【実施例】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
<実施例1〜8及び比較例1〜4>
(A)ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DB、大伸化学株式会社製)、(B)グリセリンモノカプレート(ポエムM−200、理研ビタミン株式会社)、(D)ソルビタンモノラウリン酸エステル(ノニオンLP−20R、日油株式会社製)、(E)安息香酸ナトリウム及び(C)水が、それぞれ表1に示す含有量(単位:質量%)となるように混合することで、各実施例及び比較例の表面処理剤を調製した。
【0037】
<参考例>
スティンミルクS−200(クリーンケミカル株式会社製)を参考例の表面処理剤とした。
以上の実施例、比較例及び参考例の表面処理剤を、下記の調製性、防食性及び乾燥性の各評価に供した。
【0038】
[調製性]
調製された実施例、比較例及び参考例の表面処理剤の白濁の有無について、目視にて確認をし、次の基準に基づいて評価した。調製された表面処理剤が、成分の分離や白濁を生じていない場合には「A」、白濁や白色沈殿を生じている場合には「B」とした。結果を表1に示す。
【0039】
[防食性]
実施例、比較例及び参考例の表面処理剤を純水で200倍の体積に希釈して希釈液を調製した。そして、各希釈液を100mLのポリプロピレン製の容器に入れた。続いて、エタノールに10分間浸漬することで脱脂した金属製の試験片を、容器の中に入れて希釈液に浸漬した。
試験片としては以下の3種を用いた(全て、日本タクト株式会社製)。試験片のサイズは、全て15mm×50mm×1.0〜1.2mm(厚さ)である。
SUS−420J2(ステンレス鋼板)
C1220P(りん脱酸銅板)
C2801P(真鍮板)
【0040】
各希釈液に浸漬した試験片は、50℃の環境下7日間放置した。浸漬した状態で7日間放置された後の各試験片を、酸洗することで試験片表面の腐食物を除去した。各試験片についての酸洗の条件を下に示す。
SUS−420J2:試験片を、濃硝酸(密度1.38g/cm
3)を2倍の体積に希釈した30質量%硝酸水溶液に、室温で5分間浸漬した。
C1220P及びC2801P:試験片を、47質量%硫酸を4.7倍に希釈した10質量%硫酸水溶液に、室温で5分間浸漬した。
【0041】
希釈液に浸漬する前から、表面の腐食物を除去した後の、試験片の質量変化(質量の減少分)を求め、その値を試験片の表面積(0.15dm
2、試験片の厚さは考慮しない)及び希釈液への浸漬時間(7日間)で除することで、腐食速度(mdd、単位:mg・dm
−2・day
−1)を求めた。腐食速度が遅いほど、耐食性が高い。
図1に実施例1及び2の各試験片についての腐食速度を示す。
図1のグラフは、参考例の試験片を基準(100)とした場合の腐食速度の相対値である。なお、SUS−420J2については、いずれの参考例及び実施例1の表面処理剤についての試験においても、腐食は進行しなかった。つまり、これらの試験においては、腐食速度が0であった。実施例2の表面処理剤についてのSUS−420J2を試験片とした試験(
図1の「※」)については、腐食が若干進行したが、参考例の表面処理剤による腐食速度が0であったことから、腐食速度の相対値を求めることはできなかった。
【0042】
また、実施例及び比較例の各試験片(C2801P)について、次の基準に基づいて行った防食性の評価を表1に示す。
「A」:腐食速度が、参考例の試験片の腐食速度の2分の1以下
「B」:腐食速度が、参考例の試験片の腐食速度以下であり、2分の1よりも速い
「C」:腐食速度が、参考例の試験片の腐食速度よりも速い
「−」:表面処理剤が調製できなかったことから評価不能
【0043】
[潤滑性]
実施例、比較例及び参考例の表面処理剤を純水で200倍の体積に希釈して希釈液を調製した。そして、各希釈液を100mLのポリプロピレン製の容器に入れた。続いて、エタノールに10分間浸漬することで脱脂した金属製の試験片を容器の中に入れて希釈液に浸漬した。各試験片は、1分間希釈液に浸漬した後、乾燥させた。
試験片としては上記の防食性の評価において使用したものと同じ試験片(3種)を用いた。また、各種類について、15mm×50mm×1.0〜1.2mm(小)及び60mm×60mm×0.8〜1.2mm(大)の2種類のサイズの試験片を用意した。
【0044】
乾燥させた各試験片を、大きい試験片を下、小さい試験片を上にして重ね、試験片を徐々に傾けた。そして、小さい試験片が滑り出した角度(最大静止角度θ)を水準器(デジタルレベルコンパクト、株式会社マイゾックス製)にて測定した。試験片の摩擦係数μは、下記式(1)によって求めることができる。摩擦係数μが低いほど潤滑性は高い。
[数1]
μ=tanθ ・・・(1)
【0045】
図2に水道水で洗浄した試験片並びに実施例1及び参考例の各試験片の摩擦係数を示す。
