(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、一実施形態における車両10の機能構成を概略的に示す。本実施形態において、車両10は自動車である。車両10は、車載システム100を備える。車載システム100は、第1前照灯ユニット130と、第2前照灯ユニット140と、制御装置110と、ユーザIF部180とを有する。
【0019】
第1前照灯ユニット130及び第2前照灯ユニット140は、車両用灯具の一例である。第1前照灯ユニット130及び第2前照灯ユニット140は、車両10の前部に設けられる。第1前照灯ユニット130は、車両10の車幅方向左側に設けられる。第2前照灯ユニット140は、車両10の車幅方向右側に設けられる。第1前照灯ユニット130は、照明光源134と、車載センサ132と、透明カバー136とを有する。第2前照灯ユニット140は、照明光源144と、透明カバー146とを有する。照明光源134及び照明光源144は対応する部材であり、略同一の機能を有する。透明カバー136及び透明カバー146は対応する部材であり、略同一の機能を有する。第1前照灯ユニット130は、車載センサ132を備える点で、第2前照灯ユニット140と相違する。本実施形態では、主として第1前照灯ユニット130の機能を説明する。
【0020】
照明光源134は、車両10外の空間を照明する照明光を出射する。照明光源134は、主として可視光の照明光を出射する。照明光源134は、ハロゲンバルブ、キセノンバルブ、発光ダイオード(LED)等を含んで構築される。
【0021】
車載センサ132は、光により車両10外の空間である外部空間の情報を取得する。例えば、車載センサ132は、検出光として赤外光を外部空間に出射し、外部空間からの赤外光の戻り光を検出することによって、車両10の外部空間の水に関する情報を取得する。具体的には、車載センサ132は、波長が異なる波長域の赤外光を出射して、戻り光による画像を波長域毎に撮像する。車載センサ132が出射する赤外光は、波長域が異なり、水による吸収係数が波長域によって異なる。そのため、車載センサ132が撮像した波長域毎の画像には、外部空間中の水の量に応じた差異が生じる。車載センサ132は、撮像した波長域毎の画像の差分に基づいて、水を検出する。例えば、車載センサ132は、撮像した画像の差分画像に基づいて、路面等に水が存在するか否か、路面等に存在する水水の量、路面が凍結しているか否か、霧が生じているか否か、生じている霧の量等を検出する。なお、水は、車載センサ132による検出対象の物質の一例である。
【0022】
制御装置110は、車載センサ132及び照明光源134を制御する。また、制御装置110は、車載センサ132によって検出された情報を、ユーザIF部180に出力する。ユーザIF部180は、車両10の乗員であるユーザ190と車載システム100とのユーザインタフェースを提供する。例えば、ユーザIF部180は、表示部を有し、車載センサ132で撮像された画像を表示部に表示する。例えば、車載センサ132で路面に氷が検出された場合、ユーザIF部180は、車載センサ132で検出された氷の存在位置を表示する。なお、制御装置110は、例えば、車両10が備えるECU(Electronic Control Unit)内に構築されてよい。制御装置110は、ECU外に独立して構築されてもよい。
【0023】
図2は、第1前照灯ユニット130の機能構成を模式的に示す。照明光源134は、車両10外の空間である外部空間を照明する可視光の照明光を出射する。照明光源134が出射した照明光は、透明カバー136を通じて車両10の外部空間に出射される。
【0024】
車載センサ132は、光出射部250と、検出光カメラ290と、可視光カメラ292と、水検出部200と、画像処理部210とを備える。車載センサ132の各部は、全体として制御装置110によって制御される。車載センサ132は、1つの撮像システムとして提供されてよい。
【0025】
光出射部250は、発光制御部220と、光源230と、第1円偏光フィルタ240とを有する。光源230は、検出光を発する。本実施形態において、検出光は赤外線である。より具体的には、検出光は近赤外光であってよい。検出光が属する波長域は、800nm以上1000nm以下であってよい。光源230は、第1発光素子231及び第2発光素子232を含む。第1発光素子231及び第2発光素子232は、LED等であってよい。
【0026】
