(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成位置変更手段によって前記虚像の生成位置を前記障害物よりも前記乗員側に移動させた場合に、生成される前記虚像を周辺環境に重畳させて前記乗員に視認させることにより案内を行う第1の虚像から、前記周辺環境に重畳させずに前記乗員に視認させることにより案内を行う第2の虚像へと切り替える虚像切替手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の虚像表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る虚像表示装置について、車両に搭載されたヘッドアップディスプレイ装置に具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
先ず、本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置(以下、HUDという)1の構成について
図1を用いて説明する。
図1は本実施形態に係るHUD1の車両2への設置態様を示した図である。
【0013】
図1に示すようにHUD1は、車両2のダッシュボード3内部に設置されており、内部にプロジェクタ4やプロジェクタ4からの映像が投射されるスクリーン5を有する。そして、スクリーン5に投射された映像を、後述のようにHUD1が備えるミラーや凹面鏡6を介し、更に運転席の前方のフロントウィンドウ7に反射させて車両2の乗員8に視認させるように構成されている。尚、スクリーン5に投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員8の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報(右左折方向を示す矢印等)、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ番組等がある。
【0014】
また、本実施形態のHUD1では、フロントウィンドウ7を反射して乗員8がスクリーン5に投射された映像を視認した場合に、乗員8にはフロントウィンドウ7の位置ではなく、フロントウィンドウ7の先の遠方の位置にスクリーン5に投射された映像が虚像9として視認されるように構成される。尚、乗員8が視認できる虚像9はスクリーン5に投射された映像であるが、凹面鏡6やミラーを介することによって上下方向や左右方向が反転する場合がある。尚、本実施形態では後述のように凹面鏡6と複数のミラーを介するが、ミラーの数を適正化することによりスクリーン5に投射された映像は、上下方向や左右方向が反転されることなく虚像9として視認されることとなる。また、フレネルレンズや凹面鏡6を介することによってサイズも変更する。
【0015】
ここで、虚像9を生成する位置、より具体的には乗員8から虚像9までの距離(以下、生成距離という)Lについては、HUD1が備える凹面鏡6やフレネルレンズの曲率、スクリーン5と凹面鏡6との相対位置等によって適宜設定することが可能である。例えば、凹面鏡6やフレネルレンズの曲率が固定であれば、スクリーン5において映像の表示された位置から凹面鏡6までの光路に沿った距離によって生成距離Lが決定される。そして、本実施形態のHUD1では、後述のようにスクリーン5と凹面鏡6との間で光路の方向を変更するミラーの位置を移動させたり、傾斜したスクリーン5に対して映像を投影する位置を変えることによってその距離を変更可能に構成する。その結果、生成距離Lを適宜変更可能となる。例えば生成距離Lを2.5m〜40mの間で変更することが可能である。
【0016】
また、車両のフロントバンパの上方やルームミラーの裏側等にはフロントカメラ10が設置される。フロントカメラ10は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたカメラにより構成された撮像装置であり、光軸方向を車両の進行方向前方に向けて設置される。そして、フロントカメラ10により撮像された撮像画像に対して画像処理が行われることによって、フロントウィンドウ7越しに乗員8に視認される前方環境(即ち虚像9が重畳される環境)の状況等が検出される。尚、フロントカメラ10の代わりにミリ波レーダ等のセンサを用いても良い。
【0017】
次に、
図2を用いてHUD1のより具体的な構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るHUD1の内部構成を示した図である。
【0018】
図2に示すようにHUD1は、プロジェクタ4と、スクリーン5と、凹面鏡6と、第1ミラー11と、第2ミラー12と、反射ミラー13と、カバーガラス15と、制御回路部16と、CANインターフェース17とから基本的に構成されている。
【0019】
ここで、プロジェクタ4は光源としてLED光源やランプ光源やレーザ光源を用いた映像投射装置であり、例えばレーザ走査式プロジェクタとする。尚、プロジェクタ4としてはDLPプロジェクタや液晶プロジェクタやLCOSプロジェクタを用いても良い。尚、レーザ走査式プロジェクタ以外を用いた場合にはプロジェクタ4に対して別途投射レンズを配置する必要がある。
【0020】
図3はプロジェクタ4の構成を示した図である。
図3に示すようにプロジェクタ4は、内部にレーザ光の光源18を備えており、例えばレーザ走査式プロジェクタでは光源18から出力されるレーザ光をMEMSミラー19で反射させ、スクリーン5上に走査させることによってスクリーン5に所望の映像を投射する。
【0021】
一方、スクリーン5は、プロジェクタ4から投射された映像が投射される被投射媒体であり、例えばすりガラス等の拡散板やマイクロレンズアレイ等からなる透過型スクリーンが用いられる。ここで、
図4はスクリーン5を示した図である。
【0022】
