特許第6361496号(P6361496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361496
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】インク用溶媒およびインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20180712BHJP
   C09D 11/36 20140101ALI20180712BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180712BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   C09D11/00
   C09D11/36
   B41J2/01 501
   B41M5/00 120
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-259011(P2014-259011)
(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公開番号】特開2016-117845(P2016-117845A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2017年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】湯山 佳菜子
(72)【発明者】
【氏名】増田 現
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−206687(JP,A)
【文献】 特開2006−206686(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/078811(WO,A1)
【文献】 特開2013−047217(JP,A)
【文献】 特開2005−035916(JP,A)
【文献】 特開2007−161733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11、B41J 2、B41M 5、
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示されるイオン液体からなることを特徴とするインク用溶媒。
【化1】
(式中、R1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は、メチル基またはエチル基を表し、nは、1または2を表し、X-は、1価のアニオンを表す。)
【請求項2】
前記X-が、BF4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO22-または(FSO22-を表す請求項1記載のインク用溶媒。
【請求項3】
前記R1が、メチル基またはエチル基を表す請求項1または2記載のインク用溶媒。
【請求項4】
前記R1およびR2が、共にメチル基を表す請求項3記載のインク用溶媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のインク用溶媒と、色材とを含むことを特徴とするインク。
【請求項6】
有機溶媒を含む請求項5記載のインク。
【請求項7】
水を含む請求項5記載のインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク用溶媒およびインクに関し、さらに詳述すると、特定のイオン液体を含むインク用溶媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットプリンタ等に用いられるインクとして、溶媒主成分が水である水性インクと溶媒主成分が有機溶媒である油性インクとが知られている。
インク溶媒として用いられる水や有機溶媒は、経時的に蒸発してインク中の色材が固化するという不具合が生じる場合がある。
特にインクジェット用のインクの場合、インクを噴射するノズル径が小さいため、インクをヘッドに充填した状態で長期間放置しておくと、ノズル先端から溶媒が蒸発し、固化した色材がノズルを閉塞させ、それによって、インクの不吐出やインクの噴射方向性不良などを起こし、その結果、印刷不良が生じることとなる。
【0003】
また、油性インクでは、有機溶媒の比誘電率が水に比べて低いため、帯電した電荷が中和されにくいという性質がある。
特にインクジェット用インクの場合、インク滴の運動エネルギーが小さく、外部力の影響を受け易い。
このため、インク滴で発生した電荷と、記録媒体が保持する電荷、または記録媒体上に付与したインクが保持する電荷との間で発生した静電力の影響で、インク飛翔方向が曲がり、方向性不良などの不具合が生じ、その結果、印刷不良が生じることとなる。
これらの問題点を解決すべく、インクにイオン液体を添加する技術が報告されている(特許文献1,2参照)が、画像位置精度や長期保存後の噴出性等の点で改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−206686号公報
【特許文献2】特開2006−206687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、イオン液体を含む新規かつ有用なインク用溶媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、所定のピロリジニウムカチオンを有するイオン液体が、低粘度であり、各種色材の分散・溶解能も良好であるためインク用溶媒として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で示されるイオン液体からなることを特徴とするインク用溶媒、
【化1】
(式中、R1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、R2は、メチル基またはエチル基を表し、nは、1または2を表し、X-は、1価のアニオンを表す。)
2. 前記X-が、BF4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO22-または(FSO22-を表す1のインク用溶媒、
3. 前記R1が、メチル基またはエチル基を表す1または2のインク用溶媒、
4. 前記R1およびR2が、共にメチル基を表す3のインク用溶媒、
5. 1〜4のいずれかのインク用溶媒と、色材とを含むことを特徴とするインク、
