SURまでの距離は、D2で表される。第2回転軸21と第2最先端24(第2回転軸21から最も離れた第2ジェットタブ20上の点)との間の距離は、D3で表される。第2回転軸21から第1対称面SURまでの距離は、D4で表される。
【0041】
第1ジェットタブ20は、駆動部30によって、第1退避位置P1から第1進出位置P2の範囲内で駆動される。第2ジェットタブ20も、駆動部30によって、第2退避位置P1からび第2進出位置P2の範囲内で駆動される。
第1ジェットタブ20が第1退避位置P1にあり、第2ジェットタブ20が第2退避位置P1にあるとき、第1先端部23と第2先端部23とは、互いに向き合っていない。
第1ジェットタブ20が第1退避位置P1から第1進出位置P2へ向けて駆動され、かつ、第2ジェットタブ20が第2退避位置P1から第2進出位置P2へ向けて駆動されるとき、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20は、互いが第1対称面SURに対して単調的に近接する方向に、かつ第1対称面SURに対して対称に回転される(駆動される)。具体的には、第1ジェットタブ20は、第1退避位置P1(実線)から第1進出位置P2(想像線)に向けて回転する。これと同時に、第2ジェットタブ20も、第2退避位置P1(実線)から第2進出位置P2(想像線)に向け回転する。
【0042】
このことを実現するためには、次の関係が成り立てばよい。第1回転軸21と第2回転軸21との間の距離は、D5=D2+D4で表される。距離D5は、回転軸間距離と呼ばれ、一定の値である。第1先端部23の面中心28と第2先端部23の面中心28との間の距離は、D6で表される。距離D6は、先端部間距離と呼ばれる。ここで、面中心とは、対応する先端部23の図心を指す。第1ジェットタブ20が第1退避位置P1にあり、かつ第2ジェットタブ20が第2退避位置P1にあるとき、先端部間距離D6は、回転軸間距離D5よりも大きい。
【0043】
上述の関係は、次のようにも表現される。距離D1及び距離D2の間に、次の関係が成り立てばよい。第1ジェットタブ20において、第1最先端24と第1回転軸21との間の距離D1が第1回転軸21と第1対称面SURとの間の距離D2よりも大きい。その上、距離D3及び距離D4の間に、次の関係が必要である。第2ジェットタブ20において、第2最先端24と第2回転軸21との間の距離D3は、第2回転軸21と第1対称面SURとの間の距離D4よりも大きい。
【0044】
5.2.動作(推力偏向方法)
駆動部30による第1タブ対TABの動作は、次の通りである。推力偏向時に、駆動部30は、先端部間距離D6が単調に減少するように、第1ジェットタブ20を第1退避位置P1から第1進出位置P2へ駆動し、かつ第2ジェットタブ20を第2退避位置P1から第2進出位置P2へ駆動する。これとは逆に、推力偏向の解除時に、駆動部30は、先端部間距離D6が単調に増加するように、第1ジェットタブ20を第1進出位置P2から第1退避位置P1へ駆動し、かつ第2ジェットタブ20を第2進出位置P2から第2退避位置P1へ駆動する。
【0045】
5.3.効果
1個のタブ対TABに上述の関係がある。このことにより、次の効果が得られる。1つ目は、流体負荷トルクT及び曲げモーメントMの低減に関する。本実施の形態では、2個のジェットタブ20で1つのタブ対TABが構成されている。ここで、任意の1個のタブ対TABのみが進出位置にある場合を仮定する。ある重なり面積Aを1個のジェットタブで得ようとすれば、1個のジェットタブの先端部の表面積(図4における先端部23aの面積)が本実施の形態のものよりも大きくなる。これは、1個のジェットタブにかかる力F2(図4を参照)の増大を意味し、推力偏向装置の小型化及び軽量化を妨げる。そこで、本実施の形態では、1個のジェットタブ20にかかる力F2を低減させるため、2個のジェットタブ20で1つのタブ対TABが構成されている。その結果、曲げモーメントMが低減されると共に、流体負荷トルクTも低減される。
【0046】
2つ目は、偏向力の増大に関する。この観点を図7及び図8に関連付けて説明する。図7では、第1の実施の形態によって得られる偏向力を取り上げる。図8では、比較例を取り上げる。
【0047】
図7は、第1の実施の形態に係る推力偏向装置1によって得られる偏向力の説明図である。なお、説明を明確にするため、図7は、進出位置にある第1タブ対TABのみを想像線で図示している。他のタブ対TAB−TABは、退避位置にある。
【0048】
