(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来のロック装置では、フォークを肉薄にしつつ、強度の向上と、フォークとポールとの確実な噛み合いと、フォークとカムとの確実な噛み合いを実現することが難しいという問題がある。
【0010】
すなわち、特許文献1記載のロック装置では、ラッチ面のフォーク軸心方向の長さは、ストッパ面のフォーク軸心方向の長さとカム面のフォーク軸心方向の長さとの合計と略同一に設定され、ストッパ面のフォーク軸心方向の長さよりも大きくなっている。このため、このロック装置では、フォークが肉厚になるので、小型化が難しい。
【0011】
また、ラッチ面とストッパ面とが当接する際、ラッチ面よりもフォーク軸心方向の長さが小さいストッパ面によって、ラッチ面に局所的に過度の負荷が作用し易く、ラッチ面が局所的に凹む不具合により、フォークとポールとの圧力差による噛み合い外れ等が生じるおそれがある。
【0012】
さらに、板厚公差のばらつきやプレスダレが大きくなると、フォークのカム当接部とカムのカム面との噛み合い、又はフォークのラッチ面とポールのストッパ面との噛み合いが不足するおそれもある。
【0013】
また、特許文献2記載のロック装置では、カム当接部がフォークにおけるラッチ面及びカム軸心から離間する位置に凸設されているため、カムについて、カム軸心からカム面までの距離を長くしなければならず、カム当接部に対してカム面がずれ易くなったり、カムが変形し易くなったりするおそれがある。このため、このロック装置においても、フォークのカム当接部とカムのカム面との噛み合いに不安がある。
【0014】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、小型化を実現しつつ、確実なロック状態を実現できる車両用シートのロック装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の車両用シートのロック装置は、シートの少なくとも一部を構成する可動体を車体に固定するための車両用シートのロック装置であって、
前記可動体及び前記車体の一方に設けられ、前記可動体及び前記車体の他方に設けられたストライカが進入可能な進入口が形成されたベースプレートと、
フォーク軸心周りで揺動可能に前記ベースプレートに支持され、前記フォーク軸心の径方向に延びるラッチ面を有するフォークと、
前記フォーク軸心と平行なポール軸心周りで揺動可能に前記ベースプレートに支持され、前記ポール軸心の周方向に延びるストッパ面を有するポールとを備え、
前記フォークは、前記進入口内に前記ストライカを保持するラッチ位置と、前記進入口内から前記ストライカが離反することを許容するアンラッチ位置との間で変位可能であり、
前記ポールは、前記ラッチ位置にある前記フォークの前記ラッチ面に前記ストッパ面が対向して前記フォークが前記ラッチ位置から前記アンラッチ位置に変位することをブロックするブロック位置と、前記ラッチ位置にある前記フォークの前記ラッチ面から前記ストッパ面が離間して前記フォークが前記ラッチ位置から前記アンラッチ位置に変位することを許容するアンブロック位置との間で変位可能であり、
前記ポールは、前記可動体を移動させるための操作に連動して前記アンブロック位置に変位する前記ロック装置において、
前記ポール軸心と同軸又は平行であるカム軸心周りで揺動可能に前記ベースプレート又は前記ポールに支持され、前記フォーク軸心から離間するにつれて前記カム軸心から離間するカム面を有するカムと、
前記カム面を前記フォーク軸心に接近させるように前記カムを付勢する付勢手段とをさらに備え、
前記フォークは、前記ラッチ面に対して前記フォーク軸心とは反対側から隣接するカム当接部を有し、
前記カム面は、前記フォークが前記ラッチ位置にある状態で前記カム当接部に当接可能であり、
前記ラッチ面のうちの少なくとも前記フォーク軸心に近い部位の前記フォーク軸心方向の長さは、前記ストッパ面の前記フォーク軸心方向の長さと略同一に設定され、
前記フォークには、前記フォーク軸心方向において前記ストッパ面よりも前記カム面側に迫り出して前記カム当接部を形成する段部が設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明の車両用シートのロック装置では、上記構成により、フォークの厚みをポールの厚みと略同一とすることでラッチ面を形成しつつ、フォークに段部を設けることで、ラッチ面に対してフォーク軸心とは反対側から隣接する位置にカム当接部を形成できる。これにより、このロック装置では、特許文献1記載のロック装置と比較して、フォークを肉薄にできる。
