【文献】
Edwin Weber, et al.,New trigonal lattice hosts: stoicheiometric crystal inclusions of laterally trisubstituted benzenes?X-ray crystal structure of 1,3,5-tris-(4-carboxyphenyl)benzene・dimethylformamide ,Journal of the Chemical Society, Perkin transactions II,Chemical Society,1988年,7,1251−1257,DOI:10.1039/P29880001251
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
<膜形成用組成物>
当該膜形成用組成物は、[A]化合物及び[B]溶媒を含有する。当該膜形成用組成物は、好適成分として、酸発生剤(以下、「[C]酸発生剤」ともいう)、架橋剤(以下、「[D]架橋剤」ともいう)を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。
【0017】
当該膜形成用組成物によれば、[A]化合物及び[B]溶媒を含有することで、光学特性、エッチング耐性等の一般特性を満たすと共に高い耐熱性及び高い平坦性を有するレジスト下層膜を形成することができる。
当該膜形成用組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば、以下のように推察することができる。すなわち、当該膜形成用組成物が含有する[A]化合物は、上記式(1)で表されるように、中央のベンゼン環の1,3,5−位に3個のベンゼン環が結合する骨格を有し、また炭素−炭素三重結合を有する上記式(a)で表される基(以下、「基(a)」ともいう)を有し、かつこの基(a)が上記3個のベンゼン環に、中央のベンゼン環に対してパラ位に結合している。[A]化合物がこのような構造を有することで、形成されるレジスト下層膜は、光学特性、エッチング耐性等の一般特性を満たすことができる。また、[A]化合物はその安定性を高めることができ、その結果、レジスト下層膜は高い耐熱性を発揮することができる。さらに、[A]化合物は分子サイズを適度、かつ単一又はその分布を極めて狭い範囲のものとすることができ、その結果、レジスト下層膜は高い平坦性を発揮することができる。
以下、各成分について説明する。
【0018】
<[A]化合物>
[A]化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0020】
上記式(1)中、R
1、R
2及びR
3は、下記式(a)で表される基である。R
1、R
2及びR
3は、同一でも異なっていてもよい。R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基である。x、y及びzは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。wは、0〜3の整数である。R
a〜R
dがそれぞれ複数の場合、複数のR
aは同一でも異なっていてもよく、複数のR
bは同一でも異なっていてもよく、複数のR
cは同一でも異なっていてもよく、複数のR
dは同一でも異なっていてもよい。
【0022】
上記式(a)中、R
Aは、水素原子、アリール基、又はヒドロキシ基とアリール基との少なくともいずれかで置換された若しくは非置換のアルキル基である。R
Bは、単結合又はアリーレン基である。上記アリール基及びアリーレン基の芳香環上の水素原子の一部又は全部はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基で置換されていてもよい。
【0023】
上記R
Aで表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。上記アリール基の炭素数としては、6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。上記アリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0024】
上記R
Aで表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。上記アルキル基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。上記アルキル基としては、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、n−アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基がより好ましい。
【0025】
上記アルキル基を置換するアリール基としては、例えば、上記R
Aのアリール基として例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0026】
上記R
Aで表されるアリール基で置換されたアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、ジナフチルメチル基等が挙げられる。
【0027】
上記R
Aで表されるヒドロキシ基で置換されたアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−2−プロピル基、ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシ−2−プロピル基等が挙げられる。
【0028】
上記R
Aで表されるヒドロキシ基とアリール基とで置換されたアルキル基としては、例えば、ヒドロキシフェニルメチル基、ヒドロキシジフェニルメチル基、ヒドロキシジフェニルエチル基、ジヒドロキシジフェニルエチル基等が挙げられる。
【0029】
上記アリール基の芳香環上の水素原子を置換するハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。これらの中で、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0030】
上記アリール基の芳香環上の水素原子を置換する芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3〜20の1価の脂環式炭化水素基、上記鎖状炭化水素基及び上記脂環式炭化水素基の炭素−炭素間に2価のヘテロ原子含有基を含む基(α)、上記鎖状炭化水素基、上記脂環式炭化水素基及び上記基(α)が有する水素原子の一部又は全部を芳香環を有さない1価のヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
【0031】
上記鎖状炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基などが挙げられる。
【0032】
上記脂環式炭化水素基としては、例えば、
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等のシクロアルキル基;
シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ノルボルネニル基等のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0033】
上記2価のヘテロ原子含有基としては、例えば、−O−、−NR”−(R”は、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基又は炭素数3〜10の脂環式炭化水素基である。)、−S−、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルアミノ基、スルホンアミド基等が挙げられる。
【0034】
上記1価のヘテロ原子含有基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、スルファニル基、シアノ基、ニトロ基、アミノスルホニル基等が挙げられる。
【0035】
上記アリール基の芳香環上の水素原子を置換する基としては、ヒドロキシ基、アミノ基、芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基が好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基がより好ましく、ヒドロキシ基、アミノ基、ヒドロキシメチル基、メトキシ基、エトキシ基がさらに好ましい。
【0036】
上記R
