(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなスパッタリングによる成膜を実行するワークの材質として、特に、メタクリル(PMMA)樹脂は、安価であるばかりではなく、透明度が高いことからミラー等に多用され、また、透明度によって高級感があることから、化粧品の容器等にも使用したいという要請が高い。しかしながら、メタクリル樹脂は、金属薄膜との密着性が低く、その表面に適正な金属薄膜を形成することが困難である。
【0007】
すなわち、メタクリル樹脂に対してスパッタリングにより金属の薄膜を形成した場合には、高いエネルギーを持った金属粒子がメタクリル樹脂の表面に入射することにより、メタクリル樹脂の分子鎖が切断されてメタクリル樹脂の表面が脆化する。そして、メタクリル樹脂の表面がこの脆化部分から剥離するという現象が発生する。
【0008】
図19は、メタクリル樹脂におけるAl膜剥離裏面に露出している元素組成を、X線光電子分光法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、XPS)により測定したwideスキャンスペクトルを示すグラフである。ここで、
図19における横軸は結合エネルギー(Binding Energy)を示し、縦軸はカウント数(CPS)を示している。
【0009】
このグラフに示すように、メタクリル樹脂の成分であるO(酸素)のO1s、O KLLピークが検出され、メタクリル樹脂の成分であるC(炭素)のC1sピークが検出されているのに対し、Al(アルミニウム)のAl2p、Al2sは、ピークが検出されていない。それぞれの元素について、化学結合によるシフトがなければ、C1s 274.5eV、O1s 531.0eV、Al2p 72.9eV、Al2s 118eV付近にピークが検出される。
【0010】
XPS分析における検出深さは表面より数nm(ナノメータ)〜10nm程度の範囲であることから、剥離部分の表面で露出しているのはメタクリル樹脂の表面の脆化部分であり、Alは,剥離裏面に露出している脆化部分よりさらに深い領域に存在し、XPS分析では検出されなかったものと判断される。
【0011】
このような脆化部分の発生は、スパッタリング時において、スパッタ電極におけるターゲット材料の表面積に対して1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力を印加した場合のように、スパッタ電極に印加する導入電力を大きくした場合に、特に顕著となることが、本発明者により見出された。
【0012】
このため、ウエットプロセス等によりメタクリル樹脂の表面にバインダー層を形成して密着性の向上を図ることも考えられるが、プロセスが複雑化するばかりではなく、廃液等が発生して自然環境に悪影響を与えるという問題が生ずる。
【0013】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、メタクリル樹脂等の金属薄膜との密着性が低い樹脂を使用した場合においても、樹脂と金属薄膜とが強固に密着して積層された構造体、および、金属薄膜との密着性が低い樹脂製のワークに対して金属薄膜を高い密着性を持って成膜させた構造体を製造することが可能な成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第
1の発明は、メタクリル樹脂と金属薄膜とが積層された構造体であって、前記メタクリル樹脂と前記金属薄膜との間に、SiとOとCとの混在層と、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとCとの混在領域とがこの順に積層されることを特徴とする。
【0015】
第
2の発明は、前記混在領域は、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとCとが共有結合する、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとCとが拡散混合層を形成する。
【0016】
第
3の発明は、前記金属薄膜は、AlまたはAlを主成分とする金属で構成される。
【0017】
第
4の発明は、前記金属薄膜の表面に、さらに、保護膜が形成される。
【0018】
第
5の発明は、前記保護膜は、Si酸化物系保護膜である。
【0019】
第
6の発明は、メタクリル樹脂製のワークに対して金属薄膜を成膜する成膜方法であって、メタクリル樹脂製のワークに対してSiの存在下でプラズマ処理を実行することにより、前記ワークの上にSiとOとCとの混合層を形成する工程と、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記SiとOとCとの混合層に対して前記スパッタリング成膜が実行されることとなり、前記金属薄膜を構成する原子とSiとが共有結合し、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとが拡散混合層を形成する混在領域を形成する工程と、引き続き前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混在領域の上に前記金属薄膜を形成する工程と、を含
み、前記スパッタリング成膜は、ターゲットの表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力で実行されることを特徴とする。
【0020】
第