第1発光素子231は、第1波長域の赤外光を発する。第2発光素子232は、第1波長域とは異なる第2波長域の赤外光を発する。水分子による第1波長域の光の吸収係数は、水分子による第2波長域の光の吸収係数とは、互いに異なる。このように、光出射部250は、水分子による光吸収率が互いに異なる第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光を、車両10外の空間に出射することができる。一例として、第1波長域は、800nm以上850nm以下であり、第2波長域は、940nm以上950nm以下であってよい。第1波長域は、1400nm以上1500nm以下であってよい。第2波長域は、1100nm以上1200nm以下であってよい。第1発光素子231が発した光及び第2発光素子232が発した光は、それぞれ第1円偏光フィルタ240及び透明カバー136を通じて、車両10の外部空間に出射される。
【0027】
第1円偏光フィルタ240は、光源230からの赤外光を第1円偏光に変換する。第1円偏光は、例えば左回りに回転する左円偏光である。第1円偏光フィルタ240は、偏光子241と、λ/4板242とを含む。偏光子241は、入射した赤外光を直線偏光に変換して、λ/4板242に入射する。λ/4板242は、入射した赤外光が左円偏光に変換されるよう、λ/4板242の光学軸が偏光子241の偏光軸に対して45°の角度をなすように配置される。λ/4板242を出射した赤外の波長域に属する左円偏光は、透明カバー136を通過して、車両10の外部空間へ出射する。なお、λ/4板242は、第1発光素子231が発する第1波長域の赤外光及び第2発光素子232が発する第2波長域の赤外光が実質的に左円偏光に変換されるよう、第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光に対する適切なリタデーションを持つ。λ/4板242のリタデーションは、第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光が実質的に左円偏光に変換されるよう、透明カバー136による第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光のリタデーションを考慮して定められてよい。
【0028】
このように、光出射部250は、第1円偏光フィルタ240によって変換された第1円偏光を外部空間へ出射する。これにより、光出射部250は、第1円偏光成分を持つ第1波長域の赤外光と、第1円偏光成分を持つ第2波長域の赤外光とを、車両10の外部空間に出射する。光出射部250から出射された赤外光は、車両10の外部空間の物体に反射して、一部が戻り光となって車両10へと戻る。検出光カメラ290は、車両10の外部空間からの戻り光を検出する。
【0029】
検出光カメラ290は、撮像制御部260と、撮像装置270と、第2円偏光フィルタ280とを有する。車両10の外部空間からの戻り光は、透明カバー136を通過して、検出光カメラ290に入射する。検出光カメラ290に入射した光は、第2円偏光フィルタ280に入射する。第2円偏光フィルタ280は、車両10の外部空間からの光のうち、第1円偏光の回転方向の逆回りの第2円偏光を透過する。第2円偏光は、例えば右回りに回転する右円偏光である。
【0030】
具体的には、第2円偏光フィルタ280は、偏光子281と、λ/4板282とを含む。λ/4板282は、第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光に対して、λ/4板242と実質的に等しいリタデーションを持つ。λ/4板282は、λ/4板282の遅相軸が、光出射部250のλ/4板242の遅相軸と実質的に一致するように配置される。第2円偏光フィルタ280に入射した光は、λ/4板282を通過して、偏光子281に入射する。偏光子281は、偏光子281の偏光軸が光出射部250の偏光子241の偏光軸に対して90°の角度をなすように設けられる。これにより、第2円偏光フィルタ280は、車両10の外部空間からの光のうち、第1波長域または第2波長域に属する第2円偏光を透過する。第2円偏光フィルタ280から出射した光は、撮像装置270に入射する。
【0031】
撮像装置270は、車両10の外部空間からの光のうち第2円偏光フィルタを透過した光により撮像する。撮像装置270は、レンズ271と、撮像素子272とを有する。レンズ271は、結像レンズであり、入射した光を撮像素子272上に結像する。撮像素子272は、例えばCMOSイメージセンサ等である。なお、撮像素子272には、カラーフィルタが設けられていない。また、撮像装置270は、赤外光をカットする赤外フィルタを有しない。なお、撮像装置270は、第1波長域及び第2波長域以外の赤外光をカットする赤外フィルタを有していてもよい。撮像素子272は、入射した赤外光の光量に基づく画像信号を生成する。撮像装置270は、第1波長域の赤外光の画像及び第2波長域の赤外光の画像を別個に撮像する。なお、検出光として800nmから1000nmの波長域の赤外光を用いる場合、可視光用カメラを利用して撮像装置270を構築できる場合がある。例えば、モノクロ撮影用の可視光用カメラから赤外フィルタを除くことで、800nmから1000nmの波長域の赤外光に対して必要な感度を持つ撮像装置270を構築できる場合がある。
