(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
[熱源機器の評価装置の概略]
図1は、本発明の一実施形態に係る熱源機器の評価装置1を示す構成図である。
評価装置1は、入力部11と、出力部12と、記憶部13と、制御部14を備える。
制御部14は、情報取得部31と、成績係数計算部32と、補正部33と、評価情報取得部34と、出力制御部35を備える。補正部33は、第1の補正部41と、第2の補正部42を備える。
ここで、評価装置1は、様々な形態の装置であってもよく、例えば、デスクトップのコンピュータ、ノートブックのコンピュータ、タブレット型の端末装置、または、スマートフォンの装置などであってもよい。評価装置1は、ユーザ(人)により持ち運びが可能で使用されてもよく、または、所定の場所に設置されて使用されてもよい。
【0021】
評価装置1において行われる処理の概略を説明する。
入力部11は、外部から情報を入力する。一例として、入力部11は、ユーザ(人)により操作が行われるキーボードまたはマウスなどの操作部を有し、当該操作部に対してユーザにより行われた操作に対応する情報を入力する。他の例として、入力部11は、外部の装置から出力される情報を入力する。
ここで、入力部11により入力される情報は、任意の情報であってもよく、例えば、指示、パラメータの数値、計測結果の値など、の情報であってもよい。
また、外部の装置は、例えば、評価装置1と通信可能に接続される他の装置であってもよく、一例として、情報を記憶する可搬型の記憶媒体であってもよい。
また、外部の装置は、例えば、各種の計測器であってもよく、この場合、入力部11は各種の計測器により計測された結果の情報を入力する。
他の構成例として、入力部11は、各種の計測器を有してもよく、この場合、当該計測器により計測(測定)された値の情報を入力する。
【0022】
出力部12は、外部へ情報を出力する。一例として、出力部12は、画面を備える表示部を有し、当該画面に情報を出力する。他の例として、出力部12は、音声(音)などにより情報を出力してもよい。他の例として、出力部12は、外部の装置に情報を出力する。
ここで、外部の装置は、例えば、評価装置1と通信可能に接続される他の装置であってもよく、一例として、情報を記憶する可搬型の記憶媒体であってもよい。
また、出力部12により出力される情報は、任意の情報であってもよく、例えば、計測結果に関する情報などであってもよい。計測結果に関する情報は、例えば、計測結果そのものの情報であってもよく、または、計測結果に基づいて行われた評価の結果の情報であってもよい。
【0023】
記憶部13は、情報を記憶する。
ここで、記憶部13に記憶される情報は、任意の情報であってもよく、例えば、プログラム、計算結果、パラメータの数値、計測結果、あるいは評価の結果などの情報であってもよい。
【0024】
制御部14は、記憶部13に記憶されたプログラムを実行するプロセッサを備え、評価装置1における各種の処理あるいは制御を行う。なお、情報取得部31、成績係数計算部32、補正部33、評価情報取得部34、出力制御部35は制御部14の機能部の例であり、制御部14は任意の機能を有してもよい。
情報取得部31は、計算に使用する値などの情報を取得する。情報取得部31は、例えば、入力部11により入力された情報を取得してもよく、または、記憶部13に記憶された除法を取得してもよい。
成績係数計算部32は、情報取得部31により取得された情報に基づいて、熱源機器の成績係数を計算する。本実施形態では、成績係数としてCOPが用いられる場合の例を示す。
補正部33は、成績係数計算部32により計算された成績係数を補正する。第1の補正部41は、温度に関する補正を行う。第2の補正部42は、能力(負荷)に関する補正を行う。本実施形態では、第1の補正部41の補正と第2の補正部42の補正とは、任意の順序で行われてもよく、つまり、第1の補正部41の補正の後に第2の補正部42の補正が行われてもよく、または、第2の補正部42の補正の後に第1の補正部41の補正が行われてもよい。
評価情報取得部34は、補正部33の補正結果に基づいて、成績係数に関する評価結果の情報(評価情報)を取得する。評価情報取得部34は、例えば、補正部33の補正結果を用いて、評価結果を得るための演算を行ってもよい。また、評価情報取得部34は、例えば、補正部33の補正結果の情報と共に、補正部33の補正結果以外の情報を用いてもよい。
出力制御部35は、出力部12により情報を出力する処理を制御する。
【0025】
[熱源機器の評価の具体例の説明]
(熱源機器等の説明)
図2は、熱源システム101の概略的な構成例を示す図である。本実施形態では、熱源システム101について計測および評価を行う。
熱源システム101は、吸収式の冷凍機あるいは冷温水機である熱源機器(以下、「AR」という。)111と、空調機(AHU:Air Handling Unit)112と、冷却塔113と、メータ(本実施形態では、ガスのメータ)114と、ポンプ121、122と、温度計131、132、141、142と、ヘッダ151、152と、バルブ161を備える。
【0026】
冷水に関して、AR111からの送水が空調機112に供給され、空調機112からの返送水がAR111に戻される。AR111への冷水の入口には、ポンプ(冷水ポンプ)121と、当該冷水の温度(冷水入口温度(戻り温度))を計測する温度計131が備えられている。AR111からの冷水の出口には、当該冷水の温度(冷水出口温度(送水温度))を計測する温度計132が備えられている。
冷却水に関して、AR111からの返送水が冷却塔113に戻され、冷却塔113からの送水(冷却された冷却水)がAR111に供給される。冷却塔113への冷却水の入口には、当該冷却水の温度(冷却水出口温度)を計測する温度計141が備えられている。冷却塔113からの冷却水の出口には、ポンプ(冷却水ポンプ)122と、当該冷却水の温度(冷却水入口温度)を計測する温度計142が備えられている。
メータ114は、AR111に供給される燃料消費量を計測する。本実施形態では、当該燃料として、ガスが用いられている。ここで、燃料としては、本実施形態では、ガスが用いられるが、他の燃料が用いられてもよく、一例として、灯油が用いられてもよい。
ヘッダ151、152およびバルブ161は、冷水を循環させる。
【0027】
