(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態におけるフィールド機器の概略構成を示したブロック図である。フィールド機器100は、センサ1と、バッファ回路2と、増幅・帯域制限回路3と、A/D(アナログ/デジタル)変換回路4と、センサドライバ回路5と、処理部6と、メモリ7と、操作表示部8と、D/A(デジタル/アナログ)変換回路9と、出力回路10と、入力回路11と、A/D変換回路12と、A/D変換回路13と、模擬信号発生回路20と、信号切り替えスイッチ21とを含んで構成される。また、処理部6は、動作検証部61を含んで構成される。
【0019】
フィールド機器100は、プラント内に配置された設備に設置される現場機器である。なお、プラントとしては、石油の精製や化学製品の生産を行う工業プラントの他、ガス田や油田などの井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力などの発電を管理制御するプラント、太陽光や風力などの環境発電を管理制御するプラント、上下水やダムなどを管理制御するプラントなどが含まれる。
【0020】
フィールド機器100には、設置されている設備が稼働しているときの動作状態(例えば、流量、圧力、温度、レベルなど)を計測する計測機能を備えた測定器などがある。より具体的には、フィールド機器100には、電磁流量計、渦流量計、コリオリ式流量計、超音波流量計などの各種の流量計や、圧力伝送器、温度伝送器、レベル計などがある。また、フィールド機器100には、入力された制御信号に応じて設置されている設備の動作を制御する制御機能(例えば、アクチュエータなど)を備えた操作器などもある。
図1には、計測機能を備えたフィールド機器100の構成を示している。なお、フィールド機器100には、例えば、モータなどの発する振動、音、熱や、配管などの腐食を、プラント内の物理量として計測する振動計、騒音計、温度計、腐食検出器なども含まれる。
【0021】
センサ1は、フィールド機器100が設置されている設備における現在の動作状態(例えば、流量、圧力、温度、レベルなど)を計測する計測部である。センサ1は、計測した結果の計測信号をバッファ回路2に出力する。なお、センサ1の構成は、フィールド機器100の種類によって異なる。フィールド機器100の種類によって異なるセンサ1の構成に関する詳細な説明は、後述する。
【0022】
センサドライバ回路5は、処理部6から入力された制御信号に応じて、センサ1を駆動する駆動部である。なお、センサドライバ回路5の構成は、フィールド機器100の種類によって異なる。また、フィールド機器100の種類によっては、フィールド機器100にセンサドライバ回路5を備えない場合もある。フィールド機器100の種類によって異なるセンサドライバ回路5の構成に関する詳細な説明は、後述する。
【0023】
バッファ回路2は、センサ1から出力された計測信号を増幅・帯域制限回路3に受け渡すための緩衝回路である。バッファ回路2は、センサ1から出力された計測信号のインピーダンスを変換し、インピーダンス変換した後の計測信号を増幅・帯域制限回路3に出力する。
【0024】
増幅・帯域制限回路3は、バッファ回路2から出力されたインピーダンス変換した後の計測信号の信号レベルや範囲を変換してA/D変換回路4に出力する変換回路である。増幅・帯域制限回路3は、バッファ回路2から出力された計測信号を増幅する増幅機能や、バッファ回路2から出力された計測信号の周波数帯域を制限する帯域制限機能を備えている。より具体的には、増幅・帯域制限回路3は、バッファ回路2から出力された計測信号の信号レベルを、A/D変換回路4においてアナログ/デジタル変換の分解能が十分にとれるレベルにレベル変換(増幅)し、レベル変換した後の計測信号をA/D変換回路4に出力する。また、増幅・帯域制限回路3は、ローパスフィルタ(Low−pass filter:LPF)、ハイパスフィルタ(High−pass filter:HPF)、バンドパスフィルタ(Band−pass filter:BPF)などを用いてバッファ回路2から出力された計測信号の周波数帯域を制限することによって、計測信号に含まれる不要なノイズ成分を除去し、ノイズ成分を除去した後の計測信号をA/D変換回路4に出力する。以下の説明においては、増幅・帯域制限回路3が出力する計測信号を、「アナログ計測信号」という。
【0025】
A/D変換回路4は、増幅・帯域制限回路3から出力されたアナログ計測信号(アナログ信号)をアナログデジタル変換し、センサ1が計測した計測信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値のデジタル信号(以下、「デジタル計測信号」という)を生成する。A/D変換回路4は、生成したデジタル計測信号を、処理部6に出力する。
【0026】
なお、A/D変換回路4は、フィールド機器100の種類によっては、センサドライバ回路5との間でやり取りされる信号に基づいて、計測信号(アナログ信号)をアナログデジタル変換する構成であってもよい。例えば、フィールド機器100が電磁流量計である場合、A/D変換回路4は、センサドライバ回路5がセンサ1に出力した励磁電流の電流値に基づいて、アナログデジタル変換した後のデジタル計測信号のデジタル値の大きさの範囲を変更する構成であってもよい。
【0027】
処理部6は、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素を制御する制御部である。処理部6は、例えば、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)などによって構成され、フィールド機器100の機能を実現するためのアプリケーションプログラムやデータに応じて、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の全体を制御する。また、処理部6は、実行されたアプリケーションプログラムに応じて、フィールド機器100が設置されている設備の動作状態を提示するための予め定めた演算処理を行う演算処理部でもある。より具体的には、処理部6は、A/D変換回路4から出力されたデジタル計測信号によって表す、センサ1が計測した計測信号の信号レベルの大きさに対応したデジタル値を、例えば、4mA〜20mAの範囲の直流アナログ信号の大きさによって設置されている設備の動作状態を表すことができるデジタル値のデジタル信号に変換する演算処理を行って、演算処理した後のデジタル信号をD/A変換回路9に出力する。また、処理部6は、演算処理した結果、つまり、設置されている設備の動作状態を操作表示部8に表示させるための表示データを生成する演算処理を行って、演算処理した後の表示データを操作表示部8に出力すると共に、操作表示部8による表示データの表示を制御する。
【0028】
また、処理部6は、演算処理したデジタル信号を、プラント内に専用に構築された通信ネットワークによって、例えば、プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置に送信するための制御も行う。なお、プラントにおいて構築された通信ネットワークは、例えば、ISA100.11aなどの工業用の無線規格、センサネットワークシステムなどの無線規格、Wireless/Wired HART(登録商標)などの無線と有線とが混在した通信規格、MODBUS(登録商標)などのマスター/スレーブ方式の通信規格、FOUNDATION(登録商標)フィールドバス、PROFIBUS(PROCESS FIELD BUS)(登録商標)などのフィールドバス規格など、種々の通信規格や方式によってフィールド機器100と制御装置との間でデータなどの送受信を行う通信ネットワークである。なお、通信ネットワークは、例えば、一般的なWiFi(登録商標)の無線規格によってフィールド機器100と制御装置との間で送受信を行う通信ネットワークであってもよい。
【0029】
また、処理部6は、プラントにおいてフィールド機器100の点検作業を行う作業員によって操作された操作表示部8から入力された検証実行指示信号に応じて動作検証部61を起動し、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する。動作検証部61は、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する際に、動作検証プログラムを実行し、実行した動作検証プログラムに従って、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を制御する。なお、動作検証プログラムは、フィールド機器100においてそれぞれの構成要素の動作を検証するためのアプリケーションプログラムである。動作検証プログラムは、処理部6に備えた記憶部や、フィールド機器100に備えた記憶部であるメモリ7に格納されている。動作検証部61は、実行した動作検証プログラムに従って実施したそれぞれの構成要素の動作検証の結果(検証結果)を、それぞれの検証項目ごとに出力する。また、動作検証部61は、全ての検証項目の検証結果を最終的に判定した結果、すなわち、フィールド機器100の健全性の最終的な検証結果を出力する。処理部6は、動作検証部61が出力したそれぞれの構成要素におけるそれぞれの検証項目ごとの検証結果、および健全性の最終的な検証結果(以下、それぞれの検証結果を区別せずに表す場合には、単に「検証結果」ともいう)を、メモリ7に記憶させる。
【0030】
また、処理部6は、動作検証部61が出力した健全性の最終的な検証結果を、表示データとして操作表示部8に出力すると共に、操作表示部8による表示データの表示を制御する。なお、処理部6は、動作検証部61がそれぞれの構成要素の動作を検証しているときの状態(例えば、進捗度、経過時間、終了予定時間、終了通知などのステータス)を、表示データとして操作表示部8に表示させる構成であってもよい。また、処理部6は、動作検証部61が出力したそれぞれの構成要素におけるそれぞれの検証項目ごとの検証結果を順次、表示データとして操作表示部8に表示させる構成であってもよい。この場合、処理部6は、作業員によって操作された操作表示部8から入力された検証結果の切り替え指示に応じて、操作表示部8に表示させる検証結果を切り替える構成であってもよい。なお、動作検証プログラムに応じたそれぞれの構成要素の動作の制御や、フィールド機器100の健全性の検証方法に関する詳細な説明は、後述する。
【0031】
メモリ7は、処理部6が実行するアプリケーションプログラムや、実行途中のデータを記憶する記憶部である。メモリ7は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの種々のメモリで構成される。メモリ7は、処理部6からの制御に応じて、データの記憶(書き込み)やデータの出力(読み出し)が行われる。
【0032】
また、メモリ7は、処理部6に備えた動作検証部61が動作検証プログラムに従って実施した、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素におけるそれぞれの検証項目ごとの検証結果や、フィールド機器100の健全性の最終的な検証結果を記憶する記憶部でもある。なお、メモリ7には、処理部6に備えた動作検証部61が実行する動作検証プログラムを記憶してもよい。
【0033】
なお、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作は、例えば、フィールド機器100を出荷するときなどの初期段階、フィールド機器100を設備に設置(計装)した、つまり、フィールド機器100をプラント内に設置したときなどの設置段階、フィールド機器100を設置して運用しているときなどの運用段階など、それぞれの段階で異なることが考えられる。このため、メモリ7には、それぞれの段階における構成要素の検証結果を任意のタイミングで参照することができるように、それぞれの段階における検証結果を複数記憶しておく構成にしてもよい。より具体的には、フィールド機器100を出荷する際に実施した検証結果(検査データ)、フィールド機器100を設備に設置(計装)したときに実施した検証結果(確認データ)、フィールド機器100を運用しているときの点検作業において作業員から指示された健全性の検証の実行指示(検証実行指示信号)に応じて実施した検証結果(点検データ)など、それぞれの段階における検証結果をメモリ7に記憶しておく構成にしてもよい。このとき、それぞれの段階の検証結果には、それぞれの構成要素の動作検証を実施した日時を紐付けて記憶しておく構成にしてもよい。また、例えば、点検データは、メモリ7の記憶容量の大きさなども考慮して、予め定めた複数回分(例えば、3回分)記憶しておく構成にしてもよい。この構成の場合、それぞれの点検データに、それぞれの構成要素の動作検証を実施した日時と紐付けて記憶しておくことが望ましい。なお、検査データおよび確認データは、いずれか一方のみをメモリ7に記憶しておく構成にしてもよい。なお、日時のデータは、フィールド機器100に内蔵の時計機能を有するタイマ部(不図示)や、フィールド機器100の外部(プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置や、GPS:Global Positioning Systemなど)から得られるようにしてもよい。
