(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1の車両駆動装置は、リングギヤを駆動する2つのピニオンギヤを駆動するのに、ピニオンギヤの数と同数の電動機が必要となり製造コストが増大する。加えて、電動機が複数必要になると、電動機を制御するためのインバータも電動機と同数必要であるので、インバータも複数必要になる。したがって、この点からも製造コストが増大する。また、電動機及びインバータが複数必要となるので、駆動構造が複雑になる。
【0005】
本発明の目的は、構造を簡素化でき、製造コストも低減できる車両駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両駆動装置は、1つのみの電動機と、車輪と同期回転するリングギヤと、前記電動機の出力軸が回転する際に回転し、前記リングギヤの周方向に互いに間隔をおいた状態で前記リングギヤに噛合する複数のピニオンギヤと、を備え、前記電動機の駆動によって前記複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与され
、前記電動機の前記出力軸の一端側に設けられたドライブギヤと、前記ドライブギヤに噛合するカウンターギヤが設けられた回転軸と、を備え、前記複数のピニオンギヤには、前記回転軸に設けられた第1ピニオンギヤと、前記電動機の前記出力軸の他端側に設けられた第2ピニオンギヤと、が含まれ、前記電動機は、ケースを含む本体部と、前記出力軸とを有し、前記出力軸は前記ケースを突き抜けるように直線上に延在し、前記出力軸の前記一端側及び前記他端側は、ともに前記ケースの外側に位置している。
【0007】
本発明によれば、1つのみの電動機により複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与される。したがって、1つのみの電動機及び1つのみのインバータでリングギヤを回動できる。よって、車両駆動装置の構造を簡素化でき、製造コストを低減できる。
【0009】
更には、出力軸の一端側に設けられたドライブギヤに噛合するカウンターギヤが設けられた回転軸に第1ピニオンギヤが設けられる。したがって、出力軸の他端側にある第2ピニオンギヤと第1ピニオンギヤとが同一の直線上に配置されることがないから、出力軸がリングギヤの中心軸と交差しないようにすることによって第2ピニオンギヤと第1ピニオンギヤとを、リングギヤの中心軸及び鉛直方向を含む平面に対してオフセット配置できる。よって、第1及び第2ピニオンギヤの夫々の重心を結ぶ線分が、リングギヤの中心軸に交差するように第1及び第2ピニオンギヤを配置できるので、第1及び第2ピニオンギヤの配置スペースを大きくできて、第1及び第2ピニオンギヤの径を大きく保ったまま、第1及び第2ピニオンギヤに均等に駆動力を付与できる。したがって、十分な機械強度を確保できて高い減速比を得ることが可能になり、車両駆動装置の大きさを小さくしつつ高い駆動力を高効率に出力することが可能になる。
【0010】
また、本発明の車両駆動装置
は、1つのみの電動機と、車輪と同期回転するリングギヤと、前記電動機の出力軸が回転する際に回転し、前記リングギヤの周方向に互いに間隔をおいた状態で前記リングギヤに噛合する複数のピニオンギヤと、を備え、前記電動機の駆動によって前記複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与され、前記電動機の前記出力軸の一端側に設けられたドライブギヤと、前記ドライブギヤに噛合する第1カウンターギヤが設けられた第1回転軸と、前記ドライブギヤに噛合する第2カウンターギヤが設けられた第2回転軸と、を備え、前記複数のピニオンギヤには、前記第1回転軸に設けられた第1ピニオンギヤと、前記第2回転軸に設けられた第2ピニオンギヤと、が含まれ、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の夫々は軸部材であり、前記第1回転軸の中心軸と、前記第2回転軸の中心軸は、同一直線上に存在せず、前記第1回転軸は、前記第2回転軸と間隔をおいて配置される。
【0011】