本実施形態では、提供者(例えば、会社など)が熱源システム101を顧客へ提供し、顧客が熱源システム101を保有する。また、検査員(人)が、熱源システム101が存在する場所(現地)において、各種の計測器(ゲージあるいはメータなど)の計測値の情報を取得する。そして、検査員は、評価装置1のユーザとして評価装置1を操作して、計測値の情報を評価装置1に入力する。これにより、評価装置1は、経年劣化などによるCOPの変化等を診断する評価を行う。なお、検査員は、例えば、前記した提供者に属していてもよく、または、前記した提供者に関連した会社等に属していてもよく、または、前記した提供者とは関係のない会社等に属していてもよい。
【0028】
本実施形態では、熱源システム101に関して劣化を診断する評価を行う。
式(1)は、COPの算定式である。式(1)に示されるように、冷水流量と、冷水入口温度と、冷水出口温度と、ガスの消費量(ガス消費量)が定まると、COPが定まる。本実施形態では、これらの値を現地において計測器によって計測(実測)することで、AR111に関するCOPを算定することが可能である。
ここで、冷水の流量(冷水流量)は、ポンプ121の電流値または全揚程に基づいて算出される。
なお、冷却水の流量(冷水流量)は、ポンプ122の電流値または全揚程に基づいて算出される。
【0029】
[数1]
COP={a1×a2×a3×(a4−a5)×a6}/(a7×a8)
a1〜a8は下記のとおりである。
a1:水の比熱[kJ/kg/℃]
a2:水の密度[kg/m
3]
a3:冷水流量[m
3/h]
a4:冷水入口温度(戻り温度)[℃]
a5:冷水出口温度[℃]
a6:1/1000
a7:ガス消費量[Nm
3/h]
a8:ガス発熱量[MJ/Nm
3]
・・(1)
【0030】
ここで、式(1)において、分子の値は、AR111の製造熱量を表す。
また、物性値として、水の比熱は4.186[kJ/kg/℃]であり、水の密度は1000[kg/m
3]である。また、ガスの発熱量(ガス発熱量)は、本実施形態では、45.0[MJ/Nm
3]である。なお、このガス発熱量の値は、一例であり、他の値であってもよい。
【0031】
実測により算定された劣化したCOP(以下、「COP
M」と呼ぶ。)と、劣化する前の定格のCOP(以下、「COP
P」と呼ぶ。)を比較することで、AR111に関する劣化の度合を評価する。なお、定格の値は、例えば、AR111のメーカーから出荷されるときの値であり、例えば、メーカーにより行われた試験の結果に基づく値、または、理論的な値である。
本実施形態では、前提条件として、現地に設置されている各計器類(各計測器)は校正済みであるとする。検査員などは、例えば、定期的なタイミングなどで、各計器類について、基準から大きく離れた数値を示していないかどうかを確認することなどにより、校正を行う。また、前提として、AR111以外の機器(例えば、冷却塔113、ポンプ121、122などの補機類)は劣化していないとする。
【0032】
なお、顧客は、資料として、各機器(例えば、AR111、各ポンプ121、122、冷却塔113など)の仕様書、各ポンプ121、122の成績試験書、熱源の自動制御図、配管系統図、運転データ(日報あるいは月報など)を用意して、検査員に見せてもよい。検査員は、これらの資料の情報を使用してもよい。
【0033】
本実施形態では、総じて2時間または3時間などの所定期間を定めて、当該所定期間のなかで計測を30分などの所定時間ごとに行って、各種の計測器の計測値を評価装置1に記録する。計測値の記録は、例えば、検査員が評価装置1の入力部11の操作部を操作して記憶部13に記憶(記録)させてもよく、または、他の構成例として、評価装置1が自動的に計測値を取得して記憶部13に記憶(記録)してもよく、または、検査員が評価装置1以外の媒体(例えば、紙面、評価装置1以外のコンピュータ、あるいは記憶媒体など)に記憶(記録)させてもよい。
【0034】
図3は、計測項目と確認方法(例)との対応のテーブル1001の一例を示す図である。
テーブル1001では、計測項目として、冷水出入口温度、冷却水出入口温度、燃料消費量、冷水流量、冷水ポンプ電流値、冷水ポンプ吐出圧力・吸込圧力、冷水ポンプ周波数(インバータの場合)、冷却水ポンプ電流値、冷却水流量が格納されている。
冷水出入口温度(冷水入口温度、冷水出口温度)は、配管に設置されている温度計131、132、または、中央監視盤、または、AR機側盤などにより計測する。
冷却水出入口温度(冷却水出口温度、冷却水入口温度)は、配管に設置されている温度計141、142、または、中央監視盤、または、AR機側盤などにより計測する。なお、冷却水出入口温度は、定格のCOPを現地の稼働条件に合わせる補正を行うために使用され得る。
燃料消費量は、メータ114、または、中央監視盤などにより計測する。
【0035】
冷水流量は、流量計、または、中央監視盤などにより計測する。例えば、配管に流量計が設置されている場合には、検査員は、当該流量計により流量を確認してもよい。なお、配管に流量計が設置されていない場合も多く、この場合には、他の手法により流量が計測される。
一例として、冷水ポンプの電流値に基づいて流量を算定することが可能である。
冷水ポンプ(
図2の例では、ポンプ121)の電流値は、設置された電流計、または、クランプの電流計などにより計測する。例えば、動力盤に電流計が設置されている場合には、検査員は、当該電流計により電流値を確認してもよい。なお、動力盤に電流計が設置されていない場合には、他の手法により電流値が計測される。
冷水ポンプの吐出圧力あるいは吸込圧力は、圧力計および連成計などにより計測する。例えば、圧力計と連成計の値から全揚程を算出して流量を算定することが行われてもよい。
冷水ポンプにインバータが設置されている場合には、当該インバータの周波数が確認されてもよい。当該冷水ポンプの周波数は、周波数計などにより計測する。
ここで、評価については、一例として、定格の冷水流量の値に近い値を用いることが好ましい。
【0036】
冷却水ポンプ(
図2の例では、ポンプ122)の電流値は、圧力計および連成計などにより計測する。
冷却水流量は、流量計、または、中央監視盤などにより計測する。例えば、配管に流量計が設置されている場合には、検査員は、当該流量計により流量を確認する。なお、配管に流量計が設置されていない場合も多く、この場合には、他の手法により流量が計測される。
【0037】
図4を参照して、全揚程を説明する。
図4には、ポンプ201と、当該ポンプ201の吐出側に設けられた圧力計211と、当該ポンプ201の吸い込み側に設けられた連成計212が示されている。圧力計211は吐出圧力を計測し、連成計212は吸込圧力を計測する。
ここで、式(2)に示されるように、密閉回路の場合、ポンプ201の全揚程は当該ポンプ201の吐出圧力と吸込圧力との差で算定することができる。