図4に示すようにスクリーン5は、映像が投射される映像投射面として被投射エリア21を有しており、光源18からの光を用いてプロジェクタ4から投射された映像が表示される。即ち、スクリーン5が映像の表示される映像表示面に相当する。尚、乗員8はプロジェクタ4によって投射された映像を投射側とは逆側から視認することとなる。
【0023】
また、プロジェクタ4とスクリーン5の代わりに乗員8に視認させる映像を表示する手段として液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いても良い。その場合には、液晶ディスプレイのバックライトや有機ELディスプレイの発光素子が光源に相当し、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイにおいて映像の表示される面が液晶表示面に相当する。
【0024】
また、スクリーン5は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光源18の光路22に対して傾斜するように配置されている。より具体的には、生成される虚像9の下端が上端よりもユーザ側に位置する方向、即ち、
図5に示すようにスクリーン5の上端が光源18(プロジェクタ4)側となる方向に傾斜して配置されている。尚、スクリーン5の傾斜角θ(光路22に対して垂直な面からの傾斜で定義する)は、生成距離Lを変更可能とする範囲(例えば2.5m〜40m)や生成される虚像9を傾斜させる角度に基づいて適宜設定される。例えば3度とする。
【0025】
また、凹面鏡6は、スクリーン5に表示された映像を拡大して反射させて乗員8に視認させることによって、乗員8の前方に映像の虚像9(
図1参照)を生成する投影鏡である。そして、フロントウィンドウ7とともに虚像生成手段を構成する。尚、凹面鏡6としては、球面凹面鏡や、非球面凹面鏡、若しくは投影映像の歪みを補正するための自由曲面鏡が用いられる。
【0026】
また、第1ミラー11は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光路22に沿ってスクリーン5と凹面鏡6との間に配置され、スクリーン5から第1方向で入射する光路22を、第1方向と異なる第2方向に変更する光の反射手段である。同じく第2ミラー12は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光路22に沿ってスクリーン5と凹面鏡6との間に配置され、スクリーン5から第2方向で入射する光路22を、第2方向と異なる第3方向に変更する光の反射手段である。特に本実施形態では、
図6に示すように第1ミラー11の反射面が第2ミラーの反射面となす角度が90度で、更に、第1ミラー11の反射面が第1方向となす角度が45度、第2ミラー12の反射面が第3方向となす角度が45度となるように第1ミラー11及び第2ミラー12を配置する。即ち、本実施形態では特に第1方向と第3方向は互いに平行とされるとともに逆方向となるように構成する。
【0027】
また、第1ミラー11及び第2ミラー12は、第1方向に沿って一体に移動可能に構成されている。具体的には、第1ミラー11及び第2ミラー12の背面側にあるミラー駆動モータ23を駆動させることによって、
図6に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向と平行な方向に対して前後方向に移動させることが可能となる。
【0028】
そして、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xが変更されることとなる。具体的には
図7に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12を、スクリーン5に近づく方向へと移動させると光路長Xが短くなる。一方で、第1ミラー11及び第2ミラー12を、スクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると光路長Xが長くなる。具体的には光路長Xは、第1ミラー11及び第2ミラー12の移動量の倍の距離を変位することとなる。即ち、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと5mm移動させれば光路長Xは1cm短くなり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと3mm移動させれば光路長Xは6mm長くなる。そして、光路長Xを変更させた結果、後述のように乗員8から虚像9までの距離である生成距離Lの長短を変更することが可能となる。
【0029】
尚、本実施形態では
図6に示すように第1方向と第3方向が互いに平行で逆方向となるように構成しているが、必ずしも第1方向と第3方向が互いに平行で逆方向となるように構成する必要はない。具体的には、第1方向と第3方向が90度以上異なる方向となるように第1ミラー11及び第2ミラー12を配置すれば、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
【0030】
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向に平行な方向へ移動させる構成としているが、必ずしも第1方向と平行な方向に移動させる必要はなく、第1方向と所定角度(例えば5度や10度)異なる方向に移動させる構成としても良い。その場合であっても、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
【0031】
また、ミラー駆動モータ23はステッピングモータからなる。そして、HUD1は、制御回路部16から送信されるパルス信号に基づいてミラー駆動モータ23を制御し、第1ミラー11及び第2ミラー12の光路22に沿った位置を適切に位置決めすることが可能となる。