6. 有機溶媒を含む5のインク、
7. 水を含む5のインク
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインク用溶媒に用いられるイオン液体は、低粘度であるととともに、各種色材の分散・溶解能も良好であるため、インクジェット印刷用インク等の各種インクを調製する際の溶媒として好適である。
本発明のインク用溶媒を用いることで、従来有機溶媒を用いて調製された有機溶媒の使用量を削減でき、環境負荷面で有利である。
また、本発明のインク用溶媒を用いて調製されたインクは、画像位置精度に優れた印刷を与えるとともに、長期間保存時もインク特性が安定するため初期噴射性と長期保管後の噴射性を両立でき、より具体的には得られる画像、パターンが安定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】合成例1で得られたMEMP・FSAの1H−NMRスペクトル図である。
図2】合成例3で得られたMMMP・FSAの1H−NMRスペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係るインク用溶媒は、式(1)で示されるイオン液体からなる。
【0011】
【化2】
【0012】
1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、その具体例としては、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、c−プロピル基等が挙げられるが、直鎖状のアルキル基が好ましく、中でもメチル基、エチル基がより好ましく、メチル基がより一層好ましい。
2は、メチル基またはエチル基を表すが、メチル基が好ましい。
nは1または2を表す。
【0013】
中でもカチオン構造としては、より熱安定性に優れているという点から、下記(A)の構造が好ましく、より低粘度という点から、下記(B)の構造が好ましい。
【0014】
【化3】
【0015】
-は1価のアニオンであり、イオン液体を形成し得るアニオンであれば特に限定されるものではないが、本発明では、BF4-、PF6-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO22-または(FSO22-が好ましく、色材の溶解・分散能、低粘度性等を考慮すると、中でも、BF4-、(CF3SO22-、(FSO22-がより好ましく、低粘度でインク用溶媒に適したイオン液体を与えるという点から、(CF3SO22-、(FSO22-が好ましい。
いずれのアニオンを有するイオン液体であっても水性インク、油性インクのどちらにも適用可能であるが、水性インクを調製する場合、特にアニオンは、BF4-、CF3SO3-、CF3CO2-が好ましく、油性インクを調製する場合、特にアニオンは、BF4-、PF6-、CF3SO3-、(CF3SO22-、(FSO22-が好ましい。
【0016】
本発明で用いられるイオン液体は、国際公開第2002/076924号記載の方法や、中国特許出願公開第101747243号明細書等により製造することができ、例えば、定法に従って製造したN−アルコキシアルキル−N−アルキルピロリジニウムハライド(例えば、クロライド、ブロマイド等)と、所望のアニオンのアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウム等)塩とを水や有機溶媒中でアニオン交換反応させて得ることができる。また、陰イオン交換樹脂を用いてハライド塩を水酸化物塩に変換した後、アニオンに対応する酸との中和反応によって合成するなどのその他公知の方法でも合成できる。
【0017】
本発明で好適に用いることができるイオン液体としては下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
【化4】
【0019】
【化5】
【0020】
本発明のインクは、上述したイオン液体からなるインク用溶媒と、色材とを少なくとも含む。
本発明では、上記イオン液体からなるインク用溶媒を用いることにその特徴があるため、インクを構成する色材をはじめとしたその他の材料としては特に限定されるものではなく、公知の種々の材料から適宜選択して用いることができる。
【0021】
色材としては、染料、顔料、樹脂で被覆された顔料(マイクロカプセル顔料)、染料や顔料で着色した樹脂を分散させた着色微粒子など一般的にインクの色材として用いられているものから適宜選択して用いればよい。
染料としては、水溶性染料、分散染料、油性染料のいずれでもよい。
水溶性染料の具体例としては、C.I.DirectBlack−2,4,9,11,17,19,22,32,80,151,154,168,171,194,195;C.I.DirectBlue−1,2,6,8,22,34,70,71,76,78,86,112,142,165,199,200,201,202,203,207,218,236,287,307;C.I.DirectRed−1,2,4,8,9,11,13,15,20,28,31,33,37,39,51,59,62,63,73,75,80,81,83,87,90,94,95,99,101,110,189,227;C.I.DirectYellow−1,2,4,8,11,12,26,27,28,33,34,41,44,48,58,86,87,88,132,135,142,144,173;C.I.FoodBlack−1,2;C.I.AcidBlack−1,2,7,16,24,26,28,31,48,52,63,107,112,118,119,121,156,172,194,208;C.I.AcidBlue−1,7,9,15,22,23,27,29,40,43,55,59,62,78,80,81,83,90,102,104,111,185,249,254;C.I.AcidRed−1,4,8,13,14,15,18,21,26,35,37,52,110,144,180,249,257,289;C.I.AcidYellow−1,3,4,7,11,12,13,14,18,19,23,25,34,38,41,42,44,53,55,61,71,76,78,79,122等が挙げられる。
【0022】
