特許第6361481号(P6361481)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイコム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6361481-ヘテロダイン受信機 図000003
  • 特許6361481-ヘテロダイン受信機 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361481
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ヘテロダイン受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/26 20060101AFI20180712BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   H04B1/26 J
   H04B1/10 G
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-237851(P2014-237851)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-100827(P2016-100827A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】北山 喜之
【審査官】 岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−298447(JP,A)
【文献】 特開2001−069027(JP,A)
【文献】 特開2010−183257(JP,A)
【文献】 特開2011−082669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/00−1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数変換の系を有し、相互に異なる周波数の中間周波信号をそれぞれ得ることで、前記複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能としたヘテロダイン受信機において、
スプリアス妨害の発生に応答し、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系との間で受信高周波が入替わるように、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系とにおける局部発振器の局部発振周波数を、それぞれの系の中間周波フィルタに適応した周波数の中間周波信号を得るための周波数に変化させる周波数制御手段を含むことを特徴とするヘテロダイン受信機。
【請求項2】
前記スプリアス妨害が発生すると、使用者が操作する操作手段をさらに備え、
前記周波数制御手段は、前記操作手段の操作に応答して、局部発振器の局部発振周波数を変化させることを特徴とする請求項1記載のヘテロダイン受信機。
【請求項3】
前記複数は2であることを特徴とする請求項1または2記載のヘテロダイン受信機。
【請求項4】
前記中間周波信号からベースバンド信号を得る検波・復調回路と、前記ベースバンド信号を再生する再生手段との間に介在され、前記操作手段の操作に応答して、前記スプリアス妨害が発生した系と他の系との間で、前記ベースバンド信号を入替える切換え手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載のヘテロダイン受信機。
【請求項5】
前記ベースバンド信号は音声信号であり、前記切換え手段は入力4チャネルのスイッチICであることを特徴とする請求項4記載のヘテロダイン受信機。
【請求項6】
少なくとも1つの系での受信に対応した送信系統を備えることを特徴とする請求項4または5記載のヘテロダイン受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーヘテロダイン方式の無線(受信)機において、受信系統を複数備えているものにおけるスプリアス妨害に対する対策手法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波増幅器、局部発振器、混合器および中間周波フィルタを含む周波数変換の系を複数有し、相互に異なる周波数の中間周波信号をそれぞれ得ることで、前記複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能としたヘテロダイン受信機において、その同時の受信中に、局部発振信号の周波数およびその高次成分によって、前記スプリアス妨害が発生することがある。そのスプリアスが、目的周波数または中間周波信号の周波数帯域内に発生すると、発生した側の信号が抑圧を受け、ベースバンド信号、たとえば音声信号が再生されないことになる。
【0003】