【0038】
[数2]
全揚程[m]= 吐出圧力[m]− 吸込圧力[m] ・・(2)
【0039】
なお、圧力計211および連成計212は一般的に[Mpa]あるいは[kgf/cm
2]といった単位で表示されているため、[m]の単位へ換算することが行われてもよい。具体的には、1[Mpa]≒102[m]≒100[m]であり、1[kgf/cm
2]≒10[m]である。
具体例として、現地の圧力メータにより、吐出圧力が0.21[Mpa]であり、吸込圧力が0.15[Mpa]である場合には、全揚程≒(0.21−0.15)×100=6[m]である。
【0040】
図5(A)および
図5(B)を参照して、ガスのメータについて説明する。なお、ガス以外のメータについても同様である。
評価対象のAR111のガス消費量を計測する際、ガスのメータからAR111への配管における当該配管の分岐の有無を確認する。
図5(A)には、AR301とガスメータ(GM)302とが接続された構成が示されている。なお、AR301およびガスメータ302は、それぞれ、
図2に示されるAR111およびメータ114に対応する。この構成では、ガスメータ302はAR301に関する値のみを計測しているため、当該ガスメータ302の積算値をガス消費量とすることができる。
ここで、AR301のガス消費量をG1[m
3/h]とし、ガスメータ302により計測されるガス消費量をGM1[m
3/h]とすると、GM1=G1である。
【0041】
図5(B)には、AR311と他のガスに関する機器(他ガス機器)312とのそれぞれにガスメータ(GM)313が接続された構成が示されている。なお、AR311およびガスメータ313は、それぞれ、
図2に示されるAR111およびメータ114に対応する。この構成では、ガスメータ313はAR311以外の他ガス機器312に関する値も計測しているため、例えば、検査員は、他ガス機器312がどの程度ガスを使用しているかをヒアリングし、計測により求められたガス消費量からその分を差し引く必要がある。なお、他ガス機器312を停止することが可能である場合には、他ガス機器312を停止して、ガスメータ313によりAR311に関する値のみを計測することが好ましい。
ここで、AR311のガス消費量をG11[m
3/h]とし、他ガス機器312のガス消費量をG12[m
3/h]とし、ガスメータ313により計測されるガス消費量をGM2[m
3/h]とすると、GM2=G11+G12である。
【0042】
(評価の処理の流れの説明)
本実施形態では、検査員により操作される評価装置1が、以下の<1>〜<5>の処理を実行することにより、評価を行う。評価装置1では、処理に必要な情報(例えば、計測値、パラメータの値、あるいは計算式など)の一部または全部を情報取得部31により取得すること、または、処理に必要な情報の一部または全部を記憶部13に記憶しておくこと、などを行う。
なお、他の構成例として、以下の<1>〜<5>の処理のうちの一部または全部が検査員により行われてもよい。
【0043】
<1>評価装置1の成績係数計算部32は、ガス消費量の算定を行う。計測されたガスのメータ114の積算量[m
3]に対して、温度補正および圧力補正を行って、標準状態(0℃、1気圧)におけるガス消費量[Nm
3]へ換算する。
<2>評価装置1の成績係数計算部32は、冷水流量の算定を行う。計測された冷水ポンプ(ポンプ121)の電流値等をもとに、ポンプ性能曲線から実測の冷水流量を算定する。
<3>評価装置1の成績係数計算部32は、計測されたCOP(COP
M)を算定する。上記で算定されたガス消費量および冷水流量と、計測された送水温度、戻り温度から、AR111のCOP
Mを算定する。
<4>評価装置1の成績係数計算部32は、劣化前のCOP(COP
P)を算定する。仕様書による定格のCOP(以下、「COP
D」と呼ぶ。)あるいは計測時の温度条件等から、劣化する前の本来持っている新品時のCOP
Pを算定する。
ここで、評価装置1の補正部33(第1の補正部41、第2の補正部42)は、COP
Dを補正することでCOP
Pを算定する。
<5>評価装置1の評価情報取得部34は、劣化の度合(劣化度)の評価を行う。上記で算定されたCOP
MとCOP
P(または、他の構成例として、COP
Dでもよい。)から、劣化度の評価指標として効率比などを算定する。
また、評価装置1の出力制御部35は、計測結果の情報あるいは評価結果の情報などを出力部12により出力する。
【0044】
ここで、効率比[%]は、式(3)で表される。
【0045】
[数3]
効率比[%]=(COP
M/COP
P)×100 ・・(3)
【0046】
以下で、より詳しく説明する。
<1:ガス消費量の算定>の処理について詳しく説明する。
温度補正および圧力補正に関し、評価に用いるガス消費量は標準状態(0℃、1気圧)での体積[Nm
3]である。このため、現地で確認したガスのメータ114の積算量[m
3]を補正式により補正することで、標準状態でのガス消費量[Nm
3]へ変換する。当該補正式は、式(4)で表される。
【0047】
[数4]
Q
N=(T
N+273.15)/(T+273.15)
×(P+101.3)/(P
N+101.3)×Q
=(273.15)/(T+273.15)
×(P+101.3)/(101.3)×Q
各パラメータは、以下のとおりである。
Q
N:標準状態(0℃、1気圧)に換算した体積[Nm
3]
Q :ガスのメータの積算量[m
3]
T
N:標準状態(0℃)の温度[℃]=0[℃]
T :供給ガスの温度もしくはメータの補正温度[℃]
P
N:標準状態(1気圧)の圧力[kPa]=0[kPa]
P :供給ガスの圧力もしくはメータの補正圧力[kPa]
・・(4)
【0048】
一般に、ガスのメータでは、所定の温度および所定の圧力の条件によって自動的に補正がされてガス消費量が計測されるメータと、このような補正がされずにガス消費量が計測されるメータがある。
一例として、ガスのメータで補正がされて計測される場合には、ガスのメータの仕様書等により、補正温度および補正圧力を確認する必要がある。そして、式(4)において、Tに補正温度を代入し、Pに補正圧力を代入することで、メータの積算量[m
3]から標準状態でのガス消費量[Nm
3]を算定する。
【0049】
図6(A)を参照して、ガス消費量の算定の一例について説明する。
現地のメータ401(
図2に示されるメータ114に対応する。)により1時間の積算量が100[m
3]であると計測された場合を考える。メータ401において、補正温度が15[℃]であり補正圧力が0.98[kPa]である補正がされるとき、式(4)において、T=15[℃]、P=0.98[kPa]、Q=100[m