分散染料の具体例としては,C.I.DisperseYellow−3,5,7,8,42,54,64,79,82,83,93,100,119,122,126,160,184:1,186,198,204,224;C.I.DisperseOrange−13,29,31:1,33,49,54,66,73,119,163;C.I.DisperseRed−1,4,11,17,19,54,60,72,73,86,92,93,126,127,135,145,154,164,167:1,177,181,207,239,240,258,278,283,311,343,348,356,362;C.I.DisperseViolet−33;C.I.DisperseBlue−14,25,26,56,60,73,87,128,143,154,165,165:1,176,183,185,201,214,224,257,287,354,365,368;C.I.DisperseGreen−6:1,9等が挙げられる。
【0023】
油性染料の具体例としては,C.I.SolventYellow−2,6,14,15,16,19,21,33,56,61,80;C.I.SolventOrange−1,2,5,6,14,37,40,44,45;C.I.SolventRed−1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121;C.I.SolventBlue−2,11,12,25,35,36,55,73;C.I.SolventBlack−3,5,7,22,23;C.I.AcidBlack−123;C.I.SolventViolet−8,3,14,21,27;C.I.SolventGreen−3;C.I.SolventBown−3,5,20,37等が挙げられる。
【0024】
顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、それらの色としては、黒;シアン、マゼンタ、イエローの3原色;赤、緑、青、茶、白等の特定色;金、銀色等の金属光沢色などが挙げられる。
黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料などが挙げられる。
黒色顔料の具体例としては、Raven7000、Raven5750、Raven5250、Raven5000ULTRAII、Raven3500、Raven2000、Raven1500、Raven1250、Raven1200、Raven1190ULTRAII、Raven1170、Raven1255、Raven1080、Raven1060(コロンビアン・カーボン社製);Regal400R、Regal330R、Regal660R、MogulL、BlackPearlsL、Monarch700、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400(キャボット社製);ColorBlackFW1、ColorBlackFW2、ColorBlackFW2V、ColorBlack18、ColorBlackFW200、ColorBlackS150、ColorBlackS160、ColorBlackS170、Printex35、PrintexU、PrintexV、Printex140U、Printex140V、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4A、SpecialBlack4(デグサ社製);No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0025】
シアン顔料の具体例としては、C.I.PigmentBlue−1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16,22,60等が挙げられる。
マゼンタ顔料の具体例としては、C.I.PigmentRed−5,7,12,48,48:1,57,112,122,123,146,168,184,202;C.I.PigmentViolet−19等が挙げられる。
イエロー顔料としては、C.I.PigmentYellow−1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,114,128,129,138,151,154,155,180等が挙げられる。
【0026】
また、上記顔料に対して表面改質処理を施した自己分散顔料や、Cab−o−jet−200、Cab−o−jet−250、Cab−o−jet−260、Cab−o−jet−270、Cab−o−jet−300、IJX−444、IJX−55(キャボット社製)、MicrojetBlackCW−1、CW−2(オリエント化学(株)製)等の市販の自己分散顔料等も使用できる。
【0027】
これら色材の使用量としては特に限定されるものではないが、通常、インク中に0.1〜50質量%程度であり、1〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0028】
なお、インク中には、色材を分散させるために分散剤を、色材に対して質量比で1〜100%で添加してもよい。
分散剤の具体例としては、スチレン−マレイン酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸アルキルエステル共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸アルキルエステル共重合体、メタクリル酸アルキルエステル重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸アルキルエステル共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニルアルコール、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0029】
イオン液体の添加量は、インク全体に対し質量比で0.1質量%以上50質量%未満が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%がより一層好ましい。イオン性液体の添加量が0.1質量%未満であると、画像位置精度や長期保管時の噴射性の低下がみられる場合があり、50質量%を超えると、乾燥時間が長くなる場合がある。
また、本発明のインクは、上記イオン液体とともに、水または有機溶媒を含む。
【0030】
水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水などが挙げられるが、インクの保管安定性や、目詰まり防止の点で、イオン交換水、純水、超純水が好ましい。