【0032】
そして、上述のように光路22に対して傾斜するようにスクリーン5を配置し、且つ第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を移動可能に構成した本実施形態のHUD1では、スクリーン5に対して投射される映像26の位置を変更することや、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、
図8に示すようにスクリーン5に投射された映像26の虚像9が生成される位置(具体的には乗員8から虚像9までの距離である生成距離L)や虚像9の傾斜角を変更することが可能である。
【0033】
ここで、生成距離Lや虚像9の傾斜角は、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xとスクリーン5において映像26が表示される位置、より具体的にはスクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離に依存する。従って、本実施形態では、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を移動させたり、傾斜したスクリーン5に対して映像26を投影する位置を変えることによって生成距離Lや虚像9の傾斜角を変更することが可能である。具体的には、スクリーン5に投射する映像26の位置を上方に移動させたり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると、スクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離が長くなり、その結果、生成距離Lが長くなる(即ち、乗員8からはより遠くに虚像9が視認されるようになる)。また、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5から遠ざかる方向へと移動させると、地表面に対する虚像9の傾斜の角度φは小さくなる(即ち、より地表面に平行に近い虚像9となる)。一方で、スクリーン5に投射する映像26の位置を下方に移動させたり、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと移動させると、スクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡6までの光路22に沿った距離が短くなり、その結果、生成距離Lが短くなる(即ち、乗員8からはより近くに虚像9が視認されるようになる)。また、第1ミラー11及び第2ミラー12をスクリーン5に近づく方向へと移動させると、地表面に対する虚像9の傾斜の角度φは大きくなる(即ち、より地表面に垂直に近い虚像9となる)。
【0034】
従って、HUD1は、虚像9を生成する位置(具体的には乗員8から虚像9までの距離である生成距離L)を決定すると、決定された生成距離Lに対応する位置に虚像9を生成する為の光路長X(即ち、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置)やスクリーン5に対して映像26を投射する位置を決定し、その後に決定された光路長Xとなるように第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させ、更にスクリーン5に対して映像26を投射する位置も制御するように構成する。より具体的には、先ず第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を決定することによって生成距離Lを変更可能な下限値と上限値が設定され、その後にスクリーン5に対して映像26を投射する位置を適宜変更することによって、設定された下限値から上限値までの範囲内で生成距離Lを変更可能に構成する。
【0035】
尚、生成距離Lは、上述したようにスクリーン5において映像26の表示された位置から凹面鏡までの光路22に沿った距離に依存するので、特にスクリーン5に対して表示する映像26の位置が、凹面鏡6からの距離が変わる方向(即ちスクリーン5の短辺方向)に変位した場合に変位する。また、映像26の表示位置の変位量に対する生成距離Lの変位量は、映像26が表示される位置から凹面鏡6までの距離で異なる。即ち、映像26が表示される位置が凹面鏡6から遠い(即ち光路長Xが長い場合やスクリーン5の上方に投射する場合)ほど、映像26の表示位置の変位量に対する生成距離Lの変位量は大きくなる。即ち、光路長Xが短い場合やスクリーン5の下方では、映像26の表示位置を変位させても生成距離Lは大きく変わらないが、光路長Xが長い場合やスクリーン5の上方では、映像26の表示位置をわずかに変位させた場合でも、生成距離Lが大きく変位することとなる。
【0036】
また、生成距離Lを変更することが可能な範囲や虚像9の傾斜角度φを変更することが可能な範囲は、スクリーン5の傾斜角度θや第1ミラー11及び第2ミラー12を移動可能な範囲によって決定される。特に本実施形態では、第1ミラー11及び第2ミラー12を最もスクリーン5側に移動させた状態では、傾斜角度φは90度に極めて近い角度であって、映像26の投射する位置に関わらず生成距離Lがほぼ2.5mとなるように設計する。一方、第1ミラー11及び第2ミラー12を最もスクリーン5から離れた位置に移動させた状態では、傾斜角度φは0度に近い角度であって、被投射エリア21の最も下方に投射された映像26の虚像9の下端の生成距離Lが15mであり、被投射エリア21の最も上方に投射された映像26の虚像9の上端の生成距離Lが40mとなるように設計する。即ち、被投射エリア21の下端から上端までに跨る映像26を表示すると、乗員8からの距離が15mから40mの区間に跨る虚像9が生成されることとなる。
【0037】