【0034】
また、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作は、例えば、フィールド機器100の修理や定期的な保守(メンテナンス)を行った際にも異なることが考えられる。このため、メモリ7には、フィールド機器100の修理やメンテナンスを実施した際の検証結果(保全データ)なども記憶しておく構成にしてもよい。この場合も、フィールド機器100の修理やメンテナンスを実施した日時、または修理やメンテナンスを実施した後にそれぞれの構成要素の動作検証を実施した日時と紐付けた保全データをメモリ7に記憶しておく構成にしてもよい。なお、フィールド機器100の修理やメンテナンスによってフィールド機器100の部品を交換した場合などにおいては、保全データを、検査データまたは確認データに差し替えてメモリ7に記憶しておく構成にしてもよい。
【0035】
操作表示部8は、処理部6から出力された表示データを表示するための表示部と、作業員によって操作される操作部とを備えたヒューマンマシンインターフェース(Human Machine Interface:HMI)である。表示部は、例えば、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)などの表示デバイスであり、処理部6から出力された表示データなどを表示することによって、設置されている設備の動作状態や、フィールド機器100の健全性の最終的な検証結果、動作検証を実施したそれぞれの構成要素の検証結果、動作検証を行っているときの現在の状態(ステータス)などの情報を作業員に提示する。操作部は、例えば、ボタンやスイッチ類などを備えた操作デバイスであり、作業員による操作を受け付け、受け付けた作業員の操作を表す情報、つまり、作業員によるフィールド機器100の動作の指示を表す指示信号を、処理部6に出力する。操作部は、作業員によってフィールド機器100の健全性の検証を実行する指示の操作がされると、この操作に応じた検証実行指示信号を、処理部6に出力する。
【0036】
なお、操作部は、ボタンやスイッチ類による構成に限定されるものではなく、例えば、表示部内に備えられる押圧センサによって構成されてもよい。つまり、操作表示部8は、表示部と操作部とが組み合わされたタッチパネルとして構成されてもよい。この場合、操作表示部8は、表示部に種々の情報を表示して作業員に提示し、表示部に表示した情報に基づいて作業員が行った各種のタッチ(タップやフリックなど)操作を操作部が検出してフィールド機器100に対する動作の指示を受け付けて、受け付けた作業員の操作を表す情報を、処理部6に出力する。
【0037】
D/A変換回路9は、処理部6から出力された演算処理した後のデジタル信号をデジタルアナログ変換し、センサ1が計測した計測信号の信号レベルの大きさを表すアナログ信号(例えば、4mA〜20mAの範囲の直流アナログ信号)を生成する。D/A変換回路9は、生成したアナログ信号を、出力回路10に出力する。なお、D/A変換回路9は、デジタルアナログ変換を行う際に、例えば、PWM変調などを行ってもよい。
【0038】
出力回路10は、D/A変換回路9から出力されたアナログ信号を出力信号として、例えば、プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置などのフィールド機器100の外部に出力する。なお、フィールド機器100では、処理部6に備えた動作検証部61からの制御に応じて、出力回路10が出力する出力信号を、不図示のスイッチを介してA/D変換回路13に入力させることもできる。また、フィールド機器100では、処理部6に備えた動作検証部61からの制御に応じて、出力回路10が出力する出力信号を、不図示のスイッチを介して入力回路11に入力させることもできる。
【0039】
なお、フィールド機器100がプラント内に専用に構築された通信ネットワークによって通信を行う場合、出力回路10は、処理部6または不図示の通信部から出力された通信信号を出力信号に重畳して出力する構成であってもよい。また、処理部6または不図示の通信部から出力された通信信号には、操作表示部8に備えた表示部に表示する情報、つまり、設置されている設備の動作状態や、フィールド機器100の健全性の最終的な検証結果、動作検証を実施したそれぞれの構成要素の検証結果、動作検証を行っているときの現在の状態(ステータス)などの情報が含まれていてもよい。また、出力回路10は、通信部、または通信部に備えた送信機能を含んで構成されてもよい。
【0040】
入力回路11は、例えば、プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置や、接続された作業端末装置などのフィールド機器100の外部から入力された入力信号(アナログ信号)を、A/D変換回路12に出力する。なお、入力回路11に入力される入力信号も、出力回路10が出力する出力信号と同様に、例えば、4mA〜20mAの範囲の直流アナログ信号である。なお、入力回路11に接続される作業端末装置としては、例えば、プラントにおいてフィールド機器100の点検作業を行う作業員によって携帯され、作業員による作業を支援するパーソナルコンピュータ(PC)や、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant)の機能を備えた、いわゆる、タブレット端末などの携帯端末機器が考えられる。
【0041】
なお、フィールド機器100がプラント内に専用に構築された通信ネットワークによって通信を行う場合、入力回路11は、入力信号に重畳されて入力された通信信号を分離して、処理部6または不図示の通信部に出力する構成であってもよい。また、入力信号に重畳されて入力される通信信号には、フィールド機器100の健全性の検証を実行することを表す、操作表示部8に備えた操作部が作業員による操作に応じて処理部6に出力する検証実行指示信号に相当する指示の情報が含まれていてもよい。また、入力回路11は、通信部、または通信部に備えた受信機能を含んで構成されてもよい。
【0042】
A/D変換回路12は、入力回路11から出力された入力信号(アナログ信号)をアナログデジタル変換し、入力信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を生成する。A/D変換回路12は、生成したデジタル信号を、処理部6に出力する。これにより、処理部6は、A/D変換回路12が出力したデジタル信号、つまり、フィールド機器100に入力された入力信号が表す情報に応じた動作や演算処理を実行する。
【0043】
なお、フィールド機器100の構成によっては、入力回路11およびA/D変換回路12を備えていない構成も考えられる。
【0044】
A/D変換回路13は、出力回路10から出力された出力信号(アナログ信号)をアナログデジタル変換し、出力信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を生成する。A/D変換回路13は、生成したデジタル信号を、処理部6に出力する。なお、A/D変換回路13が処理部6に出力するデジタル信号は、処理部6がD/A変換回路9に出力したデジタル信号、つまり、処理部6が演算処理した後のデジタル信号である。
【0045】
模擬信号発生回路20は、処理部6に備えた動作検証部61からの制御に応じて、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する際に、フィールド機器100に備えたセンサ1が出力する計測信号に相当する疑似的な計測信号、つまり、センサ1が出力する計測信号を模擬した計測信号(以下、「模擬計測信号」という)をバッファ回路2に出力する。言い換えれば、模擬信号発生回路20は、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する際に、動作検証に必要な信号レベルの計測信号を、センサ1に代わってバッファ回路2に出力する。そして、模擬信号発生回路20は、処理部6に備えた動作検証部61からの制御に応じて、模擬計測信号の信号レベルの大きさを、それぞれの構成要素が動作する範囲を網羅する大きさに調整する。これにより、フィールド機器100では、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する、すなわち、フィールド機器100の健全性の検証における網羅度を高める。なお、模擬信号発生回路20が出力する模擬計測信号は、フィールド機器100の種類によって異なる。フィールド機器100の種類によって異なる模擬計測信号に関する詳細な説明は、後述する。
【0046】
なお、
図1においては、模擬信号発生回路20もフィールド機器100の構成要素としているが、模擬信号発生回路20は、フィールド機器100に着脱可能な構成であってもよい。この場合、作業員は、フィールド機器100の健全性を検証する点検作業を行うときに模擬信号発生回路20をフィールド機器100に取り付け、点検作業が終了した後にフィールド機器100から模擬信号発生回路20を取り外すことになる。なお、フィールド機器100に着脱可能な構成の模擬信号発生回路20は、例えば、作業員が携帯している作業端末装置において実現される構成であってもよい。この場合、作業端末装置から出力される模擬信号が、信号切り替えスイッチ21に入力されるように構成する。
【0047】
信号切り替えスイッチ21は、バッファ回路2に出力する計測信号を切り替える。より具体的には、フィールド機器100が、設置されている設備の動作状態を計測する通常の計測動作を行う場合、信号切り替えスイッチ21は、センサ1から出力された計測信号をバッファ回路2に出力する。一方、フィールド機器100が、健全性を検証する検証動作を行う場合、信号切り替えスイッチ21は、模擬信号発生回路20から出力された模擬計測信号をバッファ回路2に出力する。
【0048】
なお、フィールド機器100の種類によっては、フィールド機器100に信号切り替えスイッチ21を備えない構成にすることもできる。これは、例えば、フィールド機器100が電磁流量計である場合において、センサドライバ回路5が、励磁コイルに出力する励磁電流を停止することができる構成であるなど、センサ1を構成する1対の電極が流体速度に応じた起電力(電圧)を計測することがない状態に制御することができる場合には、信号切り替えスイッチ21によってバッファ回路2に出力する計測信号の切り替えを行わなくてよくなるからである。この構成の電磁流量計である場合、フィールド機器100では、センサ1が計測信号を出力する信号線と、模擬信号発生回路20が模擬計測信号を出力する信号線とを互いに接続した、いわゆる、ワイアードORの信号線をバッファ回路2に接続する構成となる。
【0049】
このような構成によって、フィールド機器100では、処理部6に備えた動作検証部61が実行した動作検証プログラムに従って、フィールド機器100単体で、フィールド機器100自身の健全性を検証する。言い換えれば、フィールド機器100では、従来のフィールド機器において接続した機器点検端末などの外部の機器を用いることなく、健全性を検証する。なお、フィールド機器100において健全性を検証する場合でも、動作検証部61が実行している動作検証プログラムは、従来のフィールド機器において健全性を検証する場合と同様に、多くのパラメータやデータを用いて健全性を検証する。しかし、フィールド機器100では、健全性を検証する際に用いる多くのパラメータやデータは、フィールド機器100内に存在する内部のパラメータやデータである。このため、フィールド機器100では、健全性を検証するために必要な多くのパラメータやデータを、従来のフィールド機器のように通信によって外部に接続された機器点検端末に伝送する必要がない。これにより、フィールド機器100では、健全性の検証を開始してから終了するまでの時間、つまり、健全性の検証を完了するまでに要する時間を、従来のフィールド機器よりも短縮することができる。特に、フィールド機器100では、従来のフィールド機器において多くの時間を要していた多くのパラメータやデータを伝送する時間をなくすことができる。
【0050】
さらに、フィールド機器100では、健全性を検証した検証結果や、それぞれの構成要素の検証結果を、フィールド機器100に備えたメモリ7に記憶する。これにより、フィールド機器100では、メモリ7に記憶している検証結果を任意のタイミングで参照することができる。つまり、フィールド機器100では、点検作業を行った作業員以外の作業員(例えば、他のフィールド機器100の点検作業を行った作業員や、プラントにおいて設備の運転を制御する制御装置の操作者など)でも、検証結果を参照することができる。なお、検証結果を参照する場合には、メモリ7に記憶している検証結果を通信によって作業端末装置や制御装置に取り込むことも考えられる。このとき、フィールド機器100においてメモリ7に記憶している検証結果は、フィールド機器100自身で検証を行った結果のデータであるため、データ量が少ない。このため、フィールド機器100では、従来のフィールド機器において健全性を検証するために取り込む、例えば、数百バイトというようなパラメータやデータに対して、例えば、数十バイトというような十分に少ないデータ量の検証結果を通信によって作業端末装置や制御装置に取り込むのみでよくなり、通信時間が短くなる。これにより、フィールド機器100では、点検作業を行った作業員以外でも、より早く検証結果を参照することができ、プラントにおけるフィールド機器100の点検作業を効率的に行うことができる。
