(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の不純物拡散組成物は、(A)一般式(1)で表されるポリシロキサンと、(B)不純物拡散成分とを含有する。以下、本発明の不純物拡散組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0024】
(A)一般式(1)で表されるポリシロキサン
【0026】
式中、R
1は炭素数6〜15のアリール基を表し、複数のR
1はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
2は水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基のいずれかを表し、複数のR
2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。R
3およびR
4は水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基のいずれかを表し、複数のR
3およびR
4はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。n:m=95:5〜25:75である。
【0027】
すなわち、一般式(1)で表されるポリシロキサンは、炭素数6〜15のアリール基を含有するユニットがSi原子換算で25〜95モル%であるポリシロキサンである。また、末端基は水素、水酸基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基のいずれかである。
【0028】
本発明における炭素数とは、当該基にさらに置換される基も含めた合計の炭素数を表す。例えば、メトキシ基で置換されたブチル基の炭素数は5である。なお、一般式(1)で表されるポリシロキサンはそれぞれの構成成分を上記所定の比率で含有していればよく、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
【0029】
ポリシロキサン中に炭素数6〜15のアリール基を含有するユニットがSi原子換算で25モル%以上含まれることで、ポリシロキサン骨格同士の架橋密度が高くなりすぎず、厚膜でもクラックがより抑制される。これにより、焼成、熱拡散工程でクラックが入りにくくなるため、不純物拡散の安定性を向上させることができる。また、不純物の熱拡散後にその不純物拡散層を他の不純物拡散剤に対するマスクとして活用することができる。マスク性を持たせるには拡散後の膜厚が大きいほうがよく、厚膜でもクラックが入りにくい本発明の不純物拡散組成物が好適に利用できる。また増粘剤等の熱分解成分が添加された組成物においても、シロキサンのリフロー効果により、熱分解により生成した空孔を埋めることが可能となり、空孔の少ない緻密な膜を形成することができる。従って、拡散時の雰囲気に影響されにくく、また他の不純物に対する高いマスク性が得られる。
【0030】
一方、ポリシロキサン中のアリール基を含有するユニットがSi原子換算で95モル%以下とすることによって、拡散後の剥離残渣をなくすことが可能となる。残渣は有機物が完全に分解・揮発せずに残った炭化物であると考えられ、ドーピング性を阻害するだけでなく、後に形成する電極とのコンタクト抵抗を上昇させ、太陽電池の効率を低下させる原因となる。アリール基を含有するユニットが95モル%を超えると、有機成分が完全に分解・揮発する前に組成物膜が緻密になりすぎて、残渣が発生しやすくなると考えられる。
【0031】
耐クラック性、マスク性、保存安定性をより向上させ、拡散雰囲気の影響を低減する観点から、不純物拡散組成物中に含まれるポリシロキサン中の炭素数6〜15のアリール基を含有するユニットは、35モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。また、雰囲気や膜厚の影響なく、残渣を発生させないためには、アリール基を含有するユニットが80モル%以下であることが好ましい。すなわち、n:m=80:20〜40:60であることが特に好ましい。 R
2〜R
4がアルキル基の場合、炭素数を6以下とすることにより、残渣の発生を抑制するとともに、R
1のアリール基によるリフロー効果を十分に引き出すことが可能になる。
【0032】
一般式(1)のR
1における炭素数6〜15のアリール基は無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。炭素数6〜15のアリール基の具体例としては、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−ヒドロキシフェニル基、p−スチリル基、p−メトキシフェニル基、ナフチル基が挙げられるが、特にフェニル基、p−トリル基、m−トリル基が好ましい。
【0033】
一般式(1)のR
2における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜15のアリール基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。
【0034】
炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、トリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3−メトキシ−n−プロピル基、グリシジル基、3−グリシドキシプロピル基、3−アミノプロピル基、3−メルカプトプロピル基、3−イソシアネートプロピル基が挙げられるが、残渣の点から、炭素素4以下のメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0035】
炭素数1〜6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基が挙げられる。
【0036】
炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1,3−ブタンジエニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−アクリロキシプロピル基、3−メタクリロキシプロピル基が挙げられるが、残渣の点から、炭素数4以下のビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1,3−ブタンジエニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基が特に好ましい。
【0037】
炭素数1〜6のアシルオキシ基の具体例としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基が挙げられる。
【0038】
炭素数6〜15のアリール基の具体例としては、R
1におけるものと同じものが挙げられる。
【0039】
一般式(1)のR
3およびR
4における炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルケニル基はいずれも無置換体、置換体のどちらでもよく、組成物の特性に応じて選択できる。これらの具体例としてはR
2におけるものと同様のものが挙げられる。
【0040】
より緻密かつ耐クラック性の高い膜を形成するために、R
2およびR
4が水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアシルオキシ基のいずれかを表し、R
3が炭素数1〜4のアルキル基または炭素数2〜4のアルケニル基であることが好ましい。すなわち、ポリシロキサンの構成ユニットがすべて3官能性のオルガノシランからなることが好ましい。