ここで、スクリーン5に対して投射された映像26は、凹面鏡6によって反射されるが、第1ミラー11、第2ミラー12、反射ミラー13においても反射されるので、生成される虚像9はスクリーン5に対して投射された映像と上下左右は反転しない像となる。即ち、スクリーン5の上方に投射された映像26ほど、その映像26に基づいて生成される虚像9も乗員8から鉛直方向上側に視認され、スクリーン5の下方に投射された映像26ほど、その映像26に基づいて生成される虚像9も乗員8から鉛直方向下側に視認される。従って、乗員8から遠くの位置に生成される虚像9ほど乗員8からは上方に視認できる。ここで、車両の乗員8がフロントウィンドウ7越しに前方環境を視認する場合には、基本的に遠くに位置するものほど上方に見える。従って、スクリーン5を傾斜させることによって視認できる前方環境と虚像9とを対応させ、虚像9と前方環境との重畳表示を見やすくすることが可能となる。
【0038】
また、生成距離Lが長い虚像9ほど傾斜角φは小さくなるので、例えば車両の進行方向を案内する矢印や路面に表示する警告等の周辺環境に重畳させて乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9を生成する場合には、生成距離Lを長く設定する(例えば20mとする)ことによって、虚像9をできる限り路面(地表面)に沿って生成する。その結果、生成された虚像9を周辺環境に適切に重畳させることが可能となる。一方で、例えば車両の現在車速やTV画面、地図画像等の周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9を生成する場合には、生成距離Lを短く設定する(例えば2.5mとする)ことによって、虚像9を路面(地表面)に対してできる限り垂直に生成する。その結果、ユーザに見易い虚像9を生成することが可能となる。
【0039】
一方、反射ミラー13は、
図2に示すように第1ミラー11及び第2ミラー12によって反射された光源18からの光を、凹面鏡6の方向に更に反射することによってHUD1内で光路22を変更する光の反射手段である。
【0040】
また、カバーガラス15は、HUD1の上面に配置された透過性の板状部材である。そして、スクリーン5に表示された映像は凹面鏡6によって反射され、カバーガラス15を介して乗員8に視認させる。尚、カバーガラス15としてはフレネルレンズを用いても良い。また、カバーガラス15としてフレネルレンズを用いる場合には、凹面鏡6の代わりに平面の鏡を用いることも可能である。
【0041】
また、制御回路部16は、HUD1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。ここで、
図10は本実施形態に係るHUD1の構成を示したブロック図である。
【0042】
図10に示すように制御回路部16は、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述の虚像生成処理プログラム(
図11参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムや後述の位置設定テーブルを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。また、制御回路部16は、プロジェクタ4、ミラー駆動モータ23とそれぞれ接続され、プロジェクタ4や各種モータの駆動制御を行う。
【0043】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース17は、車両内に設置された各種車載器や車両機器の制御装置間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、HUD1は、CANを介して、各種車載器や車両機器の制御装置(例えば、ナビゲーション装置48、AV装置49等)と相互通信可能に接続される。それによって、HUD1は、ナビゲーション装置48やAV装置49等から取得した情報を投影可能に構成する。また、VICS(登録商標)情報やプローブ情報等の交通情報についてもナビゲーション装置48から取得可能となる。
【0044】
続いて、前記構成を有するHUD1においてCPU31が実行する虚像生成処理プログラムについて
図11に基づき説明する。
図11は本実施形態に係る虚像生成処理プログラムのフローチャートである。ここで、虚像生成処理プログラムは車両のACC電源がONされた後に実行され、車両の乗員8に視認させる虚像9を生成するプログラムである。尚、以下の
図11にフローチャートで示されるプログラムは、HUD1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0045】
先ず、虚像生成処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31は、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“基準位置”に設定する。ここで、“基準位置”は、被投射エリア21の最も下方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の下端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の表示位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の下限)が15mとなる光路長Xを実現する位置とする。例えば最もスクリーン5から離れた位置が“基準位置”となる。尚、前述したようにスクリーン5は光路22に対して傾斜して配置されているので、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“基準位置”に設定した場合には、被投射エリア21の最も上方に投射された映像26に基づいて生成される虚像9の上端の生成距離L(即ち被投射エリア21内の映像26の表示位置に基づく生成距離Lの変更可能範囲の上限)は、15mより長い40mとなる。即ち、被投射エリア21の下端から上端までに跨る映像26を表示すると、
