(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記不可避不純物である酸素濃度が2000massppm以下とされるとともに、焼結密度yが下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1記載のスパッタリング用Bi−Geターゲット。
y≧0.1745×x+84.53 ・・・(1)
但し、上記(1)式において、xは、前記スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBi量(at%)である。
前記混合物を生成する工程では、不活性ガス雰囲気中で前記Bi粉末と前記Ge粉末とを混合させることを特徴とする請求項4または5記載のスパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたスパッタリング用Ge−Bi合金ターゲットでは、スパッタリング用Ge−Bi合金ターゲットに含まれるBiの組成が低い(例えば、20〜50at%の範囲内)と、高い焼結密度を得ることが困難であった(特許文献1段落番号0023、0026等参照)。
【0008】
また、本発明者らが検討した結果、Ge粉とBi粉の混合粉を焼結する従来の方法では、焼結密度が低いことに加えて、スパッタの初期段階においてスパッタ膜の組成が所望の組成からずれてしまうという問題が発生した。
【0009】
そこで、本発明は、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成のずれを抑制可能で、かつBi組成が低い場合でも高い焼結密度を得ることの可能なスパッタリング用Bi−Geターゲット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、本発明に至る事前検討として、振動ミルによりBiインゴットを砕くことで生成したBi粉末と、振動ミルによりGeインゴットを砕くことで生成したGe粉末と、を混合、焼結、機械加工することでスパッタリング用Bi−Geターゲットを作製し、該スパッタリング用Bi−Geターゲットを用いてスパッタ膜の組成の評価を行った。
【0011】
その結果、以下の問題があることが判った。
Geと比較してBiは延性を有するため、振動ミルのみの処理では、Ge粉末のように、Bi粉末を細かく粉砕することができない。
このため、上記Bi粉末及びGe粉末を用いて作製されたスパッタリング用Bi−Geターゲットを用いてスパッタ膜を形成すると、スパッタの初期段階においてスパッタ膜の組成が所望の組成からずれてしまうという問題が発生した。
このような問題を回避する手段として、スパッタの初期段階において、空スパッタすることで、Bi及びGeの組成を安定化させることが考えられるが、空スパッタの時間が長いとスパッタ膜形成工程における生産性が低下してしまう。
そこで、本発明者らは、製造方法によるターゲット組織への影響を詳細に検討し、本発明のスパッタリング用Bi−Geターゲットおよびその製造方法を発明するに至った。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の一観点によれば、Biを20at%以上60at%以下の範囲内で含み、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有し、Bi粉末とGe粉末との焼結体からなり、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値が20μm以上200μm以下であることを特徴とするスパッタリング用Bi−Geターゲットが提供される。
【0013】
本発明によれば、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値が20μm以上200μm以下の範囲内とされているので、スパッタする前の段階において、スパッタリング用Bi−Geターゲットのスパッタ面にGe組織を十分に露出させることが可能となる。言い換えれば、スパッタ面に露出されるBi組織の割合を少なくすることが可能となる。
これにより、スパッタの初期段階からGeをスパッタすることが可能となるので、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制できる。
また、スパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制可能となることで、異常放電の回数を抑制することができる。
【0014】
また、Biを20at%以上60at%以下の範囲内で含み、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有しているので、相変化型ディスクの高速化に対する効果を十分に得ることの可能なBi−Ge薄膜を成膜することができる。
【0015】
上記スパッタリング用Bi−Geターゲットにおいて、前記不可避不純物である酸素濃度が2000massppm以下とされるとともに、焼結密度yが下記(1)式を満たしてもよい。
y≧0.1745×x+84.53 ・・・(1)
但し、上記(1)式において、xは、前記スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBi量(at%)である。
なお、焼結密度とは、下記(2)式によって算出された密度の値を100%とし、実測した密度の値との相対値のことをいう。
密度(100%)=100/[(Wa/Da)+(Wb/Db)] ・・・(2)
また、上記(2)式において、Waは元素Aの含有量(wt%)、Wbは元素Bの含有量(wt%)、Da=元素Aの理論密度(g/cm
3)、Db=元素Bの理論密度(g/cm
3)。
【0016】
このように、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれる酸素濃度を2000massppm以下とすることで、焼結密度の低下が抑制されると共に、スパッタ膜の特性の劣化を抑制できる。
