(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361679
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】増幅装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20180712BHJP
【FI】
H03F1/52 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-55957(P2016-55957)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-126972(P2017-126972A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2017年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-2404(P2016-2404)
(32)【優先日】2016年1月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】710014351
【氏名又は名称】オンキヨー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】澤井 正人
【審査官】
緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭58−172213(JP,U)
【文献】
特開2004−112707(JP,A)
【文献】
特開2011−166458(JP,A)
【文献】
特開2014−099784(JP,A)
【文献】
特開平06−318824(JP,A)
【文献】
特開2010−170315(JP,A)
【文献】
特開2015−122674(JP,A)
【文献】
特開昭55−102910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/45、3/50− 3/52、
3/62− 3/64、3/68− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号のボリュームを調整するボリューム調整部と、
前記ボリューム調整部がボリュームを調整した音声信号を増幅する増幅部と、
温度を計測する温度計測部と、
前記増幅部に第1電圧、又は、第1電圧よりも電位が低い第2電圧を供給する電圧供給部と、
前記ボリューム調整部、及び、前記電圧供給部を制御し、前記増幅部から出力される音声信号の信号レベルを検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度計測部が計測した温度が、第1温度未満で、前記電圧供給部により、前記第1電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第2電圧を供給し、
前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする増幅装置。
【請求項2】
音声信号のボリュームを調整するボリューム調整部と、
前記ボリューム調整部がボリュームを調整した音声信号を増幅する増幅部と、
温度を計測する温度計測部と、
前記増幅部に第1電圧、第1電圧よりも電位が低い第2電圧、又は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の電位の第3電圧を供給する電圧供給部と、
前記ボリューム調整部、及び、前記電圧供給部を制御し、前記増幅部から出力される音声信号の信号レベルを検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記温度計測部が計測した温度が、第1温度よりも低い第3温度未満で、前記電圧供給部により、前記第1電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第3電圧を供給し、
前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度未満で、前記電圧供給部により、前記第3電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第2電圧を供給し、
前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする増幅装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定であり、前記信号レベルが一定になってから所定時間経過した後、前記温度計測部が計測した温度が、前記第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする請求項1又は2に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させる処理を、所定時間毎に、複数回実行することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の増幅装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上で、前記電圧供給部により、前記第2電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも低い第4温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第1電圧を供給することを特徴とする請求項1に記載の増幅装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上で、前記電圧供給部により、前記第2電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも低く、且つ、前記第3温度よりも高い第4温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第3電圧を供給し、