有機溶媒としては、グリコール系溶媒、アミド系溶媒、アミン系溶媒、アルコール系溶媒、含硫黄溶媒、炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、カーボネート系溶媒、植物油等の有機溶媒が使用される。
【0031】
グリコール系溶媒の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物のグリコールエーテル類などが挙げられる。
【0032】
アミド系溶媒の具体例としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−シクロヘキシル−2−ピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
アルコール系溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、ベンジルアルコール、トリエタノールアミン等が挙げられる。
含硫黄溶媒の具体例としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0033】
炭化水素系溶媒の具体例としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルヘキサン、n−オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;n−パラフィン系溶剤、iso−パラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などのパラフィン系溶剤;トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
ケトン系溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル系溶媒の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ビニル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等が挙げられる。
エーテル系溶媒の具体例としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0034】
カーボネート系溶媒の具体例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
植物油としては、荏の油、アマニ油、桐油、ケシ油、くるみ油、紅花油、ひまわり油等の乾性油;菜種油等の半乾性油;ヤシ油等の不乾性油などが挙げられる。
上記有機溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0035】
さらに、本発明のインクには、インク中に0.01〜5質量%程度の割合で界面活性剤を添加することもできる。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれを使用してもよい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、脂肪族アルカノールアミド、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0036】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ケリルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、スルホベタイン、サルフェートベタイン、イミダゾリドンベタイン、アミドプロピルベタイン、アミノジプロピオン酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
これらの界面活性剤は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明のインクの粘度は、特に限定されるものではないが、インクジェット用インクとして用いる場合、25℃で、1〜50mPa・sが好ましく、1.2〜40mPa・sがより好ましく、1.5〜30mPa・sがより好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で使用した分析装置は下記のとおりである。
[1]1H−NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 AL−400
溶媒:重ジメチルホルムアミド
[2]粘度計
装置:BROOK FIELD社製 プログラマブルレオメーター
【0039】
[1]イオン液体の合成
[合成例1]MEMP・FSAの合成
【化6】
【0040】
ピロリジン(和光純薬工業(株)製)1.51質量部と塩化2−メトキシエチル(関東化学(株)製)1.00質量部とを混合し、還流しながら1時間反応させた。反応後、反応液は2層に分離したが、しばらく放冷すると下層は固化した。デカンテーションにより上層のみ回収し、減圧蒸留により精製し、目的物であるN−2−メトキシエチルピロリジン(沸点76℃/蒸気圧45mmHg)0.96質量部を得た(収率70%)。
得られたN−2−メトキシエチルピロリジン1.00質量部、およびこれに対して2倍容量のトルエン(和光純薬工業(株)製)を混合し、オートクレーブ中に入れ、系内を窒素置換した。密閉系にした後、室温撹拌下で塩化メチルガス(日本特殊化学工業(株)製)約1.00質量部を加えた。塩化メチルガス導入時には温度および内圧の上昇が見られ、最高時で温度は約53℃、内圧は5.5kgf/cm2(約5.4×105Pa)まで上昇した。そのまま加熱せずに反応させ、2日後に塩化メチルガス約0.75質量部を加えた。さらに1日反応させた後、加圧を解除し、系中に生成した結晶を減圧濾過にてろ別し、真空ポンプを用いて乾燥させ、N−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.29質量部を得た(収率92%)。
得られたN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.00質量部に当倍容量のイオン交換水を加え、撹拌して溶解させた。この溶液をカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(関東化学(株)製)1.29質量部を当倍容量のイオン交換水に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で反応させ、3時間以上経過した後に、2層に分離した反応液を分液し、下層の有機層を2回イオン交換水で洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(MEMP・FSA)1.50質量部を得た(収率83%)。MEMP・FSAの1H−NMRスペクトルを図1に示す。なお25℃での粘度は、35cPであった。