Aとしては、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、水素原子、非置換の炭素数6〜20のアリール基、ヒドロキシ基若しくはアミノ基で置換された炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10の非置換のアルキル基、ヒドロキシ基で置換された炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基とアリール基とで置換された炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、フェニル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシ−2−プロピル基、ヒドロキシジフェニルメチル基、アミノ基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0037】
上記R
Bで表されるアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基、アントリレン基等が挙げられる。上記アリーレン基の炭素数としては、6〜20が好ましく、6〜10がより好ましい。上記アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0038】
上記アリーレン基の芳香環上の水素原子を置換するハロゲン原子及び芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、上記R
Aにおけるアリール基の芳香環上の水素原子を置換するハロゲン原子及び1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0039】
上記R
Bとしては、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、単結合、炭素数6〜10の非置換のアリーレン基が好ましく、単結合、フェニレン基がより好ましい。
【0040】
上記式(1)のR
a〜R
dで表されるハロゲン原子及び芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、上記式(a)におけるアリール基及びアリーレン基を置換するハロゲン原子及び1価の有機基として例示した基と同様の基等が挙げられる。
【0041】
上記式(1)のR
a〜R
dとしては、ハロゲン原子、芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基が好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシアルキル基がより好ましく、フッ素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基がさらに好ましい。
【0042】
上記式(1)におけるx、y、z及びwとしては、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、0〜2の整数が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。上記式(a)のアリール基及びアリーレン基における芳香環は、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、上記置換基を有していないことが好ましい。
【0043】
上記式(1)におけるR
1、R
2及びR
3は同一でも異なっていてもよいが、形成されるレジスト下層膜の平坦性向上の観点、また[A]化合物の合成容易性の観点から、同一であることが好ましい。
【0044】
[A]化合物としては、R
Bが単結合かつR
Aが水素原子以外の場合として、例えば、下記式(1−1−1)〜(1−1−12)で表される化合物(以下、「化合物(I−1−1)〜(I−1−12)」ともいう)等が挙げられる。
【0047】
[A]化合物としては、R
Bが単結合以外かつR
Aが水素原子以外の場合として、例えば、下記式(1−2−1)〜(1−2−8)で表される化合物(以下、「化合物(I−2−1)〜(I−2−8)」ともいう)等が挙げられる。
【0050】
[A]化合物のより好ましい形態としては、R
Aのうちの少なくとも1つが水素原子である場合である下記式(1’)で表される化合物(以下、「化合物(I’)」ともいう)が挙げられる。このように末端に炭素−炭素三重結合を有する[A]化合物によれば、架橋による硬化性をさらに高めることができる。
【0052】
上記式(1’)中、R
1、R
2及びR
3は、下記式(a’)で表される基である。R
1、R
2及びR
3は、同一でも異なっていてもよい。R
a’、R
b’、R
c’及びR
d’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基である。x’、y’及びz’は、それぞれ独立して、0〜4の整数である。w’は、0〜3の整数である。R
a’〜R
d’がそれぞれ複数の場合、複数のR
a’は同一でも異なっていてもよく、複数のR
b’は同一でも異なっていてもよく、複数のR
c’は同一でも異なっていてもよく、複数のR
d’は同一でも異なっていてもよい。
【0054】
上記式(a’)中、R
A’は、水素原子、アリール基、又はヒドロキシ基とアリール基との少なくともいずれかで置換された若しくは非置換のアルキル基である。R
B’は、単結合又はアリーレン基である。上記アリール基及びアリーレン基の芳香環上の水素原子の一部又は全部はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基で置換されていてもよい。但し、上記化合物における3つのR
A’のうちの少なくとも1つは水素原子である。
【0055】
上記式(1’)のR
a’〜R
d’及びx’〜w’並びに上記式(a’)のR
A’及びR
B’としては、上記式(1)におけるR
a〜R
d及びx〜w並びに上記式(a)のR
A及びR
Bとしてそれぞれ例示したものと同様の基等が挙げられる。
【0056】
上記化合物(I’)における3つのR
A’としては、当該膜形成用組成物の硬化性をより高める観点から、2つ以上が水素原子であることが好ましく、3つともが水素原子であることがより好ましい。
【0057】
化合物(I’)としては、例えば、下記式(1−3−1)〜(1−3−8)で表される化合物(以下、「化合物(I−3−1)〜(I−3−8)」ともいう)等が挙げられる。
【0059】
これらの中で、化合物(I−1−1)〜(I−1−6)、化合物(I−3−1)が好ましい。
【0060】
[A]化合物は、例えば、基(a)のR
Bが単結合かつR
Aが水素原子以外である化合物(下記式(1−A)で表される化合物)の場合、下記反応スキームに従い、合成することができる。
【0062】
上記スキーム中、Xは、ハロゲン原子である。R
Aは、アリール基、又はヒドロキシ基とアリール基との少なくともいずれかで置換された若しくは非置換のアルキル基である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。複数のR
Aは同一でも異なっていてもよい。R
a、R
b、R
c及びR
dは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基である。x、y及びzは、それぞれ独立して、0〜4の整数である。wは、0〜3の整数である。R
a〜R
dがそれぞれ複数の場合、複数のR
aは同一でも異なっていてもよく、複数のR
bは同一でも異なっていてもよく、複数のR
cは同一でも異なっていてもよく、複数のR
dは同一でも異なっていてもよい。上記アリール基の芳香環上の水素原子の一部又は全部はハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基若しくはスルファニル基又は芳香環を含まない炭素数1〜20の1価の有機基で置換されていてもよい。
【0063】
上記式(1−X)で表される化合物(1,3,5−トリス(p−ハロフェニル)ベンゼン)と、上記式(1−Y)で表されるエチニル化合物とを、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)等のパラジウム触媒、ヨウ化銅(I)等の銅(I)触媒、及びトリエチルアミン等の塩基存在下、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させることにより、上記式(1−A)で表される化合物を得ることができる。得られた生成物は、再沈殿、再結晶、洗浄、カラムクロマトグラフィー等により精製することができる。
【0064】
上記Xとしては、[A]化合物の収率向上の観点から、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。
【0065】
基(a)のR
Bがアリーレン基かつR
Aが水素原子以外である[A]化合物は、上記化合物(1−X)の代わりに、例えば、1,3,5−トリス(4’−ハロビフェニル−4−イル)ベンゼン等を用いることにより合成することができる。
【0066】
基(a)のR