7の発明は、メタクリル樹脂製のワークに対して金属薄膜を成膜する成膜方法であって、メタクリル樹脂製のワークに対してSiの存在下でプラズマ処理を実行することにより、前記ワークの上にSiとOとCとの混合層を形成する工程と、引き続き、Siの原料を供給してプラズマCVDを実行することにより、前記混合層の上に、Si酸化膜層を形成する工程と、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記Si酸化膜層に対して前記スパッタリング成膜が実行されることとなり、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとが共有結合し、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとが拡散混合層を形成する混在領域を形成する工程と、引き続き前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混在領域の上に前記金属薄膜を形成する工程と、を含
み、前記スパッタリング成膜は、ターゲットの表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力で実行されることを特徴とする。
【0021】
第
8の発明は、樹脂製のワークに対して金属薄膜を成膜する成膜方法であって、Siを含む原料を供給してプラズマCVDを実行することにより、前記ワークの上に、Si酸化膜層を形成する工程と、引き続き、樹脂製のワークに対してSiの存在下でプラズマ処理を実行することにより、前記Si酸化膜層をなくして、前記ワークの上にSiとOとCとの混合層を形成する工程と、引き続き、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混合層に対して前記スパッタリング成膜が実行されることとなり、前記混合層の上側の一部に、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとCとが共有結合し、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとCとが拡散混合層を形成する混在領域を形成する工程と、引き続き、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混在領域の上に前記金属薄膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0022】
第
9の発明は、前記プラズマ処理は酸素が供給された状態で実行される。
【0023】
第
10の発明は、前記スパッタリング成膜は、ターゲットの表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力で実行される。
【0024】
第
11の発明は、樹脂製のワークに対して金属薄膜を成膜する成膜方法であって、樹脂製のワークに対してSiの存在下でプラズマ処理を実行することにより、前記ワークの上にSiとOとCとの混合層を形成する工程と、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記SiとOとCとの混合層に対して前記スパッタリング成膜が実行されることとなり、前記金属薄膜を構成する原子とSiとが共有結合し、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとが拡散混合層を形成する混在領域を形成する工程と、引き続き前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混在領域の上に前記金属薄膜を形成する工程と、を含み、前記スパッタリング成膜は、ターゲットの表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力で実行されることを特徴とする。
【0025】
第
12の発明は、樹脂製のワークに対して金属薄膜を成膜する成膜方法であって、樹脂製のワークに対してSiの存在下でプラズマ処理を実行することにより、前記ワークの上にSiとOとCとの混合層を形成する工程と、引き続き、Siの原料を供給してプラズマCVDを実行することにより、前記混合層の上に、Si酸化膜層を形成する工程と、前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記Si酸化膜層に対して前記スパッタリング成膜が実行されることとなり、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとが共有結合し、あるいは、前記金属薄膜を構成する原子とSiとOとが拡散混合層を形成する混在領域を形成する工程と、引き続き前記ワークに対して金属製のターゲット材料によりスパッタリング成膜を実行することにより、前記混在領域の上に前記金属薄膜を形成する工程と、を含み、前記スパッタリング成膜は、ターゲットの表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力で実行されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明から第
12の発明によれば、メタクリル系樹脂等の金属薄膜との密着性が低い樹脂を使用した場合においても、樹脂と金属薄膜とを強固に密着して積層させることが可能となる。
【0027】
特に、第
4および第
5の発明によれば、スパッタリングによる金属薄膜の成膜とプラズマCVDによる保護膜の成膜とを、同一チャンバー内で短時間に連続して実行することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係る成膜方法を実行するための成膜装置の概要図である。