【0017】
さらに、上記(1)式を満たすことで、パーティクル及び異常放電の発生を抑制できる。また、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成のずれを抑制できる。
【0018】
上記スパッタリング用Bi−Geターゲットにおいて、前記Bi粉末、及び前記Ge粉末は、少なくともいずれかが粉砕粉であってもよい。
このように、Bi粉末、及びGe粉末のうち、少なくともいずれかを粉砕粉とすることで、混合時の各元素間の比重差による分離を抑制することができる。
【0019】
上記課題を解決するため、本発明の他の観点によれば、振動ミルによりGeインゴットを砕くことでGe粉末を生成する工程と、振動ミルと、ボールミルと、を順次使用することで、Biインゴットを粉砕して、平均粒径が20〜50μmの範囲内とされ、かつ酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成する工程と、前記Bi粉末と、残部のGe粉末と、を混合して20〜60at%の前記Bi粉末を含む混合物を生成する工程と、前記混合物を焼結する工程と、を含むことを特徴とするスパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法が提供される。
【0020】
本発明によれば、振動ミルと、ボールミルと、を順次使用して、Biインゴットを粉砕することで、平均粒径が20〜50μmの範囲内とされ、かつ酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成することが可能となる。
原材料としてのBi粉末の平均粒径が20〜50μmと小さいため、スパッタ面に十分なGe粉末が露出したスパッタリング用Bi−Geターゲットとなり、Ge相の相互間距離を小さくすることができる。
これにより、スパッタの初期段階からGe粉末をスパッタすることが可能となるので、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制できる。
【0021】
さらに、酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を使用することで、焼結性が向上し、焼結密度の高いスパッタリング用Bi−Geターゲットを得ることができる。
【0022】
上記スパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法において、前記Bi粉末を生成する工程では、前記ボールミル内に不活性ガスを封入してもよい。
【0023】
これにより、Bi粉末を生成する工程において、細かく粉砕されたBi粉末が酸化されることを抑制可能となるので、酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成することができる。
【0024】
上記スパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法において、前記混合物を生成する工程では、不活性ガス雰囲気中で前記Bi粉末と前記Ge粉末とを混合させてもよい。
【0025】
これにより、スパッタリング用Bi−Geターゲット内に酸素が取り込まれることを抑制可能となるので、スパッタリング用Bi−Geターゲットの酸素濃度を2000massppm以下にすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスパッタリング用Bi−Geターゲット及びその製造方法によれば、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成のずれを抑制でき、かつBi組成が低い場合でも高い焼結密度を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態)
<スパッタリング用Bi−Geターゲット>
本発明の実施の形態のスパッタリング用Bi−Geターゲットは、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAM等の各種の相変化型光記録ディスク(以下、「相変化型ディスク」という)を構成する誘電体層と記録層との間に配置されるBi−Ge層を形成する際などに使用されるスパッタリング装置用のターゲットである。
【0030】
本実施の形態のスパッタリング用Bi−Geターゲットは、Biを20at%以上60at%以下の範囲内で含み、残部がGe及び不可避不純物からなる組成を有し、Bi粉末とGe粉末との焼結体からなり、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値が20μm以上200μm以下とされている。
なお、上記「相互間距離の平均値」とは、隣接するGe粒子間表面の最短距離の平均値のことをいう。また、上記最短距離の平均値を算出する際の視野領域は、6.89mm
2とし、測定箇所は、ターゲット材の中心表面とする。
【0031】
ここで、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値が20μm以上200μm以下の範囲内とした理由について説明する。
Ge相の相互間距離の平均値を20μmよりも小さくするためには、微細なBi粉末を原料とする必要があるが、微細なBi粉末は表面積が大きいため酸化されやすく、ターゲットの焼結密度を低下させてしまう。
【0032】
一方、Ge相の相互間距離の平均値が200μmよりも大きいと、BiのスパッタレートとGeのスパッタレートとの差により、スパッタ処理開始直後において、スパッタ膜の組成が所望の組成からずれてしまう。
