(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光受光ユニットは前記蛍光受光部のロッド状レンズからの蛍光を受光する位置に光入射用の端面をもち入射した蛍光を検出器側に導く光ファイバをロッド状レンズごとに備えている請求項1又は2に記載のキャピラリ電気泳動装置。
前記カセット装着装置に装着された前記キャピラリカセットの陰極側端部において、前記キャピラリの先端をサンプル吸引又は泳動電圧印加のための流路に接続するカソードブロックを備えている請求項1から4のいずれか一項に記載のキャピラリ電気泳動装置。
前記ロッド状レンズアレイの各ロッド状レンズはGRINレンズ、球面/非球面レンズ又はレンズアレイである請求項1から6のいずれか一項に記載のキャピラリ電気泳動装置。
前記励起光学系ユニットは励起光源からの励起光を前記ロッド状レンズアレイに沿ったライン状ビームに変換する向きに配置されたパウエルレンズ又は非球面レンズ群を備えている請求項1から7のいずれか一項に記載のキャピラリ電気泳動装置。
複数本のキャピラリの検出窓部が配列され、前記検出窓部の配列を挟んで励起側と蛍光側の位置決め部をもち、請求項1に記載のキャピラリ電気泳動装置に装着されるキャピラリカセットであって、
カセット筐体を備え、前記複数本のキャピラリは前記カセット筐体の一端と他端の間にわたって配置されており、
該キャピラリカセットの位置決め部は前記カセット筐体により構成されているキャピラリカセット。
該キャピラリカセットの位置決め部は、それに位置決めされる前記励起光照射部又は前記蛍光受光部の位置決め部としての端面形状に対応した形状の開口を含む請求項9に記載のキャピラリカセット。
該キャピラリカセットの位置決め部は、それに位置決めされる前記励起光照射部又は前記蛍光受光部の位置決め部と当接して位置決めされる突き当て面を含む請求項9に記載のキャピラリカセット。
断面がV字型の溝を等間隔にもつ基板をさらに備え、前記検出窓部の配列は前記複数本のキャピラリが前記基板の前記溝に1本ずつ配列されて構成されている請求項9から11のいずれか一項に記載のキャピラリカセット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているような、樹脂フレームで扱うものは取り扱いが容易とはいえず、キャピラリの破損防止や所定の性能を得るために慎重な扱いが求められる。また、特許文献2に記載されているような、光学素子等も含めてカートリッジ化したものは取り扱いが容易とはいえ、コストが高い欠点があった。
【0009】
本発明は、本発明は、所定の性能を得るための操作が容易なマルチキャピラリ電気泳動装置と、交換しやすく低コストに製造できるキャピラリカセットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のキャピラリ電気泳動装置は複数本のキャピラリの検出窓部が配列され、前記検出窓部配列を挟んで励起側位置決め部と蛍光側位置決め部をもつキャピラリカセットを使用するものである。そのようなキャピラリカセットをカセット装着装置により装着し、励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットに対して位置決めするように構成されている。
【0011】
励起光学系ユニットは、カセット装着装置に装着されたキャピラリカセットの励起側位置決め部に位置決めされる位置決め部をもち、キャピラリカセットの検出窓部のそれぞれに励起光を照射するように検出窓部配列に対応した配列をもつロッド状レンズアレイを含む励起光照射部を備えている。
【0012】
蛍光受光ユニットは、カセット装着装置に装着されたキャピラリカセットの蛍光側位置決め部に位置決めされる位置決め部をもち、キャピラリカセットの検出窓部のそれぞれからの蛍光を受光するように検出窓部配列に対応した配列をもつロッド状レンズアレイを含む蛍光受光部を備えている。
【0013】
励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットはキャピラリカセットに一体として組み込まれたものではなく、キャピラリカセットに対して着脱可能に装着されるものである。この点で特許文献2に記載のカートリッジとは異なる。
【0014】