【0051】
次に、フィールド機器100の種類によって異なるセンサ1およびセンサドライバ回路5の構成と、模擬信号発生回路20の構成および出力する模擬計測信号の一例について説明する。
【0052】
フィールド機器100が電磁流量計である場合、センサ1は、1対の電極と、磁場を形成するための励磁コイルを含む磁気回路とによって構成される。そして、センサ1は、励磁コイルによって形成した磁界の中を導電性の液体(例えば、石油や薬品などの液体状の製品あるいは半製品)が流れることによって発生する起電力(電圧)を1対の電極によって計測し、計測した起電力の大きさ(電圧値)の電圧信号を、流れる液体の速度(流体速度)を表す計測信号としてバッファ回路2に出力する。
【0053】
また、フィールド機器100が電磁流量計である場合、センサドライバ回路5は、センサ1の磁気回路に含まれる励磁コイルによって磁場を形成するために必要な励磁電流を出力する励磁回路に相当する。
【0054】
また、フィールド機器100が電磁流量計である場合、模擬信号発生回路20は、センサドライバ回路5が励磁コイルに出力した励磁電流に同期してセンサ1を構成する1対の電極が計測する流体速度に応じた起電力の大きさを模擬した電圧値の電圧信号を、模擬計測信号として出力する。より具体的には、模擬信号発生回路20は、流体の抵抗に相当する抵抗値の抵抗を励磁コイルに挿入することによって得られる電圧値の電圧信号を生成し、さらに、生成した電圧信号を分圧回路によって予め定めた電圧値に分圧して、センサ1が計測する液体の様々な流体速度を模擬した電圧信号を生成する。そして、模擬信号発生回路20は、生成した電圧信号を、模擬計測信号として出力する。
【0055】
なお、模擬信号発生回路20は、センサ1の磁気回路に含まれるコイルに出力された励磁電流を計測する電流計測回路を備え、実際にセンサドライバ回路5が出力した励磁電流に基づいた電圧信号を生成する構成にしてもよい。また、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成するそれぞれの電極の抵抗値を計測して電磁流量計を調整(キャリブレーション)する既存の機能を利用し、それぞれの電極の抵抗値を計測する際に出力する電圧信号を模擬計測信号とする構成にしてもよい。この構成の場合、フィールド機器100のキャリブレーションを行うための電圧信号の発生回路と模擬信号発生回路20とを共通の回路にして、フィールド機器100の回路規模を削減することができる。
【0056】
フィールド機器100が渦流量計や振動式の圧力伝送器である場合、センサ1は、カルマン渦を発生させる渦発生体と、カルマン渦による圧力を計測する圧電素子などの圧力センサとによって構成される。そして、センサ1は、カルマン渦によって変化する圧力の周期(周波数)を計測し、計測した周波数の正弦波信号を、流体速度を表す計測信号としてバッファ回路2に出力する。
【0057】
また、フィールド機器100が渦流量計や振動式の圧力伝送器である場合には、フィールド機器100にはセンサドライバ回路5を備えない場合もある。
【0058】
また、フィールド機器100が渦流量計や振動式の圧力伝送器である場合、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する圧電素子などの圧力センサが計測する、カルマン渦によって変化する圧力の変化の周期(周波数)を模擬した正弦波信号を、模擬計測信号として出力する。より具体的には、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する圧力センサが計測する圧力の変化を模擬した周波数のクロック信号(矩形波信号)を、例えば、ローパスフィルタ:LPFなどのフィルタ回路を通すことによって正弦波信号を生成し、さらに、分圧回路によって生成した正弦波信号を予め定めた電圧値に分圧して、センサ1が計測する液体の様々な流体速度を模擬した正弦波信号を生成する。そして、模擬信号発生回路20は、生成した正弦波信号を、模擬計測信号として出力する。なお、圧力の変化を模擬した周波数のクロック信号(矩形波信号)は、例えば、処理部6が動作するクロック信号(不図示のクロック回路が発振した原発振クロックの信号や、原発振クロックを分周した分周クロックの信号など)を処理部6に備えた不図示のタイマ回路を利用して分周することによって生成することができる。つまり、模擬信号発生回路20は、処理部6から入力されたクロック信号(矩形波信号)に基づいて正弦波の模擬計測信号を生成することができる。なお、フィールド機器100が渦流量計や振動式の圧力伝送器である場合、圧力の変化を模擬したクロック信号(矩形波信号)の周波数は、例えば、数Hz〜数十kHzであると考えられる。
【0059】
フィールド機器100がコリオリ式流量計である場合、センサ1は、U字型の配管を振動させるマグネットコイルと、振動の位相を計測する2つの検出コイルとによって構成される。なお、マグネットコイルは、U字型の配管の中央部に配置され、2つの検出コイルのそれぞれは、U字型の配管の両端部に配置される。そして、センサ1は、2つの検出コイルのそれぞれで振動の位相を計測し、計測した位相差をもつ2つの正弦波信号(位相差信号)を、流体速度を表す計測信号としてバッファ回路2に出力する。
【0060】
また、フィールド機器100がコリオリ式流量計である場合、センサドライバ回路5は、センサ1に備えたマグネットコイルによってU字型の配管を振動させるために必要な周波数の電圧発生回路に相当する。
【0061】
また、フィールド機器100がコリオリ式流量計である場合、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する2つの検出コイルのそれぞれが計測するU字型の配管の振動の位相を模擬した2つの正弦波信号を生成し、生成したそれぞれの正弦波信号に所定の位相差を持たせた1組の位相差信号を、模擬計測信号として出力する。より具体的には、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する2つの検出コイルのそれぞれが計測する振動を模擬した周波数のクロック信号(矩形波信号)を、例えば、処理部6に備えた不図示のタイマ回路を利用して生成する。さらに詳細には、処理部6が動作するクロック信号(不図示のクロック回路が発振した原発振クロックの信号や、原発振クロックを分周した分周クロックの信号など)をタイマ回路でカウントし、カウント値が予め定めた値に達したときに波形を反転させることによって1つの矩形波信号を生成する。また、もう1つの矩形波信号は、タイマ回路のカウント値が、1つ目の矩形波信号の波形を反転したカウント値と異なる値、つまり、位相差に応じた時間をずらした値に達したときに波形を反転させることによって生成する。そして、生成した2つの矩形波信号のそれぞれを、例えば、ローパスフィルタ:LPFなどのフィルタ回路を通すことによって正弦波信号にし、さらに、分圧回路によって生成したそれぞれの正弦波信号を予め定めた電圧値に分圧して、センサ1が計測する液体の様々な流体速度を模擬した1組の位相差信号を生成する。そして、模擬信号発生回路20は、生成した1組の位相差信号を、模擬計測信号として出力する。
【0062】
フィールド機器100が超音波流量計である場合、センサ1は、超音波信号(パルス信号)を発信する発信器と、超音波信号(パルス信号)を受信する受信器とによって構成される。そして、センサ1は、超音波信号を発生したタイミングから超音波信号を受信したタイミング、つまり、超音波信号が伝搬する伝搬時間を計測し、計測した伝搬時間を表す2つのパルス信号を、流体速度を表す計測信号としてバッファ回路2に出力する。
【0063】
また、フィールド機器100が超音波流量計である場合、センサドライバ回路5は、センサ1に備えた発信器によって超音波信号を発信させる超音波発信回路に相当する。
【0064】
また、フィールド機器100が超音波流量計である場合、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する発信器が発信するパルス信号と、受信器が受信するパルス信号とのそれぞれを生成し、生成したそれぞれのパルス信号に所定の時間差を持たせた1組のパルス信号を、模擬計測信号として出力する。より具体的には、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する発信器が発信するパルス信号と、受信器が受信するパルス信号とのそれぞれを模擬した時間差のある2つのパルス信号(矩形波のパルス信号)を、例えば、処理部6に備えた不図示のタイマ回路を利用して生成する。さらに詳細には、処理部6が動作するクロック信号(不図示のクロック回路が発振した原発振クロックの信号や、原発振クロックを分周した分周クロックの信号など)をタイマ回路でカウントし、カウント値が予め定めた値を表すときにパルスが表れるパルス信号を、発信器が発信するパルス信号として生成する。また、受信器が受信するパルス信号は、タイマ回路のカウント値が、発信器が発信するパルス信号よりも後のカウント値のとき、つまり、パルス信号の伝搬時間に相当する時間だけ後にパルスが表れようにすることによって生成する。そして、生成した2つのパルス信号のそれぞれを、分圧回路によって予め定めた電圧値に分圧して、センサ1が計測する液体の様々な流体速度を模擬した1組のパルス信号を生成する。そして、模擬信号発生回路20は、生成した1組のパルス信号を、模擬計測信号として出力する。
【0065】
フィールド機器100が温度伝送器や、例えば、温度や圧力のレベル計である場合、センサ1は、温度を計測する温度センサや圧力を計測する圧力センサによって構成される。そして、センサ1は、計測した温度や圧力を表す電圧値の電圧信号を、計測信号としてバッファ回路2に出力する。
【0066】
また、フィールド機器100が温度伝送器やレベル計である場合、センサドライバ回路5は、センサ1である温度センサや圧力センサに、予め定めた電圧値の基準電圧を出力(供給)する基準電圧回路に相当する。
【0067】
また、フィールド機器100が温度伝送器やレベル計である場合、模擬信号発生回路20は、センサ1を構成する温度センサや圧力センサが計測する温度や圧力を模擬した電圧値の電圧信号を、模擬計測信号として出力する。より具体的には、模擬信号発生回路20は、基準の電圧値の電圧信号を分圧回路によって予め定めた電圧値に分圧して、センサ1が計測する温度や圧力を模擬した電圧信号を生成する。そして、模擬信号発生回路20は、生成した電圧信号を、模擬計測信号として出力する。
【0068】
このように、フィールド機器100では、フィールド機器100の種類によって、センサ1、センサドライバ回路5、および模擬信号発生回路20の構成が異なる。つまり、フィールド機器100では、フィールド機器100に備えたセンサ1の種類に応じて、適切な構成のセンサドライバ回路5や模擬信号発生回路20が備えられる。そして、フィールド機器100では、模擬信号発生回路20が出力する、フィールド機器100に備えたセンサ1が出力する計測信号を模擬した模擬計測信号を用いて、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する。このとき、フィールド機器100では、模擬信号発生回路20が、フィールド機器100に備えたセンサ1の種類に応じて、センサ1が出力する計測信号を模擬した電圧、電流、時間差、位相差、周波数などの模擬計測信号を出力する。これにより、フィールド機器100では、入力から出力まで、つまり、センサ1から出力回路10までのそれぞれの構成要素の動作を検証することができる。このことにより、フィールド機器100では、フィールド機器100の健全性の検証におけるフィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の網羅度を高めることができる。
【0069】
なお、上述したセンサ1およびセンサドライバ回路5の構成と、模擬信号発生回路20の構成および出力する模擬計測信号は一例であり、フィールド機器100の種類によって様々構成や模擬計測信号が考えられる。従って、フィールド機器100におけるセンサ1およびセンサドライバ回路5の構成と、模擬信号発生回路20の構成および出力する模擬計測信号は、上述した構成や模擬計測信号に限定されるものではない。
【0070】
次に、フィールド機器100におけるそれぞれの構成要素の動作検証の処理について説明する。
図2は、本実施形態のフィールド機器100の健全性を検証する検証処理の処理手順の一例を示したフローチャートである。
図2には、処理部6に備えた動作検証部61が、実行した動作検証プログラムに従ってフィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素を制御して動作を検証し、それぞれの構成要素の動作検証の結果(検証結果)からフィールド機器100の健全性を検証する処理の一例を示している。