【0017】
また、このロック装置では、ラッチ面とストッパ面とが当接する際、フォーク軸心方向の長さがラッチ面と略同一に設定されたストッパ面によって、ラッチ面に局所的に過度の負荷が作用し難くなり、ラッチ面が局所的に凹み難いため、フォークとポールとの圧力差による噛み合い外れ等が生じ難い。また、このロック装置では、ストッパ面のフォーク軸心方向の長さとカム面のフォーク軸心方向の長さとの合計に応じて、フォークの段部の高さを任意に大きく設定したり、小さく設定したりすることができるため、フォークのカム当接部とカムのカム面との噛み合い、又はフォークのラッチ面とポールのストッパ面との噛み合いが不足し難い。
【0018】
さらに、このロック装置では、カム当接部がラッチ面に隣接することから、特許文献2記載のロック装置と比較して、カム軸心からカム面までの距離を短くすることができる。このため、カム当接部に対してカム面がずれ難く、また、カムが変形し難い。
【0019】
したがって、本発明の車両用シートのロック装置では、小型化を実現しつつ、確実なロック状態を実現できる。
【0020】
フォークは、厚みが一定である金属製の素材の一部がクランク状に屈曲されて段部とされていることが望ましい。この構成によれば、プレス加工等により、段部を容易に形成できるので、製造コストの低廉化を実現できる。
【0021】
カムは、ポール軸心と平行であるカム軸心周りで揺動可能にポールに支持されていることが望ましい。そして、カム軸心は、ラッチ面に対してポール軸心よりも接近した位置に配置されていることが望ましい。この構成によれば、カムが小さくなるので、小型化を実現できる。また、カムが小さくなることによって、カム軸心からカム面までの距離が短くなり、カム面がカム当接部に対してずれ難くなる。その結果、このロック装置では、ロック状態でのガタつきを確実に抑制できる。また、カム軸心からカム面までの距離が小さくなれば、カム面に衝撃が加わった時でもカムが変形し難くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の車両用シートのロック装置によれば、小型化を実現しつつ、確実なロック状態を実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0025】
(実施例)
図1及び
図2に示すように、実施例のロック装置1は、本発明の車両用シートのロック装置の具体的態様の一例である。ロック装置1は、自動車等である車両の車内後部側に設けられたシート5に適用されている。シート5は、シートクッション5Aとシートバック6とを有している。シートバック6は、本発明の「可動体」の一例である。
【0026】
なお、
図1において、紙面手前側が車両の前側であり、紙面奥側が車両の後側である。また、紙面左側が車両の外側であり、紙面右側が車両の内側である。そして、
図2以降の各図に示す前後方向、車両内外方向及び上下方向は、すべて
図1に対応させて表示する。また、ロック装置1の構成について説明する際の前後方向及び上下方向は、
図1に示すようにシートバック6が起立した状態におけるロック装置1の姿勢を基準とする。
【0027】
図1及び
図2に示すように、シートクッション5Aは、車体9の床面に固定されている。シートバック6は、シートクッション5Aの後端側で車両内外方向に延びる揺動軸心X6周りで揺動可能にシートクッション5Aに支持されている。ロック装置1は、
図1に示すように起立した状態のシートバック6における上端側かつ車両外側の角部の内部に組み付けられている。車体9には、
図1に示すようにシートバック6が起立した状態においてロック装置1に対応する位置に、ストライカ3が設けられている。ストライカ3は略U字形状の鋼材であり、車体9から車両内側に略水平に突出している。
【0028】
ロック装置1は、
図1に示すようにシートバック6が起立した状態において、ストライカ3に係合することにより、シートバック6を車体9に固定するロック状態となる。
