特許第6361498号(P6361498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361498経路探索システム、方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361498
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】経路探索システム、方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20180712BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20180712BHJP
   G08G 1/137 20060101ALI20180712BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20180712BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   G01C21/34
   G08G1/00 A
   G08G1/137
   G09B29/10 A
   G09B29/00 F
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-259907(P2014-259907)
(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公開番号】特開2016-121873(P2016-121873A)
(43)【公開日】2016年7月7日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100117466
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 渉
(72)【発明者】
【氏名】六鹿 克彦
(72)【発明者】
【氏名】望月 篤
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−327385(JP,A)
【文献】 特開2009−79921(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0049339(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/00
G08G 1/137
G09B 29/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得手段と、
基準経路の特徴と複数の前記利用者毎の前記移動経路の特徴との差を示す、複数の前記特徴についての差分値を取得する差分値取得手段と、
前記利用者毎の前記移動経路を、複数の前記差分値が類似する前記移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類手段と、
前記タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定手段と、
設定された前記コストに基づいて経路を探索する経路探索手段と、
を備える経路探索システム。
【請求項2】
前記差分値分類手段は、
経路選択の要因となる複数の前記特徴について前記差分値を取得する、
請求項1に記載の経路探索システム。
【請求項3】
前記差分値分類手段は、
複数の前記特徴についての前記差分値を変数とした多変量解析を行うことによって、前記差分値を、前記利用者の複数の嗜好に対応した複数の前記タイプに分類する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の経路探索システム。
【請求項4】
前記基準経路は、
予め決められた基準コストに対して基準係数を乗じることによって設定されたコストに基づいて前記移動経路の出発地から目的地まで経路探索を行った場合に探索される経路であり、
前記コスト設定手段は、
前記基準コストに前記タイプ毎に異なる係数を乗じることにより、前記タイプ毎の道路の前記コストを設定する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の経路探索システム。
【請求項5】
前記移動経路取得手段は、
前記利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路を前記移動経路として取得する、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の経路探索システム。
【請求項6】
前記移動経路取得手段は、
出発地と目的地とが共通であって、所定比率以上の区間が一致する経路が所定期間内に所定回数以上利用されている場合に、当該経路を前記移動経路として取得する、
請求項5に記載の経路探索システム。
【請求項7】
複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得工程と、
基準経路の特徴と複数の前記利用者毎の前記移動経路の特徴との差を示す、複数の前記特徴についての差分値を取得する差分値取得工程と、
前記利用者毎の前記移動経路を、複数の前記差分値が類似する前記移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類工程と、
前記タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定工程と、
設定された前記コストに基づいて経路を探索する経路探索工程と、
を含む経路探索方法。
【請求項8】
複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得機能と、
基準経路の特徴と複数の前記利用者毎の前記移動経路の特徴との差を示す、複数の前記特徴についての差分値を取得する差分値取得機能と、
前記利用者毎の前記移動経路を、複数の前記差分値が類似する前記移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類機能と、
前記タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定機能と、
設定された前記コストに基づいて経路を探索する経路探索機能と、
をコンピュータに実現させる経路探索プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路探索システム、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者の経路選択の嗜好に応じた経路探索を実行可能にするための技術が開発されている。例えば、特許文献1には、自車両の実際の走行経路が、探索経路とは異なる経路であった場合に、両経路でルート特徴量を比較し、走行経路に関するユーザの嗜好性を推定し、推定した嗜好性に合致する探索経路を演算する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、自車両の走行経路に基づいてユーザの嗜好性を解析しているため、解析対象のユーザについての嗜好性しか得られず、解析結果を汎用的に利用することができない。
本発明は、前記課題にかんがみてなされたもので、簡易な処理により複数の利用者の嗜好を反映した経路探索を実行可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、経路探索システムは、複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得手段と、基準経路の特徴と複数の利用者毎の移動経路の特徴との差を示す、複数の特徴についての差分値を取得する差分値取得手段と、利用者毎の移動経路を、複数の差分値が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類手段と、タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定手段と、設定されたコストに基づいて経路を探索する経路探索手段と、を備える。