したがって、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値を20μm以上200μm以下の範囲内とすることで、スパッタリング用Bi−Geターゲットの焼結密度を低下させることなく、スパッタ処理開始直後において、スパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制できる。
また、スパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制可能となることで、異常放電の回数を抑制することができる。
【0033】
次に、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBiを20at%以上60at%以下の範囲内とした理由について説明する。
スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBiが20at%よりも低いと、良好な焼結性を確保することが困難となってしまう。一方、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBiが60at%よりも高いと、相変化型ディスクの高速化に対する効果が不十分となってしまう。
【0034】
したがって、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBiを20〜60at%の範囲内とすることにより、相変化型ディスクの高速化に対する効果を十分に得ることができると共に、良好な焼結性を確保することができる。
【0035】
上記スパッタリング用Bi−Geターゲットにおいて、不可避不純物である酸素濃度が2000massppm以下とされるとともに、焼結密度y(%)が下記(3)式を満たすように構成してもよい。
y≧0.1745×x+84.53 ・・・(3)
但し、上記(3)式において、xは、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれるBi量(at%)である。
【0036】
スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれる酸素濃度が2000massppmよりも大きいと、焼結密度が低下すると共に、スパッタ膜の膜特性が低下してしまう。よって、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれる酸素濃度が2000massppm以下とすることで、スパッタリング用Bi−Geターゲットの焼結密度の低下を抑制できると共に、スパッタ膜の膜特性の劣化を抑制することができる。
【0037】
上記(3)式は、Biの含有量(at%)と焼結密度との関係を表す式である。Biの含有量が少ないと焼結密度が低下する傾向にあるが、上記(3)式を満足するスパッタリング用Bi−Geターゲットは、異常放電やパーティクルの発生を抑制でき、スパッタを安定して行う事が可能となる。
【0038】
焼結密度yが上記(3)式を満たすターゲットは、スパッタリング用Bi−GeターゲットにおけるBi組成が低い場合(例えば、Bi組成が20〜50at%の場合)でも、88%以上(Bi組成が20at%のときの焼結密度)の焼結密度yを得ることができる。
【0039】
次に、スパッタリング用Bi−Geターゲットを構成するGe組織について説明する。Ge組織の平均粒径は、例えば、20〜70μmの範囲内にするとよい。
Ge組織の平均粒径を20〜70μmの範囲内にすることで、スパッタ処理開始直後において、スパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制できる。
【0040】
焼結体を構成するBi粉末、及びGe粉末は、例えば、少なくともいずれかが粉砕粉であってもよい。
このように、Bi粉末、及びGe粉末の少なくともいずれかが粉砕粉であることにより、混合時の各元素間の比重差による分離を抑制することができる。
【0041】
本実施の形態のスパッタリング用Bi−Geターゲットによれば、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成のずれを抑制でき、かつBi組成が低い場合でも高い焼結密度を得ることができる。
【0042】
<スパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法>
次に、本実施の形態のスパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法について説明する。
始めに、振動ミル内にGeインゴットを導入し、該Geインゴットを砕き(粉砕)、その後、篩による分級を行うことで、Ge粉末を生成する。
このとき、篩としては、目の粗さが90μmのものを用いることができる。また、Ge粉末の平均粒径は、例えば、20〜70μmの範囲内とすることができる。
【0043】
次いで、振動ミルと、不活性ガスが封入されたボールミルと、を順次使用することで、Biインゴットを粉砕し、その後、篩による分級を行うことで、平均粒径が20〜50μmの範囲内とされ、かつ酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成する。
【0044】
Biインゴットは、延性を有するため、振動ミルでは、平均粒径117μm程度のBi粉末しか得ることができない。
しかし、振動ミル後に、ボールミルを用いて粉砕することで、平均粒径が20〜50μmとされたBi粉末を得ることができる。ボールミルを用いた粉砕後において、Bi粉末の分級に使用する篩としては、例えば、目の粗さが90μmのものを用いることができる。
また、ボールミル内に不活性ガスを封入することで、細かく粉砕されたBi粉末が酸化されることを抑制できる。これにより、Bi粉末に含まれる酸素濃度を1000massppm以下にすることができる。
上記不活性ガスとしては、例えば、窒素や希ガス(例えば、アルゴンガス)を用いることができる。