3]を代入する。これにより、1時間当たりのQ
NであるQ
Vは、Q
V=95.7[Nm
3/h]と計算される。なお、ガスの温度は任意の値であってもよく、ガスの供給圧力は任意の値であってもよい。
【0050】
一方、他の例として、ガスのメータで補正がされずに計測される場合には、式(4)において、Tに現地の外気温度(例えば、計測値)を代入し、Pにメータに接続されているガス配管内のガスの圧力(例えば、計測値)を代入することで、標準状態でのガス消費量[Nm
3]を算定する。
【0051】
図6(B)を参照して、ガス消費量の算定の他の例について説明する。
現地のメータ411(
図2に示されるメータ114に対応する。)により1時間の積算量が100[m
3]であると計測された場合を考える。メータ411において補正はされず、外気温度が35[℃]であり、メータ411に接続されているガス配管内のガスの圧力(供給圧力)が5.0[kPa]であるとき、式(4)において、T=35[℃]、P=5.0[kPa]、Q=100[m
3]を代入する。これにより、1時間当たりのQ
NであるQ
Vは、Q
V=93.0[Nm
3/h]と計算される。
【0052】
<2:冷水流量の算定>の処理について詳しく説明する。
評価装置1は、現地で測定した冷水ポンプ(ポンプ121)の電流値もしくは全揚程から冷水流量を算定する。一般に、冷水流量は、ポンプの電流値あるいは全揚程と近似的に二次関数の関係式(ポンプの性能曲線)で表すことができる。本実施形態では、評価装置1は、当該関係式を用いて、冷水流量を算定する。
【0053】
冷水流量を算定する処理の流れの一例として、まず、検査員は、冷水ポンプ(ポンプ121)の試験成績書(例えば、メーカの一般的な試験成績書)を入手する。次に、検査員は、試験成績書から電流値あるいは全揚程を読み出して、その情報を評価装置1に入力する。そして、評価装置1は、入力された情報に基づいて、冷水流量を計算する。
なお、他の構成例として、検査員が冷水流量を求める場合には、検査員は、試験成績書から電流値あるいは全揚程を書き出し、電流値もしくは全揚程と冷水流量との関係を近似的に表す二次関数を作成する。そして、検査員は、作成した二次関数に実測したポンプ121の電流値あるいは全揚程を代入することで、冷水流量を算定する。
【0054】
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)は、試験成績書に基づいて冷水流量を算定する処理の一例を示す図である。
図7(A)には、試験成績書から抜粋された情報が格納されたテーブル1011の一例を示してある。テーブル1011には、複数の測定点のそれぞれについて、電流値[A]、全揚程[m]、流量[m
3/min]が対応付けられて格納されている。
図7(B)には、横軸(x軸)が電流値[A]を表し縦軸(y軸)が流量[m
3/min]を表すグラフが示されている。当該グラフには、テーブル1011に格納された値がプロットされており、これらの値に近似的に合う二次曲線2001が示されている。二次曲線2001は、例えば、フィッティングの処理により求められる。
図7(C)には、横軸(x軸)が全揚程[m]を表し縦軸(y軸)が流量[m
3/min]を表すグラフが示されている。当該グラフには、テーブル1011に格納された値がプロットされており、これらの値に近似的に合う二次曲線2002が示されている。二次曲線2002は、例えば、フィッティングの処理により求められる。
【0055】
評価装置1が処理を行う場合、評価装置1は、テーブル1011の情報を記憶し、テーブル1011の情報に基づいて各グラフの情報の作成を行う。
【0056】
ここで、冷水ポンプ(ポンプ121)にインバータが設置されている場合には、周波数に関する補正を行うことが可能である。例えば、定格値(例えば、50[Hz])の性能曲線から計測時の周波数ごとに性能曲線を作成して、流量を算定する。
周波数に関する補正の式は、式(5)により表される。
【0057】
[数5]
H
N2=(N2/N1)
2×H
N1
I
N2=(N2/N1)
2×I
N1
Q
N2=(N2/N1)
2×Q
N1
各パラメータは、以下のとおりである。
N1、N2:それぞれ互いに異なる周波数[Hz]
H
N1、H
N2:それぞれ周波数がN1またはN2であるときの全揚程[m]
I
N1、I
N2:それぞれ周波数がN1またはN2であるときのポンプの電流値[A]
Q
N1、Q
N2:それぞれ周波数がN1またはN2であるときの流量[m
3/min]
・・(5)
【0058】
図8(A)、
図8(B)、
図8(C)、
図8(D)は、周波数に関する補正の処理の一例を示す図である。
図8(A)には、試験成績書から抜粋された情報が格納されたテーブル1021の一例を示してある。テーブル1021には、複数の測定点のそれぞれについて、電流値[A]、全揚程[m]、流量[m
3/min]が対応付けられて格納されている。ここで、本例では、周波数が定格値(本例では、50[Hz])であるときの性能値がテーブル1021に格納されている。
図8(B)には、周波数が定格値(本例では、50[Hz])とは異なる値(本例では、40[Hz])であるときの性能値が格納されたテーブル1022の一例を示してある。テーブル1022には、複数の測定点のそれぞれについて、電流値[A]、全揚程[m]、流量[m
3/min]が対応付けられて格納されている。
図8(C)には、横軸(x軸)が電流値[A]を表し縦軸(y軸)が流量[m
3/min]を表すグラフが示されている。当該グラフには、テーブル1022に格納された値がプロットされており、これらの値に近似的に合う二次曲線2011が示されている。二次曲線2011は、例えば、フィッティングの処理により求められる。
図8(D)には、横軸(x軸)が全揚程[m]を表し縦軸(y軸)が流量[m
3/min]を表すグラフが示されている。当該グラフには、テーブル1022に格納された値がプロットされており、これらの値に近似的に合う二次曲線2012が示されている。二次曲線2012は、例えば、フィッティングの処理により求められる。
【0059】
評価装置1が処理を行う場合、評価装置1は、テーブル1021の情報を記憶し、式(5)の計算を行って、テーブル1022の情報を作成して記憶する。また、評価装置1は、テーブル1022の情報に基づいて各グラフの情報の作成を行う。
【0060】
<3:実測したCOP(COP
M)の算定>の処理について詳しく説明する。
評価装置1は、計測の結果から、AR111のCOP