【0006】
また、上記の目的を達成するため、複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得工程と、基準経路の特徴と複数の利用者毎の移動経路の特徴との差を示す、複数の特徴についての差分値を取得する差分値取得工程と、利用者毎の移動経路を、複数の差分値が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類工程と、タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定工程と、設定されたコストに基づいて経路を探索する経路探索工程と、を含む経路探索方法が構成される。
【0007】
さらに、上記の目的を達成するため、複数の利用者の移動経路を取得する移動経路取得機能と、基準経路の特徴と複数の利用者毎の移動経路の特徴との差を示す、複数の特徴についての差分値を取得する差分値取得機能と、利用者毎の移動経路を、複数の差分値が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する差分値分類機能と、タイプ毎に道路のコストを設定するコスト設定機能と、設定されたコストに基づいて経路を探索する経路探索機能と、をコンピュータに実現させる経路探索プログラムが構成される。
【0008】
すなわち、経路探索システム、方法、プログラムでは、複数の利用者の移動経路を取得し、基準経路の特徴と複数の利用者毎の移動経路の特徴との差を示す差分値を取得する。当該差分値は、各利用者が基準経路を利用しなかった場合に、基準経路以外の経路の特徴を反映した値になる。そして、各利用者が基準経路を利用しなかった場合には、各利用者が当該基準経路を選択することなく他の経路を選択したことになるため、当該基準経路との差が各利用者の嗜好を表していると見なすことができる。
【0009】
そこで、複数の特徴についての差分値を複数のタイプに分類すれば、各タイプが利用者の嗜好に対応していると見なすことができ、利用者の嗜好を複数のタイプに分類することが可能である。そして、このようなタイプの分類は、複数の利用者の移動経路および複数の特徴についての経路の差に基づいて定義されるため、嗜好としてのタイプは、特定の利用者の嗜好のみを反映しているのではなく、複数の利用者の嗜好を反映している。従って、客観的に嗜好を定義することができる。このため、当該タイプ毎に設定されたコストに基づいて経路を探索することにより、簡易な処理により複数の利用者の嗜好を反映した経路探索を実行することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】経路探索システムを示すブロック図である。
図2】(2A)は移動経路取得処理のフローチャート、(2B)は基準経路取得処理のフローチャート、(2C)は分類処理のフローチャート、(2D)は経路探索者分類処理のフローチャートである。
図3】(3A)はコスト設定処理のフローチャート、(3B)は経路探索処理のフローチャートである。
図4】多変量解析の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)経路探索システムの構成:
(2)移動経路取得処理:
(3)基準経路取得処理:
(4)分類処理:
(5)コスト設定処理:
(6)経路探索者分類処理:
(7)経路探索処理:
(8)他の実施形態:
【0012】
(1)経路探索システムの構成:
図1は、本発明の一実施形態である経路探索システム10の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる経路探索システム10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20と、記録媒体30と通信部40とを備えており、制御部20は、当該ROMや記録媒体30に記録されたプログラムを実行することができる。通信部40は、車両Cと無線通信を行うための装置である。すなわち、制御部20は、通信部40を制御することにより、任意のタイミングで車両Cと通信を行って、任意の情報を授受することができる。
【0013】
本実施形態において、経路探索システム10と通信可能な車両Cは複数存在する。また、車両Cはナビゲーションシステム200を備えており、ナビゲーションシステム200は、経路案内処理を実行することができる。すなわち、ナビゲーションシステム200は、利用者から指示された出発地から目的地までの経路を取得し、当該経路に沿って車両Cを誘導するための案内を行う。なお、本実施形態においては、経路探索システム10がナビゲーションシステム200の利用者からの要求に応じて経路を探索するように構成されている。
【0014】
すなわち、ナビゲーションシステム200の利用者が出発地および目的地を指示すると、ナビゲーションシステム200は、当該出発地および目的地を示す情報とともに経路探索の要求を経路探索システム10に送信する。経路探索システム10において、制御部20が通信部40を介して当該経路探索の要求を受け取ると、制御部20は、出発地から目的地までの経路を探索し、経路を示す情報を車両Cに送信する。車両Cにおいて、ナビゲーションシステム200が当該経路を示す情報を取得すると、ナビゲーションシステム200は当該情報に基づいて経路案内を行う。なお、経路探索を行う利用者を経路探索者と呼ぶ。
【0015】
さらに、ナビゲーションシステム200は、既定のタイミングで経路探索システム10と通信を行って、車両Cが移動した経路を示す移動経路情報(プローブ情報)を経路探索システム10に送信する機能を有している。すなわち、ナビゲーションシステム200は、車両Cが通過した道路区間を示す情報を取得して保持し、所定の送信タイミングで経路探索システム10に対して送信する。なお、本実施形態において、ナビゲーションシステム200から送信される移動経路情報は、利用者(ナビゲーションシステム毎のIDや利用者毎のID等)、出発地、目的地および移動経路を構成する道路区間を示す情報である。
【0016】
以上のように、車両Cと通信可能な経路探索システム10において、経路探索システム10は経路探索者の嗜好に応じた経路を探索できるように構成されている。本実施形態において、ROMまたは記録媒体30には経路探索プログラム21が記録されており、制御部20は、当該経路探索プログラム21を実行することによって、嗜好に応じた経路を探索することが可能になる。
【0017】
また、当該経路探索等において参照可能にするため、記録媒体30には、予め地図情報30bが記録されている。地図情報30bは、道路区間の端点に対応するノードの位置を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、施設の位置および属性を示す施設データ等を含んでいる。さらに、リンクデータには、道路区間毎のコストである基準リンクコストを示す情報と、ある道路区間から他の道路区間に移動する際のコストである基準移動コストを示す情報とが含まれている。本実施形態においては、基準リンクコストおよび基準移動コストの総和が小さい経路が探索される。また、本実施形態において基準リンクコストは、道路区間の距離(または旅行時間)に応じて決定される値であり、道路区間の距離が長いほど(または旅行時間が長いほど)大きい値になるように設定される。さらに、本実施形態においては、基準リンクコストおよび基準移動コストに所定の係数を乗じることで算出されたリンクコストおよび移動コストに基づいて経路探索が行われ、デフォルトでは、基準コストに基準係数を乗じることによって設定されたコスト(基準リンクコストにリンクコスト用の基準係数を乗じて得られたリンクコストおよび基準移動コストに移動コスト用の基準係数を乗じて得られた移動コスト)に基づいて経路が探索される。さらに、本実施形態においては、異なる条件で探索を行うことも可能であり、この場合、基準リンクコストおよび基準移動コストに条件毎の係数を乗じてリンクコストおよび移動コストを設定し、設定されたリンクコストおよび移動コストに基づいて探索が行われる。
