特許第6361662号(P6361662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361662
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】ポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/85 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
   C08G63/85
【請求項の数】3
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-537957(P2015-537957)
(86)(22)【出願日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2014074626
(87)【国際公開番号】WO2015041271
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2017年5月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-195167(P2013-195167)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】家門 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】池側 圭一
(72)【発明者】
【氏名】内藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】田畑 啓一
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−519903(JP,A)
【文献】 特開2009−046593(JP,A)
【文献】 特開2012−077112(JP,A)
【文献】 特表2009−508988(JP,A)
【文献】 特表2008−534739(JP,A)
【文献】 特表2008−519883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00−63/91
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーを製造する工程と、次いで、
このオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る工程を有し
上記2つの工程のうち、少なくとも上記オリゴマーを溶融重縮合させる工程において、窒化チタンと重縮合触媒としての表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子との存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得
次いで、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させて、固相重縮合物としてのポリエステルを得る工程
を含むポリエステルの製造方法。
【請求項2】
ジカルボン酸が芳香族ジカルボン酸であり、グリコールがアルキレングリコールであり、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーが芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーである請求項1に記載のポリエステルの製造方法。
【請求項3】
得られるポリエステルに対して窒化チタンをチタン換算で3〜50重量ppmの範囲で存在させると共に、前記重縮合触媒を5〜500重量ppmの範囲で存在させる請求項1に記載のポリエステルの製造方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリエステルの製造方法に関し、詳しくは、加熱されたとき、b* 値が上昇しない熱的性質を有し、従って、すぐれた耐熱性を有し、加熱されても、黄色味が強められないポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等に代表されるポリエステルは、機械的特性と化学的特性にすぐれており、それぞれの特性に応じて、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気、電子部品のケーシング、その他の種々の成形品や部品等の広範な分野において用いられている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分を主たる構成成分とするポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応や、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とこれを含むオリゴマーを製造し、これを重縮合触媒の存在下に真空中、高温下に溶融重縮合させることによって製造されている。
【0004】
更に、PETボトルとして知られているポリエステル二軸延伸ボトル用途には、得られるボトルが十分な強度を有するように、繊維やフィルム用途よりも高分子量のポリエステルが必要であり、そのため、上記溶融重縮合物を更に加熱し、固相重縮合して、一層、高分子量としたポリエステルが用いられる。
【0005】
従来、このようなポリエステル製造用重縮合触媒としては、三酸化アンチモンがよく知られている。三酸化アンチモンは、安価ですぐれた触媒活性をもつ触媒であるが、ポリエステル原料の重縮合時に金属アンチモンが析出して、得られるポリエステルが黒ずみ、また、得られるポリエステルに異物が混入するという問題がある。加えて、三酸化アンチモンは、本来、毒性を有するところから、近年においては、アンチモンを含まない触媒の開発が望まれている。
【0006】
このような事情の下、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとのエステル交換によるポリエステル製造用重縮合触媒として、例えば、グリコールチタネートや(特許文献1参照)、テトラアルコキシチタンが提案されており(特許文献2参照)、最近では、ハロゲン化チタンやチタンアルコキシドを加水分解してチタン水酸化物を得、これを30〜350℃の温度で加熱して、脱水、乾燥し、かくして得られる固体状のチタン化合物を重縮合触媒として用いることが提案されている(特許文献3及び4参照)。
【0007】
上述したような従来のチタン系触媒は、多くの場合、高い重合活性を有するが、一方、そのようなチタン系触媒を用いて得られるポリエステルは、そのチタン系触媒の高い重合活性に由来して、黄色に着色する傾向が強く、溶融成形時にも熱劣化して、一層、黄色味が強められるという問題がある。
【0008】
上述したように、ポリエステルの固相重縮合は、溶融重縮合によって得られたポリエステルを更に加熱して、より高分子量のポリエステルを得るものであり、また、ポリエステル二軸延伸ボトルは、通常、ポリエステルをプレフォームに成形し、これを再加熱した後、ブロー金型内で縦方向に延伸し、次いで、横方向に延伸して得られる。
【0009】
特に、上述したポリエステル二軸延伸ボトルの製造においては、上記プレフォームを延伸ブロー成形に適する温度まで、より少ない時間でより少ない熱エネルギー量にて、再加熱することができるように、プレフォームにはすぐれた再加熱性が求められる。また、一方において、上述したように、従来のチタン系触媒を用いて得られるポリエステルが黄色味を有するところ、特に、水等の飲料容器には青味の色調が好まれており、従って、二軸延伸ボトル用のポリエステルには、青味の色調を有するように、その色調の改善もまた、求められている。
【0010】
そこで、従来、上述したポリエステルの再加熱性と色調の改善のために、従来の重縮合触媒を用いて得られた固相重縮合による二軸延伸ボトル製造用ポリエステルに微量の窒化チタンを配合してプレフォームを製造し、このプレフォームを延伸ブロー成形して二軸延伸ボトルを製造する方法が提案されている(特許文献6参照)。
【0011】
また、従来の重縮合触媒を用いるポリエステルの製造段階の任意の時点において、例えば、ポリエチレンテレフタレートの製造の場合であれば、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応や、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とこれを含むオリゴマーを製造する段階や、また、上記オリゴマーを溶融重縮合する段階のいずれかにおいて、窒化チタンを上記反応系に加える方法も提案されている(特許文献7参照)。
【0012】
このように、従来の重縮合触媒を用いて得られたポリエステルは、上述したように、種々の段階で種々の目的で加熱されるが、このとき、ポリエステルは、色相調整剤を含んでいても、一部が熱分解して、黄色味が強められるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特公昭46−3395号公報
【特許文献2】特開昭49−57092号公報
【特許文献3】特開2001−64377号公報
【特許文献4】特開2001−114885号
【特許文献5】特開2006−188567号公報
【特許文献6】特表2007−530762号公報
【特許文献7】特表2008−519903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような問題を解決するために、既に、最近、水酸化マグネシウムやハイドロタルサイトのような固体塩基粒子の表面にチタン酸被覆層を有するという粒子構造を有する粒子状チタン酸触媒がポリエステル製造用重縮合触媒として本発明者らによって提案されている(特許文献5参照)。