【0032】
なお、本実施形態において、撮像素子272には、第1波長域の光と第2波長域の光を分離するフィルタが設けられていない。撮像装置270が第1波長域の赤外光画像と第2波長域の赤外光画像とを別個に撮像するべく、光出射部250は、第1波長域の赤外光と第2波長域の赤外光とを時分割で出射する。具体的には、発光制御部220は、第1発光素子231及び第2発光素子232を時間的に交互に駆動して、第1発光素子231及び第2発光素子232を時間的に交互に発光させる。そして、撮像装置270は、光出射部250からの第1波長域の赤外光の出射タイミング及び第2波長域の赤外光の出射タイミングに同期して時分割で撮像することにより、第1波長域の赤外光の画像及び第2波長域の赤外光の画像を時分割で撮像する。これにより、撮像装置270は、第1波長域の赤外光の画像と第2波長域の赤外光の画像とを、別個に撮像することができる。撮像装置270の撮像素子272が生成した画像信号は、水検出部200及び画像処理部210に出力される。
【0033】
水検出部200は、撮像装置270により撮像された第1波長域の赤外光の画像と第2波長域の赤外光の画像との間の差異に基づいて、水を検出する。例えば、水検出部200は、撮像装置270により撮像された撮像した第1波長域の赤外光の画像と第2波長域の赤外光の画像との間の差分画像に基づいて、水が存在する領域を検出してよい。例えば、水検出部200は、差分画像の領域毎の輝度値の大きさに基づいて、水が存在する領域を検出してよい。また、水検出部200は、差分画像の輝度値の大きさに基づいて、水の量を検出してよい。また、水検出部200は、差分画像の輝度値の大きさに基づいて、霧が発生しているか否かを検出してよい。また、水検出部200は、差分画像の輝度値の大きさに基づいて、霧の濃度を検出してよい。霧の濃度は、霧を構成する微細な水滴の量を指標として算出されてよい。水検出部200は、差分画像の領域毎の輝度値の大きさに基づいて、領域毎の霧の濃度を検出してよい。霧の濃度とは、霧を構成する微細な水滴の量であってよい。このように、水検出部200は、第1波長域の赤外光の画像と第2波長域の赤外光の画像との間の領域毎の輝度値の差に基づいて、撮像装置270により撮像される車両10の外部空間内の領域毎の水量を検出してよい。また、水検出部200は、第1波長域の赤外光の画像と第2波長域の赤外光の画像との間の領域毎の輝度値の差に基づいて、撮像装置270により撮像される車両10外の空間内の領域毎の水滴量を検出してよい。なお、水検出部200によって検出される水量や霧の濃度等の値は、水量や濃度の絶対的な値でなく、水量や濃度の相対値を示す指標値であってよい。水検出部200による水の検出結果は、画像処理部210に出力される。
【0034】
可視光カメラ292は、可視光により画像を撮像して、可視光画像の画像信号を生成する。可視光カメラ292は、可視光カメラ292の撮像光軸が検出光カメラ290の撮像光軸と実質的に一致するように設けられる。また、可視光カメラ292は、可視光カメラ292の撮像範囲が検出光カメラ290の撮像範囲と実質的に一致するように設けられる。可視光カメラ292には、赤外フィルタが設けられていてよい。可視光カメラ292は、第1波長域及び第2波長域を含む広範な赤外波長域の光をカットする赤外フィルタが設けられている点を除いて、撮像装置270と略同一の構成を有してよい。可視光カメラ292が生成した可視光画像の画像信号は、画像処理部210に出力される。
【0035】
画像処理部210は、可視光カメラ292及び撮像装置270からの画像信号に基づいて、画像処理を施す。画像処理部210は、水検出部200による水の検出結果に応じて、画像処理を施してよい。例えば、画像処理部210は、可視光画像に対して、水検出部200によって水が検出された領域に対応する領域を強調する画像処理を施してよい。また、画像処理部210は、水検出部200によって検出された領域毎の水滴量に基づいて、車両外の空間を撮像して得られた画像に対して領域毎にヘイズ除去処理を施す。例えば、画像処理部210は、水検出部200によって検出された領域毎の水滴量に基づいて、可視光カメラ292により得られた可視光画像に対して、領域毎にヘイズ除去処理を施してよい。なお、画像処理部210は、撮像装置270により得られた赤外光画像に対して、領域毎にヘイズ除去処理を施してもよい。