図2のグラフは、水で洗浄した試験片の摩擦係数を基準(100)とした場合の摩擦係数の相対値である。
また、実施例及び比較例の各試験片(C2801P)について、次の基準に基づいて行った潤滑性の評価を表1に示す。
「A」:摩擦係数が、水道水で洗浄した試験片よりも小さい
「B」:摩擦係数が、水道水で洗浄した試験片以上
「−」:表面処理剤が調製できなかったことから評価不能
【0046】
[乾燥性]
実施例、比較例及び参考例の表面処理剤を純水で200倍の体積に希釈して希釈液を調製した。一方、試験片(SUS−420J2、日本タクト株式会社製)をエタノールに10分間浸漬して脱脂した。調製したそれぞれの希釈液を、脱脂した試験片の表面に、それぞれ15μL滴下した。表面処理剤を滴下した試験片の質量の経時変化を電子天秤を用いて観測した。
【0047】
図3に、水道水を15μL滴下した試験片並びに実施例1及び参考例の希釈液を滴下した各試験片の質量の経時変化を示す。
図3のグラフは、横軸は時間を示し、縦軸は滴下直後から減少した水道水又は表面処理剤の割合(乾燥率)を示す。
また、実施例及び比較例の表面処理剤について、次の基準に基づいて行った乾燥性の評価を表1に示す。
「A」:参考例の表面処理剤から調製した希釈液に比べて乾燥速度が速い場合
「B」:参考例の表面処理剤から調製した希釈液に比べて乾燥速度が遅い場合
「−」:表面処理剤が調製できなかったことから評価不能
【0048】
【表1】
【0049】
図1のグラフにおける参考例と実施例2との比較から明らかなように、(A)ジエチレングリコールモノブチルエーテルと、(B)界面活性剤としてのグリセリン脂肪酸エステルと、を含有する表面処理剤は、従来公知の表面処理剤(スティンミルクS−200)と比べて、浸漬させた真鍮製の試験片の腐食速度が大幅に低いことが分かった。なお、真鍮は、医療用の金属製器具の素材として特に好ましく用いられる。
また、表1に示すように、(A)及び(B)成分を含有する表面処理剤は、表面処理を施した試験片の摩擦係数が、少なくとも水道水で洗浄した試験片と比べて低いことが分かった。
更には、表1に示すように、(A)及び(B)成分を含有する実施例2の表面処理剤は、従来公知の表面処理剤と比べて、試験片に滴下された後の乾燥速度が速いことが分かった。
【0050】
これらの結果から、(A)及び(B)成分を含有する表面処理剤によれば、最低限、真鍮製の器具に十分な防食性・潤滑性を付与することができる上に十分に乾燥性が高い希釈液を調製できることが確認された。
【0051】
図1のグラフにおける参考例と実施例1と実施例2との比較から明らかなように、実施例1の表面処理剤は、従来公知の表面処理剤(スティンミルクS−200)と比べて、浸漬させた真鍮以外の金属からなる試験片の腐食速度も低いことが分かった。
また、
図2のグラフから明らかなように、(A)、(B)及び(C)の3成分を含有する実施例1の表面処理剤は、水道水に比べて表面処理をした試験片の摩擦係数が低いことが分かった。
更に、
図3のグラフにおける参考例と実施例1との比較から明らかなように、(A)、(B)及び(C)の3成分を含有する請求項1表面処理剤は、水道水や従来公知の表面処理剤と比べて、試験片に滴下された後の希釈液の乾燥速度が速いことが分かった。
【0052】
このことから、(A)及び(B)に加えて(C)ソルビタン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤によって、真鍮以外からなる金属製器具にも十分な防食性・潤滑性を付与することができる上に十分に乾燥性が高い希釈液を調製できることが確認された。
【0053】
実施例4と比較例2との比較から、表面処理剤における(A)ジエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が30質量%を超えると、試験片の防食性・潤滑性が低下することが分かった。
また、実施例3と比較例1との比較から、表面処理剤は、(A)ジエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量が10質量%未満になると、白濁してしまうことが分かった。
【0054】
これらの結果から、(A)ジエチレングリコールモノブチルエーテルの含有量を10〜30質量%とすることで、白濁が生じず、表面処理後の試験片の防食性・潤滑性にも問題のない表面処理剤が調製可能であることが確認された。
【0055】
また、実施例5及び6の結果から、表面処理剤は、(B)成分の含有量が1.0質量%又は5.0質量%であっても、実施例1及び2の表面処理剤と同程度に、金属製器具に十分な防食性・潤滑性を付与できる上に十分に乾燥性が高い希釈液を調製可能であることが分かった。一方、比較例3及び4の結果から、(B)成分の含有量を0又は7.0質量%とすると、表面処理剤が白濁してしまうことが分かった。
これらの結果から、(B)成分の表面処理剤における含有量は、1.0〜5.0質量%の範囲に属する必要があることが確認された。