【0030】
この実施形態に係る成膜装置は、樹脂製のワークWに対してスパッタリングによる成膜とプラズマCVDによる成膜とを実行するものである。なお、ワークWの材質としては、メタクリル樹脂が使用される。メタクリル樹脂は、一般にアクリル樹脂と呼称される樹脂の正式名称であり、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)やアクリルガラスと呼称されることもある。メタクリル樹脂は、安価であるばかりではなく、透明度が高いという特性を有する半面、金属薄膜との密着性が低いという特性を有する。
【0031】
この成膜装置は、本体11と開閉部12とから構成される成膜チャンバー10を備える。開閉部12は、射出成型された樹脂製のワークWを搬入する搬入搬出位置と、本体11との間でパッキング14を介して密閉された成膜チャンバー10を構成する閉鎖位置との間を移動可能となっている。開閉部12が搬入搬出位置に移動した状態においては、成膜チャンバー10の側面に、ワークWを成膜チャンバー10に対して搬入および搬出する開口部が形成されることになる。また、開閉部12に形成された通過孔を通過するようにして、ワークWを載置するためのワーク載置部13が配設されている。このワーク載置部13は、ワークWを載置した状態で開閉部12に対して相対的に移動可能となっている。
【0032】
また、この成膜装置は、電極部21とターゲット材料22とからなるスパッタ電極23を備える。このスパッタ電極23は、図示を省略した絶縁部材を介して、成膜チャンバー10における本体11に装着されている。なお、成膜チャンバー10を構成する本体11は、接地部19によりアースされている。このスパッタ電極23は、直流電源41に接続されている。
【0033】
なお、この直流電源41としては、ターゲット材料22の表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力となるように、スパッタ電極23に直流電圧を印加し得るものが使用される。すなわち、この直流電源41は、スパッタ電極23への投入電力として、ターゲット材料22の表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上を投入する。ターゲット材料22には、Al(アルミニウム)が使用される。なお、AlのかわりにAl合金を使用してもよい。
【0034】
さらに、この成膜装置は、CVD電極24を備える。このCVD電極24は、スパッタ電極23と同様、図示を省略した絶縁部材を介して、成膜チャンバー10における本体11に装着されている。また、このCVD電極24は、マッチングボックス46および高周波電源45と接続されている。
【0035】
なお、上述した高周波電源45としては、例えば、数十MHz(メガヘルツ)程度の高周波を発生させるものを使用することができる。ここで、この明細書で述べる高周波とは、20kHz(キロヘルツ)以上の周波数を意味する。
【0036】
成膜チャンバー10を構成する本体11は、開閉弁31および流量調整弁32を介して、アルゴン等の不活性ガスの供給部33と接続されている。また、成膜チャンバー10を構成する本体11は、開閉弁34および流量調整弁35を介して、原料ガスの供給部36と接続されている。この原料ガスとしては、HMDSOが使用される。但し、Siを含む気体であれば、HMDSOにかえて、HMDS(ヘキサ−メチル−ジ−シラザン)等を使用してもよい。さらに、成膜チャンバー10を構成する本体11は、開閉弁39を介して、ターボ分子ポンプ37と接続されており、このターボ分子ポンプ37は、開閉弁48を介して補助ポンプ38と接続されている。さらに、この補助ポンプ38は、開閉弁49を介して成膜チャンバー10を構成する本体11とも接続されている。
【0037】
なお、上述したターボ分子ポンプ37としては、その最大排気速度が、1秒当たり300リットル以上のものが使用される。
【0038】
また、この成膜装置は、
図1において仮想線で示すように、スパッタ電極23と当接することによりターゲット材料22を覆う当接位置と、
図1において実線で示すように、成膜チャンバー10の底部付近において支持部52により支持される退避位置との間を、エアシリンダ53の駆動で昇降可能なシャッター51を備える。このシャッター51は、金属等の伝導体で、かつ、非磁性体である材料から構成されている。
【0039】
図2は、この発明に係る成膜装置の制御系を示すブロック図である。
【0040】
この成膜装置は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を備え、装置全体を制御する制御部70を備える。この制御部70は、
図1に示すワーク載置部13を移動させる搬送機構を駆動制御する搬送機構駆動部71と、開閉弁31、34、39、48、49等を開閉制御する開閉弁駆動部72と、開閉部12を開閉制御する開閉部駆動部73と、スパッタ電極23およびCVD電極24を駆動制御する電極駆動部74とも接続されている。
【0041】
次に、以上のような構成を有する成膜装置による成膜動作について説明する。
図3は、成膜動作を示すフローチャートである。また、
図4は、ワークWに対する成膜状態を説明する模式図である。
【0042】
この成膜装置により成膜動作を実行するときには、射出成型されたワークWを、射出成形機より搬送し、成膜チャンバー10内に搬送する(ステップS1)。このときには、開閉部12を搬入搬出位置に移動させた上で、