第1ジェットタブ20によって、第1偏向力F20が発生する。第1偏向力F20は、ノズル出口11を含む面において、ノズル10の中心軸Oから第1先端部23の面中心28の向きに働く。第1偏向力F20は、ベクトル量であり、X軸方向の成分とY軸方向の成分を持つ。第1偏向力F20がY軸となす角は、θで表される。なお、Y軸は、第1対称面SURに対して平行な軸であることに留意されたい。
【0049】
第2ジェットタブ20によって、第2偏向力F20が発生する。第2ジェットタブ20によって発生する第2偏向力F20は、ノズル出口11を含む面において、ノズル10の中心軸Oから第2先端部23の面中心28への向きに働く。第2偏向力F20がY軸となす角は、第1偏向力F20の場合と同じθで表される。このことは、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20の形状及び配置の対称性に基づく。
【0050】
第1タブ対TABによって発生する偏向力F20は、第1偏向力F20と第2偏向力F20との合力である。したがって、図7に示すように、偏向力F20は、ノズル10の中心軸Oからノズル内壁面12の方向(Y軸の負方向)に発生する。
【0051】
図8は、他の観点の推力偏向装置1Aによって得られる偏向力の説明図である。図8に示す推力偏向装置1Aは、第1回転軸21Aの回りに回転する第1ジェットタブ20Aと、第2回転軸21Aの回りに回転する第2ジェットタブ20Aとを備える。図8は、第1ジェットタブ20A及び第2ジェットタブ20Aの双方が進出位置にある場合を想像線で図示している。基本的には、図8に示す推力偏向装置1Aは、図7に示すものと同様の構成をとる。したがって、図7に示す推力偏向装置1と、図8に示す推力偏向装置1Aとの間では、重なり面積Aに変わりはない。ただし、次の点に大きな差異がある。
【0052】
1つ目の差異は、2つの回転軸の間の距離である。図8に示す第1回転軸21Aと第2回転軸21Aとの間の距離は、図7に示す第1回転軸21と第2回転軸21との間の距離よりも大きい。
2つ目の差異は、2個のジェットタブが退避位置から進出位置へ移動する際の回転方向において、図8に示す第1ジェットタブ20A及び第2ジェットタブ20Aの回転方向が図7に示すものと逆である。
【0053】
つまり、第1ジェットタブ20A及び第2ジェットタブ20Aの双方が退避位置にあるとき、第1先端部23Aと第2先端部23Aとが互いに向き合うために、図8に示す配置がとられている。このことは、本実施の形態の推力偏向装置1とは異なる。
【0054】
上記2つの差異に起因して、偏向力Fの大きさも変わる。図8では、第1偏向力F20AがY軸となす角は、θである。この角θは、図7に示す角θよりも大きい(θ>θ)。このことは、第2偏向力F20についても同様である。したがって、偏向力F20A(=F20A+F20A)は、図7に示す偏向力F20よりも小さい(F20A<F20)。
【0055】
上述のように、図7に示す推力偏向装置1と、図8に示す推力偏向装置1Aとの間では、重なり面積Aに変わりはない。それにもかかわらず、図7に示す偏向力F20の方が、図8に示す偏向力F20Aよりも大きい。換言すれば、図7の例(本実施形態)では、同じ偏向力を得るために、図8の例におけるジェットタブよりも小さなジェットタブで十分である。このことは、駆動部の小型化だけではなく、推力偏向装置の小型化及び軽量化につながる。
【0056】
3つ目は、偏向力のずれ(ミスアライメントとも呼ばれる)が極めて小さい点にある。偏向力のずれとは、対応する対称面SURと偏向力との間の差異を言う。この点については、次の理由が挙げられる。第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20が対称面SURに対して対称な形状をしている。その上、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20が互いに第1対称面SURに対して対称となるように駆動される。したがって、図7に示すように、第1対称面SURに対して互いに対称な2つの偏向力F20及びF20が得られる。その結果、両者の合力である偏向力F20と第1対称面SURとの差異は、ゼロであるか、または非常に小さい。この対称性は、偏向力のずれを小さくするために寄与する事項である。
【0057】
6.本実施の形態の詳細
6.1.退避位置及び進出位置
退避位置及び進出位置の詳細は、次の通りである。第1退避位置P1とは、第1ジェットタブ20がノズル出口11に重なっている部分が存在しないように、第1ジェットタブ20がノズル出口11の外部にある位置をいう。例えば、第1退避位置P1は、第1ジェットタブ20の全体がノズル底部13に重なる位置である。