本発明のキャピラリカセットは、複数本のキャピラリの検出窓部が配列され、その検出窓部配列を挟んで励起側と蛍光側の位置決め部をもち、本発明のキャピラリ電気泳動装置に装着されて使用されるものである。そして、カセット筐体を備え、複数本のキャピラリはそのカセット筐体の一端と他端の間にわたって配置されており、このキャピラリカセットの位置決め部はそのカセット筐体により構成されている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のキャピラリ電気泳動装置は、その励起光学系ユニットがキャピラリカセットの検出窓部のそれぞれに励起光を照射するように検出窓部配列に対応した配列をもつロッド状レンズアレイを含んでいるため、ラインビームを直接キャピラリに照射する構成と比べ、励起光密度が高く、励起効率を最大限に引き出すことができる。
【0016】
ロッド状レンズアレイは、キャピラリカセットに含まれるキャピラリの本数が少なければ照射光学系又は受光光学系を小型に構成できる利点ももつ。
【0017】
本発明のキャピラリカセットはキャピラリを配置したカセット筐体にキャピラリの検出窓部を挟む励起側と蛍光側の位置決め部をもっているので、キャピラリカセットを励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットに対して位置決めして取りつけるだけで高い光軸調整精度を得ることができ、またキャピラリカセットの装着が容易である。
【0018】
キャピラリカセットの位置決め部はカセット筐体により構成されているので、キャピラリカセットをより小型にすることができ、また低コストに製造する上でも有効である。
【0019】
そして、キャピラリカセット側に励起光学系の光学素子も蛍光光学系の光学素子も組み込まないため、消耗品であるキャピラリカセットの製造コストが抑えられる。
【0020】
このように、本発明のキャピラリ電気泳動装置は、例えば小規模なDNAシーケンサとして利用でき、またその他の用途の要求にも応え得る、小型で、高感度、かつ消耗品を含めたコストが低い測定装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態において、カセット装着装置は装着したキャピラリカセットのキャピラリの温度を調節する温度調整機構を備えることができる。温度調整機構によりキャピラリアレイの温度分布がすみやかに均一になるとともに、信号の経時変化を抑えることができる。
【0023】
蛍光受光部のロッド状レンズからの蛍光を検出器で直接に受光してもよいが、ロッド状レンズからの蛍光を受光する位置に入射用の端面をもち入射した蛍光を検出器側に導く光ファイバをロッド状レンズごとに備えていてもよい。そのような光ファイバを備えた蛍光受光ユニットは、ロッド状レンズの後段に配置された光ファイバがピンホールとして作用するため、迷光などの影響を受けにくい利点をもつ。
【0024】
全ての光ファイバの検出器側の端面が狭い領域に集まるように再構成してもよい。この場合、検出器が分光器を備えているときは分光器での軸ずれによる収差を低減させることができる。
【0025】
カセット装着装置に装着されたキャピラリカセットの陰極側端部において、キャピラリの先端をサンプル吸引又は泳動電圧印加のための流路に接続するカソードブロックを備えることもできる。
【0026】
励起光学系ユニットがロッド状レンズアレイを含んでいて励起光密度が高く、励起効率を高めることができることから、励起光学系を並列に複数ユニット化してもよい。そこで、一実施形態では、カセット装着装置は複数個のキャピラリカセットを装着できる構成をもち、励起光学系ユニットは共通の励起光源と、キャピラリカセットごとの励起光照射部と、励起光源からの励起光の光路を切り換えていずれかの励起光照射部に励起光を導く光路切換え機構とを備えたものとし、蛍光受光ユニットはキャピラリカセットごとに配置されているように構成することができる。
【0027】
光路を切り換えることにより一方のキャピラリカセットで電気泳動分離検出を行い、別の一方のキャピラリカセットでは流路の洗浄や分離バッファの充填などの前処理を並列で交互に行うことが可能であり、結果としてスループットを向上させることができる。
【0028】
キャピラリカセットごとに別の励起光源を使用する構成であれば励起光源の光源強度のばらつきにより蛍光検出強度がキャピラリカセットごとに変動することもあるが、この実施形態のように共通の励起光源を使用すれば励起光源の光源強度のばらつきによる問題は発生しない。