図1に示すように起立した状態のシートバック6における上端側かつ車両外側の角部には、ロック解除ノブ68Nが上向きに突出している。ロック装置1は、ロック解除ノブ68Nを引き上げる操作により、ストライカ3に係合しなくなり、シートバック6の固定を解除する。その結果、
図2に示すように、シートバック6が前側に倒れることが許容される。ロック解除ノブ68Nを引き上げる操作は、本発明の「可動体を移動させるための操作」の一例である。ロック解除ノブ68Nは、アンロックを示すインジケーターを兼ねている。
【0029】
より詳しくは、
図3〜
図13に示すように、ロック装置1は、ベースプレート10、フォーク20、ポール30、カム40、オープンレバー60、連結部材70、カバー80、引張りコイルバネ50、51及び捩じりコイルバネ52を備えている。引張りコイルバネ50は、本発明の「付勢手段」の一例である。
【0030】
図3〜
図9に示すように、ベースプレート10は、金属製であり、本実施例では肉厚な鋼板部材である。ベースプレート10は、平坦部11と屈曲部15とを有している。平坦部11は、前後方向及び上下方向に平坦に延在している。屈曲部15は、平坦部11の前端縁13から車両外側に屈曲し、次に前側に屈曲し、最後に車両内側に屈曲している。
【0031】
平坦部11には、進入口11Eが切り欠かれている。進入口11Eは、平坦部11における後端縁12から前端縁13に向かって凹んでいる。進入口11Eには、車体9に設けられたストライカ3が進入可能である。
【0032】
また、平坦部11には、
図3〜
図5、
図8及び
図9に示す2個の取付穴11M、11Nと、
図8及び
図9に示す2個の軸穴11G、11Hとが貫設されている。各取付穴11M、11Nは、進入口11Eを挟んで上側と下側とに位置している。軸穴11Gは、平坦部11における進入口11Eよりも下側、かつ平坦部11の前端縁13の近傍に位置している。軸穴11Hは、平坦部11における進入口11Eよりも上側、かつ平坦部11の後端縁12の近傍に位置している。
【0033】
図1〜
図3に示すように、シートバック6の内部には、金属パイプからなるフレーム7が設けられている。
図3に示すように、フレーム7には、上下一対の取付台座7A、7Bが溶接されている。上側の取付台座7Aは、上面側が開放された略箱型形状とされている。上側の取付台座7Aの車両外側を向く側面には、ねじ穴7Mが形成されている。下側の取付台座7Bは、下面側が開放された略箱型形状とされている。下側の取付台座7Bの車両外側を向く側面には、ねじ穴7Nが形成されている。
【0034】
2本のボルト91がベースプレート10の各取付穴11M、11Nに挿通され、さらに各取付台座7A、7Bのねじ穴7M、7Nに螺入されることにより、ベースプレート10がシートバック6のフレーム7に組み付けられている。
【0035】
図3〜
図9に示すように、ベースプレート10の平坦部11には、フォーク支持軸29とポール支持軸39とが凸設されている。フォーク支持軸29及びポール支持軸39は、金属製の多段円柱軸体である。
【0036】
図3及び
図5〜
図9に示すように、フォーク支持軸29の平坦部11側に位置する外側軸部29Uは、平坦部11の軸穴11Gに挿通されて加締められることにより、平坦部11に固定されている。フォーク支持軸29は、車両内側に突出して、フォーク軸心X20を規定している。ポール支持軸39の平坦部11側に位置する外側軸部39Uは、平坦部11の軸穴11Hに挿通されて加締められることにより、平坦部11に固定されている。ポール支持軸39は、車両内側に突出して、ポール軸心X30を規定している。
【0037】
図6〜
図9に示すように、フォーク20及びポール30は、金属製であり、本実施例では肉厚な鋼板部材である。
図13に示すように、フォーク20の厚みL27と、ポール30の厚みL37とは、略同一に設定されている。ここで、本発明において「略同一に設定されている」には、僅かに大きく設定されている場合や、僅かに小さく設定されている場合が含まれる。
【0038】
図8及び
図9に示すように、フォーク20には、軸穴20Hが貫設されている。ポール30には、軸穴30Hが貫設されている。フォーク支持軸29の外側軸部29U側がフォーク20の軸穴20Hに挿通されることにより、フォーク20がフォーク軸心X20周りで揺動可能にベースプレート10の平坦部11に支持されている。ポール支持軸39の外側軸部39U側がポール30の軸穴30Hに挿通されることにより、ポール30がポール軸心X30周りで揺動可能にベースプレート10の平坦部11に支持されている。