【0041】
また本発明の(A)ポリシロキサンの20%熱分解温度が550℃以上であることが好ましい。これにより、ポリシロキサン以外の有機成分を熱分解して完全に除去した後で、シロキサンによるリフロー効果が得られるので、より緻密で残渣の少ない膜が得られる。ここで、20%熱分解温度とは、ポリシロキサンの重量が熱分解により20%減少する温度である。熱分解温度は、熱重量測定装置(TGA)などを用いて測定することができる。
【0042】
一般式(1)のR
1およびR
2を有するユニットの原料となるオルガノシランの具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、p−ヒドロキシフェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−メトキシフェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、1−ナフチルトリメトキシシラン、2−ナフチルトリメトキシシラン、1−ナフチルトリエトキシシラン、2−ナフチルトリエトキシシランが好ましく用いられる。中でも、フェニルトリメトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−メトキシフェニルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0043】
一般式(1)のR
3およびR
4を有するユニットの原料となるオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラアセトキシシランなどの4官能性シラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、グリシジルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシラン、ジメチルジアセトキシシラン、ジ(n−ブチル)ジメトキシシランなどの2官能性シランが挙げられる。なお、これらのオルガノシランは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのオルガノシランの中でも、膜の緻密性、耐クラック性、残渣および硬化速度の点から3官能性シランが好ましく用いられる。
【0044】
(A)一般式(1)で表されるポリシロキサンはオルガノシラン化合物を加水分解した後、該加水分解物を溶媒の存在下、あるいは無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。加水分解反応の各種条件、例えば酸濃度、反応温度、反応時間などは、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して適宜設定することができるが、例えば、溶媒中、オルガノシラン化合物に酸触媒および水を1〜180分かけて添加した後、室温〜110℃で1〜180分反応させることが好ましい。このような条件で加水分解反応を行うことにより、急激な反応を抑制することができる。反応温度は、より好ましくは30〜130℃である。
【0045】
加水分解反応は、酸触媒の存在下で行うことが好ましい。酸触媒としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸などのハロゲン化水素系無機酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘキサフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸、ホウ酸、テトラフルオロホウ酸、クロム酸などのその他無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのスルホン酸、酢酸、クエン酸、蟻酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸、ピルビン酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸などのカルボン酸を例示することができる。本発明の酸触媒はドーピング性の観点からケイ素、水素、炭素、酸素、窒素、リン以外の原子を極力含まないことが好ましく、リン酸、ギ酸、酢酸、カルボン酸系の酸触媒を用いることが好ましい。なかでもリン酸が好ましい。
【0046】
酸触媒の好ましい含有量は、加水分解反応時に使用される全オルガノシラン化合物100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜5重量部である。酸触媒の量を上記範囲とすることで、加水分解反応が必要かつ十分に進行するよう容易に制御できる。
【0047】
オルガノシラン化合物の加水分解反応および該加水分解物の縮合反応に用いられる溶媒は、特に限定されず、樹脂組成物の安定性、塗れ性、揮発性などを考慮して適宜選択できる。また、溶媒を2種以上組み合わせてもよいし、無溶媒で反応を行ってもよい。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、1−t−ブトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールt−ブチルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテルエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;酢酸イソプロピル、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、アセト酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、ブチルジグリコールアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、エチルジグリコールアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、トリアセチルグリセリンなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、安息香酸エチル、ナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
【0048】
本発明においては、溶解性、印刷性の点からジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点156.4℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、乳酸メチル(沸点145℃)、乳酸エチル(沸点155℃)、ジアセトンアルコール(沸点169℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点174℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(沸点229℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ブチルジグリコールアセテート(沸点246℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点204℃)、N、N−ジメチルイミダゾリジノン(沸点226℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)、プロピレングリコールt−ブチルエーテル(沸点151℃)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(沸点170℃)を好ましく例示することができる。
