(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
3つ以上の前記検出部が設けられるとき、各前記検出部は、周方向において隣接する前記検出部の間隔が異なるように設けられる、請求項1または2に記載のロール回転速度検出装置。
前記ロールのスラスト方向における前記検出部と前記永久磁石との間隔は、5mm以上30mm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロール回転速度検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1では、例えば
図6に示すように、ロール12とともに回転する軸スリーブに複数の永久磁石が設けられたマグネット部13が設けられており、マグネット部13の永久磁石により形成される磁界を、ロール12のラジアル方向に設けられた検出部15により検出している。しかし、ロール12のマグネット部13の周面と検出部15との間隔は小さいため、めっき浴3中に発生したドロスがロール12の軸スリーブやマグネット部13の周面に付着すると、マグネット部13の周面と検出部15とが干渉し、ロール12の回転を妨げてしまう。ロールの軸受に起因する振動が生じた場合にセンサ15とマグネット部との距離が変動するため回転検出誤差を生じやすい。
【0007】
また、検出部15をマグネット部13の周方向に沿って複数設けることができればロール12の回転速度をより高精度に検出可能となる。しかし、検出部15は、例えばロール12の回転軸12aを回転可能に支持するロール支持部14に固定する等して浴中に設けられるため、マグネット部13の周方向に沿って検出部15を複数設けるとロールの回転を妨げやすく、またロール胴面の手入れ作業の障害になる等の問題がある。
【0008】
さらに、生産性向上のためライン速度が高速化するにつれて、めっき浴中にドロスが発生しやすくなり、ロールスリップや不転を誘発する。このため、ロールスリップや不転を確実に検知するため、ドロスの影響を受けることなく、ロールの回転速度を正確に検出する要望は高まっている。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、浴中ロールの回転速度を高精度に検出することができるとともに、装置の長寿命も実現することが可能な、新規かつ改良されたロール回転速度検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、溶融金属内に設置されたロールに設けられ、ロールとともに回転する永久磁石と、溶融金属に浸食されない耐熱材料からなる保護部材により包囲された状態で、ロールのスラスト方向に永久磁石と対向するように溶融金属内に設けられ、永久磁石により形成される磁界を検出する検出部と、を備える、ロール回転速度検出装置が提供される。
【0011】
検出部は、ロールの周方向に沿って複数設けてもよい。
【0012】
また、3つ以上の検出部が設けられるとき、各検出部は、周方向において隣接する検出部の間隔が異なるように設けてもよい。
【0013】
ロールのスラスト方向における検出部と永久磁石との間隔は、5mm以上30mm以下とするのがよい。
【0014】
検出部は、磁性体の軸芯に巻回されたコイルからなり、永久磁石により形成される磁界によって変化するコイルのインダクタンスを検出値として出力するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、浴中ロールの回転速度を高精度に検出することができるとともに、装置の長寿命も実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
<1.第1の実施形態>
[1−1.連続溶融めっき装置の構成]
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る連続溶融めっき装置について説明する。
図1は、本実施形態に係る連続溶融めっき装置1を示す模式図である。
【0019】
図1に示すように、連続溶融めっき装置1は、鋼帯2を、溶融金属を満たしためっき浴3に浸漬することにより、鋼帯2の表面に溶融金属を連続的に付着させるための装置である。連続溶融めっき装置1は、浴槽4と、スナウト5と、シンクロール6と、上下一対のサポートロール7、8と、ガスワイピングノズル9と、一対のタッチロール10、11とを備える。