Mを算定する。具体的には、算定されたガス消費量および冷水流量と、計測された冷水に関する温度(送水温度、戻り温度)および冷却水に関する温度(冷却水入口温度、冷却水出口温度)から、AR111のCOP
Mを算定する。
【0061】
本実施形態では、それぞれの事項(例えば、燃料消費量、流量、温度など)の値として、計測期間における時間的な平均値が用いられる。なお、このような平均値が用いられる構成では、例えば、空調の運転状態が時間的に変化するような場合においても、その影響を平均化して抑制することが可能である。また、このような平均値が用いられる構成では、例えば、検査員による計測における目視による誤差が発生し得る場合においても、その影響を平均化して抑制することが可能である。
ここで、時間的な平均が行われる期間(計測期間)としては、任意であってもよく、例えば、5時間などのように時の単位が用いられてもよく、あるいは、日、週、月、または年の単位が用いられてもよい。
なお、他の構成例として、複数の計測結果の平均値ではなく、1点の計測結果が用いられて計算が行われてもよい。
【0062】
<4:劣化前のCOP(COP
P)の算定>の処理について詳しく説明する。
本実施形態に係る劣化診断では、評価装置1は、COPが新品時からどの程度低下しているかを評価する。
本診断では、新品時のCOPは仕様書による定格のCOP(COP
D)であるとする。そして、計測されたCOP(COP
M)がCOP
Dからどの程度変化しているかを評価する。しかしながら、計測値と定格値とでは冷水温度、冷却水温度、あるいは負荷のレベルといった条件が異なるため、例えば、評価装置1は、COP
Dを計測の条件に合った値へ補正してから、COP
Mと比較する。
なお、本実施形態では、COP
DとCOP
MとのうちのCOP
Dを補正するが、他の構成例として、COP
Mを補正する構成が用いられてもよく、または、COP
DとCOP
Mとの両方を補正する構成が用いられてもよい。
【0063】
具体的には、以下の<4−1>〜<4−3>の処理を行う。
<4−1>評価装置1は、評価対象のAR111の仕様書の情報に基づいて、定格のCOP
Dを算定する。
図9は、計測値および定格値を含む情報が格納されたテーブル1031の一例を示す図である。
テーブル1031には、COP(単体)[kW]、冷凍能力[kW]、冷水流量[m
3/h]、冷水出入口温度差[℃]、冷水入口温度[℃]、冷水出口温度[℃]、冷却水出入口温度差[℃]、冷却水入口温度[℃]、冷却水出口温度[℃]、冷却水流量[m
3/h]、必要燃料使用量[Nm
3/h]について、計測(実測)に基づく値と、定格の値が格納されている。
なお、評価装置1が処理を行う場合、評価装置1は、テーブル1031の情報を記憶する。
【0064】
<4−2>評価装置1は、COP
Dを計測時(例えば、計測の当日)の冷水温度および冷却水温度に基づいて補正して、温度補正後のCOPを算定する。ここでは、仮想的に所定の製品を想定し、温度補正の一例を示す。本実施形態では、当該温度補正の処理を第1の補正部41により行う。
診断対象のAR111の温度補正式(冷水温度および冷却水温度と冷凍能力の比の関係式)を用いて、COP
Dを計測時の冷水温度および冷却水温度の条件に合わせるように補正した値(温度補正後のCOP)を算定する。例えば、計測における冷水温度および冷却水温度を、各温度と冷凍能力との補正式に代入し、定格冷凍能力からの能力増減比を算定する。
【0065】
図10(A)、
図10(B)、
図10(C)、
図10(D)は、温度に関する情報と冷凍能力との関係の一例を示す図である。
図10(A)は、冷水出口温度(送水温度)と冷凍能力との関係の一例を示す図である。
図10(A)に示されるグラフの横軸(x軸)は冷水出口温度[℃]を表わしており、縦軸(y軸)は冷凍能力[%]を表わしている。そして、これらの関係を表す線2021が示されている。本例では、冷凍出口温度に応じた冷凍能力は126.3[%]となる。なお、本例では、複数の点がプロットされて、フィッティングの処理により、複数の点に合う線2021が求められている。
【0066】
図10(B)は、冷水出入口温度差(冷水入口温度と冷水出口温度との差)と冷凍能力との関係の一例を示す図である。
図10(B)に示されるグラフの横軸(x軸)は冷水出入口温度差[deg]を表わしており、縦軸(y軸)は冷凍能力[%]を表わしている。そして、これらの関係を表す線2022が示されている。本例では、冷水出入口温度差に応じた冷凍能力は83.8[%]となる。なお、本例では、複数の点がプロットされて、フィッティングの処理により、複数の点に合う線2022が求められている。
【0067】
図10(C)は、冷却水入口温度と冷凍能力との関係の一例を示す図である。
図10(C)に示されるグラフの横軸(x軸)は冷却水入口温度[℃]を表わしており、縦軸(y軸)は冷凍能力[%]を表わしている。そして、これらの関係を表す線2023が示されている。本例では、冷却水入口温度に応じた冷凍能力は110.9[%]となる。なお、本例では、複数の点がプロットされて、フィッティングの処理により、複数の点に合う線2023が求められている。
【0068】
図10(D)は、冷却水出入口温度差(冷却水入口温度と冷却水出口温度との差)と冷凍能力との関係の一例を示す図である。
図10(D)に示されるグラフの横軸(x軸)は冷却水出入口温度差[deg]を表わしており、縦軸(y軸)は冷凍能力[%]を表わしている。そして、これらの関係を表す線2024が示されている。本例では、冷却水出入口温度差に応じた冷凍能力は104.9[%]となる。なお、本例では、複数の点がプロットされて、フィッティングの処理により、複数の点に合う線2024が求められている。
【0069】
図10(A)〜
図10(D)のすべてを加味すると、冷凍能力[%]は123.13(≒1.263×1.109×0.838×1.049×100)[%]となる。したがって、本例では、能力増減比は123.13[%]となり、定格の冷凍能力(985[kW])に対して温度補正後の冷凍能力は1213(≒985×1.2313)[kW]となる。
温度補正後のCOPは、式(6)に示されるように、算定した冷凍能力を燃料消費量で除することで得られる。ここで、式(6)における3.6は単位[kW]と単位[MJ/h]との変換のための値であり、1[kW]=3.6[MJ/h]である。
【0070】
[数6]
温度補正後のCOP
=(1213[kW]×3.6)
/(76.4[Nm
3/h]×45.0[MJ/Nm
3])
≒1.27
・・(6)
【0071】