【0049】
加水分解反応によって溶媒が生成する場合には、無溶媒で加水分解させることも可能である。反応終了後に、さらに溶媒を添加することにより、樹脂組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、目的に応じて加水分解後に、生成アルコールなどを加熱および/または減圧下にて適量を留出、除去し、その後好適な溶媒を添加してもよい。
【0050】
加水分解反応時に使用する溶媒の量は、全オルガノシラン化合物100重量部に対して80重量部以上、500重量部以下が好ましい。溶媒の量を上記範囲とすることで、加水分解反応が必要かつ十分に進行するよう容易に制御できる。また、加水分解反応に用いる水は、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、Si原子1モルに対して、1.0〜4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0051】
(B)不純物拡散成分
本発明の不純物拡散組成物において、不純物拡散成分は、半導体基板中に不純物拡散層を形成するための成分である。n型の不純物拡散成分としては、15族の元素を含む化合物であることが好ましく、中でもリン化合物であることが好ましい。p型の不純物拡散成分としては、13属の元素を含む化合物であることが好ましく、中でもホウ素化合物であることが好ましい。
【0052】
リン化合物としては、五酸化二リン、リン酸、ポリリン酸、リン酸メチル、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸エチル、リン酸ジエチル、リン酸トリエチル、リン酸プロピル、リン酸ジプロピル、リン酸トリプロピル、リン酸ブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、リン酸トリフェニルなどのリン酸エステルや、亜リン酸メチル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸トリプロピル、亜リン酸ブチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸エステルなどが例示される。なかでもドーピング性の点から、リン酸、五酸化二リンまたはポリリン酸が好ましい。
【0053】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、三酸化二ホウ素、メチルボロン酸、フェニルボロン酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0054】
不純物拡散組成物中に含まれるSi成分のSiO
2換算質量と、不純物拡散組成物中に含まれる不純物原子質量の比がSiO
2:不純物原子=99:1〜30:70の範囲であることが好ましい。ここでSi成分のSiO
2換算質量とは組成物中のSi成分の含有量をSiO
2の質量に換算した値である。特に優れたドーピング性を得るためには不純物原子質量比を大きくすることが好ましく、特に優れた耐クラック性、マスク性を得、拡散雰囲気の影響を低減するためにはSiO
2換算質量比を大きくすることが好ましい。前記範囲にあることにより、特に優れたドーピング性、耐クラック性、マスク性が得られるとともに拡散雰囲気の影響を低減できる。換算質量比は95:5〜40:60の範囲であることがさらに好ましく90:10〜50:50の範囲であることが最も好ましい。この質量比はICP発光分析、蛍光X線分析などの無機分析で算出することができる。
【0055】
本発明の不純物拡散組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤は特に制限なく用いることができるが、スクリーン印刷法やスピンコート印刷法などを利用する場合の印刷性をより向上させる観点から、沸点が100℃以上の溶剤であることが好ましい。沸点が100℃以上であると、例えば、スクリーン印刷法で用いられる印刷版に不純物拡散組成物を印刷した際に、不純物拡散組成物が印刷版上で乾燥し固着することを抑制できる。
【0056】
沸点が100℃以上の溶剤の含有量は、溶剤の全量に対して20重量%以上であることが好ましい。沸点100℃以上の溶媒としては、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点156.4℃)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、乳酸メチル(沸点145℃)、乳酸エチル(沸点155℃)、ジアセトンアルコール(沸点169℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点145℃)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(沸点174℃)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点188℃)、ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(沸点229℃)、γ−ブチロラクトン(沸点204℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点217℃)、ブチルジグリコールアセテート(沸点246℃)、アセト酢酸エチル(沸点181℃)、N−メチル−2−ピロリドン(沸点204℃)、N、N−ジメチルイミダゾリジノン(沸点226℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)、ジイソブチルケトン(沸点168℃)、プロピレングリコールt−ブチルエーテル(沸点151℃)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(沸点170℃)、アセチルアセトン(沸点140℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(沸点245℃)を例示することができる。
【0057】
また、沸点100℃未満の溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノールなどのアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸イソプロピル、エチルアセテート、プロピルアセテート、n−プロピルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテートなどのアセテート類;ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素などを挙げることができる。
【0058】
本発明の不純物拡散組成物は、界面活性剤を含有しても良い。界面活性剤を含有することで、塗布ムラが改善し均一な塗布膜が得られる。界面活性剤としてはフッ素系界面活性剤や、シリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
【0059】