【0020】
鋼帯2は、溶融金属によるめっき対象となる金属帯の一例である。本実施形態では鋼帯2の例を上げて説明するが、本発明の金属帯は、めっき対象となる帯状の金属材料であれば、その材質は問わない。また、溶融金属は、亜鉛、鉛−錫、アルミニウムなどの耐食性金属が一般的であるが、めっき金属として使用されるその他の金属であってもよい。溶融金属で鋼帯2をめっきして得られる溶融めっき鋼帯としては、亜鉛めっき鋼帯、合金化亜鉛めっき鋼帯等が代表的であるが、その他の種類のめっき鋼帯であってもよい。
【0021】
浴槽4は、上記溶融金属からなるめっき浴3を貯留する。スナウト5は、その一端をめっき浴3内に浸漬されるように傾斜配設される。
【0022】
シンクロール6は、めっき浴3中の最下方に配設され、サポートロール7、8よりもロール径が大きい。このシンクロール6は、スナウト5を通ってめっき浴3内に斜め下方に向けて導入された鋼帯2を、鉛直方向上方に方向転換する。
【0023】
サポートロール7、8は、めっき浴3中のシンクロール6の上方に配置され、シンクロール6から鉛直方向に引き上げられた鋼帯2を左右両側から挟み込むようにして配設される。サポートロール7、8は、不図示の軸受(例えば、すべり軸受、転がり軸受等)により回転自在に支持される。本実施形態にかかるサポートロール7、8は無駆動式であり、高速通板される鋼帯2に従動して回転する。なお、サポートロール7、8はモータ等により回転駆動される駆動式であってもよい。
【0024】
ガスワイピングノズル9は、めっき浴3外に配設けられ、めっき浴3から鉛直方向に引き上げられた鋼帯2の表面に気体を吹き付けて余剰な溶融金属を払拭する。これにより、鋼帯2に対する溶融金属の目付量を適正量に制御できる。タッチロール10、11は、ガスワイピングノズル9の上方に配設され、鋼帯2を両側より挟み込んで支持する。なお、連続溶融めっき装置1を、タッチロール10、11を設けない構成とすることもできる。
【0025】
ここで、上記構成の連続溶融めっき装置1の動作について説明する。連続溶融めっき装置1は、不図示の駆動源により鋼帯2を長手方向に移動させて、装置内の各部を通板させる。この鋼帯2は、スナウト5を通じてめっき浴3中に斜め下方に導入され、シンクロール6を周回して、その進行方向が鉛直方向上方に変換される。次いで、鋼帯2は、サポートロール7、8の間に挟み込まれながら上昇して、めっき浴3外に引き上げられる。このとき、鋼帯2は、サポートロール7、8により形状矯正されて、幅方向の反りが抑制される。その後、めっき浴3外に引き上げられた鋼帯2は、ガスワイピングノズル9により余剰な溶融金属を払拭されて所定の目付量に制御され、タッチロール10、11に至る。このようにして、連続溶融めっき装置1は、鋼帯2をめっき浴3中に連続的に浸漬して、溶融金属でめっきする。
【0026】
[1−2.ロール回転速度検出装置の構成]
次に、
図2〜
図4に基づいて、本実施形態に係るロール回転速度検出装置100の構成について説明する。以下では、本実施形態に係るロール回転速度検出装置100は、連続溶融めっき装置1のサポートロール8の回転速度を検出するために設けられているとして説明するが、他方のサポートロール7やシンクロール6等、めっき浴3中に浸漬した浴中ロールの回転速度を測定するものとして設置することも可能である。非駆動式のロールの回転速度を測定する場合には、測定されたロールの回転速度より、ロールのスリップの発生を発見することができる。また、駆動式のロールの回転速度を測定する場合には、測定されたロールの回転速度より、その回転が鋼帯2の移動速度に同期しているか否かを判定することができる。
【0027】
なお、
図2は、本実施形態に係る浴中ロールのロール回転速度検出装置100の配置状態を示す概略斜視図である。
図3は、本実施形態に係る浴中ロールのロール回転速度検出装置100の配置状態を示す、
図2の概略側面図である。
図4は、本実施形態に係るロール回転速度検出装置100のマグネット部110とセンサ部120との位置関係を示す説明図である。
【0028】
本実施形態にかかるロール回転速度検出装置100は、
図2〜