図2に示した動作検証プログラムに従ったフィールド機器100の健全性の検証処理は、作業員によって操作表示部8が操作され、操作表示部8から健全性の検証を実行することを表す検証実行指示信号が入力されると、処理部6が動作検証部61を起動し、動作検証部61によって動作検証プログラムが実行されると開始される。
【0071】
そして、フィールド機器100では、動作検証プログラムに従ってフィールド機器100の健全性の検証処理を行っているときの状態(ステータス)や、健全性の最終的な検証結果などの情報を、操作表示部8に表示させて作業員に提示する。
図3は、本実施形態のフィールド機器100に備えた操作表示部8の表示の一例を示した図である。
図3には、動作検証部61が
図2に示したフィールド機器100の健全性の検証処理を行っている途中に、処理部6が操作表示部8に備えた表示部に表示させる情報の一例を示している。なお、以下の説明においては、
図2に示した動作検証部61の処理手順を、
図3に示した操作表示部8の表示の一例を参照して説明する。
【0072】
作業員が操作表示部8を操作して、フィールド機器100の動作モードを、健全性を検証する検証動作の動作モードに変更すると、処理部6は、
図3(a)に示したような、検証(Verification)モードの選択情報を操作表示部8に表示させるための表示データを生成して表示させる。
図3(a)には、状態表示領域F1に、検証モードにおける現在の状態を示し、動作指示領域F2に、選択する指示(健全性の検証の実行を指示する「Execution」、および健全性の検証の停止を指示する「Stop VF(Verification)」)を示した検証モードの選択情報の一例を示している。作業員が、
図3(a)に示した検証モードの選択情報において、動作指示領域F2に示された健全性の検証の実行(Execution)指示S1を選択すると、操作表示部8は、検証実行指示信号を処理部6に出力する。
【0073】
処理部6は、操作表示部8から健全性の検証を実行することを表す検証実行指示信号が入力されると、入力された検証実行指示信号に応じて動作検証部61を起動し、動作検証部61は、メモリ7に記憶されている動作検証プログラムを取得して(読み出して)、動作検証プログラムを実行する。動作検証部61は、動作検証プログラムを実行する、つまり、フィールド機器100の健全性を検証する検証処理を開始すると、まず、最初に動作を検証する構成要素を設定する(ステップS100)。続いて、動作検証部61は、設定した構成要素に対応する最初の検証項目を設定する(ステップS200)。
【0074】
続いて、動作検証部61は、設定した検証項目の検証を行うために必要なパラメータおよびデータを取得する(ステップS300)。なお、動作検証部61が取得する検証項目に対応したパラメータおよびデータは、例えば、処理部6に備えたレジスタなどの記憶部やメモリ7に格納されている。従って、ステップS300の処理においては、処理部6に備えたレジスタなどの記憶部やメモリ7に対するパラメータおよびデータの読み出しの制御が行われる。
【0075】
続いて、動作検証部61は、取得したパラメータおよびデータに基づいて、設定した構成要素に対応する最初の検証項目の検証を実行する(ステップS400)。そして、動作検証部61は、ステップS400の処理の結果、つまり、実行した検証項目の検証結果を、現在の日時と紐付けて記憶する(ステップS500)。なお、フィールド機器100においては、動作検証部61が実行した検証項目の検証結果を、メモリ7に記憶する。従って、ステップS500の処理においては、メモリ7に対する検証結果のデータの書き込みの制御が行われる。
【0076】
続いて、動作検証部61は、設定した構成要素に対応する全ての検証項目の検証が完了したか否かを判定する(ステップS600)。なお、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素における検証項目は、予め定められている。このため、動作検証部61は、例えば、それぞれの構成要素に対して予め定められている検証項目の数をカウントしたカウント値などに基づいて、全ての検証項目の検証が完了したか否かを判定するステップS600の処理を行うことができる。
【0077】
ステップS600の判定の結果、設定した構成要素に対応する全ての検証項目の検証が完了していない場合(ステップS600の“NO”)、動作検証部61は、ステップS200に戻って、設定した構成要素に対応する次の検証項目を設定し、ステップS300〜ステップS600の処理を繰り返す。
【0078】
一方、ステップS600の判定の結果、設定した構成要素に対応する全ての検証項目の検証が完了した場合(ステップS600の“YES”)、動作検証部61は、動作検証を行う全ての構成要素の検証が完了したか否かを判定する(ステップS700)。
【0079】
ステップS700の判定の結果、動作検証を行う全ての構成要素の検証が完了していない場合(ステップS700の“NO”)、動作検証部61は、ステップS100に戻って、次に動作を検証する構成要素を設定し、ステップS200〜ステップS700の処理を繰り返す。
【0080】
このステップS100〜ステップS700の間、処理部6は、
図3(b)に示したような、検証実行(VF(Verification) Executing)情報を操作表示部8に表示させるための表示データを生成して表示させる。
図3(b)には、状態表示領域F3に、現在動作検証を行っている構成要素などの情報を示し、状態表示領域F4に、現在の進捗度(進捗バーグラフ、および割合)の情報を示した検証実行情報の一例を示している。処理部6は、例えば、動作検証部61がステップS100またはステップS200の処理を実行するごとに、状態表示領域F3に表示する情報を、ステップS100において設定した構成要素やステップS200において設定した検証項目などの情報に更新する。また、処理部6は、例えば、動作検証部61がステップS300〜ステップS700の処理を実行している期間に、全体の検証処理に対する現在の処理の割合を算出し、状態表示領域F4に表示する進捗バーグラフや割合の情報を更新する。
【0081】
一方、ステップS700の判定の結果、動作検証を行う全ての構成要素の検証が完了した場合(ステップS700の“YES”)、動作検証部61は、検証を完了した全ての検証項目の検証結果に基づいてフィールド機器100の健全性を最終的に判定する。そして、動作検証部61は、判定した結果(検証結果)を、現在の日時と紐付けて記憶し、フィールド機器100の健全性の検証処理を完了する(ステップS800)。なお、フィールド機器100においては、動作検証部61が判定した健全性の検証結果を、メモリ7に記憶する。従って、ステップS800の処理においては、メモリ7に対する検証結果のデータの書き込みの制御が行われる。
【0082】
処理部6は、ステップS800の処理において動作検証部61が判定した検証結果を操作表示部8に表示させるための表示データを生成して表示させる。
図3(c)および
図3(d)には、処理部6が操作表示部8に表示させる検証結果(VF(Verification) Chk(Check) Result)情報の一例を示している。より具体的には、
図3(c)には、検証結果領域F5に、健全性の検証結果が「合格(Pass
ed)」であることと、検証処理を実行した日時の情報とを示した検証結果情報の一例を示している。また、
図3(d)には、検証結果領域F5に、健全性の検証結果が「不合格(Failed)」であることと、検証処理を実行した日時の情報とを示し、メッセージ領域F6に、詳細な情報の表示を促すメッセージを示した検証結果情報の一例を示している。ここで、作業員が、
図3(d)に示した不合格の検証結果情報において、メッセージ領域F6に示されたメッセージを選択すると、操作表示部8は、メッセージ領域F6が作業員によって選択されたことを表す情報を処理部6に出力する。これにより、処理部6は、ステップS500の処理において動作検証部61がメモリ7に記憶させたそれぞれの構成要素におけるそれぞれの検証項目ごとの検証結果を、操作表示部8に順次表示させるための表示データを生成して表示させる。
【0083】
このような処理によって、フィールド機器100では、処理部6に備えた動作検証部61が、実行した動作検証プログラムに従って、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作検証と、フィールド機器100の健全性の検証とを行い、最終的な健全性の検証結果を作業員に提示する。このとき、フィールド機器100では、それぞれの構成要素の動作の検証結果と、フィールド機器100の健全性の検証結果とを、メモリ7に記憶している。これにより、フィールド機器100では、メモリ7に記憶している検証結果を、点検作業を行った作業員以外の作業員でも任意のタイミングで参照することができる。このとき、検証結果を参照する作業員は、プラント内に専用に構築された通信ネットワークによる通信によってメモリ7に記憶している検証結果を取得して参照することができる。しかも、フィールド機器100では、メモリ7に記憶している検証結果はデータ量が少ないデータであるため、検証結果を参照する作業員は、短い通信時間で検証結果を取得することができる。
【0084】
ここで、
図1に示したそれぞれの構成要素の動作の検証方法の一例について説明する。
図1に示したフィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作の検証は、例えば、以下に示すような順番で行う。
【0085】
(動作検証1):センサ1が出力した計測信号が入力され、計測信号に応じたデジタル信号を出力するまでの経路に含まれる、つまり、バッファ回路2〜A/D変換回路4までの構成要素で構成される、センサ1に対応したアナログ系回路の動作検証を行う。
(動作検証2):センサ1の動作検証を行う。
(動作検証3):デジタル計測信号に対して演算処理を行う処理部6を含むデジタル系回路の動作検証を行う。
(動作検証4):操作表示部8の動作検証を行う。
(動作検証5):処理部6が演算処理した後のデジタル信号を出力する経路に含まれる、つまり、D/A変換回路9および出力回路10で構成される、出力系回路の動作検証を行う。
(動作検証6):フィールド機器100の外部から入力された入力信号に応じたデジタル信号を処理部6に出力する経路に含まれる、つまり、入力回路11およびA/D変換回路12で構成される、入力系回路の動作検証を行う。
【0086】
最初に、動作検証1における、アナログ系回路の動作の検証方法について説明する。アナログ系回路の動作検証では、模擬信号発生回路20が出力する模擬計測信号を利用して、センサ1が出力した計測信号をデジタル計測信号に変換する処理の精度などについて検証する。より具体的には、処理部6に備えた動作検証部61が、模擬信号発生回路20に、フィールド機器100に備えたセンサ1が計測信号として出力する電圧、電流、時間差、位相差、周波数などを模擬した1種類もしくは複数種類の模擬計測信号を生成させ、生成した模擬計測信号を、信号切り替えスイッチ21を介してバッファ回路2に入力させる。そして、動作検証部61は、A/D変換回路4から出力されたデジタル計測信号が表す、模擬計測信号の信号レベルの大きさに対応したデジタル値と、模擬信号発生回路20に出力させた模擬計測信号によって想定されるデジタル値とを比較し、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が、想定されるデジタル値に対して予め定めたデジタル値の範囲、つまり、予め定めた閾値内であるか否かを判定する。この判定の結果、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内である場合には、アナログ系回路におけるデジタル計測信号への変換精度は正常であると判断して、アナログ系回路の動作検証の結果を「合格」とする。一方、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内でない場合には、アナログ系回路におけるデジタル計測信号への変換精度は異常であると判断して、アナログ系回路の動作検証の結果を「不合格」とする。
【0087】
続いて、動作検証2における、センサ1の動作の検証方法について説明する。センサ1の動作検証では、センサ1の回路内の断線やショートなどについて検証する。センサ1の動作検証では、例えば、センサ1に対して直流信号もしくは交流信号(以下、「検証信号」という)を印加し、印加した検証信号によって得られた信号から、センサ1の絶縁抵抗値や静電容量値など、センサ1の動作の良否を検証する測定を行う。より具体的には、動作検証部61は、センサドライバ回路5に、検証信号をセンサ1に印加させる。これにより、センサ1からは、検証信号に応じた信号が計測信号として出力される。そして、動作検証部61は、A/D変換回路4から出力されたデジタル計測信号が表す、検証信号に応じた信号の信号レベルの大きさに対応したデジタル値と、センサドライバ回路5に印加させた検証信号によって想定されるデジタル値とを比較し、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が、想定されるデジタル値に対して予め定めたデジタル値の範囲(閾値)内であるか否かを判定する。なお、この判定の結果に基づいたセンサ1の動作の正常または異常の判断は、動作検証1におけるアナログ系回路の動作検証と同様である。つまり、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内である場合には、センサ1の動作は正常であると判断して動作検証の結果を「合格」とし、A/D変換回路4から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内でない場合には、センサ1の動作は異常であると判断して動作検証の結果を「不合格」とする。なお、動作検証2、つまり、センサ1の回路内の断線やショートの検証は、センサドライバ回路5が出力するセンサ1の駆動信号の信号レベルを確認することによって行ってもよい。