たとえば、受信高周波信号の周波数をRF1,RF2とし、局部発振信号の周波数をLO1,LO2とし、中間周波信号の周波数をIF1,IF2とし、m,nを整数とするとき、
LO1×m−LO2×n=(RF1−IF1)×m−(RF2−IF2)×n
=RF1orRF2orIF1orIF2 ・・・(1)
となるようなケースでスプリアス妨害が発生する。
【0004】
具体的に、RF1=440.025MHz、RF2=439.800MHz、IF1=38.85MHz、IF2=46.35MHzとするとき、LO1=401.175MHz、LO2=393.45MHzとなり、m=n=6で、
LO1×m−LO2×n=46.35MHz=IF2
となってしまう。この場合、スプリアス妨害が発生した(IF2)側の信号が抑圧を受ける。
【0005】
そこで、このような問題に対応するために、第1の従来技術では、ヘテロダイン反転と言う手法が用いられている。詳しくは、受信高周波信号の周波数をRFとし、所望とする中間周波信号の周波数をIFとするとき、局部発振信号の周波数LOを、RF+IFとRF−IFとの2種類作成可能とし、たとえばLO=RF+IFで受信中にスプリアス妨害が発生すると、LO=RF−IFに切替えると言うものである。
【0006】
一方、本件出願人は、先に特許文献1を提案している。その第2の従来技術によれば、1つの周波数変換の系において、相互に異なる通過周波数の中間周波フィルタ(バンドパスフィルタ)を並列に2つ設けて、受信周波数の関係で、元々のLO1−LO2の差分、たとえば上述の例の場合は46.35−38.85=7.5MHzに、実際の差分が近付くと、局部発振信号同士が干渉し合って相互変調が発生し、その成分を中間周波フィルタ(バンドパスフィルタ)で取り除くことができなくなるので、中間周波フィルタを切替えるとともに、対応して局部発振信号の周波数も、その中間周波フィルタの周波数差だけずらすことで、対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3823063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の従来技術によれば、スプリアス妨害が発生すると、局部発振器(VCO)の発振周波数LOを、2IF分、たとえば100MHz近くずらさなければならない。局部発振器の周波数可変範囲を大きくすると、そのコントローラにおける周波数分解能が下がり、所望周波数に安定させられる精度が低くなる。また、そもそも、前記のような大きな周波数可変範囲を有する局部発振器(VCO)は実現し難く、そのため、ヘテロダイン反転を行う場合は、事実上、2つの局部発振器(VCO)を搭載しなければならず、基板の実装面積が増加するという問題がある。
【0009】
また、第2の従来技術によれば、スプリアス妨害の発生時に局部発振器(VCO)の発振周波数LOをずらす幅は、数MHz程度で済み、比較的大きな実装面積を占める局部発振器(VCO)は1つで済む。しかしながら、中間周波フィルタが2つ必要になるとともに、その中間周波フィルタの前後の切替えスイッチも必要になり、局部発振器(VCO)の削減分以上に、コストが嵩むという問題がある。
【0010】
すなわち、従来では、車載機などの基板の実装面積に余裕のある場合は第1の従来技術を採用し、ポータブル機などの小型化が要求される場合は、コストが高くなっても第2の従来技術を採用すると言うような使い分けの行われているのが実情である。
【0011】
本発明の目的は、複数の周波数の高周波信号を同時に受信する際のスプリアス妨害を回避するための基板の実装面積およびコストを削減することができるヘテロダイン受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のヘテロダイン受信機は、複数の周波数変換の系を有し、相互に異なる周波数の中間周波信号をそれぞれ得ることで、前記複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能としたヘテロダイン受信機において、スプリアス妨害の発生に応答し、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系との間で受信高周波が入替わるように、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系とにおける局部発振器の局部発振周波数を、それぞれの系の中間周波フィルタに適応した周波数の中間周波信号を得るための周波数に変化させる周波数制御手段を含むことを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、スーパーヘテロダイン方式の無線(受信)機で、高周波増幅器、局部発振器、混合器および中間周波フィルタを含む周波数変換の系を有する受信系統を複数備え、相互に異なる周波数の中間周波信号をそれぞれ得ることで、前記複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能としたものにおいて、スプリアス妨害の発生に応答し、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系との間で受信高周波が入替わるように、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系とにおける局部発振器の局部発振周波数を変化させる周波数制御手段を設ける。