図1において実線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のCVD電極24と対向する位置に配置する。このときには、
図1において仮想線で示すように、シャッター51を、スパッタ電極23と当接してターゲット材料22を覆う当接位置に配置する。この状態においては、エアシリンダ53のシリンダロッド54は、エアシリンダ53の本体内に収納された縮収状態となっている。
【0043】
次に、開閉部12を閉鎖位置に配置し、成膜チャンバー10内を0.1パスカルから1パスカル程度の低真空まで減圧する(ステップS2)。ターボ分子ポンプ37による減圧前に、ロータリーポンプ等の補助ポンプ38を使用して、100パスカル程度まで高速で減圧を行う。その後、その最大排気速度が1秒当たり300リットル以上のターボ分子ポンプ37を使用していることから、成膜チャンバー10内を20秒程度の時間で、0.1パスカルから1パスカル程度の低真空まで減圧することができる。
【0044】
次に、開閉弁31を開放することにより、不活性ガスの供給部33から成膜チャンバー10内に不活性ガスとしてのアルゴンを供給し、成膜チャンバー10内の真空度が0.5〜3パスカルとなるように、成膜チャンバー10内をアルゴンで充満させる(ステップS3)。なお、アルゴン以外の不活性ガスを使用してもよく、また、条件によっては、アルゴンにかえて酸素や窒素を使用してもよい。そして、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内にHMDSOを供給する(ステップS4)。
【0045】
この状態において、プラズマ処理を実行する(ステップS5)。このときには、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から400W程度の高周波電圧を付与する。また、このときには、原料ガスの供給部36からHMDSOを5sccm程度の流量で供給するとともに、不活性ガスの供給部33からアルゴンを100sccm程度の流量で供給する。このプラズマ処理は、数十秒程度で完了する。この状態においては、
図4(a)に示すように、メタクリル樹脂製のワークWの表面に、HMDSO等から生じたSi、O、Cから成る化合物層100が形成される。
【0046】
次に、スパッタリング成膜を実行する(ステップS6)。このときには、
図1において仮想線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のスパッタ電極23と対向する位置に配置する。また、
図1において実線で示すように、シャッター51は、成膜チャンバー10の底部付近の退避位置に配置される。スパッタリング成膜を行う場合には、スパッタ電極23に対して直流電源41から直流電圧を付与する。これにより、スパッタリング現象でターゲット材料22であるAlの薄膜がワークWの表面に形成される。
【0047】
このときには、最初に、HMDSO等から生じたSi、O、Cから成る化合物層100に対してスパッタリング現象でAlが衝突することにより、
図4(b)に示すように、化合物層100は、AlとSi、O、Cとが共有結合し、あるいは、AlとSi、O、Cとが拡散混合層を形成することにより、AlとSi、O、Cとが混在する混在領域101となる。このときの、混在領域101の厚みは、数原子層に相当する数オングストロームから数ナノメートル程度となる。
【0048】
そして、スパッタリング成膜を継続することにより、
図4(c)に示すように、混在領域101上に、Alの薄膜102が形成される。このAlの薄膜102の厚みは、150ナノメートル程度である。
【0049】
なお、このスパッタリング成膜工程においては、スパッタ電極23におけるターゲット材料22の表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力となるように、直流電源41からスパッタ電極23に直流電圧が印加される。これにより、成膜チャンバー10内が低真空である場合であっても、樹脂製のワークWの表面にAlの薄膜102が好適に成膜される。
【0050】
以上の工程によりスパッタリングによる成膜が完了すれば、引き続き、Si酸化物のプラズマCVDによる成膜を実行する。プラズマCVD成膜を実行する場合には、
図1において実線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のCVD電極24と対向する位置に配置する。また、
図1において仮想線で示すように、シャッター51を、スパッタ電極23と当接してターゲット材料22を覆う当接位置に配置する。
【0051】
この状態において、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内に原料ガスであるHMDSOを供給し、成膜チャンバー10内の真空度を0.1〜10パスカルとする(ステップS7)。そして、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から高周波電圧を付与することにより、プラズマCVDによる成膜を実行する(ステップS8)。これにより、
図4(d)に示すように、プラズマCVD反応で原料ガスによる保護膜103がワークWの表面(Alの薄膜102の表面)に堆積する。
【0052】
プラズマCVDによる成膜が完了すれば、成膜チャンバー10内をベントする。そして、開閉部12を搬入搬出位置に配置した上でワーク載置部13を移動させ、ワーク載置部13上に載置された成膜完了後のワークWを成膜チャンバー10内から搬出する(ステップS9)。