本発明によれば、電動機の回転方向と2つのピニオンギヤの回転方向とは反転するが、2つのピニオンギヤは同一方向で噛み合い、回転方向も同一方向となる。よって、電動機から出力される駆動力を効率よく伝達できる。
【0012】
また、この場合に、前記複数のピニオンギヤには、前記電動機の前記出力軸の他端側に設けられた第3ピニオンギヤが含まれ
、前記電動機は、ケースを含む本体部と、前記出力軸とを有し、前記出力軸は前記ケースを突き抜けるように直線上に延在し、前記出力軸の前記一端側及び前記他端側は、ともに前記ケースの外側に位置してもよい。
【0013】
このようにすると、リングギヤに駆動力を付与する位置を周方向により大局的かつより均等に配置できて、リングギヤをより安定に駆動できる。また、リングギヤを駆動する力を3つのピニオンギヤで分担できるから、各ピニオンギヤが負担する駆動トルクを低減できて、ピニオンギヤの破損を抑制できる。
【0014】
また、前記第1及び第2カウンターギヤを設け、前記出力軸の他端側に第3ピニオンギヤを設けない上述の場合に、前記第1カウンターギヤが、前記第2カウンターギヤと同一の歯数でかつ前記ドライブギヤの歯数よりも多い歯数を有し、前記出力軸が、前記第1及び第2回転軸よりも高速で回転してもよい。
【0015】
このようにすると、電動機を、高速回転可能とでき小型化できる。また、第1及び第2カウンターギヤの体積増加よりも電動機の体積減少が大きい場合、車両駆動装置をコンパクトに構成でき軽量化できる。
【0016】
また、本発明の車両駆動装置
は、1つのみの電動機と、車輪と同期回転するリングギヤと、前記電動機の出力軸が回転する際に回転し、前記リングギヤの周方向に互いに間隔をおいた状態で前記リングギヤに噛合する複数のピニオンギヤと、を備え、前記電動機の駆動によって前記複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与され、前記電動機の前記出力軸の一端側に設けられた第1傘歯車と、前記第1傘歯車に噛合する第2傘歯車が設けられた第1回転軸と、前記第1傘歯車に噛合する第3傘歯車が設けられた第2回転軸と、を備え、前記複数のピニオンギヤには、前記第1回転軸に設けられた第1ピニオンギヤと、前記第2回転軸に設けられた第2ピニオンギヤと、が含まれ、前記第1回転軸及び前記第2回転軸の夫々は軸部材であり、前記第1回転軸は、前記第2回転軸と間隔をおいて配置される。
【0017】
本発明によれば、電動機の出力軸に交差する回転軸に設けたピニオンギヤで、リングギヤを駆動できる。
【0018】
また、この第2及び第3傘歯車を設けた場合に、前記第2傘歯車が、前記第3傘歯車と同一の歯数でかつ前記第1傘歯車の歯数よりも多い歯数を有し、前記出力軸が、前記第1及び第2回転軸よりも高速で回転してもよい。
【0019】
このようにすると、電動機を、高速回転可能とでき小型化できる。また、第2及び第3傘歯車の体積増加よりも電動機の体積減少が大きい場合、車両駆動装置をコンパクトに構成でき軽量化できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両駆動装置によれば、構造を簡素化でき、製造コストも低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。また、実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは現物と異なる場合があり、寸法比率などは複数の図面で整合が取れない場合がある。本明細書において「略**」との記載は、略全域を例に挙げて説明すると、全域はもとより実質的に全域と認められる場合を含む意図である。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の車両駆動装置50の主要部を、車輪回転軸Xを含む切断面で切断したときの模式断面図であり、
図2は、車両駆動装置50のリングギヤ2b周辺の構造を、車輪回転軸Xの軸方向の一方側から見たときの模式図である。
【0024】
図1に示すように、車両駆動装置50は、1つのみの電動機1、車輪取付部材2、及びハウジング3を備える。電動機1は回転方向及び回転トルクが通電制御される。
図1及び