フッ素系界面活性剤の具体的な例としては、1,1,2,2−テトラフロロオクチル(1,1,2,2−テトラフロロプロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフロロオクチルヘキシルエーテル、オクタエチレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサエチレングリコール(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、オクタプロピレングリコールジ(1,1,2,2−テトラフロロブチル)エーテル、ヘキサプロピレングリコールジ(1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロペンチル)エーテル、パーフロロドデシルスルホン酸ナトリウム、1,1,2,2,8,8,9,9,10,10−デカフロロドデカン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフロロデカン、N−[3−(パーフルオロオクタンスルホンアミド)プロピル]−N,N′−ジメチル−N−カルボキシメチレンアンモニウムベタイン、パーフルオロアルキルスルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル−N−エチルスルホニルグリシン塩、リン酸ビス(N−パーフルオロオクチルスルホニル−N−エチルアミノエチル)、モノパーフルオロアルキルエチルリン酸エステルなどの末端、主鎖および側鎖の少なくとも何れかの部位にフルオロアルキルまたはフルオロアルキレン基を有する化合物からなるフッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、市販品としては、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183、同F444、同F475、同F477(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、エフトップEF301、同303、同352(新秋田化成(株)製)、フロラードFC−430、同FC−431(住友スリーエム(株)製))、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−102、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC−106(旭硝子(株)製)、BM−1000、BM−1100(裕商(株)製)、NBX−15、FTX−218、DFX−218((株)ネオス製)などのフッ素系界面活性剤がある。
【0060】
シリコーン系界面活性剤の市販品としては、SH28PA、SH7PA、SH21PA、SH30PA、ST94PA(いずれも東レ・ダウコーニング(株)製)、BYK067A,BYK310、BYK322、BYK331、BYK333,BYK355(ビックケミー・ジャパン(株)製)などが挙げられる。
【0061】
界面活性剤の含有量は、添加する場合、不純物拡散組成物中0.0001〜1重量%とするのが好ましい。
【0062】
本発明の不純物拡散組成物は、粘度調整のために増粘剤を含有することが好ましい。これにより、スクリーン印刷などの印刷法でより精密なパターンで塗布することができる。増粘剤としては、有機系では、セルロース、セルロース誘導体、デンプン、デンプン誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴム、ポリアクリル酸、各種アクリル系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、シリコーンオイル、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム系多糖類、ジェランガム系多糖類、グァーガム系多糖類、カラギーナン系多糖類、ローカストビーンガム系多糖類、カルボキシビニルポリマー、水添ひまし油系、水添ひまし油系と脂肪酸アマイドワックス系、特殊脂肪酸系、酸化ポリエチレン系、酸化ポリエチレン系とアマイド系の混合物、脂肪酸系多価カルボン酸、リン酸エステル系界面活性剤、長鎖ポリアミノアマイドとリン酸の塩、特殊変性ポリアマイド系などが挙げられる。無機系では、ベントナイト、モンモリロン石、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミンバイデライト、サポー石、アルミニアンサポー石、ラポナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機ヘクトライト、微粒子酸化ケイ素、コロイダルアルミナ、炭酸カルシウムなどを例示できる。これらは複数種のものを組み合わせて使用しても良い。
【0063】
また、市販品としては、セルロース系増粘剤としては、1110、1120、1130、1140、1150、1160、1170、1180、1190、2200、2260、2280、2450(いずれもダイセルファインケム(株)製)がある。多糖類系増粘剤としては、ViscarinPC209、ViscarinPC389、SeaKemXP8012(以上、エフエムシー・ケミカルズ(株)製)、CAM−H、GJ−182、SV−300、LS−20、LS−30、XGT、XGK−D、G−100、LG−10(いずれも三菱商事(株))などがある。アクリル系増粘剤としては、♯2434T、KC7000、KC1700P(以上、共栄社化学(株)製)、AC−10LHPK、AC−10SHP、845H、PW−120(以上、東亞合成(株)製)などがある。水添ひまし油系増粘剤としては、ディスパロン308、NAMLONT−206(以上、楠本化成(株)製)、T−20SF、T−75F(以上、伊藤製油(株)製)などがある。酸化ポリエチレン系増粘剤としては、D−10A、D−120、D−120−10、D−1100、DS−525、DS−313(以上、伊藤製油(株)製)、ディスパロン4200−20、同PF−911、同PF−930、同4401−25X、同NS−30、同NS−5010、同NS−5025、同NS−5810、同NS−5210、同NS−5310(以上、楠本化成(株)製)、フローノンSA−300、同SA−300H(以上、共栄社化学(株)製)などがある。アマイド系増粘剤としては、T−250F、T−550F、T−850F、T−1700、T−1800、T−2000(以上、伊藤製油(株)製)、ディスパロン6500、同6300、同6650、同6700、同3900EF(以上、楠本化成(株)製)、ターレン7200、同7500、同8200、同8300、同8700、同8900、同KY−2000、KU−700、同M−1020、同VA−780、同VA−750B、同2450、フローノンSD−700、同SDR−80、同EC−121(以上、共栄社化学(株)製)などがある。ベントナイト系増粘剤としては、ベンゲル、ベンゲルHV、同HVP、同F、同FW、同ブライト11、同A、同W−100、同W−100U、同W−300U、同SH、マルチベン、エスベン、エスベンC、同E、同W、同P、同WX、オルガナイト、オルガナイトD(以上、(株)ホージュン製)などがある。微粒子酸化ケイ素系増粘剤としては、AEROSILR972、同R974、同NY50、同RY200S、同RY200、同RX50、同NAX50、同RX200、同RX300、同VPNKC130、同R805、同R104、同R711、同OX50、同50、同90G、同130、同200、同300、同380(以上、日本アエロジル(株)製)、WACKER HDK S13、同V15、同N20、同N20P、同T30、同T40、同H15、同H18、同H20、同H30(以上、旭化成(株)製)などがある。
【0064】