【0053】
そして、全てのワークWに対する処理が終了しているか否かを判断する(ステップS10)。全てのワークWに対する処理が終了した場合には、装置を停止させる。一方、未処理のワークWが存在する場合には、ステップS1に戻る。
【0054】
なお、このような処理を継続して実行する場合においては、成膜チャンバー10内に、プラズマCVDによる成膜時に使用されたSiが残存している。このため、このSiの残存量によっては、Siを追加供給しない場合においても、プラズマ処理工程(ステップS5)においてSi、O、Cから成る化合物層100を形成することができる場合がある。このため、ステップS4におけるHMDSOの供給工程を省略することも可能となる。
【0055】
図5は、この発明に係る成膜方法を適用して成膜を行った場合の、
図4(d)に示すワークWからAlの薄膜102に至る領域の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用して撮影した写真である。また、
図6から
図8は、
図5におけるポイント1−1、1−2、1−3部分のTEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析結果を示すグラフである。さらに、
図9は、従来の成膜方法を適用して成膜を行った場合の、ワークWからAlの薄膜102に至る領域の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用して撮影した写真である。また、
図10から
図12は、
図9におけるポイント2−1、2−2、2−3部分のTEM−EDX(エネルギー分散型X線分光法)分析結果を示すグラフである。
【0056】
なお、
図6から
図8および
図10から
図12における横軸は蛍光X線のエネルギーを示し、縦軸は蛍光X線強度を示している。ここで、蛍光X線のエネルギーの単位はkeV(キロ電子ボルト)である。また、蛍光X線強度とは、そのエネルギーを持った蛍光X線がどれだけ検出されたかを示すものであり、単位はcps(Count Per Second)である。これらの図においては、蛍光X線のエネルギーのどの位置にピークが検出されるかで、元素分析が可能となる。なお、各図における縦軸のフルスケールカウント値は、互いに異なっている。
【0057】
図5におけるポイント1−1および
図9におけるポイント2−1は、いずれも、
図4(d)に示すAlの薄膜102に相当する領域である。これらのポイントにおいては、いずれも、主としてAlが検出されており、
図5に示すこの発明を適用したものと
図9に示す従来のものとに差異はない。
【0058】
一方、
図5におけるポイント1−2は、
図4(d)に示す混在領域101に相当する領域である。また、
図9におけるポイント2−2は、ワークWとAlの薄膜102との境界に相当する領域である。ポイント1−2においては、Siが検出されているのに対し(
図7参照)、ポイント2−2においてはSiが検出されていない(
図11参照)点で差違がある。なお、
図5におけるポイント1−3および
図9におけるポイント2−3は、ワークWに相当する領域であり、メタクリル樹脂に含まれる成分が検出されている(
図8および
図12参照)。
【0059】
以上のように、この発明に係る成膜方法を適用して成膜を行った場合には、メタクリル樹脂製のワークWとAlの薄膜102との間に、AlとSi、O、Cとが混在する混在領域101が存在する。この混在領域101においては、AlとSi、O、Cとが共有結合し、あるいは、AlとSi、O、Cとが拡散混合層を形成している。このため、この混在領域101の作用により、メタクリル樹脂製のワークWの表面の分子鎖の切断による脆化を防止することができ、メタクリル樹脂製のワークWとAlの薄膜102とを強固に密着した状態で積層させることが可能となる。
【0060】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図13は、第2実施形態に係る成膜動作を示すフローチャートである。また、
図14は、ワークWに対する成膜状態を説明する模式図である。なお、この第2実施形態は、プラズマ処理工程とスパッタリング成膜工程との間に、Si酸化物のプラズマCVD成膜工程を有する点が上述した実施形態とは異なる。以下の説明においては、上述した実施形態と同様の工程については説明を簡略化している。
【0061】
この第2実施形態に係る成膜動作を実行するときには、射出成型されたワークWを、射出成形機より搬送し、成膜チャンバー10内に搬送する(ステップS11)。そして、成膜チャンバー10内を0.1パスカルから1パスカル程度の低真空まで減圧する(ステップS12)。
【0062】
次に、開閉弁31を開放することにより、不活性ガスの供給部33から成膜チャンバー10内に不活性ガスとしてのアルゴンを供給し、成膜チャンバー10内の真空度が0.5〜3パスカルとなるように、成膜チャンバー10内をアルゴンで充満させる(ステップS13)。そして、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内にHMDSOを供給する(ステップS14)。
【0063】