図12に示すように乗員8からの距離が15mから40mの区間に跨る虚像9が生成されることとなる。
【0046】
尚、第1ミラー11及び第2ミラー12の現在位置が、“基準位置(例えば最もスクリーン5から離れた位置)”に配置されていない場合には、ミラー駆動モータ23を駆動させて、虚像9の生成距離Lが“基準距離”となる位置へと第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させる。また、本実施形態では“基準位置”を生成距離Lの変更可能範囲の下限が15mとなる位置としているが、15m以外(例えば10mや20m)としても良い。
【0047】
次に、S2においてCPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4によるスクリーン5への映像の投射を開始する。尚、プロジェクタ4により投射される映像としては、車両2に関する情報や乗員8の運転の支援の為に用いられる各種情報がある。例えば障害物(他車両や歩行者)に対する警告、ナビゲーション装置48で設定された案内経路(走行予定経路)や案内経路に基づく案内情報(車両の進行方向を示す矢印等)、路面に表示する警告(追突注意、制限速度等)、現在車速、案内標識、地図画像、交通情報、ニュース、天気予報、時刻、接続されたスマートフォンの画面、テレビ画面等がある。特に本実施形態では、ナビゲーション装置48で設定された案内経路に基づく案内情報である車両の進行方向を示す矢印を出力する構成とする。
【0048】
その結果、例えばナビゲーション装置48において案内経路が設定されており、車両の進行方向前方に“案内経路に沿って走行する為に道なり方向以外に通過する必要のある地点(以下、旋回対象地点という)”が存在しない場合には、
図13に示すように車両の進行方向前方に道なり方向を示す矢印の虚像9を生成する。また、本実施形態では特に矢印の虚像9を地面上、より具体的には虚像9の下端が地面上に位置するように虚像9を生成する。尚、15m〜40mの範囲内のどの位置に虚像9を生成するかについては、被投射エリア21に対して映像26を投射する位置に基づいて詳細に設定することが可能である。基本的には、乗員から虚像9の下端までの距離が20mとなる位置に映像26を投射する。
【0049】
一方で車両の進行方向前方に旋回対象地点がある場合には、
図14に示すように車両の進行方向前方に道なり方向を示す矢印に替えて道なり方向以外の方向(例えば左折方向)を示す矢印の虚像9を生成する。尚、旋回
対象地点としては、案内経路に沿って車両が走行する為に道なり方向以外に通過する必要のある分岐点や、道なり方向以外の方向に通過することによって目的地又は経由地に進入する進入地点が該当する。また、本実施形態では特に矢印の虚像9を旋回対象地点に重畳するように虚像9を生成する。それによって、右左折の対象となる分岐点や、目的地又は経由地への進入地点の位置を乗員8は明確に特定することが可能となる。但し、後述のように車両の進行方向前方に障害物が存在する場合には、虚像9の生成位置を上下左右方向に移動させたり(S7)、乗員から虚像9までの距離を障害物よりも短い距離(例えば2.5m)となるように生成位置を変更する(S9)ように構成する。
【0050】
続いて、S3においてCPU31は、フロントカメラ10で撮像した撮像画像を取得する。その後、取得した撮像画像に対して画像処理を行うことによって車両の進行方向前方に位置する障害物や区画線を検出する。尚、障害物としては道路上を移動する移動体である他車両、自転車、歩行者等が該当する。
【0051】
その後、S4においてCPU31は、車両の進行方向前方に割り込みを行った障害物、即ち虚像9の生成位置に接近する障害物があるか否か判定する。具体的には、
図15に示すように障害物(
図15に示す例では2輪車)51が車両2の走行する車線52の区画線53を超えて車両2の走行する車線52内に進入した場合に、車両の進行方向前方に割り込みを行った障害物があると判定する。尚、区画線53が無い道路などでは、例えば車両から虚像9の生成位置までを結ぶ直線を設定し、該直線から所定距離(例えば5m)以内に障害物が近付いた場合に、車両の進行方向前方に割り込みを行った障害物があると判定するように構成しても良い。
【0052】
そして、車両の進行方向前方に割り込みを行った障害物がある、即ち虚像9の生成位置に接近する障害物があると判定された場合(S4:YES)には、S5へと移行する。それに対して、車両の進行方向前方に割り込みを行った障害物が無い、即ち虚像9の生成位置に接近する障害物が無いと判定された場合(S4:NO)には、虚像9の生成位置を変更することなくスクリーン5への映像の投射を継続して行う。その後、S3へと戻る。
【0053】
S5においてCPU31は、CANを介してナビゲーション装置48から車両の進行方向の道路状況(即ち虚像9を重畳させるエリアの道路状況)を取得する。具体的には、分岐点の有無、分岐点が存在する場合には分岐点の位置や形状を取得する。
【0054】
次に、S6においてCPU31は、前記S5で取得した道路状況に基づいて、車両の進行方向の道路状況(即ち虚像9を重畳させるエリアの道路状況)が特殊道路条件を満たすか否かを判定する。ここで、特殊道路条件を満たす場合とは、旋回対象地点から車両側の所定距離(例えば300m)以内に旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がある場合とする。例えば、