【0014】
具体的には、たとえば前記のように、RF1=440.025MHz、RF2=439.800MHz、IF1=38.85MHz、IF2=46.35MHzとするとき、LO1=401.175MHz、LO2=393.45MHzとなるように、周波数制御手段は、それぞれの局部発振器の局部発振周波数を制御している。この状態でスプリアス妨害が発生すると、たとえば音声信号が出なくなったことから使用者が手動で入替え操作を行い、或いはスプリアス妨害の発生を検出した検出手段が自動的に入替え操作を行い、スプリアス妨害が発生した系と他の系とにおける局部発振器の局部発振周波数を変化させる。その変化は、RF1とRF2とを入替えることになるのであるが、中間周波フィルタの中心周波数、すなわちIF1,IF2は変化させないので、
LO1=439.800−38.85=400.95MHz
LO2=440.025−46.35=393.675MHz
となる。これによって、前記式1の関係は成立しなくなり、スプリアス妨害を回避することができる。
【0015】
したがって、局部発振器の周波数可変範囲を無闇に大きくすることなく、すなわち1つの波長(帯域)に1つの局部発振器としつつも、中間周波フィルタなどの他の部品も変更する必要は無く、複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能とするにあたって、スプリアス妨害を回避するための基板の実装面積およびコストを削減することができる。
【0016】
また、本発明のヘテロダイン受信機では、前記スプリアス妨害が発生すると、使用者が操作する操作手段をさらに備え、前記周波数制御手段は、前記操作手段の操作に応答して、局部発振器の局部発振周波数を変化させることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、スプリアス妨害が発生すると、たとえば音声信号が出なくなったことから使用者がそれを検知すると、操作手段を操作することで、受信高周波の入替え操作を行うことができる。
【0018】
さらにまた、本発明のヘテロダイン受信機では、前記複数は2であることを特徴とする。
【0019】
上記の構成によれば、たとえばメインバンドとサブバンドとのように区別して、2つの高周波信号の受信が可能であり、前記スプリアス妨害が発生すると、その2つの高周波信号を、2つの受信系統の間で入替えることになる。
【0020】
また、本発明のヘテロダイン受信機では、前記中間周波信号からベースバンド信号を得る検波・復調回路と、前記ベースバンド信号を再生する再生手段との間に介在され、前記操作手段の操作に応答して、前記スプリアス妨害が発生した系と他の系との間で、前記ベースバンド信号を入替える切換え手段をさらに備えることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、2つの周波数変換の系は、後段にそれぞれ検波・復調回路および再生手段を備えて受信系統が構成されている。そこで、音声信号などのベースバンド信号を再生するにあたって、上述のようにスプリアス妨害が発生すると、2つの受信系統の間で高周波信号が入替わることに対応して、スピーカなどの再生手段の直前で、再度ベースバンド信号の段階で、切換え手段によって、2つの信号を入替える。
【0022】
したがって、無線(受信)機の内側では、スプリアス妨害が発生すると、メインバンドとサブバンドとが入替わっているものの、それぞれの再生手段からは、スプリアス妨害が発生する以前と同様のベースバンド信号が再生されることになる。したがって、使用者がメインバンドとサブバンドとを入替えるような操作が不要になるとともに、使用者に入替わりそのものを意識させないでおくこともでき、操作性を向上することができる。
【0023】
さらにまた、本発明のヘテロダイン受信機では、前記ベースバンド信号は音声信号であり、前記切換え手段は入力4チャネルのスイッチICであることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、音声信号を受信するにあたって、検波・復調回路と、スピーカである再生手段との間に、入力4チャネルのスイッチICを設ける。スイッチICは、1チャネルのものでも、4チャネルのものでも、大きさやコストはあまり変らず、2つの高周波信号の受信を行う場合は、元々、どちらのチャネルの音声を、左右のどちらのスピーカで音響化するのかを、この入力4チャネルのスイッチICを用いて、切換え可能に構成している。そこで、この入力4チャネルのスイッチICを前記操作手段の操作に連動させて切換えることで、上述のようなメインバンドとサブバンドとの入替えが可能になる。