図4に示すように、サポートロール8の回転軸8aの一端に設けられたマグネット部110と、マグネット部110の回転速度を検出するセンサ部120とから構成される。これらの構成要素について説明する前に、まず、マグネット部110およびセンサ部120が設けられるサポートロール8とサポートロール8の支持機構について説明する。
【0029】
サポートロール8は、
図2および
図3に示すように、サポートロール8の回転軸8aの端部に設けられた軸受130により回転可能に支持されている。なお、
図2および
図3では、サポートロール8の一端側のみを示しているが、軸受130は、サポートロール8の回転軸8aの両端に設けられている。軸受130は、サポートロール8を支持するロールハンガー102、103により保持されている。ロールハンガー102、103は、浴外に設けられている支持部材101から浴中に延設されている。
【0030】
下ロールハンガー102は、支持部材101から延びるアーム部分の先端に窪み部が形成されており、その窪み部にサポートロール8の回転軸8aの端部に設けられた軸受130を保持する軸受ホルダー140が載置されている。軸受ホルダー140は、軸受130を安定して保持するために設けられる部材であり、本実施形態では、L字形状の部材を用いている。円筒形状の軸受130は、周面が軸受ホルダー140の2面に接するように配置される。
【0031】
また、下ロールハンガー102は、ロール回転速度検出装置100のセンサ部120を支持する。センサ部120は、後述するように、サポートロール8に固定されたマグネット部110とスラスト方向に対向するように設けられる。本実施形態では、下ロールハンガー102の窪み部にさらに切り欠きを形成し、軸受ホルダー140の下面と下ロールハンガー102の窪み部の切り欠きとの間にセンサ部120から延びるセンサパイプ122を挟み込むことで、センサ部120の設置位置を規定している。
【0032】
上ロールハンガー103は、支持部材101から延びるアーム部分の先端で、軸受ホルダー140を介して下ロールハンガー102に載置された軸受130の周面の一部を押さえるように設けられる。これにより、軸受ホルダー140に載置された軸受130が確実に支持される。
【0033】
本実施形態に係るロール回転速度検出装置100は、このようなサポートロール8とその支持機構に設けられている。次に、ロール回転速度検出装置100の各構成要素について説明する。
【0034】
マグネット部110は、
図4に示すように、サポートロール8とともに回転するようサポートロール8の回転軸8aに設けられた環状の基台部112と、基台部112の周側面に設けられた複数の永久磁石114とからなる。本実施形態では、永久磁石114は、基台部112の円周方向に等間隔に10個設けられているが、本発明はかかる例に限定されず、少なくとも1つの永久磁石114が設けられていればよい。
【0035】
センサ部120は、ロールのスラスト方向においてマグネット部110の表面と対向して設けられる検出部である。センサ部120は、サポートロール8とともに回転するマグネット部110の磁力を検出することにより、サポートロール8の回転速度を検出する磁界変化を検出可能な磁力センサである。
【0036】
例えば、センサ部120は、コイル、磁性コア、ボビン等から構成され、センサ部120の検出信号は、センサ部120に接続されたケーブルが挿通されているセンサパイプ122によって浴外の機器へ出力される。コイルは、耐熱性のワイヤーであり、ボビンに支持された磁性体の軸芯である磁性コアに巻回されている。磁性コアは、例えば無方向性電磁鋼板により形成される。また、コイルを形成する部材には、浴温に耐え得る耐熱性が要求される。例えば、コイルは、約400℃程度の耐熱性を有し、導体であるニッケルめっき銅をセラミックおよびポリイミドからなる被覆部材により被覆してなるワイヤーにより形成される。これにより、高温の浴内で長時間使用してもセンサ特性は変化せず、検出精度を保持することができる。
【0037】