図16に示すように車両の進行方向前方に旋回対象地点として左折対象となる分岐点55がある場合には、分岐点55よりも車両側に他の左折可能な分岐点56があって、且つ分岐点55から分岐点56までの距離Mが所定距離以内の場合に、特殊道路条件を満たすと判定される。また、
図17に示すように車両の進行方向前方に旋回対象地点として左折方向に通過することによって目的地57に進入する進入地点がある場合には、進入地点よりも車両側に左折可能な分岐点58があって、且つ進入地点から分岐点58までの距離Nが所定距離以内の場合に、特殊道路条件を満たすと判定される。尚、所定距離は、固定の距離としても良いし、道路種別や車両の現在車速に応じて変更しても良い。
【0055】
そして、車両の進行方向の道路状況(即ち虚像9を重畳させるエリアの道路状況)が特殊道路条件を満たさないと判定された場合(S6:NO)には、虚像9の生成位置を上下左右方向に移動したとしても車両の乗員8に案内が誤認される虞がないと推定する。即ち、映像26の投射位置を変更すれば乗員8から障害物が虚像9と重複して視認されることを回避でき、且つ虚像9が障害物の中に埋め込まれたように視認されることについても回避できると推定する。その後、S7へ移行する。
【0056】
一方、車両の進行方向の道路状況(即ち虚像9を重畳させるエリアの道路状況)が特殊道路条件を満たすと判定された場合(S6:YES)には、虚像9の生成位置を上下左右方向に移動した場合に車両の乗員8に案内が誤認される虞があると推定する。即ち、映像26の投射位置でなく生成距離Lを変更することによって、虚像9が障害物の中に埋め込まれたように視認されることを回避するのが妥当であると推定する。その後、S8へと移行する。
【0057】
S7においてCPU31は、スクリーン5に対して映像26を投射する位置(即ちスクリーン5の映像26の表示位置)を変更することによって、虚像9が生成される位置を障害物と重複しない位置へと移動させる。具体的には、
図18に示すように、スクリーン5に対して投射する映像26の位置を、障害物51から離れる方向となる右方又は左方へと移動させる。その結果、映像26に基づいて生成される虚像9の位置は、生成距離Lを変更することなく右方又は左方へと移動することとなる。そして、
図18に示すように虚像9が生成される位置が移動すると、障害物51が虚像9に接近した場合であっても障害物51と虚像9とが光路上で重複することがない。即ち車両の進行方向前方を視認する乗員8に対して、虚像9と障害物51とを重複させずに視認させることが可能となる。尚、前記S7において映像26の投射位置を移動する距離は、障害物と虚像9とが光路上で重複しなくなる最短の距離とする。また、スクリーン5に対して投射する映像26の位置を移動させる方向は、左右方向以外に下方や上方としても良い。但し、上方とすると旋回対象地点よりも遠方に虚像9が重畳されることとなり、旋回対象地点を車両が道なりに通り過ぎる虞があるので、上方以外の方向に移動させるのが望ましい。
【0058】
一方、S8においてCPU31は、車両の乗員8から割り込みを行った障害物までの距離Rを取得する。具体的には、フロントカメラ10で撮像した画像や車両に設置された測距センサ等のその他センサの検出結果に基づいて取得する。
【0059】
次に、S9においてCPU31は、スクリーン5に対する映像26の投射位置(即ち映像26の表示位置)は固定した状態で、ミラー駆動モータ23を駆動させ、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を“基準位置”から光路長Xが短くなる側へと移動させる。そして、生成距離Lが車両の乗員8から割り込みを行った障害物までの距離Rよりも短い距離となるように設定する。
【0060】
尚、生成距離Lは距離Rより短い距離に設定されれば良く、例えばR−1mに設定しても良いし、距離Rに関わらず設定可能な最小値(例えば2.5m)としても良い。その結果、映像26に基づいて生成される虚像9の位置は、乗員8から障害物51よりも近くに視認されるようになる。従って、障害物が虚像9に接近し、障害物51と虚像9とが光路上で重複した場合であっても、虚像9が障害物51に埋め込まれて視認されることを防止できる。
【0061】
尚、前述したように乗員8から接近した位置に生成される虚像9は路面に対してほぼ垂直となる。例えば、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置を光路長Xが最小となる位置に変更した場合には、乗員8からの距離が2.5mの位置に路面に対してほぼ垂直な虚像9が生成されることとなる。
【0062】
尚、前記S9におけるミラー駆動モータ23の駆動は、フラッシュメモリ34から読み出した位置設定テーブルを用いて行う。ここで、位置設定テーブルは、設定可能な生成距離L毎(本実施形態では0.5m毎)に対応付けて、第1ミラー11及び第2ミラー12の位置(即ち光路長X)が規定されている。そして、CPU31は、位置設定テーブルに基づいて第1ミラー11及び第2ミラー12を“基準位置”から“生成距離Lが距離Rより短くなる位置”へ移動させるのに必要なミラー駆動モータ23の駆動量(パルス数)を決定する。その後、CPU31は、決定された駆動量だけミラー駆動モータ23を駆動させる為のパルス信号をミラー駆動モータ23へと送信する。そして、パルス信号を受信したミラー駆動モータ23は、受信したパルス信号に基づいて駆動を行う。その結果、第1ミラー11及び第2ミラー12は“基準位置”から“生成距離Lが距離Rより短くなる位置”へと移動することとなる。
【0063】