【0039】
図4〜
図9に示すように、オープンレバー60は、樹脂製であり、本実施例では熱可塑性樹脂の射出成形品である。
図8及び
図9に示すように、オープンレバー60の後端部には、軸穴60Hが貫設されている。オープンレバー60の前端部には、接続部60Rが形成されている。
図5、
図8及び
図9に示すように、接続部60Rには、ロッド68の下端部68Bが連結されている。
図3に示すように、ロッド68の上端部68Aには、ロック解除ノブ68Nが装着されている。ロッド68は、ロック解除ノブ68Nを引き上げる操作によって上向きに変位する。
【0040】
ポール支持軸39の平坦部11とは反対側に位置する内側軸部39T側がオープンレバー60の軸穴60Hに挿通されることにより、オープンレバー60がポール軸心X30周りで揺動可能にベースプレート10の平坦部11に支持されている。
【0041】
図5、
図8及び
図9に示すように、ポール30には、カム支持軸49が凸設されている。
図8及び
図9に示すように、カム支持軸49は、金属製の多段円柱軸体である。ポール30には、ポール軸心X30から径外方向に離間する位置に、軸穴30Jが貫設されている。カム支持軸49の平坦部11側に位置する外側軸部49Uは、ポール30の軸穴30Jに嵌入されることにより、ポール30に固定されている。カム支持軸49は、車両内側に突出して、ポール軸心X30と平行なカム軸心X40を規定している。
【0042】
図5〜
図9に示すように、カム40は、金属製であり、本実施例ではフォーク20及びポール30より薄い鋼板部材である。
図13に示すように、カム40の厚みL47は、本実施例では、フォーク20の厚みL27及びポール30の厚みL37に対して、略半分程度である。
【0043】
図8及び
図9に示すように、カム40には、軸穴40Hが貫設されている。カム支持軸49の外側軸部49U側がカム40の軸穴40Hに挿通されることにより、カム40がカム軸心X40周りで揺動可能にポール30に支持されている。
【0044】
図8に示すように、カム支持軸49のカム40を支持する部分の外径をD49とする。ポール支持軸39のポール30を支持する部分の外径をD39とする。カム支持軸49の外径D49はポール支持軸39の外径D39よりも小さく設定されている。
【0045】
図8、
図9及び
図12に示すように、オープンレバー60には、ポール軸心X30から径外方向に離間する位置に、軸穴60Jが貫設されている。カム支持軸49のポール30とは反対側に位置する内側軸部49Tは、オープンレバー60の軸穴60Jに嵌入されることにより、オープンレバー60に固定されている。つまり、オープンレバー60は、ポール軸心X30から径外方向に離間する位置で、カム支持軸49によってポール30と連結されている。これにより、オープンレバー60は、ポール軸心X30周りでポール30と一体に揺動可能となっている。
【0046】
図4〜
図9に示すように、連結部材70は、本実施例では、厚みがベースプレート10の厚みの略半分程度である鋼板部材である。連結部材70は、車両内外方向から見て、略L字形状に折れ曲がっている。
図8及び
図9に示すように、連結部材70には、2個の軸穴70G、70Hが貫設されている。各軸穴70G、70Hは、連結部材70の一端部と他端部とに位置している。
【0047】
図3、
図4、
図8及び
図9に示すように、カバー80は樹脂製であり、本実施例では熱可塑性樹脂の射出成形品である。
図8及び
図9に示すように、カバー80には、壁部81と、収容部80Aとが形成されている。収容部80Aは、壁部81に囲まれて、車両外側から車両内側に凹む空間である。また、カバー80には、2個の軸穴80G、80Hが貫設されている。
【0048】
図4〜
図9に示すように、フォーク支持軸29の平坦部11とは反対側に位置する内側軸部29Tは、捩じりコイルバネ52に挿通され、さらにカバー80の軸穴80Gに挿通された後、連結部材70の軸穴70Gに挿通されて加締められることにより、連結部材70に固定されている。ポール支持軸39の平坦部11とは反対側に位置する内側軸部39Tは、カバー80の軸穴80Hに挿通された後、連結部材70の軸穴70Hに挿通されて加締められることにより、連結部材70に固定されている。連結部材70は、ベースプレート10と係合することなく、フォーク支持軸29の内側端部29Tと、ポール支持軸39の内側端部39Tとを連結している。