図11は、計測値(実測値)および定格値を含む情報が格納されたテーブル1041の温度補正後の一例を示す図である。
テーブル1041では、冷水出入口温度差[℃]、冷水入口温度[℃]、冷水出口温度[℃]、冷却水出入口温度差[℃]、冷却水入口温度[℃]、冷却水出口温度[℃]について、温度補正後の値として、計測に基づく値が格納されている。
また、テーブル1041では、冷凍能力[%]およびCOP(単体)について、温度補正後の値として、計測に基づく値を用いて計算(補正)された値が格納されている。
なお、評価装置1が処理を行う場合、評価装置1は、テーブル1041の情報を記憶する。
【0072】
<4−3>評価装置1は、温度補正後のCOPを、計測時(例えば、計測の当日)の負荷(部分負荷)に基づいて補正して、負荷補正後(部分負荷補正後)のCOPを算定する。本実施形態では、当該部分負荷補正の処理を第2の補正部42により行う。
診断対象のAR111の部分負荷補正式(部分負荷率と燃料消費量の比の関係式)を用いて、温度補正後のCOPから、負荷のレベル(部分負荷)を考慮したCOPを算定する。このような部分負荷補正後のCOPは、AR111の新品時におけるCOPを計測時の稼働条件(冷水温度、冷却水温度および負荷率の条件)で補正したCOP
Pとなる。
まず、評価装置1は、計測時の冷凍能力と温度補正後の冷凍能力から負荷率を算定する。本例では、負荷率=34.0(≒413[kW]/1213[kW])[%]となる。
【0073】
次に、評価装置1は、負荷率と燃料消費量の補正式から部分負荷時における燃料消費量を算定する。ここでは、仮想的な所定の製品を想定し、部分負荷補正の一例を示す。
図12は、負荷率と燃料消費量との関係の一例を示す図である。
図12に示されるグラフの横軸(x軸)は負荷率[%]を表わしており、縦軸(y軸)は燃料消費量[%]を表わしている。そして、これらの関係を表す線2031が示されている。本例では、負荷率に応じた燃料消費量は約34.6[%]となる。
ここで、本例では、定格の燃料消費量が76.4[Nm
3/h]である。このため、燃料消費量=26.4(≒76.4×34.6/100)[Nm
3/h]である。
【0074】
図13は、計測値(実測値)および定格値を含む情報が格納されたテーブル1051の温度補正および部分負荷補正の後の一例を示す図である。
テーブル1051では、必要な燃料使用量[Nm
3/h]について、温度補正および部分負荷補正の後の値が格納されている。
また、テーブル1051では、温度補正および部分負荷補正の後のCOP(COP
P)が格納されている。COP
Pは、式(7)で示されるように、冷凍能力を燃料使用量で除した結果の値となる。
なお、評価装置1が処理を行う場合、評価装置1は、テーブル1051の情報を記憶する。
【0075】
[数7]
COP
P
=(413[kW]×3.6)
/(26.4[Nm
3/h]×45.0[MJ/Nm
3])
≒1.25
・・(7)
【0076】
<5:劣化の度合(劣化度)の評価>の処理について詳しく説明する。
評価装置1は、計測結果に関する情報を出力する。測定結果に関する情報が複数ある場合には、それぞれの情報を1つずつ出力してもよく、または、2つ以上の異なる情報をまとめて出力してもよい。出力の態様としては、例えば、画面に表示出力する態様、あるいは、紙面(シート)に印刷出力する態様などが用いられてもよい。
また、評価装置1は、以上の処理で求められたCOP
MとCOP
Pとを比較することで劣化度を評価することも可能である。
本実施形態では、各温度、ポンプの電流値、燃料消費量などを所定時間ごとに計測する。そして、これらの結果を用いて、計測期間における平均値が求められている。なお、ここでは、ポンプの電流値から流量が算出されるとする。また、例えば、ポンプの電流値として、仕様書に基づく定格電流値(流量Qa)と、実際に計測された電流値(流量Qb)との二つを用いることで、計測結果に関する情報に関して幅を持たせて示すことも可能である。
【0077】
図14〜
図23を参照して、計測結果に関する情報の例を示す。
評価装置1は、計測結果に関する情報を記憶し、当該情報を出力することが可能である。例えば、
図14〜
図23のそれぞれに示される情報は、別々に出力されてもよく、または、同時に(例えば、一画面で)出力されてもよい。
なお、
図14〜
図23のそれぞれに示される内容を説明するために各図に付されている符号は、説明の便宜上のものであり、出力される計測結果に関する情報には含まれない。
【0078】
図14は、計測結果に関する情報(テーブル1061)の一例を示す図である。
テーブル1061には、計測時刻に対応させて、温度[℃]、流量[m
3/h]、燃料消費量G[Nm
3/h]の情報が格納されている。温度として、送水平均温度T1、戻り平均温度T2、これらの温度差ΔTが格納されている。流量として、ポンプの定格の流量Qa、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbが格納されている。なお、
図14の例では、送水温度として時間的な平均値(送水平均温度T1)を示してあり、戻り温度として時間的な平均値(戻り平均温度T2)を示してある。また、
図14の例では、ポンプの実測の電流値として時間的な平均値(平均電流値)を示してあり、燃料消費量として時間的な平均値(燃料平均消費量G)を示してある。これらの時間的な平均は、いずれも、同じ時間(計測時刻の時間)で行われる。
図14の例では、計測時刻は14:00〜16:00であり、送水平均温度T1は14.0(設定は8.0)[℃]であり、戻り平均温度T2は16.1[℃]であり、これらの温度差ΔTは2.1[℃]である。また、ポンプの定格の流量Qaは169.2[m
3/h]であり、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbは179.4[m
3/h]である。燃料平均消費量Gは49.8[Nm
3/h]である。
【0079】
図15は、計測結果に関する情報(模式図)の一例を示す図である。
図15の例では、空調機501、吸収式の熱源機器(AR)502、ガスのメータ503、中央監視盤504、ポンプ511〜513、中央監視盤504への分岐器521、温度計531〜532が模式的に示されている。また、定格値および計測値に基づく値が記述されている。
【0080】
図16は、計測結果に関する情報(テーブル1071)の一例を示す図である。