一方、第1進出位置P2とは、第1ジェットタブ20の一部(第1先端部23)がノズル出口11に重なる位置をいう。具体的には、第1進出位置P2は、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20による推力の偏向力が最大となる位置である。
【0058】
第2退避位置P1とは、第2ジェットタブ20がノズル出口11に重なっている部分が存在しないように、第2ジェットタブ20がノズル出口11の外部にある位置をいう。具体的に言えば、第2退避位置P1は、第2ジェットタブ20の全体がノズル底部13に重なる位置である。
一方、第2進出位置P2とは、第2ジェットタブ20の一部(第2先端部23)がノズル出口11に重なる位置をいう。具体的には、第2進出位置P2は、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20による推力の偏向力が最大となる位置である。
【0059】
なお、次のことに留意されたい。要求される偏向力が設計上の最大偏向力よりも小さい場合も想定される。この場合、第1進出位置P2は、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20による推力の偏向力が、要求される偏向力となる位置である。同様に、第2進出位置P2は、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20による推力の偏向力が、要求される偏向力となる位置である。
【0060】
以下、説明を明確にするため、次の表現が用いられることがある。(1)「第1タブ対TABが退避位置にある」。このことは、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20が第1退避位置P1及び第2退避位置P1にそれぞれある状態を指している。(2)「第1タブ対TABが進出位置にある」。このことは、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20が第1進出位置P2及び第2進出位置P2にそれぞれある状態を指している。言うまでもなく、以上の表現は、他のタブ対TAB‐TABについても適用される。
【0061】
6.2.ジェットタブ
第1ジェットタブ20について説明する。第1先端部23は、第1ジェットタブ20の一部である。詳細には、第1先端部23は、第1ジェットタブ20が第1進出位置P2にあるときに、第1ジェットタブ20がノズル出口11と重なっている部分である。第1基端部22は、第1ジェットタブ20の全体から第1先端部23を除いた領域である。第1ジェットタブ20は、その形状にかかわらず、第1回転軸21から最も離れた第1最先端24を持つ。
【0062】
第2ジェットタブ20の構成について説明する。第2先端部23は、第2ジェットタブ20の一部である。詳細には、第2先端部23は、第2ジェットタブ20が第2進出位置P2にあるときに、第2ジェットタブ20がノズル出口11と重なっている部分である。第2基端部22は、第2ジェットタブ20の全体から第2先端部23を除いた領域である。第2ジェットタブ20は、その形状にかかわらず、第2回転軸21から最も離れた第2最先端24を持つ。
【0063】
6.3.推力偏向装置の側方断面
図9は、第1ジェットタブ20の周辺における推力偏向装置の側方断面図である。図9は、第1ジェットタブ20が第1進出位置P2にあるときを図示している。
【0064】
第1ジェットタブ20は、ノズル底部13の後方に配置されている。ノズル底部13は、ノズル10の底部を構成する部分である。説明を簡単にするため、ノズル底部13は、Z方向から見て、平坦に描かれている。第1回転軸21は、シャフト51を介して駆動部30に連結されている。なお、シャフト51自体が第1回転軸21であってもよい。駆動部30は、例えば、燃焼ガスG1が流れる箇所とは異なるノズル10の中に配置されている。
【0065】
第1ジェットタブ20の表面25とノズル底部13との間には、わずかなギャップ(マージン)GPがある。ギャップGPの幅は、ギャップGPに流れ込む燃焼ガスG1ができるだけ少なく、かつ第1ジェットタブ20がノズル底部13に接触することなく滑らかに回転する範囲内であればよい。なお、ギャップGPが大きくなるほど、ギャップGPに流れ込む燃焼ガスG1の量が増えることに留意されたい。その結果、高圧領域REG(図1を参照)の圧力が減少すると共に、偏向力Fも小さくなる。
【0066】
6.4.ジェットタブの配置