【0045】
ボールミルで使用するボールとしては、例えば、直径が5mmのZrO
2製のボールを用いることができる。
【0046】
次いで、Bi粉末と、Ge粉末と、を混合させることで、20〜60at%のBi粉末、及びGe粉末(残部)を含む混合物を生成する。
このとき、Bi粉末とGe粉末との混合は、ボールミルを用いて行うことができる。この場合、例えば、ボールミル内の雰囲気を上述と同様の不活性ガス雰囲気とし、該不活性ガス雰囲気中でBi粉末とGe粉末とを混合するとよい。
このように、不活性ガス雰囲気中でBi粉末とGe粉末とを混合させることで、混合物中に含まれる酸素濃度が高くなることを抑制できる。具体的には、スパッタリング用Bi−Geターゲットに含まれる酸素濃度を2000massppm以下にすることができる。
【0047】
次いで、上記混合物を焼結する。このとき、例えば、ホットプレス機を用いて、焼結する。焼結条件として、例えば、焼結時の最高温度が250℃、昇温スピードが600℃/時間、焼結時間が2時間、焼結室の雰囲気がアルゴン雰囲気、焼結時に印加する圧力が600kg/cm
3の条件を用いることができる。
【0048】
次いで、焼結時に使用した炉とは別の炉内において、焼結した混合物を冷却させる。このときの冷却温度としては、例えば、室温(例えば、27℃)を用いることができる。この場合の冷却時間は、例えば、3時間とすることができる。
その後、機械加工工程と、ボンディング工程と、を順次行うことで、スパッタリング用Bi−Geターゲットが製造される。
【0049】
本実施の形態のスパッタリング用Bi−Geターゲットの製造方法によれば、振動ミルと、ボールミルと、を順次使用して、Biインゴットを粉砕することで、平均粒径が20〜50μmの範囲内とされ、かつ酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成することが可能となる。
【0050】
このようなBi粉末を用いて製造されたスパッタリング用Bi−Geターゲットでは、スパッタする前の段階において、スパッタ面に十分なGe粉末を露出させることが可能となり、Ge相の相互間距離を小さくすることができる。言い換えれば、スパッタ面に露出されるBiの表面積の割合を少なくすることが可能となる。
これにより、スパッタの初期段階からGe粉末をスパッタすることが可能となるので、空スパッタ時間を短縮した上でスパッタ膜の組成が所望の組成からずれることを抑制できる。
【0051】
また、Bi粉末の濃度を20〜60at%とすることにより、相変化型ディスクの高速化に対する効果を十分に得ることができると共に、良好な焼結性を確保することができる。
さらに、酸素濃度が1000massppm以下とされたBi粉末を生成することで、焼結密度の低下が抑制されると共に、スパッタ膜の特性が劣化することを抑制できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0053】
以下、試験例、実施例、及び比較例について説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。
【0054】
(試験例1)
<比較例1及び実施例1のBi粉末の作製及びその評価>
試験例1では、ボールミルを使用しないで粉砕されたBi粉末(以下、「Bi粉末C1」という)と、ボールミルを使用して粉砕されたBi粉末(以下、「Bi粉末D1」という)と、を作製し、Bi粉末C1及びBi粉末D1の粒径を測定し、それぞれの平均粒径を算出した。
【0055】
ここで、比較例1のBi粉末C1の作製方法について説明する。
始めにBiインゴットを準備する。次いで、振動ミルを用いて、Biインゴットを粉砕した。このとき、1回の処理時間を60秒とした。
次いで、目の粗さが250μmとされた篩を用いて、振動ミルで粉砕したBiインゴットを分級することで、Bi粉末C1を作製した。
【0056】
次に、実施例1のBi粉末D1の作製方法について説明する。
実施例1のBi粉末D1は、先に説明したBi粉末C1の作製方法と同様な処理を行った後、ボールミルを用いて、分級したBi粉末をさらに細かく粉砕し、その後、目の粗さが90μmの篩を用いて、分級することで作製した。
このとき、ボールミルで使用するボールとしては、直径が5mmのZrO
2製のボールを用いた。
【0057】
次いで、日機装株式会社製の粒度分布測定器であるマイクロトラックMT3000を用いて、Bi粉末C1,D1の粒度分布を測定し、平均粒径を算出した。この結果を
図1及び
図2に示す。
図1は、比較例1のBi粉末の粒度分布及び平均粒径の測定結果を示す図(グラフ)である。
図2は、実施例1のBi粉末の粒度分布及び平均粒径の測定結果を示す図(グラフ)である。
【0058】
図1及び
図2を参照するに、比較例1のBi粉末C1の粒度分布の一番高いピークは、粒径が110μm付近にあるのに対して、実施例1のBi粉末D1の粒度分布のピークは、粒径が50μm付近にあることが判った。
また、比較例1のBi粉末C1の平均粒径が117.0μmであるのに対して、実施例1のBi粉末D1の平均粒径は、35.1μmであり、比較例1のBi粉末C1の平均粒径の1/3程度の値であった。
このことから、振動ミル後に、ボールミルによる粉砕処理を行うことで、より細かい粒径とされたBi粉末を生成可能なことが確認できた。
【0059】
<比較例1及び実施例1のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
次いで、先に説明したBi粉末C1またはBi粉末D1と、振動ミルにより粉砕されたGe粉体(後述するGe粉末E)と、を用いて、比較例1のスパッタリング用Bi−Geターゲット(以下、「スパッタリング用Bi−GeターゲットS
1」という)と、実施例1のスパッタリング用Bi−Geターゲット(以下、「スパッタリング用Bi−GeターゲットT