【0018】
さらに、本実施形態において、リンクデータには、各道路区間の道路の属性を示す情報が対応づけられている。道路の属性を示す情報は、道路種別と車線と道路幅と信号機に関する情報である。道路種別を示す情報は、国道、一般道、細街路、有料道路など、道路の種類を示す情報であり、有料道路の場合には、料金を算出するための情報も含まれている。車線を示す情報は、車線数を示す情報であり、片側通行、両側通行の区別とともに各方向の車線数を示す情報である。
【0019】
道路幅を示す情報は、道路の幅を相対的に比較可能な情報であり、本実施形態においては、3段階(広い、狭い、通常)に道路の幅を示している。信号機に関する情報は、道路区間の端点または道路区間中に信号機が存在する場合に、その位置を示す情報を含み、信号機の構成も示している。信号機の構成を示す情報は、例えば、右左折専用の信号を示すことが可能であるか否かを示す情報等である。
【0020】
このような地図情報30bが定義された状態において、経路探索者の嗜好に応じた経路探索を実行可能にするため、経路探索プログラム21は、移動経路取得部21aと分類部21bとコスト設定部21cと経路探索者分類部21dと経路探索部21eとを備えている。移動経路取得部21aは、複数の利用者の移動経路を取得する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、通信部40を介して、複数の車両Cから送信された移動経路情報を取得し、記録媒体30に記録する(移動経路情報30a)。さらに、制御部20は、所定期間毎に記録媒体30に記録された移動経路情報30aに基づいて解析を行うように構成されており、制御部20は、移動経路取得部21aの処理により、移動経路情報30aを参照し、解析対象の移動経路を取得する。
【0021】
なお、本実施形態において、解析対象の移動経路は1利用者に対して1個特定される。すなわち、ナビゲーションシステム200から送信される移動経路情報には、当該ナビゲーションシステム200の利用者が異なる日時に車両Cを走行させたことによって取得された異なる日時における移動経路を示す情報が含まれる。そこで、制御部20は、同一の利用者(同一のナビゲーションシステム200)から送信された移動経路情報が示す移動経路であって、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路を解析対象の移動経路として取得する。すなわち、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路(他の経路より利用頻度が高いと見なすことができる経路)は、利用者が嗜好によって当該経路を選択している確率が高い。従って、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路を利用者の移動経路として取得することにより、信頼性の高い解析を行うことが可能になる。なお、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路が複数個である場合、制御部20は、最も頻度が多い経路を解析対象の移動経路とみなす。
【0022】
分類部21bは、複数の利用者の移動経路の複数の特徴に基づいて、利用者毎の移動経路を、複数の特徴が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、複数の特徴を持つ移動経路を1個のサンプルと捉えると、利用者の嗜好が複数の特徴によって間接的に示された複数のサンプルが得られていることになる。そこで、制御部20は、解析対象として特定された移動経路を1個のサンプルと見なし、各サンプルにおける複数の特徴が類似する場合に同一のタイプとなるように各サンプルを分類することにより、得られた分類が嗜好を反映したタイプであると見なす。
【0023】
移動経路の複数の特徴は、経路選択に影響を与える特徴であればよく、本実施形態においては、利用者毎の嗜好を際立たせる特徴を解析できるようにするため、制御部20は、基準経路の特徴と移動経路の特徴とを対比させる。具体的には、制御部20は、差分値取得部21b1の処理により、基準経路の特徴と解析対象の移動経路(複数の利用者毎の移動経路)の特徴との差を示す、複数の特徴についての差分値を取得する。
【0024】
ここで、基準経路は、基準リンクコストにリンクコスト用の基準係数を乗じて得られたリンクコストおよび基準移動コストに移動コスト用の基準係数を乗じて得られた移動コストに基づいて移動経路の出発地から目的地まで経路探索を行った場合に探索される経路である。そこで、制御部20は、移動経路情報30aを参照し、解析対象の移動経路の出発地および目的地を取得し、基準リンクコストにリンクコスト用の基準係数を乗じて得られたリンクコストおよび基準移動コストに移動コスト用の基準係数を乗じて得られた移動コストに基づいて経路探索処理を行うことによって基準経路を取得する処理を、解析対象の移動経路のそれぞれに対して実行する。このような経路を基準経路とすれば、多くの利用者と異なる嗜好の利用者が選択した経路の特徴を際立たせることができる。解析対象の移動経路毎に基準経路が取得されると、制御部20は、解析対象の移動経路毎の基準経路を示す基準経路情報30cを記録媒体30に記録する。
【0025】
さらに、制御部20は、複数の特徴項目についての特徴値を各経路について取得する。すなわち、制御部20は、地図情報30bを参照し、経路における有料道路の割合、一般道の割合、平均車線数、信号機の数、経路長、所要時間、料金のそれぞれを特徴項目とし、各特徴項目についての値(特徴値と呼ぶ)を、解析対象の移動経路および基準経路について取得する。なお、各特徴項目の特徴値を取得する際の詳細な処理は後述する。以上のように、制御部20は、各経路の複数の特徴項目について特徴値が取得されると、制御部20は、特徴項目毎に移動経路の特徴値から基準経路の特徴値を減じることで、特徴項目毎に差分値を取得する処理を、解析対象の移動経路のそれぞれについて実行する。
【0026】
差分値が取得されると、制御部20は、差分値分類部21b2の処理により、利用者毎の移動経路を、複数の差分値が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類する。すなわち、移動経路毎の差分値は、複数の特徴項目毎の差分値から構成されるため、制御部20は、複数の特徴項目毎の差分値を変数とした多変量解析を行うことによって、移動経路を、利用者の複数の嗜好に対応した複数のタイプに分類する。なお、多変量解析は、例えば、因子分析やクラスター分析等を採用可能であるが、ここでは、因子分析を例に説明する。
【0027】
図4は、因子分析の概要を模式的に示す図である。同図においては、因子分析によって得られた因子が2個である場合の例を示しており、縦軸を第1因子、横軸を第2因子として複数の利用者毎の移動経路をグラフにプロットした状態を示している。同図に示すように、複数の差分値を変数とした各移動経路の因子分析が完了すると、得られた因子によってサンプルとしての移動経路を複数のタイプに分けることができる。すなわち、同図に示す例においては、因子毎に閾値T1,T2を設けると、移動経路をタイプA,B,Cに分類することができる。以上のような因子分析が行われると、制御部20は、移動経路のタイプを示す情報を分類情報30dとして記録媒体30に記録する。分類情報30dが記録されると、制御部20は、当該分類情報30dを参照し、移動経路の複数の特徴(基準経路と解析対象の移動経路の特徴の特徴項目毎の差分値)に基づいて、当該移動経路がいずれのタイプであるのか特定することが可能になる。
【0028】