前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度以上で、前記電圧供給部により、前記第3電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度よりも低い第5温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第1電圧を供給することを特徴とする請求項2に記載の増幅装置。
【請求項7】
前記温度計測部は、温度センサーと、サーミスターと、を有し、
前記サーミスターは、前記第2温度以上で検出信号を前記制御部に供給し、
前記制御部は、前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度センサーが計測した温度が、前記第2温度以上に上昇した場合に、又は、前記サーミスターが、前記検出信号を供給した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の増幅装置。
【請求項8】
前記増幅部は、複数の増幅器を有し、
前記制御部は、前記複数の増幅器が使用されている数に基づいて、前記第1温度、及び、前記第2温度を変化させることを特徴とする請求項1に記載の増幅装置。
【請求項9】
前記増幅部は、複数の増幅器を有し、
前記制御部は、前記複数の増幅器が使用されている数に基づいて、前記第1温度、前記第2温度、及び、前記第3温度を変化させることを特徴とする請求項2に記載の増幅装置。
【請求項10】
前記制御部は、映像入力の有無に基づいて、前記第1温度、及び、前記第2温度を変化させることを特徴とする請求項1又は8に記載の増幅装置。
【請求項11】
前記増幅部は、複数の増幅器を有し、
前記制御部は、前記複数の増幅器が使用されている数に基づいて、前記第1温度、前記第2温度、及び、前記第3温度を変化させることを特徴とする請求項2又は9に記載の増幅装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声信号を増幅する増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AVアンプ(増幅装置)は、音声信号を増幅する増幅部を備えている。増幅部は、パワートランジスタにより構成されている。従来のAVアンプは、AVアンプが備える増幅部等の温度上昇を抑えるため、増幅部に供給する電圧を切り替えている(例えば、特許文献1参照。)。そのため、AVアンプの内部には、温度を計測するための温度センサーが、増幅部近傍のヒートシンクに設けられている。また、AVアンプが備えるマイクロコンピューターは、増幅部から出力される音声信号の信号レベルを検出している。例えば、温度センサーが計測した温度が所定温度以上に上昇し、且つ、信号レベルが所定値以上であれば、増幅部に供給する電圧を低くする(低電圧)。また、例えば、増幅部に供給する電圧を低くした後、温度センサーが計測した温度が所定温度以下に下降し、且つ、信号レベルが所定値未満であれば、増幅部に供給する電圧を高くする(高電圧)。増幅部に供給する電圧の切替は、トランスの二次巻線を切り替えることで、実行される。また、増幅部に供給される低電圧は、高電圧の半分程度である。
【0003】
また、他の従来のAVアンプは、温度センサーが計測した温度が所定温度以上に上昇した場合、マイクロコンピューターが、ボリューム調整部により、音声信号のボリュームを所定値低下させることで、温度上昇を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−166456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電圧を切り替えることで温度上昇を防止する従来技術では、設計で想定している出力を超えた大出力を増幅部に出し続けた場合には、増幅部に供給する電圧を低電圧に切り替えたにも関わらず、温度が低下しない場合がある。また、ボリュームを減少させることで温度上昇を防止する従来技術では、温度上昇を大きく抑えることが難しいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、音声信号を増幅する増幅装置において、温度上昇を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の増幅装置は、音声信号のボリュームを調整するボリューム調整部と、前記ボリューム調整部がボリュームを調整した音声信号を増幅する増幅部と、温度を計測する温度計測部と、前記増幅部に第1電圧、又は、第1電圧よりも電位が低い第2電圧を供給する電圧供給部と、前記ボリューム調整部、及び、前記電圧供給部を制御し、前記増幅部から出力される音声信号の信号レベルを検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度計測部が計測した温度が、第1温度未満で、前記電圧供給部により、前記第1電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第2電圧を供給し、前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、制御部は、電圧供給部による増幅部への第2電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部が計測した温度が、第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させる。このように、電圧の切替、ボリュームの低下が実行されるので、温度上昇を防止することができる。また、信号レベルが一定ではない場合、すなわち、音声信号が、音楽信号である場合、ボリュームが所定値低下される。このため、ユーザーが音楽を聴いているときに、信号をクリップさせることなく、温度上昇を防止することができる。
【0009】