【0015】
以下、本発明においては、このように、固体塩基粒子の表面にチタン酸被覆層を有せしめてなる粒子構造を有するチタン酸触媒を単に粒子状チタン酸触媒ということがある。
【0016】
本発明者らは、この粒子状チタン酸触媒を用いるポリエステルの製造について、更に、研究を重ねた結果、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーを製造する工程と、次いで、このオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むポリエステルの製造方法において、上記2つの工程のうち、少なくとも上記オリゴマーを溶融重縮合させる工程において、窒化チタンと上記粒子状チタン酸触媒との存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させることによって、加熱によっても、b* 値が上昇せず、従って、黄色味が強められない、耐熱性にすぐれたポリエステルを得ることができることを見出して本発明に到ったものである。
【0017】
従って、本発明は、加熱によっても、b* 値が上昇せず、従って、黄色味が強められない、耐熱性にすぐれたポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーを製造する工程と、次いで、このオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むポリエステルの製造方法において、上記2つの工程のうち、少なくとも上記オリゴマーを溶融重縮合させる工程において、窒化チタンと重縮合触媒としての表面にチタン酸被覆層を有する固体塩基粒子との存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得ることを特徴とするポリエステルの製造方法が提供される。
【0019】
窒化チタンは、その名称の意味するとおり、チタンの窒化物であって、常温で固体であり、融点は約2950℃である。組成的には、窒化チタンは一般的にはTiNなる組成を有するが、TiN0.42からTiN1.16の幅広い範囲で安定であることが知られている。
【0020】
更に、本発明によれば、上述したポリエステルの製造方法において、更に、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させて、固相重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含む方法が提供される。
【0021】
このような本発明によるポリエステルの製造方法において、好ましくは、ジカルボン酸は芳香族ジカルボン酸であり、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体はジカルボン酸ジアルキルエステルであり、グリコールはアルキレングリコールであり、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーは芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーである。
【0022】
また、上記固体塩基は、好ましくは、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトである。
【0023】
本発明によれば、窒化チタンは、得られるポリエステルに対して、チタン換算で3ppm以上、特に、5ppm以上存在させることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の方法によれば、窒化チタンを併用せずに、上述した粒子状チタン酸触媒のみを用いる方法によって得られるポリエステルと相違して、窒化チタンと粒子状チタン酸触媒を併用することによって、溶融重縮合及び固相重縮合のいずれにおいても、加熱によっても、b* 値が上昇せず、従って、黄色味が強められない、耐熱性にすぐれたポリエステルを得ることができる。
【0025】
更に、本発明の方法によれば、特に、粒子状チタン酸触媒として、表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子と窒化チタンを併用することによって、固相重縮合によるポリエステルの製造において、窒化チタンを併用しない場合に比べて、単位時間当たりの固有粘度の増加率を高め、従って、固相重縮合速度をより大きくして、ポリエステルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によるポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含むオリゴマーを製造する工程と、次いで、このオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むポリエステルの製造方法において、上記2つの工程のうち、少なくとも上記オリゴマーを溶融重縮合させる工程において、窒化チタンと重縮合触媒としての表面にチタン酸被覆層を有する固体塩基粒子との存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得ることを特徴とする。
【0027】
また、本発明によれば、上述したポリエステルの製造方法において、更に、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させて、固相重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含む方法が提供される。
【0028】
本発明によるポリエステルの製造方法においては、ポリエステル製造のための重縮合触媒として、粒子状チタン酸触媒、即ち、前述したように、表面にチタン酸被覆層を有する固体塩基粒子が用いられる。
【0029】
上記固体塩基としては、例えば、アルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、種々の複合酸化物のほか、アルミニウム、亜鉛、ランタン、ジルコニウム、トリウム等の酸化物等や、これらの複合物を挙げることができる。これらの酸化物や複合物は、一部が炭酸塩等の塩類にて置換されていてもよい。従って、固体塩基として、より具体的には、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛等の酸化物や水酸化物、例えば、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛等や、ハイドロタルサイト等の複合酸化物を例示することができる。なかでも、本発明によれば、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトが好ましく用いられる。
【0030】
チタン酸とは、化学式
TiO2 ・nH2
(式中、nは0<n≦2を満たす数である。)
で表される含水酸化チタンであって、このようなチタン酸は、例えば、後述するように、ある種のチタン化合物を分解することによって得ることができる。
【0031】
粒子状チタン酸触媒において、固体塩基100重量部に対して、チタン酸被覆層の割合がTiO2 換算で0.1重量部よりも少ないときは、得られる粒子状チタン酸触媒の重合活性が低く、高分子量のポリエステルを生産性よく得ることができない。他方、固体塩基100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO2 換算で50重量部よりも多いときは、ポリエステルの製造に際して、触媒に由来するとみられる副反応によるポリエステルの分解が起こりやすい。
【0032】
このような粒子状チタン酸触媒は、固体塩基粒子の水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃の温度に保持しつつ、これに固体塩基100重量部に対してTiO2 換算にて0.1〜50重量部の水溶性チタン化合物を加え、必要に応じて、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリー中の上記水溶性チタン化合物をpH5〜12、好ましくは、7〜10で上記水溶性チタン化合物を加水分解して、固体塩基の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する固体塩基の粒子の水スラリーを濾過し、得られたケーキを水洗し、乾燥し、得られた塊状物を解砕することによって得ることができる。上記乾燥温度は、好ましくは、60〜180℃の範囲であり、特に好ましくは、100〜130℃の範囲である。
【0033】
粒子状チタン酸触媒は別の方法によっても得ることができる。固体塩基粒子の水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃に保持しつつ、これに固体塩基100重量部に対してTiO2 換算にて0.1〜50重量部の水溶性チタン化合物とアルカリとを同時に加えて、必要に応じて、更にアルカリを加えて、pH5〜12、好ましくは、7〜10で加水分解して、同様に固体塩基の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、60〜180℃の温度で乾燥し、粉砕することによって得ることができる。
【0034】
上記水溶性チタン化合物としては、例えば、四塩化チタンのようなハロゲン化チタン、硫酸チタン、硝酸チタンのような無機酸塩、シュウ酸チタンのような有機酸塩、シュウ酸チタニルアンモニウムのようなチタン酸塩等を挙げることができるが、なかでも、四塩化チタンのようなハロゲン化チタンが好ましく用いられる。