【0036】
なお、検出光カメラ290から出射される検出光の光軸、検出光カメラ290の撮像光軸の撮像光軸は、照明光源134からの照明光の光軸と概ね一致している。そのため、車両10の対向車が、車両10の光出射部250と同様に検出光を出射している場合、当該対向車からの検出光が検出光カメラ290に直に入射する場合がある。しかし、検出光カメラ290に第2円偏光フィルタ280が設けられているので、対向車からの検出光が光出射部250からの検出光と同様に左回円偏光であれば、対向車からの検出光は第2円偏光フィルタ280によって実質的にカットされる。そのため、対向車の検出光による影響を抑制できる。
【0037】
図3は、水分子による吸収スペクトルを説明するための模式図である。
図3の水分子の吸収スペクトルにおいて、λaにおける吸収係数は、λbにおける吸収係数より大きい。すなわち、水は、λbの光よりλaの光をより強く吸収する。ここで、λaの光及びλbの光について水の背後の物体の吸収係数の差異が水の吸収係数の差異より小さいと仮定すれば、λaの赤外光によって得られた赤外光画像は、水が存在する領域に対応する画像領域において、λbの赤外光により得られた赤外光画像より暗くなる。そこで、水検出部200は、λbの赤外光画像からλbの赤外光画像を差し引いて得られた差分画像において、輝度値を表す画素値が予め定められた値より大きい領域に、水が存在すると判断する。また、水検出部200は、画素値がより大きい領域に、水がより多く存在すると判断する。このように水の検出に吸収率が異なる複数の波長域を使用することで、より適切に水を検出することができる。
【0038】
図4は、車載センサ132の動作シーケンスを模式的に示す。
図4は、車載センサ132において水の存在を検出する場合の動作シーケンスの一例である。ここでは、第1発光素子231はλaを含む波長域の赤外光を発し、第2発光素子232は、λbを含む波長域の赤外光を発する。発光制御部220は、第2発光素子232及び第1発光素子231を交互に駆動することで、光出射部250からは、λbの赤外光及びλaの赤外光が交互に出射される。
【0039】
撮像装置270は、光出射部250からλbの赤外光が出射されている時間内で撮像動作をすることで、λbの赤外光による画像を撮像する。
図4において、赤外光画像401は、λbの赤外光により撮像された画像を示す。また、撮像装置270は、光出射部250からλaの赤外光が出射されている時間内で撮像動作をすることで、λaの赤外光による画像を撮像する。
図4において、赤外光画像402は、λaの赤外光により撮像された画像を示す。この動作を繰り返すことで、検出光カメラ290は、λbの赤外光画像及びλaの赤外光画像を時分割で撮像することができる。なお、発光制御部220は、撮像制御部260が撮像素子272を駆動する駆動信号を撮像制御部260から取得して、駆動信号に同期したタイミングで、第1発光素子231及び第2発光素子232の駆動を切り換えることで、λbの赤外光画像及びλaの赤外光画像を時分割で別個に撮像することができる。
【0040】
赤外光画像401内の領域411及び赤外光画像402内の領域412は、路面上に存在する水たまりの領域に対応する。赤外光画像402は、波長λaの赤外光による画像であるので、水たまりの領域における輝度値は、赤外光画像401の輝度値より小さい。
【0041】
水検出部200は、赤外光画像401から、赤外光画像401の次の撮像動作で得られた赤外光画像402を差し引くことで、差分画像431を生成する。また、水検出部200は、赤外光画像402の次の撮像動作で得られた赤外光画像403から赤外光画像402を差し引くことで、差分画像432を生成する。水検出部200は、時間的に連続して撮像された赤外光画像について同様の処理を繰り返し適用することで、差分画像を順次に生成する。
【0042】
水検出部200は、差分画像431において、水の存在を検出するための予め定められた基準値より画素値が大きい領域を、水が存在する領域であると判断する。画像処理部210は、可視光カメラ292の撮像動作により得られた画像481に、水の存在を示すマーク491を重畳した表示用画像を生成する。同様に、次の時間ステップにおいて、水検出部200は、差分画像432において画素値が予め定められた値より大きい領域を判断し、画像処理部210は、可視光カメラ292の撮像動作により得られた画像482に、水の存在を示すマーク492を重畳した表示用画像を生成する。これらの表示用画像は制御装置110に出力され、ユーザIF部180を通じてユーザ190に提示される。これにより、水が存在する領域をユーザ190に通知することができる。