【0025】
したがって、従来からのコストやスペースの増加が殆ど無く、上述の受信高周波信号(メインバンドとサブバンド)の入替を行うことができる。
【0026】
また、本発明のヘテロダイン受信機では、少なくとも1つの系(高周波信号)での受信に対応した送信系統を備えることを特徴とする。
【0027】
上記の構成によれば、メインバンドとサブバンドの両方、或いはメインバンドのみには、受信系統に対応した、すなわち同じ高周波信号の送信系統を備える。
【0028】
したがって、一方の高周波信号をモニターしながら、もう一方の高周波信号で送受信を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の無線受信機は、以上のように、スーパーヘテロダイン方式の無線(受信)機で、複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能としたものにおいて、スプリアス妨害の発生に応答し、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系との間で受信高周波が入替わるように、そのスプリアス妨害が発生した系と他の系とにおける局部発振器の局部発振周波数を変化させる周波数制御手段を設ける。
【0030】
それゆえ、スプリアス妨害の回避を、局部発振器の周波数可変範囲を無闇に大きくすることなく、かつ他の部品も変更すること無く、実現することができ、複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能とするにあたって、スプリアス妨害を回避するための基板の実装面積およびコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の一形態に係る無線機の全体構成を示す斜視図である。
図2】前記無線機における受信系統の一構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、本発明の実施の一形態に係る無線機1の全体構成を示す斜視図である。この無線機1は、コントローラ2と、本体3と、ハンドマイク4とを備えて構成される。本体3内には、送受信や制御の回路が内蔵されており、それらの回路は、使用者のコントローラ2やハンドマイク4への操作に応答して、所望の周波数での受信を行い、本体3に内蔵されたスピーカや外部に増設されたスピーカから、受信された音声信号(ベースバンド信号)を音響出力するとともに、ハンドマイク4のPTTスイッチ41が押し込まれている間、マイクロホン42で収音された音声信号を、所望の周波数で送信を行う。本体3は、天井や壁面、或いは車のダッシュボードなどにそれぞれ適したブラケットによって、それらに取付け可能となっている。コントローラ2は、その本体3に対して、ブラケットなどによって取付け可能となっている。
【0033】
この無線機1で注目すべきは、コントローラ2の左右対称な構成からも理解されるように、2つの高周波信号の同時受信が可能となっていることである。前記2つの高周波信号は、いずれも、VHF帯およびUHF帯の両方を含み、相互に等しい。この受信帯域の詳細は、下記の表1の通りである。ただし、送信は、一部の帯域、具体的には、144.000〜146.000MHzおよび430.000〜440.000MHzに限られる。
【0034】
【表1】
【0035】
そして、無線機1では、メインバンド釦21,22が操作された側がメインバンドとなり、他方がサブバンドとなり、ダイアル23,24で選択されている周波数で受信された音声信号が、ボリウム25,26で設定された音量で、前記スピーカから音響出力される。スピーカは、外部に接続されていない場合は、内蔵のスピーカから音響出力され、外部に接続されている場合は、その外部のスピーカから音響出力され、外部に左右両チャネルのスピーカが接続されている場合は、2つの受信高周波信号の音声信号が、その左右のスピーカに分離されて音響出力される。
【0036】
これに対応して、液晶パネルなどで実現される表示パネル29も、左右の表示領域27,28を有し、それぞれに受信周波数や送受信レベルが表示されるようになっている。なお、本実施の形態では、送信は、メインバンドで選択されている側でしか行われず、サブバンド側は、モニターのみとなる。
【0037】
図2は、無線機1における受信系統の一構成例を示すブロック図である。図2では、送信系統は省略しているが、上述のようにメインバンドに選択されている側の送信系統だけが、コントロール回路50によって送信可能となる。この無線機1の2つの受信系統は、それぞれVHF帯およびUHF帯の両方を受信可能な、ダブルスーパーヘテロダイン方式の受信機を構成する。以降、便宜上、前記の2つの受信系統は、前記の通り、左チャネルおよび右チャネルと言う。
【0038】