Aが水素原子である[A]化合物は、トリメチルシリルアセチレン等のシリル化アセチレン化合物を用いて化合物(1−X)等との反応生成物を得た後、この反応生成物を、テトラヒドロフラン/メタノール等の溶媒中、炭酸カリウム等の塩基存在下で反応させ、脱シリル化することにより合成することができる。
【0067】
上記以外の[A]化合物についても上述と同様の方法によって合成することができる。
【0068】
[A]化合物の分子量の下限としては、形成されるレジスト下層膜の耐熱性向上の観点から、400が好ましく、450がより好ましく、500がさらに好ましく、550が特に好ましい。[A]化合物の分子量の上限としては、形成されるレジスト下層膜の平坦性向上の観点から、1,000が好ましく、900が好ましく、800がさらに好ましく、700が特に好ましい。
【0069】
[A]化合物の炭素含有率の下限としては、50atom%が好ましく、55atom%がより好ましく、60atom%がさらに好ましい。また、[A]化合物の炭素含有率の下限としては、80質量%が好ましく、85質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。上記炭素含有率は、高いほど好ましい。
[A]化合物の炭素含有率を上記範囲とすることで、形成されるレジスト下層膜の耐熱性をさらに向上させることができる。
【0070】
当該膜形成用組成物における[A]化合物の含有量としては、全固形分に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0071】
<[B]溶媒>
[B]溶媒としては、[A]化合物及び所望により含有される任意成分を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
【0072】
[B]溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0073】
アルコール系溶媒としては、例えば、
4−メチル−2−ペンタノール、n−ヘキサノール等の炭素数1〜18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3〜18の脂環式モノアルコール系溶媒;
1,2−プロピレングリコール等の炭素数2〜18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3〜19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
【0074】
エーテル系溶媒としては、例えば、
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0075】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−iso−ブチルケトン、2−ヘプタノン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−iso−ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒;
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒;
2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0076】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒等が挙げられる。
【0077】
エステル系溶媒としては、例えば、
酢酸n−ブチル等の酢酸エステルなどのモノカルボン酸エステル系溶媒;
酢酸プロピレングリコール等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分アルキルエーテルアセテートなどの多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒等が挙げられる。
【0078】
炭化水素系溶媒としては、例えば、炭素数5〜10の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素、炭素数5〜12の脂環式炭化水素、炭素数6〜18の芳香族炭化水素等が挙げられる。脂環式炭化水素及び芳香族炭化水素の環上の水素原子の一部又は全部は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基によって置換されていてもよい。
【0079】
これらの中で、ケトン系溶媒が好ましく、環状ケトン系溶媒がより好ましく、シクロヘキサノンがさらに好ましい。当該膜形成用組成物は、[B]溶媒を1種又は2種以上含んでいてもよい。
【0080】
<[C]酸発生剤>
[C]酸発生剤は、露光又は加熱により酸を発生する成分である。当該膜形成用組成物は、[C]酸発生剤を含有することで、常温を含む比較的低温で、[A]化合物間に、架橋反応を進行させることが可能となる。
【0081】
露光により酸を発生する酸発生剤(以下、「光酸発生剤」ともいう)としては、例えば特開2004−168748号公報における段落[0077]〜[0081]に記載のもの等が挙げられる。
【0082】
また、加熱により酸を発生する酸発生剤(以下、「熱酸発生剤」ともいう)としては、上述の光酸発生剤として例示したオニウム塩系酸発生剤以外にも、例えば、2,4,4,6−テトラブロモシクロヘキサジエノン、ベンゾイントシレート、2−ニトロベンジルトシレート、アルキルスルホネート類等が挙げられる。
【0083】
これらの[C]酸発生剤の中でも、熱酸発生剤が好ましく、オニウム塩系酸発生剤がより好ましく、ヨードニウム塩系酸発生剤がさらに好ましく、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムピレンスルホネート、ジフェニルヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ジフェニルヨードニウム10−カンファースルホネート、ジフェニルヨードニウムナフタレンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムn−ドデシルベンゼンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム10−カンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムナフタレンスルホネートが特に好ましく、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロn−ブタンスルホネートがさらに特に好ましい。
【0084】
[C]酸発生剤の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、5,000質量部以下が好ましく、0.1質量部〜500質量部がより好ましく、0.5質量部〜100質量部がさらに好ましく、1質量部〜20質量部が特に好ましい。[C]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の強度をより高めることができる。[C]酸発生剤としては、1種又は2種以上を用いることができる。また、[C]酸発生剤としては、光酸発生剤と熱酸発生剤とを併用してもよい。
【0085】
<[D]架橋剤>
[D]架橋剤は、架橋性基を有する化合物である。当該膜形成用組成物は、[D]架橋剤を含有することで、[A]化合物間の架橋をより効果的に行うことができる。
【0086】
[D]架橋剤としては、架橋性基を2個以上有するものが好ましい。
[D]架橋剤としては、例えば、多核フェノール類、アルコキシメチル化メラミン、アルコキシメチル化グリコールウリル、ジイソシアナート類、下記式(d)で表される化合物(以下、「化合物(d)」ともいう)等が挙げられる。
【0088】
上記式(d)中、Arは、n価の芳香族炭化水素基又はn価の複素芳香族基である。Yは、カルボニル基又はスルホニル基である。Qは、1価の複素芳香族基又は−OR
4である。R
4は、炭素数1〜30の1価の有機基である。nは、2〜7の整数である。複数のYは同一でも異なっていてもよい。複数のQは同一でも異なっていてもよい。
【0089】
[D]架橋剤として化合物(d)を用いると、この[D]架橋剤と[A]化合物とが反応することにより、芳香環に挟まれたカルボニル基又はスルホニル基が生じると推察され、その結果、当該膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の耐熱性をより向上させることができ、加えて、屈折率及び吸光係数をより適度なものとすることができる。
【0090】
上記Arで表されるn価の芳香族炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレニリデンビフェニル等の芳香族炭化水素から芳香環に結合するn個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0091】