センサ部120のコイルのインダクタンスは、マグネット部110の永久磁石114の磁界に応じて変化する。インダクタンスの変化は、コイルと接続されたケーブルを介して外部へ出力され、サポートロール8の回転速度を算出するための検出信号として利用される。すなわち、検出信号(インダクタンスに比例する電圧)の変化に基づき、ロールの回転速度は算出される。センサ部120は、コイルに外部磁場を印加したときの磁性コアの磁気特性によるインダクタンス変化を出力する。検出信号(電圧)は、コイルがマグネット部110の永久磁石114と対向していないときは大きく、コイルが永久磁石114と対向しているときは小さくなる。なお、磁性コアとして使用している磁性体は、外部磁場が強くなるほど透磁率が指数関数的に低くなる特性を持つようにしてもよい。
【0038】
センサ部120は、コイルのインダクタンスが磁性コアの透磁率に比例する関係に基づき、コイルと対向するマグネット部110の永久磁石114の有無より変化するセンサ出力信号を得る。センサ出力信号は、外部磁場が強くなるほど指数関数的に小さくなる特性を有する。そして、マグネット部110が回転すると、コイルのインダクタンスの変化に応じて、センサ出力信号は正弦波状に変化する。サポートロール8のロール回転速度は、このセンサ出力信号の振幅から算出することができる。
【0039】
センサ部120は、溶融金属に浸食されず、耐熱性のある材料からなる保護部材によって包囲されている。保護部材には、例えば、モリブデンを添加して耐食性、耐孔食性が向上されたSUS316、SUS317、SUH38、SUH661等のステンレス鋼あるいは耐熱鋼や、サイアロン等のセラミック、トリバロイ(登録商標)、ステライト(登録商標)等のコバルト系金属等を用いることができる。したがって、センサ部120自体は溶融金属に浸漬されず、センサ部120の製品寿命を長くすることができる。なお、ケーブルが挿通されるセンサパイプ122も、溶融金属に浸食されず、耐熱性のある材料から形成される。
【0040】
ここで、
図3に示すように、永久磁石114が設けられたマグネット部110の表面112aとセンサ部120との距離d(「永久磁石114とセンサ部120との距離」ともいう)は、5mm以上30mm以下とするのがよい。マグネット部110の表面112aとセンサ部120との距離dが小さいほどセンサ部120の検出誤差は小さくなるが、距離dが30mmより大きくなると、センサ部120によるセンサ出力振幅が低下してしまい、高精度にロールの回転速度を検出することができなくなってしまう。また、距離dが5mm未満となると、マグネット部110とセンサ部120とが接触する恐れがある。したがって、距離dは、5mm以上30mm以下とするのがよい。
【0041】
なお、上記は、マグネット部110の表面112aには異物は付着してらず、表面112aとセンサ部120との間は溶融金属のみが存在する場合について説明したが、マグネット部110の表面112aに固体の異物が付着する場合もある。この場合、センサ部120のセンサ出力振幅は、マグネット部110の表面112aに付着した固体の異物の表層とセンサ部120との距離によって変化し、マグネット部110の表面112aとセンサ部120との距離dは30mm以上であっても、センサ部120は所定以上のセンサ出力振幅を出力できる。例えば、マグネット部110の表面112aに付着した固体の異物が付着した状態では、マグネット部110の表面112aとセンサ部120との距離dは、異物が付着していない場合の2倍程度まで大きくすることができる。
【0042】
また、マグネット部110が設けられているロールは、ラジアル方向に数mm程度のぶれを生じる場合がある。このため、
図6に示した従来のようにロールのラジアル方向にセンサ部を設けた場合、センサ部とマグネット部とが接触する可能性がある。しかし、本実施形態のように、センサ部120をロールのスラスト方向からマグネット部110と対向するように設けることで、ロールのラジアル方向のぶれによるマグネット部110とセンサ部120との接触を回避することができる。
【0043】
さらに、
図6に示した従来のようにロールのラジアル方向にセンサ部を設けた場合、軸と軸受の隙間が小さいため、ラジアル方向におけるロールとセンサ部との距離は、使用初期に対して最大でも5mm程度しか大きくすることができない。このため、ロール表面に異物が初期隙間(例えば、5mm)以上付着するとスリップの原因となりやすい。
【0044】