したがって、左チャネルには、VHF帯の高周波増幅器611、局部発振器621、混合器631、中間周波フィルタ64および中間周波アンプ60から成る周波数変換の系と、UHF帯の高周波増幅器612、局部発振器622、混合器632、前記中間周波フィルタ64および中間周波アンプ60から成る周波数変換の系とを有する。局部発振器621,622は、1つのパッケージ62に封入されており、たとえば実装基板においてパッケージ62の裏側には、該局部発振器621,622の発信周波数を安定させるためのPLL回路が実装されている。中間周波アンプ60からの中間周波信号は、2段目の周波数変換回路65によって低周波に変換され、得られた中間周波信号から復調・検波回路66において、ベースバンド信号としての音声信号が復調され、得られた音声信号は低周波フィルタ67を介して出力される。2段目の周波数変換回路65における中間周波数は、たとえば450kHzである。
【0039】
同様に、右チャネルには、VHF帯の高周波増幅器711、局部発振器721、混合器731、中間周波フィルタ74および中間周波アンプ70から成る周波数変換の系と、UHF帯の高周波増幅器712、局部発振器722、混合器732、前記中間周波フィルタ74および中間周波アンプ70から成る周波数変換の系とを有する。局部発振器721,722は、1つのパッケージ72に封入されている。中間周波アンプ70からの中間周波信号は、2段目の周波数変換回路75によって低周波に変換され、得られた中間周波信号から復調・検波回路76において音声信号が復調され、得られた音声信号は低周波フィルタ77を介して出力される。2段目の周波数変換回路75における中間周波数は、たとえば450kHzである。
【0040】
低周波フィルタ67,77からの音声信号は、切換え手段であるアナログスイッチIC84に入力される。アナログスイッチIC84は、たとえば、図示のようにクロス配線された入力4チャネル、出力4チャネルのICスイッチであり、元々、電源ON/OFF時のミュートや、どちらのチャネルの音声を、左右のどちらのスピーカで音響化するのかを、切換え可能にするために設けられている。このアナログスイッチIC84を用いて、本実施の形態は、4チャネルの入力に対して、出力をクロスさせて実質2チャネルで出力するように配線しておくことで、参照符号84の状態から参照符号84aで示す状態に、左右各チャネルの音声信号を、相互に入替えられるようになっている。
【0041】
アナログスイッチIC84からの左右各チャネルの音声信号は、低周波増幅器68,78でそれぞれ増幅されて、再生手段であるスピーカ69,79から音響出力される。前述のように外部スピーカ69,79が接続されていなかったり、片チャネルしか接続されていない場合は、左右両チャネルの音声信号は、本体3の内蔵スピーカ80や、その接続された単一のスピーカから音響出力される。そのため、ジャック81,82には切換えの接点や、低周波増幅器78からの出力を低周波増幅器68の入力側に与えるライン83などが設けられている。
【0042】
これらのアナログスイッチIC84の切替えや、局部発振器621,622;721,722のいずれを動作させるか、コントローラ2の操作に応答したチューニングやボリウム調整、さらには表示パネル29の制御などは、コントロール回路50によって行われる。コントローラ2には、前記のメインバンド釦21,22、ダイアル23,24、ボリウム25,26或いは後述のセットスイッチ20などの操作を受け付けるとともに、表示パネル29の表示制御を行うコントロール回路30が設けられており、前述のコントロール回路50は、このコントロール回路30と通信を行うことで、制御を行う。
【0043】
上述のように構成される無線機1において、左右両方のチャネルで少なくとも受信を行っている状態で、スプリアス妨害が発生すると、使用者は、たとえば音響出力が消失したことからそのことを検知し、コントローラ2のセットスイッチ20を操作する。コントロール回路50は、操作手段としてのそのセットスイッチ20の操作に応答して、左右各チャネルで受信高周波が入替わるように、局部発振器621,622;721,722の発信周波数を入替えるとともに、アナログスイッチIC84を切替え、左右の音声信号を入替える。
【0044】
その局部発振器621,622;721,722の発信周波数の入替えについて詳述する。左右各チャネル間は、相互間の干渉が生じないように、第1の中間周波信号で、前述のIF1=38.85MHzとIF2=46.35MHzとに周波数分離され、これらの周波数は固定である。
【0045】
一方、受信すべき高周波信号の周波数を、たとえば前述のように、RF1=440.025MHz、RF2=439.800MHzとすると、それぞれUHF帯の高周波増幅器612,712が使用され、コントロール回路50は、対応する局部発振器622,722の局部発振周波数LO1,LO2を制御する。その制御される周波数は、図2でも示すように、
LO1=RF1−IF1=440.025−38.85=401.175MHz
LO2=RF2−IF2=439.800−46.35=393.450MHz
となる。
【0046】