テーブル1071には、ポンプの定格の流量Qaを用いた計算結果と、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbを用いた計算結果を示してある。計算結果として、製造熱量[MJ/h]、部分負荷率[%]、COP、効率比(COP比率)[%]、燃料消費率[%]が格納されている。
なお、
図16の例では、COPについては、計測値に基づく値(流量Qaに対応する0.66および流量Qbに対応する0.70)とともに、設計の値(流量Qaに対応する1.4および流量Qbに対応する1.4)が示されている。設計の値は、定格のCOPを計測時の温度条件および負荷率で補正した値である。計測値に基づくCOPの値はCOP
Mに相当し、設計のCOPの値はCOP
Pに相当する。
ここで、製造熱量は式(8)で表される。また、部分負荷率は式(9)で表される。
【0081】
[数8]
製造熱量[MJ/h]
=水の比熱[kJ/kg/℃]×水の密度[kg/m
3]×冷水流量[m
3/h]
×(戻り温度[℃]−送水温度[℃])/1000
・・(8)
【0082】
[数9]
部分負荷率[%]=b1/b2
b1〜b2は、以下のとおりである。
b1:製造熱量(計測時の冷凍能力)
b2:定格冷凍能力を計測時の温度条件で補正した冷凍能力
・・(9)
【0083】
図17は、計測結果に関する情報(グラフ)の一例を示す図である。
図17に示されるグラフでは、縦軸は部分負荷率[%]を表わしている。そして、ポンプの定格の流量Qaを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率a)を表す線2041と、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率b)を表す線2042が示されている。
【0084】
ここで、COP
Mは式(10)で表される。
また、COP
Pは式(11)で表される。
効率比は式(3)で表される。
【0085】
[数10]
COP
M=(製造熱量)/(計測時の燃焼消費量) ・・(10)
【0086】
[数11]
COP
P=(製造熱量)
/(定格燃料消費量を計測時の温度・負荷条件に補正した燃料消費量)
・・(11)
【0087】
図18は、計測結果に関する情報(グラフ)の一例を示す図である。
図18に示されるグラフでは、横軸は経過年数[年]を表わしており、縦軸は効率比[%]を表わしている。そして、ポンプの定格の流量Qaを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率a)に応じた効率比を表す線2051と、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率b)に応じた効率比を表す線2052が示されている。
ここで、これらの線2051、2052により、機器(本実施形態では、熱源システム101の機器)が設置されたときから現在に至るまでにおけるおよその効率の劣化の推移が示される。
図18の例では、設置から24年後に計測が行われた場合を示してある。これらの線2051、2052は、例えば、幾つかの点をプロットすることで得られる。
【0088】
ここで、燃料消費率(燃料消費量の比率)は式(12)で表される。
【0089】
[数12]
燃料消費率=(計測時の燃料消費量)
/(定格燃料消費量を計測時の温度・負荷条件に補正した燃料消費量)
・・(12)
【0090】
図19は、計測結果に関する情報(グラフ)の一例を示す図である。
図19に示されるグラフでは、横軸は経過年数[年]を表わしており、縦軸は燃料消費率[%]を表わしている。そして、ポンプの定格の流量Qaを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率a)に応じた燃料消費率を表す線2061と、ポンプの実測の平均電流値に基づく流量Qbを用いた計算結果に対応する部分負荷率(負荷率b)に応じた燃料消費率を表す線2062が示されている。
ここで、これらの線2061、2062により、機器が設置されたときから現在に至るまでにおけるおよその燃料消費量の増加率の推移が示される。これらの線2061、2062は、例えば、幾つかの点をプロットすることで得られる。
【0091】
図20は、計測結果に関する情報(補正前後の情報)の一例を示す図である。
図20に示されるグラフには、任意の事項の値を表す線として、補正前の値を表す線2101と、補正後の値を表す線2102が示されている。このように、補正前の情報と補正後の情報を同時に示すことで、補正前後の差異の把握を容易化することができる。また、例えば、補正前の線2101と補正後の線2102とで線の種類(実線、点線など)を異ならせてもよく、この場合、さらに、補正前後の差異の把握を容易化することができる。
ここで、このような出力の仕方を適用する事項としては、任意の事項であってもよく、例えば、メータ等による計測値、能力、またはCOP等の計算値、などに適用されてもよい。また、補正としては、任意の補正に適用されてもよく、例えば、温度に関する補正、圧力に関する補正、部分負荷に関する補正、または任意の2つ以上の補正、などに適用されてもよい。
なお、
図20では、直線的な線2101、2102が示されているが、他の例として、曲線が用いられてもよく、また、線の変化(傾きなど)の向きは任意であってもよい。
【0092】
図21は、計測結果に関する情報(上限および下限の情報)の一例を示す図である。
図21に示されるグラフには、任意の事項の値を表す線として、実際の線2201と、誤差の下限の線2211と、誤差の上限の線2212が示されている。このように、実際の情報と誤差の限度(上限、下限)の情報を同時に示すことで、誤差範囲(下限から上限までの範囲)の把握を容易化することができる。また、一例として、実際の線2201と他の線(誤差の下限の線2211と誤差の上限の線2212)とで線の種類(実線、点線など)を異ならせてもよく、この場合、さらに、誤差範囲の把握を容易化することができる。また、誤差の下限の線2211と誤差の上限の線2212とで線の種類を異ならせてもよい。
ここで、このような出力の仕方を適用する対象の事項としては、任意の事項であってもよく、例えば、メータ等による計測値、能力、またはCOP等の計算値、などに適用されてもよい。
また、
図21の例では、実際の情報と共に、誤差の下限の情報と誤差の上限の情報との両方が示されているが、他の構成例として、誤差の下限の情報と誤差の上限の情報とのいずれか一方(のみ)が示されてもよい。
なお、
図21では、直線的な線2201、2211、2212が示されているが、他の例として、曲線が用いられてもよく、また、線の変化(傾きなど)の向きは任意であってもよい。
【0093】
[評価装置の他の機能の説明]