図2では、電動機1を通電制御するための配線や回路の図示が省略されている。車輪取付部材2の車両外側端には、図示しない車輪を取り付けるためのハブ2aが設けられる。車輪取付部材2は、車両幅方向に略平行な車輪回転軸Xを中心軸として回転可能になっている。車輪取付部材2の車両内側端には、リングギヤ2bが設けられる。車輪取付部材2は、転がり軸受等を介してハウジング3に支持されるフランジ部2cを有する。ハウジング3は、車輪取付部材2を車輪回転軸Xまわりに回転可能に支持する。ハウジング3は、図示しない転舵機構によって引き起こされる転舵時に転舵軸のまわりに車輪と一緒に回転する。
【0025】
図2に示すように、電動機1はリングギヤ2bの径方向内方に配置される。電動機1のハウジングは図示しない車体に固定される。電動機1の出力軸10の一端側には出力軸10と一体に回転するドライブギヤ30が設けられる。この車両駆動装置50は、出力軸10に略平行に延在する回転軸35を備える。回転軸35の他端側には、回転軸35と一体に回転するカウンターギヤ40が設けられる。本明細書では、駆動軸に設けられたドライブギヤに噛合するドリブンギヤをカウンターギヤと呼ぶ。カウンターギヤ40は、ドライブギヤ30に噛合している。カウンターギヤ40の歯数はドライブギヤ30の歯数と同一であり、回転軸35は出力軸10と同一の回転速度で回動する。回転軸35の一端側には第1ピニオンギヤ21が設けられる。第1ピニオンギヤ21は、リングギヤ2bに噛合している。
【0026】
再度、
図1を参照して、電動機1の出力軸10の他端側には出力軸10と一体に回転する第2ピニオンギヤ22が設けられる。第2ピニオンギヤ22は出力軸10の他端側でリングギヤ2bに噛合する。図示しないが、車両駆動装置50は第1及び第2転がり軸受を備える。第1転がり軸受は、出力軸10を第1ピニオンギヤ21よりも一方側でハウジング3に対して回転可能に支持する。同様に、第2転がり軸受は、出力軸10を第2ピニオンギヤ22よりも他方側でハウジング3に対して回転自在に支持する。
【0027】
簡潔に述べると、一方の第2ピニオンギヤ22を、それを駆動する電動機1と直結し、もう一方の第1ピニオンギヤ21を、カウンターギヤ40を介して回転方向を反転させたのち電動機1の出力軸10と接続する。カウンターギヤ40の歯数をドライブギヤ30の歯数と同一にし、回転軸35を出力軸10と同一の回転速度で回動させる。電動機1から出力される駆動力を、一方の軸端側から第2ピニオンギヤ22に直接伝達し、もう一方の軸端側からカウンターギヤ40を介して第1ピニオンギヤ21に伝達することで、駆動力を2つのピニオンギヤ21,22に均等に分配できる。
【0028】
図2に示すように、出力軸10は車輪回転軸Xに対して間隔をおいて配置されている。ドライブギヤ30とカウンターギヤ40の噛合面は、リングギヤ2bの中心軸を通り鉛直方向を含む平面Y上に略位置している。第1ピニオンギヤ21と第2ピニオンギヤ22とは、上記平面Yに対してオフセット配置される。第1及び第2ピニオンギヤ21,22の重心同士を結ぶ線分は、リングギヤ2bの中心軸を略通過している。
【0029】
ギヤ22,30は例えば次のように出力軸10に一体に設けられることができる。すなわち、先ず、第2ピニオンギヤ22が設けられる箇所やドライブギヤ30が設けられる箇所にギヤに略対応する形状を有する肉厚部分がある軸部材を鍛造などにより形成する。その後、切削加工により上記肉厚部分に螺子を形成すること等を行い、ギヤ22,30を出力軸10に一体に設ける。又は、円筒状の出力軸10と、外周面に螺子がきられた環状のギヤ22,30とを別個に形成した後、環状のギヤ22,30を、圧入、冷やし嵌め又は焼き嵌め等により出力軸10の所定箇所に嵌め込むことによって、ギヤ22,30を出力軸10に一体に設ける。これらの手法は、ギヤを出力軸や回転軸に一体に設ける全ての場合で適用されることができる。
【0030】
上記第1実施形態によれば、1つのみの電動機1により複数のピニオンギヤ21,22に均等な駆動力が付与される。したがって、1つのみの電動機1及び1つのみのインバータでリングギヤを回動できる。よって、車両駆動装置50の構造を簡素化でき、製造コストを低減できる。更に、第1及び第2ピニオンギヤ21,22がリングギヤ2bの中心軸及び鉛直方向を含む平面Yに対してオフセット配置されるので、第1及び第2ピニオンギヤ21,22の大きな配置スペースを確保できて、第1及び第2ピニオンギヤ21,22の十分な機械強度を確保し、高い減速比を得ることが可能になる。したがって、車両駆動装置50の大きさを小さくしつつ高い駆動力を高効率に出力することが可能になる。