増粘剤は緻密膜形成や残渣低減の点から、90%熱分解温度が400℃以下であることが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド、各種アクリル酸エステル系樹脂が好ましく、中でも、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドまたはアクリル酸エステル系樹脂が好ましい。保存安定性の点から、アクリル酸エステル系樹脂が特に好ましい。ここで、90%熱分解温度とは、増粘剤の重量が熱分解により90%減少する温度である。熱分解温度は、熱重量測定装置(TGA)などを用いて測定することができる。
【0065】
アクリル酸エステル系樹脂としてはポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸ブチル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリベンジルメタクリレート、ポリグリシジルメタクリレート等のポリアクリル酸エステルおよびこれらの共重合体が挙げられる。共重合体の場合、上記アクリル酸エステル成分が重合比率として60mol%以上であればよく、他の共重合成分としてポリアクリル酸、ポリスチレンなどビニル重合可能な成分を共重合していても構わない。
【0066】
また、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドについてはこの2種の共重合体も好ましい。アクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドいずれも重量平均分子量10万以上のものが増粘効果が高く、好ましい。
【0067】
これら増粘剤の含有量は、不純物拡散組成物中3重量%以上20重量%以下が好ましい。この範囲であることにより、十分な粘度調整効果が得られると同時に緻密な膜形成が可能になる。
【0068】
スクリーン印刷性の点からチクソ性を付与するチクソ剤を使用することが好ましい。ここで、チクソ性を付与するとは、低せん断応力時の粘度(η
1)と高せん断応力時の粘度(η
2)の比(η
1/η
2)を大きくすることである。チクソ剤を含有することでスクリーン印刷のパターン精度を高めることができる。それは以下のような理由による。チクソ剤を含有する不純物拡散組成物は、高せん断応力時には粘度が低いため、スクリーン印刷時にスクリーンの目詰まりが起こりにくく、低せん断応力時には粘度が高いため、印刷直後の滲みやパターン線幅の太りが起きにくくなる。
【0069】
チクソ剤としては、具体的に、セルロース、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム系多糖類、ジェランガム系多糖類、グァーガム系多糖類、カラギーナン系多糖類、ローカストビーンガム系多糖類、カルボキシビニルポリマー、水添ひまし油系、水添ひまし油系と脂肪酸アマイドワックス系、特殊脂肪酸系、酸化ポリエチレン系、酸化ポリエチレン系とアマイド系の混合物、脂肪酸系多価カルボン酸、リン酸エステル系界面活性剤、長鎖ポリアミノアマイドとリン酸の塩、特殊変性ポリアマイド系、ベントナイト、モンモリロン石、マグネシアンモンモリロン石、テツモンモリロン石、テツマグネシアンモンモリロン石、バイデライト、アルミンバイデライト、サポー石、アルミニアンサポー石、ラポナイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、有機ヘクトライト、微粒子酸化ケイ素、コロイダルアルミナ、炭酸カルシウムなどを例示できる。チクソ剤は単独でも使用できるが、2種類以上のチクソ剤を組み合わせることも可能である。また前記増粘剤と組み合わせて使用することがより好ましく、より高い効果を得ることができる。 本発明の不純物拡散組成物の粘度に制限はなく、印刷法、膜厚に応じて適宜変更することができる。ここで例えば好ましい印刷形態の一つであるスクリーン印刷方式の場合、拡散組成物の粘度は5,000mPa・s以上であることが好ましい。印刷パターンのにじみを抑制し良好なパターンを得ることができるからである。さらに好ましい粘度は10,000mPa・s以上である。上限は特ににないが保存安定性や取り扱い性の観点から100,000mPa・s以下が好ましい。ここで、粘度は、1,000mPa・s未満の場合は、JIS Z 8803(1991)「溶液粘度−測定方法」に基づきE型デジタル粘度計を用いて回転数20rpmで測定された値であり、1,000mPa・s以上の場合は、JIS Z 8803(1991)「溶液粘度−測定方法」に基づきB型デジタル粘度計を用いて回転数20rpmで測定された値である。チクソ性は、上記粘度測定方法で得られた異なる回転数における粘度の比から求めることができる。本発明においては、回転数20rpmでの粘度(η
20)と回転数2rpmでの粘度(η
2)の比(η
2/η
20)をチクソ性と定義する。スクリーン印刷で精度の良いパターン形成するためには、チクソ性が2以上であることが好ましく、3以上がさらに好ましい。
【0070】
本発明の不純物拡散組成物は、固形分濃度としては特に制限はないが、1重量%以上〜90重量%以下が好ましい範囲である。本濃度範囲よりも低いと塗布膜厚が薄くなりすぎ所望のドーピング性、マスク性を得にくく、本濃度範囲よりも高いと保存安定性が低下する。
【0071】
本発明の不純物拡散組成物を用いた不純物拡散層の形成方法およびこれを利用した半導体素子の製造方法について
図1および
図2を利用して説明する。
図1は、不純物拡散組成物を用いてパターンを形成する工程と、前記パターンから前記半導体基板にn型不純物を拡散させる工程と、前記パターンをマスクとして、前記半導体基板にp型不純物を拡散させる工程と、を含むことを特徴とする不純物拡散層の形成方法を示すものである。
図2は前記不純物拡散層を利用した半導体素子の製造方法について、裏面接合太陽電池の製造方法を例に説明したものである。
【0072】
まず、
図1(a)に示すように、半導体基板1の上に本発明のn型不純物拡散組成物2をパターン形成する。
【0073】
半導体基板1としては、例えば不純物濃度が10
15〜10
16atoms/cm
3であるn型単結晶シリコン、多結晶シリコン、およびゲルマニウム、炭素などのような他の元素が混合されている結晶シリコン基板が挙げられる。p型結晶シリコンやシリコン以外の半導体を用いることも可能である。半導体基板1は、厚さが50〜300μm、外形が一辺100〜250mmの概略四角形であることが好ましい。また、スライスダメージや自然酸化膜を除去するために、フッ酸溶液やアルカリ溶液などで表面をエッチングしておくことが好ましい。
【0074】
半導体基板1の受光面に保護膜を形成してもよい。この保護膜としては、CVD(化学気相成長)法やスピンオングラス(SOG)法などの手法によって製膜する、酸化シリコンや窒化シリコンなどの公知の保護膜を適用することができる。
【0075】
n型不純物拡散組成物2のパターン形成方法としては、例えばスクリーン印刷法、インクジェット印刷法、スリット塗布法、スプレー塗布法、凸版印刷法、凹版印刷法などが挙げられる。これらの方法でパターン形成後、n型不純物拡散組成物2をホットプレート、オーブンなどで、50〜200℃の範囲で30秒〜30分間乾燥することが好ましい。乾燥後のn型不純物拡散組成物2の膜厚は、p型不純物に対するマスク性を考慮すると、200nm以上が好ましく、耐クラック性の観点から5μm以下が好ましい。
【0076】
次に、
図1(b)に示すように、n型不純物拡散組成物2中の不純物を半導体基板1中に拡散させ、n型不純物拡散層3を形成する。n型不純物の拡散方法は公知の熱拡散方法が利用でき、例えば、電気加熱、赤外加熱、レーザー加熱、マイクロ波加熱などの方法を用いることができる。
【0077】
熱拡散の時間および温度は、不純物拡散濃度、拡散深さなど所望の拡散特性が得られるように適宜設定することができる。例えば、800℃以上1200℃以下で1〜120分間加熱拡散することで、表面不純物濃度が10