1」という)と、を作製し、各ターゲットの表面を電子顕微鏡で観察した。
【0060】
<比較例1のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製>
ここで、比較例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1の製造方法について説明する。
始めに、Ge粉体(以下、「Ge粉末E」という)を作製した。具体的には、Geインゴットを準備後、振動ミルを用いて、Geインゴットを粉砕した。このとき、1回の処理時間を60秒とした。
次いで、目の粗さが90μmとされた篩を用いて、振動ミルで粉砕したGeインゴットを分級することで、Ge粉末Eを作製した。
次いで、上述と同様の手法により、Ge粉末Eの粒度分布を測定し、平均粒径を算出した。その結果、Ge粉末Eの平均粒径は、45μmであった。
【0061】
次いで、ボールミル内に、スパッタリング用Bi−GeターゲットS
1の組成となるように、Bi粉末C1とGe粉末Eとを導入し、Bi粉末C1とGe粉末Eとを混合させて、混合物を作製した。
ボールミルで使用するボールとしては、直径が5mmのZrO
2製のボールを用い、混合時間は、3時間とした。
【0062】
次いで、ホットプレス機を用いて、上記混合物を焼結させた。
このとき、焼結時の最高温度を250℃、昇温スピードを600℃/時間、焼結時間を2時間、焼結室内の雰囲気をアルゴン雰囲気、焼結時に印加する圧力を600kg/cm
3とした。
【0063】
その後、焼結時に使用した炉とは別の炉内において、焼結した上記混合物を冷却し、機械加工工程と、ボンディング工程と、を順次行うことで、直径が200mm、厚さが4mmの円盤状のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1(Bi35Ge65(at%)の組成とされたターゲット)を作製した。
上記混合物の冷却温度は、室温(27℃)とした。また、冷却時間は、3時間とした。
【0064】
<実施例1のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製>
実施例1では、Bi粉末C1に替えてBi粉末D1を用いると共に、Bi粉末D1とGe粉末Eとを混合させるボールミル内をアルゴンガス雰囲気にしたこと以外は、先に説明した比較例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1の製造方法と同様な手法により、スパッタリング用Bi−GeターゲットT
1(Bi35Ge65(at%)の組成とされたターゲット)を作製した。
【0065】
<電子顕微鏡による比較例1及び実施例1のスパッタリング用Bi−Geターゲットの表面観察及びその結果>
次いで、比較例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1の表面から試料片を切り出し、該試料片の表面を日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡であるJSM−6460LVを用いて観察した。このときの電子顕微鏡写真を
図3に示す。
次いで、実施例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
1の表面から試料片を切り出し、該試料片の表面をJSM−6460LVを用いて観察した。このときの電子顕微鏡写真を
図3に示す。
【0066】
図3は、比較例1及び実施例1のスパッタリング用Bi−Geターゲットの表面の電子顕微鏡写真である。
図3に示す電子顕微鏡写真において、黒色に見える部分がGe組織であり、白色または灰色に見える部分がBi組織に相当する部分である。
【0067】
図3に示すように、Bi粉末C1よりも平均粒径の細かいBi粉末D1を用いた実施例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
1の表面の金属組織の方が、比較例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1の表面の金属組織よりもかなり細かくなっていることが判った。
【0068】
なお、上記比較例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
1と同様な手法により、Bi25Ge75(at%)、Bi30Ge70(at%)、Bi45Ge55(at%)、Bi50Ge50(at%)、Bi55Ge45(at%)の組成とされたスパッタリング用Bi−Geターゲットをそれぞれ作製し、その表面を観察したところ、
図3に示す写真と同様な結果が得られた。
【0069】
また、上記実施例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
1と同様な手法により、上述の5組成とされたスパッタリング用Bi−Geターゲットをそれぞれ作製し、その表面を観察したところ、
図3に示す写真と同様な結果が得られた。
【0070】
(試験例2)
<実施例2のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例2では、ボールミルによる処理時間を長くしたこと以外は、先に説明したBi粉末D1の生成方法と同様な手法により、Bi粉末(以下、「Bi粉末D2」という)を作製した。
その後、上述した手法により、測定した結果を表1に示す。
【0072】
次いで、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D2と、を用いて、先に説明した実施例1のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
1の製造方法と同様な手法により、直径が200mm、厚さが4mmの円盤形状とされた実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2を作製した。