【0029】
また、励起光源が1つですむことからキャピラリ電気泳動装置全体を小型にすることができ、コストも抑えることができる。
【0030】
ロッド状レンズとしては、GRINレンズ、球面/非球面レンズ又はレンズアレイを使用することができる。
【0031】
励起光学系ユニットは励起光源からの励起光をロッド状レンズ配列に沿ったライン状ビームに変換する向きに配置されたパウエルレンズ又は非球面レンズ群を備えたものとすることができる。
【0032】
キャピラリカセットの一実施形態は、断面がV字型の溝を等間隔にもつ基板をさらに備え、検出窓部配列が複数本のキャピラリを前記基板の溝に1本ずつ配列して構成したものとしている。キャピラリの外形は円柱状であるので、V字型の溝はキャピラリを所定の位置に位置決めして保持するのが容易である。
【0033】
図1から
図4によりキャピラリカセットの第1実施例を説明する。
【0034】
キャピラリカセット2はカセット筐体4の一端6と他端8の間の位置に測定用の光が透過する検出部10をもっている。カセット筐体4は樹脂製であり、成型又は機械加工により作製されたものである。
【0035】
キャピラリ束12は複数本のキャピラリ14を含んでいる。キャピラリ束12に含まれるキャピラリ14の本数は特に限定されるものではなく、例えば4本又は8本というように、一度に分析しようとする試料の数に応じて決めることができる。この実施例では、キャピラリ束12に含まれるキャピラリ14の本数は4本であるとして説明する。キャピラリ14はカセット筐体4の両端間にわたって配置されている。
【0036】
キャピラリ束12に含まれる全てのキャピラリ14の一端(
図1では左側)は1つに束ねられてカセット筐体の一端6から突出し、耐熱性樹脂製、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)製のチューブ16に通されて耐熱性エポキシ樹脂接着剤で接着されることによりバンドル加工されている。バンドル加工されたキャピラリ束12のその一端には、流路へ接続するためのフィッティング18が取りつけられている。
【0037】
キャピラリ束12に含まれるキャピラリ14の他端20は、後述のカソードブロック60に挿入されたときに流路62と合流できるように(
図5参照。)、キャピラリ14の長さ方向に対して垂直方向に切断されている。各キャピラリ14の他端側にはカセット筐体4の他端8に固定するためにフィッティング22が取りつけられている。キャピラリ14の他端20はフィッティング22によってカソードブロック60に固定されている。
【0038】
キャピラリ14は特に限定されるものではないが、例えば外径が186±6〜363±10μm、内径が50±3μm、全長145mmであり、他端20から検出部10までの有効長が85mmである。チューブ16のサイズも特に限定されるものではないが、例えば外径が1.6mm、内径が0.75〜1.0mmである。
【0039】
検出部10にはキャピラリ配列基板24が接着剤により固着されている。キャピラリ配列基板24は測定用の光を透過させる開口部26をもち、その開口部26内にキャピラリ束12に含まれる全てのキャピラリ14を等間隔に配置している。
【0040】
キャピラリ配列基板24の一例は
図4に示されているものである。開口部26は例えば幅1mmのスリットであり、キャピラリ配列基板24にはその開口部26の長手方向に沿ってV溝28が等間隔に配置されている。V溝28の方向は、V溝28にキャピラリ14を嵌め込むとキャピラリ14が開口部26を横切ることになる方向である。そのV溝28にキャピラリ14が1本ずつ嵌め込まれて接着剤で基板24に固着されていることにより、キャピラリ配列基板24にキャピラリ14が等間隔に配置されて固定されている。
【0041】
キャピラリ14は石英製のキャピラリチューブを保護用樹脂で被覆したものである。キャピラリ14が開口部26を横切っている部分ではその保護用樹脂被覆が除去されてキャピラリチューブが露出した検出窓部14Aとなっている。検出窓部14Aには測定用の光として励起光が照射され、キャピラリ14の内径14B内を通過する試料から発生した蛍光が検出窓部14Aから放出される。検出窓部14Aで励起光が照射される位置が開口部26内にあるため、V溝28−キャピラリ14間で励起光又は蛍光が散乱するのを回避している。