この状態において、プラズマ処理を実行する(ステップS15)。このときには、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から400W程度の高周波電圧を付与する。また、このときには、原料ガスの供給部36からHMDSOを5sccm程度の流量で供給するとともに、不活性ガスの供給部33からアルゴンを100sccm程度の流量で供給する。このプラズマ処理は、数十秒程度で完了する。この状態においては、
図14(a)に示すように、メタクリル樹脂製のワークWの表面に、HMDSO等から生じたSi、O、Cの混在層200が形成される。
【0064】
次に、Si酸化物のプラズマCVD成膜を行う(ステップS16)。このときには、アルゴンの供給を停止するとともに、原料ガスの供給部36からHMDSOを60sccm程度の流量で供給する。そして、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から500W程度の高周波電圧を付与する。このプラズマCVD成膜処理は、十秒程度で完了する。
【0065】
このSi酸化物のプラズマCVD成膜工程においては、プラズマをエネルギーの供給源としてHMDSOを分解し、化学反応によりSi酸化物(SiOx:但し、x=1〜2)を析出させている。これにより、
図14(b)に示すように、混在層200の表面にSi酸化膜層201が成膜される。このSi酸化膜層201の厚みは、数ナノメートル〜2マイクロメートル程度である。
【0066】
次に、スパッタリング成膜を実行する(ステップS17)。このときには、
図1において仮想線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のスパッタ電極23と対向する位置に配置する。また、
図1において実線で示すように、シャッター51は、成膜チャンバー10の底部付近の退避位置に配置される。スパッタリング成膜を行う場合には、スパッタ電極23に対して直流電源41から直流電圧を付与する。これにより、スパッタリング現象でターゲット材料22であるAlの薄膜203がワークWの表面に形成される。
【0067】
このときには、最初に、Si酸化膜層201に対してスパッタリング現象でAlが衝突することにより、
図14(c)に示すように、Si酸化膜層201の一部は、AlとSi、Oとが共有結合し、あるいは、AlとSi、Oとが拡散混合層を形成することにより、AlとSi、Oとが混在する混在領域202となる。このときの、混在領域202の厚みは、数原子層に相当する数オングストロームから数ナノメートル程度となる。
【0068】
そして、スパッタリング成膜を継続することにより、
図14(d)に示すように、混在領域202上に、Alの薄膜203が形成される。このAlの薄膜203の厚みは、150ナノメートル程度である。
【0069】
なお、このスパッタリング成膜工程においても、スパッタ電極23におけるターゲット材料22の表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力となるように、直流電源41からスパッタ電極23に直流電圧が印加される。これにより、成膜チャンバー10内が低真空である場合であっても、樹脂製のワークWの表面にAlの薄膜203が好適に成膜される。
【0070】
以上の工程によりスパッタリングによる成膜が完了すれば、引き続き、Si酸化物のプラズマCVDによる成膜を実行する。このときには、
図1において実線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のCVD電極24と対向する位置に配置する。また、
図1において仮想線で示すように、シャッター51を、スパッタ電極23と当接してターゲット材料22を覆う当接位置に配置する。
【0071】
この状態において、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内に原料ガスであるHMDSOを供給し、成膜チャンバー10内の真空度を0.1〜10パスカルとする(ステップS18)。そして、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から高周波電圧を付与することにより、プラズマCVDによる成膜を実行する(ステップS19)。これにより、
図14(e)に示すように、プラズマCVD反応で原料ガスによる保護膜204がワークWの表面(Alの薄膜203の表面)に堆積する。
【0072】
プラズマCVDによる成膜が完了すれば、成膜チャンバー10内をベントする。そして、開閉部12を搬入搬出位置に配置した上でワーク載置部13を移動させ、ワーク載置部13上に載置された成膜完了後のワークWを成膜チャンバー10内から搬出する(ステップS20)。
【0073】
そして、全てのワークWに対する処理が終了しているか否かを判断する(ステップS21)。全てのワークWに対する処理が終了した場合には、装置を停止させる。一方、未処理のワークWが存在する場合には、ステップS11に戻る。
【0074】
この第2実施形態に係る成膜方法を適用して成膜を行った場合においても、メタクリル樹脂製のワークWの表面の分子鎖の切断による脆化を防止することができ、メタクリル樹脂製のワークWとAlの薄膜203とを強固に密着した状態で積層させることが可能となる。
【0075】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。
図15は、第3実施形態に係る成膜動作を示すフローチャートである。また、