19〜10
21のn型拡散層を形成できる。
【0078】
拡散雰囲気は、特に限定されず、大気中で行ってもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを用いて雰囲気中の酸素量等を適宜コントロールしてもよい。拡散時間短縮の観点から雰囲気中の酸素濃度を3%以下にすることが好ましい。
【0079】
半導体基板1へのn型不純物拡散後、フッ酸など公知のエッチング液による剥離によりn型不純物拡散組成物2を剥離することができる。そのようにしてから、n型不純物拡散層形成後の半導体基板にp型不純物拡散組成物の印刷およびp型不純物の拡散を行ってもよいが、以下に説明するように、n型不純物拡散組成物2を剥離せずにp型不純物拡散組成物の印刷およびp型不純物の拡散を行うことも可能であり、工程数削減の観点から好ましい。
【0080】
n型不純物の拡散後、必要に応じてn型不純物拡散組成物2を焼成してから、
図1(c)に示すように、n型不純物拡散組成物2をマスクとしてp型不純物拡散組成物4を塗布する。この場合、
図1(c)に示すように、p型不純物拡散組成物4を全面に形成してもよいし、n型不純物拡散組成物2がない部分にのみ形成しても構わない。また、p型不純物拡散組成物4の一部がn型不純物拡散組成物2に重なるように塗布してもよい。
【0081】
p型不純物拡散組成物4の塗布方法としては、前記n型不純物拡散組成物のパターン形成方法で例示した方法を用いることができる。
【0082】
次に、
図1(d)に示すように、焼成後のn型不純物拡散組成物2をマスク層としてp型不純物拡散組成物4を半導体基板1に拡散させ、p型不純物拡散層5を形成する。p型不純物の拡散方法はn型不純物の拡散方法と同様の方法が挙げられる。
【0083】
次に、
図1(e)に示すように、公知のエッチング法により、半導体基板1の表面に形成されたn型不純物拡散組成物2およびp型不純物拡散組成物4を除去する。エッチングに用いる材料としては、特に限定されないが、例えばエッチング成分としてフッ化水素、アンモニウム、リン酸、硫酸、硝酸のうち少なくとも1種類を含み、それ以外の成分として水や有機溶剤などを含むものが好ましい。以上の工程により、半導体基板にn型およびp型の不純物拡散層を形成することができる。このような工程とすることにより従来法と比較し、工程を簡略化することができる。
【0084】
ここでは、n型不純物拡散組成物の塗布・拡散の後、p型不純物拡散組成物の塗布・拡散を行う例を示したが、p型不純物拡散組成物の塗布・拡散の後、n型不純物拡散組成物の塗布・拡散を行うことも可能である。
【0085】
続いて、
図2を用いて、本発明の半導体素子の製造方法を、裏面接合型太陽電池を例に挙げて説明する。まず
図2(f)に示すように、裏面にn型不純物拡散層3およびp型不純物拡散層5が成された半導体基板1の、その裏面上の全面に保護膜6を形成する。次に
図2(g)に示すように、保護膜6をエッチング法などによりパターン加工して、保護膜開口6aを形成する。さらに、
図2(h)に示すように、ストライプ塗布法やスクリーン印刷法などにより、開口6aを含む領域に電極ペーストをパターン塗布して焼成することで、n型コンタクト電極7およびp型コンタクト電極8を形成する。これにより、裏面接合型太陽電池9が得られる。
【0086】
また、本発明の不純物拡散組成物を用いた別の不純物拡散層の形成方法について、
図3を利用して説明する。
図3は、n型不純物拡散組成物を用いてパターンを形成する工程と、前記n型不純物拡散組成物をマスクとしてp型不純物拡散組成物を塗布する工程と、前記n型不純物拡散組成物およびp型不純物拡散組成物から前記半導体基板中にn型およびp型不純物を拡散させる工程と、を含む不純物拡散層の形成方法を示すものである。
【0087】
まず
図3(a)に示すように、半導体基板1の上に本発明のn型不純物拡散組成物2をパターン形成する。次に、必要に応じてn型不純物拡散組成物2を焼成してから、
図3(b)に示すように、n型不純物拡散組成物2をマスクとしてp型不純物拡散組成物4を塗布する。続いて、
図3(c)に示すように、n型不純物拡散組成物2中のn型の不純物拡散成分とp型不純物拡散組成物4中のp型の不純物拡散成分を同時に半導体基板1中に拡散させ、n型不純物拡散層3とp型不純物拡散層5を形成する。不純物拡散組成物の塗布方法、焼成方法および拡散方法としては前記と同様の方法が挙げられる。
【0088】
次に、
図3(d)に示すように、公知のエッチング法により、半導体基板1の表面に形成されたn型不純物拡散組成物2およびp型不純物拡散組成物4を除去する。以上の工程により、半導体基板にn型およびp型の不純物拡散層を形成することができる。このような工程とすることにより従来法と比較し、さらに工程を簡略化することができる。
【0089】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0090】
本発明の不純物拡散組成物は、太陽電池などの光起電力素子や、半導体表面に不純物拡散領域をパターン形成する半導体デバイス、例えば、トランジスターアレイやダイオードアレイ、フォトダイオードアレイ、トランスデューサーなどにも展開することができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
【0092】
GBL:γ−ブチロラクトン
BC:ブチルカルビトール
TERP:テルピネオール
PEO:ポリエチレンオキサイド
PMMA:ポリメチルメタクリレート
PPO:ポリプロピレンオキサイド
PVP:ポリビニルピロリドン
PVB:ポリビニルブチラール
EtOH:エタノール
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
PhTES:フェニルトリエトキシシラン
TolTMS:p−トリルトリメトキシシラン
MeOPhTMS:p−メトキシフェニルトリメトキシシラン
MeTMS:メチルトリメトキシシラン
EtTMS:エチルトリメトキシシラン
PrTMS:プロピルトリメトキシシラン
BuTMS:ブチルトリメトキシシラン
HexTMS:ヘキシルトリメトキシシラン
MePhDMS:メチルフェニルジメトキシシラン
PhEtTMS:2−フェニルエチルトリメトキシシラン
TEOS:テトラエトキシシラン。
【0093】
(1)溶液粘度およびチクソ性測定
粘度1,000mPa・s未満の不純物拡散組成物は、東機産業(株)製回転粘度計TVE−25L(E型デジタル粘度計)を用い、液温25℃、回転数20rpmでの粘度を測定した。また、粘度1,000mPa・s以上の不純物拡散組成物は、ブルックフィールド製RVDV−11+P(B型デジタル粘度計)を用い、液温25℃、各回転数での粘度を測定した。回転数20rpmでの測定値を粘度とし、回転数20rpmでの測定値(η
20)と回転数2rpmでの測定値(η
2)の比(η
2/η
20)をチクソ性とした。
【0094】
(2)パターン精度
(2−1)スリット塗布性
スリットノズルにより不純物拡散組成物をストライプ状にパターニングし、そのストライプ幅精度を確認した。
【0095】
基板としては、一辺156mmのn型単結晶シリコンからなる半導体基板を用意し、スライスダメージや自然酸化物を除去するために、両表面をアルカリエッチングした。この際、半導体基板の両面には典型的な幅が40〜100μm、深さ3〜4μm程度の無数の凹凸が形成され、これを塗布基板とした。
【0096】