【0035】
上記アルカリとしては、特に、限定されるものではないが、通常、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、水酸化リチウムのようなアルカリ金属水酸化物が好ましく用いられる。
【0036】
上述したように、固体塩基は、好ましくは、水酸化マグネシウム又はハイドロタルサイトである。
【0037】
水酸化マグネシウム粒子の水スラリーとは、例えば、塩化マグネシウムや硝酸マグネシウム等のような水溶性マグネシウム塩の水溶液を水酸化ナトリウムやアンモニア等のアルカリで中和し、水酸化マグネシウムを沈殿させて得られる水スラリーや、水酸化マグネシウム粒子を水中に分散して得られるスラリーをいう。このような水溶性マグネシウム塩の水溶液をアルカリで中和して、水酸化マグネシウムの水スラリーを得る場合、水溶性マグネシウム塩の水溶液とアルカリとを同時中和してもよく、また、一方を他方に加えて中和してもよい。
【0038】
また、上記水酸化マグネシウム粒子は、その由来は、何ら制約されるものではなく、例えば、天然鉱石を粉砕して得られた粉末、マグネシウム塩水溶液をアルカリで中和して得られた粉末等であってもよい。
【0039】
ハイドロタルサイトは、好ましくは、下記一般式(I)
2+1−x3+(OH)n−x/n・mH2O …(I)
(式中、M2+はMg2+、Zn2+及びCu2+から選ばれる少なくとも1種の2価金属イオンを示し、M3+はAl3+、Fe3+及びTi3+から選ばれる少なくとも1種の3価金属イオンを示し、An− はSO2−、Cl、CO2− 及びOHから選ばれる少なくとも1種のアニオンを示し、nは上記アニオンの価数を示し、xは0<x<0.5を満足する数であり、mは0≦m<2を満足する数である。)
で表される。
【0040】
特に、M2+がMg2+であり、M3+がAl3+であり、An− がCO2− であるハイドロタルサイト、即ち、一般式(II)
Mg2+1−xAl3+(OH)(CO2−)x/2・mH2O …(II)
(式中、x及びmは前記と同じである。)
で表されるハイドロタルサイトが好ましく用いられる。
【0041】
このようなハイドロタルサイトは市販品として容易に入手することができるが、必要に応じて、適宜の原料を用いて、従来からり知られている方法、例えば、水熱法によって製造することもできる。
【0042】
ハイドロタルサイト粒子の水スラリーとは、上述したようなハイドロタルサイト粒子を水に分散して得られるスラリーをいう。
【0043】
本発明によるポリエステルの製造において、ジカルボン酸としては、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸等によって例示される脂肪族ジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等によって例示される芳香族ジカルボン酸を挙げることができ、それらジカルボン酸のエステル形成性誘導体として、例えば、ジアルキルエステルを挙げることができる。
【0044】
また、本発明において、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を例示することができる。
【0045】
上述したなかでは、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられ、また、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール等のアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0046】
従って、本発明において、ポリエステルの好ましい具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができる。
【0047】
しかし、本発明において、ポリエステル原料として用いることができるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体やグリコールは、上記例示に限定されるものではなく、また、得られるポリエステルも、上記例示に限定されるものではない。
【0048】
ポリエチレンテレフタレートにて代表されるポリエステルは、通常、以下の方法によって製造されている。即ち、第1は、テレフタル酸に代表されるジカルボン酸とエチレングリコールに代表されるグリコールとの直接エステル化反応によって、前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを粒子状チタン酸触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得るものである。
【0049】
第2は、ジメチルテレフタレートに代表されるテレフタル酸ジアルキルエステルとエチレングリコールに代表されるグリコールとのエステル交換反応によって、同様に、前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを粒子状チタン酸触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得るものである。
【0050】
より詳しくは、上記低分子量のオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、通常、240〜280℃の範囲のポリエチレンテレフタレートの融点よりも高い温度、例えば、280〜290℃程度の温度で減圧下に加熱し、未反応のエチレングリコールと反応によって生成したエチレングリコールを反応系外に留去しつつ、同時に、溶融反応物の粘度をモニタリングしながら、上記低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させてポリエステルを得る。
【0051】
この重縮合反応は、必要に応じて、複数の重縮合反応槽を用いて、それぞれの重縮合反応槽において、反応温度と圧力を最適に変更させながら行ってもよい。反応混合物の粘度が所要値に達すれば、減圧を止め、例えば、窒素ガスにて重縮合反応槽内を常圧に戻して、得られたポリエステルを重縮合反応槽から、例えば、ストランド状に吐出させ、急水冷し、切断して、ペレットとする。本発明によれば、このようにして、通常、固有粘度(IV)が0.5〜0.9dL/gのポリエステルを得ることができる。
【0052】
ボトル用途のポリエステルには、繊維やフィルム用途のポリエステルよりも高分子量のものが要求される。このようなより高分子量のポリエステルは、既に、知られているように、通常、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合することによって得ることができる。
【0053】
本発明によるポリエステルの製造方法においては、上述した従来のポリエステルの製造方法において、重縮合触媒として、上述した粒子状チタン酸触媒を用いると共に、これに窒化チタンを併用すればよい。
【0054】
即ち、本発明の方法においては、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含む前記低分子量のオリゴマーを製造する工程と、次いで、この低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むポリエステルの製造方法において、上記2つの工程のうち、少なくとも上記オリゴマーを溶融重縮合させる工程において、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンの存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得る。
【0055】
ポリエチレンテレフタレートの製造の場合であれば、前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させる工程において、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンの存在下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを溶融重縮合物として得る。
【0056】
更に、本発明の方法は、上述したポリエステルの製造方法において、更に、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させて、固相重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むことができる。
【0057】
本発明の方法によれば、通常、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンの存在下に前記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得る。従って、本発明において、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを更に固相重縮合させる場合、上記溶融重縮合物としてのポリエステルは既に粒子状チタン酸触媒と窒化チタンを含んでいるので、その固相重縮合に際しては、新たに粒子状チタン酸触媒及び/又は窒化チタンを用いる必要はない。しかし、場合によっては、固相重縮合に際して、新たに粒子状チタン酸触媒及び/又は窒化チタンをポリエステルに加えて、固相重縮合させてもよい。例えば、溶融重縮合によって得られたポリエステルを粒子状チタン酸触媒及び/又は窒化チタンと溶融混合し、これを固相重縮合に供すればよい。
【0058】