【0049】
図4、
図8及び
図9に示すように、カバー80は、ベースプレート10の平坦部11と連結部材70とによって、車両内外方向から挟持されている。カバー80は、平坦部11における各取付穴11M、11Nの周辺を露出させている。
図8に示すように、カバー80の収容部80Aは、ベースプレート10によって車両外側から覆われている。収容部80Aは、フォーク20の少なくとも一部、ポール30の少なくとも一部及びオープンレバー60の少なくとも一部を収容している。
【0050】
図4、
図8及び
図9に示すように、カバー80の壁部81には、進入口81Eが形成されている。進入口81Eは、ベースプレート10の進入口11Eに整合するように、壁部81の後側を向く面から前側に凹んでいる。進入口81Eは、ベースプレート10の進入口11Eに対するストライカ3の進退を許容する程度に凹んでいる。カバー80の壁部81と、ベースプレート10の平坦部11との間には、
図4に示すように、隙間S1が確保されている。隙間S1は、フォーク20及びポール30の揺動を許容する程度に狭められている。
【0051】
図8及び
図9等に示す捩じりコイルバネ52は、図示は省略するが、一端部がフォーク20に係止され、他端部がカバー80の収容部80Aの内壁面に係止されている。これにより、捩じりコイルバネ52は、フォーク20を
図5及び
図10に示すD1方向に付勢している。
【0052】
図5〜
図7に示すように、引張りコイルバネ51は、カバー80の収容部80A内に収容されている。
図5及び
図8に示すように、オープンレバー60における接続部60Rの近傍には、バネ係止部60Mが形成されている。引張りコイルバネ51の上端部51Aは、オープンレバー60のバネ係止部60Mに係止されている。
図8に示すように、カバー80の下端縁には、バネ係止部80Mが形成されている。図示は省略するが、引張りコイルバネ51の下端部51Bは、カバー80のバネ係止部80Mに係止されている。これにより、引張りコイルバネ51は、オープンレバー60と、オープンレバー60と一体で揺動するポール30とを
図5及び
図10に示すD2方向に付勢している。
【0053】
図5〜
図7に示すように、引張りコイルバネ50は、ベースプレート10の屈曲部15の内部に収容されている。
図5、
図7及び
図8に示すように、カム40における軸穴40Hとは反対側に位置する端部には、バネ係止部40Mが形成されている。張りコイルバネ50の上端部50Aは、カム40のバネ係止部40Mに係止されている。
図8に示すように、カバー80の下端縁におけるバネ係止部80Mよりも前側には、バネ係止部80Nが形成されている。図示は省略するが、引張りコイルバネ50の下端部50Bは、カバー80のバネ係止部80Nに係止されている。これにより、引張りコイルバネ50は、カム40を
図5及び
図10に示すD3方向に付勢している。
【0054】
次に、フォーク20、ポール30及びカム40について、より詳しく説明する。
【0055】
図3〜
図5、
図8〜
図11に示すように、フォーク20の進入口11E側に位置する部位は、前側に位置する第1凸部20Aと、後側に位置する第2凸部20Bとに分岐している。そして、第1凸部20Aと第2凸部20Bとの間には、凹部20Cが形成されている。凹部20Cには、進入口11E内に進入したストライカ3が収まるようになっている。
【0056】
フォーク20は、
図5、
図10(b)、
図10(c)及び
図11〜
図12に示すラッチ位置と、
図3、
図4及び
図10(a)に示すアンラッチ位置との間で変位可能である。フォーク20は、ラッチ位置にある状態において、進入口11E内にストライカ3を保持する。その一方、フォーク20は、アンラッチ位置にある状態において、進入口11E内からストライカ3が離反することを許容する。捩じりコイルバネ52は、フォーク20をアンラッチ位置に向けて付勢している。
【0057】
図8、
図9及び
図11〜
図13に示すように、第1凸部20Aの上端側には、段部26が形成されている。