コスト設定部21cは、タイプ毎の複数の移動経路に基づいて、タイプ毎にリンクコストおよび移動コストを設定する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、リンクコストおよび移動コストは経路探索の際に参照される指標であり、本実施形態においては、リンクコストおよび移動コストの和が小さい経路を探索結果として得ることになる。そこで、制御部20は、分類部21bの処理によって得られたタイプ毎に道路のリンクコストおよび移動コストを設定することで、各タイプの嗜好を持つ利用者が選択する可能性が高い道路区間が探索結果として得られやすくなるようにする。さらに、本実施形態においてリンクコストは、タイプ毎に設定されるとともに道路の属性毎に設定される。すなわち、制御部20は、道路種別、車線数および道路幅毎にリンクコストを設定する。
【0029】
リンクコストおよび移動コストの設定は種々の手法で実施可能であるが、本実施形態において制御部20は、各タイプの嗜好を持つ利用者が選択する可能性が高い道路区間が探索結果として得られやすくなるようにリンクコストおよび移動コストを設定する。すなわち、制御部20は、同一のタイプに分類された複数の移動経路が探索されやすくなるように道路の属性毎の係数を算出する(詳細は後述)。各係数を示す情報は、係数情報30eとして記録媒体30に記録される。
【0030】
このように、係数情報30eが定義された状態においては、制御部20が、道路区間毎の基準リンクコストに対してタイプ毎かつ道路の属性毎に設定された係数を乗じ、道路間の基準移動コストに対してタイプ毎に設定された係数を乗じることでタイプ毎の移動コストを設定することができる。この構成によれば、タイプおよび道路の属性毎に係数を決定するのみでタイプおよび道路の属性毎のリンクコストを定義することができ、タイプ毎に係数を決定するのみでタイプ毎の移動コストを定義することができる。このため、全てのタイプについてコストを示す情報を個別に保持するよりもリソースを節約することができる。また、移動経路を示す情報の蓄積量の増加等に伴ってコストを変更する場合であっても、容易にコストを変更することができる。
【0031】
経路探索者分類部21dは、経路探索者の移動経路の複数の特徴に基づいて、分類手段が分類したタイプのいずれかに経路探索者を分類する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、経路探索要求に含まれる情報に基づいて経路探索要求を行った利用者を特定し経路探索者であると見なす。また、制御部20は、移動経路情報30aに基づいて解析対象とされた移動経路を特定し、解析対象の各移動経路に対応づけられている利用者の中から経路探索者と同一の利用者を特定する。そして、制御部20は、当該利用者に対応づけられている移動経路のタイプが経路探索者のタイプであると見なす。この結果、経路探索者の嗜好が特定されたことになる。
【0032】
経路探索部21eは、経路探索者のタイプについて設定されたコストに基づいて経路を探索する機能を制御部20に実現させるプログラムモジュールである。すなわち、制御部20は、経路探索者のタイプをコスト設定部21cに受け渡す。制御部20は、コスト設定部21cの処理により、係数情報30eを参照して経路探索者のタイプに応じた係数を取得し、基準リンクコストおよび基準移動コストに乗じることにより、経路探索者のタイプに応じたリンクコストおよび移動コストを取得する。
【0033】
そして、制御部20は、経路探索部21eの処理により、経路探索者のタイプに応じたリンクコストおよび移動コストに基づいて、経路探索者の経路探索要求に含まれていた出発地から目的地までの経路をダイクストラ法等によって探索する。経路が取得されると、制御部20は、経路探索部21eの処理により、通信部40を介して経路を示す情報をナビゲーションシステム200に対して送信する。この結果、車両Cのナビゲーションシステム200においては、送信された経路に従って車両Cの利用者(経路探索者)を誘導する。
【0034】
以上の構成において制御部20は、複数の利用者の移動経路の複数の特徴に基づいて、利用者の嗜好に対応したタイプを設定する。このようなタイプの分類は、特徴を予め決められた要素毎に分類するのではなく、複数の利用者の移動経路を収集し、各移動経路の複数の特徴が類似するように設定される。従って、解析を開始する際に、分類結果に恣意性が入ることはなく、複数の利用者の移動経路の特徴から客観的に分類が得られ、利用者の嗜好を的確に反映した複数のタイプを定義することが可能である。
【0035】
さらに、このようなタイプの分類は、複数の利用者の移動経路および複数の特徴についての経路の差に基づいて定義されるため、嗜好としてのタイプは、特定の利用者の嗜好のみを反映しているのではなく、複数の利用者の嗜好を反映している。従って、客観的に嗜好を定義することができる。このため、制御部20が、当該タイプ毎に設定されたコストに基づいて経路を探索することにより、簡易な処理により複数の利用者の嗜好を反映した経路探索を実行することが可能である。
【0036】
さらに、制御部20は、タイプ毎の複数の移動経路に基づいて、タイプ毎かつ道路の属性毎にリンクコストを設定するため、タイプ毎の嗜好に対応した道路の属性の選択を行うようにリンクコストを設定することができる。さらに、この構成においてリンクコストは、タイプ毎かつ道路の属性毎に設定されるため、あるタイプを想定した場合、同一の属性の複数の道路についてのリンクコストを一括して共通の値に設定することで、当該属性の道路のリンクコストを定義することができる。従って、道路区間毎にリンクコストを個別に設定する必要はなく、所定の単位の区画に含まれる道路についてのリンクコストを極めて簡易な処理によって定義することができる。
【0037】
(2)移動経路取得処理:
次に上述の構成における移動経路取得処理を詳細に説明する。図2Aは、当該移動経路取得処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は予め決められた期間毎に実施される。この処理において、制御部20は、移動経路取得部21aの処理により、記録媒体30に記録された移動経路情報30aを参照し、同一利用者の移動経路を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、移動経路情報30aに対応づけられた利用者を示す情報を参照し、利用者を示す情報が同一である移動経路情報30aを取得する処理を各利用者について実行する。この結果、利用者毎に移動経路情報30aが取得された状態になる。
【0038】
次に、制御部20は、移動経路取得部21aの処理により、利用頻度が高い移動経路を解析対象として取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、同一の利用者の移動経路の中から出発地と目的地とが共通であって、所定比率以上の区間が一致する経路を取得する。すなわち、制御部20は、出発地と目的地とが共通であって、所定比率以上の区間が一致する経路を1個の移動経路と見なす。この結果、複数の経路(出発地または目的地が異なる複数の経路)が取得された場合、制御部20は、各経路の中から、所定期間内に所定回数以上利用されている経路を解析対象の移動経路として取得する。
【0039】
なお、所定期間内に所定回数以上利用されている経路が複数個存在する場合、制御部20は、最も利用頻度が高い移動経路を解析対象の移動経路として取得する。むろん、ここでは、所定期間内に所定回数以上利用されている経路のそれぞれを解析対象としてもよい。いずれにしても、制御部20は、以上の処理を、複数の利用者のそれぞれについて実行する。この結果、利用者毎に解析対象の移動経路が取得された状態になる。以上の処理によれば、利用者の利用頻度が高く、利用者の嗜好が強く反映している移動経路が解析対象として取得されるため、信頼性の高い解析を行うための移動経路を解析対象として定義することができる。むろん、出発地と目的地とが共通であるか否かを判定する際には、複数の移動履歴の出発地間の距離が所定範囲内であれば同一出発地であると見なされ、複数の移動履歴の目的地間の距離が所定範囲内であれば同一出発地であると見なされる構成を採用してもよい。