ポリエステルの固相重縮合は、より詳しくは、溶融重縮合によって得られたポリエステルを真空下又は不活性ガス又は炭酸ガスの流通下に温度100〜200℃で乾燥し、次いで、温度150〜200℃で結晶化させた後、ポリエステルの融点よりも低い温度、代表的には、200〜230℃程度の温度にポリエステルを加熱して固相重縮合させる。本発明によれば、このようにして、通常、固有粘度(IV)が0.7〜1.2dL/gのポリエステルを固相重縮合物として得ることができる。
【0059】
但し、本発明によるポリエステルの製造方法において、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンは、前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含むオリゴマーの製造のための直接エステル化反応やエステル交換反応時に反応系に加えてもよい。
【0060】
また、上述した粒子状チタン酸触媒と窒化チタンは、これらを混合して、そのまま、反応系に加えてもよいが、本発明によれば、これらを原料として用いるグリコールに分散させて、反応系に加えることが好ましい。
【0061】
特に、本発明においては、用いる粒子状チタン酸触媒がグリコール、特に、エチレングリコールに容易に分散させることができるので、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとし、一方、前記オリゴマーを重縮合反応槽に仕込み、加熱し、溶融させ、これに上記スラリーを加えて、前記オリゴマーを溶融重縮合させることが好ましい。
【0062】
ここで、本発明に従って、前述したオリゴマーを溶融重縮合させる工程において、用いる粒子状チタン酸触媒と窒化チタンの量について説明する。
【0063】
本発明において、粒子状チタン酸触媒は、得られるポリエステルに対して、5〜500重量ppmの範囲、好ましくは、10〜500重量ppmの範囲で用いられる。以下、本発明において、ppmは重量ppmを意味する。得られるポリエステルに対して5ppmよりも少ないときは、触媒活性が十分でなく、目的とする高分子量のポリエステルを得ることができないおそれがあり、他方、得られるポリエステルに対して500ppmよりも多いときは、得られるポリエステルが熱安定性に劣るおそれがある。
【0064】
本発明によれば、窒化チタンは、得られるポリエステルに対して、通常、チタン換算で3ppm以上、好ましくは、5ppm以上が用いられる。窒化チタンの使用量が得られるポリエステルに対してチタン換算で3ppmよりも少ないときは、目的とする耐熱性にすぐれたポリエステルを得ることが困難である。
【0065】
即ち、本発明によれば、得られるポリエステルに対して、窒化チタンをチタン換算で3ppm以上用いることによって、加熱によっても、b* 値が上昇せず、従って、黄色味が強められない、耐熱性にすぐれるポリエステルを得ることができる。
【0066】
しかし、窒化チタンを余りに多量に用いても、ポリエステルにおいて、その使用量に見合う更なる耐熱性の向上はみられず、却って、ポリエステルの明度が低くなるので、通常、得られるポリエステルに対してチタン換算にて50ppm以下の範囲で、好ましくは、30ppm以下の範囲で、より好ましくは、20ppm以下の範囲で用いられる。
【0067】
本発明の方法によれば、溶融重縮合物としてのポリエステルについても、固相重縮合物としてのポリエステルについても、耐熱性にすぐれたポリエステルを得ることができる。
【0068】
本発明においては、窒化チタンを用いることによるポリエステルの耐熱性の向上の効果を評価するために、国際照明委員会(CIE)が1974年に定めたL*** 表色系のうち、b* 値を用いて、加熱前後のb* 値の変化量(△b*)を耐熱性の向上の指標として用いる。ここに、上記L*** 表色系において、L* 値は明度を表し、a* 値とb* 値は色度、即ち、色相と彩度を表す。L* 値は、値が大きい程、白いことを示し、値が小さい程、黒いことを示す。白色のL* 値は100であり、黒色のL* 値は0である。a* 値が負の値であるときは緑色を示し、正の値であるときは赤色を示す。b* 値が負の値であるときは青色を示し、正の値であるときは黄色を示す。
【0069】
* 値は、このように、負の値も正の値もとり得るので、本発明においては、b* 値がb0 からb1 に変化したとき、b1 −b0 が正の値であるとき、b* 値が上昇したと表現し、b1 −b0 が負の値であるとき、b* 値が低下したと表現する。従って、例えば、b* 値が1.5から−1.0に変化したとき、b* 値の変化量(△b*)は−2.5であり、b* 値が1.5から−1.5に変化したとき、b* 値の変化量(△b*)は−3.0であるので、後者の場合、前者に比べて、b* 値はより低下したと表現する。
【0070】
一般にポリエステルは、加熱されると、一部、熱分解して、黄色味が強められる。従って、ポリエステルを加熱したとき、そのb* 値の変化によって、色調の黄色味又は青色味への変化の程度を評価することができる。従って、ポリエステルを加熱したとき、b* 値の変化量(△b*)が正の値であれば、ポリエステルは黄色味が強められたのであり、熱分解が進んだことを示す。反対に、b* 値の変化量(△b*)が正の値でなければ、ポリエステルは黄色味が強められず、従って、熱劣化が起こっていないことを示し、耐熱性が向上したことが示される。
【0071】
本発明の方法によって得られたポリエステルは、加熱されたとき、加熱前後のb* 値の変化量(△b*)は正の値ではないので、上述したように、耐熱性にすぐれており、その色相は、黄色味が強められていない。
【0072】
特に、本発明の方法によって得られる溶融重縮合物としてのポリエステルは、後述する耐熱試験においてみられるように、加熱後のb* 値の変化量(△b*)は負の値である。
【0073】
同様に、本発明の方法によって得られる固相重縮合としてのポリエステルも、溶融重縮合物としてのポリエステルと比較して、b* 値の変化量(△b*)は負の値である。即ち、溶融重縮合物としてのポリエステルを加熱して、固相重縮合物としてのポリエステルを得たとき、その間のb* 値の変化量(△b*)は負の値である。更に、固相重縮合物としてのポリエステルも、加熱後のb* 値の変化量(△b*)は負の値である。
【0074】
また、本発明の方法によれば、溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させるとき、特に、粒子状チタン酸触媒がハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸被覆層を有するものである場合には、窒化チタンと併用することによって、粒子状チタン酸触媒のみを用いる場合に比べて、より高い固相重縮合速度にて、即ち、時間当たり、より高い固有粘度の増加率にて、しかも、b*値がより低下して、色調にすぐれたより高分子量のポリエステルを得ることができる。
【0075】
本発明によれば、ポリエステルの製造において、本発明による粒子状チタン酸触媒を用いる利点を損なわない範囲において、従来から知られている重縮合触媒、例えば、アンチモン、ゲルマニウム、コバルト、亜鉛、マンガン、チタン、スズ、アルミニウム等の化合物からなる重縮合触媒を併用してもよい。更に、得られるポリエステルの熱安定性を向上させるために、また、着色を防止するために、必要に応じて、安定剤の存在下に重縮合を行ってもよい。
【0076】
上記安定剤は、ポリエステル原料の重縮合の任意の時点で反応系に加えることができる。上記安定剤としては、例えば、リン酸、リン酸ナトリウムやリン酸カリウムのようなリン酸塩類、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル類、亜リン酸、亜リン酸ナトリウムや亜リン酸カリウムのような亜リン酸塩類、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、ポリリン酸等のリン化合物を挙げることができる。これらの安定剤は、リンとして、得られるポリエステルに対して、1〜100ppm、好ましくは、5〜50ppmの範囲で用いられる。
【実施例】
【0077】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0078】
参考例1
(ハイドロタルサイトの水スラリーの調製)
3.8モル/L濃度の硫酸マグネシウム水溶液2.6Lと0.85モル/L濃度の硫酸アルミニウム水溶液2.6Lとの混合溶液と9.3モル/L濃度の水酸化ナトリウム水溶液2.8Lと2.54モル/L濃度の炭酸ナトリウム水溶液2.6Lとの混合溶液を攪拌下に同時に反応器に加えた後、180℃で2時間水熱反応を行った。反応終了後、得られたスラリーを濾過、水洗した後、乾燥、粉砕して、Mg0.7 Al0.3 (OH)2 (CO3)0.15・0.48H2O なる組成を有するハイドロタルサイトを得た。このハイドロタルサイトを水に懸濁させて、ハイドロタルサイトの水スラリー(123g/L)を得た。
【0079】
参考例2
(水酸化マグネシウムの水スラリーの調製)
水5Lを反応器に仕込み、これに4モル/Lの塩化マグネシウム水溶液16.7Lと14.3モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液8.4Lとを撹拌下に同時に加えた後、170℃で0.5時間水熱反応を行った。このようにして得られた水酸化マグネシウムを濾過、水洗し、得られたケーキを水に再び懸濁させて、水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)を得た。
【0080】
実施例1
(粒子状チタン酸触媒Aの調製)