図13に示すように、段部26は、厚みL27が一定な鋼板がプレス加工等されてフォーク20が製造される際、その鋼板の一部が車両内側に折り曲げられた後、上側に折り曲げられることによって形成される。つまり、段部26は、車両内側に迫り出すようにクランク状に屈曲されてなる。本実施例では、フォーク20において、段部26よりもフォーク軸心X20に近い部位の厚みL27Aと、段部26の先端側の厚みL27Bとは、鋼板の厚みL27がそのまま維持されている(L27A=L27B=L27)。
【0058】
図8〜
図13に示すように、フォーク20は、第1凸部20Aにおける段部26を含む部位に、ラッチ面27とカム当接部24とを有している。
【0059】
ラッチ面27は、第1凸部20Aのポール軸心X30側、すなわち後側を向く端面に形成されている。ラッチ面27は、フォーク軸心X20の径方向に円弧状に延びる曲面である。ラッチ面27は、上下方向に延びながら、その中間部がポール軸心X30から離間するように湾曲している。ラッチ面27は、段部26の上端側かつ後側の角部の近傍まで延びている。
図13に示すように、ラッチ面27のフォーク軸心X20方向の長さは、フォーク20の厚みL27である。
【0060】
図8、
図9及び
図11〜
図13に示すように、カム当接部24は、第1凸部20Aにおける段部26の上端側かつ後側の角部に形成されて車両内外方向に延びる稜線部分である。つまり、カム当接部24は、フォーク20の第1凸部20Aにおけるフォーク軸心X20から離間する位置に、段部26によって形成されている。カム当接部24は、ラッチ面27に対してフォーク軸心X20とは反対側から隣接している。
図5及び
図10〜
図12に示すように、カム軸心X40は、ラッチ面27に対して、ポール軸心X30よりも接近した位置に配置されている。
【0061】
図8〜
図13に示すように、ポール30は、ストッパ面37と摺動面30Sを有している。ストッパ面37は、ポール30の前側を向く端面に形成されている。ストッパ面37は、ポール軸心X30の周方向に円弧状に延びる曲面である。ストッパ面37は、フォーク20がラッチ位置にある状態で、フォーク20のラッチ面27に当接可能である。
図13に示すように、ストッパ面37のフォーク軸心X20方向の長さは、ポール30の厚みL37である。
【0062】
図8〜
図11に示すように、摺動面30Sは、ポール30の下側を向く端面に形成されて、前後方向に延びている。摺動面30Sは、その中間部がポール軸心X30に接近するように円弧状に湾曲している。
【0063】
ポール30は、
図5、
図10(b)、
図10(c)及び
図11〜
図12に示すブロック位置と、
図10(a)に示すアンブロック位置との間で変位可能である。ポール30は、ブロック位置にある状態において、ラッチ位置にあるフォーク20のラッチ面27にストッパ面37が対向してフォーク20がラッチ位置からアンラッチ位置に変位することをブロックする。その一方、ポール30は、アンブロック位置にある状態において、ラッチ位置にあるフォーク20のラッチ面27からストッパ面37が上側に離間してフォーク20がラッチ位置からアンラッチ位置に変位することを許容する。
図5等に示す引張りコイルバネ51は、ポール30をブロック位置に向けて付勢している。ポール30は、ロック解除ノブ68Nを引き上げる操作によってオーブンレバー60とともに揺動し、引張りコイルバネ51の付勢力に抗しつつアンブロック位置に変位する。
【0064】
図8〜
図13に示すように、カム40は、カム面47を有している。カム面47は、カム40の前側を向く端面に形成されて、上下方向に延びている。カム面47は、フォーク軸心X20から離間するにつれて、カム軸心X40から離間する湾曲面である。カム面47は、フォーク20がラッチ位置にある状態で、フォーク20のカム当接部24に当接可能である。
図13に示すように、カム面47のフォーク軸心X20方向の長さは、カム40の厚みL47である。
【0065】
図5等に示す引張りコイルバネ50は、カム面47をフォーク軸心X20に接近させるようにカム40を付勢している。
図7〜
図9に示すように、カム40には、ストッパ40Sが形成されている。ストッパ40Sは、カム40の上端縁から車両内側に屈曲している。カム面47がフォーク20のカム当接部24に当接していない状態では、ストッパ40Sがオープンレバー60の上面に当接することにより、カム40の姿勢が決まる。この状態では、例えば、
