【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例により限定されるものではない。
【0041】
[実施例1−1]
非水溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートの体積比2:1:3:4の混合溶媒を用い、該溶媒中に溶質としてLiPF
6を1.0mol/Lの濃度となるように、2価のイミドアニオンを有する塩として上記化合物No.1のジリチウム塩を1.0質量%の濃度となるように溶解し、表1に示すように非水電解液電池用電解液を調製した。なお、上記の調製は、液温を25℃に維持しながら行った。
【0042】
この電解液を用いてLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を正極材料、黒鉛を負極材料としてセルを作製し、実際に電池のサイクル特性、及び低温出力特性を評価した。試験用セルは以下のように作製した。
【0043】
LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のポリフッ化ビニリデン(PVDF)、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、ペースト状にした。このペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより、試験用正極体とした。また、黒鉛粉末90質量%に、バインダーとして10質量%のPVDFを混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、スラリー状にした。このスラリーを銅箔上に塗布して、150℃で12時間乾燥させることにより、試験用負極体とした。そして、ポリエチレン製セパレータに電解液を浸み込ませてアルミラミネート外装の50mAhセルを組み立てた。
以上のような方法で作製したセルを用いて充放電試験を実施し、高温サイクル特性、低温出力特性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0044】
[高温サイクル特性試験]
45℃の環境温度での充放電試験を実施し、サイクル特性を評価した。充電は、4.3V、放電は3.0Vまで行い、電流密度5.7mA/cm
2で充放電サイクルを繰り返した。そして、200サイクル後の放電容量維持率でセルの劣化の具合を評価した(サイクル特性評価)。放電容量維持率は下記式で求めた。
<200サイクル後の放電容量維持率>
放電容量維持率(%)=(200サイクル後の放電容量/初放電容量)×100
【0045】
[低温出力特性試験]
25℃の環境温度下、充電上限電圧4.3Vまで定電流定電圧法で、電流密度0.38mA/cm
2で充放電を行った。このときの放電容量を放電容量Aとする。この後、−30℃の環境温度下、充電上限電圧4.3Vまで定電流定電圧法で、電流密度0.38mA/cm
2で充電した後、放電終止電圧3.0Vまで電流密度9.5mA/cm
2の定電流で放電した。このときの放電容量を放電容量Bとし、「(放電容量B/放電容量A)×100」から求めた値を高出力容量維持率(%)とし、セルの低温出力特性を評価した。
【0046】
[実施例1−2〜1−155、比較例1−1〜1−17]
表1〜3に示すように、溶質の種類と濃度(mol/L)およびイミドアニオンを有する塩の種類と濃度(質量%)を変えたこと以外は実施例1−1と同様に非水電解液電池用電解液の調製、及びセルの作製を行い、電池の評価を実施した。評価結果を表4〜6に示す。なお、実施例1−1〜1−155、比較例1−1〜1−17の評価結果は、比較例1−1の値を100とした場合の相対値である。
【0047】
なお、比較例1−2〜1−7においてイミドアニオンを有する塩として以下の化合物No.19〜24を用いた。
【0048】
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
【表6】
【0055】
以上の結果を比較すると、2価のイミドアニオンを有する塩を添加した実施例1−1〜1−24は、該塩を添加していない比較例1−1に対し、高温サイクル特性及び低温出力特性が共に向上していることが確認できた。また同様に、1価のイミドアニオンを有する塩を用いる比較例1−2〜1−7に対し、本発明の2価のイミドアニオンを有する塩を同濃度(1.0質量%)含有させた実施例1−1、1−8〜1−24では、高温サイクル特性及び低温出力特性が向上していることが確認できた。
【0056】
また、例えば、電解液の組成比が同じである、実施例1−1、1−8〜1−24において、P−F結合やS−F結合を持つイミドアニオンを有する塩を用いた実施例(実施例1−1、1−8〜1−17、1−21〜1−24)は、P−F結合及びS−F結合を持たないイミドアニオンを有する塩を用いた実施例(実施例1−18〜1−20)に比べて、より優れた低温出力特性を示すことが確認された。さらに、上記イミドアニオンを有する塩中のP−F結合やS−F結合の数が多いほど、低温特性がさらに向上されるが確認された。
【0057】
また、例えば、一般式(1)で示される2価のイミドアニオンを有する塩を用いた実施例1−1、1−8〜1−11において、R
1〜R
3がフッ素原子、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である実施例1−1、1−8〜1−10は、R
1〜R
3のうち上記に該当しない有機基を持つ実施例1−11よりも優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
【0058】