【0043】
図5は、車載センサ132において霧の存在を検出する場合の動作シーケンスを模式的に示す。ここでは、検出光カメラ290の撮像範囲全体において霧が存在しているとする。なお、第1発光素子231、第2発光素子232及び撮像装置270の動作シーケンスは、
図4で説明した動作シーケンスと同様であるので、説明を省略する。
【0044】
赤外光画像501は、λbの赤外光により撮像された画像を示す。また、赤外光画像502は、λaの赤外光により撮像された画像である。赤外光画像502は、赤外光画像501の次の撮像動作で得られた画像である。検出光カメラ290の撮像範囲全体に霧が発生しているため、赤外光画像502は、全体的に赤外光画像501より輝度値が小さい画像となる。赤外光画像501内の領域511及び赤外光画像502内の領域512は、濃い霧が発生している領域に対応する。そのため、領域511の輝度値と領域512の輝度値との差は、他の領域における輝度値の差より大きくなる。
【0045】
水検出部200は、赤外光画像501から、赤外光画像502を差し引くことで、差分画像531を生成する。また、水検出部200は、赤外光画像402の次の撮像動作で得られた赤外光画像503から赤外光画像502を差し引くことで、差分画像532を生成する。水検出部200は、時間的に連続して撮像された赤外光画像について同様の処理を繰り返し適用することで、差分画像を順次に生成する。
【0046】
水検出部200は、差分画像531において、霧の存在を検出するための予め定められた基準値より画素値が大きい領域を抽出して、抽出した領域を霧が存在する領域と判断する。なお、水検出部200は、差分画像531における画素値が基準値より大きい領域の面積が予め定められた大きさより大きい場合に、霧が発生していると判断してよい。例えば、差分画像531において、水検出部200は、差分画像531の全体面積に対する、基準値より大きい画素値を持つ領域の面積の比が予め定められた値より大きい場合に、霧が発生していると判断してよい。また、水検出部200は、赤外光画像501及び赤外光画像502の少なくとも一方から抽出したぼけ量が予め定められた値より大きい場合に、霧が発生していると判断してもよい。
【0047】
画像処理部210は、水検出部200において霧が発生していると判断された場合に、差分画像531の画素値の大きさに応じた強度のヘイズ除去フィルタ551を生成する。
図5のヘイズ除去フィルタ551において、ヘイズ除去処理の強度が、斜線の密度で模式的に表現されている。画像処理部210は、可視光カメラ292の撮像動作により得られた画像571に、ヘイズ除去フィルタ551を適用して、表示用画像591を生成する。これにより、霧の濃さに応じてヘイズが抑制された表示用画像591を得ることができる。同様に、次の時間ステップにおいて、画像処理部210は、差分画像532からヘイズ除去フィルタ552を生成し、可視光画像572にヘイズ除去フィルタ552を適用して、表示用画像592を生成する。これらの表示用画像は制御装置110に出力され、ユーザIF部180を通じてユーザ190に提示される。車載センサ132によれば、霧の濃さを適切に検出して、濃い霧が発生した領域に対応する領域に、他の領域より強いヘイズ除去処理を適用することができる。そのため、一様にクリアな表示用画像をユーザ190に提供することができる。
【0048】
図6は、凍結した水の吸収スペクトルと液体の水の吸収スペクトルとの差異を説明するための模式図である。吸収スペクトル600は、液体の水の吸収スペクトルを示し、吸収スペクトル610は、凍結した水の吸収スペクトルを示す。一般的に、水が凍結することで、吸収スペクトルは、液体の水の吸収スペクトル600より長波長側にシフトしたものとなる。
【0049】
吸収スペクトル600に示されるように、液体の水については、λaにおける吸収係数がλbにおける吸収係数より大きい。一方、吸収スペクトル610に示されるように、凍結した水については、λaにおける吸収係数がλbにおける吸収係数より小さい。従って、λaの光及びλbの光について凍結した水の背後の物体の吸収係数の差異が、凍結した水による吸収係数の差異より小さいと仮定すれば、λaの赤外光によって得られた赤外光画像は、凍結した水が存在する領域に対応する画像領域において、λbの赤外光により得られた赤外光画像より明るくなる。したがって、水検出部200は、λbの赤外光画像からλbの赤外光画像を差し引いて得られた差分画像において、画素値が負であり、かつ、画素値が予め定められた値より小さい領域に、凍結した水、すなわち氷が存在すると判断する。また、水検出部200は、氷が存在すると判断した領域のうち、画素値がより小さい領域に、氷がより多く存在すると判断する。