図10(a)に示すように、カム40は、ポール30の摺動面30Sよりも若干上側に位置して、ポール及びオープンレバー60と一体で揺動する。
【0066】
図12及び
図13に示すように、段部26は、フォーク軸心X20が延びる方向である車両内外方向においてストッパ面37よりもカム面47側に、すなわち車両内側に迫り出している。
図13に示すように、ラッチ面27のうちのフォーク軸心X20に近い部位のフォーク軸心X20方向の長さL27A(=フォーク20の厚みL27)は、ストッパ面37のフォーク軸心X20方向の長さL37(=ポール20の厚みL37)と略同一に設定されている。フォーク20の段部26を含むフォーク軸心X20方向の長さL27Cは、ストッパ面37のフォーク軸心X20方向の長さL37と、カム面47のフォーク軸心X20方向の長さL47との合計と略同一に設定されている。
【0067】
このような構成であるロック装置1では、乗員が
図2に示すように倒れた状態のシートバック6を後側に揺動させて、
図1に示すように起立させると、
図10(a)に示すように、ストライカ3が進入口11Eに進入し、フォーク20の第1凸部20Aに接近する。そして、ストライカ3が第1凸部20Aに当接すると、第1凸部20Aがストライカ3によって前向きに押される。このため、フォーク20は、
図8等に示す捩じりコイルバネ52の付勢力に抗しつつ、フォーク軸心X20周りにD1方向とは逆方向に揺動する。この際、フォーク20は、第1凸部20Aの上端面をアンブロック位置にあるポール30の摺動面30Sに摺接させながら揺動する。
【0068】
そして、
図10(b)に示すように、第1凸部20Aの上端面が摺動面30Sよりも前側に変位すると、ポール20が
図5等に示す引っ張りコイルバネ51の付勢力によって、ポール軸心X30周りにD2方向に揺動する。これにより、フォーク20は、ラッチ位置で、凹部20Cによって進入口11E内にストライカ3を保持する。また、ポール30は、ブロック位置で、ストッパ面37がフォーク20のラッチ面27に対向して、フォーク20がラッチ位置からアンラッチ位置に変位することをブロックする。その結果、ロック装置1は、シートバック6を車体1に固定するロック状態となる。
【0069】
図10(b)及び(c)に示すように、ロック装置1がロック状態となると、
図5等に示す引っ張りコイルバネ50の付勢力によって、カム40がカム軸心X40周りにD3方向に付勢されることにより、カム面47は、ラッチ位置にあるフォーク20のカム当接部24に当接する。この際、
図10(b)に示すように、ストライカ3が進入口11Eの底部に到達していない状態では、カム面47が浅い位置でカム当接部24に当接する。
【0070】
そして、
図10(c)に示すように、引っ張りコイルバネ50の付勢力によって、カム40がカム軸心X40周りにD3方向に揺動すると、カム面47が深く食い込む位置でカム当接部24に当接する。この際、カム面47が上述したように傾斜していることにより、カム40は、フォーク20をD1方向とは逆方向にさらに揺動させる。このため、ストライカ3が進入口11Eの底部に到達し、進入口11Eの底部とフォーク20の凹部20Cとによってガタつきなく挟持される。その結果、このロック装置1では、ロック状態でのガタつきが抑制され、ストライカ3を保持するフォーク20の周辺で異音が発生することを抑制できる。
【0071】
その一方、
図1に示すようにシートバック6が起立した状態で、乗員がロック解除ノブ68Nを引き上げる操作を行うと、その操作が
図5等に示すロッド68及びオープンレバー60を介してポール30に伝達される。このため、ポール30は、
図5等に示す引っ張りコイルバネ51の付勢力に抗してポール軸心X30周りにD2方向とは逆方向に揺動する。このため、ポール30が
図10(b)及び(c)に示すブロック位置から
図10(a)に示すアンブロック位置に変位する。これにより、フォーク20は、
図8等に示す捩じりコイルバネ52の付勢力によって、フォーク軸心X20周りにD1方向に揺動し、
図10(a)に示すアンラッチ位置に変位する。その結果、ストライカ3が第1凸部20Aに押されて進入口11Eから離脱し、ロック装置1のロック状態が解除される。
【0072】
<作用効果>
実施例のロック装置1では、
図12及び