第1−第4タブ対TAB−TABの全てが同時に駆動された場合であっても、第1−第4タブ対TAB−TABの各々は、他のいずれのタブ対TABとも軌跡が干渉することのないように、タブ対TAB−TABの各々を構成する各ジェットタブ20の配置が設定されている。
【0067】
その詳細は、次の通りである。図10は、推力偏向装置1を後方からみた図である。図10に示すように、ノズル出口11の後方から見て、ノズル出口11の形状は円である。第1‐第8ジェットタブ20‐20、つまり、第1−第4タブ対TAB−TABは、ノズル底部13の形状に沿って、等間隔に配置されている。ここで、退避位置にある第1タブ対TABに着目すると(想像線を参照)、第1ジェットタブ20の第1先端部23は、隣接する第8ジェットタブ20の第8先端部23と向き合っている。第2ジェットタブ20の第2先端部23は、隣接する第3ジェットタブ20の第3先端部23と向き合っている。
【0068】
なお、ノズル出口11の形状は、一例である。ノズル出口11の形状が他の形状(例えば、円以外の形状)であっても差支えはない。
【0069】
第1−第4タブ対TAB−TABは、周方向にφ=90度間隔で配置されている。この間隔(φ)であれば、第1‐第8ジェットタブ20‐20の各々が周方向に隣接する2個のジェットタブ20と退避位置で接触することはない。更に、第1−第4タブ対TAB−TABの各々が退避位置から進出位置へ(又はその逆に)駆動されるときも、第1‐第8ジェットタブ20‐20の各々が、周方向に隣接する2個のジェットタブ20と接触することはない。
【0070】
6.5.ジェットタブの形状
高圧領域REGから偏向力の発生に寄与しない方向へ燃焼ガスが漏れることを抑制するため、各ジェットタブ20は、次の形状を持つ。図11は、進出位置にある第1タブ対TABの外観図である。図11に示すように、第1ジェットタブ20は、第1内側面27を更に備える。第2ジェットタブ20は、第2内側面27を更に備える。説明の便宜上、第1最先端24は、第1ジェットタブ20の表面25にあると定義される。第2最先端24も、第2ジェットタブ20の表面25にあると定義される。
【0071】
先ず、第1内側面27及び第2内側面27に着目する。第1内側面27の形状は、第1先端部23から第1基端部22にかけて平面部を備える形状である。第1タブ対TABが進出位置にあるとき、第1内側面27は、第1対称面SURに対して平行である。
同様に、第2内側面27の形状も、第2先端部23から第2基端部22にかけて平面部を備える形状である。第1タブ対TABが進出位置にあるとき、第2内側面27は、第1対称面SURに対して平行である。
したがって、第1タブ対TABが進出位置にあるとき、第1内側面27及び第2内側面27は、少なくともその一部(平面部)が互いに対面すると共に、互いに平行である。
【0072】
このとき、第1内側面27及び第2内側面27の間には、ギャップ(マージン)GP2が存在する。ギャップGP2は、第1タブ対TABが退避位置から進出位置へ駆動されるとき、第1内側面27及び第2内側面27が互いに衝突するのを防ぐ役割を持つ。なお、ギャップGP2、すなわち、第1内側面27と第2内側面27との間の距離は、例えば、1mmから5mm程度でもよい。この距離は、第1内側面27及び第2内側面27が互いに衝突しない程度の距離であればよい。ギャップGP2が1mm以上、5mm以下であるとき、高圧領域REGから偏向力の発生に寄与しない方向への燃焼ガスの漏れが十分に抑制される。
【0073】
上述の説明にて、原則、偏向力の大きさがジェットタブ20の形状に依存しないことを述べた。しかしながら、ジェットタブ20の形状が完全に任意でよいわけではない。
第1‐第8ジェットタブ20‐20の各々が、その位置にかかわらず、周方向に隣接する2個のジェットタブ20と接触することのない形状を持つ必要がある。
その上、第1‐第8ジェットタブ20‐20の各々が、中心軸Oに対して対向するジェットタブ20と接触することのない形状を持つ必要がある。
【0074】
そこで、第1−第4タブ対TAB−TABの全てが同時に駆動された場合であっても、第1−第4タブ対TAB−TABの各々は、他のいずれのタブ対TABとも軌跡が干渉することのないように、各タブ対TAB−TABを構成する各ジェットタブ20の形状が設定されている。
【0075】
その詳細は、次の通りである。ここでは、第1タブ対TABに焦点を当てる。まず、第1−第4タブ対TAB−TABの各々の間には、第1‐第4平面SUR‐SURがある。第1平面SURは、第1タブ対TABと第2タブ対TABとの間の平面である。同様に、第4平面SURは、第1タブ対TABと第4タブ対TABとの間の平面である。第1タブ対TABが退避位置から進出位置(又はその逆)に駆動されたとき、第1最先端24及び第2最先端24の双方が描く軌跡(図10における破線を参照)が、第1平面SURと第4平面SURとの内側に存在する必要がある。