上記Arで表されるn価の複素芳香族基としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、ホスホール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン等の複素芳香族化合物から、複素芳香族環に結合するn個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0092】
上記Yとしては、カルボニル基が好ましい。
【0093】
上記Qで表される1価の複素芳香族基としては、例えば、上記Arで表されるn価の複素芳香族基として例示したものに(n−1)個の水素原子を加えた基等が挙げられる。
【0094】
上記Qにおける−OR
4のR
4で表される炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、下記式(i)〜(iii)で表される基(以下、「基(i)〜(iii)」ともいう)等が挙げられる。
【0096】
上記式(i)中、R
5及びR
6は、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜20の環構造を表す。
【0098】
上記式(ii)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立して炭素数1〜20の1価の有機基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する窒素原子と共に構成される環員数3〜20の環構造を表す。
【0100】
上記式(iii)中、R
9は電子求引基を有する炭素数1〜20の1価の有機基である。
【0101】
上記R
5〜R
8で表される炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜20の1価の炭化水素基、この炭化水素基と−CO−、−COO−、−O−、−NR’−、−CS−、−S−、−SO−及び−SO
2−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基とを組み合わせたヘテロ原子含有基、上記炭化水素基及び上記ヘテロ原子含有基が有する水素原子の一部又は全部をフッ素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基等で置換した基等が挙げられる。R’は、水素原子又は炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。
【0102】
上記炭素数1〜20の1価の炭化水素基としては、例えば、
メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、エテニル基、プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロピニル基等のアルキニル基などの炭素数1〜20の鎖状炭化水素基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、ノルボルニル基等のシクロアルキル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、ノルボルニル基などの炭素数3〜20の脂環式炭化水素基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、ナフチルメチル基等のアラルキル基等の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基などが挙げられる。
【0103】
上記R
5及びR
6が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3〜20の環構造としては、例えば、シクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等が挙げられる。
上記R
7及びR
8が互いに合わせられこれらが結合する窒素原子と共に構成される環員数3〜20の環構造としては、例えば、アザシクロプロパン構造、アザシクロブタン構造、アザシクロペンタン構造、アザシクロヘキサン構造等が挙げられる。
【0104】
上記R
9で表される電子求引基を有する炭素数1〜20の1価の有機基としては、例えば、一部又は全部の水素原子が電子求引基で置換された炭素数1〜20の1価の炭化水素基等が挙げられる。上記電子求引基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。これらの中で、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基が好ましい。
【0105】
上記基(i)としては、例えば、下記式(i−1)〜(i−4)で表される基が、上記基(ii)としては、下記式(ii−1)で表される基が、上記基(iii)としては、例えば、下記式(iii−1)〜(iii−4)で表される基などが挙げられる。
【0107】
これらの中で、上記式(iii−3)で表される基、上記式(iii−4)で表される基が好ましい。
【0108】
上記nとしては、2〜5の整数が好ましく、2又は3がより好ましく、2がさらに好ましい。
【0109】
上記多核フェノール類としては、例えば、4,4’−ビフェニルジオール、4,4’−メチレンビスフェノール、4,4’−エチリデンビスフェノール、ビスフェノールA等の2核フェノール類;4,4’,4”−メチリデントリスフェノール、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシ−3,5−ビス(メトキシメチル)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビス(2,6−ビス(メトキシメチル)フェノール)等の3核フェノール類;ノボラック等のポリフェノール類等が挙げられる。
【0110】
上記アルコキシメチル化メラミンとしては、例えば、ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、ヘキサキス(n−ブトキシメチル)メラミン等が挙げられる。
【0111】
上記アルコキシメチル化グリコールウリルとしては、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(n−ブトキシメチル)グリコールウリル等が挙げられる。
【0112】
上記ジイソシアナート類としては、例えば、2,3−トリレンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、3,4−トリレンジイソシアナート、3,5−トリレンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,4−シクロヘキサンジイソシアナート等が挙げられる。
【0113】
上記化合物(d)としては、例えば、下記式(d−1)〜(d−4)で表される化合物等が挙げられる。
【0115】
[D]架橋剤としては、これらの中で、得られる多核フェノール類、アルコキシメチル化グリコールウリル、化合物(d)が好ましく、4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、上記式(d−1)で表される化合物(1,3−ジ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イルオキシカルボニル)ベンゼン)がより好ましい。当該膜形成用組成物は、[D]架橋剤として上記化合物を用いることで、得られるレジスト下層膜の耐熱性及び強度をさらに向上させることができる。
【0116】
[D]架橋剤の市販品としては、例えば、
「エピコート812」、同815、同826、同828、同834、同836、同871、同1001、同1004、同1007、同1009、同1031(以上、油化シェルエポキシ社製)、「アラルダイト6600」、同6700、同6800、同502、同6071、同6084、同6097、同6099(以上、チバガイギー社製)、「DER331」、同332、同333、同661、同644、同667(以上、ダウケミカル社製)等のエポキシ系架橋剤;
「サイメル300」、同301、同303、同350、同370、同771、同325、同327、同703、同712、同701、同272、同202、「マイコート506」、同508(以上、三井サイアナミッド社製)等のメラミン系架橋剤;
「サイメル1123」、同1123−10、同1128、「マイコート102」、同105、同106、同130(以上、三井サイアナミッド社製)等のベンゾグアナミン系架橋剤;
「レジトップ」(群栄化学工業社製)等のフェノール系架橋剤;
「サイメル1170」、同1172(以上、三井サイアナミッド社製)、「ニカラックN−2702」(三和ケミカル社製)等のグリコールウリル系架橋剤などが挙げられる。