【0050】
図7は、車載センサ132において路面の凍結を検出する場合の動作シーケンスを模式的に示す。なお、第1発光素子231、第2発光素子232及び撮像装置270の動作シーケンスは、
図4で説明した動作シーケンスと同様であるので、説明を省略する。
【0051】
赤外光画像701は、λbの赤外光により撮像された画像を示す。また、赤外光画像702は、λaの赤外光により撮像された画像である。赤外光画像702は、赤外光画像701の次の撮像動作で得られた画像である。ここでは、路面の一部の領域が凍結しており、それ以外の領域は湿潤した状態にあるとする。赤外光画像701内の領域711及び赤外光画像702内の領域712は、湿潤状態の路面部分に対応する。赤外光画像701内の領域721及び赤外光画像702内の領域722は、凍結状態の路面部分に対応する。上述したように、水が液体である場合は、λaにおける吸収係数はλbにおける吸収係数より大きいので、湿潤状態に対応する領域712の輝度値は、対応する領域711の輝度値より小さくなる。一方、水が凍結している場合、λaにおける吸収係数はλbにおける吸収係数より小さくなるので、凍結状態に対応する領域722の輝度値は、対応する領域721の輝度値より大きくなる。
【0052】
水検出部200は、赤外光画像701から、赤外光画像702を差し引くことで、差分画像731を生成する。また、水検出部200は、赤外光画像702の次の撮像動作で得られた赤外光画像703から赤外光画像702を差し引くことで、差分画像732を生成する。水検出部200は、連続して撮像された赤外光画像について同様の処理を繰り返し適用することで、差分画像を順次に生成する。
【0053】
水検出部200は、差分画像731において、水の存在を検出するための予め定められた基準値より画素値が大きい領域を、水が存在する領域と判断する。また、差分画像731において、画素値が負であり、氷の存在を検出するための予め定められた基準値より画素値が小さい領域を、氷が存在する領域と判断する。例えば、水検出部200は、差分画像731における領域741を、氷が存在する領域と判断する。このように、水検出部200は、光量の差異と、液相の水による第1波長域の赤外光の吸収率と第2波長域の赤外光の吸収率との差異と、固相の水による第1波長域の赤外光の吸収率と第2波長域の赤外光の吸収率との差異とに基づいて、水の状態が液相及び固相のいずれであるかを検出することができる。例えば、水検出部200は、路面に対応する領域において検出された第1波長域の赤外光の光量と第2波長域の赤外光の光量との差異と、液相の水による第1波長域の赤外光の吸収率と第2波長域の赤外光の吸収率との差異と、固相の水による第1波長域の赤外光の吸収率と第2波長域の赤外光の吸収率との差異とに基づいて、路面上の水の状態が液相及び固相のいずれであるかを検出することができる。
【0054】
画像処理部210は、可視光カメラ292の撮像動作により得られた画像781に、氷の存在を示すマーク791を重畳した表示用画像を生成する。同様に、次の時間ステップにおいて、水検出部200は、差分画像732において氷が存在する領域742を検出して、画像処理部210は、可視光カメラ292の撮像動作により得られた画像782に、水の存在を示すマーク792を重畳した表示用画像を生成する。これらの表示用画像は制御装置110に出力され、ユーザIF部180を通じてユーザ190に提示される。これにより、凍結した領域をユーザ190に通知することができる。
【0055】
なお、以上に説明した車載システム100において、車載センサ132が可視光カメラ292を有しない構成を採用してよい。この構成においては、撮像装置270によって可視光画像を撮像してよい。例えば、
図4の動作シーケンスにおいて、赤外光画像402の撮像タイミングと赤外光画像403の撮像タイミングの間に、光出射部250から赤外光を出射しない期間を設けて、当該期間内に撮像装置270を駆動して撮像することによって、可視光画像を撮像してもよい。
【0056】
以上に説明したように、車載システム100によれば、車両10に搭載された車載センサ132が、水による吸収係数が異なる2つの波長域の検出光を用いることで、車両10の外部空間の水に関する情報を適切に検出することができる。そして、検出された水の情報に基づいて、車両10の乗員であるユーザ190に適切な情報を提供することができる。例えば、水たまりの存在をユーザ190に通知することができる。また、霧の影響を低減した画像をユーザ190に提供することができる。また、凍結した水の存在をユーザ190に通知することができる。
【0057】
