【実施例】
【0019】
以下、実施例のコネクタ用端子について、図面を用いて説明する。
【0020】
(実施例1)
実施例1のコネクタ用端子について、
図1および
図2を用いて説明する。
図1および
図2に示されるように、コネクタ用端子1は、金属母材21の表面にめっき膜22を有する端子材料2より構成されている。
【0021】
本例では、具体的には、コネクタ用端子1は、
図1に示されるように、メス型端子であり、自動車用ワイヤーハーネスが有するコネクタ(不図示)に用いられる。より具体的には、コネクタ用端子1は、角筒状の嵌合部11と、嵌合部11に連なるバレル部12とを有している。
【0022】
嵌合部11には、電気接続すべき相手方端子としてのオス型端子(不図示)が有するタブ部が挿入される。嵌合部11の内部には、嵌合部11の底板部が内側後方へ折り返されることにより、弾性接触片111が形成されている。弾性接触片111には、接点部(不図示)が設けられている。弾性接触片111は、嵌合部11に挿入されたタブ部を押圧するとともに、接点部を通じてタブ部と電気的に接続される。バレル部12は、ワイヤバレル部121と、インシュレーションバレル部122とを有している。ワイヤバレル部121は、絶縁電線(不図示)の端末部にて露出させた導体を圧着し、導体と電気的に接続される。インシュレーションバレル部122は、絶縁電線の絶縁体を圧着する。ワイヤバレル部121およびインシュレーションバレル部122は、コネクタ用端子1の長手方向に垂直な断面が略U字状を呈している。
【0023】
コネクタ用端子1において、端子材料2を構成する金属母材21は
、Fe基合金からなる。本例では、金属母材21は、具体的には、
90質量%以上のFeを含有するFe基合金からなる。また、本例では、端子材料2を構成するめっき膜22は、Snめっき膜であり、具体的には、金属母材21の表面に形成されたSnめっきがリフロー処理されて形成されたものである。
【0024】
ここで、コネクタ用端子1は、金属母材21が露出してなる母材露出部3を有している。本例では、コネクタ用端子1は、具体的には、プレスを用いて板状の端子材料2から上記端子形状を構成可能な素材片(ブランク)が打ち抜かれ、素材片が折り曲げ加工されることによって形成されている。したがって、コネクタ用端子1は、上記端子材料2が打ち抜かれて形成された打ち抜き破面31に母材露出部3が存在している。また、コネクタ用端子1は、上記端子材料2が曲げ加工されて形成された曲
げ部32を有している。曲
げ部32は、曲げ加工時にめっき膜22が割れて形成された割れ部分321を含みうる。したがって、本例のコネクタ用端子1は、曲
げ部32にも母材露出部3が存在しうる。
【0025】
コネクタ用端子1は、母材露出部3の表面を覆う防錆油からなる塗膜4を有している。本例では、コネクタ用端子1の外表面に露出している打ち抜き破面31と、90°以上の折り曲げによる曲げ加工が施された曲
げ部32とが、上記塗膜4によって覆われている。防錆油は、具体的には、防錆調整剤と、油膜調整剤と、これらを溶解する基剤とを含んで構成されている。そのため、防錆油からなる塗膜4は、金属母材21に吸着する吸着層(不図示)と、吸着層の上に配置される油層(不図示)とを有している。
【0026】
次に、本例のコネクタ用端子の作用効果について説明する。
【0027】
本例のコネクタ用端子1は、金属母材21がFe基合金からなっていても、金属母材21が露出してなる母材露出部3の表面が防錆油からなる塗膜4により覆われている。そのため、本例のコネクタ用端子1は、塗膜4により、耐食性の低い母材露出部3と水分とが直接接触し難くなり、耐食性を向上させることが可能となる。
【0028】
また、本例のコネクタ用端子1は、打ち抜き破面31および曲
げ部32に存在する母材露出部3に防錆油が塗布されているので、耐食性の向上が確実なものとなる。
【0029】
また、本例のコネクタ用端子1は、金属母材21を構成するFe基合金が
90質量%以上のFeを含有している。そのため、本例のコネクタ用端子1は、端子強度の向上、材料コストの低減に寄与することができる。
【0030】
また、本例のコネクタ用端子1は、めっき膜22がSnめっき膜より構成されている。そのため、本例のコネクタ用端子1は、接触抵抗の低減、耐食性の向上、接続信頼性の確保等のバランスに優れる。
【0031】
(実施例2)
実施例2のコネクタ用端子について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3および
図4に示されるように、本例のコネクタ用端子1は、ピン端子であり、略「L字状」の端子形状を呈している。コネクタ用端子1は、具体的には、PCBに適用される基板コネクタ(不図示)に用いられる。
【0032】
本例のコネクタ用端子1は、より具体的には、線状の端子材料2を所定の長さに切断し、この切断片の途中部位を90°折り曲げる曲げ加工を施して曲
げ部32を形成する工程を経て作製されている。他にも、コネクタ用端子1は、板状の端子材料2を打ち抜いて打ち抜き片を形成し、この打ち抜き片の途中部位を90°折り曲げる曲げ加工を施して曲
げ部32を形成する工程を経て作製することもできる。
【0033】
コネクタ用端子1において、曲
げ部32は、曲げ加工時にめっき膜22が割れて形成された割れ部分321を含んでいる。したがって、本例のコネクタ用端子1は、曲
げ部32に母材露出部3が存在している。そしてこの部分が防錆油からなる塗膜4により覆われている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0034】
本例のコネクタ用端子1も、金属母材21がFe基合金からなっているものの、上記塗膜4により、耐食性の低い母材露出部3と水分とが直接接触し難くなり、耐食性を向上させることができる。その他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0035】
<実験例>
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0036】
質量%で、C:0.4%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる板状の金属母材(板厚0.3mm)の表面にリフローSnめっきからなるSnめっき膜(厚み1.2μm)が形成された板状の端子材料を準備した。
【0037】
次いで、プレスを用いて板状の端子材料から0.64型のメス型端子形状を構成可能な素材片を打ち抜き、素材片を折り曲げ加工することにより、0.64型のメス型端子を得た。なお、得られたメス型端子は、打ち抜き破面に金属母材が露出している。また、得られたメス型端子は、曲
げ部の一部においてめっき膜が割れ、割れ部分に金属母材が露出している。
【0038】
上記メス型端子の外表面における打ち抜き破面および曲
げ部の母材露出部に、防錆油を塗布することにより塗膜を形成し、試料1を得た。また、全く防錆油を塗布しなかった以外は上記と同様にして、試料1Cを得た。なお、防錆油には、キレスト社製、P−18Cを用いた。
【0039】
次いで、各試料に、5質量%食塩水(液温25℃)を96時間噴霧した後、腐食状態を観察した。その結果を、
図5および
図6に示す。
【0040】
図6に示されるように、試料1Cは、打ち抜き破面に存在する母材露出部および曲
げ部に存在する母材露出部の表面が防錆油からなる塗膜により覆われていない。そのため、試料1Cは、母材露出部が腐食しやすく、錆が端子全体に広がっていることがわかる。
【0041】
これに対し、
図5に示されるように、試料1は、打ち抜き破面に存在する母材露出部および曲
げ部に存在する母材露出部の表面が防錆油からなる塗膜により覆われている。そのため、試料1は、母材露出部が腐食せず、耐食性が向上されていることが確認された。
【0042】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。