【0040】
(3)基準経路取得処理:
次に上述の構成における基準経路取得処理を詳細に説明する。図2Bは、当該基準経路取得処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は、移動経路取得処理が実行された後に実行される。基準経路取得処理において、制御部20は、利用者毎の解析対象の移動経路から、未処理の移動経路を1個抽出して処理対象とし、ステップS200以降を実行する。
【0041】
ステップS200において、制御部20は、差分値取得部21b1の処理により、処理対象の移動経路の出発地、目的地を取得する(ステップS200)。すなわち、制御部20は、処理対象の移動経路についての移動経路情報30aを参照し、出発地、目的地を取得する。次に、制御部20は、差分値取得部21b1の処理により、地図情報30bを参照し、基準コストに基づいて経路探索を実行する(ステップS205)。すなわち、制御部20は、ステップS200で取得した出発地から目的地までの経路を構成する道路区間のリンクコスト(基準リンクコストにリンクコスト用の基準係数を乗じて得られたリンクコスト)と、移動コスト(基準移動コストに移動コスト用の基準係数を乗じて得られた移動コスト)の総和が最小化するように経路を探索する。基準経路が探索されると、制御部20は、処理対象の移動経路を示す情報に基準経路を示す情報を対応づけて基準経路情報30cとして記録媒体30に記録する。
【0042】
次に、制御部20は、差分値取得部21b1の処理により、全解析対象についてステップS200,S205の処理が終了したか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210において全解析対象についてステップS200,S205の処理が終了したと判定されない場合、制御部20は、利用者毎の解析対象の移動経路から、未処理の移動経路を1個抽出して処理対象とし、ステップS200以降の処理を繰り返す。ステップS210において、全解析対象についてステップS200,S205の処理が終了したと判定された場合、制御部20は、基準経路取得処理を終了する。この結果、利用者毎の解析対象の移動経路の全てについて基準経路が定義された状態になる。
【0043】
(4)分類処理:
次に上述の構成における分類処理を詳細に説明する。図2Cは、当該分類処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は、基準経路取得処理が実行された後に実行される。分類処理において、制御部20は、差分値取得部21b1の処理により、解析対象の移動経路毎に複数の差分値を取得する(ステップS300)。すなわち、制御部20は、解析対象の移動経路のそれぞれについて、当該移動経路の複数の特徴項目についての特徴値と、基準経路の複数の特徴項目についての特徴値とを取得し、特徴項目毎に特徴値の差分を取得することで、解析対象の移動経路毎に複数の差分値を取得する。
【0044】
具体的には、制御部20は、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれについて、地図情報30bを参照し、経路を構成する道路区間を特定する。さらに、制御部20は、各道路区間の端点の位置から道路区間の距離を取得し、経路を構成する道路区間の距離の和を取得することで解析対象の移動経路の経路長を取得する。また、制御部20は、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれを構成する道路区間の中の有料道路を特定し、有料道路の経路長を取得する。そして、制御部20は、有料道路の経路長を移動経路の経路長で除すことにより、有料道路の割合を取得する。また、制御部20は、地図情報30bを参照し、有料道路の区間に基づいて有料道路の区間を走行するために要する料金を取得する。さらに、制御部20は、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれを構成する道路区間の中の一般道を特定し、一般道の経路長を取得する。そして、制御部20は、一般道の経路長を移動経路の経路長で除すことにより、一般道の割合を取得する。
【0045】
さらに、制御部20は、地図情報30bを参照し、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれを構成する道路区間の車線数を取得し、車線数の和を道路区間の数で除すことにより平均車線数を取得する。さらに、制御部20は、地図情報30bを参照し、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれを構成する道路区間の端点または道路区間内に信号機が存在するか否かを判定し、信号機が存在する場合、その数を計測する。さらに、制御部20は、地図情報30bを参照し、解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれを構成する道路区間の長さを取得し、各道路区間の平均車速で除すことにより道路区間毎の所要時間を取得する。そして、制御部20は、各道路区間の所要時間の和を取得することによって解析対象の移動経路と基準経路とのそれぞれの所要時間を取得する。なお、道路区間毎の平均車速は、道路属性毎に予め決められた値であってもよいし、渋滞度等の動的な情報によって特定される値であってもよい。
【0046】
表1は、以上の処理によって得られる特徴値の例を示している。
【表1】
すなわち、表1においては、左側に移動経路の特徴項目についての特徴値を示し、中央に基準経路の特徴項目についての特徴値を示している。
【0047】
制御部20は、これらの表に示すように各特徴項目についての特徴値を取得すると、差分値取得部21b1の処理により、各特徴項目について、移動経路の特徴値から基準経路の特徴値を減じて差分値を取得する。表1においては、右側に両経路の差を示す差分値を特徴項目毎に示している。制御部20は、以上のようにして、解析対象の移動経路と、当該解析対象の移動経路についての基準経路とに基づいて複数の特徴項目の差分値を取得する処理を、解析対象の移動経路のそれぞれについて実行する。この結果、利用者毎の解析対象の移動経路のそれぞれについて差分値が取得された状態になる。
【0048】
差分値が取得されると、制御部20は、差分値分類部21b2の処理により、差分値に基づいて移動経路を分類する(ステップS305)。すなわち、制御部20は、ステップS300で取得された各差分値を、解析対象の移動経路毎の特徴を示す複数の観測変数と見なして因子分析を実行する。そして、制御部20は、各移動経路と各因子との相関に基づいて各移動経路を複数のタイプに分類する。例えば、移動経路と因子との相関の程度を示す因子得点を算出し、相対的に高い得点となった因子が共通である移動経路同士を同一のタイプに分類することにより、各移動経路を複数のタイプに分類する。移動経路が複数のタイプに分類されると、制御部20は、因子分析の結果を示す分類情報30dを記録媒体30に記録する。
【0049】
(5)コスト設定処理:
次に上述の構成におけるコスト設定処理を詳細に説明する。図3Aは、当該コスト設定処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は、分類処理が実行された後に実行される。コスト設定処理において、制御部20は、コスト設定部21cの処理により、係数の初期値を設定する(ステップS500)。すなわち、本実施形態においては、タイプ毎かつ道路属性毎にリンクコストの係数を決定し、タイプ毎に道路間の移動コストの係数を決定することで、利用者の嗜好に応じた経路探索を実行可能にする。
【0050】