第2の発明の増幅装置は、音声信号のボリュームを調整するボリューム調整部と、前記ボリューム調整部がボリュームを調整した音声信号を増幅する増幅部と、温度を計測する温度計測部と、前記増幅部に第1電圧、第1電圧よりも電位が低い第2電圧、又は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の電位の第3電圧を供給する電圧供給部と、前記ボリューム調整部、及び、前記電圧供給部を制御し、前記増幅部から出力される音声信号の信号レベルを検出する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度計測部が計測した温度が、第1温度よりも低い第3温度未満で、前記電圧供給部により、前記第1電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第3電圧を供給し、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度未満で、前記電圧供給部により、前記第3電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上に上昇した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第2電圧を供給し、前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする。
【0010】
本発明では、制御部は、電圧供給部による増幅部への第2電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部が計測した温度が、第1温度よりも高い第2温度以上に上昇した場合に、ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させる。このように、電圧の切替、ボリュームの低下が実行されるので、温度上昇を防止することができる。また、信号レベルが一定ではない場合、すなわち、音声信号が、音楽信号である場合、ボリュームが所定値低下される。このため、ユーザーが音楽を聴いているときに、信号をクリップさせることなく、温度上昇を防止することができる。また、増幅部に供給する電圧を3段階で切り替えることで、細かい温度制御を行うことができる。
【0011】
第3の発明の増幅装置は、第1又は第2の発明の増幅装置において、前記制御部は、前記電圧供給部による前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定であり、前記信号レベルが一定になってから所定時間経過した後、前記温度計測部が計測した温度が、前記第2温度以上に上昇した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする。
【0012】
第4の発明の増幅装置は、第1〜第3の発明のいずれかの増幅装置において、前記制御部は、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させる処理を、所定時間毎に、複数回実行することを特徴とする。
【0013】
第5の発明の増幅装置は、第1の発明の増幅装置において、前記制御部は、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上で、前記電圧供給部により、前記第2電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも低い第4温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第1電圧を供給することを特徴とする。
【0014】
第6の発明の増幅装置は、第2の発明の増幅装置において、前記制御部は、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度以上で、前記電圧供給部により、前記第2電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第1温度よりも低く、且つ、前記第3温度よりも高い第4温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第3電圧を供給し、前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度以上で、前記電圧供給部により、前記第3電圧を前記増幅部に供給しているときに、前記温度計測部が計測した温度が、前記第3温度よりも低い第5温度以下に下降した場合に、前記電圧供給部により、前記増幅部に前記第1電圧を供給することを特徴とする。
【0015】
第7の発明の増幅装置は、第1〜第6の発明のいずれかの増幅装置において、前記温度計測部は、温度センサーと、サーミスターと、を有し、前記サーミスターは、前記第2温度以上で検出信号を前記制御部に供給し、前記制御部は、前記増幅部への前記第2電圧の供給後、検出した前記信号レベルが一定でなく、且つ、前記温度センサーが計測した温度が、前記第2温度以上に上昇した場合に、又は、前記サーミスターが、前記検出信号を供給した場合に、前記ボリューム調整部が調整するボリュームを所定値低下させることを特徴とする。
【0016】
本発明では、温度計測部は、温度センサーと、サーミスターと、を有する。このため、温度センサー、サーミスターのいずれかが故障したような場合でも、温度を計測することが可能である。
【0017】
第8の発明の増幅装置は、第1の発明の増幅装置において、前記増幅部は、複数の増幅器を有し、前記制御部は、前記複数の増幅器が使用されている数に基づいて、前記第1温度、及び、前記第2温度を変化させることを特徴とする。
【0018】
本発明では、制御部は、複数の増幅器が使用されている数に基づいて、第1温度、及び、第2温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、及び、ボリュームの低下が実行される。
【0019】
第9の発明の増幅装置は、第2の発明の増幅装置において、前記増幅部は、複数の増幅器を有し、前記制御部は、前記複数の増幅器が使用されている数に基づいて、前記第1温度、前記第2温度、及び、前記第3温度を変化させることを特徴とする。