参考例1で得られたハイドロタルサイトの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ。四塩化チタン水溶液((株)大阪チタニウムテクノロジーズ製、TiO2 換算で69.2g/L)3.2Lと水酸化ナトリウム水溶液((株)トクヤマ製、NaOH換算で99.6g/L)3.2Lを同時に上記ハイドロタルサイトの水スラリーにそのpHが9.0になるように8時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸被覆層を形成した。
【0081】
このようにして得られた表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子の水スラリーを濾過し、得られたケーキを水洗し、乾燥し、得られた乾燥物を解砕して、表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子からなる粒子状チタン酸触媒Aを得た。この粒子状チタン酸触媒におけるチタン酸被覆の割合はハイドロタルサイト100重量部に対してTiO換算で20重量部であった。
【0082】
(ポリエステルa−1の製造)
ビスヒドロキシエチルテレフタレート(ペットリファインテクノロジー(株)製、以下、同じ)500gを1L重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス流通下、撹拌しながら、加熱して、上記ビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融させ、更に、240℃まで昇温した。
【0083】
粒子状チタン酸触媒Aの0.019g(得られるポリエステルに対して50ppm、チタン換算で5ppm)と平均粒子径が0.15μmの窒化チタン(和光純薬(株)製、以下、同じ)0.0025g(得られるポリエステルに対して6.5ppm、チタン換算で5ppm)を予めエチレングリコールに分散させてスラリーとし、このスラリーを上記反応槽に加え、その10分後に安定剤として85重量%濃度のリン酸水溶液(和光純薬(株)製、以下、同じ)0.028g(リン酸0.024g、リンとして得られるポリエステルに対して20ppm)を予めエチレングリコールに溶解させた溶液を加えた。
【0084】
この後、反応槽を1時間かけて240℃から280℃まで昇温すると同時に、1時間かけて常圧から130Paに減圧し、この温度と圧力を維持しながら、撹拌機のモーターにかかる負荷が所定値になるまで、溶融重縮合反応を行った。
【0085】
重縮合反応の終了後、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られた溶融状態のポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断してポリエステルa−1のペレットを得た。
【0086】
このようなビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合によるポリエステルの製造における溶融重縮合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0087】
(ポリエステルa−1の耐熱試験)
耐熱試験として、上記ポリエステルa−1のペレット50gを磁性皿に入れ、大気中、電気炉を用いて、3時間かけて、205℃まで昇温し、この温度で16時間、加熱した。このような耐熱試験前後のポリエステルのペレットの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0088】
(ポリエステルa−2の製造)
上記原料ポリエステルa−1のペレット20gを固定床流通反応器に仕込んだ後、窒素気流下、160℃で4時間かけて乾燥させ、更に、190℃で1時間かけて結晶化させた。このように処理したポリエステルのペレットを窒素気流下、208℃で18時間加熱し、ポリエステルの固相重縮合を行って、ポリエステルa−2のペレットを得た。
【0089】
原料ポリエステルa−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルa−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差(△IV)、原料ポリエステルa−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルa−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。上記固有粘度差(△IV)とは、固相重縮合によって得られたポリエステルa−2の固有粘度から原料ポリエステルa−1の固有粘度を減じた値である。
【0090】
(ポリエステルa−2の耐熱試験)
上記ポリエステルa−2について、上記ポリエステルa−1の耐熱試験と同じ方法によって耐熱試験を行った。このような耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0091】
実施例2
(ポリエステルb−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0049g(得られるポリエステルに対して13ppm、チタン換算で10ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルb−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0092】
上記ポリエステルb−1について、ポリエステルa−1と同じ方法にて耐熱試験を行って、耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0093】
(ポリエステルb−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルb−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルb−2のペレットを得た。
【0094】
原料ポリエステルb−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルb−2のそれぞれの固有粘度、固相重縮合速度、原料ポリエステルb−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルb−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0095】
上記ポリエステルb−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0096】
実施例3
(ポリエステルc−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0098g(得られるポリエステルに対して26ppm、チタン換算で20ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルc−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0097】
上記ポリエステルc−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0098】
(ポリエステルc−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルc−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルc−2のペレットを得た。
【0099】
原料ポリエステルc−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルc−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルc−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルc−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0100】
上記ポリエステルc−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行って、このような耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0101】
実施例4
(粒子状チタン酸触媒Bの調製)
参考例2で得られた水酸化マグネシウムの水スラリー(123g/L)9.0Lを25L容量の反応器に仕込んだ。四塩化チタン水溶液(TiO2 換算で69.2g/L)3.2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で99.6g/L)3.2Lを同時に上記四塩化チタン水溶液にそのpHが10.0になるように8時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間熟成して、水酸化マグネシウム粒子の表面にチタン酸被覆層を形成した。
【0102】
このようにして得られた表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、得られたケーキを水洗し、乾燥し、得られた乾燥物を解砕して、表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子からなる粒子状チタン酸触媒Bを得た。この粒子状チタン酸触媒におけるチタン酸被覆の割合は水酸化マグネシウム100重量部に対してTiO換算で20重量部であった。
【0103】