しかしながら、そうすると、共に6倍の高調波の周波数差は、46.35MHzとなり、=IF2となって前述の式1が成立し、スプリアス妨害が発生してしまう。これに対して、コントロール回路50は、RF1=439.800MHz、RF2=440.025MHzとなるように、局部発振器622,722の局部発振周波数LO1,LO2を制御する。その制御される周波数は、
LO1=439.800−38.85=400.95MHz
LO2=440.025−46.35=393.675MHz
となる。したがって、前記式1の関係は成立しなくなり、スプリアス妨害を回避することができる。そして、局部発振器622の局部発振周波数LO1を目的の周波数からずらす量は、401.175−400.95=0.225MHz、局部発振器722の局部発振周波数LO2をずらす量は、393.450−393.675=−0.225MHzと、共に1MHz以内の極めて微小な量である。なお、上述の例は一例であり、局部発振周波数LO1,LO2をずらす量は、受信高周波信号の周波数RF1,RF2や、設定中間周波数IF1,IF2など、スプリアス妨害の発生状況によって異なる。
【0047】
したがって、局部発振器621,622;721,722の周波数可変範囲を無闇に大きくすることなく、すなわち1つの波長(上述の例ではVHF帯とUHF帯)に1つの局部発振器としつつも、中間周波フィルタ64,74などの他の部品も変更する必要は無く、複数の周波数の高周波信号を同時に受信可能とするにあたって、スプリアス妨害を回避するための基板の実装面積およびコストを削減することができる。
【0048】
さらに、周波数変換の系の後段において、検波・復調回路66,76とスピーカ69,79との間に、前記セットスイッチ20の操作に応答して、左右のチャネル間の音声信号を入替えるアナログスイッチIC84を設けることで、無線機1の内側では、スプリアス妨害が発生すると、メインバンドとサブバンドとが入替わってしまっても、それぞれのスピーカ69,79からは、スプリアス妨害が発生する以前と同じ送信相手からの音声信号が再生されることになる。したがって、使用者がメインバンドとサブバンドとを入替えるような操作が不要になるとともに、使用者に入替わりそのものを意識させないでおくこともでき、操作性を向上することができる。この場合、表示パネル29での表示も、左右のチャネル間で、入替わらないで、そのまま表示されることが望ましい。
【0049】
そして、アナログスイッチIC84は、1チャネルのものでも、4チャネルのものでも、大きさやコストはあまり変らず、2つの高周波信号の受信を行う場合は、通常、4チャネルのものが1つ用いられることが多いので、再生すべきベースバンド信号が2つのチャネルの音声信号である場合、その音声信号の入替えにこの入力4チャネルのアナログスイッチIC84を用い、4チャネルの入力に対して、出力がクロスして最終的に2チャネルとなるように配線しておくことで、従来からのコストやスペースの増加が殆ど無く、上述の受信高周波信号(メインバンドとサブバンド)の入替を行うことができる。
【0050】
なお、上述の例では、スプリアス妨害が発生すると、使用者がセットスイッチ20を手動操作することで受信高周波の入替えを行っているが、スプリアス妨害の検知手段が検知すると、コントロール回路50が自動的に入替えを行うようにしてもよい。
【0051】
また、上述の例では、メインバンドとサブバンドとで、同時に受信する高周波信号は2つであったけれども、3つ以上であってもよい。その場合、スプリアス妨害が発生した系と、他の任意の系とで、受信高周波の入替えを行うようにすればよい。
【0052】
さらにまた、無線機1は、アナログとデジタルとのいずれであってもよく、また変調方式もAM、FM或いは他の変調方式であってもよい。
【0053】
上述の例では、同時に2つの高周波信号の受信を行うにあたって、サブバンドとなっているチャネルは受信専用であったが、そのような用途は、モニターは認められているものの、一般のアマチュア無線機では送信の認められていない航空無線周波数(エアバンド)の受信に適用することが好ましい。こうして、適切に発信を禁止しつつ、受信のみで、無線機1の興趣性を高めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 無線機
2 コントローラ
21,22 メインバンド釦
23,24 ダイアル
25,26 ボリウム
29 表示パネル
3 本体
30,50 コントロール回路
4 ハンドマイク
41 PTTスイッチ
60,70 中間周波アンプ
611,711 VHF帯の高周波増幅器
612,712 UHF帯の高周波増幅器
62 パッケージ
621,721 局部発振器
622,722 局部発振器
631,731 混合器
632,732 混合器
64,74 中間周波フィルタ
65,75 2段目の周波数変換回路
66,76 復調・検波回路
67,77 低周波フィルタ
68,78 低周波増幅器
69,79 スピーカ
80 内蔵スピーカ
84 アナログスイッチIC
図1
図2