【0117】
[D]架橋剤の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、1,000質量部以下が好ましく、0.1質量部〜500質量部がより好ましく、1質量部〜100質量部がさらに好ましく、2質量部〜50質量部が特に好ましい。[D]架橋剤の含有量を上記範囲とすることで、当該膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の耐熱性及び強度をより向上させることができる。[D]架橋剤は1種又は2種以上を用いてもよい。
【0118】
<その他の任意成分>
当該膜形成用組成物は、上記[A]〜[D]成分以外に、その他の任意成分として、例えば、バインダー樹脂、促進剤、界面活性剤、放射線吸収剤、保存安定剤、消泡剤、接着助剤等が挙げられる。当該膜形成用組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種又は2種以上用いることができる。
【0119】
[バインダー樹脂]
当該膜形成用組成物が上記バインダー樹脂を含有すると、形成されるレジスト下層膜は、その上面に形成されるレジスト膜、中間層等を形成する組成物に含有される有機溶媒に対する耐性を向上させることができる。
【0120】
上記バインダー樹脂としては、高分子化合物である限り特に限定されないが、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、スチレン系樹脂、アセナフチレン系樹脂、及びポリアリーレン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。上記バインダー樹脂として上記樹脂を用いることで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより適当な値に制御することができる。その結果形成されるレジストパターンの断面形状の矩形性が向上する。
【0121】
上記ノボラック系樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、ビスフェノールA、p−tert−ブチルフェノール、p−オクチルフェノール等のフェノール類、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類からなる群より選ばれる1種又は2種以上のフェノール性化合物と、アルデヒド類またはジビニル化合物等とを酸性触媒等を用いて反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0122】
上記アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド等のアルデヒド;パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のアルデヒド源等が挙げられる。
ジビニル化合物類としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノボルナ−2−エン、α−ピネン、β−ピネン、リモネン、5−ビニルノルボルナジエン等が挙げられる。
【0123】
上記レゾール系樹脂としては、例えば、上記フェノール性化合物と、上記アルデヒド類とをアルカリ性触媒を用いて反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0124】
上記スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレン;スチレン−α−メチルスチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン共重合体等が挙げられる。
【0125】
上記アセナフチレン系樹脂としては、アセナフチレン骨格を有する化合物をラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等により、塊状重合、溶液重合等の適宜の重合形態で重合することによって得られる樹脂等が挙げられる。また、アセナフチレン系樹脂は、特開2002−296789号公報の段落[0008]〜[0031]に記載されているように、アセナフチレン骨格を有する化合物の重合体に、酸性条件下でパラホルムアルデヒドを反応させる等して得ることもできる。
【0126】
上記ポリアリーレン系樹脂としては、例えば、ポリアリーレンエーテル、ポリアリーレンスルフィド、ポリアリーレンエーテルスルホン、ポリアリーレンエーテルケトン等が挙げられる。
【0127】
上記バインダー樹脂は、ナフタレン環を有することが好ましい。上記バインダー樹脂がナフタレン骨格を有することで、レジスト下層膜の屈折率及び吸光係数をより適当な値に制御することができ、その結果形成されるレジストパターンの断面形状の矩形性がより向上する。また、上記バインダー樹脂は、炭素−炭素三重結合を含む基を有することが好ましい。当該膜形成用組成物は、バインダー樹脂が上記基を含むことで、形成されるレジスト下層膜のエッチング耐性及び曲がり耐性を向上させることができる。上記炭素−炭素三重結合を含む基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0128】
上記バインダー樹脂は、架橋性基を含んでいてもよい。上記バインダー樹脂が架橋性基を含むと、バインダー樹脂同士間又はバインダー樹脂と[A]化合物間の架橋により、形成されるレジスト下層膜の強度を高めることができる。一方、上記バインダー樹脂が架橋性基を実質的に含まない場合は、レジスト下層膜形成時の膜収縮を抑制することができ、その結果、形成されるレジスト下層膜の平坦性をより向上させることができる。
【0129】
上記バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、2,000以上8,000以下が好ましく、3,000以上7,000以下がより好ましい。バインダー樹脂のMwを上記範囲とすることで、当該膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。
【0130】
上記バインダー樹脂の重量平均分子量の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)としては、1〜5が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2.5がさらに好ましい。
【0131】
上記バインダー樹脂の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、5質量部以上1,000質量部以下が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、30質量部以上400質量部以下がさらに好ましい。[E]樹脂の含有量を上記範囲とすることで、当該膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜の溶媒耐性をより向上させることができる。
【0132】
[促進剤]
上記促進剤は、酸化架橋に必要な脱水素反応を十分に引き起こすための一電子酸化剤等である。一電子酸化剤とは、それ自身が1電子移動を受ける酸化剤を意味する。例えば、硝酸セリウム(IV)アンモニウムの場合では、セリウムイオン(IV)が一電子を得てセリウムイオン(III)へと変化する。また、ハロゲン等のラジカル性の酸化剤は、一電子を得てアニオンへと転化する。このように、一電子を被酸化物(基質や触媒等)から奪うことにより、被酸化物を酸化する現象を一電子酸化と称し、この時一電子を受け取る成分を一電子酸化剤という。
【0133】
上記一電子酸化剤としては、例えば、(a)金属化合物、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物、(d)ハロゲン又はハロゲン酸等が挙げられる。
【0134】
上記(a)金属化合物としては、例えば、セリウム、鉛、銀、マンガン、オスミウム、ルテニウム、バナジウム、タリウム、銅、鉄、ビスマス、ニッケルを含む金属化合物が挙げられる。具体的には、(a1)硝酸セリウム(IV)アンモニウム(CAN;ヘキサニトラトセリウム(IV)酸アンモニウム)、酢酸セリウム(IV)、硝酸セリウム(IV)、硫酸セリウム(IV)等のセリウム塩(例えば、四価のセリウム塩)、(a2)四酢酸鉛、酸化鉛(IV)等の鉛化合物(例えば、四価の鉛化合物)、(a3)酸化銀(I)、酸化銀(II)、炭酸銀(Fetizon試薬)、硝酸銀等の銀化合物、(a4)過マンガン酸塩、活性二酸化マンガン、マンガン(III)塩等のマンガン化合物、(a5)四酸化オスミウム等のオスミウム化合物、(a6)四酸化ルテニウム等のルテニウム化合物、(a7)VOCl
3、VOF
3、V
2O
5、NH
4VO
3、NaVO