このために、制御部20はリンクコストおよび移動コストの値を仮設定し、仮設定された値を徐々に変更させながら理想の値を算出する。そこで、制御部20は、ステップS500において、リンクコストおよび移動コストの係数を仮設定する際の初期値を設定する。ここで、初期値は任意であり、例えば、基準コストに乗じられる基準係数やその近似値等を採用可能である。
【0051】
次に、制御部20は、コスト設定部21cの処理により、コスト設定対象のタイプを特定する(ステップS505)。すなわち、制御部20は、分類情報30dを参照し、分類情報30dが示す複数のタイプの中から、ステップS505〜S545の処理対象となっていないタイプを処理対象のタイプとして特定する。
【0052】
次に、制御部20は、コスト設定部21cの処理により、調整後の係数の値を取得する(ステップS510)。表2はリンクコストについて調整中の係数、表3は移動コストについて調整中の係数を示している。
【表2】
【表3】
【0053】
同表2においては、リンクコストを設定するための係数が道路の属性である道路種別、車線数、道路幅によって異なる値となることが例示されている。また、表3においては、移動コストを設定するための係数が移動前の道路の特徴によって異なる値となることが例示されている。さらに、表2,3においては、これらのリンクコストおよび移動コストがタイプ毎に定義されることが示されている。これらの例において、係数1は基準リンクコスト、基準移動コストを変動させない。さらに、コストが大きいほど経路として探索されにくくなるため、係数が1より大きければ基準リンクコスト、基準移動コストと比較して、経路として探索されにくくなることを意味し、係数が1より小さければ経路として探索されやすくなることを意味している。
【0054】
以上のように、タイプ毎かつ道路の属性毎に定義されたリンクコストの係数およびタイプ毎に定義された移動コストの係数について、制御部20は、仮設定された係数の値を、ステップS510において調整する。すなわち、リンクコストは道路の属性毎に定義されるため、制御部20は、各道路の属性について既定の規則に従って係数の値を調整し、調整後の係数の値を処理対象のタイプについて仮設定された値として取得する。また、本実施形態において移動コストは、移動前の道路の特徴毎に定義されるため、制御部20は、各条件について既定の規則に従って係数の値を調整し、調整後の係数の値を処理対象のタイプについて仮設定された値として取得する。
【0055】
なお、ステップS500を実行後、ステップS510が初めて実行された場合、制御部20は、初期値に設定された係数の値を調整する。一方、ステップS510が実行された回数が2回目以降である場合、制御部20は、現在の係数の値を調整して次の値に設定する。また、既定の規則は、係数の値を調整可能な規則であればよく、種々の規則を採用可能である。当該規則による係数の値の調整量は、固定値であってもよいし、一致度に応じて変動させてもよく、種々の構成を採用可能である。
【0056】
次に、制御部20は、調整後の係数を基準リンクコストおよび基準移動コストに乗じてコストを仮設定する(ステップS515)。すなわち、基準リンクコストは、表2に示すリンクコストの係数と同様にタイプ毎かつ道路の属性毎に定義されているため、制御部20は、道路の属性毎の基準リンクコストに、道路の属性毎の係数の値を乗じることで、処理対象のタイプについての仮設定値としてのリンクコストを取得する。また、基準移動コストは、表3に示す移動コストの係数と同様にタイプ毎かつ移動前の道路の特徴毎に定義されているため、制御部20は、移動前の道路の特徴毎の基準移動コストに、移動前の道路の特徴毎の係数の値を乗じることで、処理対象のタイプについての仮設定値としての移動コストを取得する。
【0057】
次に、制御部20は、仮設定されたリンクコストおよび移動コストに基づいて経路探索を行う(ステップS520)。すなわち、制御部20は、移動経路情報30aに基づいて処理対象のタイプに分類される移動経路を取得し、各移動経路の出発地および目的地を特定する。そして、制御部20は、当該出発地から目的地までの経路を、ステップS515において仮設定されたリンクコストおよび移動コストに基づいて探索する。以上の処理は、処理対象のタイプに分類された移動経路のそれぞれについて実行される(出発地および目的地が共通の経路については省略可)。
【0058】
次に、制御部20は、ステップS520で探索された経路と、移動経路との一致度を取得する(ステップS525)。すなわち、ステップS520においては、移動経路のそれぞれについて探索が行われるため、制御部20は、探索された経路と移動経路とで一致する区間の距離を移動経路の距離で除する処理を各移動経路について実行し、各移動経路についての統計値(例えば、平均値)を、仮設定されたコストについての一致度として取得する。
【0059】
次に、制御部20は、一致度が最大である場合に係数を仮登録する(ステップS530)。すなわち、制御部20は、仮設定されたコストについての一致度をステップS525で取得しているため、当該一致度と、過去にステップS510〜S535のループ処理過程で取得された一致度とを比較し、最後に算出された一致度が大きい場合に、当該一致度とともにステップS510で取得された係数をRAM等に仮登録する。
【0060】
次に、制御部20は、解析終了条件が充足されたか否かを判定する(ステップS535)。ここで、解析終了条件は、係数が充分に理想値に近づいたか否かを判定するための条件であり、例えば、一致度が最大値に収束したという条件や、ループ処理の過程での一致度の偏差が所定の値以下になったという条件や、規定回数のループ処理を終えたという条件など、種々の条件を採用可能である。ステップS535において、解析終了条件が充足されたと判定されない場合、制御部20は、ステップS510以降の処理を繰り返す。すなわち、制御部20は、処理対象のタイプについて係数を理想化するため、ステップS510以降のループ処理を繰り返す。
【0061】
一方、ステップS535において、解析終了条件が充足されたと判定された場合、制御部20は、処理対象のタイプについての係数を示す係数情報30eを記録媒体30に記録する(ステップS540)。以上の処理によれば、処理対象のタイプに分類された複数の移動経路に含まれる道路の属性が当該移動経路に含まれない道路の属性よりも探索されやすくなるように、制御部20が、当該処理対象のタイプについての道路の属性毎のリンクコストを設定することになる。この構成によれば、処理対象のタイプの利用者について経路探索を行う場合、処理対象のタイプに分類された移動経路に含まれる道路区間の道路属性と同一の属性の道路区間が探索結果として得られる可能性が高くなる。さらに、以上の処理によれば、ステップS525で取得される一致度が最大になる係数が採用されることになるため、複数の移動経路に含まれる道路の属性毎のコストを最適化することができる。この結果、簡易な処理で嗜好を反映したコストを定義することができる。
【0062】
次に、制御部20は、ステップS305で分類されたタイプの全てを処理対象として、ステップS505〜S540の処理が行われたか否かを判定する(ステップS545)。ステップS545において、全タイプについて当該処理が終了したと判定されない場合、制御部20は、ステップS505以降の処理を実行する。すなわち、処理対象のタイプを変更してステップS505以降の処理を繰り返す。一方、ステップS545において、全タイプについて当該処理が終了したと判定された場合、制御部20は、コスト設定処理を終了する。
【0063】
(6)経路探索者分類処理:
次に上述の構成における経路探索者分類処理を詳細に説明する。図2Dは、当該経路探索者分類処理を示すフローチャートである。本実施形態において、この処理は、少なくとも分類処理が1回実行された後、所定の期間毎に実行される。経路探索者分類処理において、制御部20は、経路探索者分類部21dの処理により、移動経路取得部21aで解析対象とされた移動経路の中から処理対象とされていない移動経路を選択し、処理対象としてステップS400以降の処理を実行する。