【0041】
[合成例2]MEMP・TFSAの合成
【化7】
【0042】
合成例1記載と同様の合成法で得たN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.00質量部に、当倍容量のイオン交換水を加えて撹拌して溶解させた。この溶液をリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(関東化学(株)製)1.68質量部を当倍容量のイオン交換水に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で反応させ、3時間以上経過した後に、2層に分離した反応液を分液し、下層の有機層を2回イオン交換水で洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(MEMP・TFSA)1.50質量部を得た(収率83%)。なお25℃での粘度は、50cPであった。
【0043】
[合成例3]MMMP・FSAの合成
【化8】
【0044】
N−メチルピロリジン(和光純薬工業(株)製)14.4質量部をテトラヒドロフラン(和光純薬工業(株)製)200質量部に溶かした溶液を氷冷し、撹拌下、クロロメチルメチルエーテル(東京化成工業(株)製)17.1質量部を加えた。一晩反応させた後、析出した固体を、桐山ロートを用い減圧濾過した。得られた白色固体を、真空ポンプを用いて乾燥させ、中間体N−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド26.7質量部を得た(収率96%)。
得られたN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライド8.58質量部をイオン交換水10質量部に溶解させた。この溶液をカリウムビス(フルオロスルホニル)アミド(関東化学(株)製)12.5質量部をイオン交換水5質量部に溶かした溶液に撹拌下で加えた。室温で撹拌を一晩継続させた後、2層に分かれた反応液を分液し、下層の有機層をイオン交換水で4回洗浄後、真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)アミド(MMMP・FSA))を10.2質量部得た(収率63%)。MMMP・FSAの1H−NMRスペクトルを図2に示す。なお25℃での粘度は、20cPであった。
【0045】
[合成例4]MMMP・TFSAの合成
【化9】
【0046】
N−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライドを、合成例3と同様の合成法で得たN−2−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムクロライドに代えた以外は、合成例2と同様にして目的物であるN−2−メトキシメチル−N−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(MMMP・TFSA)を得た。なお25℃での粘度は、42cPであった。
【0047】
[合成例5]MEMP・CF3SO3の合成
【化10】
【0048】
合成例1と同様の方法で得たN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムクロライド1.00質量部に5倍容量アセトニトリルを加え、撹拌して溶解させた。この溶液にトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(関東化学(株)製)1.05質量部を加え、一晩放置した。析出した結晶をろ別後、アセトニトリルをエバポレータにて留去し、さらに真空ポンプで1時間真空引きを行った。クロロホルムを残留物質量の5倍量加えて撹拌して均一にした後、冷蔵庫(4℃)に投入し、一晩放置した。析出した結晶をろ別し、クロロホルムをエバポレータにて留去し、さらに真空ポンプを用いて乾燥させ、目的物であるN−2−メトキシエチル−N−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート1.55質量部を得た(収率95%)。なお25℃での粘度は、88cPであった。
【0049】
[合成例6]MEMP・BF4の合成
【化11】
【0050】
国際公開第2002/0726924号記載の方法で合成した。なお25℃での粘度は、154cPであった。
【0051】
[2]有機溶媒系インクの調製
顔料100gに対してイオン交換水500gを加え、超音波ホモジナイザーをかけた後、遠心分離装置にて遠心処理を行い、上澄み液を除去した。この作業を3回繰り返した後、得られた顔料を減圧下で乾燥させた。
顔料および顔料分散剤が質量比で1:1となるように、顔料と顔料分散剤との混合体を、ロールミルを用いて混錬した後、所定量のイオン液体、有機溶媒、その他添加剤を添加し、ビーズミルで2時間分散し、所望のインクを調製した。
上記の手法を用い、下記実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−4に示した各組成のインクを調製した。
【0052】
[実施例1−1]
C.I.PigmentRed−122:5質量%
スチレン−ステアリルメタアクリレート共重合体:5質量%
MEMP・FSA:10質量%
POE(6)ポリグリセリルエーテル(SC−E450、阪本薬品工業(株)製):20質量%
アイソパーM(エクソンモービル社製):40質量%
【0053】
[実施例1−2]
MEMP・FSAをMEMP・TFSAに代えた以外は実施例1−1と同組成
【0054】
[実施例1−3]
MEMP・FSAをMMMP・FSAに代えた以外は実施例1−1と同組成
【0055】
[実施例1−4]
MEMP・FSA30質量%、アイソパーM40質量%に代えた以外は実施例1−1と同組成
【0056】
[実施例1−5]
C.I.PigmentRed−122:4質量%
スチレン−ステアリルメタアクリレート共重合体:4質量%
MMMP・TFSA:6質量%
アイソパーH(エクソンモービル社製):86質量%
【0057】
[実施例1−6]
MMMP・TFSAをMEMP・CF3SO3に代えた以外は実施例1−5と同組成