また、例えば、一般式(2)で示される2価のイミドアニオンを有する塩を用いた実施例1−12〜1−16において、Xがフッ素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である実施例1−12、1−14〜1−16は、Xが上記に該当しない有機基である実施例1−13よりも優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
【0059】
また、例えば、一般式(3)で示される2価のイミドアニオンを有する塩を用いた実施例1−21〜1−24において、R
1及びR
2がフッ素原子、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である実施例1−21、22は、R
1及びR
2のうち上記に該当しない有機基を持つ実施例1−23、24よりも優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
【0060】
また、例えば、一般式(4)で示される2価のイミドアニオンを有する塩を用いた実施例1−17〜1−20において、Xがフッ素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である実施例1−17、1−19、1−20は、Xが上記に該当しない有機基である実施例1−18よりも優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
【0061】
実施例1−25〜1−80において、すなわち2価のイミドアニオンの対カチオンを種々変更した系においても同様の効果が得られることが確認された。
【0062】
さらに、溶質がLiPF
6と別の溶質が混合された場合においても、2価のイミドアニオンを有する塩を添加した実施例1−81〜1−155では、2価のイミドアニオンを有する塩を添加していない比較例1−8〜1−17に対し、高温サイクル特性及び低温出力特性が向上しており、同様の効果が得られることが確認された。
【0063】
[実施例2−1〜2−21、比較例2−1〜2−12]
表7に示すように、負極体及び電解液を変えたこと以外は実施例1−1と同様に非水電解液電池用電解液を調製し、セルを作製し、電池の評価を実施した。
なお、負極活物質がLi
4Ti
5O
12である負極体は、Li
4Ti
5O
12粉末90質量%に、バインダーとして5質量%のPVDF、導電剤としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を2.8V、放電終止電圧を1.5Vとした。
また、負極活物質が黒鉛(ケイ素含有)である負極体は、黒鉛粉末81質量%、ケイ素粉末9質量%に、バインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合しさらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧と放電終止電圧は実施例1−1と同様とした。
また、負極活物質がハードカーボンである負極体は、ハードカーボン粉末90質量%に、バインダーとして5質量%のPVDF、導電剤としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストを銅箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を2.2Vとした。
評価結果を表7に示す。なお、実施例2−1〜2−7及び比較例2−1〜2−4の評価結果は、比較例2−1の値を100とした場合の相対値である。また、実施例2−8〜2−14及び比較例2−5〜2−8の評価結果は、比較例2−5の値を100とした場合の相対値である。また、実施例2−15〜2−21及び比較例2−9〜2−12の評価結果は、比較例2−9の値を100とした場合の相対値である。
【0064】
【表7】
【0065】
[実施例3−1〜3−28、比較例3−1〜3−16]
表8に示すように、正極体、負極体及び電解液を変えたこと以外は実施例1−1と同様に非水電解液電池用電解液を調製し、セルを作製し、電池の評価を実施した。
なお、正極活物質がLiCoO
2である正極体は、LiCoO
2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製した。
実施例1−1と同様に負極活物質が黒鉛である実施例3−1〜3−7及び比較例3−1〜3−4において、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
実施例2−1と同様に負極活物質がLi
4Ti
5O
12である実施例3−8〜3−14及び比較例3−5〜3−8において、電池評価の際の充電終止電圧を2.7V、放電終止電圧を1.5Vとした。
実施例2−8と同様に負極活物質が黒鉛(ケイ素含有)である実施例3−15〜3−21及び比較例3−9〜3−12において、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
実施例2−15と同様に負極活物質がハードカーボンである実施例3−22〜3−28及び比較例3−13〜3−16において、電池評価の際の充電終止電圧を4.1V、放電終止電圧を2.2Vとした。
評価結果を表8に示す。なお、実施例3−1〜3−7及び比較例3−1〜3−4の評価結果は、比較例3−1の値を100とした場合の相対値である。また、実施例3−8〜3−14及び比較例3−5〜3−8の評価結果は、比較例3−5の値を100とした場合の相対値である。また、実施例3−15〜3−21及び比較例3−9〜3−12の評価結果は、比較例3−9の値を100とした場合の相対値である。また、実施例3−22〜3−28及び比較例3−13〜3−16の評価結果は、比較例3−13の値を100とした場合の相対値である。