【0088】
続いて、動作検証3における、デジタル系回路の動作の検証方法について説明する。デジタル系回路の動作検証では、処理部6に備えた不図示のウォッチドッグタイマ回路による処理部6の異常動作(処理の暴走)や、記憶部の記録異常(ビットエラーなど)について検証する。例えば、動作検証部61は、処理部6が計測動作を行う場合に利用するタイマ回路の動作タイミングを、処理部6に備えた他のタイマ回路で時間を計測し、計測した時間を確認することによって、処理部6が行う処理のタイミングを検出してもよい。なお、動作検証3、つまり、処理部6を含むデジタル系回路の動作検証において、処理部6の異常動作や記憶部の記録異常の検出方法は、上述した方法に限定されるものではなく、既存の検出技術を利用した様々な方法が考えられる。
【0089】
続いて、動作検証4における、操作表示部8の動作の検証方法について説明する。操作表示部8の動作検証では、操作表示部8に備えた表示部の寿命などについて検証する。表示部の寿命は、一般的に温度と稼働時間とによって算出することができる。例えば、動作検証部61は、フィールド機器100に備えた温度計測機能によって計測した温度と、フィールド機器100に備えた時計機能によって計測した稼働時間とに基づいて、表示部の寿命を算出(予想)する。そして、動作検証部61は、算出した表示部の寿命と、予め定めた表示部の寿命時間とを比較し、算出した表示部の寿命が予め定めた表示部の寿命時間を超えているか否かを判定する。この判定の結果、算出した表示部の寿命が予め定めた表示部の寿命時間を超えていない場合には、操作表示部8に備えた表示部の表示は正常であると判断して、操作表示部8の動作検証の結果を「合格」とし、算出した表示部の寿命が予め定めた表示部の寿命時間を超えている場合には、操作表示部8に備えた表示部の表示は異常になる可能性が高いと判断して、操作表示部8の動作検証の結果を「不合格」とする。
【0090】
続いて、動作検証5における、出力系回路の動作の検証方法について説明する。出力系回路の動作検証では、A/D変換回路13を利用して、処理部6が出力したデジタル信号に応じた出力信号(アナログ信号)が正しくフィールド機器100の外部に出力されるかなどについて検証する。つまり、出力系回路の動作検証では、出力系回路が出力する直流アナログ信号の範囲(例えば、4mA〜20mAの範囲)について検証する。より具体的には、処理部6に備えた動作検証部61が、不図示のスイッチを制御して、出力回路10が出力する出力信号をA/D変換回路13に入力させるように制御する。そして、動作検証部61は、出力系回路によって出力させる直流アナログ信号の大きさに相当するデジタル値の疑似的なデジタル信号をD/A変換回路9に出力する。これにより、出力回路10からは、動作検証部61が出力したデジタル信号に応じた直流アナログ信号が出力され、この直流アナログ信号がA/D変換回路13に入力される。そして、A/D変換回路13は、出力回路10から入力された直流アナログ信号(出力信号)をアナログデジタル変換して、直流アナログ信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を処理部6に出力する。つまり、動作検証5における出力系回路の動作検証では、動作検証部61が出力した疑似的なデジタル信号が、D/A変換回路9、出力回路10、およびA/D変換回路13を通って、動作検証部61に戻ってくる。そして、動作検証部61は、A/D変換回路13から出力されたデジタル信号のデジタル値と、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値とを比較し、A/D変換回路13から出力されたデジタル値が、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値と同じデジタル値であるか否かを判定する。この判定の結果、それぞれのデジタル値が同じデジタル値である場合には、出力系回路が出力する直流アナログ信号は正常であると判断して動作検証の結果を「合格」とし、それぞれのデジタル値が同じデジタル値でない、つまり、異なるデジタル値である場合には、出力系回路が出力する直流アナログ信号は異常であると判断して動作検証の結果を「不合格」とする。
【0091】
なお、動作検証5における出力系回路の動作検証において動作検証部61は、A/D変換回路13から出力されたデジタル値が、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値に対して予め定めたデジタル値の範囲(閾値)内であるか否かを判定する構成であってもよい。この場合、動作検証部61は、A/D変換回路13から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内である場合には、出力系回路の動作検証の結果を「合格」とし、A/D変換回路13から出力されたデジタル値が予め定めた閾値内でない場合には、出力系回路の動作検証の結果を「不合格」とする。また、動作検証5における出力系回路の動作検証では、例えば、出力回路10内または外部に、予め定めた抵抗値の抵抗を出力信号に直列に接続する構成を設け、抵抗の電圧を測定することによって正しい電流値の直流アナログ信号であるか否かを判定する構成であってもよい。
【0092】
続いて、動作検証6における、入力系回路の動作の検証方法について説明する。入力系回路の動作検証では、出力系回路を利用して、フィールド機器100の外部から入力された入力信号(アナログ信号)を正しく受け取ることができるかなどについて検証する。つまり、入力系回路の動作検証では、入力系回路に入力される直流アナログ信号の範囲(例えば、4mA〜20mAの範囲)について検証する。より具体的には、処理部6に備えた動作検証部61が、不図示のスイッチを制御して、出力回路10が出力する出力信号を入力回路11に入力させるように制御する。そして、動作検証部61は、出力系回路によって出力させる直流アナログ信号の大きさに相当するデジタル値の疑似的なデジタル信号をD/A変換回路9に出力して、出力回路10から動作検証部61が出力したデジタル信号に応じた直流アナログ信号を出力させる。これにより、入力回路11には、出力回路10が出力した、動作検証部61が出力したデジタル信号に応じた直流アナログ信号が入力され、この直流アナログ信号がA/D変換回路12に出力される。そして、A/D変換回路12は、入力回路11から出力された直流アナログ信号(入力信号)をアナログデジタル変換して、直流アナログ信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を処理部6に出力する。つまり、動作検証6における入力系回路の動作検証では、動作検証部61が出力した疑似的なデジタル信号が、D/A変換回路9、出力回路10、入力回路11、およびA/D変換回路12を通って、動作検証部61に戻ってくる。そして、動作検証部61は、A/D変換回路12から出力されたデジタル信号のデジタル値と、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値とを比較し、A/D変換回路12から出力されたデジタル値が、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値と同じデジタル値であるか否かを判定する。なお、この判定の結果に基づいた入力系回路の動作の正常または異常の判断は、動作検証5における出力系回路の動作検証と同様である。つまり、A/D変換回路12から出力されたデジタル信号のデジタル値と、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値とが同じデジタル値である場合には、入力系回路の動作は正常であると判断して動作検証の結果を「合格」とし、それぞれのデジタル値が異なるデジタル値である場合には、入力系回路の動作は異常であると判断して動作検証の結果を「不合格」とする。
【0093】
なお、動作検証6における入力系回路の動作検証では、上述したように、動作検証部61に戻ってきた疑似的なデジタル信号によって動作検証を行っているため、出力系回路の動作検証も同時に行っていると考えることもできる。このため、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作検証を行う順番を変更してもよい。より具体的には、動作検証6における入力系回路の動作検証を先に行い、その後、動作検証5における出力系回路の動作検証を行うように順番を変更してもよい。これにより、動作検証6において入力系回路の動作検証が終了した時点で、出力系回路の動作検証も終了していることになる。なお、動作検証6における入力系回路の動作検証の結果が「不合格」であった場合に、その原因が入力系回路であるか出力系回路であるかを切り分けるために、動作検証5における出力系回路の動作検証を行うようにしてもよい。つまり、動作検証6における入力系回路の動作検証の結果が「合格」であった場合には、動作検証5における出力系回路の動作検証を行わないようにしてもよい。
【0094】
なお、動作検証6における入力系回路の動作検証においても、動作検証5における出力系回路の動作検証と同様に、A/D変換回路12から出力されたデジタル信号のデジタル値が、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値に対して予め定めたデジタル値の範囲(閾値)内であるか否かを判定する構成であってもよい。また、動作検証6における入力系回路の動作検証では、例えば、入力回路11内または外部に、予め定めた電圧値の基準電圧を入力信号に接続する構成を設け、基準電圧に応じたデジタル値のデジタル信号がA/D変換回路12から出力されるか否かを判定する構成であってもよい。
【0095】
なお、フィールド機器100が、
図1に示したように、出力系回路と入力系回路とを備えた構成である場合には、動作検証5における出力系回路の動作検証と、動作検証6における入力系回路の動作検証とを、通信ネットワークによってフィールド機器100に接続された制御装置などのフィールド機器100の外部の装置を利用して行ってもよい。より具体的には、フィールド機器100は、動作検証部61が出力した疑似的なデジタル信号に応じた出力信号(直流アナログ信号)を、出力回路10から外部の装置に出力し、外部の装置は、受け取った出力信号を表す入力信号(直流アナログ信号)をフィールド機器100の入力回路11に入力させる。そして、動作検証部61は、出力した疑似的なデジタル信号のデジタル値と、A/D変換回路12から出力されたデジタル値とを比較することによって、出力系回路の動作検証と入力系回路の動作検証とを行う。
【0096】
また、フィールド機器100では、不図示の電源回路の動作検証(例えば、電源回路が出力する電圧値など)を行うことも考えられる。電源回路の動作検証では、例えば、電源回路の一次側もしくは二次側の電源の電圧値を、不図示のA/D変換回路によってデジタル値に変換し、変換したデジタル値が予め定めたデジタル値の範囲、つまり、予め定めた電圧値の閾値内であるか否かを判定する。また、電源回路の動作検証では、例えば、電源回路の一次側もしくは二次側の電源の電圧値を、不図示の比較回路(コンパレータ)によって予め定めた範囲(閾値)内の電圧値のであるか否かを判定する。なお、電源回路の動作検証は、動作検証1におけるアナログ系回路の動作検証よりも先に行ってもよい。
【0097】
このような構成および処理によって、フィールド機器100では、処理部6に備えた動作検証部61が実行した動作検証プログラムに従って、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素の動作検証を行い、それぞれの構成要素の動作検証の結果に基づいて、フィールド機器100の健全性を最終的に判定(検証)する。そして、フィールド機器100では、最終的な健全性の検証結果を作業員に提示する。また、フィールド機器100では、実施した動作検証の結果(検証結果)を含めて、様々な検証結果をメモリ7に記憶することによって、点検作業を行った作業員以外の作業員でも、任意のタイミングでメモリ7に記憶している検証結果を参照することができる。
【0098】