本実施形態では、所定の時間(例えば、30分)が経過するごとに計測を行い、複数の計測された値を平均化した結果を用いて演算が行われる。
評価装置1の制御部14では、計測が行われるべき所定の時間ごとのタイミングでアラームの情報を出力する機能を有してもよい。当該アラームにより、検査員に対して、所定の時間ごとに、計測を行うタイミングであることを通知して注意喚起することができる。なお、このようなアラームの処理は、例えば、出力制御部35により行われる。
ここで、所定の時間のタイミングとしては、定期的なタイミングが用いられてもよく、または、不定期なタイミングが用いられてもよい。
また、アラームの情報としては、様々な情報が用いられてもよく、例えば、表示の情報が用いられてもよく、または、音声の情報が用いられてもよい。
【0094】
[実施形態のまとめ]
以上のように、本実施形態では、COPに基づく効率比を算出する際に、定格のCOP(COP
D)に関して、温度補正および部分負荷補正を行うことにより、精度の良い値を得ることができる。例えば、部分負荷補正が行われることにより、任意の負荷(例えば、低負荷)においても、性能劣化を評価することが可能である。これにより、熱源機器の成績係数の評価を有効に行うことができる。
また、本実施形態では、評価の仕方が簡易であり、例えば、検査員の専門知識の深さに関わらず、計測および評価を汎用化、容易化することができる。また、本実施形態では、紙面または画面などにより、評価結果を顧客に提示することができ、顧客へのサービスを向上させることができる。
また、本実施形態では、例えば、大掛かりで高価な計測器がなくても、COPに基づく評価を簡易に行うことが可能である。例えば、異常検知のために通常備えられている電流、電圧、または圧力などの計測器(センサ)による計測結果を利用することが可能である。
また、本実施形態では、例えば、複数の異なる箇所(例えば、複数の異なる施設などの場所)における熱源機器に関する計測結果の情報を中央で監視するような構成としなくても、それぞれの箇所の熱源機器に関する計測結果の情報により評価を行うことが可能である。
【0095】
本実施形態では、各々の処理(例えば、計測、計測値の入力(読み取り)、補正の演算、他の演算、情報の出力など)を、装置(例えば、評価装置1)が実行してもよく、または、検査員が実行してもよい。
一例として、すべての処理またはほぼすべての処理を評価装置1により自動的に実行する構成が用いられてもよい。
他の一例として、計測の処理、および計測値を評価装置1に入力する処理を人が実行し、補正の演算、他の演算および情報の出力を当該評価装置1により実行する構成が用いられてもよい。
他の一例として、すべての処理またはほぼすべての処理を人により実行(例えば、手作業)する構成が用いられてもよい。
ここで、各種の情報の記憶は、例えば、評価装置1に備えられた記憶部13(または、他の任意の記憶部)に情報が記憶されてもよく、または、人が紙面などに情報を書き込むことにより当該紙面などに当該情報が記憶されてもよい。
【0096】
一構成例として、評価装置1では、熱源機器の冷熱または温熱の一方または両方に関する成績係数(例えば、COP
D)を補正する補正部33を備え、補正部33は、定格の温度と計測時の温度に基づいて補正を行う第1の補正部41と、定格の能力と計測時の能力に基づいて補正を行う第2の補正部42と、を有する。これにより、補正後の成績係数(例えば、COP
P)が得られる。
ここで、第1の補正と第2の補正の順序は任意であってもよい。
【0097】
一構成例として、評価装置1では、定格の値に基づくCOP(例えば、COP
DまたはCOP
P)と、計測の値に基づくCOP(例えば、COP
M)の比に関する情報(例えば、効率比)を取得する評価情報取得部34を備える。
一構成例として、評価装置1では、情報を出力する出力部12を備える。
一構成例として、評価装置1では、出力部12は、同一の部分負荷について、同一の画面で、燃料消費量に関する情報と、定格の値に基づくCOPと計測の値に基づくCOPとの比に関する情報(例えば、効率比)と、を出力する。
一構成例として、評価装置1では、出力部12は、補正前の情報と補正後の情報を出力する。
一構成例として、評価装置1では、出力部12は、出力される情報について、誤差の上限または誤差の下限のうちの一方または両方の情報を出力する。
一構成例として、評価装置1では、流量の情報は、計測箇所に流量計が設けられている場合に前記流量計により計測された情報であり、または前記計測箇所に前記流量計が設けられていない場合にポンプの電流値または圧力値に基づいて得られた情報である。
一構成例として、評価装置1では、前記ポンプの電流値または圧力値が用いられる場合に、インバータの周波数に関する補正を行う。
一構成例として、評価装置1では、複数の計測結果の情報が用いられる。
【0098】
一構成例として、評価方法では、熱源機器の冷熱または温熱の一方または両方に関する成績係数を補正する場合に、定格の温度と計測時の温度に基づいて補正を行う第1の補正と、前記定格の能力と前記計測時の能力に基づいて補正を行う第2の補正と、を行う。
ここで、評価方法は、例えば、評価装置1により実行されてもよく、または、人(一人または複数人)により実行されてもよく、または、評価装置1と人(一人または複数人)の両方により分担されて実行されてもよい。
【0099】
ここで、本実施形態では、COP
DからCOP
Pへの変換に関する補正(温度補正、部分負荷補正)を行う構成が示されたが、同様な補正の仕方が他の値に適用されてもよく、例えば、年間のAPF(Annual Performance Factor)、中間機のCOP(中間COP)、IPLV(Integrated Part Load Value)などに適用されてもよい。
また、本実施形態では、吸収式の熱源機器が用いられる構成が示されたが、他の熱源機器が用いられてもよく、例えば、ヒートポンプ、ヒートポンプチラー(温熱および冷熱)、ターボ冷凍機などが用いられてもよい。
なお、能力としては、例えば、冷房が用いられる場合には冷凍(冷房)の能力が用いられ、暖房が用いられる場合には加熱(暖房)の能力が用いられ、冷房と暖房の両方が用いられる場合には冷凍(冷房)と加熱(暖房)を合わせた能力が用いられる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0101】
また、以上に示した実施形態に係る装置(例えば、評価装置1の制御部14)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。