【0076】
ここで、第1先端部23及び第2先端部23に着目する。第1先端部23は、例えば、その先端(第1最先端24)に向かうにつれて、先細る形状を持っている。同様に、第2先端部23も、その先端(第2最先端24)に向かうにつれて、先細る形状を持っている。
【0077】
このことにより、第1タブ対TABが退避位置から進出位置へ駆動されるとき、第1最先端24が描く軌跡(図10の破線を参照)が第1対称面SURと第4平面SURの面内に収まる。これと共に、第2最先端24が描く軌跡が第1対称面SURと第1平面SURの面内に収まる。その上、第1先端部23の面中心28が第1基端部22側により近づく共に、第2先端部23の面中心28が第2基端部22側により近づく。その結果、スパンL2(図4参照)が短くなり、曲げモーメントMが減る。
【0078】
次に、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20の厚みに着目する。第1ジェットタブ20において、第1先端部23の厚み(TH1)は、第1基端部22の厚み(TH2)よりも薄い。同様に、第2ジェットタブ20において、第2先端部23の厚み(TH1)は、第2基端部22の厚み(TH2)よりも薄い。具体的には、第1ジェットタブ20の厚みは、第1基端部22から第1先端部23へ向かうにつれて、徐々に薄くなる。第2ジェットタブ20の厚みも、第2基端部22から第2先端部23へ向かうにつれて、徐々に薄くなる。このことにより、必要最小限の厚みで燃焼ガスに押される力F2(図4を参照)に耐えることができるという利点が得られる。
【0079】
6.6.ジェットタブの他の形状
上述の趣旨から、次の形状を持つジェットタブでもよいことが分かる。図12は、ジェットタブ20の他の形状を例示する外観図である。図12に示すように、第1ジェットタブ20Bは、第1基端部22から第1先端部23に向かうにつれて、徐々に先細る形状を持っている。同様に、第2ジェットタブ20Bも、第2基端部22から第2先端部23に向かうにつれて、徐々に先細る形状を持っている。この例でも、第1最先端24と第1回転軸21との間の距離D1は、第1回転軸21と第1対称面SURとの間の距離D2よりも大きい。その上、第2最先端24と第2回転軸21との間の距離D3は、第2回転軸21と第1対称面SURとの間の距離D4よりも大きい。
【0080】
理論上は、推力偏向装置1で用いられるジェットタブの形状は、全てが同一でなくてもよい。しかしながら、実用的な観点では、第1−第8ジェットタブ20−20の形状は、全て同じであることが望ましい。
【0081】
6.7.駆動系
6.7.1.構成
推力偏向装置1の駆動系について説明する。図13は、推力偏向装置1の駆動系を示すブロック図である。推力偏向装置1は、第1−第8駆動部30−30と、第1−第8駆動機構33−33と、駆動制御部40とを備える。
【0082】
第1−第8駆動部30−30の各々は、典型的には、モータで構成されている。第1−第8駆動部30−30は、第1‐第8駆動機構33‐33にそれぞれ連結されている。第1−第8駆動部30−30は、駆動制御部40の制御の下、駆動力(回転力)を発生させる。第1−第8駆動部30−30のうち、駆動制御部40の制御対象である駆動部30は、発生させた駆動力を対応する駆動機構33に与える。
【0083】
第1駆動機構33は、第1ジェットタブ20を第1回転軸21の回りに回転させるように構成されている。他の駆動機構33も、第1駆動機構33と同様の構成をとる。
【0084】
その詳細は、次の通りである。第2駆動機構33は、第2ジェットタブ20を第2回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第3駆動機構33は、第3ジェットタブ20を第3回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第4駆動機構33は、第4ジェットタブ20を第4回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第5駆動機構33は、第5ジェットタブ20を第5回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第6駆動機構33は、第6ジェットタブ20を第6回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第7駆動機構33は、第7ジェットタブ20を第7回転軸21の回りに回転させるように構成されている。第8駆動機構33は、第8ジェットタブ20を第8回転軸21の回りに回転させるように構成されている。