【0064】
ステップS400において、制御部20は、経路探索者分類部21dの処理により、処理対象の移動経路のタイプを取得する(ステップS400)。すなわち、処理対象の移動経路は、ステップS305において既に分類済であるため、制御部20は、ステップS305で生成された分類情報30dに基づいて、処理対象の移動経路が分類されたタイプを取得する。
【0065】
次に、制御部20は、処理対象の移動経路に対応づけられた利用者とタイプとを対応づける(ステップS405)。すなわち、移動経路情報30aには、移動経路とともに利用者を示す情報が記録されているため、制御部20は、移動経路情報30aを参照し処理対象の移動経路に対応づけられた利用者を特定し、当該利用者のタイプがステップS400で取得されたタイプであると見なす。
【0066】
次に、制御部20は、経路探索者分類部21dの処理により、全解析対象についてステップS400,S405の処理が終了したか否かを判定する(ステップS410)。ステップS410において全解析対象についてステップS400,S405の処理が終了したと判定されない場合、制御部20は、利用者毎の解析対象の移動経路から、未処理の移動経路を1個抽出して処理対象とし、ステップS400以降の処理を繰り返す。ステップS410において、全解析対象についてステップS400,S405の処理が終了したと判定された場合、制御部20は、経路探索者分類処理を終了する。
【0067】
この結果、解析対象の移動経路と同一(同一と見なすことができる)移動経路を送信した車両Cの利用者の全てにタイプを対応づけた状態になる。従って、タイプ定義済の任意の利用者が経路探索者となって経路探索要求を行った場合に、当該経路探索者のタイプを特定することが可能になる。なお、以上のようなタイプの分類法は一例であり、むろん、経路探索者の移動経路を、例えば、ナビゲーションシステム200から取得し、当該移動経路の特徴について分類部21bの処理によって分類を行うことにより、当該経路探索者のタイプを取得する構成であってもよい。
【0068】
(7)経路探索処理:
次に上述の構成における経路探索処理を詳細に説明する。図3Bは、当該経路探索処理を示すフローチャートである。この処理は、ナビゲーションシステム200から経路探索要求が出力され、当該経路探索要求が制御部20に受け付けられた場合に実行される。経路探索処理において、制御部20は、経路探索者のタイプを取得する(ステップS600)。すなわち、経路探索要求には、経路探索要求を行った利用者を示す情報が含まれているため、制御部20は、当該利用者を経路探索者と見なし、ステップS405において対応づけられた利用者とタイプとの対応関係を参照し、経路探索を行った当該経路探索者のタイプを取得する。
【0069】
次に、制御部20は、コスト設定部21cの処理により、ステップS600で取得されたタイプのコストを設定する(ステップS610)。すなわち、制御部20は、係数情報30eを参照し、ステップS600で取得されたタイプにおけるリンクコストの道路属性毎の係数を取得し、当該タイプにおける移動コストの、移動前の道路の特徴毎の係数を取得する。そして、制御部20は、基準リンクコストに道路属性毎の係数を乗じてリンクコストを取得し、基準移動コストに移動前の道路の特徴毎の係数を乗じて移動コストを取得する。
【0070】
次に、制御部20は、経路探索部21eの処理により、経路探索を行う(ステップS615)。すなわち、制御部20は、ステップS610にて取得されたリンクコストおよび移動コストに基づいて、ダイクストラ法等によって経路探索を行う。そして、制御部20は、経路探索部21eの処理により、経路情報を送信する(ステップS620)。すなわち、制御部20は、探索された経路を示す経路情報を定義し、通信部40を制御し、経路探索要求を行ったナビゲーションシステム200に対して当該経路情報を送信する。以上の処理の結果、ナビゲーションシステム200には、経路探索者の嗜好に合致した道路区間が採用された移動経路が提供される。従って、ナビゲーションシステム200が経路情報に基づいて案内を行うことにより、利用者の嗜好に合致した経路に沿って移動するように誘導案内を行うことができる。
【0071】
(8)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、移動経路の複数の特徴に基づいて利用者の嗜好を示すタイプの分類を行う限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、経路探索システムを構成する各手段は、上述の実施形態のように、1個の装置で実現されてもよいし、2個以上の装置に分かれて存在していても良い。後者としては、例えば、移動経路取得部21aにおける解析対象の移動経路を取得する処理や、分類部21bにおいて差分値を取得する処理や、コスト設定部21cの処理や、経路探索部21eにおける処理等がナビゲーションシステム200で実行される構成を採用可能である。むろん、図1に記載された制御部以外の制御部が各手段の一部を実行する構成であってもよい。
【0072】
さらに、移動経路は車両Cが移動した経路に限定されず、歩行者等の経路であってもよい。また、車両Cは自動車に限定されず、自転車等であってもよい。むろん、ナビゲーションシステム200は、車両Cに搭載された装置であってもよいし、可搬型の装置であってもよい。さらに、地図情報に複数のバージョンが存在していてもよい。例えば、経路探索システム10の地図情報30bによれば、最新のバージョンを含む全てのバージョンの地図情報を再現可能である構成を想定する。この構成において、ナビゲーションシステム200で利用されている地図情報が最新のバージョンよりも古いバージョンである場合、ナビゲーションシステム200から使用中の地図情報のバージョンを経路探索システム10に送信し、経路探索システム10において、当該使用中のバージョンの地図情報に基づいて基準経路を取得する構成としてもよい。
【0073】
さらに、解析対象の移動経路は、同一の利用者に対して複数個定義されてもよい。例えば、同一の利用者が所定の利用頻度以上で利用する経路が複数個存在する場合に、各移動経路が解析対象となってもよい。この場合、各移動経路が異なるタイプに分類され得るため、各移動経路が選択された条件(例えば、日時、時間帯、曜日、値域、目的地等)を移動経路に対応付け、各移動経路に条件を対応づけておき、同一条件下での経路探索要求が行われた場合にタイプ分類が参照され、条件毎にコストが設定されるように構成されていても良い。むろん、同一の車両Cを複数の利用者で利用する場合に、各利用者についての移動経路が解析対象となってもよい。この場合、各利用者が経路探索者となった場合に、各経路探索者のタイプが区別される。
【0074】
移動経路取得手段は、複数の利用者の移動経路を取得することができればよい。すなわち、移動経路取得手段により、移動経路の特徴と基準経路の特徴との差を解析できるように、複数の利用者の移動履歴としての移動経路を示す情報を取得することができればよい。従って、移動経路取得手段は、移動経路の特徴を解析できるように移動経路を示す情報を取得することができればよく、移動経路を示す情報には、移動経路に関する静的な情報が含まれていてもよいし、移動経路に関する動的な情報が含まれていてもよい。
【0075】
移動経路に関する静的な情報としては、種々の情報が想定可能であり、例えば、移動経路となった道路(道路区間)、長さ、道路種別、車線数、信号の数などが想定される。移動経路に関する動的な情報としては、移動経路を移動した際の条件等によって変動し得る情報が挙げられ、例えば、所要時間や移動速度、移動に要した料金、燃費、日時などが想定される。むろん、移動経路が取得される際には、解析対象となる他の各種の情報が付随していてもよく、例えば、利用者の年齢や利用者が使用する車両の車種等の情報が付随していてもよい。
【0076】