【0073】
次いで、実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2の焼結密度を求めた。焼結密度は、上記(3)式を用いて算出した。この結果を表1に示す。
次いで、ライン分析(2000μm幅)にて測定したGe相の相互間距離の平均値を求めた。この結果を表1に示す。
【0074】
次いで、実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2に含まれる酸素濃度を測定した。このとき、ターゲットの中心部10mm角をサンプリングし、株式会社堀場製作所製のガス分析装置であるEMGA−550を用いて測定した。この結果を表1に示す。
次いで、実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2の表面粗さRaを測定した。具体的には、東京精密工業株式会社製のSURFCOM130Aを用いて、ターゲットの中心を1点測定(スキャン幅4mm)した。この結果を表1に示す。
【0075】
次いで、実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2をスパッタ装置に取り付けて、5インチのガラス基板上に、厚さ500nmのスパッタ膜を成膜した。このとき、空スパッタ時間は、100秒とした。
その後、アジレント・テクノロジー株式会社製の発光分光分析装置であるVISTA−PROを用いて、上記スパッタ膜の組成を調べたところ、スパッタ膜の組成にずれは生じていなかった。この結果を表1に示す。
【0076】
なお、スパッタ膜の組成のずれの有り無し判定は、下記判断基準に基づいて行った。具体的には、組成の中心からのずれ量が5at%以上の場合、スパッタ膜の組成のずれの有りと判定し、組成の中心からのずれ量が5at%未満の場合、スパッタ膜の組成のずれの無いと判定した。この結果を表1に示す。
【0077】
異常放電の評価方法として、通常のマグネトロンスパッタ装置に、スパッタリング用Bi−GeターゲットT
2を取り付け、スパッタチャンバ内を1×10
−4Paの圧力まで排気した後、Arガス圧が0.5Pa、投入電力がDC1000W、ターゲットと基板との間の距離が60mmの条件でスパッタを行うことで、スパッタ時の異常放電の回数を計測した。
異常放電回数の計測には、MKSインスツルメンツ社製DC電源であるRPDG−50aのアークカウント機能を用い、放電開始から30分間の異常放電回数を計測した。
この結果を表1に示す。なお、異常放電回数が10回未満の場合には異常放電が無いと判定し、10回以上の場合には異常放電が有りと判定した。
【0078】
<実施例3のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例3では、ボールミルの処理時間を短くしたこと以外は、先に説明したBi粉末D1の生成方法と同様な手法により、Bi粉末(以下、「Bi粉末D3」という)を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D3と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた実施例3のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
3を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0079】
<実施例4のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
4の作製及びその評価>
実施例4では、ボールミルの処理時間を短くしたこと以外は、先に説明したBi粉末D1の生成方法と同様な手法により、Bi粉末(以下、「Bi粉末D4」という)を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D4と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた実施例4のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
4を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0080】
<実施例5のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例5では、Bi粉末生成工程においてボールミル内にアルゴンガスを封入しなかったこと以外は、実施例4のBi粉末D4と同様な手法により、実施例5のBi粉末D5を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D5と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた実施例5のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
5、及びスパッタ膜を作製し、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0081】
<実施例6のスパッタリング用Bi−Geターゲットトの作製及びその評価>
実施例6では、ボールミルの処理時間を長くしたこと以外は、実施例2のBi粉末D2と同様な手法により、実施例6のBi粉末D6を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D6と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた実施例6のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