【0020】
本発明では、制御部は、複数の増幅器が使用されている数に基づいて、第1温度、第2温度、及び、第3温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、及び、ボリュームの低下が実行される。
【0021】
第10の発明の増幅装置は、第1又は第8の発明の増幅装置において、前記制御部は、映像入力の有無に基づいて、前記第1温度、及び、前記第2温度を変化させることを特徴とする。
【0022】
本発明では、制御部は、映像入力の有無に基づいて、第1温度、及び、第2温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、及び、ボリュームの低下が実行される。
【0023】
第11の発明の増幅装置は、第2又は第9の発明の増幅装置において、前記制御部は、映像入力の有無に基づいて、前記第1温度、前記第2温度、及び、前記第3温度を変化させることを特徴とする。
【0024】
本発明では、制御部は、映像入力の有無に基づいて、第1温度、第2温度、及び、第3温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、及び、ボリュームの低下が実行される。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、音声信号を増幅する増幅装置において、温度上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態に係るAVアンプの構成を示すブロック図である。
【
図2】マイクロコンピューターによる制御を示す図である。
【
図3】マイクロコンピューターによる制御を示す図である。
【
図5】使用する温度テーブルを決める場合のAVアンプの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るAVアンプの構成を示すブロック図である。AVアンプ1(増幅装置)は、CDプレーヤー等の外部装置から入力される音声信号を増幅してスピーカー100に出力する。
図1に示すように、AVアンプ1は、マイクロコンピューター2、ボリューム調整部3、増幅部4、スピーカー端子5、電圧供給部6、温度計測部7を備えている。
【0029】
マイクロコンピューター2(制御部)は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等のハードウェアから構成されている。CPUは、ROMに格納されたプログラムに従って、AVアンプ1を構成する各部を制御する。すなわち、マイクロコンピューター2は、AVアンプ1を構成する各部を制御する。RAMは、CPUが各種制御処理を実行する際にROMから読み出したプログラム、CPUが各種制御処理を実行する際に必要なデータ等を一時的に記憶する。RAMは、電源の供給が遮断されると、記憶しているデータが消失する揮発性メモリである。マイクロコンピューター2が行う処理については後述する。
【0030】
ボリューム調整部3は、アナログ音声信号のボリュームを調整し、増幅部4に出力する。なお、AVアンプ1にデジタル音声信号が入力される場合、デジタル音声信号は、図示しないD/Aコンバーターにより、アナログ音声信号にD/A変換される。ボリューム調整部3は、マイクロコンピューター2が決定したボリュームにアナログ音声信号を調整(減衰)する。増幅部4は、ボリューム調整部3から出力されたアナログ音声信号を増幅し、スピーカー端子5に出力する。増幅部4は、パワートランジスタにより構成されている。スピーカー端子5には、スピーカー100が接続されており、スピーカー端子5からスピーカー100にアナログ音声信号が出力される。スピーカー100は、AVアンプ1から入力されたアナログ音声信号に基づいて、音声を再生する。
【0031】
電圧供給部6は、AVアンプ1の各部に電圧を供給する。電圧供給部6は、増幅部4には、高電圧(第1電圧)、又は、低電圧(第2電圧)を供給する。例えば、電圧供給部6は、巻数が異なる2つの二次巻線を有するトランスを備えており、2つの二次巻線を切り替えることで、増幅部4に、高電圧、又は、低電圧を供給する(特開2008−118825号公報参照)。
【0032】
温度計測部7は、温度を計測する。温度計測部7は、温度センサー8と、サーミスター9と、を有する。温度センサー8、サーミスター9は、増幅部4近傍のヒートシンクに設けられている。温度センサー8、サーミスター9は、AVアンプ1の筐体内部の温度を計測する。温度センサー8、サーミスター9は、増幅部4近傍のヒートシンクに設けられているため、主に、増幅部4の影響によるAVアンプ1の筐体内部の温度を計測することになる。温度センサー8は、計測した温度の情報をアナログの電気信号として、マイクロコンピューター2のA/Dポートに出力する。サーミスター9は、例えば、75℃未満では、マイクロコンピューター2にハイレベルの信号を供給している。サーミスター9は、75℃以上になると、検出信号として、マイクロコンピューター2にローレベルの信号を供給する。
【0033】
以下、マイクロコンピューター2が行う処理について説明する。マイクロコンピューター2は、増幅部4から出力されるアナログ音声信号の信号レベルを検出する。マイクロコンピューター2のA/Dポートに、増幅部4から出力されるアナログ音声信号が入力される。
【0034】
図2は、マイクロコンピューター2による制御を示す図である。マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、65℃(第1温度)未満であるとき、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、65℃以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、75℃(第2温度)以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB(所定値)低下させる。従って、ボリューム調整部3により、アナログ音声信号は、3dB減衰される(−3dB)。