図16は、ワークWに対する成膜状態を説明する模式図である。なお、この第3実施形態は、上述した第2実施形態におけるプラズマ処理工程とSi酸化物のプラズマCVD成膜工程とを逆の順序で実行している。すなわち、Si酸化物のプラズマCVD成膜工程において形成されるSi酸化膜の膜厚が数十ナノメートル以下である場合には、Si酸化物のプラズマCVD成膜工程の後にプラズマ処理工程を実行する構成を採用しても、上述した第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
この第3実施形態に係る成膜動作を実行するときには、射出成型されたワークWを、射出成形機より搬送し、成膜チャンバー10内に搬送する(ステップS31)。そして、成膜チャンバー10内を0.1パスカルから1パスカル程度の低真空まで減圧する(ステップS32)。
【0077】
そして、Si酸化物のプラズマCVD成膜を行う。このときには、原料ガスの供給部36からHMDSOを60sccm程度の流量で供給する(ステップS33)。そして、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から500W程度の高周波電圧を付与する(ステップS34)。このプラズマCVD成膜処理は、十秒程度で完了する。
【0078】
このSi酸化物のプラズマCVD成膜工程においては、プラズマをエネルギーの供給源としてHMDSOを分解し、化学反応によりSi酸化物(SiOx:但し、x=1〜2)を析出させている。これにより、
図16(a)に示すように、メタクリル樹脂製のワークWの表面にSi酸化膜層300が成膜される。このSi酸化膜層300の厚みは、数十ナノメートル以下である。
【0079】
次に、開閉弁31を開放することにより、不活性ガスの供給部33から成膜チャンバー10内に不活性ガスとしてのアルゴンを供給し、成膜チャンバー10内の真空度が0.5〜3パスカルとなるように、成膜チャンバー10内をアルゴンで充満させる(ステップS35)。
【0080】
この状態において、プラズマ処理を実行する(ステップS36)。このときには、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から400W程度の高周波電圧を付与する。また、このときには、原料ガスの供給部36からHMDSOを5sccm程度の流量で供給するとともに、不活性ガスの供給部33からアルゴンを100sccm程度の流量で供給する。このプラズマ処理は、数十秒程度で完了する。この状態においては、先のプラズマCVD成膜工程(ステップS34)において形成された
図16(a)に示す厚さが数十ナノメートル以下のSi酸化膜層300がなくなり、
図16(b)に示すSi、O、Cの混在層301が形成される。
【0081】
次に、スパッタリング成膜を実行する(ステップS37)。このときには、
図1において仮想線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のスパッタ電極23と対向する位置に配置する。また、
図1において実線で示すように、シャッター51は、成膜チャンバー10の底部付近の退避位置に配置される。スパッタリング成膜を行う場合には、スパッタ電極23に対して直流電源41から直流電圧を付与する。これにより、スパッタリング現象でターゲット材料22であるAlの薄膜303がワークWの表面に形成される。
【0082】
このときには、最初に、Si、O、Cの混在層301に対してスパッタリング現象でAlが衝突することにより、
図16(c)に示すように、Si、O、Cの混在層301の一部は、AlとSi、C、Oとが共有結合し、あるいは、AlとSi、C、Oとが拡散混合層を形成することにより、AlとSi、C、Oとが混在する混在領域302となる。このときの、混在領域302の厚みは、数原子層に相当する数オングストロームから数ナノメートル程度となる。
【0083】
そして、スパッタリング成膜を継続することにより、
図16(d)に示すように、混在領域302上に、Alの薄膜303が形成される。このAlの薄膜303の厚みは、150ナノメートル程度である。
【0084】
なお、このスパッタリング成膜工程においても、スパッタ電極23におけるターゲット材料22の表面積に対して、1平方センチ当たり25ワット以上の投入電力となるように、直流電源41からスパッタ電極23に直流電圧が印加される。これにより、成膜チャンバー10内が低真空である場合であっても、樹脂製のワークWの表面にAlの薄膜303が好適に成膜される。
【0085】
以上の工程によりスパッタリングによる成膜が完了すれば、引き続き、Si酸化物のプラズマCVDによる成膜を実行する。このときには、
図1において実線で示すように、ワーク載置部13に載置されたワークWを、成膜チャンバー10内のCVD電極24と対向する位置に配置する。また、
図1において仮想線で示すように、シャッター51を、スパッタ電極23と当接してターゲット材料22を覆う当接位置に配置する。
【0086】
この状態において、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内に原料ガスであるHMDSOを供給し、成膜チャンバー10内の真空度を0.1〜10パスカルとする(ステップS38)。そして、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から高周波電圧を付与することにより、Si酸化物のプラズマCVDによる成膜を実行する(ステップS39)。これにより、
図16(e)に示すように、プラズマCVD反応で原料ガスによる保護膜304がワークWの表面(Alの薄膜303の表面)に堆積する。
【0087】