尚、特に生成距離Lを設定可能な最小値(例えば2.5m)とした場合には、CPU31は、プロジェクタ4へと信号を送信し、プロジェクタ4により投射される映像の内容を変更するように構成しても良い。具体的には、周辺環境に重畳させて乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9(第1の虚像)を生成する為の映像から、周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9(第2の虚像)を生成する為の映像へと切り替える。具体的には、周辺環境に重畳させずに乗員8に視認させることにより案内を行う虚像9として、特に車両周辺の地図情報及びナビゲーション装置48で設定された案内経路や案内経路に基づく案内情報を出力する構成とする。
【0064】
その結果、虚像9を生成する位置を自車両の先端に近い2.5m先の位置とし、前方環境と重畳した案内を行うことが難しい状況となった場合であっても、虚像の表示態様を切り替えることによって案内経路に沿った車両の進行方向を車両の乗員に把握させることが可能となる。
【0065】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るHUD1によれば、プロジェクタ4から、映像をスクリーン5に投射し、スクリーン5に投射された映像を車両2のフロントウィンドウ7に反射させて車両の乗員8に視認させることによって、車両の乗員8が視認する映像の虚像を生成する。また、HUD1は、障害物51が虚像9の生成位置に接近することを検出した場合であって、旋回対象地点から車両側の所定距離以内に旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がある場合には、スクリーン5に対する映像の表示位置を変更することなく、乗員8から虚像9までの距離を乗員8から障害物51までの距離よりも短い距離に変更することによって虚像9の生成位置を障害物51よりも乗員側に移動させる(S9)。一方、旋回対象地点から車両側の所定距離以内に旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がない場合には、スクリーン5に対する映像の表示位置を変更することによって、虚像9の生成位置を障害物51と重複しない位置に移動させる(S7)ように構成する。その結果、虚像9の生成位置に他車両等の障害物が接近した場合において、虚像9の生成位置を上下左右方向に変更することによって虚像9の案内内容が誤認される虞のある状況では、スクリーン5に対する映像の表示位置を変更することなく、乗員から虚像9までの距離を乗員から障害物までの距離よりも短い距離に変更するので、仮に虚像9と障害物が重複しても虚像9が障害物に埋め込まれて視認されることを防止できる。また、虚像9の生成位置を変更しても前方環境において虚像9が重畳する位置は変わらないので、分岐点が近接して配置されていたとしても虚像9による案内の内容を誤認させることもない。一方で、虚像9の生成位置を変更したとしても虚像9の案内内容が誤認される虞のない状況では、スクリーン5に対する映像の表示位置を変更することによって、虚像9と障害物とを重複させないように構成するので、容易な制御で車両の乗員に虚像を適切に視認させることが可能となる。
【0066】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態ではHUD1によって車両2のフロントウィンドウ7の前方に虚像を生成する構成としているが、フロントウィンドウ7以外のウィンドウの前方に虚像を生成する構成としても良い。また、HUD1により映像を反射させる対象はフロントウィンドウ7自身ではなくフロントウィンドウ7の周辺に設置されたバイザー(コンバイナー)であっても良い。
【0067】
また、本実施形態では車両2に対してHUD1を設置する構成としているが、車両2以外の移動体に設置する構成としても良い。例えば、船舶や航空機等に対して設置することも可能である。また、アミューズメント施設に設置されるライド型アトラクションに設置しても良い。その場合には、ライドの周囲に虚像を生成し、ライドの乗員に対して虚像を視認させることが可能となる。
【0068】
また、本実施形態では旋回対象地点から車両側の所定距離以内に旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がない場合には、生成距離Lを変位させずにスクリーン5に対する映像の表示位置のみを変更することによって、虚像9の生成位置を移動させる構成としているが、生成距離Lについても変位させる構成としても良い。
【0069】
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を光路に沿って一体に移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更する構成としているが、第1ミラー11や第2ミラー12は固定とし、スクリーン5や凹面鏡6を光路に沿って移動させることによって、光路長Xを変更する構成としても良い。また、第1ミラー11と第2ミラー12は一体で移動可能な構成であれば、別々の駆動源で駆動させる構成としても良い。
【0070】
また、本実施形態では第1ミラー11及び第2ミラー12を第1方向に平行な方向へ移動させる構成としているが、必ずしも第1方向と平行な方向に移動させる必要はなく、第1方向と所定角度(例えば5度や10度)異なる方向に移動させる構成としても良い。その場合であっても、第1ミラー11及び第2ミラー12を移動させることによって、スクリーン5から凹面鏡6までを結ぶ光路22の光路長Xを変更することが可能である。
【0071】
また、本実施形態では、スクリーン5は、スクリーン5と凹面鏡6とを結ぶ光源18の光路22に対して傾斜するように配置されているが、光路22に対して垂直となるように配置しても良い。その場合には、生成距離Lの変更は第1ミラー11及び第2ミラー12の移動のみによって行う。
【0072】