図4に本実施例で用いたストライプ塗布装置の概略図を示す。ステージ32に真空吸着させた半導体基板31に対して、CCDカメラ36を用いて位置合わせし、高さセンサー37を用いて高さを合わせた。ノズル38を備えたブラケット35がリニア駆動装置(Y方向)34によりノズル38をY方向に移動させることで不純物拡散組成物を塗布し、ラインを形成した。リニア駆動装置(X方向)33によりノズル38を所定の距離X方向に移動させ、同様にラインを形成した。これを繰り返すことでストライプ状のパターンを形成した。
【0097】
なお、ストライプ塗布の方法は以下の通りである。
図5に示すように、ペースト供給口47から不純物拡散組成物を供給した。加圧口46から加圧し、マニホールド45を経て、ノズル41の下部に形成された複数の吐出口42から不純物拡散組成物からなるペースト43を吐出させた。半導体基板40と吐出口42との間にビード44を形成させた状態でノズル41を紙面垂直方向に移動させた。
【0098】
不純物拡散組成物をストライプ塗布後、空気中にて基板を140℃で5分間、さらに230℃で30分間加熱することで、厚さ約1.0μm、幅240μm、ピッチ600μm、長さ8cmのパターンを形成した。
【0099】
ここで任意の1本のラインについて等間隔で10点につきライン幅を測定し、塗布幅の標準偏差σが15μm以内のものを良好(good)、15μmを超えるものを不可(bad)と判定した。
【0100】
(2−2)スクリーン印刷性
スクリーン印刷により不純物拡散組成物をストライプ状にパターニングし、そのストライプ幅精度を確認した。
【0101】
基板としては、一辺156mmのn型単結晶シリコンからなる半導体基板を用意し、スライスダメージや自然酸化物を除去するために、両表面をアルカリエッチングした。この際、半導体基板の両面には典型的な幅が40〜100μm、深さ3〜4μm程度の無数の凹凸が形成され、これを塗布基板とした。
【0102】
スクリーン印刷機(マイクロテック(株)TM−750型)を用い、スクリーンマスクとしては幅200μm、長さ13.5cmの開口部をピッチ600μmで175本形成したもの(SUS(株)製、400メッシュ、線径23μm)を用い、ストライプ状のパターンを形成した。
【0103】
不純物拡散組成物をスクリーン印刷後、空気中にて基板を140℃で5分間、さらに230℃で30分間加熱することで、厚さ約1.5μm、幅約210μm、ピッチ600μm、長さ13.5cmのパターンを形成した。
【0104】
ここで任意の1本のラインについて等間隔で10点につきライン幅を測定し、塗布幅の標準偏差が12.5μm以内のものをsuperior(A)、12.5μmを上回り15μm以内のものをexcellent(B)、15μmを上回り17.5μm以内のものをgood(C)、17.5μmを上回り20μm以内のものをfair(D)、20μmを上回るものをbad(E)と判定した。
【0105】
(3)耐クラック性測定
3cm×3cmにカットしたn型シリコンウェハー((株)フェローテックシリコン製、表面抵抗率410Ω/□)を1%フッ酸水溶液に1分浸漬したあと水洗し、エアブロー後ホットプレートで140℃5分処理した。
【0106】
不純物拡散組成物を、公知のスピンコート法で該シリコンウェハーに塗布した。サンプルは回転数を変え、焼成後膜厚で0.1μmごとに膜厚を変えたものを準備した。薄膜領域においては、不純物拡散組成物と同溶媒組成で希釈したものを適宜使用した。塗布後、各シリコンウェハーを140℃で5分間プリベークした。
【0107】
続いて各シリコンウェハーを電気炉内に配置し、窒素:酸素=97:3(体積比)の雰囲気下、900℃で30分間維持して不純物拡散組成物膜を焼成した。その後焼成後膜厚を測定した。5倍レンズを装着した光学顕微鏡にて表面を観察し、クラックが観察されない最高マスク層膜厚サンプルの焼成後膜厚を耐クラック膜厚とした。
【0108】
(4)マスク性測定
n型不純物拡散組成物のp型不純物拡散組成物に対するマスク性を例にとって、マスク性測定方法について説明する。n型不純物拡散組成物からなる上記耐クラック膜厚観察基板(3cm×3cm)上にp型不純物拡散組成物PBF(東京応化工業(株)製)を半分程度(1.5cm×3cm)塗布し、200℃で10分間ホットプレートでプリベークした。その後、シリコンウェハーを電気炉内に配置し、窒素雰囲気下、900℃で60分間維持して不純物を熱拡散させた。熱拡散後、シリコンウェハーを、10重量%のフッ酸水溶液に23℃で1分間浸漬させて、硬化した拡散剤を剥離した。剥離後のシリコンウェハーに対して、表面抵抗を四探針式表面抵抗測定装置RT−70V(ナプソン(株)製)を用いて測定した。ここで、n型不純物拡散性組成物のみを塗布した領域の表面抵抗とn型不純物拡散性組成物上にp型不純物拡散組成物を塗布した領域の表面抵抗の差が±20%以内の場合、マスク性ありと判断した。マスク性がある最低マスク層膜厚サンプルの焼成後膜厚をマスク膜厚とした。
【0109】
なお、耐クラック膜厚とマスク膜厚の差分が、マスク材として使用可能であるマージンを示し、このマージンが広いほど適用可能な範囲が広く、優れているものである。特に太陽電池分野で使用される凹凸基板においては、膜厚マージンが大きな材料が好ましい。
【0110】
(5)剥離性評価
熱拡散後の各シリコンウェハーを、10重量%のフッ酸水溶液に23℃で1分間浸浸させて、拡散剤およびマスクを剥離した。剥離後、シリコンウェハーを純水に浸漬させて洗浄し、表面の目視により残渣の有無を観察した。1分浸漬後目視で表面付着物が確認でき、ウエスでこすっても除去できないものをworse(劣)、1分浸漬後目視で表面付着物が確認できるがウエスでこすることで除去できるものをbad(不可)、30秒を上回り1分以内で表面付着物が目視確認できなくなったものをgood(良)、30秒以内で表面付着物が目視確認できなくなったものをexcellent(優)とした。
【0111】
(6)シート抵抗値測定
3cm×3cmにカットしたn型シリコンウェハー((株)フェローテックシリコン製、表面抵抗率410Ω/□)を1%フッ酸水溶液に1分浸漬したあと水洗し、エアブロー後ホットプレートで140℃5分処理した。
【0112】
測定対象の不純物拡散性組成物を、公知のスピンコート法でプリベーク膜厚で500nm程度になるように該シリコンウェハーに塗布した。塗布後、シリコンウェハーを140℃で5分間プリベークした。
【0113】
続いて各シリコンウェハーを電気炉内に配置し、窒素:酸素=97:3(体積比)の雰囲気下、900℃で30分間維持して不純物を熱拡散させた。熱拡散後、各シリコンウェハーを、10重量%のフッ酸水溶液に23℃で1分間浸漬させて、硬化した拡散剤を剥離した。剥離後のシリコンウェハーに対して、p/n判定機を用いてp/n判定し、表面抵抗を四探針式表面抵抗測定装置RT−70V (ナプソン(株)製)を用いて測定し、シート抵抗値とした。シート抵抗値は不純物拡散性の指標となるものであり、抵抗値が小さい方が、不純物拡散量が大きいことを意味する。
【0114】
(7)保存安定性
不純物拡散組成物を冷蔵庫(4℃)で4週間保管し、4週間後の粘度が初期の粘度に対して、粘度変化3%未満の場合excellent(優)、3%以上6%未満の場合good(良)、6%以上10%未満の場合bad(不可)、粘度変化が10%以上もしくは沈殿、白濁、ゲル化などが起こった場合は、worse(劣)とした。
【0115】
実施例1
ポリシロキサン溶液の合成
500mLの三口フラスコにKBM−13(メチルトリメトキシシラン)を164.93g(1.21mol)、KBM−103(フェニルトリメトキシシラン)を204.07g(1.21mol)、GBLを363.03g仕込み、40℃で攪拌しながら水130.76gにリン酸0.1.215gを溶かしたリン酸水溶液を30分かけて添加した。滴下終了後、40℃で1時間撹拌した後、70℃に昇温し、30分撹拌した。その後、オイルバスを115℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1時間加熱攪拌した(内温は100〜110℃)。得られた溶液を氷浴にて冷却し、ポリシロキサン溶液を得た。ポリシロキサン溶液の固形分濃度は39.8重量%であった。