なお、フィールド機器100におけるそれぞれの構成要素の動作検証は、フィールド機器100を出荷するとき、フィールド機器100を設備に最初に設置(計装)したとき、フィールド機器100を運用している状態での定期的な点検のときなど、様々な段階(タイミング)で実施することができる。そして、フィールド機器100では、上述したように、それぞれの段階ごとの検証結果(検査データ、確認データ、点検データ、保全データ)をメモリ7に記憶しておく。これにより、フィールド機器100では、今回実施した動作検証の結果が、それぞれ構成要素の動作に対して予め定めた規定値(例えば、それぞれ構成要素における規格の値など)に収まっているか否かの検証以外にも、今回実施した動作検証の結果とメモリ7に記憶されている検証結果とを比較することによって、フィールド機器100の健全性を検証することができる。
【0099】
例えば、フィールド機器100の出荷時に実施した検査データと今回実施した動作検証の結果とのズレ量が、予め定めた範囲内に収まっているか否かを検証することによって、フィールド機器100の健全性を検証することができる。また、例えば、フィールド機器100の最初の設置(計装)時に実施した確認データと今回実施した動作検証の結果とのズレ量が、予め定めた範囲内に収まっているか否かを検証することによって、フィールド機器100の健全性を検証することができる。また、例えば、フィールド機器100が運用されているときの前回の点検作業で実施した点検データと今回の点検作業で実施した動作検証の結果とのズレ量が、予め定めた範囲内に収まっているか否かを検証することによって、フィールド機器100の健全性を検証することができる。
【0100】
なお、フィールド機器100では、上述した、予め定めた規定値に基づいた健全性の検証、出荷時の検査データに基づいた健全性の検証、最初の設置(計装)時の確認データに基づいた健全性の検証、前回の点検作業で実施した点検データに基づいた健全性の検証などの様々な検証を全て実施してもよいが、いずれか1つまたは複数の健全性の検証を実施してもよい。例えば、出荷時の検査データに基づいた健全性の検証と、最初の設置(計装)時の確認データに基づいた健全性の検証との両方を実施することによって、フィールド機器100に備えたそれぞれの構成要素における劣化の状態や劣化の進み具合を、予め定めた規定値に基づいた健全性の検証において不合格となってしまう前に検証することができる。これにより、フィールド機器100が、保守(メンテナンス)が必要であることを表す警告を事前に作業員に通知する構成にすることもできる。このことにより、フィールド機器100の保守(メンテナンス)を、事前に行うことができる。
【0101】
また、一般的に、センサ、A/D変換回路、D/A変換回路、および出力回路では、出力する信号に対して、例えば、リニアリティを補正するための補正係数を適用した補正が行われる。ここで、フィールド機器100では、出荷時の検査データに基づいた健全性の検証や、最初の設置(計装)時の確認データに基づいた健全性の検証など、つまり、以前の状態からのズレ量を検証することができる。このため、フィールド機器100では、ズレ量の検証結果に基づいて新たな補正係数を算出し、算出した新たな補正係数をそれぞれの構成要素が信号を出力する際に適用する補正係数として採用(設定)する構成にすることもできる。このことにより、フィールド機器100では、設置されている設備が稼働しているときの動作状態を、より正確に計測することができる。
【0102】
なお、フィールド機器100におけるそれぞれの構成要素の動作検証は、通常、設置されている設備をフィールド機器100が制御していない状態のとき行うことが望ましい。しかしながら、フィールド機器100におけるそれぞれの構成要素の動作検証を、設備を制御している状態で行いたい場合もある。この場合には、例えば、模擬信号発生回路20が出力する模擬計測信号を利用したアナログ系回路の動作検証など、フィールド機器100における通常の計測動作を阻害してしまう可能性がある動作検証を省略して、簡易的にそれぞれの構成要素の動作検証を行うことが望ましい。また、例えば、フィールド機器100における通常の計測動作において、予め定めた時間間隔で間欠的に設備の制御を行っている場合には、センサ1によってフィールド機器100が設備の制御するための通常の計測動作を行っていない期間やタイミングのときに、模擬信号発生回路20を利用したアナログ系回路の動作検証を行うようにしてもよい。この場合、例えば、アナログ系回路の動作を検証するそれぞれの検証項目を、通常の計測動作を行っていない複数の期間に分けて行う、つまり、フィールド機器100における通常の計測動作とアナログ系回路の動作検証とを、交互に行うようにしてもよい。
【0103】
<フィールド機器の具体例>
次に、それぞれの構成要素の動作検証を行うフィールド機器100の具体的な一例について説明する。
図4は、本実施形態のフィールド機器100の具体例の概略構成を示したブロック図である。
図4には、フィールド機器100が電磁流量計である場合における概略構成を示している。以下の説明においては、
図4に示したフィールド機器100を、「電磁流量計110」という。電磁流量計110は、
図1に示したフィールド機器100に対応する構成要素を含んで構成される。従って、以下の説明においては、電磁流量計110の構成要素において、
図1に示したフィールド機器100に対応する構成要素に同一の符号を付与して説明する。なお、
図4においては、電磁流量計110におけるアナログ系回路およびセンサ1の動作検証、つまり、上述した動作検証1および動作検証2に関連する構成要素のみを示し、その他の構成要素は省略している。
【0104】
電磁流量計110は、プラントに配置された配管に設置され、設置されている配管の中を流れる導電性の液体の流量(流体速度)を計測し、計測した流量を表す出力信号(直流アナログ信号)を、制御装置などの電磁流量計110の外部に出力する。電磁流量計110は、電極1Aおよび電極1Bと、バッファ回路2Aおよびバッファ回路2Bと、差動増幅回路31と、流量信号A/D変換回路41と、電極抵抗信号A/D変換回路42Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Bと、励磁回路51と、処理部6と、クロック回路62と、交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bとを含んで構成される。また、処理部6は、分周回路611を含んで構成される。
【0105】
励磁回路51は、センサ1の磁気回路に含まれる励磁コイルに磁場を形成させるために必要な励磁電流を出力する励磁回路である。励磁回路51は、処理部6に備えた動作検証部61(不図示)から入力された制御信号に応じて、処理部6に備えた分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいた励磁電流を、励磁コイルに出力する。
【0106】
電極1Aおよび電極1Bは、センサ1を構成する1対の電極のいずれか一方の電極が接続される電極である。従って、電極1Aと電極1Bとのそれぞれは、センサ1を構成する1対の電極に相当する。電極1Aと電極1Bとのそれぞれには、センサ1が計測した液体の流量に応じた電圧値の電圧信号、つまり、励磁回路51が出力した励磁電流に応じて励磁コイルが形成した磁界の中を流れる液体によって発生した起電力の大きさの電圧信号が、計測信号として出力される。
【0107】
バッファ回路2Aおよびバッファ回路2Bは、対応する電極1Aまたは電極1Bにセンサ1から出力された計測信号を、差動増幅回路31、電極抵抗信号A/D変換回路42A、および電極抵抗信号A/D変換回路42Bのそれぞれに受け渡すための緩衝回路である。バッファ回路2Aとバッファ回路2Bとのそれぞれは、フィールド機器100におけるバッファ回路2に相当する。
【0108】
差動増幅回路31は、バッファ回路2Aとバッファ回路2Bとのそれぞれから出力されたそれぞれの計測信号の差分をとり、さらに差分をとった計測信号の信号レベルを増幅し、アナログ計測信号として出力する。差動増幅回路31がそれぞれの計測信号の差分をとることによって、電磁流量計110では、センサ1が計測した計測信号に含まれる同相のノイズ成分を除去することができる。差動増幅回路31は、フィールド機器100における増幅・帯域制限回路3に相当する。
【0109】
流量信号A/D変換回路41は、差動増幅回路31から出力されたアナログ計測信号(アナログ信号)をアナログデジタル変換したデジタル計測信号を、処理部6に出力する。流量信号A/D変換回路41が出力したデジタル計測信号は、電磁流量計110が通常の計測動作において計測した計測信号として、制御装置などの電磁流量計110の外部に出力され、電磁流量計110が設置されている設備の運転を制御するために用いられる。また、流量信号A/D変換回路41が出力したデジタル計測信号は、電磁流量計110におけるアナログ系回路およびセンサ1の動作検証にも用いられる。
【0110】
電極抵抗信号A/D変換回路42Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Bは、対応するバッファ回路2Aまたはバッファ回路2Bから出力された計測信号(アナログ信号)を、処理部6に備えた分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいたタイミングでアナログデジタル変換し、センサ1のそれぞれの端子から出力された計測信号の信号レベル(電圧値)の大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を、処理部6に出力する。また、電極抵抗信号A/D変換回路42Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Bは、対応する交流定電流回路20Aまたは交流定電流回路20Bから出力された交流電流信号(アナログ信号)を、処理部6に備えた分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいたタイミングでアナログデジタル変換し、交流電流信号の信号レベル(電流値)の大きさに応じたデジタル値のデジタル信号を、処理部6に出力する。電極抵抗信号A/D変換回路42Aと電極抵抗信号A/D変換回路42Bとのそれぞれが出力したデジタル信号は、電磁流量計110におけるアナログ系回路およびセンサ1の動作検証に用いられる。
【0111】
電磁流量計110においては、流量信号A/D変換回路41、電極抵抗信号A/D変換回路42A、および電極抵抗信号A/D変換回路42Bのそれぞれが、フィールド機器100におけるA/D変換回路4に相当する。
【0112】
クロック回路62は、クロックを発振し、発振したクロックの信号を、処理部6が動作するクロック信号として処理部6に供給する。なお、クロック回路62が処理部6に供給するクロック信号は、発振した原発振クロックの信号や、原発振クロックを分周した分周クロックの信号など、複数のクロック信号であってもよい。
【0113】
処理部6は、クロック回路62から供給されたクロック信号に基づいて動作し、電磁流量計110に備えたそれぞれの構成要素を制御する。また、処理部6は、電磁流量計110に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証し、健全性を判定する。
図4に示した電磁流量計110では、フィールド機器100における動作検証部61に相当する構成要素の一部として、処理部6に備える分周回路611を示している。なお、電磁流量計110において処理部6に備える動作検証部61は、分周回路611のみによって構成されるものではなく、処理部6に備える不図示の構成要素、つまり、動作検証プログラムを実行する種々の構成要素(回路要素、機能要素、処理要素)を含んで構成される。
【0114】
分周回路611は、クロック回路62から入力されたクロック信号を分周し、分周したクロック信号に基づいたタイミング信号を、励磁回路51と、電極抵抗信号A/D変換回路42Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Bと、交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bとのそれぞれに出力する。
【0115】
交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bは、処理部6に備えた動作検証部61(不図示)から入力された制御信号に応じて、処理部6に備えた分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいた定電流の交流信号を、対応する電極1Aまたは電極1Bと、流れる液体の流量を測定する配管、すなわち、設置されている配管との間に、定電流の交流信号を出力する。つまり、交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bは、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号に応じた電流値の電流を、対応する電極1Aまたは電極1Bと、配管(接地レベル)との間に出力する(流す)。交流定電流回路20Aと交流定電流回路20Bとのそれぞれは、フィールド機器100における模擬信号発生回路20に相当する。
【0116】
電磁流量計110では、交流定電流回路20Aまたは交流定電流回路20Bが定電流を出力しているときにセンサ1が計測して電極1Aと電極1Bとのそれぞれに出力した計測信号(電圧信号)に基づいて、電極1Aおよび電極1Bを検証する。