【0042】
図1に戻って説明を続けると、キャピラリカセット2の検出部10には、キャピラリ配列基板24を挟んでその上下に電気泳動装置の励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットを位置決めするための位置決め部30、32が設けられている。位置決め部30、32は、この実施例のキャピラリカセット2ではカセット筐体4自体による開口部として構成されている。
【0043】
位置決め部30はキャピラリカセット2の下側に設けられ、キャピラリカセット2の下側から励起光学系ユニットを位置決めするために励起光照射部の端面形状に対応した円柱状又は側面がわずかに傾斜した円錐台状の開口部となっている。位置決め部30の開口に嵌め込まれた励起光照射部の端面が位置決め部30の開口の周方向に回転しないように固定するために、キャピラリカセット2の裏面には穴34が開けられており、その穴34に後述の励起光照射部の端面のピン80が嵌め込まれることにより、キャピラリカセット2と励起光学系ユニットとの相対的な回転が阻止される。
【0044】
位置決め部32はキャピラリカセット2の上側に設けられ、キャピラリカセット2の上側から蛍光受光ユニットを位置決めするために蛍光受光部の端面形状に対応した円柱状又は側面がわずかに傾斜した円錐台状の開口部となっている。位置決め部32の開口に嵌め込まれた蛍光受光部の端面が位置決め部32の開口の周方向に回転しないように固定するために、キャピラリカセット2の表面には穴36が開けられており、その穴36(
図2参照。)に後述の蛍光受光部の端面のピン84が嵌め込まれることにより、キャピラリカセット2と蛍光受光ユニットとの相対的な回転が阻止される。
【0045】
キャピラリ配列基板24はその基板面に対して垂直方向に中心軸をもっており、位置決め部30、32の開口部の円柱又は円錐台も中心軸をもっている。それらの中心軸が一致するように、キャピラリ配列基板24がカセット筐体4に固定されている。
【0046】
図4に示されるキャピラリ配列基板24は、V溝28が設けられている側を表面側とすると、
図3に示されるように、キャピラリ配列基板24の裏面側がカセット筐体4の裏面側に当接するように固着されている。
図1(B)、
図3に示されるように、キャピラリ配列基板24はカセット筐体4に固着された状態ではキャピラリ配列基板24の表面側がカセット筐体4の裏面側を向いており、キャピラリ14はそのキャピラリ配列基板24を介してカセット筐体4の裏面側に配置されている。
【0047】
図5は一実施例のキャピラリカセット2が装着された状態の一実施例のマルチキャピラリ電気泳動装置を表わしている。
【0048】
キャピラリカセット2を装着する装着装置は、上面が開放可能のアルミブロックからなりキャピラリカセット2を水平方向に乗せて保持する載置台40と、載置台40にキャピラリカセット2を載置した状態でキャピラリカセット2を密閉状態に覆う蓋42から構成されている。
【0049】
載置台40は、その下面に接触して配置されたヒートブロック44とともに温度調整機構の一部を構成している。載置台40には温度センサ46が取りつけられ、温度制御装置48が温度センサ46の検出信号を取り込んで、載置台40の温度が所定の温度で一定になるようにヒートブロック44に組み込まれたヒータへの通電を制御する。蓋42は断熱材で被われており、キャピラリカセット2内のキャピラリ14が外部の温度変化の影響を受けることを防いでいる。温度制御装置48は単独で構成してもよく、又はマルチキャピラリ電気泳動装置の動作を制御する制御用のコンピュータにより実現してもよい。
【0050】
キャピラリカセット2が載置台40に載置された状態で、キャピラリカセット2の下方に励起光学系ユニット50が固定されており、キャピラリカセット2の上方から蛍光受光ユニット54を配置できるようになっている。
【0051】
励起光学系ユニット50の励起光照射部51は端面にレンズホルダ52を備えている。レンズホルダ52はキャピラリカセット2の励起光学系ユニット用位置決め部30に嵌め込まれる円筒形状又はわずかに傾斜した側面をもつ円錐台状をしている。キャピラリカセット2は、載置台40に載置されたとき、位置決め部30にレンズホルダ52が嵌め込まれる位置に固定される。
【0052】