移動経路としては、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路であってもよい。すなわち、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路(他の経路より利用頻度が高いと見なすことができる経路)は、利用者が嗜好によって当該経路を選択している確率が高い。従って、利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路を利用者の移動経路として取得することにより、信頼性の高い解析を行うことが可能になる。
【0077】
この場合、さらに、移動経路取得手段が、出発地と目的地とが共通であって、所定比率以上の区間が一致する経路が所定期間内に所定回数以上利用されている場合に、当該経路を移動経路として取得する構成であってもよい。この構成によれば、容易に、信頼性の高い解析を行うための移動経路を定義することができる。むろん、出発地と目的地とが共通であるか否かを判定する際には、複数の移動履歴の出発地間の距離が所定範囲内であれば同一出発地であると見なされ、複数の移動履歴の目的地間の距離が所定範囲内であれば同一出発地であると見なされる構成を採用してもよい。
【0078】
差分値取得手段は、基準経路の特徴と複数の利用者毎の移動経路の特徴との差を示す、複数の特徴についての差分値を取得することができればよい。すなわち、解析対象となる特徴は複数個であり、複数の特徴が解析対象となることで利用者の嗜好を多面的に解析することができればよい。このような差分値を取得する構成としては、例えば、差分値分類手段が、経路選択の要因となる複数の特徴について差分値を取得する構成を採用可能である。
【0079】
経路の特徴は、利用者が経路選択をする際の判断要素となり得る特徴であり、移動経路を示す情報自体であってもよいし、移動経路を示す情報から生成される情報であってもよい。前者としては、例えば、移動経路を構成する道路区間の道路属性等が挙げられ、後者としては、例えば、移動経路を構成する道路区間の道路属性等が移動経路内に占める比率等が挙げられる。
【0080】
基準経路は、対比されることによって利用者の嗜好を明らかにする経路として定義されていればよく、例えば、多くの利用者が選択する経路や、経路探索処理においてデフォルトで提案される経路、嗜好性の最も弱い経路等が挙げられる。多くの利用者が選択する経路としては、例えば、複数の利用者が利用した頻度が所定の基準以上である経路が挙げられる。このような経路を基準経路とすれば、多くの利用者と異なる嗜好の利用者が選択した経路の特徴を際立たせることができる。むろん、この場合においても、複数の利用者の出発地と目的地とが共通であって、所定比率以上の区間が一致する経路が所定期間内に所定回数以上利用されている場合に、当該出発地から目的地までの経路を基準経路とする構成であってもよい。
【0081】
経路探索処理においてデフォルトで提案される経路としては、予め決められた基準コストに対して基準係数を乗じることによって設定されたコスト(例えば、基準リンクコストにリンクコスト用の基準係数を乗じて得られたリンクコストおよび基準移動コストに移動コスト用の基準係数を乗じて得られた移動コスト)に基づいて移動経路の出発地から目的地まで経路探索を行った場合に探索される経路が挙げられる。この経路であれば、提案されるデフォルトの経路を選択しなかった利用者の嗜好を際立たせることができる。このような経路は、経路探索システムにおいて探索が行われることによって取得されてもよいし、他の装置、例えば、移動経路を送信するナビゲーションシステムにおいて探索が行われることによって取得されてもよい。
【0082】
基準経路の特徴と移動経路の特徴との差は、各経路全体についての特徴の差であってもよいし、両経路で異なる区間(例えば、移動経路のみに含まれる区間)についての特徴であってもよい。前者としては、両経路の有料道路の割合の差等が挙げられ、後者としては、両経路で異なる区間に含まれるカーブの数等が挙げられる。いずれにしても、特徴の差は、タイプ分類のため、特徴の差を値で示す差分値として取得される。
【0083】
差分値分類手段は、利用者毎の移動経路を、複数の差分値が類似する移動経路同士が同一のタイプになるように複数のタイプに分類することができればよい。すなわち、移動経路毎の差分値は、複数の特徴のそれぞれに対応した複数の差分値から構成されるため、これらの複数の差分値のセットを1個の移動経路についてのサンプルと捉えると、差分値取得手段によって、利用者の嗜好を示す複数のサンプルが得られていることになる。そこで、差分値が類似する場合に同一タイプとなるように各サンプルを分類すれば、得られた分類が嗜好を反映したタイプであると見なすことができる。
【0084】
なお、差分値を複数のタイプに分類する手法としては、種々の手法を採用可能である。例えば、差分値分類手段が、複数の特徴についての差分値を変数とした多変量解析を行うことによって、移動経路を、利用者の複数の嗜好に対応した複数のタイプに分類する構成を採用してもよい。この構成によれば、人為的にタイプを設定することなく自動的にタイプを分類することができる。また、複数のサンプルについての複数の差分値に基づいて、容易に差分値を複数のタイプに分類することができる。なお、多変量解析は、差分値を変数とし、差分値を複数のタイプに分類することができればよく、例えば、因子分析やクラスター分析等を採用可能である。
【0085】
コスト設定手段は、タイプ毎に道路のコストを設定することができればよい。すなわち、コストは経路探索の際に参照される指標であり、各道路区間のコストの大きさは各道路区間が経路として採用されやすいか否かを示している。従って、コストの値を調整すれば、探索結果としての経路が異なり得る。そこで、タイプ毎に道路のコストを設定すれば、各タイプの嗜好を持つ利用者が選択する可能性が高い道路区間が探索結果として得られやすくなるようにすることができる。なお、コストは、上述の実施形態のように、タイプ毎、かつ、道路の属性毎に定義されるのではなく、タイプ毎に定義される構成であってよく、例えば、タイプ毎にコストの係数が定義される構成であってもよい。経路探索手段は、設定されたコストに基づいて経路を探索することができればよく、例えば、コストに基づいてダイクストラ法等によって経路を探索することができればよい。
【0086】
なお、各タイプの嗜好を持つ利用者が選択する可能性が高い道路区間が探索結果として得られやすくなるようにするためには、例えば、同一タイプに分類された複数の移動経路を通りやすくなるようにコストを設定する構成等を採用可能である。さらに、タイプ毎の道路のコストは、種々の定義によって設定可能であり、各タイプについてコストが定義されていてもよいし、基準のコスト(基準リンクコストや基準移動コスト)が修正されることによってコストが定義されていてもよい。後者としては、例えば、コスト設定手段が、基準コストにタイプ毎に異なる係数を乗じることにより、タイプ毎の道路のコストを設定する構成を採用可能である。この構成においては、タイプ毎の修正量である係数を決定すればタイプ毎のコストを定義することができ、全てのタイプについてコストを示す情報を個別に保持するよりもリソースを節約することができる。
【0087】
さらに、本発明のように、基準経路の複数の特徴と移動経路の複数の特徴との差分値に基づいて利用者の嗜好を示すタイプの分類を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような手段を備えたサーバーや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0088】
10…経路探索システム、20…制御部、21…経路探索プログラム、21a…移動経路取得部、21b…分類部、21b1…差分値取得部、21b2…差分値分類部、21c…コスト設定部、21d…経路探索者分類部、21e…経路探索部、30…記録媒体、30a…移動経路情報、30b…地図情報、30c…基準経路情報、30d…分類情報、30e…係数情報、40…通信部
図1
図2
図3
図4