3等のバナジウム化合物、(a8)酢酸タリウム(III)、トリフルオロ酢酸タリウム(III)、硝酸タリウム(III)等のタリウム化合物、(a9)酢酸銅(II)、銅(II)トリフルオロメタンスルホネート、銅(II)トリフルオロボレート、塩化銅(II)、酢酸銅(I)等の銅化合物、(a10)塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム等の鉄化合物、(a11)ビスマス酸ナトリウム等のビスマス化合物、(a12)過酸化ニッケル等のニッケル化合物等が挙げられる。
【0135】
上記(b)過酸化物としては、例えば、過酢酸、m−クロロ過安息香酸等の過酸;過酸化水素や、t−ブチルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロキシペルオキシド等のヒドロキシペルオキシド類;過酸化ジアシル、過酸エステル、過酸ケタール、ペルオキシ二炭酸塩、過酸化ジアルキル、過酸ケトン等が挙げられる。
【0136】
上記(c)ジアゾ化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0137】
上記(d)ハロゲン又はハロゲン酸としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲンや、過ハロゲン酸、ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、次亜ハロゲン酸及びこれらの塩等が挙げられる。尚、ハロゲン酸におけるハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。また、ハロゲン酸若しくはその塩となる具体的な化合物としては、過塩素酸ナトリウム、臭素酸ナトリム等が挙げられる。
【0138】
これらの一電子酸化剤の中で、(b)過酸化物、(c)ジアゾ化合物が好ましく、m−クロロ過安息香酸、t−ブチルヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルがより好ましい。これらを用いた場合には、基板上に金属残留物等が付着するおそれが小さい。
【0139】
上記促進剤の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、1000質量部以下が好ましく、0.01質量部〜500質量部がより好ましく、0.1質量部〜100質量部がさらに好ましい。
【0140】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該膜形成用組成物の塗布性、ストリエーション、ぬれ性、現像性等を改良する作用を有する成分である。上記界面活性剤の含有量としては、[A]化合物100質量部に対して、15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。界面活性剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0141】
<膜形成用組成物の調製方法>
当該膜形成用組成物は、例えば、[A]化合物、[B]溶媒及び必要に応じて含有される任意成分を所定の割合で混合することにより調製することができる。当該膜形成用組成物は、混合後に、例えば、0.1μm程度のフィルターでろ過することが好ましい。当該膜形成用組成物の固形分濃度としては、0.1質量%〜50質量%が好ましく、0.5質量%〜30質量%がより好ましく、1質量%〜20質量%がさらに好ましい。当該膜形成用組成物における[A]化合物の濃度としては、0.1質量%〜30質量%が好ましく、0.5質量%〜20質量%がより好ましく、1質量%〜15質量%がさらに好ましい。
【0142】
当該膜形成用組成物としては、固形分濃度が20質量%である場合の粘度が、1cps以上5cps以下であることが好ましく、1cps以上3cps以下であることがより好ましい。当該膜形成用組成物は、粘度の値を上記範囲とすることで、埋め込み性が向上し、かつ形成されるレジスト下層膜の平坦性が向上する。
【0143】
<レジスト下層膜の形成方法>
当該レジスト下層膜の形成方法は、
基板の上面側に塗膜を形成する工程(以下、「塗膜形成工程」ともいう)、及び
上記塗膜を焼成する工程(以下、「焼成工程」ともいう)
を備える。上記塗膜を当該膜形成用組成物により形成する。
当該レジスト下層膜の形成方法によれば、上述の当該膜形成用組成物を用いるので、高い耐熱性及び高い平坦性を有するレジスト下層膜を形成することができる。また、当該レジスト下層膜の形成方法は、段差を有する基板や、複数種のトレンチを有する基板に対しても好適に用いることができ、平坦性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
以下、各工程について説明する。
【0144】
[塗膜形成工程]
本工程においては当該膜形成用組成物で基板の上面側に塗膜を形成する。
【0145】
上記基板としては、例えば、シリコンウェハー、アルミニウムで被覆したウェハー等が挙げられる。
上述したように、当該パターン形成方法においては、段差を有する基板、複数種のトレンチを有する基板等も好適に用いることができ、平坦性に優れるレジスト下層膜を形成することができる。
上記複数種のトレンチを有する基板としては、例えば、互いに異なるアスペクト比を有する基板も好適に用いることができる。このアスペクト比についても、種々の値が混在したものを用いることができ、例えば、基板のトレンチにおいて、アスペクト比における最大値と最小値の比としては、3以上が好ましく、5以上がより好ましく、10以上がさらに好ましく、15以上が特に好ましい。
【0146】
膜形成用組成物の基板への塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0147】
上記形成される塗膜の膜厚としては、100nm〜5μmが好ましく、200nm〜3μmがより好ましい。
【0148】
[焼成工程]
本工程においては、上記塗膜形成工程において形成した塗膜を焼成する。この塗膜を焼成する方法としては、例えば、加熱する方法等が挙げられる。この加熱の温度としては、100℃〜400℃が好ましく、200℃〜390℃がより好ましく、300℃〜370℃がさらに好ましい。この加熱の時間としては、5秒〜60分が好ましく、10秒〜10分がより好ましく、30秒〜3分がさらに好ましい。この加熱における雰囲気としては、例えば、空気中、窒素ガス、アルゴンガス中等の不活性ガス中等が挙げられる。
【0149】
形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、10nm〜5μmが好ましく、30nm〜500μmがより好ましい。
【0150】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、
レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する工程(以下、「レジストパターン形成工程」ともいう)、及び
上記レジストパターンをマスクとし、上記レジスト下層膜及び基板を順次エッチングする工程(以下、「エッチング工程」ともいう)
を備える。上記レジスト下層膜を当該レジスト下層膜の形成方法により形成する。
【0151】
また、当該パターン形成方法は、
上記レジストパターン形成工程において、上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成し、この中間層の上面側にレジストパターンを形成し、
上記エッチング工程において、さらに中間層をエッチングすることが好ましい。
【0152】
当該パターン形成方法によれば、上述の当該膜形成用組成物から形成した高い耐熱性及び高い平坦性を有するレジスト下層膜を用いるので、良好なパターンを形成することができる。
以下、各工程について説明する。
【0153】
[レジストパターン形成工程]
本工程においては、上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する。上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成し、この中間層の上面側にレジストパターンを形成してもよい。
【0154】
上記中間層は、レジストパターン形成等において、レジスト下層膜及び/又はレジスト膜が有する機能を補い、又はこれらが有していない機能を付与するためにこれらの機能を有する層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を補うことができる。
【0155】
上記中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。この有機化合物としては、例えば、Brewer Science製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の市販材料や、ロームアンドハース製の「AR−3」、「AR−19」等の市販材料等が挙げられる。また、上記無機酸化物としては、例えば、JSR製の「NFC SOG」シリーズ等の市販材料や、CVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0156】