レンズホルダ52内には励起光をキャピラリ14に集光して照射するロッドレンズ82が配置されている。
【0053】
蛍光受光ユニット54は蛍光受光部55の端面にレンズホルダ56を備えている。レンズホルダ56は載置台40に載置されたキャピラリカセット2の蛍光受光ユニット用位置決め部32に嵌め込まれる円筒形状又はわずかに傾斜した側面をもつ円錐台状をしている。
【0054】
レンズホルダ56内には、キャピラリ14内を通るサンプルから発生する蛍光を受光する位置にロッドレンズ86が配置されている。ロッドレンズ86は受光した光を集光して放出する。ロッドレンズ86から放出される光を受ける位置に光ファイバ88の端面を保持するためのコネクタ100が設けられている。コネクタ100は光ファイバ88の先端部の心材を保持し、光ファイバ88の先端面をロッドレンズ86から放出される光の集光位置に位置決めしている。このようなコネクタ100によるレンズホルダ56内の構造は、コネクタ100により位置決めされた光ファイバ88の先端面がピンホールとして作用するため、迷光等の影響を受けにくい。
【0055】
ロッドレンズ86と、コネクタ100により保持された光ファイバ88の端面との間には蛍光フィルタ102が配置されている。蛍光フィルタ102は励起光学系ユニットのレンズホルダ52内のロッドレンズ82から照射された励起光を除去し、キャピラリ14を通るサンプルからの蛍光を透過させる波長特性をもったものである。蛍光フィルタ102はこのようにレンズホルダ56内に配置した形態だけでなく、光ファイバ88の先端が導かれるイメージ素子などの検出器側に配置した形態もとることができる。
【0056】
キャピラリカセット2が載置台40に載置された状態のキャピラリ14の他端20側には、載置台40にカソードブロック60が設けられている。カソードブロック60内にはサンプル吸引又は泳動電圧印加のための垂直方向の流路62が設けられ、その流路62の一端はサンプル、バッファ液又は洗浄液に浸される流路64につながり、他端は吸引用の流路66につながっている。カソードブロック60にはキャピラリ14の他端20を挿入して流路62に接続する水平方向の穴も設けられている。キャピラリカセット2を載置台40に載置する際にキャピラリ14の他端20をカソードブロック60のその穴に挿入することにより、キャピラリ14が流路62に接続される。カソードブロック60はキャピラリ14ごとに個別に配置されたものであってもよく、又はキャピラリ束に含まれるキャピラリの数だけ一体的に連結されたものであってもよい。
【0057】
キャピラリカセット2が載置台40に載置された状態のキャピラリ14の一端側のフィッティング18は、アノードリザーバ70につながる接続部72に固定される。
カソードブロック60の下方にはオートサンプラ74が配置されており、オートサンプラ74にはサンプル、バッファ液又は洗浄液が入ったキュベット76が収容されている。オートサンプラ74がキュベット76を水平方向と垂直方向に移動させることにより、サンプル、バッファ液又は洗浄液が入ったキュベット76に流路64の先端が浸される。
【0058】
キャピラリカセット2に位置決めして固定される励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットの位置決め部を
図6に示す。
【0059】
励起光学系ユニット50は載置台40に対して位置が固定されている。励起光学系ユニット50は端面にレンズホルダ52と、回転方向を規制するピン80を備えている。キャピラリカセット2を載置台40に載置するときに、励起光学系ユニット50のレンズホルダ52がキャピラリカセット2の励起光学系ユニット用位置決め部30に嵌め込まれ、ピン80がキャピラリカセット2の裏面の位置決め用の穴34に嵌め込まれるように、キャピラリカセット2を励起光学系ユニット50に対して位置決めする。
【0060】
キャピラリカセット2が励起光学系ユニット50に対して位置決めされた状態において、キャピラリカセット2内の各キャピラリ14に励起光を照射するために、レンズホルダ52には屈折率分布型ロッドレンズ(GRINレンズ)82がキャピラリ14の検出窓部に対向するように配置されている。ロッドレンズ82は検出部10におけるキャピラリ14の配列に対応して一列に配列されている。ロッドレンズ82は、例えばレンズ外径が1.8mmであり、光源からのライン状に集光された光をそれぞれのキャピラリ14の内径よりは大きく外径よりは小さいスポットとして照射する。