図8は、撮像装置270の変形例としての撮像装置870のブロック構成を模式的に示す。撮像装置870は、レンズ871と、光分離部873と、撮像素子872aと、撮像素子872bとを有する。
【0058】
レンズ871は、結像レンズである。レンズ871を通過した光は、光分離部873に入射する。光分離部873は、撮像装置270に入射した光を、第1波長域の赤外光と第2波長域の赤外光とに分離する。光分離部873は、例えばダイクロイックミラーである。具体的には、光分離部873は、第1波長域の赤外光を透過して、第2波長域の赤外光を反射する。
【0059】
撮像素子872aは、光分離部873が透過した第1波長域の赤外光の光路上に設けられる。撮像素子872aは、光分離部873によって分離された第1波長域の赤外光により撮像する。撮像素子872bは、光分離部873が反射した第2波長域の赤外光の光路上に設けられる。撮像素子872bは、光分離部873によって分離された第2波長域の赤外光により撮像する。なお、撮像素子872aには、第1波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタを設けてもよい。また、撮像素子872bには、第2波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタを設けてもよい。撮像装置870によれば、入射光から第1波長域の赤外光と第2波長域の赤外光とを分離して、第1波長域の赤外光の画像及び第2波長域の赤外光の画像を同じタイミングで別個に撮像することができる。
【0060】
図9は、撮像装置870を用いる場合の車載センサ132の動作シーケンスを模式的に示す。
図9は、
図4に対応する動作シーケンスである。発光制御部220は、第1発光素子231及び第2発光素子232を共に駆動して、第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光を光出射部250から継続的に出射させる。撮像装置870は、各撮像タイミングにおいて、λaの赤外光による赤外光画像及びλbの赤外光による赤外光画像を撮像する。例えば、赤外光画像901を撮像する撮像素子872の露光期間は、赤外光画像911を撮像する撮像素子872の露光期間と同じである。また、赤外光画像902及び赤外光画像912は、赤外光画像901及び赤外光画像911の次の撮像タイミングの画像であり、赤外光画像902を撮像する撮像素子872の露光期間が、赤外光画像912を撮像する撮像素子872の露光期間と同じである。
【0061】
水検出部200は、赤外光画像901から赤外光画像902を差し引くことによって、
図4の差分画像431に対応する差分画像を生成する。画像処理部210における差分画像に基づく処理については、
図4等に関連して説明した処理と同様の処理を適用できるので、ここでは説明を省略する。撮像装置870によれば、波長域が異なる赤外光の画像を同じタイミングで撮像できるので、水を検出するのに必要な赤外光画像を取得するための時間を短くすることができる。
【0062】
なお、撮像装置870の光分離部873として、ダイクロイックミラーではなく、ビームスプリッタと赤外フィルタとの組み合わせを適用してもよい。例えば、光分離部873の一部としてハーフミラーを用い、ハーフミラーの透過光の出射面と撮像素子872aとの間に、第1波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタを設け、ハーフミラーの反射光の出射面と撮像素子872bとの間に、第2波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタを設けてもよい。
【0063】
他にも、波長分離方式の他の例として、透過波長域が互いに異なる複数種類の赤外フィルタ部が2次元的に配置された赤外光フィルタを用いてもよい。例えば、第1波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタ素子と、第2波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタ素子とが2次元にマトリクス状に並べて形成された赤外フィルタを、各赤外フィルタ素子にそれぞれ対応する光電変換素子を持つ撮像素子の前面に設けた構成を適用してよい。この場合、第1波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタ素子と、当該赤外フィルタ素子に対応する光電変換素子との複数の対によって、第1波長域の赤外光により撮像する撮像部が形成される。同様に、第2波長域の赤外光を選択的に透過する赤外フィルタ素子と、当該赤外フィルタ素子を透過した赤外光を受光する光電変換素子の複数の対によって、第2波長域の赤外光により撮像する撮像部が形成される。これにより、単一の撮像素子を用いて、第1波長域の赤外光の画像及び第2波長域の赤外光の画像を別個に撮像することができる。