6を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0082】
<実施例7のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例7では、Bi粉末生成工程においてボールミル内にアルゴンガスを封入しなかったこと以外は、実施例3のBi粉末D3と同様な手法により、実施例7のBi粉末D7を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D7と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた実施例7のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
7を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0083】
<比較例2のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
比較例2では、ボールミルの処理時間を短くしたこと以外は、実施例2のBi粉末D2と同様な手法により、比較例2のBi粉末C2を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末C2と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた比較例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
2を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0084】
<比較例3のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
比較例3では、ボールミルを用いることなく、振動ミルのみで粉砕させたこと以外は、実施例2のBi粉末D2と同様な手法により、比較例3のBi粉末C3を作製し、上述した手法により測定した結果を表1に示す。
次いで、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末C3と、を用いて、実施例2と同じ組成とされた比較例3のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
3を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表1に示す。
【0085】
(試験例3)
先に説明した試験例2では、スパッタリング用Bi−GeターゲットS
2〜S
7,T
2,T
3を作製し、これらを評価した。試験例3では、これらのターゲットよりもBiの組成の高い、Bi60Ge40(at%)の組成とされたスパッタリング用Bi−Geターゲットを作製し、これらを評価した点が試験例2とは異なる。
【0086】
<実施例8のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例8では、実施例2で作製したBi粉末D2を用いた。Bi粉末D2の平均粒径、ボールミル内へのアルゴンガスの封入の有無、Bi粉末D2に含まれる酸素濃度を表2に示す。
なお、表2には、実施例9〜13で使用するBi粉末、及び比較例4,5で使用するBi粉末の平均粒径、ボールミル内へのアルゴンガスの封入の有無、上記Bi粉末に含まれる酸素濃度も示す。
【0088】
実施例8では、試験例1で説明したGe粉末Eと、Bi粉末D2と、を用いて、先に説明した実施例2のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2の製造方法と同様な手法により、実施例8のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
8を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0089】
<実施例9のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例9では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、実施例3で作製したBi粉末D3と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた実施例9のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
9を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0090】
<実施例10のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例10では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、実施例4で作製したBi粉末D4と、を用いて、実施例5と同じ組成とされた実施例10のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
10を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0091】
<実施例11のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例11では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、実施例5で作製したBi粉末D5と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた実施例11のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