【0085】
駆動制御部40は、駆動系全体の制御を統括する。駆動制御部40は、次のように構成されている。駆動制御部40は、例えば、マイクロプロセッサ、メモリ及び種々の電子回路で構成されている。駆動制御部40は、第1−第8駆動部30−30にそれぞれ電気的に接続されている。
【0086】
駆動制御部40は、第1−第8駆動部30−30のうち、駆動対象のタブ対TABに対応する複数の駆動部30を動作させる。例えば、所望する偏向力を得るのに必要なタブ対TABが第1タブ対TABである場合、駆動制御部40は、次の制御を実行する。駆動制御部40は、第1駆動部30及び第2駆動部30を同期制御することにより、第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20を第1対称面SURに対して対称に駆動する。
【0087】
6.7.2.動力分割機構(駆動系の変形例)
上述の例では、1個のジェットタブ20に対して1つの駆動部30が設けられている。推力偏向装置の小型化及び軽量化の観点からは、駆動部30の個数が少ないことが望ましい。以下に、2個のジェットタブ20に対して1つの駆動部30が設けられている例を挙げる。その詳細は、次の通りである。
【0088】
図14は、動力分割機構50の外観図である。図14は、第1タブ対TABに対応する動力分割機構50を図示している。実際には、1つのタブ対TABに対して、1つの動力分割機構50が設けられている。つまり、推力偏向装置1は、第1−第4タブ対TAB−TABの各々に対して動力分割機構50を備える。
【0089】
動力分割機構50は、駆動部30の駆動力を第1ジェットタブ20及び第2ジェットタブ20に同時に伝達する機構である。動力分割機構50は、次のように構成されている。
【0090】
動力分割機構50は、第1シャフト51と、第1歯車52と、第2シャフト51と、第2歯車52とを備える。第1シャフト51の基端部511は、解放されている。
第1シャフト51の先端部512は、第1ジェットタブ20に連結されている。なお、第1シャフト51及び第1ジェットタブ20の双方が一体成型された一つの部材であってもよい。第1歯車52は、第1シャフト51に設けられている。
第2シャフト51の基端部511は、第1駆動部30に連結されている。第2シャフト51の先端部512は、第2ジェットタブ20に連結されている。なお、第2シャフト51及び第2ジェットタブ20の双方が一体成型された一つの部材であってもよい。第2歯車52は、第2シャフト51に設けられている。その上で、第1歯車52は、第2歯車52と噛み合うように配置されている。ただし、第1歯車52の回転方向が第2歯車52の回転方向と逆向きとなるように、第1歯車52は、第2歯車52と噛み合っている。
【0091】
動力分割機構50の動作は、次の通りである。ここでは、第1タブ対TABが退避位置から進出位置へ駆動される場合を例に挙げる。先ず、駆動制御部40は、第1駆動部30に制御信号を送る。制御信号は、例えば、ハイレベルの電気信号である。制御信号は、第1タブ対TABが進出位置に駆動されるまで、第1駆動部30に送られる。第1駆動部30は、駆動制御部40から制御信号を受けると、第2シャフト51を回転させる。この回転方向は、X軸(正)からY軸(正)の方向である。第2シャフト51の回転は、制御信号を受けている期間行われる。第2シャフト51が回転すると、第2シャフト51の回転方向と同方向に第2歯車52も回転する。そして、第2歯車52の回転は、第1歯車52に伝達される。ただし、第1歯車52の回転方向は、第2歯車52の回転方向と逆向きである。第1歯車52が回転すると、第2シャフト51の回転方向と逆向きに同期回転して、第1シャフト51も回転する。
【0092】
2個のジェットタブ20に対して1つの駆動部30が設けられている。したがって、図13に示す構成を図14に示す構成と比べると、駆動部30の個数が半分である。このことは、推力偏向装置1の軽量化及び小型化に有益である。
【0093】
以上、第1の実施の形態によれば、ジェットタブの小型化及び駆動部の小型化が可能となる。このことは、推力偏向装置の小型化及び軽量化につながる。
【0094】
7.第2の実施の形態
第1の実施の形態では、8個のジェットタブ20−20について説明した。ジェットタブ20の個数は、設計上の要請により、8個よりも多い場合がある。第2の実施の形態は、この場合を例示する。