Si酸化物のプラズマCVDによる成膜が完了すれば、成膜チャンバー10内をベントする。そして、開閉部12を搬入搬出位置に配置した上でワーク載置部13を移動させ、ワーク載置部13上に載置された成膜完了後のワークWを成膜チャンバー10内から搬出する(ステップS40)。
【0088】
そして、全てのワークWに対する処理が終了しているか否かを判断する(ステップS41)。全てのワークWに対する処理が終了した場合には、装置を停止させる。一方、未処理のワークWが存在する場合には、ステップS11に戻る。
【0089】
この第3実施形態に係る成膜方法を適用して成膜を行った場合においても、メタクリル樹脂製のワークWの表面の分子鎖の切断による脆化を防止することができ、メタクリル樹脂製のワークWとAlの薄膜303とを強固に密着した状態で積層させることが可能となる。
【0090】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。
図17は、この発明の第4実施形態に係る成膜方法を実行するための成膜装置の概要図である。なお、この図においては、
図1に示す成膜装置と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0091】
この第4実施形態に係る成膜方法は、上述した第1実施形態に係る成膜方法におけるステップS3からステップS5において、アルゴンを供給するかわりに、酸素を供給するようにしている。そして、この第4実施形態に係る成膜方法を実施するための成膜装置は、
図17に示すように、
図1に示す成膜装置に対して、開閉弁81と、流量調整弁82と、酸素の供給部83とを追加した構成を有する。
【0092】
第1実施形態に係る成膜方法において、HMDSOの供給量が過多となった場合や装置内部の汚染状況によっては、メタクリル樹脂の表面にHMDSOの未分解物が不均一に再結合して堆積し、表面粗さが増加して正反射率が処理前より低下する場合がある。このため、この第4実施形態に係る成膜方法においては、ガス種をアルゴンから酸素に変更している。
【0093】
このようにアルゴンプラズマ処理から酸素によるプラズマ処理に変更した場合、HMDSOが完全に分解され、アルキル基を含まないSi酸化物(SiOx:但し、x=1〜2)がメタクリル樹脂の表面に薄く堆積する。これにより、酸素プラズマの活性種によるアタックを防ぎ、メタクリル樹脂の表面粗さが増大することはない。また、プラズマ処理により急速排気時にメタクリル樹脂の表面に付着する水分が除去され、後続処理時のスパッタ膜の酸化が低減され、反射率が向上する効果も奏する。
【0094】
図18は、この発明の第4実施形態に係る成膜動作を示すフローチャートである。なお、以下においては、上述した第1実施形態に係る成膜動作と同様の工程については説明を簡略化している。
【0095】
この第4実施形態に係る成膜方法により成膜動作を実行するときには、射出成型されたワークWを、射出成形機より搬送し、成膜チャンバー10内に搬送する(ステップS51)。次に、成膜チャンバー10内を0.1パスカルから1パスカル程度の低真空まで減圧する(ステップS52)。
【0096】
次に、開閉弁81を開放することにより、酸素の供給部83から成膜チャンバー10内に酸素を供給し、成膜チャンバー10内の真空度が0.5〜3パスカルとなるように、成膜チャンバー10内を酸素で充満させる(ステップS53)。そして、開閉弁34を開放することにより、原料ガスの供給部36から成膜チャンバー10内にHMDSOを供給する(ステップS54)。
【0097】
この状態において、プラズマ処理を実行する(ステップS55)。このときには、CVD電極24に対してマッチングボックス46を介して高周波電源45から400W程度の高周波電圧を付与する。また、このときには、原料ガスの供給部36からHMDSOを5sccm程度の流量で供給するとともに、酸素の供給部83から酸素を100sccm程度の流量で供給する。このプラズマ処理は、数十秒程度で完了する。
【0098】
次に、スパッタリング成膜を実行する(ステップS56)。スパッタリングによる成膜が完了すれば、引き続き、Si酸化物のプラズマCVDによる成膜を実行する。このときには、成膜チャンバー10内に原料ガスであるHMDSOを供給し、成膜チャンバー10内の真空度を0.1〜10パスカルとする(ステップS57)。そして、CVD電極24に対して高周波電圧を付与することにより、プラズマCVDによる成膜を実行する(ステップS58)。そして、成膜完了後のワークWを成膜チャンバー10内から搬出する(ステップS59)。全てのワークWに対する処理が終了しているか否かを判断する(ステップS10)。全てのワークWに対する処理が終了した場合には、装置を停止させる。一方、未処理のワークWが存在する場合には、ステップS51に戻る。
【0099】
なお、上述した第4実施形態に係る成膜方法は、第1実施形態に係る成膜方法におけるステップS3からステップS5において、アルゴンを供給するかわりに酸素を供給するようにしている。これと同様に、第2実施形態に係る成膜方法におけるステップS13からステップS15において、アルゴンを供給するかわりに酸素を供給するようにしてもよく、また、第3実施形態に係る成膜方法におけるステップS35からステップS36において、アルゴンを供給するかわりに酸素を供給するようにしてもよい。
【0100】
また、上述した実施形態においては、いずれも、スパッタリングによる成膜とプラズマCVDによる成膜とを、同一の成膜チャンバー10内で連続して実行する成膜装置にこの発明を適用した場合について説明したが、スパッタリングによる成膜のみを実行する成膜装置にこの発明を適用してもよい。