(ポリエステルd−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Bの0.019g(得られるポリエステルに対して50ppm、チタン換算で5ppm)と窒化チタン0.0025g(得られるポリエステルに対して6.5ppm、チタン換算で5ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルd−1のペレットを得た。
【0104】
このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0105】
上記ポリエステルd−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0106】
(ポリエステルd−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルd−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルd−2のペレットを得た。
【0107】
原料ポリエステルd−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルd−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルd−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルd−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0108】
上記ポリエステルd−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行って、このような耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0109】
実施例5
(ポリエステルe−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0049g(得られるポリエステルに対して13ppm、チタン換算で10ppm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、ポリエステルe−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0110】
上記ポリエステルe−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0111】
(ポリエステルe−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルe−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルe−2のペレットを得た。
【0112】
原料ポリエステルe−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルe−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルe−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルe−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0113】
上記ポリエステルe−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0114】
実施例6
(ポリエステルf−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0098g(得られるポリエステルに対して26ppm、チタン換算で20ppm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、ポリエステルf−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0115】
上記ポリエステルf−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0116】
(ポリエステルf−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルf−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルf−2のペレットを得た。
【0117】
原料ポリエステルf−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルf−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルf−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルf−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0118】
上記ポリエステルf−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0119】
実施例7
(ポリエステルk−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0015g(得られるポリエステルに対して3.9ppm、チタン換算で3ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルk−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0120】
上記ポリエステルk−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0121】
(ポリエステルk−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルk−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルk−2のペレットを得た。
【0122】
原料ポリエステルk−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルk−2のそれぞれの固有粘度、固相重縮合速度、原料ポリエステルk−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルk−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0123】
上記ポリエステルk−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0124】
実施例8
(ポリエステルl−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、窒化チタン0.0015g(得られるポリエステルに対して3.9ppm、チタン換算で3ppm)を用いた以外は、実施例4と同様にして、ポリエステルl−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0125】
上記ポリエステルl−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0126】
(ポリエステルl−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルl−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルl−2のペレットを得た。
【0127】
原料ポリエステルl−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルl−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルl−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルl−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0128】
上記ポリエステルl−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0129】
実施例9
(ポリエステルm−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Aの0.008g(得られるポリエステルに対して20ppm、チタン換算で2ppm)、窒化チタン0.0025g(得られるポリエステルに対して6.5ppm、チタン換算で5ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルm−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0130】
上記ポリエステルm−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0131】
(ポリエステルm−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルm−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルm−2のペレットを得た。
【0132】
原料ポリエステルm−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルm−2のそれぞれの固有粘度、固相重縮合速度、原料ポリエステルm−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルm−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0133】