【0095】
図15は、第2の実施の形態に係る推力偏向装置1Bを後方からみた図である。本実施の形態では、12個のジェットタブ20−2012が設けられている。つまり、6個のタブ対TAB−TABがある。各タブ対TABを構成する2個のジェットタブ20の間に、第1‐第6対称面SUR‐SURがある。
【0096】
以下に、第1の実施の形態との差異について説明する。第5タブ対TABが第9ジェットタブ20及び第10ジェットタブ2010で構成されている。第6タブ対TABが第11ジェットタブ2011及び第12ジェットタブ2012で構成されている。
【0097】
第1−第6タブ対TAB−TABは、周方向にφ=60度間隔で配置されている。本実施の形態においても、第1−第6タブ対TAB−TABの各々が、他のいずれのタブ対TABとも軌跡が干渉することのないように、各タブ対TAB−TABを構成する各ジェットタブ20の配置が設定されている。
【0098】
本実施の形態のように、ジェットタブ20の個数が増えても、第1実施の形態で述べた効果と同様のものが得られる。
【0099】
8.第3の実施の形態
第3の実施の形態では、ジェットタブ20の個数が8個よりも少ない場合を例示する。図16は、第3の実施の形態に係る推力偏向装置1Cを後方からみた図である。本実施の形態では、6個のジェットタブ20−20が設けられている。つまり、3個のタブ対TAB−TABがある。各タブ対TABを構成する2個のジェットタブ20の間に、第1‐第3対称面SUR‐SURがある。
【0100】
第1−第3タブ対TAB−TABは、周方向にφ=120度間隔で配置されている。本実施の形態においても、第1−第3タブ対TAB−TABの各々が、他のいずれのタブ対TABとも軌跡が干渉することのないように、各タブ対TAB−TABを構成する各ジェットタブ20の配置が設定されている。
【0101】
本実施の形態のように、ジェットタブ20の個数が減っても、第1実施の形態で述べた効果と同様のものが得られる。
【0102】
9.変形例1
駆動部30の個数を減らすために、1つのタブ対TABが2個以上のジェットタブ20で構成されていてもよい。なお、ジェットタブ20の個数は、偶数個(例えば、4個)であることに留意されたい。この場合、1つの駆動部30が、その個数のジェットタブ20を駆動する。このことは、動力分割機構50に工夫を凝らすことで可能となる。例えば、複数の歯車を更に設け、これら複数の歯車を好適に組み合わせることが考えられる。ただし、1つのタブ対TABを構成するジェットタブ20の個数が増えるほど、駆動系の機構が複雑になりやすい。
【0103】
10.変形例2
駆動部30の個数を減らすために、複数のタブ対TAB(例えば、2個)が1つの駆動部30により駆動されてもよい。この場合も、変形例1と同様に、動力分割機構50に工夫を凝らすことで可能となる。ただし、1つの駆動部30により駆動されるタブ対TABの個数が増えるほど、駆動系の機構が複雑になりやすい。
【0104】
11.第4の実施の形態
第1の実施の形態に係る推力偏向装置1は、ミサイルに例示される飛しょう体に好適である。図17は、第4の実施の形態に係る飛しょう体6の外観図である。飛しょう体6は、第1の実施の形態に係る推力偏向装置1と、複数の操舵翼61とを備える。飛しょう体6が推力偏向装置1を備えているので、飛しょう体6自体の小型化及び軽量化に有益である。無論、推力偏向装置1の代わりに、第2又は第3実施の形態に係る推力偏向装置1B、1Cを用いることができる。
【0105】
本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、本発明に種々の変更を加えることができる。矛盾が生じない範囲で、上述の実施の形態及び変形例の全てを好適に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0106】
1…推力偏向装置、
10…ノズル
11…ノズル出口
20…第1ジェットタブ、20…第2ジェットタブ
21…第1回転軸、22…第2回転軸
22…第1基端部、22…第2基端部
23…第1先端部、23…第2先端部
24…第1ジェットタブの最先端、24…第2ジェットタブの最先端
30…駆動部
40…駆動制御部
50…動力分割機構
O…ノズルの中心軸
P1…第1退避位置、P1…第2退避位置
P2…第1進出位置、P2…第2進出位置
SUR‐SUR…対称面
SUR‐SUR…平面
TAB…タブ対
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17