【0061】
キャピラリカセット2が載置台40に載置された状態で、キャピラリカセット2の上方から蛍光受光ユニット54をキャピラリカセット2に取りつける。蛍光受光ユニット54はその蛍光受光部55の端面にレンズホルダ56と、回転方向を規制するピン84を備えている。キャピラリカセット2に蛍光受光ユニット54を取りつけるときに、蛍光受光ユニット54のレンズホルダ56がキャピラリカセット2の蛍光受光ユニット用位置決め部32に嵌め込まれ、ピン84がキャピラリカセット2の位置決め用の穴36に嵌め込まれるように、蛍光受光ユニット54をキャピラリカセット2に対して位置決めする。
【0062】
キャピラリカセット2が載置台40に載置された状態で、各キャピラリ14内を移動(泳動)する蛍光物質からの蛍光を受光するために、レンズホルダ56にも屈折率分布型ロッドレンズ86が配置されている。ロッドレンズ86も検出部10におけるキャピラリ14の配列に対応して一列に配列されている。ロッドレンズ86も、例えばレンズ外径が1.8mmであり、キャピラリ14からの蛍光をロッドレンズ86の一端で受光する。各ロッドレンズ86で受光された蛍光をイメージ素子へ伝送するために、ロッドレンズ86の他端にはそれぞれの光ファイバ88の端面が結合されている。
【0063】
ロッドレンズ82、86としては屈折率分布型以外の球面/非球面レンズであってもよい。また、ロッドレンズに替えてレンズアレイを使用することもできる。
【0064】
このように、キャピラリカセット2内のキャピラリ配列基板24と上下のレンズホルダ52、56の光軸(中心軸)が一致するようにあらかじめ調整され、かつキャピラリカセット2に対するレンズホルダ52、56の回転方向も位置決めピン80、84で規定されているため、キャピラリカセット2に対してレンズホルダ52、56を相互に取りつけるだけで、キャピラリ14に対して励起光学系ユニットと蛍光受光ユニットの配置が完了する。
【0065】
図5のようにキャピラリカセット2が装着されたマルチキャピラリ電気泳動装置を用いて試料の分析を行う方法を説明する。
【0066】
まず、キャピラリ14に泳動媒体を充填する。泳動媒体はアノードリザーバ70から圧入する。その後、流路64の先端をサンプルの入ったキュベット76に浸し、流路66から吸引してサンプルをキャピラリ14の端部20まで吸入する。流路64の先端をバッファ液の入ったキュベットに浸し、そのキュベットに電極を挿入し、アノードリザーバ70もバッファ液に交換した後、アノードリザーバ70にも電極を挿入、両電極間に電圧を印加してサンプルをキャピラリ14の端部20に導入する。
【0067】
その後、流路64に残ったサンプルを流路66から吸引して除去した後、両電極間に電圧を印加してサンプルをキャピラリ14のカソード側からアノード側に電気泳動させて分離する。検出部10において励起光学系ユニット50からキャピラリ14に励起光を照射し、キャピラリ14から発生した蛍光を蛍光受光ユニット54で受光し、イメージ素子へ伝送して画像処理する。
【0068】
キャピラリカセットの第2の実施例を
図7,8に示す。第1実施例のキャピラリカセット2では、円筒または円錐台形状の嵌め込みと回転方向を規定するピンによる位置決めであるのに対し、第2の実施例のキャピラリカセット2Aでは、3点支持による位置決めを行う。
【0069】
キャピラリカセット2Aは、筐体と平行な突き当て面をもつ内部構造にもっている。この内部構造はキャピラリ配列基板24の中心軸に平行な側面90を突き当て面としてもち、励起光学系ユニット50Aの励起光照射部51Aに対して位置決めするための位置決め部となる。一方、励起光照射部51Aはその端面において、ロッドレンズ82を保持したレンズホルダ52Aの外側に、位置決め用に一方向に沿った2つの突起92A、92Bと、それらの突起92A、92Bが配列されている直線に直交する直線上に配置された1つのピン94を備えている。キャピラリカセット2Aを装着装置に装着する際、突き当て面90の互いに直交する2つの側面を突起92A、92Bとピン94に当接させることによりキャピラリカセット2Aが励起光学系ユニット50Aに対して位置決めされる。その当接状態を維持するために、具体的な機構の図示は省略されているが、装着装置にはキャピラリカセット2Aを矢印95A、95B方向に押し付けるバネなどの機構が設けられている。