上記ポリエステルm−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0134】
実施例10
(ポリエステルn−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Aの0.189g(得られるポリエステルに対して500ppm、チタン換算で50ppm)、窒化チタン0.0098g(得られるポリエステルに対して26ppm、チタン換算で20ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルn−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0135】
上記ポリエステルn−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0136】
(ポリエステルn−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルn−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルn−2のペレットを得た。
【0137】
原料ポリエステルn−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルn−2のそれぞれの固有粘度、固相重縮合速度、原料ポリエステルn−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルn−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0138】
上記ポリエステルn−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0139】
比較例1
(ポリエステルg−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Aの0.019g(得られるポリエステルに対して50ppm、チタン換算で5ppm)を用いたが、窒化チタンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルg−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0140】
上記ポリエステルg−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後の色調b*の変化(△b*)を表2に示す。
【0141】
(ポリエステルg−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルg−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルg−2のペレットを得た。
【0142】
原料ポリエステルg−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルg−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルg−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルg−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0143】
上記ポリエステルg−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0144】
比較例2
(ポリエステルh−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Bの0.019g(得られるポリエステルに対して50ppm、チタン換算で5ppm)を用いたが、窒化チタンを用いなかった以外は、実施例4と同様にして、ポリエステルh−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0145】
上記ポリエステルh−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0146】
(ポリエステルh−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルh−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルh−2のペレットを得た。
【0147】
原料ポリエステルh−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルh−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルh−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルh−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0148】
上記ポリエステルh−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0149】
比較例3
(ポリエステルi−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、触媒として、窒化チタン0.049g(得られるポリエステルに対して130ppm、チタン換算で100ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルi−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度、色調を表1に示す。
【0150】
上記ポリエステルi−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0151】
(ポリエステルi−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルi−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルi−2のペレットを得た。
【0152】
原料ポリエステルi−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルi−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルi−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルi−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0153】
上記ポリエステルi−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0154】
比較例4
(ポリエステルj−1の製造方法)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Aの0.019g(得られるポリエステルに対して50ppm、チタン換算で5ppm)と共に、窒化チタンに代えて、青色色調調整剤であるソルベント・ブルー104の0.0006g(得られるポリエステルに対して1.5ppm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルj−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度、色調を表1に示す。
【0155】
上記ポリエステルj−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表2に示す。
【0156】
(ポリエステルj−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルj−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルj−2のペレットを得た。
【0157】
原料ポリエステルj−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルj−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルj−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルj−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0158】
上記ポリエステルj−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0159】
比較例5
(ポリエステルo−1の製造とその耐熱試験)
ビスヒドロキシエチルテレフタレートの溶融重縮合において、粒子状チタン酸触媒Aの0.189g(得られるポリエステルに対して500ppm、チタン換算で50ppm)を用いたが、窒化チタンを用いなかった以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルo−1のペレットを得た。このようなポリエステルの製造における溶融重合時間、得られたポリエステルの固有粘度及び色調を表1に示す。
【0160】
上記ポリエステルo−1について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後の色調b*の変化(△b*)を表2に示す。
【0161】
(ポリエステルo−2の製造とその耐熱試験)