上記中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等が挙げられる。これらの中で、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
【0157】
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10nm〜3μmが好ましく、20nm〜0.3μmがより好ましい。
【0158】
上記レジスト下層膜又は中間層の上面側にレジストパターンを形成する方法としては、例えば、フォトリソグラフィーを用いる方法等が挙げられる。この方法について、以下、具体的に説明する。
【0159】
フォトリソグラフィーを用いる方法は、例えば
レジスト組成物を用い、上記レジスト下層膜の上面側にレジスト膜を形成する工程(以下、「レジスト膜形成工程」ともいう)、
上記レジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう)、及び
上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)
を有する。
【0160】
(レジスト膜形成工程)
本工程では、レジスト組成物を用い、レジスト下層膜の上面側にレジスト膜を形成する。具体的には、得られるレジスト膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶媒を揮発させ、レジスト膜が形成される。
【0161】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0162】
上記レジスト組成物の固形分濃度としては、5〜50質量%が好ましい。また、上記レジスト組成物は、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して調製されることが好ましい。なお、この工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0163】
レジスト組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0164】
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜選択されるが、30℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。
【0165】
(露光工程)
本工程では、上記レジスト膜形成工程で形成されたレジスト膜を露光する。この露光は、例えば、所定のマスクパターン及び必要に応じて液浸液を介して行われる。
【0166】
露光光としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、γ線等の電磁波;電子線、分子線、イオンビーム、α線等の粒子線等から適切に選択されるが、遠紫外線が好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、F
2エキシマレーザー光(波長157nm)、Kr
2エキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)がより好ましく、ArFエキシマレーザー光がさらに好ましい。
【0167】
上記露光後に、形成されるレジストパターンの解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、50℃〜200℃が好ましく、70℃〜150℃がより好ましい。
【0168】
(現像工程)
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。
【0169】
上記現像に用いられる現像液としては、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。アルカリ現像の場合、具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液等が挙げられる。なお、上記中間層形成工程を行い中間層を形成しておくと、これらのアルカリ性水溶液のレジスト下層膜に対する影響を抑制することができる。
【0170】
これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0171】
また、現像液としては、有機溶媒を含有する現像液を用いることもできる。この有機溶媒としては、例えば、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類、アミド類、炭化水素類等が挙げられる。有機溶媒現像は、レジスト下層膜に対する影響が小さい。
【0172】
上記現像液を用いて現像した後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0173】
また、上記レジストパターン形成工程を行う方法として、上述のフォトリソグラフィーを用いる方法以外にも、ナノインプリント法を用いる方法、自己組織化組成物を用いる方法等も用いることができる。
【0174】
[エッチング工程]
本工程においては、上記レジストパターンをマスクとしし、上記レジスト下層膜及び基板を順次エッチングする。これにより、基板にパターンが形成される。なお、中間層を形成した場合は、さらに中間層もドライエッチングする。
【0175】
上記エッチングの方法としては、ドライエッチングでもウエットエッチングでもよい。
【0176】
上記ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O
2、CO、CO
2等の酸素原子を含むガス、He、N
2、Ar等の不活性ガス、Cl
2、BCl
3等の塩素系ガス、CHF
3、CF
4等のフッ素系ガス、H
2、NH
3のガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【実施例】
【0177】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0178】
なお、化合物のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、GPCカラム(東ソー社の「G2000HXL」2本、及び「G3000HXL」1本)を用い、流量:1.0mL/分、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフ(検出器:示差屈折計)により測定した。また、各膜厚は、分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用いて測定した。
【0179】
<[A]化合物の合成>
[合成例1](化合物(A−1)の合成)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、1,3,5−トリス(p−ブロモフェニル)ベンゼン100質量部、エチニルベンゼン60質量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)7質量部、ヨウ化銅(I)2質量部、トリエチルアミン100質量部、及び溶媒としてのテトラヒドロフラン600質量部を混合し、攪拌しつつ、70℃で4時間反応させ反応液を得た。得られた反応液をろ過後、メタノールを加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を酢酸エチルに溶解し、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄した後、有機層を乾燥させて、下記式(A−1)で表される化合物を得た。
【0180】
[合成例2](化合物(A−2)の合成)
合成例1において、エチニルベンゼン60質量部の代わりに、2−プロピン−1−オール35質量部を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(A−2)で表される化合物を得た。
【0181】
[合成例3](化合物(A−3)の合成)
合成例1において、エチニルベンゼン60質量部の代わりに、1−ヘキシン50質量部を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(A−3)で表される化合物を得た。
【0182】
[合成例4](化合物(A−4)の合成)
合成例1において、エチニルベンゼン60質量部の代わりに、2−メチル−3−ブチン−2−オール50質量部を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(A−4)で表される化合物を得た。