【0035】
具体的には、マイクロコンピューター2は、増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度センサー8が計測した温度が、75℃以上に上昇した場合に、又は、サーミスター9が、検出信号を供給した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB低下させる。
【0036】
マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定である場合は、信号レベルが一定になってから5分(所定時間)経過した後、温度計測部7が計測した温度が、75℃以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB低下させる。従って、信号レベルが一定となってから、少なくとも5分間、ボリュームを低下させる処理は、実行されない。
【0037】
また、マイクロコンピューター2は、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB低下させる処理を、3分(所定時間)毎に、複数回実行する。具体的には、マイクロコンピューター2は、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB低下させる処理を、3分(所定時間)毎に、最大5回実行する。従って、ボリュームを低下させる処理が、5回実行された場合は、ボリュームを低下させる処理を行う前と比べて、ボリュームは、15dB(=3dB×5)低下されている(−15dB)。
【0038】
マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、65℃以上で、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、60℃(第4温度)以下に下降した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給する。
【0039】
ここで、増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度センサー8が計測した温度が、75℃以上に上昇した場合を、第1ボリューム制御条件という。また、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定であり、信号レベルが一定になってから5分(所定時間)経過した後、温度計測部7が計測した温度が、75℃以上に上昇した場合を、第2ボリューム制御条件という。マイクロコンピューター2は、第1ボリューム制御条件、及び、第2ボリューム制御条件中に、ユーザーによるボリューム操作を受け付けた場合、3分間(所定時間)、ボリューム調整部3がボリュームを低下させる処理を行わない。
【0040】
また、マイクロコンピューター2は、第1ボリューム制御条件、第2ボリューム制御条件以外のときに、ユーザーによるボリューム操作を受け付けた場合は、元のボリューム値を上書きする。また、最大5回のボリューム低下処理実行回数をクリアする。
【0041】
(第2実施形態)
第2実施形態は、第1実施形態と比較して、電圧供給部6の構成が異なる。電圧供給部6は、増幅部4には、高電圧(第1電圧)、低電圧(第2電圧)、又は、高電圧と低電圧との間の電位の中電圧(第3電圧)を供給する。
【0042】
図3は、マイクロコンピューター2による制御を示す図である。マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、55℃(第3温度)未満であるとき、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、55℃以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に中電圧を供給する。
【0043】
マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、65℃(第1温度)未満で、電圧供給部6により、増幅部4に中電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、65℃以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給する。
【0044】
マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、75℃(第2温度)以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB(所定値)低下させる。従って、ボリューム調整部3により、アナログ音声信号は、3dB減衰される(−3dB)。
【0045】
マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、65℃以上で、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、60℃以下に下降した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に中電圧を供給する。
【0046】
マイクロコンピューター2は、温度センサー8が計測した温度が、55℃以上で、電圧供給部6により、増幅部4に中電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、50℃(第5温度)以下に下降した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給する。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、75℃以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB低下させる。このように、電圧の切替、ボリュームの低下が実行されるので、温度上昇を防止することができる。また、信号レベルが一定ではない場合、すなわち、音声信号が、音楽信号である場合、ボリュームが所定値低下される。このため、ユーザーが音楽を聴いているときに、信号をクリップさせることなく、温度上昇を防止することができる。