上記ポリエステルo−1のペレットを実施例1と同様にして固相重縮合させて、ポリエステルo−2のペレットを得た。
【0162】
原料ポリエステルo−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルo−2のそれぞれの固有粘度、固有粘度差、原料ポリエステルo−1とその固相重縮合によって得られたポリエステルo−2のそれぞれの色調とb* 値の変化量(△b*)を表3に示す。
【0163】
上記ポリエステルo−2について、実施例1と同様にして耐熱試験を行った。この耐熱試験前後のポリエステルの色調と耐熱試験前後のb* 値の変化量(△b*)を表4に示す。
【0164】
表1において、触媒含量及びTiN含量の欄の数値はそれぞれ、得られるポリエステルに対する触媒及びTiNの量(ppm)であり、触媒含量及びTiN含量の欄の括弧内の数値はそれぞれ、得られるポリエステルに対するチタン換算による触媒及びTiNの量(ppm)である。また、色調調整剤含量の欄の数値は、得られるポリエステルに対する量(ppm)である。
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
表1において、実施例1〜3、7、9及び10は、粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子(粒子状チタン酸触媒A)と窒化チタンの存在下にビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得たものであり、実施例4〜6及び8は、粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子(粒子状チタン酸触媒B)と窒化チタンの存在下にビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得たものである。
【0170】
比較例1及び2は、窒化チタンを併用することなしに、それぞれ上記粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子及び粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を用いて、ビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得たものである。
【0171】
実施例7、1、2及び3を比較例1と比較し、実施例8、4、5及び6を比較例2と比較し、また、実施例10を比較例5と比較すれば明らかなように、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンを併用して、ビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合させるとき、得られるポリエステルはいずれも、窒化チタンを併用しないそれぞれの比較例に比べて、b* 値は低下しており、しかも、窒化チタン量が増えるにつれて、b* 値はより低下している。従って、粒子状チタン酸触媒を用いるポリエステルの製造において、窒化チタンは、従来から知られているように、得られるポリエステルに黄色味を低減し、又は青色味を強める色相調整剤として機能している。
【0172】
青色色相調整剤として、従来からポリエステルに用いられている染料ソルベント・ブルー104を窒化チタンに代えて用いた場合は、比較例4に示すように、ポリエステルに対して1.5ppmの添加によって、窒化チタンを15ppm程度添加した場合と同じ色相改善効果がみられた。しかし、得られたポリエステルは、耐熱試験後、b* 値が上昇し、加熱によって耐熱性を向上させる効果はみられなかった。一方、窒化チタンは、単独では、比較例3に示すように、重合活性は低い。
【0173】
一般に、ポリエステルは、加熱されると、一部、熱劣化又は熱分解が起こって、黄色味が強められて、b* 値は上昇する。ここで、窒化チタンが得られるポリエステルに耐熱性を向上させる作用がなければ、粒子状チタン酸触媒と併用する窒化チタン量が増えても、得られるポリエステルのb* 値は変わらない。
【0174】
上述した表1に示すポリエステルペレットについて、前述した条件下に耐熱試験を行って、耐熱試験によるb* 値の変化を調べた。結果を表2に示す。
【0175】
実施例1〜10のいずれについても、耐熱試験後のb* 値は、耐熱試験前のb* 値に比較して、大幅に低下し、しかも、粒子状チタン酸触媒と併用する窒化チタン量が増えると共に、得られるポリエステルペレットのb* 値がより低下している。例えば、実施例7、1、2及び3の順に、得られるポリエステルペレットのb* 値がより低下している。同様に、実施例8、4、5及び6の順に、得られるポリエステルペレットのb* 値がより低下している。
【0176】
これに対して、窒化チタンの併用なしに、粒子状チタン酸触媒のみを用いて得られたポリエステルペレットは、比較例1及び2にみられるように、耐熱試験後、そのb* 値は耐熱試験前に比較して、僅かに上昇したか、僅かに低下したかにすぎず、いずれにしても、大幅に低下することはなかった。従って、本発明によれば、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンを併用して、得られたポリエステルペレットは、加熱されるときの耐熱性が向上していることが示される。
【0177】
表1中、それぞれの実施例及び比較例において得られた溶融重縮合物としてのポリエステルペレットを固相重縮合させて、それぞれ固相重縮合物としてのポリエステルペレットを得た。上記溶融重縮合物としてのポリエステルペレットと固相重縮合物としてのポリエステルペレットのそれぞれの色調とb* 値の変化量((△b*)を表3に示す。
【0178】
窒化チタンの併用なしに、粒子状チタン酸触媒のみを用いて、固相重縮合によって得られたポリエステルペレットは、比較例1及び2に示すように、原料である溶融重縮合物としてのポリエステルペレットに比較して、いずれも、b* 値は幾分、低下している。
【0179】
これに対して、本発明に従って、粒子状チタン酸触媒と窒化チタンを併用した固相重縮合によって得られたポリエステルペレットは、実施例1〜10のいずれにおいても、溶融重縮合物としてのポリエステルペレットに比較して、b* 値は大幅に低下しており、しかも、窒化チタンの量が多い程、b* 値がより低下しているので、固相重縮合のための加熱によって、耐熱性が向上していることが認められる。例えば、実施例7、1、2及び3の順に、固相重縮合物としてのポリエステルは、溶融重縮合物としてのポリエステルペレットに比較して、b* 値がより低下しており、同様に、実施例8、4、5及び6の順に、固相重縮合物としてのポリエステルは、溶融重縮合物としてのポリエステルペレットに比較して、b* 値がより低下している。
【0180】
更に、溶融重縮合によって得られたポリエステルペレットを粒子状チタン酸触媒と窒化チタンの存在下に固相重縮合させるとき、比較例1に対する実施例1〜3及び7にみられるように、粒子状チタン酸触媒として、表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子を用いて、これを窒化チタンと併用した場合、窒化チタンを併用しない場合と比較して、固相重縮合物の固有粘度と溶融重縮合物の固有粘度との差、即ち、固有粘度差(△IV)が大きい。即ち、固有粘度の単位時間当たりの増加率が高い。
【0181】
従って、粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子と窒化チタンを併用して、固相重縮合を行うことによって、窒化チタンを併用しない場合に比べて、より高い重縮合速度にて固相重縮合を行うことができる。
【0182】
固相重縮合によって得られたポリエステルを前述した方法と同様に耐熱試験を行った結果を表4に示す。
【0183】
比較例1及び2は、窒化チタンを併用することなしに、それぞれ粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子及び粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子を用いて、ビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得、これを固相重縮合してポリエステルを得、このポリエステルについて耐熱試験を行ったものである。
【0184】
実施例1〜3及び7は、粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有するハイドロタルサイト粒子と窒化チタンの存在下にビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得、これを固相重縮合してポリエステルを得、このポリエステルについて耐熱試験を行ったものである。
【0185】
実施例4〜6及び8は、粒子状チタン酸触媒として表面にチタン酸被覆層を有する水酸化マグネシウム粒子と窒化チタンの存在下にビスヒドロキシエチルテレフタレートを溶融重縮合してポリエステルを得、これを固相重縮合してポリエステルを得、このポリエステルについて耐熱試験を行ったものである。
【0186】
表4に示す結果から明らかなように、比較例1〜5においては、固相重縮合物としてポリエステルペレットは、耐熱試験前後のb* 値の変化量は正の値であり、従って、ポリエステルペレットは黄色味が強められている。
【0187】
これに対して、実施例1〜10においては、固相重縮合物としてポリエステルペレットの耐熱試験前後のb* 値の変化量は負の値であるので、ポリエステルペレットは黄色味が強められていない。従って、固相重縮合物としてポリエステルペレットは、加熱されるときの耐熱性が向上している。