しかし、本実施形態では、センサ部120をロールのスラスト方向からマグネット部110と対向するように設ける。スラスト方向においては、マグネット部110とセンサ部120との距離の使用初期からのずれは、ラジアル方向よりも許容できる範囲が大きい。例えば、スラスト方向におけるマグネット部110とセンサ部120との最大初期隙間は、ラジアル方向における最大初期隙間の数倍(例えば、4〜5倍)程度のずれを許容できる。このように、センサ部120をマグネット部110に対してスラスト方向に配置することで、ロールのずれの許容範囲が大きいため、ロールに異物が付着してもロールスリップの発生を回避することができる。
【0045】
なお、センサ部120により検出される信号/ノイズ比は、永久磁石114の磁場強度、隣接する永久磁石114との距離およびセンサ感度、温度等に依存する。このため、距離dの上限値は、これらの条件に基づいて適宜設定される。また、距離dを大きくすることによってセンサ部120によるセンサ出力振幅が低下し、ノイズの影響を受ける可能性もある。この場合には、後述するセンサ部120のコイルの巻き数を増加すること等により、センサ出力振幅を高くすることができる。
【0046】
以上、本実施形態に係るロール回転速度検出装置100について説明した。本実施形態に係るロール回転速度検出装置100では、ロールとともに回転する永久磁石114により形成される磁界を検出するセンサ部120を、ロールのスラスト方向に永久磁石114と対向するように設ける。これにより、ロールの側周面にドロスが付着してもセンサ部120と接触する可能性はなくなり、ロールのラジアル方向のぶれによるロールとセンサ部120との接触も回避できる。したがって、ロールの回転を止めることなくロール回転速度を高精度に検出することができる。また、センサ部120を溶融金属に浸食されない耐熱材料からなる保護部材により包囲することで、センサ部120の寿命も延ばすことができる。
【0047】
<2.第2の実施形態>
次に、
図5に基づいて、本発明の第2の実施形態に係るロール回転速度検出装置について説明する。本実施形態に係るロール回転速度検出装置は、第1の実施形態のロール回転速度検出装置100と比較して、永久磁石114により形成される磁界を検出するセンサを複数設けた点で相違する。以下、本実施形態に係るロール回転速度検出装置について説明する。なお、センサ部の構成以外は、
図1〜
図4に示した第1の実施形態のロール回転速度検出装置100の構成と同一であるため、ここではこれらの詳細な説明は省略する。
【0048】
本実施形態に係るロール回転速度検出装置は、
図5に示すように、マグネット部110と、センサ部220とからなる。マグネット部110は、第1の実施形態と同様、サポートロール8とともに回転するようサポートロール8の回転軸8aに設けられた環状の基台部112と、基台部112の周側面に設けられた複数の永久磁石114とからなる。本実施形態では、永久磁石114は、基台部112の円周方向に等間隔に10個設けられているが、本発明はかかる例に限定されず、少なくとも1つの永久磁石114が設けられていればよい。
【0049】
センサ部220は、ロールのスラスト方向においてマグネット部110の表面と対向して設けられる検出部である。本実施形態では、センサ部220は、
図5に示すように、第1センサ221、第2センサ223、第3センサ225、第4センサ227の4つのセンサからなる。センサ数を増加させることで、複数位置においてセンサの出力信号を得ることができ、これらの出力信号を考慮してロールの回転速度を算出することで、検出誤差等の影響を低減することができ、ロール回転速度を高精度に算出することが可能となる。また、複数のセンサのうちいずれかのセンサが正常に機能しなくなった場合にも、他のセンサの出力信号と波形が大きく異なる等の状態からセンサの異常を検知することもできる。なお、本実施形態では、4つのセンサによりセンサ部220を構成したが、本発明はかかる例に限定されず、3つのセンサによりセンサ部220を構成してもよく、5つ以上のセンサによりセンサ部220を構成してもよい。
【0050】
例えば
図6に示した、ロールのラジアル方向から永久磁石と対向するようにセンサ部を配置する従来方式の場合、マグネット部の側周面に複数のセンサ部を対向させる構成を実現するのは難しい。マグネット部の側周面を囲むように複数のセンサ部を対向させると、この部分には鋼板に随伴されたフレッシュな溶融金属が次々に流れ込むため、センサ部表面に異物が付着しやすくなり、異物が成長するとロール回転が阻害される原因となる。また、センサ部がロール表面を覆うため、ロール胴面の手入れ作業の障害になる。