【0031】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態の車両駆動装置150における
図1に対応する模式断面図であり、
図4は、第2実施形態の車両駆動装置150における
図2に対応する模式図である。第2実施形態では、第1実施形態の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略する。また、第2実施形態では、第1実施形態と共通の作用効果については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成、作用効果についてのみ説明を行う。
【0032】
図4に示すように、第2実施形態の車両駆動装置150では、電動機1の出力軸10の一端側にドライブギヤ130が設けられる。車両駆動装置150は、第1回転軸135と、第2回転軸145とを備える。第1回転軸135の他端側には、ドライブギヤ130に噛合する第1カウンターギヤ140が設けられ、第1回転軸135の一端側にはリングギヤ2bに噛合する第1ピニオンギヤ120が設けられる。また、第2回転軸145の他端側には、ドライブギヤ130に噛合する第2カウンターギヤ141が設けられ、第2回転軸145の一端側にはリングギヤ2bに噛合する第2ピニオンギヤ121が設けられる。
【0033】
ドライブギヤ130の歯数は、第1カウンターギヤ140の歯数と同一であり、第2カウンターギヤ141の歯数とも同一である。
図4に示すように、第2実施形態では、電動機1の出力軸10は、リングギヤ2bの中心軸及び鉛直方向を含む平面Y上に略位置する。また、第1ピニオンギヤ120と第2ピニオンギヤ121とは、上記平面Yに対して略面対称に位置する。
【0034】
第2実施形態によれば、電動機1の回転方向と2つのピニオンギヤ120,121の回転方向とは反転するが、2つのピニオンギヤ120,121は同一方向で噛み合い、回転方向も同一方向となる。よって、電動機1から出力される駆動力を効率よく伝達できる。
【0035】
第2実施形態では、ドライブギヤ130の歯数が、第1カウンターギヤ140の歯数と同一であり、第2カウンターギヤ141の歯数とも同一である場合について説明した。しかし、第1カウンターギヤが、第2カウンターギヤと同一の歯数でかつドライブギヤの歯数よりも少ない歯数を有して、出力軸が第1及び第2回転軸よりも低速で回転するようにしてもよい。また、第1カウンターギヤが、第2カウンターギヤと同一の歯数でかつドライブギヤの歯数よりも多い歯数を有して、出力軸が第1及び第2回転軸よりも高速で回転するようにしてもよい。このようにすると、電動機を、高速回転できるだけでなく、小型化可能とできる。また、第1及び第2カウンターギヤの体積増加よりも電動機の体積減少を大きくすると、車両駆動装置全体をコンパクトに構成でき車両駆動装置全体の軽量化も実現できる。
【0036】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の車両駆動装置250における
図1に対応する模式断面図であり、
図6は、第3実施形態の車両駆動装置250における
図2に対応する模式図である。第3実施形態では、第2実施形態の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略する。また、第3実施形態では、第2実施形態と共通の作用効果については説明を省略し、第2実施形態と異なる構成、作用効果についてのみ説明を行う。
【0037】
図5及び
図6に示すように、第3実施形態では、電動機1の出力軸10の他端側に第3ピニオンギヤ122を設けた点のみが、第2実施形態と異なる。第3実施形態では、それ以外の点は、第2実施形態と同一である。例えば、第3実施形態では、ドライブギヤ130の歯数が、第1カウンターギヤ140の歯数と同一であり、第2カウンターギヤ141の歯数とも同一である。