【0066】
【表8】
【0067】
[実施例4−1〜4−21、比較例4−1〜4−12]
表9に示すように、正極体及び電解液を変えたこと以外は実施例1−1と同様に非水電解液電池用電解液を調製し、セルを作製し、電池の評価を実施した。なお、正極活物質がLiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2である正極体は、LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を4.3V、放電終止電圧を3.0Vとした。
また、正極活物質がLiMn
2O
4である正極体は、LiMn
2O
4粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を3.0Vとした。
また、正極活物質がLiFePO
4である正極体は、非晶質炭素で被覆されたLiFePO
4粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し、電池評価の際の充電終止電圧を4.2V、放電終止電圧を2.5Vとした。
評価結果を表9に示す。なお、実施例4−1〜4−7及び比較例4−1〜4−4の評価結果は、比較例4−1の値を100とした場合の相対値である。また、実施例4−8〜4−14及び比較例4−5〜4−8の評価結果は、比較例4−5の値を100とした場合の相対値である。また、実施例4−15〜4−21及び比較例4−9〜4−12の評価結果は、比較例4−9の値を100とした場合の相対値である。
【0068】
【表9】
【0069】
表7〜9の結果から、負極活物質や正極活物質の種類によらず、電解液中に上記2価のイミドアニオンを有する塩を添加すると、該電解液を非水電解液電池に用いた場合に、優れた高温サイクル特性及び低温出力特性を発揮し、上述と同様の効果が得られることが確認された。
【0070】
[実施例5−1]
非水溶媒としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの体積比1:1の混合溶媒を用い、該溶媒中に、溶質としてNaPF
6を1.0mol/Lの濃度となるように、イミドアニオンを有する塩として上記化合物No.1のジナトリウム塩を0.1質量%の濃度となるように溶解し、表10に示すように非水電解液電池用電解液を調製した。なお、上記の調製は、液温を25℃に維持しながら行った。
【0071】
この電解液を用いてNaFe
0.5Co
0.5O
2を正極材料、ハードカーボンを負極材料とした以外は実施例1−1と同様にセルの作製を行い、実施例1−1と同様に電池の評価を実施した。なお、正極活物質がNaFe
0.5Co
0.5O
2である正極体は、NaFe
0.5Co
0.5O
2粉末90質量%にバインダーとして5質量%のPVDF、導電材としてアセチレンブラックを5質量%混合し、さらにN−メチルピロリドンを添加し、得られたペーストをアルミニウム箔上に塗布して、乾燥させることにより作製し電池評価の際の充電終止電圧を3.8V、放電終止電圧を1.5Vとした。評価結果を表11に示す。
【0072】
[実施例5−2〜5−14、比較例5−1〜5−5]
表10に示すように、溶質の種類と濃度及びイミドアニオンを有する塩の種類と濃度を変えたこと以外は実施例5−1と同様に非水電解液電池用電解液を調製し、セルを作製し、電池の評価を実施した。評価結果を表11に示す。なお、実施例5−1〜5−14、比較例5−1〜5−5の評価結果は、比較例5−1の値を100とした場合の相対値である。
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】
【0075】
表11の結果から、ナトリウムイオン電池においても、電解液に上記2価のイミドアニオンを有する塩を添加した実施例5−1〜5−7は、該塩を添加していない比較例5−1に対し、高温サイクル特性及び低温出力特性が共に向上していることが確認できた。
また同様に、1価のイミドアニオンを有する塩を用いる比較例5−2〜5−4に対し、本発明の2価のイミドアニオンを有する塩を同濃度(0.1質量%)含有させた実施例5−1〜5−7では、高温サイクル特性及び低温出力特性が向上していることが確認できた。
【0076】
また、ナトリウムイオン電池においても、P−F結合やS−F結合を持つイミドアニオンを有する塩を用いると、より優れた低温出力特性を示すことが確認された。さらに、上記イミドアニオンを有する塩中のP−F結合やS−F結合の数が多いほど、低温特性がさらに向上されるが確認された。
また、一般式(1)や(3)のR
1〜R
3がフッ素原子、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である2価のイミドアニオンを有する塩を用いると、より優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
また、一般式(2)や(4)のXがフッ素原子、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、及びアルキニルオキシ基からなる群から選ばれる有機基である2価のイミドアニオンを有する塩を用いると、より優れた高温サイクル特性を示すことが確認された。
【0077】
また、溶質がNaPF
6と別の溶質が混合された場合においても、2価のイミドアニオンを有する塩を添加した実施例5−8〜5−14では、2価のイミドアニオンを有する塩を添加していない比較例5−5に対し、高温サイクル特性及び低温出力特性が向上しており、同様の効果が得られることが確認された。