11を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0092】
<実施例12のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例12では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、実施例6で作製したBi粉末D6と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた実施例12のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
12を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0093】
<実施例13のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
実施例13では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、実施例7で作製したBi粉末D7と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた実施例13のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
13を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0094】
<比較例4のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
比較例4では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、比較例2で作製したBi粉末C2と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた比較例4のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
4を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0095】
<比較例5のスパッタリング用Bi−Geターゲットの作製及びその評価>
比較例5では、上述した手法により、試験例1で説明したGe粉末Eと、比較例3で作製したBi粉末C3と、を用いて、実施例8と同じ組成とされた比較例5のスパッタリング用Bi−GeターゲットS
5を作製し、その後、スパッタ膜を成膜した。その後、上述した手法により、これらを評価した。この結果を表2に示す。
【0096】
(表1及び表2に示す試験例2,3の結果について)
表1,2を参照するに、振動ミルの処理後に、ボールミルを用いた粉砕を行うことで、Bi粉末の粒径を10μm程度まで小さく粉砕可能なことが判った。
【0097】
比較例2〜5の結果から、Ge相の相互間距離の平均値が210〜380μmの範囲内であると、スパッタ膜の組成にずれが生じることが確認できた。一方、実施例2〜13の結果から、Ge相の相互間距離の平均値が65〜135μmの範囲内であるとスパッタ膜の組成にずれが生じないことが確認できた。
つまり、ターゲット材に介在するGe相の相互間距離の平均値が135μm以下では、スパッタ膜の組成のずれが無く、Ge相の相互間距離の平均値が210μm以上でスパッタ膜の組成のずれがあることが判った。
【0098】
実施例2〜4,8〜10の結果から、原料となるBi粉末の平均粒径が小さくなると、Bi粉末に含まれる酸素濃度が高くなることが判った。これは、平均粒径が小さくなることで、Bi粉末の表面積が増加して、Bi粉末が酸化されやすくなるためと推測される。
【0099】
実施例4,5の結果から、Bi粉末生成工程において、ボールミル内にアルゴンガスを封入しないと、Bi粉末が酸化されやすいことが判った。実施例4及び比較例2の場合、Bi粉末生成工程において、ボールミル内にアルゴンガスを封入しないと、4倍程度酸化されやすくなることが判った。
特に、実施例7,13に示すように、Bi粉末の平均粒径が小さい場合(この場合、35μm)において、ボールミル内にアルゴンガスを封入しないと、Bi粉末に含まれる酸素濃度が非常に高くなることが判った。
【0100】
実施例2〜4,8〜10で使用したBi粉末に含まれる酸素濃度は、最も高いもので800massppmであり、1000massppm以下に抑えられていることが確認できた。
【0101】
実施例2〜4のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
2〜T
4は、Bi組成の低い(35at%)ターゲットであるが、90%以上(最低で94.5%)の焼結密度を実現できることを確認できた。
【0102】
Bi組成が60at%とされた実施例8〜10のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
8〜T
10では、95%以上(最低で97.8%)の焼結密度を実現できることを確認できた。
スパッタリング用Bi−GeターゲットT
8〜T
10とBiの組成が同じである実施例11〜13及び比較例4,5のスパッタリング用Bi−GeターゲットT
11〜T
13,S
4,S
5の焼結密度は、最高で92.5%であった。
上記結果から、実施例のスパッタリング用Bi−Geターゲットによれば、Bi組成が低い場合でも、高い焼結密度を得ることができるということが確認できた。
【0103】
また、原料となるBi粉末の酸素濃度が高いと、ターゲットに含まれる酸素濃度が高くなり、原料となるBi粉末の酸素濃度が低いと、ターゲットに含まれる酸素濃度が低くなることが確認できた。
さらに、ターゲットの焼結密度が高いと、ターゲットの表面粗さが小さくなり、ターゲットの焼結密度が低いと、ターゲットの表面粗さが大きくなることが確認できた。