【0064】
以上に説明した撮像装置270又は撮像装置870及び変形例によれば、赤外光画像を同一の撮像光軸で撮像することができる。赤外光画像を撮像する撮像装置の他の例として、第1波長域の赤外光により撮像する撮像装置と、第2波長域の赤外光により撮像する撮像装置とを別個に設けてもよい。
【0065】
また、上述の実施形態では、車載センサ132として、撮像装置を有する構成を例示した。しかし、撮像装置は光を検出する光検出部の一例であり、画像を撮像しない構成の車載センサを採用できる。例えば、水を検出するための光検出部として1つの受光素子を適用して、当該受光素子によって、第1波長域の赤外光及び第2波長域の赤外光を時分割で検出し、検出された第1波長域の赤外光の光量と第2波長域の赤外光の光量との差異に基づいて、水を検出する構成を採用できる。更なる他の形態として、検出光の波長域毎に受光素子を設けた構成を採用できる。例えば、第1波長域の赤外光を受光する受光素子と、第2波長域の赤外光を受光する受光素子とを設けた形態を採用できる。これらの形態においても、検出光として円偏光を用いた構成を採用できる。
【0066】
上述の実施形態では、水を検出することを目的として、検出光として赤外光を用いる形態を例示した。しかし、検出対象は水に限られず、本実施形態で説明した構成と同様の構成を、水以外の様々な検出対象に適用できる。また、検出光の波長域は、検出対象に応じて適宜に選択できる。検出光の波長域として、赤外波長域以外に、可視波長域や紫外波長域等の様々な波長域を選択できる。すなわち、検出対象の物質による光吸収率が互いに異なる少なくとも2種類の波長域の光を、検出光として用いてよい。この場合にも、上述の実施形態と同様に、照射する検出光として第1円偏光を適用できる。この場合、検出光カメラ290において、第2円偏光フィルタ280を透過した光の画像を波長域毎に撮像し、撮像された波長域毎の画像の差異に基づいて、検出対象の物質を検出してよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、外来光による外乱を抑制することを目的として、特定方向に回転する赤外波長域の円偏光を用いる構成を例示した。しかし、検出光として円偏光を用いなくてよい。例えば、検出光として実質的に非偏光の光を採用してよい。なお、検出光として円偏光を用いる構成は、特定の検出対象を検出する車載センサ132に適用できるだけでなく、車両10の外部空間の画像を撮像するカラーカメラ又はモノクロカメラにも適用できる。
【0068】
なお、上述した車載システム100の少なくとも一部の機能は、MPU等のプロセッサによって実現されてよい。例えば、車載センサ132は、CPU、メモリ及び記憶装置を備え、車載センサ132の各機能は、記憶装置に格納されたプログラムをメモリにロードしてCPUが実行することにより、発光制御部220、撮像制御部260、水検出部200及び画像処理部210の機能が実現されてよい。当該プログラムは、CD−ROM等の機械読出可能媒体を通じて車載システム100に提供されてよいし、ネットワークを通じて車載システム100に提供されてよい。また、水検出部200及び画像処理部210の機能は、車載センサ132内ではなく、車載センサ132の外部装置に実装されてよい。例えば、水検出部200及び画像処理部210は、制御装置110に実装されてよい。
【0069】
また、上述の実施形態では、車両10の一例として自動車を例示した。しかし、車両とは、自動車に限られず、列車等、様々な乗物を含む概念である。また、車載システム100に関連して説明した構成の少なくとも一部を、車両以外の様々な物体、例えば街灯、電柱、信号機等や、建物、橋梁等の構造物にも適用できる。例えば、上述した車載システム100に係る車載センサ132の各形態と同様の構成を、道路や線路等の路面に出射した検出光の戻り光を検出することにより路面上の水の状態を検出する路面状態センサとして適用して、例えば道路や線路等の通路の近傍又は通路上に存在する街灯や信号機等の物体に設けてよい。なお、道路とは、街路を含む概念である。例えば、路面とは、車両が通行する路面に限られず、車両が通行しない道路又は街路や歩道等の路面を含む概念である。つまり、車載センサ132の各形態と同様の構成のセンサを、車両用センサとして適用できるだけでなく、非車両用の路面状態センサとして適用できる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。