【0051】
しかし、本実施形態のように、ロールのスラスト方向においてマグネット部110の表面と対向するようにセンサ部220を設ける場合、例えば下ロールハンガー102の窪み部に沿って各センサ221、223、225、227を配置すればよく、容易に構成することが可能である。この部分には鋼板からの溶融金属の随伴流が流入し難く、ロールハンガーとロール端面との間で溶融金属が滞留しているため、センサ部表面に異物が付着し難く、また、ロールの回転に影響を及ぼすこともない。また、ロール胴面にセンサ部がないため、ロール胴面の手入れ作業を妨げることもない。
【0052】
各センサ221、223、225、227は、それぞれ第1の実施形態のセンサ部120と同一構成としてもよい。各センサ221、223、225、227は、ロールの周方向に沿って配置されている。このとき、隣接するセンサ間の間隔は等間隔であってもよく、
図5に示すように異なる間隔であってもよい。各センサ221、223、225、227と永久磁石114とが近接するタイミングがずれるようにセンサを配置することで、各センサ221、223、225、227によって検出される信号のピークの現れるタイミングを異ならせることができる。
【0053】
例えば、各センサ221、223、225、227が等間隔で配置されている場合には、これらの出力信号は同一の波形となり、ピークの現れるタイミング(周期)も同一となる。このため、マグネット部110の回転速度が1回転中に微細に変化しても、各センサ間隔より細かい変化を検知しにくい。そこで、各センサ221、223、225、227を異なる間隔で配置し、それぞれの検出信号のピークの現れる位置を異ならせることで、各検出信号のピーク位置のずれから、より詳細な回転状況の情報を得ることが可能となり、より詳細にロール回転速度を算出することが可能となる。なお、各センサ221、223、225、227とマグネット部110の表面112aとの距離dは、第1の実施形態と同様、5mm以上30mm以下とするのが好ましい。
【0054】
以上、本実施形態に係るロール回転速度検出装置について説明した。本実施形態に係るロール回転速度検出装置では、ロールとともに回転する永久磁石114により形成される磁界を検出するセンサ部220を、ロールのスラスト方向に永久磁石114と対向するように設ける。これにより、ロールの側周面にドロスが付着してもセンサ部220と接触する可能性はなくなり、ロールのラジアル方向のぶれによるロールとセンサ部220との接触、回転誤差検出も回避できる。したがって、ロールの回転を止めることなくロール回転速度を高精度に検出することができる。また、センサ部220を溶融金属に浸食されない耐熱材料からなる保護部材により包囲することで、センサ部220の寿命も延ばすことができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係るセンサ部220は、第1センサ221、第2センサ223、第3センサ225、第4センサ227の4つのセンサからなる。センサ数を増加させることでロール回転速度をより高精度に算出することが可能となる。
【0056】
<3.適用例>
上述の各実施形態に係るロール回転速度検出装置によれば、高精度にロール回転速度を得ることができる。このようなロール回転速度検出装置により得られたロール回転速度を用いることで、鋼帯へのロールの押し込み量の変更や、ライン速度の変更等、操業変更の最適化も適切に行うことが可能となる。例えば、ライン速度とロール回転速度とを比較して、速度差が所定値(例えば10%)を超えたか否かを判定する判定処理を行う情報処理装置を設ける。情報処理装置が判定処理を実行した結果、ライン速度とロール回転速度との速度差が所定値を超えた場合、例えば予め設定された対策処理に基づいて鋼帯へのロールの押し込み量の変更やライン速度の変更を実施するようにしてもよく、オペレータに操業条件の変更を促す通知を行ったりしてもよい。
【0057】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。