【0117】
ここで、電磁流量計110における電極1Aおよび電極1Bの検証方法の一例について説明する。なお、電極1Aおよび電極1Bの検証は、電磁流量計110において実施するセンサ1の動作検証(動作検証2)に含まれる1つの検証項目である。なお、以下の説明においては、励磁回路51が、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号に応じて、分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいた励磁電流を、励磁コイルに出力しているものとして説明する。また、以下の説明においては、説明を容易にするため、処理部6が動作検証プログラムを実行してセンサ1の動作検証を行うものとして説明する。
【0118】
電極1Aおよび電極1Bの検証では、まず、基準の電流値の交流電流(以下、「基準電流」という)を流したときにセンサ1が計測した計測信号に基づいて、それぞれの電極と配管(接地レベル)との間における流れる液体の抵抗値(以下、「基準抵抗値」という)を算出する。続いて、基準電流と異なる電流値の交流電流(以下、「測定電流」という)を流したときにセンサ1が計測した計測信号に基づいて、それぞれの電極と配管(接地レベル)との間における流れる液体の抵抗値(以下、「測定抵抗値」という)を算出する。その後、交流電流の比率と、計測信号の比率または抵抗値の比率とを比較し、それぞれの比率の差、つまり、比率のずれの大きさに基づいて、それぞれの電極が正常であるか異常であるかを判断(判定)する。
【0119】
最初に、電極1Aを検証する場合についてより具体的に説明する。まず、交流定電流回路20Aは、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号によって設定された基準の電流値で、分周回路611から出力されたタイミング信号の周期の基準電流(以下、「基準電流Ia1」という)を、対応する電極1Aと配管との間に出力する(流す)。これにより、電極1Aには、配管の中を流れる液体によって発生した基準電流Ia1に対応した起電力の大きさ(電圧値、以下「電圧値Va1」という)の計測信号(電圧信号)が、センサ1から出力される。そして、バッファ回路2Aは、センサ1から電極1Aに出力された計測信号を電極抵抗信号A/D変換回路42Aに出力し、電極抵抗信号A/D変換回路42Aは、バッファ回路2Aから出力された計測信号の信号レベルの大きさに応じたデジタル信号を処理部6に出力する。また、電極抵抗信号A/D変換回路42Aは、交流定電流回路20Aが出力した基準電流Ia1の電流値に応じたデジタル信号を処理部6に出力する。これにより、処理部6は、電極抵抗信号A/D変換回路42Aが出力したそれぞれのデジタル信号が表す、基準電流Ia1の電流値と、計測信号の信号レベル(つまり、電圧値Va1)とに基づいて、基準電流Ia1を出力した(流した)ときの電極1Aと配管(接地レベル)との間における流れる液体の基準抵抗値(以下、「基準抵抗値Ra1」という)を算出する。なお、基準抵抗値Ra1を算出する場合には、一般的に、センサ1、バッファ回路2A、および電極抵抗信号A/D変換回路42Aに対して行うリニアリティの補正を事前に適用した後に算出することが望ましい。
【0120】
続いて、交流定電流回路20Aは、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号によって設定された基準電流Ia1と異なる電流値で、分周回路611から出力されたタイミング信号の周期の測定電流(以下、「測定電流Ia2」という)を、対応する電極1Aと配管との間に出力する(流す)。これにより、電極1Aには、基準電流Ia1を出力した(流した)ときと同様に、配管の中を流れる液体によって発生した測定電流Ia2に対応した起電力の大きさ(電圧値、以下「電圧値Va2」という)の計測信号(電圧信号)が、センサ1から出力される。そして、バッファ回路2Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Aは、基準電流Ia1を出力した(流した)ときと同様に動作して、電圧値Va2を表すデジタル信号を処理部6に出力する。また、電極抵抗信号A/D変換回路42Aは、交流定電流回路20Aが出力した測定電流Ia2の電流値に応じたデジタル信号を処理部6に出力する。これにより、処理部6は、電極抵抗信号A/D変換回路42Aが出力したそれぞれのデジタル信号が表す、測定電流Ia2の電流値と、電圧値Va2とに基づいて、測定電流Ia2を出力した(流した)ときの電極1Aと配管(接地レベル)との間における流れる液体の測定抵抗値(以下、「測定抵抗値Ra2」という)を算出する。なお、測定抵抗値Ra2を算出する場合も、基準抵抗値Ra1を算出する場合と同様に、センサ1、バッファ回路2A、および電極抵抗信号A/D変換回路42Aに対して行うリニアリティの補正を事前に適用した後に算出することが望ましい。
【0121】
その後、処理部6は、基準電流Ia1の電流値と測定電流Ia2の電流値との比率を下式(1)によって算出する。また、処理部6は、電圧値Va1と電圧値Va2との比率を下式(2)によって算出する。
【0122】
Ia = Ia1/Ia2 ・・・(1)
Va = Va1/Va2 ・・・(2)
【0123】
上式(1)において、Iaは、交流定電流回路20Aが出力した定電流の交流信号の電流値の割合(以下、「電流値割合」という)を表す。また、上式(2)において、Vaは、それぞれの定電流の交流信号に対応して発生した起電力の大きさ(電圧値)の割合(以下、「電圧値割合」という)を表す。そして、処理部6は、電流値割合Iaと電圧値割合Vaとの差が、予め定めた割合のずれの閾値内であるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて電極1Aが正常であるか否かを判断(判定)する。例えば、電流値割合Iaと電圧値割合Vaとの差が、例えば、2%以内である場合には、電極1Aは正常であると判断し、2%を超えている場合には、電極1Aは異常であると判断する。
【0124】
上述した電極1Aが正常であるか否かの判断では、上式(1)によって算出した電流値割合Iaと、上式(2)によって算出した電圧値割合Vaとの差を、予め定めた割合のずれの閾値に基づいて行う場合について説明した。しかし、電極1Aが正常であるか否かを判断する方法は、上述した方法に限定されるものではない。例えば、基準抵抗値Ra1と測定抵抗値Ra2とを比較し、基準抵抗値Ra1と測定抵抗値Ra2との差が、予め定めた抵抗値のずれの閾値内であるか否かによって、電極1Aが正常であるか否かを判断してもよい。これは、基準抵抗値Ra1と測定抵抗値Ra2とは、電極1Aと配管(接地レベル)との間における同じ液体の流れを、交流電流の電流値を変えて、つまり、基準電流Ia1を出力した(流した)ときと測定電流Ia2を出力した(流した)ときで計測したそれぞれの計測信号に基づいて算出した抵抗値である。このため、電極1Aが正常である場合には、基準抵抗値Ra1と測定抵抗値Ra2とは、同じ値であることが予想される。従って、基準抵抗値Ra1と測定抵抗値Ra2との差が大きい場合には、電極1Aが異常であると判断することができるからである。
【0125】
なお、上述した電極1Aの検証では、基準電流Ia1と測定電流Ia2との2つの電流を電極1Aと配管との間に出力する(流す)ことによって、電極1Aが正常であるか否かを判断する場合について説明した。しかし、さらに、測定電流Ia2の電流値を順次異なる電流値にして電極1Aと配管との間に出力し(流し)、センサ1から出力された計測信号(電圧信号)に基づいてそれぞれの測定電流Ia2に対応した測定抵抗値Ra2を順次算出することによって、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを判定することもできる。これにより、電磁流量計110においてセンサ1、バッファ回路2A、および電極抵抗信号A/D変換回路42Aに対して行うリニアリティの補正係数を更新することもできる。なお、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを判定する場合には、交流定電流回路20Aが出力する(流す)測定電流Ia2の電流値を変更する間隔に、十分な時間を確保しておくことが望ましい。これにより、今回出力する電流値の測定電流Ia2に応じてセンサ1から出力される計測信号(電圧値Va2)に、前回出力した異なる電流値の測定電流Ia2の影響が及ばないようにする、つまり、それぞれの測定電流Ia2における電圧値Va2の計測のばらつきを抑えることができる。このことにより、処理部6は、センサ1が安定した状態で計測した計測信号(電圧値Va2)を得ることができ、より正確な電極1Aの測定抵抗値Ra2を算出することができる。
【0126】
次に、電極1Bを検証する場合についてより具体的に説明する。電極1Bの検証は、上述した電極1Aの検証と同様に考えることができる。つまり、交流定電流回路20Bが対応する電極1Bと配管との間に、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号によって設定された基準の電流値で、分周回路611から出力されたタイミング信号の周期の基準電流(以下、「基準電流Ib1」という)を出力する(流す)。そして、センサ1から電極1Bに出力された電圧値(以下「電圧値Vb1」という)の計測信号(電圧信号)に基づいて、基準電流Ib1を出力した(流した)ときの電極1Bと配管(接地レベル)との間における流れる液体の基準抵抗値(以下、「基準抵抗値Rb1」という)を算出する。また、交流定電流回路20Bが対応する電極1Bと配管との間に基準電流Ib1と異なる電流値の測定電流(以下、「測定電流Ib2」という)を出力する(流す)。そして、センサ1から電極1Bに出力された電圧値(以下「電圧値Vb2」という)の計測信号(電圧信号)に基づいて、測定電流Ib2を出力した(流した)ときの電極1Bと配管(接地レベル)との間における流れる液体の測定抵抗値(以下、「測定抵抗値Rb2」という)を算出する。その後、処理部6が、基準電流Ib1の電流値と測定電流Ib2の電流値との比率(以下、「電流値割合Ib」という、Ib = Ib1/Ib2)、および電圧値Vb1と電圧値Vb2との比率(以下、「電圧値割合Vb」という、Vb = Vb1/Vb2)をそれぞれ算出し、電流値割合Ibと電圧値割合Vbとの差が、予め定めた割合のずれの閾値内であるか否かによって、電極1Bが正常であるか異常であるかを判断(判定)する。
【0127】
このように、電磁流量計110では、電極1Aと電極1Bとのそれぞれを検証することができる。また、電磁流量計110では、電極1Aと電極1Bとのそれぞれを検証する際に計測した計測信号(電圧信号)や、算出した抵抗値に基づいて、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを容易に判定することもできる。しかも、電磁流量計110では、電極1Aの検証と電極1Bの検証とを別々に行うことができるため、電極1Aと電極1Bとのそれぞれで、電極の異常や、計測信号のリニアリティを検証し、電磁流量計110の健全性を判定することができる。また、電磁流量計110では、配管の中を流れる液体の種類によらず、つまり、液体の導電率によらず、電極の異常や、計測信号のリニアリティを検証し、電磁流量計110の健全性を判定することができる。
【0128】
なお、上述した説明では、電極1Aの検証と電極1Bの検証とを別々に行う場合について説明した。しかし、それぞれの電極の検証を別々に行わなくてもよい場合、つまり、それぞれの電極ごとに健全性を判定する必要がない場合には、流量信号A/D変換回路41が出力するデジタル計測信号に基づいて、電極の異常や、計測信号のリニアリティを検証することもできる。つまり、電極1Aの検証と電極1Bの検証をまとめて行うこともできる。
【0129】
<変形例>
ここで、電磁流量計110において電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証する場合の検証方法の一例について説明する。なお、電極1Aおよび電極1Bをまとめた検証も、電磁流量計110において実施するセンサ1の動作検証(動作検証2)に含まれる1つの検証項目である。なお、以下の説明においても、励磁回路51が、動作検証部61(不図示)から入力された制御信号に応じて、分周回路611から出力されたタイミング信号に基づいた励磁電流を、励磁コイルに出力しているものとして説明する。また、以下の説明においても、説明を容易にするため、処理部6が動作検証プログラムを実行してセンサ1の動作検証を行うものとして説明する。
【0130】
電極1Aおよび電極1Bをまとめた検証では、電極1Aに基準電流または測定電流を流し、電極1Bに基準電流および測定電流を反転したそれぞれの交流電流を流して、センサ1が計測したそれぞれの計測信号に基づいて、それぞれの電極と配管(接地レベル)との間における流れる液体の抵抗値を算出する。そして、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、交流電流の比率と、計測信号の比率または抵抗値の比率とを比較し、それぞれの比率の差、つまり、比率のずれの大きさに基づいて、それぞれの電極が正常であるか異常であるかを判断(判定)する。