【0058】
[実施例1−7]
MMMP・TFSAをMEMP・BF4に代えた以外は実施例1−5と同組成
【0059】
[実施例1−8]
MMMP・TFSA12質量%、アイソパーH80質量%に代えた以外は実施例1−5と同組成
【0060】
[比較例1−1]
C.I.PigmentRed−122:5質量%
スチレン−ステアリルメタアクリレート共重合体:5質量%
トリメチルヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:30質量%
SC−E450:20質量%
アイソパーM:40質量%
【0061】
[比較例1−2]
トリメチルヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド10質量%、アイソパーM60質量%に代えた以外は比較例1−1と同組成
【0062】
[比較例1−3]
C.I.PigmentRed−122:4質量%
スチレン−ステアリルメタアクリレート共重合体:4質量%
1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:12質量%
アイソパーH:80質量%
【0063】
[比較例1−4]
1−オクタデシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド6質量%、アイソパーH86質量%に代えた以外は比較例1−3と同組成
【0064】
上記実施例1−1〜1−8および比較例1−1〜1−4で調製した有機溶媒系インクを、600dpi、1024ノズルの試作プリントヘッド(ドロップ量14ng)を用いて、FX−C2紙(富士ゼロックス(株)製)に印字し、下記手法に従って画像位置精度を測定した。結果を表1に示す。
【0065】
(画像位置精度測定法)
インクジェット記録装置にインクを充填し、同一画素上にインクを2滴印字させる。記録媒体上に印字された画像を解析し、インクの中心値を算出し、インク中心間の距離を求め、下記基準により評価した。
◎:インク中心間の距離が、5μm未満
○:インク中心間の距離が、5μm以上10μm未満
△:インク中心間の距離が、10μm以上20μm未満
×:インク中心間の距離が、20μm以上
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示されるように、実施例1−1〜1−8で調製したインクでは、イオン液体量によらず、画像位置精度が優れていたのに対し、比較例で調製したインクでは、イオン液体が少量の場合(比較例1−2,1−3)、画像位置精度が低下することがわかる。
【0068】
[3]水系インクの調製
顔料100gに対してイオン交換水500gを加え、超音波ホモジナイザーをかけた。遠心分離装置にて遠心処理を行い、上澄み液を除去した。この作業を3回繰り返した後、得られた顔料を減圧下で乾燥させた。
初期顔料分散体中の顔料濃度が15質量%となるように、イオン交換水、顔料分散剤を添加し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.5に調整した。この顔料分散体に、超音波ホモジナイザーをかけて顔料を分散した。この分散液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分(全量に対して20質量%)を除去して顔料分散液を得た。所定の組成となるように、溶媒、顔料分散液、その他添加剤を添加して撹拌し、得られた液体を、5μmフィルターを通過させて所望のインクを調製した。
上記の手法を用い、下記実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2に示した各組成のインクを調製した。
【0069】
[実施例2−1]
MogulL(キャボット社製):4質量%
スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:1質量%
MEMP・CF3SO3:25質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:69質量%
【0070】
[実施例2−2]
MEMP・CF3SO3をMEMP・BF4に代えた以外は実施例2−1と同組成
【0071】
[実施例2−3]
MEMP・CF3SO3 10質量%、イオン交換水84質量%に代えた以外は実施例2−1と同組成
【0072】
[比較例2−1]
MogulL(キャボット社製):4質量%
スチレン−アクリル酸−アクリル酸ナトリウム共重合体:1質量%
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド:25質量%
アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物:1質量%
イオン交換水:69質量%
【0073】
[比較例2−2]
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロマイド10質量%、イオン交換水84質量%に代えた以外は比較例2−1と同組成
【0074】
上記各実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2で調製した水系インクについて、インクジェット記録装置(キャノン(株)製)を用い、下記手法にしたがって初期噴射性および長期保管後噴射性を測定・評価した。結果を表2に示す。
【0075】
(初期噴射性測定方法)
インクジェット記録装置にインクを充填し、ノズルチェックパターンを印字させて吐出ノズル数を観察し、下記基準により評価した。
◎:全ノズル吐出
○:全ノズルのうち90%以上のノズルが吐出
△:全ノズルのうち80%以上90%未満のノズルが吐出
×:全ノズルのうち80%未満のノズルが吐出
【0076】
(長期保管後噴射性測定方法)
インクジェット記録装置にインクを充填し、キャップをせずに、一般環境下で30日間放置した後、ノズルチェックパターンを印字させて吐出ノズル数を観察し、下記基準により評価した。
◎:全ノズル吐出
○:全ノズルのうち90%以上のノズルが吐出
△:全ノズルのうち80%以上90%未満のノズルが吐出
×:全ノズルのうち80%未満のノズルが吐出
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示されるように、色材およびイオン液体を含有するインクを用いた実施例2−1〜2−3では、長期保管時の噴射性に優れているが、比較例では不十分であることがわかる。
図1
図2