【0048】
また、本実施形態では、温度計測部7は、温度センサー8と、サーミスター9と、を有する。このため、温度センサー8、サーミスター9のいずれかが故障したような場合でも、温度を計測することが可能である。
【0049】
また、第2実施形態では、増幅部4に供給する電圧を3段階で切り替えることで、細かい温度制御を行うことができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明を適用可能な形態は、上述の実施形態には限られるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることが可能である。
【0051】
上述の第1実施形態においては、電圧を切り替える温度、ボリュームを所定値低下させる温度が一定である。第1実施形態においては、1つの温度センサー8が、増幅部4近傍のヒートシンクに設けられている。このため、増幅部4を構成する複数のパワートランジスタ(増幅器)の温度それぞれを計測しているわけではない。使用チャンネル数(使用されているパワートランジスタの数)によって、増幅部4近傍の温度が変化するが、同じ処理が行われている。また、AVアンプ1が入力された映像を外部のディスプレイに出力可能な場合、映像の入出力によっても温度が変化する。
【0052】
従って、本変形例では、使用チャンネル数、映像入力の有無によって、電圧を切り替える温度、ボリュームを所定値低下させる温度を変化させる。
図4は、本変形例で使用される温度テーブルを示す図である。第1温度テーブルが使用される場合、マイクロコンピューター2は、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、70℃(第1温度)以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、80℃(第2温度)以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB(所定値)低下させる。
【0053】
第2温度テーブルが使用される場合、マイクロコンピューター2は、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、65℃(第1温度)以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、75℃(第2温度)以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB(所定値)低下させる。
【0054】
第3温度テーブルが使用される場合、マイクロコンピューター2は、電圧供給部6により、増幅部4に高電圧を供給しているときに、温度センサー8が計測した温度が、60℃(第1温度)以上に上昇した場合に、電圧供給部6により、増幅部4に低電圧を供給する。マイクロコンピューター2は、電圧供給部6による増幅部4への低電圧の供給後、検出した信号レベルが一定でなく、且つ、温度計測部7が計測した温度が、70℃(第2温度)以上に上昇した場合に、ボリューム調整部3が調整するボリュームを3dB(所定値)低下させる。
【0055】
図5は、使用する温度テーブルを決める場合のAVレシーバー1の処理動作を示すフローチャートである。マイクロコンピューター2は、使用チャンネル数が2チャンネルであるか否かを判断する(S1)。マイクロコンピューター2は、使用チャンネル数が2チャンネルであると判断した場合(S1:Yes)、使用する温度テーブルを、第2温度テーブルに決定する(S2)。
【0056】
マイクロコンピューター2は、使用チャンネル数が2チャンネルではない、すなわち、2チャンネルより多い多チャンネルであると判断した場合(S1:No)、映像入力があるか否かを判断する(S3)。マイクロコンピューター2は、映像入力があると判断した場合(S3:Yes)、使用する温度テーブルを第1温度テーブルに決定する(S4)。マイクロコンピューター2は、映像入力がないと判断した場合(S3:No)、使用する温度テーブルを第3温度テーブルに決定する(S5)。
【0057】
このように、本変形例では、マイクロコンピューター2は、使用チャンネル数(使用されているパワートランジスタの数)に基づいて、電圧を切り替える温度、ボリュームを低下させる温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、ボリュームの低下が実行される。
【0058】
また、本変形例では、マイクロコンピューター2は、映像入力の有無に基づいて、電圧を切り替える温度、ボリュームを低下させる温度を変化させる。これにより、適切な温度で、電圧の切替、ボリュームの低下が実行される。
【0059】
なお、ここでは、第1実施形態において、使用チャンネル数(使用されているパワートランジスタの数)、映像入力の有無に基づいて、電圧を切り替える温度、ボリュームを低下させる温度を変化させる場合について説明した。第2実施形態においても同様である。
【0060】
上述の実施形態における低下させるボリューム値、電圧切替の温度条件、ボリューム低下を行う回数、時間等の数値は、一例であり、これらの数値に限られない。
【0061】
上述の実施形態においては、温度計測部7は、温度センサー8と、サーミスター9と、を有する。これに限らず、温度計測部7は、温度センサー8のみから構成されていてもよい。すなわち、サーミスター9は、必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、音声信号を増幅する増幅装置に好適に採用され得る。
【符号の説明】
【0063】
1 AVアンプ(増幅装置)
2 マイクロコンピューター(制御部)
3 ボリューム調整部
4 増幅部
5 スピーカー端子
6 電圧供給部
7 温度計測部
8 温度センサー
9 サーミスター
100 スピーカー