【0070】
カセット筐体4の検出部の上面側にはキャピラリカセット2Aに対して蛍光受光ユニット54Aの蛍光受光部55Aを位置決めする位置決め部として、キャピラリ配列基板24の開口部26よりも大きい矩形の開口96が設けられている。蛍光受光部55Aのレンズホルダ56Aはロッドレンズ86を保持し、位置決め部の開口96に嵌め込まれる直方体形状の外形をもっている。
【0071】
レンズホルダ56を開口96Aに着脱する操作を容易にするために、開口96の寸法をレンズホルダ56の外形よりも大きく形成することもできる。その場合は、開口96の互いに直交する2つの内側面に対してレンズホルダ56を位置決めするために、具体的な機構の図示は省略されているが、装着装置には蛍光受光ユニット54Aを矢印98A、98B方向に押し付けるバネなどの機構が設けられている。
【0072】
第2の実施例のキャピラリカセット2Aも第1の実施例のキャピラリカセット2と同様に
図5に示されるように装着装置に装着してマルチキャピラリ電気泳動装置を構成する。
【0073】
励起光学系と蛍光受光ユニットの他の実施例を
図9に示す。
図9はキャピラリ束12のキャピラリ配列に沿った方向に切断した断面図である。
【0074】
この実施例では、装着装置の図示は省略されているが、複数個のキャピラリカセットを装着できる構成をもっている。ここでは、2つのキャピラリカセットが装着されている場合を示しているが、装着装置に装着されるキャピラリカセットの数は2に限らず、3でもよく、さらに多くてもよい。
【0075】
この実施例では、キャピラリ束12Aをもつ一方のキャピラリカセットに対しては励起光学系ユニットのレンズホルダ152Aと蛍光受光ユニットのレンズホルダ156Aの組が配置され、キャピラリ束12Bをもつ他方のキャピラリカセットに対しては励起光学系ユニットのレンズホルダ152Bと蛍光受光ユニットのレンズホルダ156Bの組が配置される。レンズホルダ152Aとレンズホルダ152Bは
図5に示されたレンズホルダ52と同じものであり、レンズホルダ156Aとレンズホルダ156Bも
図5に示されたレンズホルダ56と同じものである。
【0076】
レンズホルダ152Aを含む励起光学系ユニットと、レンズホルダ152Bを含む励起光学系ユニットは共通の励起光源110を備えている。励起光源110は例えばレーザダイオード(LD)である。
【0077】
励起光源110からの光を平行光束にするために励起光源110の光出射側にコリメータレンズ112が配置され、コリメータレンズ112からの平行光束を均一な扇形の光束にするためにパウエルレンズ114が配置されている。パウエルレンズ114により放出される扇形の光束を帯状の平行光束にするためにシリンドリカルレンズ116が配置されている。シリンドリカルレンズ116により帯状の平行光束にされた励起光のうち、励起光として使用される所望の波長成分を透過させ、検出しようとする蛍光に該当する波長成分を除去するような波長特性をもった励起フィルタ118が配置されている。励起フィルタ118を透過した励起光を励起光学系ユニットのレンズホルダ152A又はレンズホルダ152Bのいずれかに照射するために、その励起光の光軸上に可動ミラー120と固定ミラー122が配置されている。可動ミラー120は反射した励起光をレンズホルダ152Aに導く位置、固定ミラー122は反射した励起光をレンズホルダ152Bに導く位置にそれぞれ配置されている。
【0078】
このような励起光学系ユニットの構成により、共通の励起光源110からの励起光を可動ミラー120の切換えによりレンズホルダ152Aとレンズホルダ152Bのいずれかに切り換えて照射することができる。
【0079】
蛍光受光ユニットのレンズホルダ156Aとレンズホルダ156Bで受光された蛍光はそれぞれ光ファイバ88Aと88Bにより導入部89から検出器に導かれる。検出器では導入部89から導かれた蛍光を分光器で分光してイメージ素子により検出する構成をとることがある。例えば、DNAの4種類の塩基ごとに異なる蛍光色素で標識されたサンプルから塩基配列を決定するような場合である。
【0080】
この実施例では、光ファイバ88Aと光ファイバ88Bは、検出器への導入部89で狭いピッチで集合するように光ファイバ配列が再構成されている。そのような導入部89の構成をとることにより、検出器の分光器での軸ずれによる収差を低減できる。