【0131】
より具体的には、交流定電流回路20Aは、基準電流Ia1を、対応する電極1Aと配管との間に出力する(流す)。また、交流定電流回路20Bは、基準電流Ia1を反転した基準電流(以下、基準電流Ia1を反転した基準電流も「基準電流Ib1」という)を、対応する電極1Bと配管との間に出力する(流す)。これにより、電極1Aには、配管の中を流れる液体によって発生した基準電流Ia1に対応した起電力の大きさ(電圧値Va1)の計測信号が、センサ1から出力される。また、電極1Bには、配管の中を流れる液体によって発生した基準電流Ib1に対応した起電力の大きさ(電圧値Vb1)の計測信号が、センサ1から出力される。そして、バッファ回路2Aは、センサ1から電極1Aに出力された計測信号を差動増幅回路31に出力し、バッファ回路2Bは、センサ1から電極1Bに出力された計測信号を差動増幅回路31に出力する。また、差動増幅回路31は、バッファ回路2Aとバッファ回路2Bとのそれぞれから出力されたそれぞれの計測信号の差分をとって増幅したアナログ計測信号を、流量信号A/D変換回路41に出力し、流量信号A/D変換回路41は、差動増幅回路31から出力されたアナログ計測信号の大きさに応じたデジタル計測信号を処理部6に出力する。これにより、処理部6は、流量信号A/D変換回路41が出力したデジタル計測信号の信号レベル(つまり、電圧値Va1−電圧値Vb1、以下、「電圧値V1」という)に基づいて、基準電流Ia1および基準電流Ib1(以下、まとめて「基準電流I1」という)を出力した(流した)ときの電極1Aおよび電極1Bと配管(接地レベル)との間における流れる液体の基準抵抗値(以下、「基準抵抗値R1」という)を算出する。なお、基準抵抗値R1を算出する場合にも、一般的に、センサ1、バッファ回路2A、バッファ回路2B、差動増幅回路31、および流量信号A/D変換回路41に対して行うリニアリティの補正を事前に適用した後に算出することが望ましい。
【0132】
続いて、交流定電流回路20Aは、測定電流Ia2を、対応する電極1Aと配管との間に出力する(流す)。また、交流定電流回路20Bは、測定電流Ia2を反転した測定電流(以下、測定電流Ia2を反転した測定電流も「測定電流Ib2」という)を、対応する電極1Bと配管との間に出力する(流す)。これにより、電極1Aには、基準電流Ia1を出力した(流した)ときと同様に、配管の中を流れる液体によって発生した測定電流Ia2に対応した起電力の大きさ(電圧値Va2)の計測信号が、センサ1から出力される。また、電極1Bには、基準電流Ib1を出力した(流した)ときと同様に、配管の中を流れる液体によって発生した測定電流Ib2に対応した起電力の大きさ(電圧値Vb2)の計測信号が、センサ1から出力される。そして、バッファ回路2A、バッファ回路2B、差動増幅回路31、および流量信号A/D変換回路41は、基準電流I1を出力した(流した)ときと同様に動作して、アナログ計測信号の大きさに応じたデジタル計測信号を処理部6に出力する。これにより、処理部6は、流量信号A/D変換回路41が出力したデジタル計測信号の信号レベル(つまり、電圧値Va2−電圧値Vb2、以下、「電圧値V2」という)に基づいて、測定電流Ia2および測定電流Ib2(以下、まとめて「測定電流I2」という)を出力した(流した)ときの電極1Aおよび電極1Bと配管(接地レベル)との間における流れる液体の基準抵抗値(以下、「基準抵抗値R2」という)を算出する。なお、測定抵抗値R2を算出する場合も、基準抵抗値R1を算出する場合と同様に、センサ1、バッファ回路2A、バッファ回路2B、差動増幅回路31、および流量信号A/D変換回路41に対して行うリニアリティの補正を事前に適用した後に算出することが望ましい。
【0133】
その後、処理部6は、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、基準電流I1の電流値と測定電流I2の電流値との比率を下式(3)によって算出し、電圧値V1と電圧値V2との比率を下式(4)によって算出する。
【0134】
I = I1/I2 ・・・(3)
V = V1/V2 ・・・(4)
【0135】
上式(3)において、Iは、交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bが出力した定電流の交流信号の電流値の割合(電流値割合)を表す。また、上式(4)において、Vは、それぞれの定電流の交流信号に対応して発生した起電力の大きさ(電圧値)の割合(電圧値割合)を表す。そして、処理部6は、電流値割合Iと電圧値割合Vとの差が、予め定めた割合のずれの閾値内であるか否かを判定し、この判定の結果に基づいて電極1Aおよび電極1Bが正常であるか否かを判断(判定)する。例えば、電流値割合Iと電圧値割合Vとの差が、例えば、2%以内である場合には、電極1Aおよび電極1Bは正常であると判断し、2%を超えている場合には、電極1Aおよび/または電極1Bは異常であると判断する。
【0136】
上述した電極1Aおよび電極1Bが正常であるか否かの判断でも、上式(3)によって算出した電流値割合Iと、上式(4)によって算出した電圧値割合Vとの差を、予め定めた割合のずれの閾値に基づいて行う場合について説明した。しかし、電極1Aおよび電極1Bが正常であるか否かを判断する方法も、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、上述した方法に限定されるものではない。例えば、基準抵抗値R1と測定抵抗値R2とを比較し、基準抵抗値R1と測定抵抗値R2との差が、予め定めた抵抗値のずれの閾値内であるか否かによって、電極1Aおよび電極1Bが正常であるか否かを判断してもよい。これも、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、基準抵抗値R1と測定抵抗値R2とは、電極1Aおよび電極1Bと配管(接地レベル)との間における同じ液体の流れを、交流電流の電流値を基準電流I1または測定電流I2に変えて計測したそれぞれの計測信号に基づいて算出した抵抗値である。このため、電極1Aおよび電極1Bが正常である場合には、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、基準抵抗値R1と測定抵抗値R2とは、同じ値であることが予想され、基準抵抗値R1と測定抵抗値R2との差が大きい場合には、電極1Aおよび電極1Bが異常であると判断することができるからである。
【0137】
なお、上述した電極1Aおよび電極1Bをまとめた検証でも、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、測定電流I2の電流値を順次異なる電流値にして電極1Aおよび電極1Bと配管との間に出力し(流し)、センサ1から出力された計測信号(電圧信号)に基づいてそれぞれの測定電流I2に対応した測定抵抗値R2を順次算出して、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを判定することもできる。これにより、電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証する場合でも、電磁流量計110においてセンサ1、バッファ回路2A、バッファ回路2B、差動増幅回路31、および流量信号A/D変換回路41に対して行うリニアリティの補正係数を更新することもできる。なお、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを判定する場合には、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、交流定電流回路20Aおよび交流定電流回路20Bが出力する(流す)測定電流I2の電流値を変更する間隔に、十分な時間を確保しておくことが望ましい。これにより、電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証する場合でも、電極1Aと電極1Bとを別々に検証する場合と同様に、それぞれの測定電流I2における電圧値V2の計測のばらつきを抑え、センサ1が安定した状態で計測した計測信号(電圧値V2)を得ることによって、より正確な電極1Aと電極1Bの測定抵抗値R2を算出することができる。
【0138】
このように、電磁流量計110では、電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証することができる。そして、電磁流量計110では、電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証した場合でも、センサ1が計測する計測信号(電圧信号)のリニアリティを判定することもできる。しかも、電極1Aおよび電極1Bをまとめて検証する場合には、
図4に示した電磁流量計110における電極抵抗信号A/D変換回路42Aおよび電極抵抗信号A/D変換回路42Bを備えなくてもよく、電磁流量計110の回路規模を低減することができる。
【0139】
上記に述べたとおり、本発明を実施するための形態によれば、プラント内に配置された設備に設置するフィールド機器に備えた処理部内に、動作検証プログラムに従ってフィールド機器自身の健全性を検証する動作検証部を備える。これにより、本発明を実施するための形態では、フィールド機器が、単体で自身の健全性を検証することができる。このことにより、本発明を実施するための形態では、従来のフィールド機器において健全性を検証するために接続することが必要であった機器点検端末などの外部の機器を用いることなく、フィールド機器の健全性を検証することができる。
【0140】
しかも、本発明を実施するための形態では、フィールド機器の健全性を検証する際に用いる多くのパラメータやデータは、フィールド機器自身に存在する内部のパラメータやデータである。このため、本発明を実施するための形態では、従来のフィールド機器のように、健全性を検証するために必要な多くのパラメータやデータを通信によって外部に接続された機器点検端末に伝送しなくても、フィールド機器自身の健全性を検証することができる。つまり、本発明を実施するための形態では、フィールド機器自身の健全性を検証する際に、従来のフィールド機器において多くの時間を要していたパラメータやデータの伝送に要する時間をなくすことができる。このことにより、本発明を実施するための形態では、フィールド機器の健全性の検証を開始してから終了するまでに要する時間を、従来のフィールド機器よりも短縮することができる。
【0141】
また、本発明を実施するための形態では、フィールド機器の種類に対応し、フィールド機器に備えたセンサが出力する計測信号を模擬した電圧、電流、時間差、位相差、周波数などの模擬計測信号を出力する模擬信号発生回路を、フィールド機器内に備える。そして、本発明を実施するための形態では、模擬信号発生回路が出力した模擬計測信号を用いて、フィールド機器に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証することができる。これにより、本発明を実施するための形態では、従来のフィールド機器において健全性を検証するために接続することが必要であった基準信号発生装置などの外部の機器を用いることなく、フィールド機器に備えたそれぞれの構成要素の動作の検証を行うことができる。つまり、本発明を実施するための形態では、フィールド機器における入力から出力まで(センサから出力回路まで)のそれぞれの構成要素の動作を検証することができる。このことにより、本発明を実施するための形態では、フィールド機器の健全性の検証において、フィールド機器に備えたそれぞれの構成要素の動作を検証する際の網羅度を高めることができる。
【0142】
さらに、本発明を実施するための形態では、フィールド機器自身の健全性を検証した検証結果や、フィールド機器に備えたそれぞれの構成要素の検証結果を、フィールド機器に備えたメモリに記憶する。そして、本発明を実施するための形態では、メモリに記憶している検証結果を、フィールド機器に備えた操作表示部に表示することによって、検証を指示した作業員(フィールド機器の点検作業を行った作業員)に提示する。また、本発明を実施するための形態では、フィールド機器に備えたメモリに記憶している検証結果を、フィールド機器の点検作業を行った作業員以外の作業員でも、任意のタイミングで参照することができる。しかも、本発明を実施するための形態では、フィールド機器に備えたメモリに記憶している検証結果は、健全性を検証するために必要なパラメータやデータよりも少ないデータ量である。これにより、本発明を実施するための形態では、プラント内に専用に構築された通信ネットワークによる通信やフィールド機器に接続した機器点検端末との通信によって、フィールド機器に備えたメモリに記憶している検証結果を取得して参照する場合でも、検証結果を参照する作業員は、短い通信時間で検証結果を取得することができる。このことにより、本発明を実施するための形態では、プラントにおけるフィールド機器の点検作業を効率的に行うことができる。
【0143】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。