図13等に示すように、フォーク20の厚みL27をポール30の厚みL37と略同一とすることでラッチ面27を形成しつつ、フォーク20に段部26を設けることで、ラッチ面27に対してフォーク軸心X20とは反対側から隣接する位置にカム当接部24を形成できる。これにより、このロック装置1では、特許文献1記載のロック装置と比較して、フォーク20を肉薄にできる。
【0073】
また、このロック装置1では、ラッチ面27とストッパ面37とが当接する際、フォーク軸心X20方向の長さL37がラッチ面27のフォーク軸心X20方向の長さL27と略同一に設定されたストッパ面37によって、ラッチ面27に局所的に過度の負荷が作用し難くなり、ラッチ面27が局所的に凹み難い。このため、フォーク20とポール30との圧力差による噛み合い外れ等が生じ難い。また、このロック装置1では、ストッパ面37のフォーク軸心X20方向の長さL37と、カム面47のフォーク軸心X20方向の長さL47との合計に応じて、フォーク20の段部26の高さを任意に大きく設定したり、小さく設定したりすることで、フォーク20の段部26を含むフォーク軸心X20方向の長さL27Cを容易に調節できる。このため、フォーク20のカム当接部24とカム40のカム面47との噛み合い、又はフォーク20のラッチ面27とポール30のストッパ面37との噛み合いが不足し難い。
【0074】
さらに、このロック装置1では、カム当接部24がラッチ面27に隣接することから、特許文献2記載のロック装置と比較して、カム軸心X40からカム面47までの距離を短くすることができる。このため、カム当接部24に対してカム面47がずれ難く、また、カム40が変形し難い。
【0075】
したがって、実施例のロック装置1では、小型化を実現しつつ、確実なロック状態を実現できる。
【0076】
また、このロック装置1では、フォーク20は、厚みL27が一定である鋼板の一部がクランク状に屈曲されて段部26とされている。これにより、このロック装置1では、プレス加工等によって段部26を容易に形成できるので、製造コストの低廉化を実現できる。
【0077】
さらに、このロック装置1では、
図10等に示すように、カム40は、ポール軸心X30と平行であるカム軸心X40周りで揺動可能にポール30に支持されている。そして、カム軸心X40は、ラッチ面27に対してポール軸心X30よりも接近した位置に配置されている。これにより、このロック装置1では、カム40が小さくなるので、小型化を実現できる。また、カム40が小さくなることによって、カム軸心X40からカム面47までの距離が短くなり、カム面47がカム当接部24に対してずれ難くなる。その結果、このロック装置1では、ロック状態でのガタつきを確実に抑制できる。また、カム軸心X40からカム面47までの距離が小さくなれば、カム面47に衝撃が加わった時でもカム40が変形し難くなる。
【0078】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0079】
可動体は、シートバックに限定されず、着座面を構成するシートクッション等であってもよい。この具体例としては、スライドレールや、複数個所の取付部が車体に設けられ、シートクッションは、スライドレールに案内されたり、複数個所の取付部のいずれか1つに取り付けられることにより、車体に移動可能に支持される。車体には、スライドレール又は複数個所の取付部に並んで複数のストライカが配置される。そして、本発明のロック装置は、シートクッションに設けられ、複数のストライカのいずれか1つを保持してロック状態となることにより、シートクッションを車体に固定する。
【0080】
実施例では、カム40は、ポール軸心X30と平行であるカム軸心X40周りで揺動可能にポール30に支持されているがこの構成には限定されない。例えば、カムは、ポール軸心と同軸であるカム軸心周りで揺動可能にポールに支持されていてもよい。また、カムは、ポール軸心と同軸又は平行であるカム軸心周りで揺動可能にベースプレートに支持されていてもよい。
【0081】
実施例では、フォーク20において、段部26よりもフォーク軸心X20に近い部位の厚みL27Aと、段部26の先端側の厚みL27Bとは、鋼板の厚みL27がそのまま維持されている(L27A=L27B=L27)が、この構成には限定されない。例えば、厚みL27Bが厚みL27Aより小さくてもよい。