図6に示すように、第3ピニオンギヤ122は、出力軸10の他端側でリングギヤ2bに噛合している。
【0038】
上記第3実施形態によれば、リングギヤ2bに駆動力を付与する位置を周方向により大局的かつ均等に配置できて、リングギヤ2bをより安定に駆動できる。また、リングギヤ2bを駆動する力を3つのピニオンギヤ120,121,122で分担できるから、各ピニオンギヤ120,121,122が負担する駆動トルクを低減できて、ピニオンギヤ120,121,122の破損を抑制できる。
【0039】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態の車両駆動装置350における
図2に対応する模式図である。第4実施形態では、第1実施形態の構成部と同一構成部には同一参照番号を付して説明を省略する。また、第4実施形態では、第1実施形態と共通の作用効果については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成、作用効果についてのみ説明を行う。
【0040】
図7に示すように、車両駆動装置350は電動機1を備える。電動機1の出力軸10の一端側に第1傘歯車310が設けられる。車両駆動装置350は、更に第1回転軸360及び第2回転軸370を備える。この例では、第1及び第2回転軸360,370は、出力軸10の延在方向に略直交する方向に延在するが、第1及び第2回転軸のいずれか一方は電動機の出力軸の延在方向に略直交する方向以外の方向に延在することもできる。
【0041】
図7に示すように、第1回転軸360の一端側には第1傘歯車310に噛合する第2傘歯車311が設けられ、第1回転軸360の他端側には第1ピニオンギヤ320が設けられる。第1ピニオンギヤ320は、リングギヤ2bに噛合している。
【0042】
第1及び第2回転軸360,370は略同一直線上に位置する。第2回転軸370は、第1回転軸360に間隔をおいて位置する。第2回転軸370の他端側には第1傘歯車310に噛合する第3傘歯車312が設けられ、第2回転軸370の一端側には第2ピニオンギヤ321が設けられる。第2ピニオンギヤ321は、リングギヤ2bに噛合している。
図7に示すように、第2傘歯車311は、第1回転軸360の延在方向に第3傘歯車312に対向している。第2傘歯車311は、第3傘歯車312に間隔をおいて位置している。電動機1の出力軸10は、第2及び第3傘歯車311,312の両方に間隔をおいた状態で第2傘歯車311と第3傘歯車312との間を延在している。
【0043】
第2傘歯車311の歯数は、第3傘歯車312の歯数と同一であり、第1傘歯車310の歯数とも同一になっている。この例では、電動機1の出力軸10がリングギヤ2bの中心軸及び鉛直方向を含む平面Y上に略位置するが、電動機の出力軸は、リングギヤの中心軸と交差しなくてもよく、鉛直方向に対して交差する方向に延在することもできる。
【0044】
上記構成において、電動機1の動力は次のようにリングギヤ2bに伝達される。すなわち、電動機1の出力軸10が
図7に矢印Aで示す方向に回動すると、出力軸10に第1及び第2傘歯車310,311を介して接続している第1回転軸360が
図7に矢印Bで示す方向に回動する。また、同時に出力軸10に第1及び第3傘歯車310,312を介して接続している第2回転軸370が
図7に矢Cで示す方向に第1回転軸360とは逆向きに回動する。すると、第1回転軸360に設けられた第1ピニオンギヤ320が第1回転軸360と同じ方向に
図7に矢印Dで示す方向に回動し、第2回転軸370に設けられた第2ピニオンギヤ321が第2回転軸370と同じ方向に
図7に矢印Eで示す方向に回動する。よって、
図7の紙面左側に位置する第1ピニオンギヤ320がリングギヤ2bを紙面の下から上に回動させ、
図7の紙面右側に位置する第2ピニオンギヤ321がリングギヤ2bを紙面の上から下に回動させるから、リングギヤ2bが
図7に矢印Fで示す時計回りに回動する。
【0045】
第4実施形態によれば、第1及び第2ピニオンギヤ320,321が、第2傘歯車311又は第3傘歯車312と、第1傘歯車310とを介して電動機1の出力軸10と接続される。したがって、電動機1の出力軸10に略90°の角度をなして交差する回転軸360,370に設けたピニオンギヤ320,321で、リングギヤ2bを駆動できる。