【0116】
上記で合成したポリシロキサン4.39gとリン酸1.47g(SiO
2換算質量とリン原子質量の比がSiO
2:P=58:42)とGBLを12.55g、BYK−333を溶液全体に対して300ppmになるように添加し、均一になるように十分撹拌した。得られた溶液の粘度とチクソ性は表3に示す結果であった。また得られた溶液を用いて、耐クラック性、マスク性、剥離性、パターン精度、保存安定性、シート抵抗値を測定したところ、表3に示すとおり、いずれも良好であった。
【0117】
実施例2〜
5、参考例6〜8
表1記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。耐クラック性、マスク性、剥離性、パターン精度、保存安定性、シート抵抗値を測定したところ、表3に示すとおり、いずれも良好であった。特に、ポリシロキサン中の炭素数6〜15のアリール基の比率を増加したものでは、より大きい膜厚であってもクラックが入りにくく、耐クラック性が良好であった。
【0118】
実施例9〜14、16〜
19、22
、28〜39、参考例15、
20、21、23
〜27、40、41
これらの実施例および参考例では各種増粘剤を溶液全体に対して所定の重量%濃度になるように添加し、自転・公転ミキサーARE−310((株)シンキー製)を用いて溶解させた(撹拌:15分、脱泡:1分)。耐クラック性、不純物拡散性、マスク性、剥離性、パターン精度、保存安定性、シート抵抗値を測定したところ、表3および表4に示すとおり、いずれも良好であった。ポリシロキサンの構成ユニットがすべて3官能性のオルガノシランであるものが、不純物拡散性、剥離性に優れていた。ポリシロキサン中のアリール基比率が40モル%以上のものが、不純物拡散性、マスク性に優れており、80モル%以下のものが、剥離性が特に良好であった。
【0119】
実施例42
n型不純物拡散層およびp型不純物拡散層形成方法
図6(a)に示すように、p型シリコンウェハー51((株)フェローテックシリコン製、表面抵抗率410Ω/□)上の一部にスクリーン印刷法により実施例1記載のn型不純物拡散組成物52を塗布した。塗布後、p型シリコンウェハー51を140℃5分間プリベークした。
【0120】
その後p型シリコンウェハー51を電気炉内に配置し、窒素:酸素=97:3の雰囲気下、900℃で30分間維持して、n型不純物拡散組成物52中の不純物をp型シリコンウェハー51に拡散させ、
図6(b)に示すようにn型不純物拡散層53を形成した。
【0121】
その後
図6(c)に示すように、上記p型シリコンウェハー51上にp型不純物拡散組成物54(PBF、東京応化工業(株)製)をスピンコート法により全面に塗布し、200℃10分間ホットプレートでプリベークした。その後、p型シリコンウェハー51を電気炉内に配置し、窒素雰囲気下、900℃で60分間維持して不純物を熱拡散させ、
図6(d)に示すようにp型不純物拡散層55を形成した。
【0122】
熱拡散後、p型シリコンウェハー51を、10重量%のフッ酸水溶液に23℃で1分間浸漬させて、n型不純物拡散組成物52およびp型不純物拡散組成物54を剥離した。剥離後のp型シリコンウェハー51に対して、表面抵抗を四探針式表面抵抗測定装置RT−70V(ナプソン(株)製)を用いて測定した。シート抵抗値はn型不純物拡散組成物52を塗布した箇所が20Ω/□(p/n判定はn)、p型不純物拡散組成物54のみ塗布した箇所は65Ω/□(p/n判定はp)となり、n型およびp型不純物拡散層の形成を確認した。
【0123】
実施例43
n型不純物拡散層およびp型不純物拡散層形成方法
図7(a)に示すように、p型シリコンウェハー61((株)フェローテックシリコン製、表面抵抗率410Ω/□)上の一部にスクリーン印刷法により実施例1記載のn型不純物拡散組成物62を塗布した。塗布後、P型シリコンウェハー61を100℃5分間プリベークした。
【0124】
その後p型シリコンウェハー61を電気炉内に配置し、空気雰囲気下、800℃で30分間維持して、n型不純物拡散組成物62を焼成した。
【0125】
その後
図7(b)に示すように、上記p型シリコンウェハー61上にp型不純物拡散組成物64(PBF、東京応化工業(株)製)をスピンコート法により全面に塗布し、200℃10分間ホットプレートでプリベークした。その後、p型シリコンウェハー61を電気炉内に配置し、窒素雰囲気下、900℃で60分間維持して不純物拡散成分を熱拡散させ、
図7(c)に示すようにn型不純物拡散層63およびp型不純物拡散層65を形成した。
【0126】
熱拡散後、p型シリコンウェハー61を、10重量%のフッ酸水溶液に23℃で1分間浸漬させて、n型不純物拡散組成物62およびp型不純物拡散組成物64を剥離した。剥離後のp型シリコンウェハー61に対して、表面抵抗を四探針式表面抵抗測定装置RT−70V(ナプソン(株)製)を用いて測定した。シート抵抗値はn型不純物拡散組成物を塗布した箇所が15Ω/□(p/n判定はn)、p型不純物拡散組成物64のみ塗布した箇所は60Ω/□(p/n判定はp)となり、n型およびp型不純物拡散層の形成を確認した。
【0127】
比較例1
表1および表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。なお、エチルシリケート48とはコルコート(株)製でテトラエトキシシランの加水分解縮合物(平均10量体)である。表3および表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、耐クラック膜厚が極めて小さく、マスクマージンが極めて小さかった。
【0128】
比較例2
表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、耐クラック膜厚が極めて小さく、マスクマージンが極めて小さかった。また、保存安定性が悪く、4週間の冷蔵庫(4℃)保管でゲル化した。
【0129】
比較例3
表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、耐クラック膜厚が小さく、p型不純物拡散剤に対するマスク膜厚が大きいため、十分なマスクマージンが得られなかった。また、シート抵抗値も高く、保存安定性も悪かった。
【0130】
比較例4
表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、耐クラック膜厚が小さく、p型不純物拡散剤に対するマスク膜厚が大きいため、十分なマスクマージンが得られなかった。また、シート抵抗値も少し高く、保存安定性も悪かった。
【0131】
比較例5
表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、剥離性が悪く残渣が残ったため、シート抵抗値が高かった。
【0132】
比較例6
表2記載の組成で調合し、不純物拡散組成物を得た。表4に示すとおり、不純物拡散組成物の焼成膜は、耐クラック膜厚が小さく、p型不純物拡散剤に対するマスク膜厚が少し大きいため、十分なマスクマージンが得られなかった。また、剥離性が悪く残渣が残ったため、シート抵抗値が高かった。
【0133】
実施例および比較例について表1〜4にまとめた。ここで表1および表2中の例えば「PhTMS(50)/MeTMS(50)」等の表記は上記化合物を括弧内に記載のモル比で縮合反応させた生成物という意味である。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】