また、本実施形態では投射レンズが不要となるレーザ走査式プロジェクタを用いているが、レーザ走査式プロジェクタ以外のプロジェクタ(例えば、DLPプロジェクタ、液晶プロジェクタ、LCOSプロジェクタ)を用いても良い。また、プロジェクタ4とスクリーン5の代わりに乗員8に視認させる映像を表示する手段として液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を用いても良い。
【0073】
また、本実施形態ではHUD1のCPU31が虚像生成処理プログラム(
図11)の各ステップを実行する構成としているが、HUD1以外の車載器(例えばナビゲーション装置48)や車両の制御を行うECU等が一部または全部の処理を実行する構成としても良い。
【0074】
また、本発明に係る虚像表示装置を具体化した実施例について上記に説明したが、虚像表示装置は以下の構成を有することも可能であり、その場合には以下の効果を奏する。
【0075】
例えば、第1の構成は以下のとおりである。
車両に設置され、映像を表示する映像表示面と、前記映像表示面に表示された前記映像を前記車両の乗員に視認させることによって前記映像の虚像を生成する虚像生成手段と、障害物が前記虚像の生成位置に接近することを検出した場合に、前記虚像の生成位置を変更する生成位置変更手段と、を有し、前記虚像生成手段は、前記車両の進行方向前方に
、前記車両が走行予定経路に沿っ
て走行する為に道なり方向以外の方向に通過する地点である旋回対象地点がある場合には、該旋回対象地点の通過方向を案内する前記虚像を生成し、前記生成位置変更手段は、前記旋回対象地点から前記車両側の所定距離以内に前記旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がある場合には、前記映像表示面に対する前記映像の表示位置を変更することなく、前記乗員から前記虚像までの距離を前記乗員から前記障害物までの距離よりも短い距離に変更することによって前記虚像の生成位置を前記障害物よりも前記乗員側に移動させ、前記旋回対象地点から前記車両側の所定距離以内に前記旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がない場合には、前記映像表示面に対する前記映像の表示位置を変更することによって、前記虚像の生成位置を前記障害物と重複しない位置に移動させることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像の生成位置に他車両等の障害物が接近した場合において、虚像の生成位置を上下左右方向に変更することによって虚像の案内内容が誤認される虞のある状況では、映像表示面に対する映像の表示位置を変更することなく、乗員から虚像までの距離を乗員から障害物までの距離よりも短い距離に変更するので、仮に虚像と障害物が重複しても虚像が障害物に埋め込まれて視認されることを防止できる。また、虚像の生成位置を変更しても前方環境において虚像が重畳する位置は変わらないので、分岐点が近接して配置されていたとしても虚像による案内の内容を誤認させることもない。一方で、虚像の生成位置を変更したとしても虚像の案内内容が誤認される虞のない状況では、映像表示面に対する映像の表示位置を変更することによって、虚像と障害物とを重複させないように構成するので、容易な制御で車両の乗員に虚像を適切に視認させることが可能となる。
【0076】
また、第2の構成は以下のとおりである。
前記生成位置変更手段は、前記旋回対象地点から前記車両側の所定距離以内に前記旋回対象地点の通過方向と同方向に道路が接続された分岐点がない場合には、前記乗員から前記虚像までの距離を変更することなく、前記虚像の生成位置を前記障害物と重複しない位置に移動させることを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、乗員から虚像までの距離を変更することなく映像表示面に対する映像の表示位置を変更することのみによって、虚像と障害物とを重複させずに視認させることができるので、光路長の変更等の複雑な制御を行うことなく車両の乗員に虚像を適切に視認させることが可能となる。
【0077】
また、第3の構成は以下のとおりである。
前記生成位置変更手段によって前記虚像の生成位置を前記障害物よりも前記乗員側に移動させた場合に、生成される前記虚像を周辺環境に重畳させて前記乗員に視認させることにより案内を行う第1の虚像から、前記周辺環境に重畳させずに前記乗員に視認させることにより案内を行う第2の虚像へと切り替える虚像切替手段を有することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、虚像を生成する位置を乗員に特に近い位置に移動させることによって、前方環境と重畳した案内を行うことが難しい状況となった場合であっても、虚像の表示態様を切り替えることによって案内経路に沿った車両の進行方向を車両の乗員に把握させることが可能となる。
【0078】
また、第4の構成は以下のとおりである。
前記旋回
対象地点は、前記走行予定経路に沿って車両が走行する為に道なり方向以外に通過する必要のある分岐点であって、前記虚像生成手段は、前記分岐点における前記車両の通過方向を案内する前記虚像を生成することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、車両が右左折する対象となる分岐点に近接して他の分岐点が配置されていたとしても、車両が右左折する対象となる分岐点を誤認させることがない。
【0079】
また、第5の構成は以下のとおりである。
前記旋回
対象地点は、道なり方向以外の方向に通過することによって
前記走行予定経路の目的地又
は経由地に進入する進入地点であって、前記虚像生成手段は、前記進入地点における前記車両の通過方向を案内する前記虚像を生成することを特徴とする。
上記構成を有する虚像表示装置によれば、目的地や経由地に近接して分岐点が配置されていたとしても、車両が分岐点で誤って右左折することを防止することが可能となる。