【0046】
第4実施形態では、第1傘歯車310の歯数が、第2傘歯車311の歯数と同一であり、第3傘歯車312の歯数とも同一である場合について説明した。しかし、第2傘歯車が、第3傘歯車と同一の歯数でかつ第1傘歯車の歯数よりも少ない歯数を有して、出力軸が第1及び第2回転軸よりも低速で回転するようにしてもよい。また、第2傘歯車が、第3傘歯車と同一の歯数でかつ第1傘歯車の歯数よりも多い歯数を有して、出力軸が第1及び第2回転軸よりも高速で回転するようにしてもよい。このようにすると、電動機を、高速回転できるだけでなく、小型化可能とできる。また、第1傘歯車、第2傘歯車及び第3傘歯車の体積増加よりも電動機の体積減少を大きくすると、車両駆動装置全体をコンパクトに構成でき車両駆動装置全体の軽量化も実現できる。
【0047】
尚、本発明は、上記第1乃至第4実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項及びその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0048】
例えば、第1乃至第4実施形態では、電動機1の駆動力でリングギヤ2bを回動させる場合について説明した。しかし、車輪の回転動力を、リングギヤ2bを介して電動機1に伝達して電動機1で発電する回生を行い、この回生により生じた電力を車両のバッテリーに充電してもよいことは、言うまでもない。
【0049】
また、上記第1及び第4実施形態では、電動機の出力軸10が鉛直方向に略平行に延在する場合について説明したが、電動機の出力軸は鉛直方向に交差する如何なる方向に延在してもよい。
【0050】
また、本発明は、電動機の駆動によって複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与されればよく、上記説明した実施形態または変形以外にも多数の変形例が考えられる。
【0051】
例えば、
図8、すなわち、変形例の車両駆動装置400でのピニオンギヤを駆動する機構を説明する模式図に示すように、電動機1の出力軸10に第1及び第2傘歯車410,450を電動機本体7の一方側に同じ姿勢で2段に設けてもよい。この場合、電動機本体7に近い側の第1傘歯車410に第3傘歯車411及び第4傘歯車412を噛合し、電動機本体7に遠い側の第2傘歯車450に第5傘歯車451及び第6傘歯車452を噛合する。そして、第3傘歯車411が設けられた回転軸460、第4傘歯車412が設けられた回転軸470、第5傘歯車451が設けられた回転軸480、及び第6傘歯車452が設けられた回転軸490の夫々の片側にピニオンギヤを設ける。
【0052】
この場合に、第1傘歯車410に対する第3傘歯車411の歯車比、第1傘歯車410に対する第4傘歯車412の歯車比、第2傘歯車450に対する第5傘歯車451の歯車比、及び第2傘歯車450に対する第6傘歯車452の歯車比は一致する。ここで、それらの歯車比を1より大きく設定すると、各回転軸460,470,480,490よりも出力軸10を高速回転させることができて、好ましい。
【0053】
また、
図9、すなわち、他の変形例の車両駆動装置500でのピニオンギヤを駆動する機構を説明する模式図に示すように、出力軸10における電動機本体7の一方側に第1傘歯車510を設け、出力軸10における電動機本体7の他方側に第2傘歯車550を設けるようにして、出力軸10に第1及び第2傘歯車510,550を2段に設けてもよい。この場合、第1傘歯車510に噛合する第3傘歯車511が設けられた回転軸560にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、第1傘歯車510に噛合する第4傘歯車512が設けられた回転軸570にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。また、同様に、第2傘歯車550に噛合する第5傘歯車551が設けられた回転軸580にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、第2傘歯車550に噛合する第6傘歯車552が設けられた回転軸590にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。この場合、