【0183】
[合成例5](化合物(A−5)の合成)
合成例1において、エチニルベンゼン60質量部の代わりに、1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール130質量部を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(A−5)で表される化合物を得た。
【0184】
[合成例6](化合物(A−6)の合成)
合成例1において、エチニルベンゼン60質量部の代わりに、3−エチニルアニリン70質量部を用いた以外は、合成例1と同様にして、下記式(A−6)で表される化合物を得た。
【0185】
【化21】
【0186】
[合成例7](化合物(A−7)の合成)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、1,3,5−トリス(4’−ブロモビフェニル−4−イル)ベンゼン100質量部、トリメチルシリルアセチレン42質量部、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)5質量部、ヨウ化銅(I)2質量部、トリエチルアミン100質量部及び溶媒としてのテトラヒドロフラン600質量部を混合し、攪拌しつつ、70℃で4時間反応し反応液を得た。この反応液をろ過後、メタノールを加えて再沈殿を行い、得られた沈殿物を酢酸エチルに溶解し、希塩酸、炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄した後、有機層を濃縮して乾固物を得た。次に、得られた乾固物に炭酸カリウム80質量部、テトラヒドロフラン400質量部及びメタノール150質量部を加え、室温で4時間反応させた。得られた反応液をろ過した後、酢酸エチルを加え、希塩酸及び炭酸水素ナトリウム水溶液で順次洗浄した後、有機層を濃縮して、下記式で表される化合物(A−7)を得た。
【0187】
【化22】
【0188】
[比較合成例1](化合物(a−1)の合成)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、窒素雰囲気下で、2,7−ジヒドロキシナフタレン100質量部、ホルマリン30質量部、p−トルエンスルホン酸1質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル150質量部を仕込み、攪拌しつつ80℃で6時間重合させて反応液を得た。得られた反応液を酢酸n−ブチル100質量部で希釈し、多量の水/メタノール(質量比:1/2)混合溶媒で有機層を洗浄した。得られた有機層から溶媒を留去して、下記式(a−1)で表される構造単位を有する重合体である化合物(a−1)を得た。この化合物(a−1)のMwは、1,800であった。
【0189】
【化23】
【0190】
<膜形成用組成物の調製>
膜形成用組成物を構成する[A]化合物以外の成分について以下に示す。
【0191】
[[B]溶媒]
B−1: シクロヘキサノン
【0192】
[[C]酸発生剤]
C−1:ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロn−ブタンスルホネート(下記式(C−1)で表される化合物)
【0193】
【化24】
【0194】
[[D]架橋剤]
D−1:三和ケミカル社の「ニカラックN−2702」(下記式(D−1)で表される化合物)
D−2:4,4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシ−3,5−ビス(メトキシメチル)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビス(2,6−ビス(メトキシメチル)フェノール(下記式(D−2)で表される化合物)
D−3:1,3−ジ(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イルオキシカルボニル)ベンゼン(下記式(D−3)で表される化合物)
【0195】
【化25】
【0196】
[実施例1]
[A]化合物としての(A−1)10質量部及び[B]溶媒としての(B−1)100質量部を混合して溶液を得た。この溶液を孔径0.1μmのメンブランフィルターでろ過することにより膜形成用組成物(J−1)を調製した。
【0197】
[実施例2〜9及び比較例1]
下記表1に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜形成用組成物(J−2)〜(J−9)及び(CJ−1)を調製した。なお、表1中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0198】
【表1】
【0199】
[実施例10〜13]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜形成用組成物(J−10)〜(J−13)を調製した。なお、表2中の「−」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
【0200】
【表2】
【0201】
<評価>
上記得られた膜形成用組成物又はそれらから得られたレジスト下層膜付き基板を用い、下記項目について、下記方法で評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0202】
[屈折率及び吸光係数]
上記調製した各膜形成用組成物を、基板である直径8インチのシリコンウエハ表面にスピンコートして塗膜を形成した後、この塗膜を350℃で2分間、空気中で焼成し、膜厚250nmのレジスト下層膜を形成した。分光エリプソメータ(J.A.WOOLLAM社の「M2000D」)を用い、形成されたレジスト下層膜の波長193nmにおける屈折率及び吸光係数を測定した。このとき、屈折率が1.3以上1.6以下かつ吸光係数が0.2以上0.8以下の場合、「良好」と評価できる。
【0203】
[エッチング耐性]
まず、スピンコート法により、直径8インチのシリコンウエハ上に、膜形成用組成物をスピンコートして、膜厚300nmの下層膜を形成した。その後、この下層膜を、エッチング処理(圧力:0.03Torr、高周波電力:3000W、Ar/CF
4=40/100sccm、基板温度:20℃)し、エッチング処理後の下層膜の膜厚を測定した。そして、膜厚の減少量と処理時間との関係からエッチングレート(nm/分)を算出し、比較例に対する比率を算出した。この値が小さいほど、エッチング耐性が良好である。
【0204】
[耐熱性]
直径8インチのシリコンウエハ上に、各膜形成用組成物をスピンコートして塗膜(レジスト下層膜)を形成し、この塗膜の膜厚を上記分光エリプソメータを用いて測定した(この測定値をXとする)。次に、このレジスト下層膜を350℃で120秒間加熱し、加熱後のレジスト下層膜の膜厚を上記分光エリプソメータを用いて測定した(この測定値をYとする)。そして、加熱前後のレジスト下層膜の膜厚減少率△FT(%)(△FT(%)=100×(X−Y)/X)を算出し、この算出値を耐熱性(%)とした。なお、耐熱性(%)の値が小さいほど、レジスト下層膜の加熱時に発生する昇華物や膜分解物が少なく、耐熱性が高く、良好であることを表している。
【0205】
[平坦性]
幅42nm、ピッチ84nm、深さ180nmのトレンチ(アスペクト比:4.3)、幅100nm、ピッチ150nm、深さ180nmのトレンチ(アスペクト比:1.8)、幅5μm、深さ180nmのトレンチ(オープンスペース)(アスペクト比:0.036)が混在するSiO
2段差基板(互いに異なるアスペクト比における最大値と最小値の比:119)上に、上記実施例及び比較例の膜形成用組成物をそれぞれ塗布した。その後、大気雰囲気下にて、250℃で60秒間焼成(ベーク)して、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成した。このレジスト下層膜の形状を走査型電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテック製)にて観察し、Trench又はスペース上におけるレジスト下層膜の膜厚の最大値と最小値の差(ΔFT)を測定した。平坦性はこのΔFTが20nm未満の場合は「A」(良好)と、20nm以上の場合は「B」(不良)と評価した。
【0206】
上記評価結果を、実施例1〜9の膜形成用組成物については表3に、実施例10〜13の膜形成用組成物については表4に示す。
【0207】
【表3】
【0208】
【表4】
【0209】
表3及び表4から明らかなように、実施例の膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜は、屈折率、吸光係数及びエッチング耐性についての一般特性を満たすと共に、比較例の膜形成用組成物から形成されるレジスト下層膜に比べ、高い耐熱性及び高い平坦性を有する。