図8に示す変形例と同様に、互いに噛合する傘歯車510,511,512,550,551,552の歯車比を適切に設定して、各回転軸560,570,580,590よりも出力軸10を高速回転させるようすると好ましい。
【0054】
また、
図10、すなわち、他の変形例の車両駆動装置600でのピニオンギヤを駆動する機構を説明する模式図に示すように、第1傘歯車610及びドライブギヤ650を、ドライブギヤ650が電動機本体7から遠い側に位置するように出力軸10における電動機本体7の一方側に設けてもよい。この場合、第1傘歯車610に噛合する第2傘歯車611が設けられた回転軸660にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、第1傘歯車610に噛合する第3傘歯車612が設けられた回転軸670にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。また、ドライブギヤ650に噛合する第1カウンターギヤ651が設けられた回転軸680にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、ドライブギヤ650に噛合する第2カウンターギヤ652が設けられた回転軸690にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。このようにして、電動機1の駆動によって複数のピニオンギヤに均等な駆動力が付与されてもよい。
【0055】
この場合に、第1傘歯車610に対する第2傘歯車611の歯車比、第1傘歯車610に対する第3傘歯車612の歯車比、ドライブギヤ650に対する第1カウンターギヤ651の歯車比、及びドライブギヤ650に対する第2カウンターギヤ652の歯車比は一致する。ここで、それらの歯車比を1より大きく設定すると、各回転軸660,670,680,690よりも出力軸10を高速回転させることができて好ましい。
【0056】
また、
図11、すなわち、更なる変形例の車両駆動装置700でのピニオンギヤを駆動する機構を説明する模式図に示すように、出力軸10における電動機1の電動機本体7の一方側に第1傘歯車710を設け、出力軸10における電動機本体7の他方側にドライブギヤ750を設けてもよい。この場合、第1傘歯車710に噛合する第2傘歯車711が設けられた回転軸760にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、第1傘歯車710に噛合する第3傘歯車712が設けられた回転軸770にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。また、同様に、ドライブギヤ750に噛合する第1カウンターギヤ751が設けられた回転軸780にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設け、ドライブギヤ750に噛合する第2カウンターギヤ752が設けられた回転軸790にリングギヤに噛合するピニオンギヤを設ける。この場合、
図10に示す変形例と同様に、互いに噛合する歯車710,711,712,750,751,752の歯車比を適切に設定して、各回転軸760,770,780,790よりも出力軸10を高速回転させるようすると好ましい。
【0057】
尚、電動機1の出力軸10に2つの傘歯車を設けるか、又は電動機の出力軸10に1つの傘歯車と1つのドライブギヤを設けた
図8〜
図11に示す変形例では、電動機1の出力軸10に設けられた各歯車が2つの歯車と噛合した。しかし、電動機の出力軸に2つの傘歯車を設けるか、又は電動機の出力軸に1つの傘歯車と1つのドライブギヤを設けた場合に、出力軸に設けられた1又は2の歯車が、1つの歯車のみにしか噛合しなくてもよいのは言うまでもない。これらに示す例のように、傘歯車やカウンターギヤを適宜組み合わせると、電動機の駆動によってリングギヤに同じ回動方向に均等な駆動力を付与できるピニオンギヤの数を適宜増やすことができる。